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特開2023-161720対物レンズ、及び、対物レンズの組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161720
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】対物レンズ、及び、対物レンズの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20231031BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072231
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 明日佳
(72)【発明者】
【氏名】堀場 大輝
(72)【発明者】
【氏名】李 政
(72)【発明者】
【氏名】山下 日出人
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AJ04
(57)【要約】
【課題】組み立て工程における応力集中に起因する対物レンズの光学性能劣化を抑制する。
【解決手段】対物レンズは、胴部材と、胴部材内で対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組と、胴部材に螺合する押さえ環140を備える。複数のレンズ部組の各々はレンズとレンズを保持するレンズ枠を含む。押さえ環140は、対物レンズの光軸方向に沿って複数のレンズ部組を胴部材に押し付ける。押さえ環140は、胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部(凹部141、凹部142、凹部143)を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズであって、
胴部材と、
前記胴部材内で前記対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組であって、前記複数のレンズ部組の各々はレンズと前記レンズを保持するレンズ枠を含む前記複数のレンズ部組と、
前記胴部材に螺合するネジ部材であって、前記対物レンズの前記光軸方向に沿って前記複数のレンズ部組を前記胴部材に押し付ける前記ネジ部材と、を備え、
前記ネジ部材は、前記胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部を有する
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズにおいて、
前記ネジ部材は、円環形状を有し、
前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、3の倍数個の凹部を含む
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の対物レンズにおいて、
前記ネジ部材は、円環形状を有し、
前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、4以上の偶数個の凹部を含む
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項4】
請求項1に記載の対物レンズにおいて、
前記複数のレンズ部組に含まれる複数のレンズ枠のうちの少なくとも1つのレンズ枠は、他のレンズ枠又は前記ネジ部材と接する端面上に設けられた突起を有する
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項5】
請求項2に記載の対物レンズにおいて、
前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、6個以上の3の倍数個の凹部を含み、
前記複数のレンズ部組に含まれる複数のレンズ枠のうちの少なくとも1つのレンズ枠は、
円環形状を有し、
他のレンズ枠又は前記ネジ部材と接する端面上に、前記少なくとも1つのレンズ枠の周方向に等間隔に設けられた3個の突起を有する
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項6】
請求項3に記載の対物レンズにおいて、
前記複数のレンズ部組に含まれる複数のレンズ枠のうちの少なくとも1つのレンズ枠は、
円環形状を有し、
他のレンズ枠又は前記ネジ部材と接する端面上に、前記少なくとも1つのレンズ枠の周方向に等間隔に設けられた2個の突起を有する
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の対物レンズにおいて、
前記複数のレンズは、以下の条件式を満たす少なくとも1つの単レンズを含む
ことを特徴とする対物レンズ。
0<tmin/φ<0.12
但し、tminは、前記少なくとも1つの単レンズの最薄部の前記光軸方向の厚さである。φは、前記少なくとも1つの単レンズの外径である。
【請求項8】
請求項2に記載の対物レンズの組み立て方法であって、
(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた6個以上の3の倍数個の凹部から、治具が有する3個の突起を嵌合する3個の凹部のセットを選択することと、
(b)(a)で選択した前記3個の凹部のセットに前記3個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、
(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、
(d)(a)から(c)を少なくとも1回繰り返すことと、
(e)少なくとも2回行われた(c)で測定された前記光学性能に基づいて、各々が(a)で選択した前記3個の凹部のセットである複数のセットから、1つのセットを決定することと、
(f)(e)で決定した前記1つのセットに含まれる前記3個の凹部に前記3個の突起を嵌合した前記治具で、前記ネジ部材を前記胴部材に螺合すること、を含む
ことを特徴とする対物レンズの組み立て方法。
【請求項9】
請求項3に記載の対物レンズの組み立て方法であって、
(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた4以上の偶数個の凹部から、治具が有する2個の突起を嵌合する2個の凹部のセットを選択することと、
(b)(a)で選択した前記2個の凹部のセットに前記2個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、
(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、
(d)(a)から(c)を少なくとも1回繰り返すことと、
(e)少なくとも2回行われた(c)で測定された前記光学性能に基づいて、各々が(a)で選択した前記2個の凹部のセットである複数のセットから、1つのセットを決定することと、
(f)(e)で決定した前記1つのセットに含まれる前記2個の凹部に前記2個の突起を嵌合した前記治具で、前記ネジ部材を前記胴部材に螺合すること、を含む
ことを特徴とする対物レンズの組み立て方法。
【請求項10】
請求項2に記載の対物レンズの組み立て方法であって、
(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた6個以上の3の倍数個の凹部から、治具が有する3個の突起を嵌合する3個の凹部のセットを選択することと、
(b)(a)で選択した前記3個の凹部のセットに前記3個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、
(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、
(d)(c)で測定された前記光学性能に基づいて、前記対物レンズが所定の光学性能を満たすかどうか判定することと、
(e)(d)で前記所定の光学性能を満たさないと判定した場合は、前記3個の凹部のセットとは別の3個の凹部のセットを選択して、(b)、(c)、(d)を繰り返すことと、を含む
ことを特徴とする対物レンズの組み立て方法。
【請求項11】
