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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161708
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】フレキシブル電子装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20231031BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231031BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H05K1/11 B
H01L21/60 301A
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072212
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【テーマコード(参考)】
5E317
5F044
【Fターム(参考)】
5E317AA11
5E317BB01
5E317BB02
5E317BB03
5E317BB11
5E317BB18
5E317CC03
5E317GG09
5F044AA12
5F044AA14
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い、伸縮可能なフレキシブル電子装置を実現する。
【解決手段】
これを実現するために、本発明は次のような構成をとる。第1の有機絶縁膜によって島状に形成された複数の素子領域101が第1方向に第1の間隔をもって、また、第2方向に第2の間隔をもって配置した電子装置であって、前記複数の素子領域101の各々には、素子100と、第1方向に延在する第1の配線110と、第2方向に延在する第2の配線120が形成され、前記複数の素子領域101の前記第1の配線110は、前記第1方向に延在する第1のワイヤボンディング90によって接続し、前記複数の素子領域101の前記第2の配線120は、前記第2方向に延在する第2のワイヤボンディング90によって接続していることを特徴とする電子装置。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の有機絶縁膜によって島状に形成された複数の素子領域が第1方向に第1の間隔をもって、また、第2方向に第2の間隔をもって配置した電子装置であって、
前記複数の素子領域の各々には、素子と、第1方向に延在する第1の配線と、第2方向に延在する第2の配線が形成され、
前記複数の素子領域の前記第1の配線は、前記第1方向に延在する第1のワイヤボンディングによって接続し、
前記複数の素子領域の前記第2の配線は、前記第2方向に延在する第2のワイヤボンディングによって接続していることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記複数の素子領域は、第2の有機絶縁膜の上に形成され、第3の有機絶縁膜によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第2の有機絶縁膜と前記第3の有機絶縁膜のヤング率は、前記第1の有機絶縁膜のヤング率よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第1の有機絶縁膜はポリイミドで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
隣接する前記素子領域の第1方向の中心間距離は、前記素子領域の前記第1方向の径の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
隣接する前記素子領域の第2方向の中心間距離は、前記素子領域の前記第2方向の径の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子装置は、主面方向において、動作可能な伸長率は10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項8】
前記素子は、トランジスタまたはダイオードを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項9】
前記素子は、光センサ、温度センサ、圧力センサ、タッチセンサ、発光素子、又は、受光素子であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項10】
前記素子は、アクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項11】
