(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161726
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】2液混合型シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072240
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】598109187
【氏名又は名称】パーカーアサヒ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】前田 和樹
【テーマコード(参考)】
4H017
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB03
4H017AB10
4H017AC03
4H017AD06
4H017AE05
(57)【要約】
【課題】エアー膨れが発生しづらい塩化ビニル系のシーリング材組成物を提供する。
【解決手段】 主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材組成物であって、前記主剤は、塩化ビニル樹脂と、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して5質量部~15質量部のポリオール化合物とを含有し、前記硬化剤は、塩化ビニル樹脂と、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して60質量部~80質量部のイソシアネート化合物とを含有する、2液混合型シーリング材組成物。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材組成物であって、
前記主剤は、塩化ビニル樹脂と、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して5質量部~15質量部のポリオール化合物とを含有し、
前記硬化剤は、塩化ビニル樹脂と、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して60質量部~80質量部のイソシアネート化合物とを含有する、
2液混合型シーリング材組成物。
【請求項2】
前記主剤は更に、前記主剤に含まれる前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、25質量部~30質量部のウレタン樹脂、20質量部~50質量部の充填剤、2質量部~10質量部の発泡防止剤、50質量部以下の低分子可塑剤、及び、50質量部~80質量部の高分子可塑剤を含有し、
前記硬化剤は更に、前記硬化剤に含まれる前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、80質量部~90質量部のウレタン樹脂、140質量部~150質量部の充填剤、120質量部~140質量部の発泡防止剤、及び、240質量部~260質量部の低分子可塑剤を含有する、
請求項1に記載の2液混合型シーリング材組成物。
【請求項3】
前記主剤の前記硬化剤に対する割合は、体積比率で5/6~6/5の範囲内である、
請求項1又は2に記載の2液混合型シーリング材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液混合型シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の鋼板の接合部、鋼板のヘム部等には、防錆及び防水等を目的として、熱硬化型の塩化ビニル系シーリング材が施工されている。この塩化ビニル系シーリング材は、専用のシーリングガンによって塗布される。また、ドア部位等は塗布後に刷毛、ヘラ等で平滑にならすために一部修正される。その後、塗装、焼付等の工程を経て熱硬化されることで、シーリング材としての機能を発揮する。
【0003】
しかしながら、従来の塩化ビニル系シーリング材を利用した場合、焼付等の加熱の際にヘム内部のエアーが膨張し、合わせ目上に塗布されたシーリング材を押し上げた状態で塩化ビニル系シーリング材が熱硬化するため、膨れ現象が発生する。この膨れ(以後、エアー膨れと呼ぶ。)は、外見上の見栄えが悪くなるばかりでなく、大きなものになると破泡して、防錆性及び防水性が確保できなくなる等の問題が生じる。
【0004】
上記問題に対して、ヘム内部にヘミングシーリング材等の接着剤を埋め込み、ヘム部でのエアー量を減らす対策や、ヘミング圧等のプレス条件を調整してヘム穴口を封鎖することでエアー膨れを抑制する対策が実施されているが、このような対策ではエアー膨れの補修に多大な項数がかかる上に効率が低いという問題点があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、内部に空間があってもエアー膨れが発生し難く良好な外観を得ることができる2液混合型シーリング材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されているシーリング材は、15mm3以下の小さいエアーポケットでの実績を有するが、15mm3以上のエアーポケットサイズでのエアー膨れ防止効果については不明である。近年の車体モデルでは、15mm3を超えるエアーポケットが存在し、大きい場合では100mm3程度のエアーポケットが存在する。そのため、100mm3程度のエアーポケットでもエアー膨れが発生しないシーリング材が必要である。