請求項3に記載の対物レンズの組み立て方法であって、
(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた4以上の偶数個の凹部から、治具が有する2個の突起を嵌合する2個の凹部のセットを選択することと、
(b)(a)で選択した前記3個の凹部のセットに前記2個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、
(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、
(d)(c)で測定された前記光学性能に基づいて、前記対物レンズが所定の光学性能を満たすかどうか判定することと、
(e)(d)で前記所定の光学性能を満たさないと判定した場合は、前記2個の凹部のセットとは別の2の凹部のセットを選択して、(b)、(c)、(d)を繰り返すことと、を含む
ことを特徴とする対物レンズの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、対物レンズ、及び、対物レンズの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対物レンズでは、多数のレンズが筒状の胴部材内に収容されている。胴部材内におけるレンズの保持方法としては、多くの場合、レンズが固定された複数のレンズ枠の端面が互いに接触するように複数のレンズ枠を配置し、それらの複数のレンズ枠にスラスト方向に両側から力を加える形態が、採用されている。
【0003】
このスラスト方向に加わる力は、胴部材に切られたネジ山に押さえ環と呼ばれるネジ部材を螺合して、その押さえ環がレンズ枠をスラスト方向へ押さえつけることで発生させるのが一般的である。このようなレンズ保持方法は、例えば、特許文献1などに記載されている。この方法によれば、レンズ枠の端面間での不均一な接触を抑制してレンズ間隔を適正に維持するとともに、レンズ枠の端面間に十分な摩擦力を発生させてレンズの径方向への移動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-060936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術の対物レンズでは、押さえ環に設けられたカニメ穴やスリワリと呼ばれる2箇所の凹部に治具を嵌合し回転させることによって押さえ環を胴部材に螺合する。押さえ環の螺合時にはその凹部にスラスト方向の圧力が集中することになるため、押さえ環が回転非対称な形状に変形してしまうことがある。
【0006】
このような押さえ環の変形は、レンズ枠の変形を引き起し、その影響はレンズ枠に保持されているレンズにまで及んでしまう。その結果、例えば、レンズ枠とともにレンズが変形することによって収差が増大してしまう、レンズの応力性複屈折が増大することによって偏光特性が悪化してしまうなど、対物レンズの光学性能が劣化してしまう。なお、このような性能劣化は、コンパクトで高い光学性能を実現するために、フチ肉または中肉の薄いレンズを多用した場合に特に生じやすい。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、組み立て工程における応力集中に起因する対物レンズの光学性能劣化を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る対物レンズは、胴部材と、前記胴部材内で前記対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組であって、前記複数のレンズ部組の各々はレンズと前記レンズを保持するレンズ枠を含む前記複数のレンズ部組と、前記胴部材に螺合するネジ部材であって、前記対物レンズの光軸方向に沿って前記複数のレンズ部組を前記胴部材に押し付ける前記ネジ部材と、を備え、前記ネジ部材は、前記胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る対物レンズの組み立て方法は、(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた3個以上の凹部から、治具が有する3個の突起を嵌合する3個の凹部のセットを選択することと、(b)(a)で選択した前記3個の凹部のセットに前記3個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、(d)(a)から(c)を少なくとも1回繰り返すことと、(e)少なくとも2回行われた(c)で測定された前記光学性能に基づいて、各々が(a)で選択した前記3個の凹部のセットである複数のセットから、1つのセットを決定することと、(f)(e)で決定した前記1つのセットに含まれる前記3個の凹部に前記3個の突起を嵌合した前記治具で、前記ネジ部材を前記胴部材に螺合すること、を含む。前記対物レンズは、胴部材と、前記胴部材内で前記対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組であって、前記複数のレンズ部組の各々はレンズと前記レンズを保持するレンズ枠を含む前記複数のレンズ部組と、前記胴部材に螺合するネジ部材であって、前記対物レンズの光軸方向に沿って前記複数のレンズ部組を前記胴部材に押し付ける前記ネジ部材と、を備え、前記ネジ部材は、前記胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部を有する。前記ネジ部材は、円環形状を有し、前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、3の倍数個の凹部を含む。
【0010】
本発明の別の態様に係る対物レンズの組み立て方法は、(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた4以上の偶数個の凹部から、治具が有する2個の突起を嵌合する2個の凹部のセットを選択することと、(b)(a)で選択した前記2個の凹部のセットに前記2個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、(d)(a)から(c)を少なくとも1回繰り返すことと、(e)少なくとも2回行われた(c)で測定された前記光学性能に基づいて、各々が(a)で選択した前記2個の凹部のセットである複数のセットから、1つのセットを決定することと、(f)(e)で決定した前記1つのセットに含まれる前記2個の凹部に前記2個の突起を嵌合した前記治具で、前記ネジ部材を前記胴部材に螺合すること、を含む。前記対物レンズは、胴部材と、前記胴部材内で前記対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組であって、前記複数のレンズ部組の各々はレンズと前記レンズを保持するレンズ枠を含む前記複数のレンズ部組と、前記胴部材に螺合するネジ部材であって、前記対物レンズの光軸方向に沿って前記複数のレンズ部組を前記胴部材に押し付ける前記ネジ部材と、を備え、前記ネジ部材は、前記胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部を有する。前記ネジ部材は、円環形状を有し、前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、4以上の偶数個の凹部を含む。
【0011】
本発明の更に別の態様に係る対物レンズの組み立て方法は、(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた6個以上の3の倍数個の凹部から、治具が有する3個の突起を嵌合する3個の凹部のセットを選択することと、(b)(a)で選択した前記3個の凹部のセットに前記3個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、(d)(c)で測定された前記光学性能に基づいて、前記対物レンズが所定の光学性能を満たすかどうか判定することと、(e)(d)で前記所定の光学性能を満たさないと判定した場合は、前記3個の凹部のセットとは別の3個の凹部のセットを選択して、(b)、(c)、(d)を繰り返すことと、を含む。前記対物レンズは、胴部材と、前記胴部材内で前記対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組であって、前記複数のレンズ部組の各々はレンズと前記レンズを保持するレンズ枠を含む前記複数のレンズ部組と、前記胴部材に螺合するネジ部材であって、前記対物レンズの光軸方向に沿って前記複数のレンズ部組を前記胴部材に押し付ける前記ネジ部材と、を備え、前記ネジ部材は、前記胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部を有する。前記ネジ部材は、円環形状を有し、前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、3の倍数個の凹部を含む。