前記第2の有機絶縁膜は、前記第3の有機絶縁膜よりも後で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項12】
前記第3の有機絶縁膜の上には、第4の有機絶縁膜が形成され、前記第2の有機絶縁膜の下には、第5の有機絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項13】
前記第4の有機絶縁膜と前記第5の有機絶縁膜のヤング率は、前記第1の有機絶縁膜のヤング率よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性および伸縮性を有した電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性あるいは伸縮性を有する電子装置への需要が高まっている。このようなフレキシブル電子装置の用途は、例えば、曲面を有する電子機器の筐体に貼り付ける、曲面を有する表示媒体に取り付ける、センサとして人体等に取り付ける等がある。素子としては、例えばタッチセンサ、温度センサ、圧力センサ、加速度センサなどのセンサ、あるいは、種々の表示装置を構成する発光素子、光バルブ等が挙げられる。
【0003】
このような電子装置では、各素子を制御するために、走査線や信号線が用いられる。フレキシブル電子装置においては、装置が湾曲や伸縮に耐える必要がある。特許文献1には、走査線及び映像信号線を蛇行させる(以後ミアンダ配線とも言う)ことによって、曲げや伸縮に耐える構成とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-106199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査線や信号線をミアンダ構造とすることによって、フレキシブル電子装置を伸縮させたり湾曲させたりすることに対してはある程度の耐性を得ることが出来る。しかし、装置を伸縮させたり、湾曲させたりすると、走査線や信号線をミアンダ構造にしても、配線全体に対して均一な応力とすることが出来るわけではない。
【0006】
すなわち、装置を伸縮させたり、湾曲させたりすると、応力が最も大きくなる部分において破断が生ずる。逆にいうと、この応力が最もかかりやすい部分の構造を対策することによって、フレキシブル電子装置の湾曲や伸縮に対する耐性を向上させることが出来る。
【0007】
本発明の課題は、フレキシブル電子装置を伸縮させたり、湾曲させたりしたときに、応力がかかりやすい部分の構造を対策し、伸縮や湾曲に対して耐性が高い、したがって、信頼性が高いフレキシブル電子装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を実現するものであり、代表的な手段は次のとおりである。
【0009】
(1)第1の有機絶縁膜によって島状に形成された複数の素子領域が第1方向に第1の間隔をもって、また、第2方向に第2の間隔をもって配置した電子装置であって、前記複数の素子領域の各々には、素子と、第1方向に延在する第1の配線と、第2方向に延在する第2の配線が形成され、前記複数の素子領域の前記第1の配線は、前記第1方向に延在する第1のワイヤボンディングによって接続し、前記複数の素子領域の前記第2の配線は、前記第2方向に延在する第2のワイヤボンディングによって接続していることを特徴とする電子装置。
【0010】
(2)前記複数の素子領域は、第2の有機絶縁膜の上に形成され、第3の有機絶縁膜によって覆われていることを特徴とする(1)に記載の電子装置。
【0011】
(3)前記第2の有機絶縁膜と前記第3の有機絶縁膜のヤング率は、前記第1の有機絶縁膜のヤング率よりも小さいことを特徴とする(2)に記載の電子装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例におけるフレキシブル電子装置の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】比較例におけるアクティブ領域における配線形状を示す平面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5図3のC-C断面図である。
図6】比較例における素子及びその周辺を示す平面図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8図3における配線及び素子が形成される、基材の一部を示す平面図である。
図9】フレキシブル電子装置が横方向(x方向)に延ばされた場合おいて、大きなストレスが生ずる領域を示す平面図である。
図10図9に示す、大きなストレスがかかる領域において配線に断線が生ずることを示す平面図である。
