IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161706
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231031BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231031BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H01L21/60 301A
G09F9/00 366A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072210
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【テーマコード(参考)】
5E338
5F044
5G435
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB43
5E338BB54
5E338BB75
5E338CC01
5E338CC10
5E338CD15
5E338CD17
5E338EE27
5F044AA12
5F044AA14
5G435AA06
5G435EE49
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い、伸縮可能なフレキシブル電子装置を実現する。
【解決手段】
本発明の構成は次のとおりである。複数の素子が第1の方向に第1の間隔をもって配置し、第2の方向に第2の間隔をもって配置し、前記複数の素子は、第1の方向において、第1の配線110によって接続し、第2の方向において、第2の配線によって接続している電子装置であって、前記素子は、第1の有機絶縁膜10の第1の部分101に形成され、前記第1の配線110は、前記第1の有機絶縁膜10の第2の部分111に形成され、前記第1の配線110は、前記素子の近傍である直線状の第1の部分と、その他の、曲線状である第2の部分を有し、前記直線状の第1の部分において、前記第1の配線110は分断し、前記第1の配線110は、前記分断された部分において、第1のワイヤボンディング90によって接続されていることを特徴とする電子装置。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子が第1の方向に第1の間隔をもって配置し、第2の方向に第2の間隔をもって配置し、
前記複数の素子は、第1の方向において、第1の配線によって接続し、第2の方向において、第2の配線によって接続している電子装置であって、
前記素子は、第1の有機絶縁膜の第1の部分に形成され、前記第1の配線は、前記第1の有機絶縁膜の第2の部分に形成され、
前記第1の配線は、前記素子の近傍である直線状の第1の部分と、その他の、曲線状である第2の部分を有し、
前記直線状の第1の部分において、前記第1の配線は分断し、
前記第1の配線は、前記分断された部分において、第1のワイヤボンディングによって接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第1の有機絶縁膜は、前記素子及び前記第1の配線に沿うように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第1の有機絶縁膜の前記第1の部分と前記第2の部分は、前記第1の配線が前記分断されている部分において、分断されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第1の配線の曲線状である前記第2の部分は、ミアンダ構造であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第1の配線及び前記第1の有機絶縁膜の上面及び側面は、第2の有機絶縁膜によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記第1の有機絶縁膜のヤング率は、前記第2の有機絶縁膜おヤング率よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子装置は、主面方向において、動作可能な伸長率は10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項8】
前記素子は、トランジスタまたはダイオードを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項9】
前記素子は、光センサ、温度センサ、圧力センサ、タッチセンサ、発光素子、又は、受光素子であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項10】
前記素子は、アクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項11】
前記第2の配線は、前記第1の有機絶縁膜の第3の部分に形成され、
前記第2の配線は、前記素子の近傍である直線状の第3の部分と、その他の、曲線状の第4の部分を有し、
前記直線状の第3の部分において、前記第2の配線は分断し、
前記第2の配線は、前記分断された部分において、第2のワイヤボンディングによって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項12】
前記第1の有機絶縁膜は、前記第2の配線に沿うように形成されていることを特徴とする請求項11に記載の電子装置。
【請求項13】
前記第1の有機絶縁膜の前記第1の部分と前記第3の部分は、前記第1の配線が前記分断されている部分において、分断されていることを特徴とする請求項11に記載の電子装置。
【請求項14】
前記第2の配線の曲線状である前記第4の部分は、ミアンダ構造であることを特徴とする請求項11に記載の電子装置。
【請求項15】