【0008】
また、特許文献1で開示されているシーリング材は、アクリル樹脂を使用しているが、シーリング材の貯蔵安定性やコストの観点から、アクリル樹脂よりも安価で貯蔵安定性に優れる塩化ビニルを使用したシーリング材の開発が求められている。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、その目的として、一つの側面では、エアー膨れが発生しづらい塩化ビニル系のシーリング材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
主剤と硬化剤とからなる2液混合型シーリング材組成物であって、
前記主剤は、塩化ビニル樹脂と、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して5質量部~15質量部のポリオール化合物とを含有し、
前記硬化剤は、塩化ビニル樹脂と、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して60質量部~80質量部のイソシアネート化合物とを含有する、
2液混合型シーリング材組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、一つの側面では、エアー膨れが発生しづらい塩化ビニル系のシーリング材組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】エアー膨れ性試験用試験片の上面概略図である。
【
図2】エアー膨れ性試験における、試験片へのシーリング材塗布を説明するための概略斜視図である。
【
図3】剪断強度の算出方法を説明するための概略図である。
【
図4】実施例1及び比較例1におけるエアー膨れ性試験の結果の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係るシーリング材組成物について詳細に説明する。本実施形態に係るシーリング材組成物は、2液混合型の塩化ビニル系シーリング材組成物であり、より具体的には、塩化ビニル樹脂及びポリオール化合物を含む主剤と塩化ビニル樹脂及びイソシアネート化合物を含む硬化剤とからなる2液混合型シーリング材である。
【0014】
本実施形態に係るシーリング材組成物は、塩化ビニル樹脂及びポリオール化合物を含む主剤と塩化ビニル樹脂及びイソシアネート化合物を含む硬化剤との常温硬化を利用してシーリング材を仮硬化させることで、ヘム内部のエアー膨張によるシール材膨れを抑制させる。
【0015】
本実施形態に係るシーリング材組成物は、主剤及び硬化剤のベース樹脂として塩化ビニル樹脂を使用することで、シーリング材の塗布後の焼付工程後において、シーリング材として求められる物性、例えば伸び、剪断強度等の物性を十分に確保することができる。一方で、主剤及び硬化剤のベース樹脂としてアクリル樹脂を使用して、アクリル樹脂及びポリオール化合物を含む主剤とアクリル樹脂及びイソシアネート化合物を含む硬化剤との2液混合型シーリング材を使用した場合、伸びや剪断応力物性等が低下することがある。
【0016】
主剤及び硬化剤の各々の詳細な成分について、下記に詳細に説明する。
【0017】
(主剤)
本実施形態に係るシーリング材組成物の主剤は、塩化ビニル樹脂及びポリオール化合物に加え、ウレタン樹脂、充填剤、発泡防止剤及び可塑剤を含むことが好ましい。
【0018】
塩化ビニル樹脂は、本実施形態に係るシーリング材組成物の主剤のベース樹脂となる樹脂であり、塩化ビニルの単独重合物を使用しても良いし、塩化ビニルを主成分とした共重合物を使用しても良い。塩化ビニルを主成分とした共重合物としては、酢酸ビニル樹脂が含有されている塩化ビニル共重合体や、分子中に極性基を有する塩化ビニル共重合体等を好ましく使用することができる。
【0019】
ポリオール化合物は、自身が有する官能基(水酸基)と、硬化剤のイソシアネート化合物が有する官能基(シアノ基)とが反応してウレタン結合することで硬化する。この反応は常温で進行するため、上述した常温におけるシーリング材組成物の仮硬化に利用することができる。ポリオール化合物の具体例としては、特に限定されないが、水酸基の価数が3以上のポリオール化合物を使用することが、硬化速度の観点から好ましく、具体例としては、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエステルポリオール(PEP)、ポリマーポリオール(POP)、ポリブタンジエンポリオール(PBP)、ポリカーボネートジオール(PCD)、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)、トリメチロールプロパン(TMP)等が挙げられる。
【0020】
