(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161731
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】温度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20231031BHJP
H01L 21/26 20060101ALI20231031BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20231031BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20231031BHJP
G01J 5/70 20220101ALI20231031BHJP
【FI】
G01J5/00 101C
H01L21/26 T
H01L21/66 T
F27D21/00 G
G01J5/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072251
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 行雄
(72)【発明者】
【氏名】大森 麻央
【テーマコード(参考)】
2G066
4K056
4M106
【Fターム(参考)】
2G066AC01
2G066AC20
2G066BC15
2G066CB10
4K056AA09
4K056BA04
4K056BB05
4K056CA18
4K056FA12
4M106AA01
4M106CA31
4M106DH13
4M106DH44
(57)【要約】
【課題】放射温度計に入射する外乱光の強度を正確に算定して高い精度にて基板の温度を測定することができる温度測定方法を提供する。
【解決手段】チャンバーに半導体ウェハーを搬入する前に端縁部放射温度計による測定を行う。半導体ウェハーを搬入した後、半導体ウェハーをリフトピンに支持した状態とサセプタに載置した状態とのそれぞれで端縁部放射温度計による測定を行う。これらの測定値から半導体ウェハーの反射率を算定し、その反射率および石英窓から放射される放射光の強度に基づいて端縁部放射温度計に入射する外乱光の強度を算定する。半導体ウェハーの加熱処理中に端縁部放射温度計が受光した光の強度から外乱光の強度を減じて半導体ウェハーの温度を算定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射によって加熱される基板の温度を測定する温度測定方法であって、
チャンバー内に搬入された基板の反射率を測定する反射率測定工程と、
前記反射率測定工程にて測定された前記反射率および前記チャンバーに設けられた石英窓から放射される放射光の強度に基づいて、前記基板の温度を測定する放射温度計に入射する外乱光の強度を算定する外乱光算定工程と、
前記基板を光照射によって加熱しているときに前記放射温度計が受光した光の強度から前記外乱光の強度を減じて前記基板の温度を算定する基板温度算定工程と、
を備えることを特徴とする温度測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の温度測定方法において、
前記外乱光算定工程では、前記基板を光照射によって加熱しているときに逐次変化する前記石英窓からの放射光の強度に基づいて前記外乱光の強度を算定することを特徴とする温度測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の温度測定方法において、
前記石英窓からの放射光の強度は測定器による測定から求めることを特徴とする温度測定方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の温度測定方法において、
前記石英窓からの放射光の強度は数理モデルから求めることを特徴とする温度測定方法。
【請求項5】
請求項1記載の温度測定方法において、
前記反射率測定工程では、前記チャンバーに搬入された前記基板がサセプタから離間して支持されているときに前記放射温度計が受光する光の強度、前記基板が前記サセプタに載置されたときに前記放射温度計が受光する光の強度、および、前記サセプタから放射される光の強度に基づいて前記反射率を求めることを特徴とする温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射によって加熱される基板の温度を測定する温度測定方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体ウェハー、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニールに限らず、半導体ウェハーの熱処理においては、ウェハー温度の管理が重要となる。熱処理中の半導体ウェハーの温度は典型的には非接触の放射温度計によって測定される。放射温度計には、半導体ウェハーから放射された赤外光のみならず、サセプタや石英窓等のチャンバー内構造物から放射された赤外光も外乱光として入射するため温度測定に誤差が生じることとなる。特に、半導体ウェハーの表面および裏面は鏡面となっているため、半導体ウェハーからの輻射に比してウェハー表面または裏面で反射される外乱光の成分の割合が相対的に高くなり、放射温度計の温度測定誤差が大きくなりやすかった。このため、特許文献1には、サセプタや石英窓等の石英構造物の温度に基づいて放射温度計による半導体ウェハーの温度測定を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、半導体ウェハーの熱処理中にも石英窓等の温度は絶えず変動している。例えば、フラッシュ光照射前に半導体ウェハーを予備加熱するためのハロゲンランプを点灯しているときには石英窓が昇温し、そのハロゲンランプを消灯したときには石英窓が降温する。