前記第2の配線及び前記第1の有機絶縁膜の上面及び側面は、第2の有機絶縁膜によって覆われていることを特徴とする請求項11に記載の電子装置。
【請求項16】
複数の素子が第1の方向に第1の間隔をもって配置し、第2の方向に第2の間隔をもって配置し、
前記複数の素子は、第1の方向において、第1の配線によって接続し、第2の方向において、第2の配線によって接続している電子装置であって、
前記素子は、第1の有機絶縁膜の第1の部分に形成され、前記第1の配線は、前記第1の有機絶縁膜の第2の部分に形成され、
前記第1の配線は、前記素子の近傍である直線状の第1の部分と、その他の、曲線状である第2の部分を有し、
前記第1の配線の前記直線状の第1の部分において、前記第1の方向に、ワイヤボンディングが形成されていることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性および伸縮性を有した電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性あるいは伸縮性を有する電子装置への需要が高まっている。このようなフレキシブル電子装置の用途は、例えば、曲面を有する電子機器の筐体に貼り付ける、曲面を有する表示媒体に取り付ける、センサとして人体等に取り付ける等がある。素子としては、例えばタッチセンサ、温度センサ、圧力センサ、加速度センサなどのセンサ、あるいは、種々の表示装置を構成する発光素子、光バルブ等が挙げられる。
【0003】
センサ装置では、各素子を制御するために、走査線や信号線が用いられる。フレキシブル電子装置においては、装置が湾曲や伸縮に耐える必要がある。特許文献1には、走査線及び映像信号線を蛇行させる(以後ミアンダ配線とも言う)ことによって、曲げや伸縮に耐える構成とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-106199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査線や信号線をミアンダ構造とすることによって、フレキシブル電子装置を伸縮させたり湾曲させたりすることに対してはある程度の耐性を得ることが出来る。しかし、装置を伸縮させたり、湾曲させたりすると、走査線や信号線をミアンダ構造であっても、配線全体に対して均一な応力とすることが出来るわけではない。
【0006】
すなわち、装置を伸縮させたり、湾曲させたりすると、応力が最も大きくなる部分において破断が生ずる。逆にいうと、この応力が最もかかりやすい部分の構造を対策することによって、フレキシブル電子装置の湾曲や伸縮に対する耐性を向上させることが出来る。
【0007】
本発明の課題は、フレキシブル電子装置を伸縮させたり、湾曲させたりしたときに、応力がかかりやすい部分の構造を対策し、伸縮や湾曲に対して耐性が高い、したがって、信頼性が高いフレキシブル電子装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を実現するものであり、代表的な手段は次のとおりである。
【0009】
(1)複数の素子が第1の方向に第1の間隔をもって配置し、第2の方向に第2の間隔をもって配置し、前記複数の素子は、第1の方向において、第1の配線によって接続し、第2の方向において、第2の配線によって接続している電子装置であって、前記素子は、第1の有機絶縁膜の第1の部分に形成され、前記第1の配線は、前記第1の有機絶縁膜の第2の部分に形成され、前記第1の配線は、前記素子の近傍である直線状の第1の部分と、その他の、曲線状である第2の部分を有し、前記直線状の第1の部分において、前記第1の配線は分断し、前記第1の配線は、前記分断された部分において、第1のワイヤボンディングによって接続されていることを特徴とする電子装置。
【0010】
(2)前記第1の有機絶縁膜は、前記素子及び前記第1の配線に沿うように形成されていることを特徴とする(1)に記載の電子装置。
【0011】
(3)前記第1の有機絶縁膜の前記第1の部分と前記第2の部分は、前記第1の配線が前記分断されている部分において、分断されていることを特徴とする(1)に記載の電子装置。
【0012】
(4)前記第1の配線の前記第2の部分である曲線部は、ミアンダ構造であることを特徴とする(1)に記載の電子装置。
【0013】
(5)前記第2の配線は、前記第1の有機絶縁膜の第3の部分に形成され、前記第2の配線は、前記素子の近傍である直線状の第3の部分と、その他の、曲線状である第4の部分を有し、前記直線状の第3の部分において、前記第2の配線は分断し、前記第2の配線は、前記分断された部分において、第2のワイヤボンディングによって接続されていることを特徴とする電子装置。
(6)複数の素子が第1の方向に第1の間隔をもって配置し、第2の方向に第2の間隔をもって配置し、前記複数の素子は、第1の方向において、第1の配線によって接続し、第2の方向において、第2の配線によって接続している電子装置であって、前記素子は、第1の有機絶縁膜の第1の部分に形成され、前記第1の配線は、前記第1の有機絶縁膜の第2の部分に形成され、前記第1の配線は、前記素子の近傍である直線状の第1の部分と、その他の、曲線状である第2の部分を有し、前記第1の配線の前記直線状の第1の部分において、前記第1の方向に、ワイヤボンディングが形成されていることを特徴とする電子装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フレキシブル電子装置の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】アクティブ領域における配線形状を示す平面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5図3のC-C断面図である。