【0012】
本発明の更に別の態様に係る対物レンズの組み立て方法は、(a)前記対物レンズに含まれるネジ部材に等間隔に設けられた4以上の偶数個の凹部から、治具が有する2個の突起を嵌合する2個の凹部のセットを選択することと、(b)(a)で選択した前記3個の凹部のセットに前記2個の突起を嵌合した前記治具で前記ネジ部材を前記対物レンズに含まれる胴部材に螺合することと、(c)(b)の後で前記対物レンズの光学性能を測定することと、(d)(c)で測定された前記光学性能に基づいて、前記対物レンズが所定の光学性能を満たすかどうか判定することと、(e)(d)で前記所定の光学性能を満たさないと判定した場合は、前記2個の凹部のセットとは別の2の凹部のセットを選択して、(b)、(c)、(d)を繰り返すことと、を含む。前記対物レンズは、胴部材と、前記胴部材内で前記対物レンズの光軸方向に積層された複数のレンズ部組であって、前記複数のレンズ部組の各々はレンズと前記レンズを保持するレンズ枠を含む前記複数のレンズ部組と、前記胴部材に螺合するネジ部材であって、前記対物レンズの光軸方向に沿って前記複数のレンズ部組を前記胴部材に押し付ける前記ネジ部材と、を備え、前記ネジ部材は、前記胴部材に螺合するときに治具を嵌合する3個以上の凹部を有する。前記ネジ部材は、円環形状を有し、前記3個以上の凹部は、前記ネジ部材の周方向に等間隔に設けられた、4以上の偶数個の凹部を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記の態様によれば、組み立て工程における応力集中に起因する対物レンズの光学性能劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る対物レンズの断面図である。
図2図1に示す対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。
図3図2に示す押さえ環を対物レンズに取り付けるための治具の構成を説明するための図である。
図4】第2の実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。
図5】第2の実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ枠の端面に生じる凹凸パターンの一例を示した図である。
図6図4に示す押さえ環の凹部の選択例を示した図である。
図7】第3の実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ枠の斜視図である。
図8】第4の実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。
図9】第5の実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ枠の斜視図である。
図10】第6の実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ群の断面図である。
図11】第7の実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ群の断面図である。
図12】第8の実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。
図13】第9の実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。
図14】第10の実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。
図15】第11の実施形態に係る対物レンズの組み立て手順を示すフローチャートである。
図16】第12の実施形態に係る対物レンズの組み立て手順を示すフローチャートである。
図17】第13の実施形態に係る対物レンズの断面図である。
図18】第14の実施形態に係る対物レンズの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る対物レンズ100の断面図である。図2は、図1に示す対物レンズ100に含まれる押さえ環140の正面図である。図3は、図2に示す押さえ環140を対物レンズ100に取り付けるための治具10の構成を説明するための図である。なお、図1には、対物レンズ100の光軸に沿った面における対物レンズ100の断面が示されている。図1に示される対物レンズ100は、顕微鏡用の対物レンズであり、特に限定しないが、例えば、結像レンズと組み合わせて試料の拡大像を形成する無限遠補正型の対物レンズである。以下、図1から図3を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズ100について説明する。
【0016】
対物レンズ100は、図1に示すように、胴部材110と、複数のレンズ部組(レンズ部組131、レンズ部組132、レンズ部組133、レンズ部組134、レンズ部組135、レンズ部組136、レンズ部組137、レンズ部組138、レンズ部組139)と、押さえ環140を備える。
【0017】
胴部材110は、円筒形状を有する筒部材であり、内部に複数のレンズ部組を収容する。円筒形状の胴部材110の中心軸に沿った方向(以降、単に胴部材110の軸方向と記す)は、対物レンズ100の光軸方向とおよそ一致している。胴部材110の材料は、特に限定しないが、例えば、真鍮である。胴部材110は、外側表面に、ネジ山が形成された螺合部111を有している。螺合部111が顕微鏡のレボルバに螺合することで、対物レンズ100が顕微鏡に固定される。なお、対物レンズ100と顕微鏡の間を接続する方法は、螺合に限らず、他の方法で接続されてもよい。
【0018】
各レンズ部組は、レンズ(レンズL1とレンズL2からなる接合レンズCL1、レンズL3、レンズL4、レンズL5とレンズL6とレンズL7からなる接合レンズCL2、レンズL8とレンズL9とレンズL10からなる接合レンズCL3、レンズL11、レンズL12とレンズL13からなる接合レンズCL4、レンズL14、レンズL15)と、レンズを保持するレンズ枠(レンズ枠121、レンズ枠122、レンズ枠123、レンズ枠124、レンズ枠125、レンズ枠126、レンズ枠127、レンズ枠128、レンズ枠129)を含む。
【0019】
レンズの部材は、特に限定しないが、例えば、光学ガラスである。レンズ枠は、円環形状を有し、胴部材110の内側表面に沿って胴部材110の内部に挿入されることで、胴部材110に嵌合する。レンズ枠の部材は、特に限定しないが、例えば、真鍮である。レンズとレンズ枠は、図示しない接着剤によって互いに接着されている。なお、各レンズ部組に含まれるレンズは、例えばレンズL3のような単レンズであってもよく、接合レンズCL1のような複数のレンズ(レンズL1、レンズL2)が接合されたレンズであってもよい。なお、単レンズとは、他のレンズとは接合されずに光学系に配置されるレンズのことをいう。
【0020】
複数のレンズ部組は、胴部材110内において胴部材110の軸方向、即ち、対物レンズ100の光軸方向、に積層して配置され、押さえ環140によって胴部材110内に固定される。より詳細には、複数のレンズ部組に含まれる複数のレンズ枠が互いに端面で接することで、複数のレンズ部組が光軸方向に積層して配置される。
【0021】