従って、石英窓から放射されて半導体ウェハーの表面または裏面で反射される外乱光の強度も絶えず変動しており、そのような外乱光の変動を考慮した温度測定が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、放射温度計に入射する外乱光の強度を正確に算定して高い精度にて基板の温度を測定することができる温度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、光照射によって加熱される基板の温度を測定する温度測定方法において、チャンバー内に搬入された基板の反射率を測定する反射率測定工程と、前記反射率測定工程にて測定された前記反射率および前記チャンバーに設けられた石英窓から放射される放射光の強度に基づいて、前記基板の温度を測定する放射温度計に入射する外乱光の強度を算定する外乱光算定工程と、前記基板を光照射によって加熱しているときに前記放射温度計が受光した光の強度から前記外乱光の強度を減じて前記基板の温度を算定する基板温度算定工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る温度測定方法において、前記外乱光算定工程では、前記基板を光照射によって加熱しているときに逐次変化する前記石英窓からの放射光の強度に基づいて前記外乱光の強度を算定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る温度測定方法において、前記石英窓からの放射光の強度は測定器による測定から求めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る温度測定方法において、前記石英窓からの放射光の強度は数理モデルから求めることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1の発明に係る温度測定方法において、前記反射率測定工程では、前記チャンバーに搬入された前記基板がサセプタから離間して支持されているときに前記放射温度計が受光する光の強度、前記基板が前記サセプタに載置されたときに前記放射温度計が受光する光の強度、および、前記サセプタから放射される光の強度に基づいて前記反射率を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項5の発明によれば、基板の反射率を測定し、その反射率および石英窓から放射される放射光の強度に基づいて、放射温度計に入射する外乱光の強度を算定し、基板を光照射によって加熱しているときに放射温度計が受光した光の強度から外乱光の強度を減じて基板の温度を算定するため、放射温度計に入射する外乱光の強度を正確に算定して高い精度にて基板の温度を測定することができる。
【0015】
特に、請求項2の発明によれば、基板を光照射によって加熱しているときに逐次変化する石英窓からの放射光の強度に基づいて外乱光の強度を算定するため、逐次変化する外乱光の強度もより適切に算定してより正確に基板の温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る温度測定方法を実施する熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】熱処理装置における処理動作の手順を示すフローチャートである。
【
図9】チャンバー内に半導体ウェハーが存在しないときの端縁部放射温度計による測定を模式的に示す図である。
【
図10】半導体ウェハーがリフトピンに支持されているときの端縁部放射温度計による測定を模式的に示す図である。
【
図11】半導体ウェハーがサセプタに載置されているときの端縁部放射温度計による測定を模式的に示す図である。
【
図12】第2実施形態の熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る温度測定方法を実施する熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0019】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0020】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0021】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0022】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0023】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0024】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aおよび貫通孔61bが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には端縁部放射温度計(エッジパイロメーター)20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を端縁部放射温度計20に導くための円筒状の孔である。一方、チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61bが設けられている部位には中央部放射温度計(センターパイロメーター)25が取り付けられている。貫通孔61bは、サセプタ74から放射された赤外光を中央部放射温度計25に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aおよび貫通孔61bは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。よって、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25はサセプタ74の斜め下方に設けられることとなる。貫通孔61aおよび貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21および透明窓26がそれぞれ装着されている。
【0025】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる。
【0026】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0027】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0028】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0029】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0030】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0031】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0032】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0033】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0034】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0035】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0036】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、端縁部放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