(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161718
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】PDE4阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/644 20150101AFI20231031BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231031BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231031BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231031BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231031BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231031BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231031BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231031BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231031BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231031BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231031BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231031BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20231031BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20231031BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231031BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231031BHJP
A23L 21/20 20160101ALN20231031BHJP
【FI】
A61K35/644
A61P25/16
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A61P25/18
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A61P25/28
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A61P17/00
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A61P37/08
A61K31/352
A61K8/98
A61Q19/00
A23L33/10
A23L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072227
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邊 浩史
(72)【発明者】
【氏名】谷 央子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD07
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4C086ZC20
4C087AA01
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4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC20
(57)【要約】
【課題】プロポリスを含むPDE4阻害剤を提供する。
【解決手段】ブラジル連邦共和国バイーア州産プロポリスを含むPDE4阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラジル連邦共和国バイーア州産プロポリスを含むPDE4阻害剤。
【請求項2】
前記プロポリスが、3-O-メチルケルセチン又はその塩、並びに3,6-ジメトキシアピゲニン又はその塩及び6-メトキシアピゲニン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のPDE4阻害剤。
【請求項3】
認知症、パーキンソン病、炎症性疾患、精神疾患、及び腫瘍疾患からなる群から選択される少なくとも1種の改善又は予防用である、請求項1又は2に記載のPDE4阻害剤。
【請求項4】
前記炎症性疾患が、呼吸器系炎症疾患、皮膚炎症疾患、間質性肺炎、及びリウマチからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のPDE4阻害剤。
【請求項5】
前記精神疾患が、うつ病、記憶障害、及び統合失調症からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のPDE4阻害剤。
【請求項6】
前記腫瘍疾患が、大腸がん及び/又は急性リンパ性白血病である、請求項3に記載のPDE4阻害剤。
【請求項7】
前記呼吸器系炎症疾患が、喘息及び/又は慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)である、請求項4に記載のPDE4阻害剤。
【請求項8】
前記皮膚炎症疾患が、乾癬及び/又はアトピー性皮膚炎である、請求項4に記載のPDE4阻害剤。
【請求項9】
化粧品、飲食品、医薬品又は医薬部外品である、請求項1又は2に記載のPDE4阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDE(phosphodiesterase:ホスホジエステラーゼ)4阻害剤に関し、より具体的には、プロポリスを含むPDE4阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホジエステラーゼ(PDE)とは、リン酸ジエステルを加水分解してリン酸モノエステルとする酵素の総称であり、11種類のPDE(PDE1~PDE11)が存在する。
【0003】
PDEは、細胞内の情報伝達の役目を果たす物質(セカンドメッセンジャー)を分解して不活性化する。このセカンドメッセンジャーの分解を防ぐことによって、様々な疾病に有効であると考えられており、PDEを抑制するための阻害剤(薬)が開発されている。その中で、PDE4はcAMP(環状アデノシン一リン酸)を分解してAMPを生成させる。PDE4は多くの炎症性細胞、免疫細胞、中枢神経などに存在し、炎症を引きおこす物質の産生と関わっている。