図6】素子及びその周辺を示す平面図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8】配線及び素子が形成される、基材の一部を示す平面図である。
図9】フレキシブル電子装置が横方向(x方向)に延ばされた場合おいて、大きなストレスが生ずる領域を示す平面図である。
図10図9に示す、大きなストレスがかかる領域において配線に断線が生ずることを示す平面図である。
図11】実施例1の概略構成を示す平面図である。
図12図11のE-E断面図である。
図13】x方向に延伸した場合における図11のE-E断面図である。
図14】実施例1の特徴部分における具体的な構成を示す平面図である。
図15図12のx方向の断面図である。
図16図15の構成を実現するための最初のプロセスを示す断面図である。
図17図16に続くプロセスを示す断面図である。
図18図17に続くプロセスを示す断面図である。
図19図18に続くプロセスを示す断面図である。
図20図19に続くプロセスを示す断面図である。
図21図20に続くプロセスを示す断面図である。
図22図21に続くプロセスを示す断面図である。
図23図22に続くプロセスを示す断面図である。
図24図23に続くプロセスを示す断面図である。
図25】実施例2を示す平面図である。
図26図25のx方向断面図である。
図27】実施例3を示す平面図である。
図28図27のx方向断面図である。
図29】実施例4を示す平面図である。
図30図29のx方向断面図である。
図31】実施例5を示す平面図である。
図32図31のx方向断面図である。
図33】実施例6の課題を示す平面図である。
図34】実施例6を示す平面図である。
図35図34のy方向断面図である。
図36図35の構造を形成するための途中工程の断面図である。
図37図36の構成に対し、ワイヤボンディングを行った状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例0016】
図1は、実施例1におけるフレキシブル電子装置1の平面図である。図1のフレキシブル電子装置1は全体としては平板状となっているが、z方向に湾曲させたり、x-y平面上において、伸ばしたりすることが出来る。破断伸長率、すなわち、フレキシブル電子装置1が破壊するまでの伸び率は、フレキシブル電子装置1を構成する材料によっても異なるが、延性に富む有機材料が主となっている場合は、伸び率は30%程度が可能である、場合によっては、60%が可能な場合もある。一方、無機材料が比較的多く使用されていれば、伸び率は、10%乃至15%程度である。
【0017】
図1において、フレキシブル電子装置1は、アクティブ領域5が大きな領域を占めている。アクティブ領域5には、電子素子100がマトリクス状に配置している。電子素子100としては、例えば、センサ、半導体素子、アクチュエータ等を配置することが出来る。センサとしては、例えば、可視光あるいは赤外光を検出する光センサ、温度センサ、圧力センサ、タッチセンサ等を配置することが出来る。半導体素子としては、例えば、発光素子、受光素子、ダイオード、トランジスタ等を配置することが出来る。アクチュエータとしては、例えば、ピエゾ素子等を使用することができる。
【0018】
各電子素子100は走査線110及び信号線120と接続している。走査線110は横方向(x方向、第1の方向に相当する。)に延在し、縦方向(y方向、第2の方向に相当する。)に配列している、信号線120は縦方向(y方向)に延在し、横方向(x方向)に配列している。図1では、走査線110も信号線120も直線状に延在しているが、これは、図を複雑にしないためであり、実際には、図3に示すように、蛇行して走査線110は横方向に延在し、信号線120は縦方向に延在している。
【0019】
図1において、アクティブ領域5の外側には、駆動回路115、125や端子領域6が配置している。アクティブ領域5のx方向両側には走査線駆動回路115が配置し、アクティブ領域5のy方向上側には、電子素子100に電源を供給するための電源回路130が存在し、アクティブ領域5のy方向下側には信号線駆動回路125が配置している。信号線駆動回路125のさらに下側には、端子領域6が配置している。端子領域6にはフレキシブル電子装置1に電源や信号を供給し、また、信号を外部に送るためのフレキシブル配線基板150が接続している。
【0020】
図2図1のA-A断面図である。図2は概略断面図である。図2において、図1で説明した電子素子100、走査線110、信号線120等は素子層2に存在している。つまり、フレキシブル電子装置1としての機能は素子層2に存在している。この素子層2を上側から上保護層3、下側から下保護層4によって覆っている。上保護層3も下保護層4も、弾性変形をしやすい、すなわち、ヤング率の小さい材料によって形成されている。
【0021】
図2において、アクティブ領域5及び駆動回路115、125等は、上保護層3と下保護層4によって覆われているが、素子層2の端部には、上保護層3に覆われていない部分があり、この部分が端子領域6となっている。端子領域6は、下保護層4のみによって保護されている。端子領域6には、フレキシブル配線基板150が接続している。
【0022】
図3は表示領域5の平面図である。図3は、図2で示す素子層2の主要構成部分である。すなわち、図2で示す素子層2は、単一の平面基板として存在しているのではなく、図3に示すような、走査線110と信号線120が形成されたミアンダ構造102、及び、走査線110と信号線120の交差部に形成される素子領域101の存在する基材10で構成され、いわば、網目状の構造を有している。
【0023】
図3において、ミアンダ構造102及び交点に存在する素子領域101は、ポリイミド等の樹脂で構成されている。この樹脂を基材10として、その上に走査線110、信号線120、素子100等が形成されている。図3において、素子領域101に、菱形の素子100が存在している。このような構成とするのは、フレキシブル電子装置1を引き延ばしたときにも、各部品に対する応力を軽減するためである。