、端縁部放射温度計20が開口部78および貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0037】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0038】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0039】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0040】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0041】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリ秒ないし100ミリ秒という極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0042】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0043】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0044】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0045】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0046】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0047】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0048】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0049】
図1に示すように、チャンバー6には、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の2つの放射温度計が設けられている。端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の双方ともにサセプタ74に保持される半導体ウェハーWよりも下方に設けられている。端縁部放射温度計20は、サセプタ74に設けられた切り欠きである開口部78を介して半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光してその下面の温度を測定する。すなわち、端縁部放射温度計20の測定領域は開口部78の内側となる。一方、中央部放射温度計25の測定領域は、サセプタ74の保持プレート75の面内である。中央部放射温度計25は、サセプタ74から放射された赤外光を受光してサセプタ74の温度を測定する。
【0050】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスク)を備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、制御部3は、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の測定値に基づいて種々の演算処理を行う。
【0051】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0052】
次に、上記構成を有する熱処理装置1における処理動作について説明する。
図8は、熱処理装置1における処理動作の手順を示すフローチャートである。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0053】
熱処理装置1においては、ロットを構成する複数枚の半導体ウェハーWが1枚ずつ順次にチャンバー6内に搬入されて加熱処理される。複数枚の半導体ウェハーWを順次に加熱処理しているときには、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから照射された光を吸収するとともに加熱された半導体ウェハーWからの熱伝導および熱の対流によって上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64およびサセプタ74等のチャンバー内構造物も昇温する。例えば、複数枚の半導体ウェハーWが定常的に処理されているときには、上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64の温度は20℃~500℃程度に昇温している。よって、これらの昇温したチャンバー内構造物から放射された放射光が端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25に入射することとなる。これにより、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25は絶えず測定値を出力し続けている。
【0054】
本実施形態においては、処理対象となる半導体ウェハーWをチャンバー6に搬入する直前に端縁部放射温度計20による測定を行う(ステップS1)。
図9は、チャンバー6内に半導体ウェハーWが存在しないときの端縁部放射温度計20による測定を模式的に示す図である。半導体ウェハーWをチャンバー6に搬入する前、すなわちチャンバー6内に半導体ウェハーWが存在しないときには、上側チャンバー窓63から放射された放射光がサセプタ74の開口部78を通過して端縁部放射温度計20に入射する。その一方、端縁部放射温度計20の測定領域は開口部78の内側となるため、サセプタ74から放射された放射光は端縁部放射温度計20には入射しない。また、下側チャンバー窓64から放射された放射光も端縁部放射温度計20には入射しない。よって、チャンバー6内に半導体ウェハーWが存在しないときに端縁部放射温度計20に入射するのは実質的には上側チャンバー窓63からの放射光のみである。このため、半導体ウェハーWをチャンバー6に搬入する直前に端縁部放射温度計20から出力される測定値Ip1は次の式(1)によって表される。
【0055】
【0056】
式(1)において、Iuwは上側チャンバー窓63から放射される放射光の強度である。なお、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25は測定対象物の温度を測定するセンサーであるが、厳密にはこれらが直接出力する測定値は放射温度計に入射する光の強度を示す値であり、それに対して例えば制御部3が温度換算の演算処理を施すことによって測定対象物の温度を求める。
【0057】