【0004】
PDE4が多く存在すると免疫バランスの異常等が生じ、炎症がおこるので、PDE4阻害剤は、PDE4の働きをおさえることで、身体の中の乱れたバランスを整え、炎症を抑える効果があることが報告されている。そのため、PDE4阻害剤について、慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)、関節リウマチなどの治療に関して研究が行われている。PDE4阻害剤は、現在、乾癬やアトピー性皮膚炎の治療薬として使用されている。
【0005】
さらに、PDE4阻害剤は、認知向上作用、神経保護作用なども有することが知られており、うつ病、記憶障害、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病などの中枢神経系疾患などの治療に関して研究がなされている。
【0006】
PDE4阻害活性を有する化合物について、非特許文献1などで報告されている。そして、非特許文献1では、3-O-メチルケルセチン(3-O-Methylquercetin)が選択的、競合的にPDE4を阻害すること、及びその阻害作用は強力ではないことが報告されている。
【0007】
プロポリスはミツバチにより集められた樹木の樹液、植物の新芽や浸出物などがミツロウ等と混ざり合ってできた膠状の物質であり、抗菌作用、抗酸化作用などが知られている。天然の抗菌物質を含有するプロポリスは、健康食品などに利用されている。
【0008】
プロポリスの成分は、その材料となる起源植物の種類や配合率に影響されるため、採取された国又は地域によって、プロポリスに含まれる有効成分の種類や含有量とその生理活性が全く異なることが知られている。
【0009】
近年産地別プロポリスの含有成分に関する研究が進められている。例えば、バッカリスドラクンクリフォリアを主要な起源植物とするブラジル産プロポリスの主成分としては、p-クマル酸、アルテピリンC、ドルパニン、バッカリン等の桂皮酸誘導体が検出される。一方、ポプラを起源植物とする中国産、ヨーロッパ産及びオーストラリア産のプロポリスの主成分としては、クリシン、ガランギンなどのフラボノイド類が検出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Planta Med. 2003 Apr;69(4):310-5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、プロポリスを含むPDE4阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
プロポリスはミツバチが採取する植物を原料とするため、産地によって成分の違いが見られることから、産地により効果は異なることが予想される。そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ブラジル連邦共和国バイーア州(Estado da Bahia)産プロポリス(以下、バイーア州産プロポリスと略記することもある)には3-O-メチルケルセチンと3,6-ジメトキシアピゲニン(3,6-dimethoxyapigenin)と6-メトキシアピゲニン(6-methoxyapigenin)の3成分が含まれていること、3-O-メチルケルセチンと3,6-ジメトキシアピゲニンの2つの成分、あるいは3-O-メチルケルセチンと3,6-ジメトキシアピゲニンと6-メトキシアピゲニンの3つの成分を組み合わせることでPDE4阻害活性について相乗作用が得られるという知見を得た。
【0013】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下のPDE4阻害剤を提供するものである。
【0014】
項1.ブラジル連邦共和国バイーア州産プロポリスを含むPDE4阻害剤。
項2.前記プロポリスが、3-O-メチルケルセチン又はその塩、並びに3,6-ジメトキシアピゲニン又はその塩及び6-メトキシアピゲニン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、項1に記載のPDE4阻害剤。
項3.認知症、パーキンソン病、炎症性疾患、精神疾患、及び腫瘍疾患からなる群から選択される少なくとも1種の改善又は予防用である、項1又は2に記載のPDE4阻害剤。
項4.前記炎症性疾患が、呼吸器系炎症疾患、皮膚炎症疾患、間質性肺炎、及びリウマチからなる群から選択される少なくとも1種である、項3に記載のPDE4阻害剤。
項5.前記精神疾患が、うつ病、記憶障害、及び統合失調症からなる群から選択される少なくとも1種である、項3に記載のPDE4阻害剤。
項6.前記腫瘍疾患が、大腸がん及び/又は急性リンパ性白血病である、項3に記載のPDE4阻害剤。
項7.前記呼吸器系炎症疾患が、喘息及び/又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、項4に記載のPDE4阻害剤。
項8.前記皮膚炎症疾患が、乾癬及び/又はアトピー性皮膚炎である、項4に記載のPDE4阻害剤。
項9.化粧品、飲食品、医薬品又は医薬部外品である、項1~8のいずれか一項に記載のPDE4阻害剤。
【発明の効果】
【0015】
バイーア州産プロポリスは、優れたPDE4阻害作用を有しているので、PDE4阻害剤の有効成分として有用である。
【0016】
また、プロポリスは、天然由来の成分であるため、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】バイーア州産プロポリス50μg/mL当量でのPDE4阻害率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0020】
本発明のPDE4阻害剤は、バイーア州産プロポリスを含むことを特徴とする。
【0021】
プロポリスとは、ミツバチの巣の巣壁を構成する樹脂状又は蝋状の物質であり、ミツバチが採取してきた植物の新芽や樹脂と蜂の唾液を混ぜ合わせてできた物質である。本発明においてプロポリスは、バイーア州産のものを使用する。また、バイーア州産プロポリスに加えて、中国、ヨーロッパ諸国、オセアニア、アメリカなどの他の産地のプロポリスを組み合わせて使用してもよい。
【0022】
バイーア州産プロポリスとしては、バイーア州で採取されたものであれば特に限定されない。中でも、バイーア州産プロポリスとしては、3-O-メチルケルセチン又はその塩、並びに3,6-ジメトキシアピゲニン又はその塩及び6-メトキシアピゲニン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましく、3-O-メチルケルセチン又はその塩、3,6-ジメトキシアピゲニン又はその塩、及び6-メトキシアピゲニン又はその塩を含有するものがより好ましい。3-O-メチルケルセチン、3,6-ジメトキシアピゲニン、及び6-メトキシアピゲニンは、それぞれ下記構造式で示される化合物である。