【0024】
図3において、菱形に形成された素子100のx方向の径、及び、y方向の径は、例えば、各々100μmである。素子100のx方向のピッチ及びy方向のピッチは、例えば、250μmである。また、ミアンダ構造102における走査線110、映像信号線120等を含む基材10の幅は、例えば30μmである。
【0025】
図4は、図3のB-B断面図であり、走査線110を含むミアンダ構造の断面図である。図4において、基材10の上に第1有機絶縁膜20が形成されている。第1有機絶縁膜20の上に走査線110が形成されている。走査線110を覆って第2有機絶縁膜30が形成されている。図3における走査線110を含むミアンダ構造102の平面図は、基材10の平面形状を表している。
【0026】
基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30は、例えばポリイミドで形成されている。ポリイミドは、機械的な強度、耐熱性等で優れた性能を持つので、走査線110や信号線120の基材10として好適である。すなわち、フレキシブル電子装置1を引き延ばした場合、ミアンダ構造に発生する応力は、ポリイミドが引き受けるので、金属で形成された走査線110等にかかる応力は軽減される。
【0027】
走査線110は例えばTAT(Ti-Al-Ti、チタンーアルミニウムーチタン)構造を有する。三層構造において、導電性は主としてAlが担い、TiはAlの保護、あるいは、他の配線との接合の改良のために使用される。走査線110の材料はこのほかに、MoW(モリブデンータングステン合金)等、フレキシブル電子装置1の用途により種々の構成をとることが出来る。
【0028】
図3に示すように、走査線110を有するミアンダ構造102(以後単に走査線110ともいう)は、形状が不安定なので、上下から保護層(図2で示す3、4)で固定している。まず、走査線110が形成されたミアンダ構造を有機材料で形成された第1バッファー層40で覆う。その上を有機材料で形成された第1保護層50で覆う。基材10の下面には、有機材料で形成された第2バッファー層60が配置し、その下に有機材料で第2保護層70が形成されている。
【0029】
このように、走査線110を含むミアンダ構造は、不安定な形状であるが、上下からバッファー層40、60及び保護層50、70で固定されているので、形状を安定して保つことが出来る。ところで、本発明の電子装置は、フレキシブル電子装置であるから、外部からの引っ張り応力に対して、伸縮可能である必要がある。したがって、ポリイミドによるミアンダ構造を挟むバッファー層40、60及び保護層50、70は、ポリイミドよりも延伸しやすい材料、すなわち、ヤング率の小さい材料であることが望ましい。このような材料としては、たとえば、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコン等の樹脂が挙げられる。
【0030】
図5は、図3のC-C断面図であり、信号線120を有するミアンダ構造の断面図である。図5のミアンダ構造では、基材10の上に第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30が連続して形成され、パターニングされている。そして、第2有機絶縁膜30の上に信号線120が形成されている。実施例1においては、信号線120は、走査線と同じ材料、すなわち、TAT(Ti-Al-Ti)構造を有しているが、フレキシブル電子装置の用途によって他の材料と変えてもよい。その他の構造は、図4で説明した走査線110部分の断面形状と同じである。
【0031】
図6は、素子領域101の平面図である。素子領域101も、外形はポリイミドで形成された基材10で規定されている。図6における素子領域101は菱形であるが、菱形の頂部は走査線110及び信号線120を有するミアンダ構造と接続しているので、概略8角形のような形となっている。図6においては、走査線110も信号線120も直線となっているが、図6よりも外側では、図3に示すようなミアンダ構造となっている。
【0032】
図6において、素子領域101に、素子100が配置している。素子100の外形は、菱形の頂部を切り欠いた概略8角形となっている。素子100の下を信号線120と走査線110が絶縁膜を挟んで交差している。ただし、図6は模式図であり、実際の装置では、走査線110、映像信号線120とも、素子100を駆動するトランジスタ等と接続する。
【0033】
図7図6のD-D断面図である。図7において、基材10の上に無機絶縁膜80が形成されている。無機絶縁膜80は、その上側に形成される素子100等に対して、下側から侵入するする不純物などをブロックする。図7では、無機絶縁膜80は基材10の上に形成されているが、これは例であり、必要に応じて、素子100に近い層に形成してもよい。
【0034】
無機絶縁膜80は、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)、あるいは、これらの積層膜で形成される。場合によっては、アルミニウム酸化膜(AlO)が使用される場合もある。無機絶縁膜80は剛性が高いが、素子領域101にのみ形成されているので、フレキシブル電子装置1の伸縮性に対する影響は小さい。
【0035】
無機絶縁膜80を覆って第1有機絶縁膜20が、例えばポリイミドで形成されている。第1有機絶縁膜20の上に走査線110が横方向(x方向)に延在している。走査線110及び第1有機絶縁膜20を覆って、例えばポリイミドによって第2有機絶縁膜30が形成されている。第2有機絶縁膜30の上を信号線120がy方向に延在している。
【0036】