端縁部放射温度計20による測定を行った後、チャンバー6内に処理対象となる半導体ウェハーWを搬入する(ステップS2)。ウェハー搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0058】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0059】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0060】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。半導体ウェハーWがリフトピン12に支持された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。
【0061】
次に、半導体ウェハーWがリフトピン12に支持された状態にて端縁部放射温度計20による測定を行う(ステップS3)。
図10は、半導体ウェハーWがリフトピン12に支持されているときの端縁部放射温度計20による測定を模式的に示す図である。半導体ウェハーWがリフトピン12に支持されている状態では、半導体ウェハーWはサセプタ74から上方に離間した上位置に保持されている。よって、半導体ウェハーWとサセプタ74との間には比較的大きな間隔が存在している。
【0062】
半導体ウェハーWがリフトピン12によってサセプタ74から離間して支持されているときには、上側チャンバー窓63から放射されて半導体ウェハーWを透過した透過光、半導体ウェハーWから直接放射された放射光、および、サセプタ74から放射されて半導体ウェハーWの裏面で反射された反射光が端縁部放射温度計20に入射する。これらはいずれもサセプタ74の開口部78を通過して端縁部放射温度計20に入射する。半導体ウェハーWがリフトピン12に支持されているときに端縁部放射温度計20から出力される測定値Ip2は次の式(2)によって表される。測定値Ip2は、半導体ウェハーWがリフトピン12に支持されているときに端縁部放射温度計20が受光する光の強度である。
【0063】
【0064】
式(2)において、twおよびrwはそれぞれ半導体ウェハーWの透過率および反射率である。また、Isはサセプタ74から放射される放射光の強度である。さらに、Iwは半導体ウェハーWから放射される放射光の強度である。チャンバー6に半導体ウェハーWが搬入された時点での半導体ウェハーWの温度は概ね常温であるため、半導体ウェハーWから放射される放射光の強度Iwは0とすることができる。よって、式(1)(2)より次の式(3)が成立する。
【0065】
【0066】
次に、移載機構10の一対の移載アーム11が下降してリフトピン12が貫通孔79から下方に抜け出ることにより、半導体ウェハーWは移載機構10からサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、被処理面である表面を上面としてサセプタ74に載置される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。そして、半導体ウェハーWがサセプタ74に載置された状態にて再び端縁部放射温度計20による測定を行う(ステップS4)。
【0067】
図11は、半導体ウェハーWがサセプタ74に載置されているときの端縁部放射温度計20による測定を模式的に示す図である。半導体ウェハーWがサセプタ74に載置されている状態では、半導体ウェハーWはサセプタ74に近接した下位置に保持されることとなる。半導体ウェハーWとサセプタ74の保持面75aとの間には基板支持ピン77の高さに相当する僅かな間隔しか存在していない。
【0068】
半導体ウェハーWがサセプタ74に載置されているときには、上側チャンバー窓63から放射されて半導体ウェハーWを透過した透過光、半導体ウェハーWから直接放射された放射光、および、下側チャンバー窓64から放射されて半導体ウェハーWの裏面で反射された反射光が端縁部放射温度計20に入射する。半導体ウェハーWがサセプタ74に載置されているときには、半導体ウェハーWとサセプタ74との間にほとんど間隔が無いため、サセプタ74から放射されて半導体ウェハーWの裏面で反射されてから開口部78を通過して端縁部放射温度計20に入射する反射光は存在しない。その一方、下側チャンバー窓64から放射されて開口部78を通過し、半導体ウェハーWの裏面で反射されてから再び開口部78を通過して端縁部放射温度計20に入射する反射光が生じることとなる。半導体ウェハーWがサセプタ74に載置されているときに端縁部放射温度計20から出力される測定値Ip3は次の式(4)によって表される。測定値Ip3は、半導体ウェハーWがサセプタ74に載置されているときに端縁部放射温度計20が受光する光の強度である。
【0069】
【0070】
式(4)において、Ilwは下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度である。上述と同様に、サセプタ74に載置された直後の半導体ウェハーWの温度は概ね常温であるため、半導体ウェハーWから放射される放射光の強度Iwは0とすることができる。よって、式(1)(4)より次の式(5)が成立する。
【0071】
【0072】
式(5)から式(3)を減じることにより式(6)が成立する。そして、式(6)より式(7)が導き出される。
【0073】
【0074】
【0075】
式(7)において、測定値Ip2および測定値Ip3は、それぞれ半導体ウェハーWがリフトピン12に支持された状態および半導体ウェハーWがサセプタ74に載置された状態での端縁部放射温度計20の実測値である。また、サセプタ74から放射された放射光は中央部放射温度計25に直接入射している(
図10参照)。すなわち、サセプタ74から放射される放射光の強度Isは中央部放射温度計25の実測値である。従って、下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを求めることができれば、式(7)よりチャンバー6内における半導体ウェハーWの裏面の反射率を算定することができる。
【0076】
下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwは下側チャンバー窓64の温度の関数として表される。下側チャンバー窓64はハロゲンランプHLから照射される光の一部を吸収することによって昇温し、下側チャンバー窓64の温度は主にハロゲンランプHLのランプパワーに依存する。そこで、第1実施形態では、半導体ウェハーWの処理に先立って、複数のハロゲンランプHLのランプパワーと下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwとの関係を表す伝達関数などの数理モデルを予め導出している。具体的には、例えば、下側チャンバー窓64に熱電対等の接触式温度計を一時的に取り付け、ハロゲンランプHLを点灯してランプパワーを変化させつつ下側チャンバー窓64の温度を測定し、時間的に変化するランプパワーと温度測定値との関係を同定する。そして、それに下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwと下側チャンバー窓64の温度との関数を合成することによって伝達関数などの数理モデルを作成するのである。