【0023】
【0024】
3-O-メチルケルセチン、3,6-ジメトキシアピゲニン、及び6-メトキシアピゲニンの塩としては、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。また、本発明における3-O-メチルケルセチン、3,6-ジメトキシアピゲニン、及び6-メトキシアピゲニン及びそれらの塩には、その水和物、溶媒和物、結晶多形なども含まれる。
【0025】
本発明におけるプロポリスには、例えば、プロポリス原塊、その粉砕物、超臨界抽出物、水及び/又は親水性有機溶媒による抽出物などが含まれる。中でも水及び/又は親水性有機溶媒による抽出物、超臨界抽出物などの抽出物が好ましく、水及び/又は親水性有機溶媒による抽出物がより好ましい。水及び/又は親水性有機溶媒抽出物は、プロポリスの成分が短時間で効率的に、バランスよく抽出されたものであり、またスケールアップをする場合に大規模な設備が不要であるので好ましい。プロポリスの抽出物には、3-O-メチルケルセチン又はその塩、並びに3,6-ジメトキシアピゲニン又はその塩及び6-メトキシアピゲニン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種が含有されていることが好ましく、3-O-メチルケルセチン又はその塩、3,6-ジメトキシアピゲニン又はその塩、及び6-メトキシアピゲニン又はその塩が含有されていることがより好ましい。
【0026】
親水性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノールなどの低級アルコール、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、グリセリン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、プロピオン酸、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、低級アルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0027】
これらの抽出溶媒は1種で使用することができるし、また2種以上を任意に組み合わせて混合液として用いることもできる。好ましくは、水、低級アルコール(好ましくはエタノール)又はこれらの混合液(含水アルコール、好ましくは含水エタノール)である。抽出溶媒として含水アルコール(好ましくは含水エタノール)を使用する場合、アルコール濃度としては、制限されないものの、50~100容量%、特に70~100容量%を好適に挙げることができる。
【0028】
抽出には、プロポリス原塊、アルコール洗浄したプロポリス原塊などを使用することができ、適当な大きさに切断又は粉砕したプロポリス原塊を使用することで抽出効率を向上させることができる。抽出溶媒の使用容量は、プロポリス原塊の質量に対して、例えば、1~20倍量、好ましくは2~10倍量である。
【0029】
抽出は、溶媒にプロポリスを加え、例えば、0℃~溶媒が沸騰する温度(通常100℃以下の温度)、好ましくは2~40℃で行うことができる。抽出は、上記温度で、所定の時間(例えば、1時間以上)、撹拌しながら又は静置して行うことができる。抽出後には、不溶物を除去するためのろ過などの処理を行い、抽出物を得ることができる。
【0030】
斯くして得られた溶媒抽出物は、そのままでも使用でき、必要に応じて、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、透析法、これらの組合せなどにより、有効成分の含有率を高めるために精製を更に行い得る。
【0031】
また、溶媒抽出物は、濃縮、及び凍結乾燥、スプレードライ等による乾燥処理を行うこともできる。ここで、濃縮、凍結乾燥及びスプレードライは、常法に従って行うことができる。本発明におけるプロポリスの抽出物には、このような抽出物を粉末化した粉末、該粉末を造粒した顆粒形態なども含まれる。
【0032】
本発明のPDE4阻害剤中には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外の公知の成分を適宜配合することができる。
【0033】
本発明のPDE4阻害剤中のプロポリスの含量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されず、最終形態等に応じて適宜調整することができPDE4阻害剤中の、固形分全量に対して、例えば、0.00001質量%以上、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下であってもよい。
【0034】
また、プロポリスは、PDE4を阻害するために定期的に適用されることが好ましく、一日一回又は数回に分けて適用されることが特に好ましい。特に限定されるものではないが、固形分で、例えば、体重60kgの成人一日当たり1μg~1,000mgの用量で用いることができ、9μg~300mgの用量で用いることが好ましく、18μg~100mgの用量で用いることがより好ましい。用量は、投与される人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0035】
本発明のPDE4阻害剤は、化粧品、飲食品(特に、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品(例えば、健康食品、機能性食品、栄養組成物(nutritional composition)、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品))、医薬部外品、医薬品などとして使用することができる。また、本発明のPDE4阻害剤は、PDE4阻害作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0036】
上記の化粧品には、上記プロポリス以外に、通常化粧品に用いられる成分、例えば、殺菌剤、保存剤、界面活性剤、アルコール類、水性成分、水、着色剤、pH調整剤、溶解補助剤、研磨剤、発泡剤、酵素、香味剤、キレート剤、賦形剤、増粘剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤、油剤、清掃剤(乳酸菌)等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0037】
化粧品には、動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等に適用されるあらゆる化粧品が含まれる。