ウレタン樹脂は、本実施形態に係るシーリング材組成物において、電着板との接着を補助する役割を有する。ウレタン樹脂の具体例としては、特に限定されず、ブロックウレタン樹脂、水質硬質ウレタン樹脂等であっても良い。
【0021】
充填剤は、通常の充填剤としての役割を果たし、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、珪藻土等の一般的な充填剤を使用することができる。
【0022】
発泡防止剤は、シーリング材の吸湿防止及び発泡防止の役割を果たし、酸化カルシウム(生石灰)、酸化マグネシウム等の金属系酸化物、塩化カルシウム、二酸化ケイ素(シリカゲル)、合成ゼオライト、デシクレイなどを好ましく使用することができる。
【0023】
可塑剤は、材料に柔軟性を与える役割を果たし、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸オクチルベンジル(OBzP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジノニル(DNP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)等のトリメリット酸エステル、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、ジオクチルアゼレート(DOZ)、ジオクチルセバケート(DOS)等が挙げられる。また、分子量がおよそ450以上の高分子可塑剤は揮発性が低く、耐抽出性が優れることから好ましく使用することができ、具体例としては、アジピン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステル等が挙げられる。なお、本明細書においては、高分子可塑剤以外の、分子量がおよそ450未満の可塑剤を、汎用可塑剤又は低分子可塑剤と呼ぶ。
【0024】
(硬化剤)
本実施形態に係るシーリング材組成物の硬化剤は、塩化ビニル樹脂及びイソシアネート化合物に加え、ウレタン樹脂、充填剤、発泡防止剤及び可塑剤を含むことが好ましい。
【0025】
イソシアネート化合物は、前述の通り、ポリオール化合物が有する水酸基と、反応してウレタン結合することで硬化する。イソシアネート化合物の具体例としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1.5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HI2MDI)等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るシーリング材組成物の硬化剤で使用できる塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、充填剤、発泡防止剤及び可塑剤は、主剤で挙げたものと同様のものを使用することができる。これらの材料は、イソシアネート化合物との反応性が低く、イソシアネート化合物の役割を妨害しない材料である。
【0027】
(配合量)
本実施形態に係る2液混合型シーリング材の主剤における各々の材料の配合量としては、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、ポリオール化合物を5質量部~15質量部、ウレタン樹脂を25質量部~30質量部、充填剤を20質量部~50質量部、発泡防止剤を2質量部~10質量部、汎用可塑剤を0質量部~50質量部(50質量部以下)、高分子可塑剤を50質量部~80質量部とすることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態に係る2液混合型シーリング材の硬化剤は、塩化ビニル樹脂を含有し、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して、イソシアネート化合物を60質量部~80質量部、ウレタン樹脂を80質量部~90質量部、充填剤を140質量部~150質量部、発泡防止剤を120質量部~140質量部、汎用可塑剤を240質量部~260質量部とすることが好ましい。
【0029】
主剤の硬化剤に対する混合割合としては、体積比率で5/6~6/5の範囲内とすることが好ましく、体積比率で1とすることがより好ましい。体積比率を上記範囲外とした場合、本実施形態に係るシーリング材の常温における仮硬化が発現しないことがある。
【0030】
本実施形態に係るシーリング材組成物を自動車の鋼板接合部に使用する場合、シール材塗布後に平滑にするために刷毛やヘラ等で修正する部位(ドアヘム部位の端部等)があり、シーリング材塗布後に所定の時間で刷毛、ヘラで修正することが必要であるため、塗布後数分間は硬化せずにいること、その後仮硬化し、焼付後のエアー膨れが抑制されていることが必要となる。また、焼付後のシール材としての物性性能を確保する必要もある。ポリオール化合物及びイソシアネート化合物の配合量を上記の通りに調整することで、硬化速度をシーリング材塗布後に3~5分程の時間刷毛、ヘラで修正することが可能であり、その後シーリング材は仮硬化する。また、本実施形態に係るシーリング材は、塗布して20分放置した後に焼付した場合に、エアー膨れの高さを0.5mm以下とすることができる物性を有する。さらに、本実施形態に係るシーリング材は、塩化ビニル樹脂をベース樹脂として使用し、上記含有量でその他の添加剤を有するため、焼付後のシーリング材としての十分な物性性能を有する。