押さえ環140は、胴部材110に螺合するネジ部材である。押さえ環140の材料は、特に限定しないが、例えば、真鍮である。押さえ環140は、胴部材110の内側面に形成されたネジ山に螺合することで、対物レンズ100の光軸方向に沿って複数のレンズ部組を胴部材110(より具体的には、胴部材110の物体側端部近傍に形成された像側に向けられた当て付け面110a)に押し付ける。胴部材110に螺合した押さえ環140が複数のレンズ部組(より具体的には、複数のレンズ枠)を押圧することで、複数のレンズ部組が押さえ環140と当て付け面110aに狭持され、その結果、複数のレンズ部組が胴部材110内でしっかりと固定される。
【0022】
このように、対物レンズ100では、複数のレンズ部組は、複数のレンズ部組間に隙間が生じないように押さえ環140によって光軸方向に押し付けられることで、押さえ環140と胴部材110に挟持されて固定される。従って、レンズ部組を胴部材110内で固定するためには、対物レンズ100の組み立て工程において、押さえ環140は、胴部材110にしっかりと螺合される必要がある。
【0023】
ところで、対物レンズ100の組み立て作業において、押さえ環140は対物レンズ100の光軸方向に沿って(この例では、像側から)胴部材110の内部に挿入され、その結果、押さえ環140の外周部分は胴部材110の内側表面に覆われることになる。このため、押さえ環140を胴部材110に螺合するために用いられる治具は、外周部分が胴部材110に覆われた押さえ環140に光軸方向に沿った方向から作用して、その押さえ環140にトルクを加えることにより、スラスト方向の力を加えなければならない。
【0024】
従来の対物レンズでは、押さえ環の、対物レンズから露出する側の端面の2箇所に凹部を設け、その2箇所の凹部に治具の先端を差し込んで押さえ環にトルクを加えることにより、スラスト方向の力を加えていた。なお、この2箇所の凹部が、後述する図12、13に示すように、穴の場合は、カニの目に似ていることからカニメ穴とも呼ばれ、この凹部に先端を差し込む治具はカニメ治具とも呼ばれている。
【0025】
しかしながら、本願の発明者は、カニメ治具などの治具を用いて2箇所の凹部を支点にして押さえ環にトルクを加える従来の方法では、凹部付近に大きな応力が集中し、押さえ環が変形してしまうことを見出した。より詳細には、押さえ環の凹部が設けられた端面とは反対側の端面に2つの突出部が形成されてしまうことを見出した。なお、これは、2箇所の凹部が上述したカニメ穴である場合に限らず、後述するスリワリの場合も同様である。このような押さえ環の変形は、レンズ枠の変形、ひいてはレンズの変形やレンズへの過剰な応力を引き起し、最終的には対物レンズの光学性能を劣化させてしまう。
【0026】
そこで、本実施形態に係る対物レンズ100では、押さえ環140の構成を工夫している。具体的には、押さえ環140には、図2に示すように、胴部材110に螺合するときに治具10を嵌合する3個の凹部(凹部141、凹部142、凹部143)が軸方向の端面に形成されている。より具体的には、押さえ環140は、円環形状を有し、3個の凹部は、円環形状を有する押さえ環140の周方向に等間隔に設けられている。つまり、押さえ環140には、120度ずつ異なる方向に3個の凹部が形成されている。なお、凹部は、スリワリと呼ばれるマイナス形状のスリットである。
【0027】
以上のように構成された対物レンズ100では、押さえ環140を螺合するときに、図3に示すような、3個の突起(突起11、突起12、突起13)を有する治具10を使用する。具体的には、押さえ環140の3個の凹部に治具10の3つの突起を嵌合して、その後、治具10を回転させることで押さえ環140にトルクを加える。これにより、トルクが3点の支点(3個の凹部)に分散して加わることになるため、各点に過剰なトルクが加わることによって生じる押さえ環140の変形を抑えることができる。また、トルクと同時にスラスト方向に加わる圧力も3点に分散されるため、スラスト方向の圧力によって生じる押さえ環140の変形も抑えることができる。
【0028】
従って、対物レンズ100によれば、組み立て工程における押さえ環140の変形を抑制することが可能であり、押さえ環140の螺合時の応力集中に起因する対物レンズ100の光学性能劣化を抑制することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環240の正面図である。図5は、本実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ枠220の端面に生じる凹凸パターンの一例を示した図である。図6は、図4に示す押さえ環240の凹部の選択例を示した図である。以下、図4から図6を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0030】
本実施形態に係る対物レンズは、押さえ環140の代わりに図4に示す押さえ環240を備える点と、レンズ枠121の代わりに図5に示すレンズ枠220を備える点が、対物レンズ100とは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、押さえ環240及びレンズ枠220を除き、対物レンズ100の構成と同様である。そのため、本実施形態に係る対物レンズが有する押さえ環240及びレンズ枠220以外の構成については、特に断らない限り、対物レンズ100の構成と同じ符号で参照する。
【0031】
押さえ環240には、図4に示すように、胴部材110に螺合するときに治具10を選択的に嵌合する6個の凹部(凹部241、凹部242、凹部243、凹部244、凹部245、凹部246)が形成されている。より具体的には、押さえ環240は、円環形状を有し、6個の凹部は、円環形状を有する押さえ環240の周方向に等間隔に設けられている。つまり、押さえ環240には、60度ずつ異なる方向に3の倍数である6個の凹部が形成されている。なお、凹部は、スリワリと呼ばれるマイナス形状のスリットである。
【0032】
レンズ枠220は、例えば、押さえ環240に直接接するレンズ枠である。但し、レンズ枠220は、押さえ環240に隣接するレンズ枠に限らず、本実施形態に係る対物レンズに含まれる任意のレンズ枠であってもよく、また、変形が生じやすい薄いレンズを固定したレンズ枠であってもよい。
【0033】
以上のように構成された本実施形態に係る対物レンズでも、押さえ環240を螺合するときに、対物レンズ100と同様に、図3に示す治具10を使用する。ただし、治具10には3つの突起が120度間隔で形成されているため、組み立て作業において、作業者は、押さえ環240の6個の凹部から120度間隔で配置された3つの凹部からなる1セットを選択し、選択したセットの3つの凹部に治具10の突起を嵌合させる。この点は、本実施形態に係る対物レンズの組み立て工程と対物レンズ100の組み立て工程における相違点である。
【0034】
その後、治具10を回転させて押さえ環240にトルクを加えることで、押さえ環240を胴部材110に螺合する点については、本実施形態に係る対物レンズの組み立て工程と対物レンズ100の組み立て工程に違いはない。
【0035】
本実施形態に係る対物レンズでも、押さえ環240の螺合時にトルクが3点の支点に分散される点、トルクと同時にスラスト方向に加わる圧力も3点に分散される点は、対物レンズ100と同様である。従って、本実施形態に係る対物レンズによっても、対物レンズ100と同様に、押さえ環240の変形を抑えることが可能である。
【0036】
また、押さえ環240からの圧力が伝達される各レンズ枠の端面は、およそ平坦に形成されているが、製造誤差によってわずかな凹凸が存在し得る。この凹凸に起因して、押さえ環240とレンズ枠の間、及び、レンズ枠間には、光軸から特定の方位(位相)にわずかな隙間が生じることがある。このわずかな隙間が生じている方位(位相)と、押さえ環240からの圧力が加わる領域の方位(位相)が一致すると、レンズ枠に変形が生じやすくなってしまう。
【0037】
このような技術的な課題に対しても、本実施形態に係る対物レンズは対処可能である。具体的には、本実施形態に係る対物レンズでは、押さえ環240に6つの凹部が形成されているため、治具10の突起を嵌合する3つの凹部を2セットから選択することができる。押さえ環240からの圧力は、治具10の突起が嵌合した3つの凹部付近に主に生じることから、上述した隙間が生じている方位を避けて3つの凹部を選択して治具10を嵌合することで、さらにレンズ枠の変形を抑制することができる。別の言い方をすると、レンズ枠に生じた凸部の方位(位相)に合わせて治具10を嵌合する3つの凹部を決定することで、レンズ枠の変形を抑制することができる。