図11】フレキシブル電子装置の平面方向の4方に引っ張り応力が加わった場合の断線の発生個所を示す平面図である。
図12】実施例1の特徴部分を示す平面図である。
図13図12のE-E断面図である。
図14】フレキシブル電子装置がx方向に延伸した場合の状態を示す平面図である。
図15図14のF-F断面図である。
図16】実施例1の平面図である。
図17図16のG-G断面図である。
図18図16のH-H断面図である。
図19】実施例1における各素子領域の配置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例1におけるフレキシブル電子装置1の平面図である。図1のフレキシブル電子装置1は全体としては平板状となっているが、z方向に湾曲させたり、x-y平面上において、伸ばしたりすることが出来る。破断伸長率、すなわち、フレキシブル電子装置1が破壊するまでの伸び率は、フレキシブル電子装置1を構成する材料によっても異なるが、延性に富む有機材料が主となっている場合は、伸び率は30%程度が可能である。場合によっては、60%が可能な場合もある。一方、無機材料が比較的多く使用されていれば、伸び率は、10%乃至15%程度である。
【0015】
図1において、フレキシブル電子装置1は、アクティブ領域5が大きな領域を占めている。アクティブ領域5には、電子素子100がマトリクス状に配置している。電子素子100としては、例えば、センサ、半導体素子、アクチュエータ等を配置することが出来る。センサとしては、例えば、可視光あるいは赤外光を検出する光センサ、温度センサ、圧力センサ、タッチセンサ等を配置することが出来る。半導体素子としては、例えば、発光素子、受光素子、ダイオード、トランジスタ等を配置することが出来る。アクチュエータとしては、例えば、ピエゾ素子等を使用することができる。
【0016】
各電子素子100は走査線110及び信号線120と接続している。走査線110は横方向(x方向、第1方向に相当する。)に延在し、縦方向(y方向、第2方向に相当する。)に配列している、信号線120は縦方向(y方向)に延在し、横方向(x方向)に配列している。延伸可能なフレキシブル電子装置とするためには、走査線110、信号線120の構造が重要である。すなわち、フレキシブル電子装置を延伸した場合、走査線110、信号線120が断線を生じない構造とする必要がある。
【0017】
図1において、アクティブ領域5の外側には、駆動回路115、125や端子領域6が配置している。アクティブ領域5のx方向両側には走査線駆動回路115が配置し、アクティブ領域5のy方向上側には、電子素子100に電源を供給するための電源回路130が存在し、アクティブ領域5のy方向下側には信号線駆動回路125が配置している。信号線駆動回路125のさらに下側には、端子領域6が配置している。端子領域6にはフレキシブル電子装置1に電源や信号を供給し、また、信号を外部に送るためのフレキシブル配線基板150が接続している。
【0018】
図2図1のA-A断面図である。図2は概略断面図である。図2において、図1で説明した電子素子100、走査線110、信号線120等は素子層2に存在している。つまり、フレキシブル電子装置1としての機能は素子層2に存在している。この素子層2を上側から上保護層3、下側から下保護層4によって覆っている。上保護層3も下保護層4も、弾性変形をしやすい、すなわち、ヤング率の小さい材料によって形成されている。
【0019】
図2において、アクティブ領域5及び駆動回路115、125等は、上保護層3と下保護層4によって覆われているが、素子層2の端部には、上保護層3に覆われていない部分があり、この部分が端子領域6となっている。端子領域6は、下保護層4のみによって保護されている。端子領域6には、フレキシブル配線基板150が接続している。
【0020】
フレキシブル電子装置1を延伸させた場合、走査線110と信号線120における断線が問題となる。本発明では、素子100と素子100との間の走査線110及び信号線120には、後で説明するように、ワイヤボンディングを使用することによって、走査線110及び信号線120に発生するストレスを緩和している。一方、特許文献1等に記載の技術では、走査線110及び信号線120を蛇行させることによってフレキシブル電子装置1を延伸した場合のストレスを緩和している。このような構造をミアンダ構造とも言う。本明細書では、比較例として、走査線110及び信号線120をミアンダ構造とした場合の構造をまず説明し、その後、本発明の構成を説明する。
【0021】