【0031】
また、本実施形態に係るシーリング材は、主剤及び硬化剤の配合量を上記の通りにすることで、主剤及び硬化剤の粘度が50~80Pa・sの範囲内とすることができる。そのため、2液混合の際にスタティックミキサー等で容易に混合することができる。
【0032】
(実施例)
以下、実施例を参照して本実施形態に係るシーリング材組成物についてより詳細に説明する。
【0033】
表1に、実施例及び比較例及び参考例における各種材料の種類及び配合量をまとめたものを示す。
【0034】
【表1】
表1に示すように、実施例1~5として、塩化ビニル樹脂100質量部(塩化ビニル樹脂A(酢酸塩ビ共重合体;PCH-843;株式会社カネカ製)33部及び塩化ビニル樹脂B(分子中に極性基を有する共重合体;MH-100;株式会社カネカ製)67部の合計100質量部)に対して、所定量のポリオール化合物(ポリエーテルポリオール化合物;EDP-300;株式会社ADEKA製)、ウレタン樹脂(QR-9401-1;株式会社ADEKA製)、充填材(表面処理炭酸カルシウムA;ビスコライト30HV;白石工業株式会社製)、汎用可塑剤(DINP;株式会社ジェイ・プラス製)、高分子可塑剤(PN-7160;株式会社ADEKA製)、発泡防止剤(酸化カルシウムWAC28;三共製粉株式会社製)を混合して主剤を作製した。また、塩化ビニル樹脂A(酢酸塩ビ共重合体;PCH-843;株式会社カネカ製)100質量部に対して、所定量のイソシアネート化合物(UCB-937;株式会社ADEKA製)、ウレタン樹脂(QR-9401-1;株式会社ADEKA製)、充填材(表面処理炭酸カルシウムA;ビスコライト30HV;白石工業株式会社製)、汎用可塑剤(DINP;株式会社ジェイ・プラス製)、発泡防止剤(酸化カルシウムWAC28;三共製粉株式会社製)を混合して硬化剤を作製した。
【0035】
塩化ビニル樹脂A(酢酸塩ビ共重合体;PCH-843;株式会社カネカ製)91部及び塩化ビニル樹脂C(塩ビ共重合体;PQHT;新第一塩ビ株式会社製)9部からなる塩化ビニル樹脂100質量部に対して、所定量のウレタン樹脂(QR-9401-1;株式会社ADEKA製)、ポリアミド(トーマイド215-X;株式会社T&K TOKA製)、充填材(表面処理炭酸カルシウムB;竹原化学工業株式会社製)、(重質炭酸カルシウムA;三共製粉株式会社製)、汎用可塑剤(DINP;株式会社ジェイ・プラス製)及び発泡防止剤(酸化カルシウムWAC28;三共製粉株式会社製)を混合して比較例1のシーリング材を作製した。
【0036】
ポリオール化合物及びイソシアネート化合物の量を表1に示す量で変更した以外は実施例1と同様の方法により、比較例2及び比較例3の主剤及び硬化剤を作製した。
【0037】
また、塩化ビニル樹脂の代わりにアクリル樹脂B(LP3112;三菱レイヨン株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様の方法により、比較例4の主剤及び硬化剤を作製した。
【0038】
さらに参考例として、表1に示すように、アクリル樹脂A(F-320;日本ゼオン株式会社製)100質量部に対して、所定量のポリエステルポリオール化合物F148, King社製)、充填材(重質炭酸カルシウムB;竹原化学工業株式会社製)可塑剤(トリクレジルフォスフェート;株式会社ジェイ・プラス製)、重合触媒(ジブチル錫ラウリレートScat-1)を混合して主剤を作製し、アクリル樹脂A(F-320;日本ゼオン株式会社製)100質量部に対して、イソシアネート化合物(ジイソシアネート系プレポリマー;HDI系プレポリマーD-177N;三井化学工業株式会社製)、充填材(重質炭酸カルシウムB;竹原化学工業株式会社製)及び可塑剤(トリクレジルフォスフェート;株式会社ジェイ・プラス製)を混合して硬化剤を作製した。なお、この組成量は、特開2007-262184号公報の実施例と同様の組成量である。
【0039】
(評価)
実施例1~5及び比較例1~4で得られたシーリング材を使用して、以下の試験方法でエアー膨れ性試験及び硬化確認試験(ヘラ修正性)を実施した。また、シーリング材の物性として伸び、引っ張り強さ及び剪断強度を評価した。
【0040】
(エアー膨れ性試験)
図1に、エアー膨れ性試験用試験片の上面概略図を示す。
図1に示すように、エアー膨れ性試験用試験片1として、厚さ0.8mmの鋼板(100×300mm)を用いて、鋼板に接着剤を塗布して別の鋼板を貼り合わせてクリップで固定した後、180℃×20分で焼付を行った。エアーポケット2のサイズは、
図1に示すX軸×Y軸×Z軸の大きさで10mm×20mm×0.5mmのサイズのものを5個作製して幅5mmの出口を5個ずつ作製した。
【0041】
エアー膨れ性試験の試験条件としては下記の通りである。
【0042】
シーリング材形状:厚み2.0mm、幅10mm、
エアーポケットサイズ:0.5×10×20mm=100mm3、
エアーポケットの数:5個
焼付条件:130℃×10分(昇温9分)、
放置条件:20℃で20分間放置、