【0038】
化粧品の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。
【0039】
化粧品の用途も任意であり、例えば、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク等が挙げられ、メークアップ化粧品であれば、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等が挙げられ、ネイル化粧料であれば、マニキュア、ベースコート、トップコート、除光液等が挙げられ、その他、洗顔料、(練又は液体)歯磨剤、マウスウォッシュ、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、ヘアートニック剤、育毛剤、制汗剤、入浴剤等が挙げられる。
【0040】
上記の飲食品には、上記プロポリスをそのまま使用することもでき、必要に応じて、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定剤、ゲル化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することもできる。
【0041】
飲食品には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれる。飲食品の種類は、特に限定されず、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、グミ、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0042】
飲食品の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
【0043】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択でき、例えば、チュアブル、トローチなどの錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤、シロップ、ペースト、ドリンク、グミ等が挙げられる。
【0044】
上記の医薬品には、上記プロポリスのみを使用することもでき、ビタミン、生薬など日本薬局方に記載の他の医薬成分と混合して使用することもできる。
【0045】
本発明のPDE4阻害剤を、医薬品として調製する場合、上記プロポリスを、医薬品において許容される成分とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液や電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)などの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。
【0046】
医薬品の投与は、局所的であってもよく、全身的であってもよい。投与方法には特に制限はなく、経口的又は非経口的に投与される。非経口的投与経路としては、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内若しくは動脈内への投与、経皮的投与等が挙げられる。
【0047】
本発明の医薬品には、プロポリス以外にも、必要に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、懸濁化剤、増粘剤、抗酸化剤、吸収促進剤、pH調整剤、保存剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤、甘味剤、矯味剤、香料等の薬学的に許容される成分を適宜配合することができる。
【0048】
なお、本発明の化粧品及び医薬品には、医薬部外品も包含される。
【0049】
以上説明した本発明のPDE4阻害剤は、ヒトを含む哺乳動物(好ましくはヒト)に対して適用されるものである。
【0050】
本発明のPDE4阻害剤が有効成分として含有するバイーア州産プロポリスは、後述する実施例で示されているように、PDE4阻害活性を有しているので、PDE4阻害剤の有効成分として有用である。
【0051】
本発明のPDE4阻害剤は、PDE4が多く存在することにより引き起こされる様々な変調、障害及び疾患等の治療、改善、予防用に使用することができる。このような変調、障害及び疾患等としては、例えば、認知症(アルツハイマー病等)、パーキンソン病、呼吸器系炎症疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等)、皮膚炎症疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎等)、間質性肺炎、リウマチなどの炎症性疾患、精神疾患(うつ病、記憶障害、統合失調症等)、腫瘍疾患(大腸がん、急性リンパ性白血病等)が挙げられる。
【0052】
また、本発明のPDE4阻害剤は、天然由来の成分を有効成分とするため安全性が高い。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0054】
試験例
<サンプルの成分の特定>
株式会社山田養蜂場より提供のバイーア州産プロポリスを含水エタノールで抽出し、HPLC及びLC-MSにて成分の分析を行った。また、当該含水エタノール抽出物を以下のPDE4阻害活性の測定にも使用した。
【0055】
その結果、バイーア州産プロポリスの成分として以下の化合物を特定することができた。特定できた成分については標品を購入し、以下の活性試験を実施した。
・3-O-メチルケルセチン:C16H12O7
・3,6-ジメトキシアピゲニン:C17H14O7
・6-メトキシアピゲニン:C16H12O6
また、バイーア州産プロポリス中の各成分の定量値は以下の通りであった。
・3-O-メチルケルセチン:1.6質量%
・3,6-ジメトキシアピゲニン:3.2質量%
・6-メトキシアピゲニン:5.8質量%
【0056】
<PDE4阻害活性の測定>
PDE4B Assay Kit(BPS Bioscience)を用いて各種素材のPDE4阻害活性を蛍光偏光にて評価した。手順はキット付属の取り扱い説明書に準拠して実施したが、384穴プレート用に容量をカスタマイズし評価した。陽性対照(ポジティブコントロール)としてロリプラム(Rolipram)を用いた(IC50 2μg/mL)。
【0057】
バイーア州産プロポリス(BPP)のPDE4阻害活性と各成分単独又はそれらの組み合わせのPDE4阻害活性について表1及び
図1に示す(BPP 50μg/mL当量での比較)。表1の結果から、主要な活性成分は3-O-メチルケルセチンであった。
【0058】
【0059】
・バイーア州産プロポリス:BPP
・3-O-メチルケルセチン:3O
・3,6-ジメトキシアピゲニン:3,6DI
・6-メトキシアピゲニン:6M