図3は、比較例としての、ミアンダ構造を有する、表示領域5の平面図である。図3以下で説明するミアンダ構造を有する構成は、新規事項を含む場合もあるので、公知例ではない。また、ミアンダ構造となっている走査線110及び信号線120以外の構成は、実施例1の構成にも適用される。図3は、図2で示す素子層2の主要構成部分である。すなわち、素子層2は、単一の平面基板として存在しているのではなく、図3に示すような、走査線110と信号線120が形成されたミアンダ構造102、及び、走査線110と信号線120の交差部に形成される素子領域101の存在する基材10で構成され、いわば、網目状の構造を有している。
【0022】
図3において、ミアンダ構造102及び交点に存在する素子領域101は、ポリイミド等の樹脂で構成されている。この樹脂を基材10として、その上に走査線110、信号線120、素子100等が形成されている。図3において、素子領域101に、菱形の素子100が存在している。このような構成とするのは、フレキシブル電子装置を引き延ばしたときにも、各部品に対する応力を軽減するためである。
【0023】
図3において、菱形に形成された素子100のx方向の径、及び、y方向の径は、例えば、各々100μmである。素子100のx方向のピッチ及びy方向のピッチは、例えば、250μmである。また、ミアンダ構造102における走査線110、映像信号線120等を含む基材10の幅は、例えば30μmである。
【0024】
図4は、図3のB-B断面図であり、走査線110を含むミアンダ構造の断面図である。図4において、基材10の上に第1有機絶縁膜20が形成されている。第1有機絶縁膜20の上に走査線110が形成されている。走査線110を覆って第2有機絶縁膜30が形成されている。図3における走査線110を含むミアンダ構造102の平面図は、基材10の平面形状を表している。
【0025】
基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30は、例えばポリイミドで形成されている。ポリイミドは、機械的な強度、耐熱性等で優れた性能を持つので、走査線110や信号線120の基材10として好適である。すなわち、フレキシブル電子装置を引き延ばした場合、ミアンダ構造に発生する応力は、ポリイミドが引き受けるので、金属で形成された走査線110等にかかる応力は軽減される。
【0026】
走査線110は例えばTAT(Ti-Al-Ti、チタン-アルミニウムーチタン)構造を有する。三層構造において、導電性は主としてAlが担い、TiはAlの保護、あるいは、他の配線との接合の改良のために使用される。走査線110の材料はこのほかに、MoW(モリブデン-タングステン合金)等、フレキシブル電子装置の用途により種々の構成をとることが出来る。
【0027】
図3に示すように、走査線110を有するミアンダ構造102(以後単に走査線110ともいう)は、形状が不安定なので、上下から保護層(図2で示す3、4)で固定している。まず、走査線110を含むミアンダ構造を有機材料で形成された第1バッファー層40で覆う。その上を有機材料で形成された第1保護層50で覆う。基材10の下面には、有機材料で形成された第2バッファー層60が配置し、その下に有機材料で第2保護層70が形成されている。
【0028】
このように、走査線110を含むミアンダ構造は、不安定な形状であるが、上下からバッファー層40、60及び保護層50、70で固定されているので、形状を安定して保つことが出来る。ところで、本発明の電子装置は、フレキシブル電子装置であるから、外部からの引っ張り応力に対して、伸縮可能である必要がある。したがって、ポリイミドによるミアンダ構造を挟むバッファー層40、60及び保護層50、70は、ポリイミドよりも延伸しやすい材料、すなわち、ヤング率の小さい材料であることが望ましい。このような材料としては、たとえば、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコン等の樹脂が挙げられる。
【0029】
図5は、図3のC-C断面図であり、信号線120を有するミアンダ構造の断面図である。図5のミアンダ構造では、基材10の上に第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30が連続して形成され、パターニングされている。そして、第2有機絶縁膜30の上に信号線120が形成されている。実施例1においては、信号線120は、走査線110と同じ材料、すなわち、TAT(Ti-Al-Ti)構造を有しているが、フレキシブル電子装置の用途によって他の材料と変えてもよい。その他の構造は、図4で説明した走査線110部分の断面形状と同じである。
【0030】
図6は、素子領域101の平面図である。素子領域101も、外形はポリイミドで形成された基材10で規定されている。図6における素子領域101は菱形であるが、菱形の頂部は走査線110及び信号線120を有するミアンダ構造と接続しているので、概略8角形のような形となっている。図6においては、走査線110も信号線120も直線となっているが、図6よりも外側では、図3に示すようなミアンダ構造となっている。