【0038】
従って、本実施形態では、対物レンズの組み立て前に、その対物レンズに含まれるレンズ枠220の端面の平坦性を予め計測して、図5に示すように、端面に形成された凸部(凸部221、凸部222、凸部223)の方位(位相)を特定してもよい。その上で、レンズ枠220の特定された凸部の方位(位相)に応じて、図6に示すように、押さえ環240から凹部(凹部241、凹部243、凹部245)を選択し、治具10の突起と嵌合させる凹部として決定してもよい。
【0039】
図5及び図6では、レンズ枠220の凸部の方位に合わせて押さえ環240の凹部を選択する例を示したが、押さえ環240の凹部の選択基準はこの例に限らない。押さえ環240からレンズ枠への圧力が押さえ環240とレンズ枠の間の隙間、及び、レンズ枠間の隙間を避けて伝達されればよい。このため、螺合時に押さえ環240の凹部にスラスト方向に加わる力とトルクとの合成力によって生じた押さえ環240のわずかな変形によって、押さえ環240の力が加わった凹部とは異なる部分が突出する場合には、その突出する部分がレンズ枠220の凸部に重ねるように、押さえ環240の凹部を選択して、治具10の突起に嵌合してもよい。
【0040】
例えば、図6に示す凹部242、凹部244、凹部246に治具10の突起を嵌合してスラスト方向に加わる力とトルクの合成力によって、凹部241、凹部243、凹部245の裏側付近が突出するように押さえ環240が変形する場合には、凹部242、凹部244、凹部246を選択してこれらの凹部に治具10の突起を嵌合してもよい。これにより、3点に分散した力により押さえ環240の変形を抑制しながら、分散した力によってわずかに変形した押さえ環に形成された突出部を利用してレンズ枠220の凸部221、凸部222、凸部223を介して圧力をレンズ枠220に伝達することができる。このため、レンズ枠220と押さえ環240の間にできた隙間に大きな力が加わることを避けることができるため、レンズ枠220の変形をさらに抑えることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、押さえ環240が6個の凹部を有する例を示したが、凹部の数は、3の倍数個であればよく、より望ましくは、6以上の3の倍数個であればよい。さらに、それらの凹部は、周方向に等間隔に設けられることが望ましい。これにより、治具10が嵌合する3つの凹部を複数セットから選択することができるため、本実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図7は、本実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ枠の斜視図である。以下、図7を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0043】
本実施形態に係る対物レンズは、レンズ枠220の代わりに図7に示すレンズ枠320を備える点が、第2の実施形態に係る対物レンズとは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、レンズ枠320を除き、第2の実施形態に係る対物レンズの構成と同様である。そのため、本実施形態に係る対物レンズが有するレンズ枠320以外の構成については、特に断らない限り、第2の実施形態に係る対物レンズの構成と同じ符号で参照する。
【0044】
第2の実施形態では、隙間なく接触する位置からレンズ枠220に圧力を伝達させるために、押さえ環240に3の倍数である6個の凹部を設け、製造誤差などによって意図せずレンズ枠220に生じた凸部の位置に応じて、6個の凹部から治具10と嵌合する3個の凹部を選択する例を示した。しかしながら、隙間なく接触する位置からレンズ枠に圧力を伝達させる構成は、この例に限らない。図7に示すように、レンズ枠320の端面320aに意図的に形成した突起(突起321、突起322、突起323)の位置に応じて、6個の凹部から治具10と嵌合する3個の凹部を選択してもよい。
【0045】
より具体的には、レンズ枠320は、円環形状を有し、端面320a上に、レンズ枠320の周方向に等間隔に設けられた3個の突起を有している。端面320aは、レンズ枠320とは異なるレンズ枠又は押さえ環240と接する端面であればよく、物体側の端面であっても像側の端面であってもよい。なお、レンズ枠320は、例えば、押さえ環240に直接接するレンズ枠であるが、他の位置に配置されたレンズ枠であってもよい。また、本実施形態に係る対物レンズは、少なくとも1つのレンズ枠320を含んでいればよく、2つ以上のレンズ枠320が本実施形態に係る対物レンズに含まれてもよい。
【0046】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第2の実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る対物レンズでは、レンズ枠320に設けた突起が端面320aに段差として形成されているため、目視でその位置を確認することが可能である。また、その突起の位置に応じて3個の凹部を選択すればよいため、レンズ枠の端面の平坦性を計測することなく、治具10と嵌合する3個の凹部を決定することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
図8は、本実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環の正面図である。以下、図8を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0048】
本実施形態に係る対物レンズは、押さえ環240の代わりに図8に示す押さえ環440を備える点が、第2の実施形態に係る対物レンズとは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、押さえ環440を除き、第2の実施形態に係る対物レンズの構成と同様である。そのため、本実施形態に係る対物レンズが有する押さえ環440以外の構成については、特に断らない限り、第2の実施形態に係る対物レンズの構成と同じ符号で参照する。
【0049】
第2の実施形態では、隙間なく接触する位置からレンズ枠220に圧力を伝達させるために、押さえ環240に3の倍数である6個の凹部を設け、製造誤差などによってレンズ枠220に生じた凸部の位置に応じて、6個の凹部から治具10と嵌合する3個の凹部を選択する例を示した。しかしながら、隙間なく接触する位置からレンズ枠に圧力を伝達させる構成は、この例に限らない。押さえ環440には、図8に示すように、胴部材110に螺合するときに治具を嵌合する4個の凹部(凹部441、凹部442、凹部443、凹部444)が形成されてもよい。この構成であれば、従来から対物レンズの組み立て工程で使用される2点支持の治具が用いて押さえ環440を螺合することができる。
【0050】
より具体的には、押さえ環440は、円環形状を有し、4個の凹部は、円環形状を有する押さえ環440の周方向に等間隔に設けられている。つまり、押さえ環440には、90度ずつ異なる方向に4個の凹部が形成されている。なお、凹部は、スリワリと呼ばれるマイナス形状のスリットである。
【0051】
以上のように構成された本実施形態に係る対物レンズでも、対物レンズの組み立て前に、その対物レンズに含まれるレンズ枠の端面の平坦性を予め計測して、その端面に形成された凸部の方位(位相)を特定してもよい。その上で、レンズ枠の特定された凸部の方位(位相)に応じて、図8に示す押さえ環440の4個の凹部から2個の凹部を選択して、2点支持の治具の突起を嵌合させてもよい。
【0052】
本実施形態に係る対物レンズによれば、従来から使用されている2点支持の治具を使用することができる。また、それぞれ2個の凹部からなる複数セットの凹部から適切に1つのセットを選択することで、2点支持の治具を使用することによって生じる押さえ環440の変形を積極的に利用して力を伝達することができるため、第2の実施形態に係る対物レンズと同様に、レンズ枠の変形を抑制しながら押さえ環440を胴部材110に螺合することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、押さえ環440が4個の凹部を有する例を示したが、凹部の数は、4以上の偶数個であればよく、それらの凹部が周方向に等間隔に設けられることが望ましい。これにより、治具が嵌合する2つの凹部を複数セットから選択することができるため、本実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第5の実施形態)