そして信号線120を覆って素子100が配置している。図7は模式図であり、素子100と、走査線110や信号線120等の接続構造は省略されている。実際には、素子100としてどのようなものが使用されるかにもよるが、素子100と走査110線あるいは信号線120との間に薄膜トランジスタ(TFT)を配置し、TFTを走査線制御回路115、信号線制御回路125によって制御することによって、素子100からの信号、あるいは、素子100への信号を制御する場合が多い。
【0037】
図7において、素子100としてどのようなものを配置するかによって、図7における素子100と信号線120との間の配線構造は異なる。素子が形成された領域では、複数の有機または無機の絶縁膜が形成される可能性もある。しかし、図7等では、素子100の形成領域以外では、フレキシブル電子装置を伸縮容易とするために、映像信号線の上には、絶縁膜は形成されていない。
【0038】
図6に示す平面構造は、図7における基材10から素子100までの断面構造に対応する。このままだと、平面形状は図3に示すようなものになり、不安定である。そこで、図4で説明したように、第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70を形成し、全体を平板状にまとめて形状を安定化している。また、図4で説明したように、第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70は、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30等よりも、ヤング率の小さい材料を使用しているので、フレキシブル電子装置1の伸縮性を損なわない構成となっている。
【0039】
図8は、走査線領域及び素子領域を構成するポリイミドで形成された基材10の形状を示す平面図である。素子が配置される素子領域101は菱形に近い形状となっており、走査線が配置される走査線領域の、素子領域に近い部分は直線111になっているが、大部分はミアンダ構造112となっており、フレキシブルに伸縮が可能な構成となっている。
【0040】
図9は、図8の構造を白矢印の方向に延伸した場合における問題点を示す平面図である。この場合、菱形である素子領域101と走査線110を有するミアンダ構造102(以後、単に、走査線110ともいう)の直線領域111と素子領域101つなぎ目部分Bに応力が集中する。さらに、素子領域101には、素子100や無機絶縁膜80等が存在するので、他の部分よりも剛性が高い。したがって、菱形である素子領域101と走査線の直線領域111つなぎ目部分Bには、さらに応力が集中しやすい。
【0041】
それでも、基材10等を構成するポリイミドのような樹脂は強度が高いので破断することは無いが、基材10の上を延在する、金属で形成された走査線110は、この部分において断線しやすい。この様子を図10に示す。図10は、フレキシブル電子装置1を横方向(x方向)に引っ張った場合に、応力が大きい部分において、走査線110に破断BBが生ずることを示す平面図である。実施例1は、このような走査線110の断線を防止する構成を与える与ものである。なお、図10では、フレキシブル電子装置1を横方向に延伸させた場合の例であるが、フレキシブル電子装置を縦方向に延伸させれば、信号線120に対して同様な現象が生ずる。本発明は、信号120側の問題に対しても同様に適用できる。
【0042】
図11は以上の問題点を対策する実施例1の概略構成を示す平面図である。図11において、走査線領域を構成するポリイミド102と素子領域を構成するポリイミド101とは分断されている。したがって、走査線110もこの部分において分断されている。図11において、分断された走査線110は、ワイヤボンディング90によって接続している。図11において、92は接続部であり、91はボンディングワイヤである。接続部92はボールボンディングでも、ウェッジボンディングでも、接続し易い構成とすればよい。
【0043】
本発明は、フレキシブル電子装置を延伸した場合、配線に対して最もストレスが生ずる部分をワイヤボンディングに代えることによってストレスを緩和するものである。図12及び図13は、ワイヤボンディングによってストレスを緩和する原理を示す断面図である。図12及び図13は、断面構造は簡略化して記載されている。図12において、基材101及び102の上に走査線が形成されている。基材101の走査線110と基材102の走査線110の間をワイヤボンディング90によって接続している。
【0044】
図12において、ボンディングワイヤ91はz方向に撓んだ状態で接続されている。図12において、素子領域101とミアンダ領域102の距離102とはx1である。図13は、フレキシブル電子装置をx方向に延伸し、素子領域101とミアンダ領域102の距離102をx2とした場合の断面図である。
【0045】
この場合、延伸したことによるストレスは、有機材料による構造体、例えば、図4等に示す、第1バッファー層40,第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70等が負担する。一方、ワイヤボンディング部においては、ボンディングワイヤ91のz方向への撓みが変化するだけで、ワイヤボンディングでのストレスは殆ど生じない。したがって、図11の構成によれば、図10で説明したような、走査線110の断線は回避することが出来る。
【0046】
図14以後は、図11乃至図13の具体的な構造を示す図である。ところで、ワイヤボンディング90におけるボンディングワイヤ91の太さは、15μm乃至30μmである。図14以下においては、各構成の関係をわかりやすくするために、ワイヤボンディングワイヤの太さは、実際よりも細く記載されている。
【0047】