【0031】
図6において、素子領域101に、素子100が配置している。素子100の外形は、菱形の頂部を切り欠いた概略8角形となっている。素子100の下を信号線120と走査線110が絶縁膜を挟んで交差している。ただし、図6は模式図であり、実際の装置では、走査線110、映像信号線120とも、素子100を駆動するトランジスタ等と接続する。
【0032】
図7図6のD-D断面図である。図7において、基材10の上に無機絶縁膜80が形成されている。無機絶縁膜80は、その上側に形成される素子100等に対して、下側から侵入するする不純物などをブロックする。図7では、無機絶縁膜80は基材10の上に形成されているが、これは例であり、必要に応じて、素子100に近い層に形成してもよい。
【0033】
無機絶縁膜80は、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)、あるいは、これらの積層膜で形成される。場合によっては、アルミニウム酸化膜(AlO)が使用される場合もある。無機絶縁膜80は剛性が高いが、素子領域101にのみ形成されているので、フレキシブル電子装置の伸縮性に対する影響は小さい。
【0034】
無機絶縁膜80を覆って第1有機絶縁膜20が、例えばポリイミドで形成されている。第1有機絶縁膜20の上に走査線110が横方向(x方向)に延在している。走査線110及び第1有機絶縁膜20を覆って、例えばポリイミドによって第2有機絶縁膜30が形成されている。第2有機絶縁膜30の上を信号線120がy方向に延在している。
【0035】
そして信号線120を覆って素子100が配置している。図7は模式図であり、素子100と走査線110、信号線120等の接続構造は省略されている。実際には、素子100としてどのようなものが使用されるかにもよるが、素子100と走査線110あるいは信号線120との間に薄膜トランジスタ(TFT)を配置し、TFTを走査線制御回路115、信号線制御回路125によって制御することによって、素子100からの信号、あるいは、素子100への信号を制御する場合が多い。
【0036】
図7において、素子100としてどのようなものを配置するかによって、図7における素子100と信号線120との間の配線構造は異なる。複数の有機または無機の絶縁膜が形成される可能性もある。しかし、図7等では、素子100の形成領域以外では、フレキシブル電子装置を伸縮容易とするために、映像信号線の上には、これらの絶縁膜は形成されていない。
【0037】
図6に示す平面構造は、図7における基材10から素子100までの断面構造に対応する。このままだと、平面形状は図3に示すようなものになり、不安定である。そこで、図4で説明したように、第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70を形成し、全体を平板状にまとめて形状を安定化している。また、図4で説明したように、第1バッファー層40、第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層70は、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30等よりも、ヤング率の小さい材料を使用しているので、フレキシブル電子装置の伸縮性を損なわない構成となっている。
【0038】
図8は、走査線領域102及び素子領域101を構成するポリイミドで形成された基材10の形状を示す平面図である。素子が配置される素子領域101は菱形に近い形状となっており、走査線110が配置される走査線領域102の、素子領域101に近い部分は直線111になっているが、大部分はミアンダ構造112となっており、フレキシブルに伸縮が可能な構成となっている。
【0039】
図9は、図8の構造を白矢印の方向に延伸した場合における問題点を示す平面図である。この場合、菱形である素子領域101と走査線110を有するミアンダ構造102(以後、単に、走査線110ともいう)の直線領域111つなぎ目部分Bに応力が集中する。さらに、素子領域101には、素子100や無機絶縁膜80等が存在するので、他の部分よりも剛性が高い。したがって、菱形である素子領域101と走査線の直線領域111つなぎ目部分Bには、さらに応力が集中しやすい。
【0040】
それでも、基材10等を構成するポリイミドのような樹脂は強度が高いので破断することは無いが、基材10の上を延在する、金属で形成された走査線110は、この部分において断線しやすい。この様子を図10に示す。図10は、フレキシブル電子装置を横方向(x方向)に引っ張った場合に、応力が大きい部分において、走査線110に破断BBが生ずることを示す平面図である。本発明は、このような走査線110の断線を防止する構成を与える与ものである。
【0041】