図9は、本実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ枠の斜視図である。以下、図9を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0055】
本実施形態に係る対物レンズは、レンズ枠520を備える点が、第4の実施形態に係る対物レンズとは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、レンズ枠520を除き、第4の実施形態に係る対物レンズの構成と同様である。そのため、本実施形態に係る対物レンズが有するレンズ枠520以外の構成については、特に断らない限り、第4の実施形態に係る対物レンズの構成と同じ符号で参照する。
【0056】
第4の実施形態では、隙間なく接触する位置からレンズ枠に圧力を伝達させるために、押さえ環440に4個の凹部を設け、製造誤差などによってレンズ枠に生じた凸部の位置に応じて、4個の凹部から2個の凹部を選択して治具と嵌合する例を示した。しかしながら、隙間なく接触する位置からレンズ枠に圧力を伝達させる構成は、この例に限らない。図9に示すように、レンズ枠520の端面520aに意図的に形成した突起(突起521、突起522)の位置に応じて4個の凹部から2個の凹部を選択し、選択した2個の凹部を治具と嵌合する凹部に決定してもよい。
【0057】
より具体的には、レンズ枠520は、円環形状を有し、端面520a上に、レンズ枠520の周方向に等間隔に設けられた2個の突起を有している。端面520aは、レンズ枠520とは異なるレンズ枠又は押さえ環440と接する端面であればよく、物体側の端面であっても像側の端面であってもよい。なお、レンズ枠520は、例えば、押さえ環440に直接接するレンズ枠であるが、他の位置に配置されたレンズ枠であってもよい。また、本実施形態に係る対物レンズは、少なくとも1つのレンズ枠520を含んでいればよく、2つ以上のレンズ枠520が本実施形態に係る対物レンズに含まれてもよい。
【0058】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第4の実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る対物レンズでは、レンズ枠520に設けた突起の位置に応じて2個の凹部を選択すればよいため、レンズ枠の端面の平坦性を計測することなく、治具と嵌合する2個の凹部を決定することができる。
【0059】
(第6の実施形態)
図10は、本実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ群の断面図である。以下、図10を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0060】
本実施形態に係る対物レンズは、図10に示す複数のレンズ(レンズL1からレンズL11)からなるレンズ群600が胴部材110に収容されている点が、対物レンズ100とは異なる。本実施形態に係る対物レンズは、その他の点については対物レンズ100と同様である。なお、図10に示すレンズ群600は、図示しないレンズ枠に固定されている。
【0061】
上述したように薄いレンズは高い光学性能を実現する上で有益である。中でもレンズ外径に対して厚さが小さいレンズは、剛性が小さいため変形しやすく、特に非点収差について誤差が生じやすいが、所定の大きさで高い光学特性を持つ対物レンズを実現する上で有益である。従って、対物レンズはそのようなレンズを含んで構成されることが望ましい。
【0062】
具体的には、対物レンズが大きさに対して高い光学性能を実現するためには、以下の条件式(1)を満たす少なくとも1つの単レンズを含むことが望ましい。
0<tmin/φ<0.12 ・・・(1)
ここで、tminは、少なくとも1つの単レンズの最薄部の光軸方向の厚さである。単レンズが正レンズの場合には、tminはその正レンズの縁肉の厚さであり、単レンズが負レンズの場合には、その負レンズの光軸上の厚さである。φは、その少なくとも1つの単レンズの外径である。
【0063】
また、同様の理由により、以下の条件式(2)又は(3)を満たす1つの単レンズを含むことがより望ましい。
0<tmin/φ<0.08 ・・・(2)
0<tmin/φ<0.06 ・・・(3)
【0064】
本実施形態に係る対物レンズのレンズ群600には、少なくとも条件式(1)を満たすレンズが含まれている。具体的には、レンズL2とレンズL5であり、それらの形状の詳細は以下のとおりである。レンズL2とレンズL5は、条件式(1)と条件式(2)を満たしている。
(レンズL2)
光軸上の厚さ:2.49mm、縁肉の厚さ:0.86mm、外径:15mm
min/φ=0.86mm/15mm=0.06
(レンズL5)
光軸上の厚さ:3.12mm、縁肉の厚さ:0.92mm、外径:16.5mm
min/φ=0.92mm/16.5mm=0.06
【0065】
本実施形態に係る対物レンズでは、対物レンズ100と同様に、押さえ環140の3個の凹部にトルクを分散させることで、押さえ環140の変形を抑制し、ひいてはレンズ(特に、レンズL2、レンズL5)の変形を抑制することができる。従って、本実施形態に係る対物レンズによれば、変形しやすいレンズを用いてコンパクトで且つ高い光学性能を実現しながら、その性能を劣化させることなく発揮することができる。
【0066】
(第7の実施形態)
図11は、本実施形態に係る対物レンズに含まれるレンズ群の断面図である。以下、図11を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0067】
本実施形態に係る対物レンズは、図11に示す複数のレンズ(レンズL1からレンズL15)からなるレンズ群700が胴部材110に収容されている点が、対物レンズ100とは異なる。本実施形態に係る対物レンズは、その他の点については対物レンズ100と同様である。なお、図11に示すレンズ群700は、図示しないレンズ枠に固定されている。
【0068】
本実施形態に係る対物レンズのレンズ群700には、少なくとも条件式(1)を満たすレンズが含まれている。具体的には、レンズL3、レンズL4、レンズL11、レンズL14であり、それらの形状の詳細は以下のとおりである。レンズL3、レンズL4、レンズL11は、条件式(1)から条件式(3)の全てを満たしている。レンズL14は、条件式(1)を満たしている。
(レンズL3)
光軸上の厚さ:1.7mm、縁肉の厚さ:0.48mm、外径:13.9mm
min/φ=0.48mm/13.9mm=0.03
(レンズL4)
光軸上の厚さ:3.43mm、縁肉の厚さ:0.43mm、外径:16.9mm
min/φ=0.43mm/16.9mm=0.03
(レンズL11)
光軸上の厚さ:2.77mm、縁肉の厚さ:0.35mm、外径:14mm
min/φ=0.35mm/14mm=0.03
(レンズL14)
光軸上の厚さ:0.98mm、縁肉の厚さ:2.51mm、外径:9mm
min/φ=0.98mm/9mm=0.11
【0069】
本実施形態に係る対物レンズでは、対物レンズ100と同様に、押さえ環140の3個の凹部にトルクを分散させることで、押さえ環140の変形を抑制し、ひいてはレンズ(特に、レンズL3、レンズL4、レンズL11、レンズL14)の変形を抑制することができる。従って、本実施形態に係る対物レンズによれば、変形しやすいレンズを用いてコンパクトで且つ高い光学性能を実現しながら、その性能を劣化させることなく発揮することができる。
【0070】
(第8の実施形態)
図12は、本実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環840の正面図である。以下、図12を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0071】