図14はワイヤボンディング90付近の平面図である。図14において、基材10は、素子領域101と走査線領域111とで分断されている。したがって、走査線110もこの部分において分断されている。図14では、素子領域100側の走査線110と走査線領域111側の走査線110とはワイヤボンディング90によって接続されている。走査線110は、第2有機絶縁膜によって覆われているので、第2有機絶縁膜に接続のためのスルーホール95形成し、さらにこの部分にワイヤボンディング可能となるようにパッド96を形成する。パッド96の材料には、アルミニウム、銅、金等が使用される。以後、接続部92及びボンディングワイヤ91を含めてワイヤボンディング90と言う。
【0048】
図15図14に対応するx方向の断面図である。図13において、基材10、第1有機絶縁膜20、走査線110、第2有機絶縁膜30は、素子領域101と走査線領域102の直線部111のつなぎ目において分断されている。第2有機絶縁膜30には、走査線110どうしをワイヤボンディング90で接続するために、スルーホール95が形成され、この部分にワイヤボンディング用のパッド96が形成されている。
【0049】
図15において、基材10等が分断された領域には第1バッファー層40を構成する材料が充填されている。また、ワイヤボンディング90は第1バッファー層40によって覆われており、ワイヤボンディング90に生ずる応力を緩和している。第1バッファー層40を覆って第1保護層50が形成されている。基材10の下側には、第2バッファー層60が形成され、その下側に第2保護層70が形成されている。この構成は図4で説明したのと同じである。
【0050】
図15において、基材10等が分断された領域には、第1バッファー層40を構成する材料が充填され、さらに、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30等は第1バッファー層40と第2バッファー層60によって挟まれている。したがって、横方向(x方向)に延伸したとしても、ワイヤボンディング90部分の歪が極端に大きくなることは無い。ワイヤは15μm乃至30μm程度のワイヤなので、ストレスに対して柔軟に対応することが出来る。
【0051】
図16乃至図24は、図15の構成を実現するためのプロセスにおける断面図である。ところで、製造プロセスは、センサ等の素子100としてどのような構造のものを用いるか、走査線110や信号線120と素子100をどのように関係させるか等によって全く異なって来る。以下の説明は、ワイヤボンディング90に関係した部分に着目したプロセスの例である。図16はガラス基板200の上に、基材10、第1有機絶縁膜20、走査線110、第2有機絶縁膜30が順に形成された状態の断面図である。ガラス200は、製造工程において必要なもので、第1保護層50が形成された後、除去される。
【0052】
図16において、例えば、ポリイミドによる基材10を形成するために、ガラス基板200の上にポリイミド材料を塗布し、焼成してイミド化する。第1有機絶縁膜20もポリイミドで形成する場合、基材10を覆ってポリイミドを塗布し、焼成して固化する。その後、走査線110を構成する金属を例えばスパッタリングによって被着させる。走査線110は、例えば、TAT(Ti-Al-Ti)、あるいはMoW合金で形成される。走査線110をパターニングした後、第2有機絶縁膜30を、例えば、ポリイミドによって形成する。
【0053】
図17は、走査線110及び、これを支持する基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30を、素子領域付近において分断した状態を示す断面図である。パターニングは、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよい。図18は、第2有機絶縁膜30に対してスルーホール95を形成し、走査線110を一部露出させた状態を示す断面図である。図19は、スルーホール95部分にワイヤボンディング用のパッド96を形成した状態を示す断面図である。ワイヤボンディング可能なパッド96の材料はアルミニウム、銅、金等である。実施例1ではAlを使用している。
【0054】
図20は、分断された走査線110の二つの領域をワイヤボンディング90で接続した状態を示す断面図である。ボンディングワイヤ91は、例えば、直径が15μm乃至30μm程度のアルミニウム、銅、金等のいずれかで形成される。実施例1ではアルミニウムをボンディングワイヤ91として使用している。ボンディングはボールボンディングでもウェッジボンディングでもよい。
【0055】
その後、図21に示すように、ワイヤボンディング90、第2有機絶縁膜30、ガラス基板200等を第1バッファー層40で覆う。第1バッファー層40の材料としては、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコン等が挙げられる。第1バッファー層40は、走査線110が分断された領域にも充填される。
【0056】
図22は、第1バッファー層40を覆って第1保護層50を形成した状態を示す断面図である。第1保護層50の材料は、バッファー層と同様、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコン等が使用される。例えば、第1バッファー層40だけでは必要な厚さを確保できないときに、第1保護層50によって、必要な厚さを確保するというような場合もある。
【0057】
その後、図23に示すように、ガラス基板200を剥離する。例えば、ガラス基板200と基材10の界面及びガラス基板200と第1バッファー層40との界面にレーザーを照射し、ガラス基板200を剥離する方法を用いることが出来る。その後、図24に示すように、第2バッファー層60を形成し、続いて、第2保護層70を形成すると、図15に示すような、フレキシブル電子装置が形成される。第2バッファー層60及び第2保護層70の材料は、途中工程におけるフレキシブル電子装置をひっくり返して塗布する。第2バッファー層60及び第2保護層70は、第1バッファー層40、第1保護層50と同様、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコン等のいずれかの材料で形成される。