なお、図10では、フレキシブル電子装置を横方向(x方向)に延伸させた場合の例であるが、フレキシブル電子装置を縦方向(y方向)に延伸させれば、信号線120に対して同様な現象が生ずる。本発明は、信号120側の問題に対しても同様に適用できる。図11は、フレキシブル電子装置をy方向に延伸した場合に、大きなストレスが生ずる部分において、信号線に断線BBが生ずる状態を示す平面図である。
【0042】
図12及び図13は、以上の問題点を対策する実施例1の概略構成を示す平面図及び断面図である。図12は、比較例としての図8に対応する、本発明の平面図である。図12において、図8におけるミアンダ構造102は存在せず、素子領域101と素子領域101はワイヤボンディングによって接続されている。
【0043】
図12において、素子領域101は、基材10、第1絶縁膜20、走査線110で構成されている。図12では、ボンディングパッド等は省略されている。2個の素子領域101のx方向の距離はx11である。2個の素子領域101はワイヤボンディング90によって接続されている。ワイヤボンディング90は、ボンディングワイヤ91と、接続部92で構成されている。接続部92はボールボンディングでも、ウェッジボンディングも、接続し易い構成とすればよい。以後、接続部92及びボンディングワイヤ91を含めてワイヤボンディング90とも言う。
【0044】
図13は、図12のE-E断面図である。図13において、ワイヤボンディング90はz方向に撓んだ状態で接続されている。フレキシブル電子装置がx方向に延伸された場合に、ボンディングワイヤ91の撓み量がフレキシブルに変化することによって、ワイヤボンディング90の接続部92にストレスが発生することを防止するためである。
【0045】
図14は、フレキシブル電子装置がx方向に延伸した場合の平面図である。延伸した結果、2個の素子領域101の距離はx12となっている。x12は例えば、x11の1.5倍である。図15は、図14のF-F断面図である。図15において、ボンディングワイヤ91は、z方向の撓み量が小さくなるだけで、接続部に大きな応力が発生することは無い。ボンディングワイヤ91は太さが15μm乃至30μm程度なので、撓み量が変化しても応力の発生はわずかである。
【0046】
x方向に延伸したことによるストレスは、主として、例えば、図4に示す第1バッファー層40,第1保護層50、第2バッファー層60、第2保護層等70が受け持つ。したがって、走査線110やワイヤボンディング90にかかるストレスはわずかであり、断線は免れる。なお、比較例として説明した図3乃至図11で説明した構造において、素子100の間を接続する走査線110及び信号線120以外は、実施例1においても同様である。
【0047】
図16は実施例1の詳細平面図である。素子100及び基材10の素子領域101はマトリクス状に配置しているが、図16においては4個のみ記載されている。各素子領域101には、素子100の他、走査線110、信号線120等が形成されている。各走査線110、信号線120は、ワイヤボンディング90によって接続されている。
【0048】
図17は、図16のG-G断面図である。図17において、素子領域101は、基材10、第1有機絶縁膜20、走査線110、及び、第2有機絶縁膜30によって構成されている。2個の素子領域101の走査線110は、ワイヤボンディング90よって接続している。第2有機絶縁膜30は、端部において切り欠かれており、この部分で走査線110が露出し、この部分の走査線110の上にアルミニウムによりボンディングパッド95が形成されている。ボンディングワイヤ91には例えばアルミニウム使用される。ボンディングワイヤ91及びボンディングパッド95には、この他に、例えば銅あるいは金が使用される場合もある。
【0049】
図17において、ワイヤボンディング90、第2有機絶縁膜30等を覆って第1バッファー層40が形成される。第1バッファー層40は、ワイヤボンディングの撓みがフレキシブルに変化出来るように、柔らかい材料で形成される。つまり、基材10等を形成するポリイミドよりも延伸しやすい材料、すなわち、ヤング率の小さい材料であり、あるいは、硬度が小さい材料であることが望ましい。このような材料としては、たとえば、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコン等の樹脂が挙げられる。
【0050】
その他の構成は、図17においても、比較例において説明したのと同様である。すなわち、第1バッファー層40は第1保護層50で覆われており、素子領域101及び第1バッファー層40の下面には、第2バッファー層60が形成されている。第2バッファー層60の下には第2保護膜70が形成されている。
【0051】