本実施形態に係る対物レンズは、押さえ環240の代わりに図12に示す押さえ環840を備える点が、第2の実施形態に係る対物レンズとは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、押さえ環840を除き、第2の実施形態に係る対物レンズの構成と同様である。
【0072】
押さえ環840は、図12に示すように、円環形状を有し、胴部材110に螺合するときに治具を選択的に嵌合する6個の凹部(凹部841、凹部842、凹部843、凹部844、凹部845、凹部846)が押さえ環840の周方向に等間隔に設けられている。なお、押さえ環840は、凹部がスリワリと呼ばれるスリットではなく円形の穴で構成されている点が、押さえ環240とは異なっている。なお、押さえ環840の凹部である穴の形状は、円形に限らず矩形であってもよく例えば六角形などのその他の多角形であってもよい。
【0073】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第2の実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、先端部が押さえ環840の凹部に応じた形状を有する治具(この例では、円柱状の先端部を有する治具)が使用される。
【0074】
(第9の実施形態)
図13は、本実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環940の正面図である。以下、図13を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0075】
本実施形態に係る対物レンズは、押さえ環440の代わりに図13に示す押さえ環940を備える点が、第4の実施形態に係る対物レンズとは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、押さえ環940を除き、第4の実施形態に係る対物レンズの構成と同様である。
【0076】
押さえ環940は、図13に示すように、円環形状を有し、胴部材110に螺合するときに治具を選択的に嵌合する4以上の偶数個、具体的には、8個の凹部(凹部941、凹部942、凹部943、凹部944、凹部945、凹部946、凹部947、凹部948)が押さえ環940の周方向に等間隔に設けられている。なお、押さえ環940は、凹部がスリワリと呼ばれるスリットではなく円形の穴で構成されている点と凹部の数が異なる点が、押さえ環440とは異なっている。なお、押さえ環940の凹部である穴の形状は、円形に限らず矩形であってもよく例えば六角形などのその他の多角形であってもよい。
【0077】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第4の実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態でも、先端部が押さえ環940の凹部に応じた形状を有する治具(この例では、円柱状の先端部を有する治具)が使用される。
【0078】
(第10の実施形態)
図14は、本実施形態に係る対物レンズに含まれる押さえ環1040の正面図である。以下、図14を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0079】
本実施形態に係る対物レンズは、押さえ環440の代わりに図14に示す押さえ環1040を備える点が、第4の実施形態に係る対物レンズとは異なっている。なお、本実施形態に係る対物レンズの構成は、押さえ環1040を除き、第4の実施形態に係る対物レンズの構成と同様である。
【0080】
押さえ環1040は、図14に示すように、円環形状を有し、胴部材110に螺合するときに治具を選択的に嵌合する4個の凹部(凹部1041、凹部1042、凹部1043、凹部1044)が押さえ環1040の周方向に等間隔に設けられている。なお、押さえ環1040は、凹部がスリワリと呼ばれるマイナス形状のスリットである点は、押さえ環440と同様である。ただし、押さえ環440のスリットは押さえ環440の内側面から外側面まで横断しているのに対して、押さえ環1040のスリットは押さえ環1040の内側面から途中までにしか形成されていない点において、押さえ環1040は押さえ環440とは異なっている。
【0081】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第4の実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。
【0082】
(第11の実施形態)
図15は、本実施形態に係る対物レンズの組み立て手順を示すフローチャートである。以下、図15を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0083】
本実施形態に係る対物レンズは、組み立て方法が異なる点を除き、第2の実施形態に係る対物レンズと同様である。具体的には、第2の実施形態に係る対物レンズでは、レンズ枠220の端面の平坦性を計測し、計測結果に基づいて治具10の突起と嵌合させる3個の凹部を決定したが、本実施形態に係る対物レンズでは、図15に示す手順で治具10の突起と嵌合させる3個の凹部を決定し、決定した凹部に治具を嵌合して押さえ環240を胴部材110に螺合する。なお、図15に示す手順は、作業者が手動で行うこともできるが、以降では、専用の装置で自動化される場合を例に説明する。
【0084】
まず、装置は、対物レンズに含まれる押さえ環240に設けられた6個(6個以上の3の倍数個の一例)の凹部から、3個の凹部からなる1セットを選択する(ステップS1)。次に、装置は、ステップS1で選択した3個の凹部からなる1セットに3個の突起を嵌合した治具10で押さえ環240を胴部材110に螺合する(ステップS2)。その後、装置は、対物レンズの光学性能を測定する(ステップS3)。ステップS3で測定する対物レンズの光学性能は、特に限定しないが、例えば、従来の対物レンズの組み立て工程でも行われる軸上光の非点収差、消光比、などの測定により評価されてもよい。なお、光学性能の測定後、装置は、治具10を用いて押さえ環240を緩める。
【0085】
光学性能が測定されると、装置は、押さえ環240に含まれる、それぞれ3つの凹部からなる複数セットの全てを網羅したか、つまり、3個の凹部からなる全てのセットについて対物レンズの光学性能が測定されたかを判定する(ステップS4)。まだ光学性能の測定のために使用していないセットがある場合には(ステップS4NO)、装置は、ステップS1からステップS3の処理を繰り返して未測定のセットについても対物レンズの光学性能を測定する。具体的には、凹部が6個ある本実施形態では、ステップS1からステップS3が1回繰り返されることで、計2つのセットについて対物レンズの光学性能が測定される。なお、凹部が6以上で3の倍数個ある場合には、ステップS1からステップS3は少なくとも1回繰り返される。
【0086】
すべてのセットについて対物レンズの光学性能が測定されると(ステップS4YES)、装置は、少なくとも2回行われたステップS3で測定された光学性能に基づいて、各々がステップS1で選択した3個の凹部からなるセットである複数のセットから、1つのセットを決定する(ステップS5)。ステップS5では、装置は、最も高い光学性能が測定されたときの対物レンズの組み立てに使用したセットを選択すればよい。その後、装置は、ステップS5で決定した1つのセットに含まれる3つの凹部に治具10の3個の突起を嵌合して、その治具10で押さえ環240を胴部材110に螺合し(ステップS6)、対物レンズの組み立て作業を終了する。