【0058】
第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70を構成する材料は、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30等を構成するポリイミドよりもヤング率の小さい材料を使用すれば、伸縮性に優れたフレキシブル電子装置を製造することが出来る。但し、第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70を構成する材料を基材10等と同じ材料で使用することも出来る。フレキシブル電子装置の製造プロセスの容易性と、フレキシブル電子装置がどの程度まで伸縮性を必要とするかにより決められる。
【実施例0059】
図25は実施例2を示す平面図である。図25が実施例1の図15と異なる点は、ワイヤボンディングされるパッドを別途形成していないということである。例えば、走査線110の構成を、ベースメタル(チタン)とアルミニウムのみとし、キャップ層を形成しない。そうすると、走査線110の表面はアルミニウムとなるので、これをボンディングパッドとして使用することが出来る。図25では、ワイヤボンディング90を行う領域、すなわち、スルーホール95に対応する部分では、走査線110の幅を広げている。
【0060】
図26は、図25のワイヤボンディング部90を含む、x方向の断面図である。図26において、第2有機絶縁膜30のスルーホール95には、特別なパッドは形成されておらず、ワイヤボンディング90は走査線110に接続している。図26のその他の構成は、実施例1の図15と同じである。このように、実施例2では、ワイヤボンディング用のボンディングパッドを形成しない分製造コストを低減することができる。
【実施例0061】
実施例1及び2では、ボンディングパッド形成のために、第2有機絶縁膜30にスルーホール95を形成している。幅が30μm程度の第2有機絶縁膜30にスルーホールを形成するよりは、切り欠き98を形成したほうが合理的な場合もある。切り欠き98は、スルーホールの形成と同様に第2有機絶縁膜30をエッチングすることによって形成される。
【0062】
図27は実施例3の平面図である。図27が実施例1の図15及び実施例2の図25と異なる点は、ボンディングパッド部97において、第2有機絶縁膜30に、スルーホール95ではなく、切り欠き98が形成されている点である。ボンディングパッド97を形成するために、走査線110は切り欠き98の部分において、幅が大きくなっている。
【0063】
図28は、図27のx方向断面図である。図28が実施例2の図26と異なる点は、ボンディングパッド97がスルーホール95ではなく、切り欠き98に形成されている点である。実施例3の特徴は、ボンディングパッド97を形成する領域を、実施例1及び2の場合に比して広くとれることである。したがって、ワイヤボンディング作業の自由度が増し、接続の信頼性を向上させることが出来る。
【0064】
図27図28は、実施例2と同様に、走査線110を構成するアルミニウムをボンディングパッドとして使用している。しかし、実施例1のように、別途、アルミニウム、銅、金等用いてボンディングパッドを形成してもよい。実施例3の製造プロセスは、実施例1及び実施例2で説明した製造プロセスにおいて、第2有機絶縁膜30に、スルーホール95形成する代わりに切り欠き98を形成する点が異なるだけなので、説明を省略する。
【実施例0065】
以上の実施例では、素子100の近傍において。走査線110のみでなく、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30も全て除去している。このような構成において、フレキシブル電子装置を伸縮させた場合、分断された部分に大きなストレスが加わる場合がある。
【0066】
ワイヤボンディング90は、このストレスに対する歪に対して柔軟に対応することが出来るが、あまりに歪が大きいと、ワイヤボンディング90の断線の危険も生ずる。図29及び図30に示す実施例4はこのような問題を対策する構成である。
【0067】
図29は実施例4の平面図である。図29において、走査線110が素子領域101付近において、分断されていることは実施例1乃至3と同じである。しかし、図29では、基材10及び第1有機絶縁膜20は分断されずに連続している。
【0068】
図30は、図29のx方向の断面図である。図30において、走査線110及び第2有機絶縁膜30は分断されているが、基材10及び第1有機絶縁膜20は分断されず、連続している。したがって、フレキシブル電子装置がx方向に延伸された場合であっても、基材10及び第1有機絶縁膜20が存在している分、ワイヤボンディング90に対するストレスは緩和される。したがって、フレキシブル電子装置の伸縮に対する耐性をより向上させることができる。
【0069】
なお、図29及び図30では、基材10及び第1有機絶縁膜20のみ連続させているが、第2有機絶縁膜30も連続させれば、フレキシブル電子装置を延伸した場合の、ワイヤボンディング90におけるストレスをより緩和することが出来る。この場合のプロセスは、例えば、第1有機絶縁膜20の上の走査線110をパターニングした後、第2有機絶縁膜30を形成する。そして、第2有機絶縁膜30に対してスルーホール95を形成する。その後のプロセスは実施例1と同じである。
【実施例0070】
実施例1乃至4の構成は、素子100近傍において、フレキシブル電子装置が延伸した場合、走査線110に対するストレスによって、走査線110が断線する危険を回避するために、ワイヤボンディング90を使用した例である。しかし、走査線110も、対象部分において、全て断線するわけではなく、断線の危険があるとうことである。一方、この部分にワイヤボンディング90を用いれば、信頼性は格段に向上するが、それでも、完全ではない。そこで、走査線110を分断せずに、ワイヤボンディング90による接続を重畳的に加えれば接続の信頼性をより向上させることが出来る。