図18は、図16のH-H断面図である。図18において、素子領域101は、基材10、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30及び信号線120によって構成されている。2個の素子領域102の信号線120はワイヤボンディング90によって接続している。信号線120は、第2有機絶縁膜30の上に形成されているので、第2有機絶縁膜30に切り欠き等を形成する必要は無い。信号線120の端部には、ワイヤボンディング90のためのボンディングパッド95が形成されている。図18におけるその他の構成は図17で説明したのと同じである。
【0052】
図17及び図18に示した構造において、フレキシブル電子装置がx方向あるいはy方向に延伸した場合、延伸する領域のほとんどは、素子領域101以外の領域が受け持つ。そして、素子領域101と素子領域101の間は、ワイヤボンディング90よるフレキシブル接続となっているので、配線に生ずる応力は極めて小さい。
【0053】
一方、素子領域101は面積が小さい上に、素子領域101は、強度の大きい、ポリイミドで形成されている。したがって、フレキシブル電子装置がx-y平面において延伸したとしても、素子領域101の歪は非常に小さく抑えることが出来る。素子領域101には、走査線110、信号線120の他、センサ等の素子、無機絶縁膜等が形成されるが、素子領域101の歪は小さく抑えられるので、これらの要素が破壊されることはない。したがって、伸縮可能なフレキシブル電子装置の信頼性を向上させることが出来る。
【0054】
図16乃至図18に示すフレキシブル電子装置は、例えば、互いに離間し、電気的に接続はされていない素子領域101をガラス基板200上に形成後に、ワイヤボンディング90で接続することで形成可能である。
【0055】
また、素子領域110に形成される素子100は、これを制御するための薄膜トランジスタ(TFT)等と同時に形成されることが多い。このような場合、第1有機絶縁膜20、第2有機絶縁膜30等は、これらの素子と同時に加工される。したがって、素子100の種類、及び素子100を制御するTFT等の構成によって、ワイヤボンディングが接続する走査線110が形成される第1有機絶縁膜20、及び、信号線120が形成される第2有機絶縁膜30の製造プロセスは異なってくる。
【0056】
図19は、本実施形態における各素子領域101の配置関係を示す平面図である。素子領域101のx方向の大きさx1は例えば100μm、y方向の大きさy1は例えば100μmである。また、素子領域101のx方向における中心間の距離x2は例えば250μm、y方向における中心間距離y2は例えば250μmである。一般的には、x2はx1の2倍以上、y2はy1の2倍以上である。
【0057】
図19で示した各素子領域101は、ワイヤボンディング90で接続後、第1バッファー層40及び第1保護層50によって覆われる。その後、ガラス基板200を剥離し、第2バッファー層60及び第2保護層70によって覆う。各素子領域101は、第1バッファー層40及び第1保護層50によって保持されているので、ガラス基板200を除去してもばらばらになることはない。ガラス基板200は、例えば、ガラス基板200と基材10及び第1バッファー層40との界面にレーザを照射することによって、剥離することが出来る。
【0058】
以上で説明したフレキシブル電子装置の断面構造は、本発明を説明するための例である。本発明は、上述した断面構造のみでなく、他の断面構造を有するフレキシブル電子装置にも適用することができる。
【0059】
また、走査線駆動回路115、信号線駆動回路125、電源回路130なども、図1の場合とは、配置が異なる場合がある。それにともなって、走査線110、信号線120が配置される層も、以上で説明した構成と異なってくるが、本発明は、同様に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1…フレキシブル電子装置、 2…素子層、 3…上保護層、 4…下保護層、 5…アクティブ領域、 6…端子領域、 10…基材、 20…第1有機絶縁膜、 30…第2有機絶縁膜、 40…第1バッファー層、 50…第1保護膜、 60…第2バッファー層、 70…第2保護膜、 80…無機絶縁膜、 90…ワイヤボンディング、 91…ボンディングワイヤ、 92…ボンディング部、 95…ボンディングパッド、 100…素子、 110…走査線、 115…走査線駆動回路、 120…信号線、 125…信号線駆動回路、 130…電源回路、 150…フレキシブル配線基板、 200…ガラス基板
図1
図2
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図5
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図19