【0087】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、光学性能の観点で最も組み立てに適した凹部のセットが実際に組み立てた対物レンズの光学性能を測定することで決定されるため、より高い確度で光学性能を担保することができる。また、光学性能の測定は対物レンズの組み立て作業で従来から行われる工程の1つである。このため、従来の対物レンズの組み立てにない新たな工程を追加することなく最適な凹部を決定することが可能なため、最適な凹部のセットの決定のために行われる探索作業に伴うコストの上昇を最小限に抑えることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、6以上の3の倍数個の凹部を有する押さえ環を備えた対物レンズを例に説明したが、例えば、第2の実施形態に係る対物レンズ、第9の実施形態に係る対物レンズ、第10の実施形態に係る対物レンズのような、押さえ環が4以上の偶数個の凹部を有する対物レンズに上述した組み立て方法を適用してもよい。その場合、3個の突起を有する治具10の代わりに、2個の突起を有する治具を使用して押さえ環が螺合されればよい。そして、装置は、ステップS1において、押さえ環に設けられた4以上の偶数個の凹部から、2個の凹部からなるセットを選択すればよい。また、装置は、ステップS2において、ステップS1で選択した2個の凹部からなるセットに2個の突起を嵌合した治具で押さえ環を胴部材110に螺合すればよい。さらに、装置は、ステップS6において、ステップS5で決定した1つのセットに含まれる2つの凹部に治具の2個の突起を嵌合して、その治具で押さえ環を胴部材110に螺合すればよい。この場合も、本実施形態に係る対物レンズの組み立てと同様の効果を得ることができる。
【0089】
(第12の実施形態)
図16は、本実施形態に係る対物レンズの組み立て手順を示すフローチャートである。以下、図16を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0090】
本実施形態に係る対物レンズは、組み立て方法が異なる点を除き、第11の実施形態に係る対物レンズと同様である。具体的には、第11の実施形態では、3個の凹部からなる全てのセットについて対物レンズの光学性能を測定し、最も光学性能よく組み立てることができるセットを決定して、改めて組み立て直す例を示した。これに対して、本実施形態は、図16に示すように、治具10に嵌合する凹部のセットを順番に変更しながら光学性能を測定し(ステップS11~S15)、所定の光学性能を満足した時点で作業を終了する(ステップS14YES)点が、第11の実施形態とは異なっている。
【0091】
本実施形態に係る対物レンズによっても、第11の実施形態に係る対物レンズと同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、所定の光学性能を満足した時点で作業を終了するため、第11の実施形態より短時間で組み立て作業を終了することが可能であり、また、光学測定後に改めて組み立て直す作業についても省略することができる。
【0092】
(第13の実施形態)
図17は、本実施形態に係る対物レンズの断面図である。以下、図17を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0093】
対物レンズ1100は、図17に示すように、胴部材1110と、複数のレンズ部組(レンズ部組1131、レンズ部組1132、レンズ部組1133、レンズ部組1134、レンズ部組1135、レンズ部組1136、レンズ部組1137)と、押さえ環1140を備える。
【0094】
各レンズ部組は、レンズ(レンズL1、レンズL2、レンズL3とレンズL4からなる接合レンズCL1、レンズL5、レンズL6とレンズL7からなる接合レンズCL2、レンズL8とレンズL9からなる接合レンズCL3、レンズL10とレンズL11からなる接合レンズCL4)と、レンズを保持するレンズ枠(レンズ枠1121、レンズ枠1122、レンズ枠1123、レンズ枠1124、レンズ枠1125、レンズ枠1126、レンズ枠1127)を含む。
【0095】
対物レンズ1100は、胴部材1110の像側の端部近傍に物体側に向けられた当て付け面1110aを有し、胴部材1110の物体側端部に形成されたネジ山に押さえ環1140が螺合する点が、対物レンズ100とは異なっている。なお、押さえ環1140に3個の凹部が形成されている点は、押さえ環140と同様である。対物レンズ1100のように、押さえ環1140は、物体側から像側に複数のレンズ部組を押圧するように胴部材1110に螺合してもよい。
【0096】
本実施形態に係る対物レンズ1100によっても、対物レンズ100と同様の効果を得ることができる。
【0097】
(第14の実施形態)
図18は、本実施形態に係る対物レンズの断面図である。以下、図18を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズについて説明する。
【0098】
対物レンズ1200は、図18に示すように、胴部材1210と、複数のレンズ部組(レンズ部組1231、レンズ部組1232、レンズ部組1233、レンズ部組1234、レンズ部組1235、レンズ部組1236、レンズ部組1237、レンズ部組1238)と、押さえ環1241及び押さえ環1242を備える。
【0099】
各レンズ部組は、レンズ(レンズL1とレンズL2からなる接合レンズCL1、レンズL3、レンズL4、レンズL5とレンズL6とレンズL7からなる接合レンズCL2、レンズL8とレンズL9とレンズL10からなる接合レンズCL3、レンズL11とレンズL12からなる接合レンズCL4、レンズL13とレンズL14からなる接合レンズCL5、レンズL15)と、レンズを保持するレンズ枠(レンズ枠1221、レンズ枠1222、レンズ枠1223、レンズ枠1224、レンズ枠1225、レンズ枠1226、レンズ枠1227、レンズ枠1228)を含む。
【0100】
対物レンズ1200は、胴部材1210が物体側に向けられた当て付け面1210aと像側に向けられた当て付け面1210bを有し、胴部材1210の物体側端部に形成されたネジ山に押さえ環1241が螺合し、胴部材1210の像側端部に形成されたネジ山に押さえ環1242が螺合する点が、対物レンズ100とは異なっている。なお、押さえ環1241と押さえ環1242のそれぞれに3個の凹部が形成されている点は、押さえ環140と同様である。対物レンズ1200のように、押さえ環1241と押さえ環1242は、像側と物体側の両側からそれぞれ異なる複数のレンズ部組を押圧するように胴部材1210に螺合してもよい。
【0101】
本実施形態に係る対物レンズ1200によっても、対物レンズ100と同様の効果を得ることができる。第1の実施形態、第13の実施形態、及び本実施形態に示すように、押さえ環は、胴部材の物体側端部と像側端部の少なくとも一方に設けられればよい。第1の実施形態及び第13の実施形態のように、対物レンズに含まれる複数のレンズ枠の外径が全て等しく、胴部材の内径が一定の場合には、1つの押さえ環を用いて胴部材内に全てのレンズ部組を保持してもよい。一方で、本実施形態のように、胴部材の内径が物体側と像側で異なる場合には、胴部材の物体側と像側の両方に螺合した2つの押さえ環を用いてレンズ部組を胴部材内に保持してもよい。
【0102】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の対物レンズ、対物レンズの組み立て方法は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0103】
なお、上述した実施形態では、凹部を3つ以上有する押さえ環を記載した。押さえ環を締めこむ段階でのネジの回転角度は未知である。この点においても、治具を嵌合する凹部は3つ以上あることが望ましい。
【符号の説明】
【0104】
10:治具、11~13、321~323、521、522:突起、100、1100、1200:対物レンズ、110、1110、1210:胴部材、110a、1110a、1210a、1210b:当て付け面、121~129、220、320、520、1121~1127、1221~1228:レンズ枠、131~139、1131~1137、1231~1238:レンズ部組、140、240、440、840、940、1040、1140、1241、1242:押さえ環、141~143、241~246、441~444、841~846、941~948、1041~1044:凹部、221~223:凸部、320a、520a:端面、600、700:レンズ群、CL1~CL5:接合レンズ、L1~L15:レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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