とした。
【0043】
図2に、エアー膨れ性試験における、試験片へのシーリング材塗布を説明するための概略斜視図を示す。
図2に示すように、エアー膨れ性試験の評価方法としては、先ず、エアー膨れ性試験用試験片1にシーリング材3を塗布し、20分間放置して焼付を行う。焼付後、エアー膨れの有無を確認してエアーの膨れ高さを測定した。
【0044】
なお、エアー膨れ高さの合格条件としては、エアー膨れ高さが0.5mm以下のものを合格とした。
【0045】
試験結果については表2に示す。
【0046】
【0047】
硬化性確認試験(ヘラ修正性)
硬化性確認試験(ヘラ修正性)の試験条件としては下記の通りである。
【0048】
シール材形状:厚み2.0mm、幅10mm、
放置条件:30℃で3分、5分、10分、20分、
とした。
【0049】
硬化性確認試験(ヘラ修正性)の評価方法としては、シーリング材を塗布した後、所定の時間放置して、指定時間ごとにヘラで修正を行い、外観や在留物の状態から硬化状態を確認した。
【0050】
硬化性確認試験(ヘラ修正性)の合格条件としては、3分以上未硬化であり、20分以内で仮硬化するものを合格とした。なお、ここでいう未硬化とはヘラ修正可能レベルでシーリング材を平滑にならしやすい状態を意味し、仮硬化とはヘラ修正した時にシーリング材が残留し、平滑にならしにくい状態を意味する。
【0051】
試験結果については表2に示す。
【0052】
(伸び)
シーリング材の伸びについては、厚み2.0mmのダンベル状6号形のシーリング材を使用してJIS K 6301に準拠する方法で測定した。
【0053】
評価方法としては各々のシーリング材を使用して離型紙上に2mmで塗布して140℃×20分間焼付を行い、1晩放置し、放置後、引張速度50mm/minで引張り、破断時の伸び率を算出した。
【0054】
伸びの合格条件としては、150%以上のものを合格とした。
【0055】
試験結果については表2に示す。
【0056】
(引っ張り強さ)
シーリング材の引っ張り強さについては、厚み2.0mmのダンベル状6号形のシーリング材を使用して下記の方法で測定した。
【0057】
各々のシーリング材を使用して離型紙上に2mmで塗布して140℃×20分間焼付を行い、1晩放置し、放置後、引張速度50mm/minで引張り、破断時の引っ張り強さを算出した。
【0058】
引っ張り強さの合格条件としては、比較例のシーリング材の引っ張り強さと同等以上の引っ張り強さを示すものを合格とした。
【0059】
試験結果については表2に示す。
【0060】
(剪断強度)
図3に、剪断強度の算出方法を説明するための概略図を示す。より具体的には、
図3の上図に剪断強度を測定した鋼板の上面概略図を、
図3の下図に剪断強度を測定した鋼板の側面概略図を示す。シーリング材の剪断強度については、
図3に示すX軸×Y軸×Z軸で12.5mm×25mm×2.0mmの大きさのシーリング材3を使用して下記の方法で測定した。
【0061】
各々のシーリング材を使用して、
図3に示すX軸×Y軸で100mm×25mmの電着塗装した鋼板を2枚用意して(
図3には鋼板4、鋼板5として示す)、片方の鋼板の端部にシーリング材3を塗布して、もう片方の端部を重ねた。重ねた状態でシーリング材の両側にスペーサ6を設けてクリップ7で固定し、その後140℃×20分間焼付を行い、1晩放置した。放置後、引張速度10mm/minで引張り、破断時の剪断強度を算出した。また、破断後の鋼板との接着性も確認した。
【0062】
剪断強度の合格条件としては、強度568kPa以上、鋼板との接着性が凝集破壊であるものを合格とした。
【0063】
試験結果については表2に示す。
【0064】
(評価結果について)
図4に、実施例1及び比較例1におけるエアー膨れ性試験の結果の一例を示す概略図を示す。
図4の上図は実施例1のエアー膨れ性試験後の概略図であり、
図4の下図は比較例1のエアー膨れ性試験後の概略図である。なお、
図4におけるエアーポケットの位置には丸印を付している。
【0065】
図4及び表2に示す通り、実施例1乃至5のシーリング材は、エアー膨れ性試験及び硬化確認試験(ヘラ修正性)は合格しており、仮硬化性(プレゲル性)及び初期物性も合格している。一方、比較例1及び比較例2のシーリング材はエアー膨れ性試験及び硬化確認試験(ヘラ修正性)が不合格となり、比較例3のシーリング材は硬化確認試験(ヘラ修正性)が不合格となった。また、比較例4のシーリング材は、シーリング材としての物性として伸び性が不合格となった。
【0066】
即ち、主剤及び硬化剤のベース樹脂としてアクリル樹脂を使用した場合は、シーリング材として求められる物性が十分に確保できず、ベース樹脂として塩化ビニル樹脂を使用することが好ましいことがわかった。また、主剤及び硬化剤のポリオール化合物及びイソシアネート化合物の好ましい配合量は、各々、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、5質量部~15質量部、60質量部~80質量部であることがわかった。
【符号の説明】
【0067】
1 エアー膨れ性試験用試験片
2 エアーポケット
3 シーリング材
4 鋼板
5 鋼板
6 スペーサ
7 クリップ