【0071】
図31は実施例5の平面図であり、図32は、図31のx方向断面図である。図31図32が実施例1の図14図15と異なる点は、x方向において、走査線110、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30が分断されず、全て連続しているということである。
【0072】
図31図32の構成によれば、フレキシブル電子装置を伸縮させた場合、走査線110、あるいは、ワイヤボンディング90のいずれかが生き残れば、装置は動作することになり、信頼性はさらに向上する。また、ワイヤボンディング90が形成された部分においても、走査線110の他、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30も存在しているので、この部分における極端な応力集中も避けることが出来る。したがって、実施例1等に比べて、フレキシブル電子装置を伸縮させた時のワイヤボンディングへのストレスを軽減することが出来る。
【実施例0073】
実施例1乃至5は、フレキシブル電子装置を走査線の延在方向(x方向)に伸縮させた場合における走査線の断線を対策するものである。フレキシブル電子装置を信号線の延在方向(y方向)に伸縮させる場合にも、信号線に対して同様な現象が生ずる。
【0074】
図33は、フレキシブル電子装置をy方向に延伸させた場合に、ストレスが集中するC部において、信号線120が断線する状態を示す平面図である。図34は、図33のC部における問題点を対策した、実施例6の構成を示す平面図である。図34は実施例1の図14と似ているが、座標軸が、横方向がy方向となっている他、走査線110が信号線120に変わり、第2有機絶縁膜30にはスルーホールが存在せず、ボンディングパッド97のみとなっている。
【0075】
図35は、図34の横方向(y方向)断面図である。図35の層構造は実施例1で説明したとおりである。信号線120は、第2有機絶縁膜30の上に存在しているので、ワイヤボンディング90のために、スルーホールを形成する必要は無く、信号線120の上に直接ボンディングパッド97が形成されている。
【0076】
なお、図7で説明したように、信号線120と素子100との間には、素子100としてどのような構造のものを形成するかによって、複数の絶縁膜が形成される場合が多い。しかし、素子100の形成領域以外では、フレキシブル電子装置の伸縮容易性を維持しやすくするために、図35では、信号線120の上には、このような絶縁膜は形成されていない。
【0077】
図36図35を形成する途中工程を示す断面図である。信号線120も走査線110と同様に、Ti-Al-Tiの三層構成となっている。図36では、信号線120の端部に、アルミニウム、銅、または、金等によるボンディングパッド97が形成されていが、信号線120の端部において、Tiを除去し、Alを露出させてこれをボンディングパッドとして使用してもよい。
【0078】
図37は、ボンディングパッド97をワイヤボンディング90で接続した状態を示す断面図である。図37では、ボンディングパッド90が平面状なので、ボンディングがより容易である。その後、第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70を形成するプロセスは、実施例1で説明したのと同じである。
【0079】
以上で説明したフレキシブル電子装置の構成は、信号線120の上には、第2有機絶縁膜30のような有機絶縁膜は存在せず、有機材料で形成された第1バッファー層40によって覆われている。信号線120が第2有機絶縁膜30のような有機絶縁膜で覆われている場合は、実施例1のように、信号線120を覆う有機絶縁膜に対してスルーホールを形成すればよい。この場合は、実施例1乃至5のような構成を適用すればよい。
【0080】
一般には、伸縮可能なフレキシブル電子装置は、4方8方に曲げられることを想定しているので、実施例1等、走査線110側の構成と実施例6の信号線120側の構成の両方を合わせて組み込むことが必要になる。
【0081】
以上で説明したフレキシブル電子装置の断面構造は、本発明を説明するための例である。本発明は、図4図5図7等で説明した断面構造のみでなく、他の断面構造を有するフレキシブル電子装置にも適用することができる。
【0082】
また、走査線駆動回路、信号線駆動回路、電源回路なども、図1の場合とは、配置が異なる場合がある。それにともなって、走査線、信号線駆動回路が配置される層も、以上で説明した構成と異なってくるが、本発明は、同様に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0083】
1…フレキシブル電子装置、 2…素子層、 3…上保護層、 4…下保護層、 5…アクティブ領域、 6…端子領域、 10…基材、 20…第1有機絶縁膜、 30…第2有機絶縁膜、 40…上バッファー層、 50…上保護膜、 60…下バッファー層、 70…下保護膜、 80…無機絶縁膜、 90…ワイヤボンディング、 91…ボンディングワイヤ、 92…ボンディング部、 95…スルーホール、 96…ボンディングパッド、 97…ボンディングパッド、 98…切り欠き、 100…素子、 101…基材の素子領域、 102…基材のミアンダ構造領域、 110…走査線、 111…直線部、 112…曲線部、 115…走査線駆動回路、 120…信号線、 125…信号線駆動回路、 130…電源回路、 150…フレキシブル配線基板、 200…ガラス基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37