【0077】
制御部3は、上記の数理モデルに、常温の下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度を初期値(Ilw0)として与えるとともに、時間的に変化するハロゲンランプHLのランプパワーを入力することによって逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを推定する。そして、制御部3は、チャンバー6に半導体ウェハーWが搬入された時点での下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを数理モデルから求め、その値と端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の実測値とを用いて式(7)より半導体ウェハーWの反射率を算定するのである(ステップS5)。
【0078】
次に、半導体ウェハーWの加熱処理が開始される(ステップS6)。具体的には、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して半導体ウェハーWの予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。
【0079】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は端縁部放射温度計20によって測定される。半導体ウェハーWの加熱処理が行われているときに端縁部放射温度計20から出力される測定値Ip4は次の式(8)によって表される。半導体ウェハーWの加熱処理が行われているときには半導体ウェハーWはサセプタ74に載置されているため、端縁部放射温度計20に入射する光の成分は式(4)と同じになる。すなわち、端縁部放射温度計20には、加熱処理されている半導体ウェハーWから放射された放射光の他に、上側チャンバー窓63から放射されて半導体ウェハーWを透過した透過光および下側チャンバー窓64から放射されて半導体ウェハーWの裏面で反射された反射光が外乱光として入射する。
【0080】
【0081】
半導体ウェハーWの素材であるシリコン(Si)は、温度が上昇するにつれて透過率が低下する性質を有する。半導体ウェハーWの温度が600℃以上になると、半導体ウェハーWの透過率twは0に近付くため、外乱光のうち上側チャンバー窓63から放射されて半導体ウェハーWを透過した透過光は無視することができる。すなわち、端縁部放射温度計20に入射する外乱光の主成分は下側チャンバー窓64から放射されて半導体ウェハーWの裏面で反射された反射光となる。従って、次の式(9)が成立する。
【0082】
【0083】
すなわち、加熱処理中の半導体ウェハーWから放射される放射光の強度Iwは、端縁部放射温度計20の測定値Ip4から外乱光である下側チャンバー窓64からの反射光の強度を減じた値として求められる。下側チャンバー窓64から放射されて半導体ウェハーWの裏面で反射された反射光の強度は、半導体ウェハーWの裏面の反射率rwと下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwとの積である。半導体ウェハーWの裏面の反射率rwは、ステップS5にて式(7)より求められている。下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwは、半導体ウェハーWの加熱処理中にもハロゲンランプHLから照射された光の一部を吸収することによって逐次変化する。第1実施形態では、このように逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwは、上述した数理モデルから求められる。
【0084】
制御部3は、上記の数理モデルに、時間的に変化するハロゲンランプHLのランプパワーを入力することによって逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを推定する。そして、制御部3は、求めた強度Ilwに半導体ウェハーWの裏面の反射率rwを乗じることによって外乱光である下側チャンバー窓64からの反射光の強度を算定する(ステップS7)。
【0085】
続いて、制御部3は、式(9)に基づいて、端縁部放射温度計20の測定値Ip4から外乱光の強度を減じることによって加熱処理中の半導体ウェハーWから放射される放射光の強度Iwを算定する。式(9)より算定された強度Iwは、外乱光の影響が排除された真の半導体ウェハーWから放射される放射光強度である。制御部3は、式(9)から算定した放射光の強度Iwに所定の演算処理を行って半導体ウェハーWの温度を算定する(ステップS8)。制御部3は、算定した半導体ウェハーWの温度を記憶部に記憶するとともに液晶ディスプレイ等の表示部に表示するようにしても良い。
【0086】
半導体ウェハーWの温度は加熱処理が進行するにつれて時間とともに変化する。また、外乱光の原因となる下側チャンバー窓64の温度も時間とともに変化する。このため、加熱処理が終了するまで半導体ウェハーWの温度算定を繰り返して継続する。具体的には、半導体ウェハーWの加熱処理が終了するまでステップS7およびステップS8の処理を繰り返す(ステップS9)。
【0087】
制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、ステップS8で算定された半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0088】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、ステップS8で算定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0089】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0090】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0091】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリ秒以上100ミリ秒以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇した後、急速に下降する。
【0092】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する(ステップS10)。
【0093】
第1実施形態においては、チャンバー6内に搬入された半導体ウェハーWの反射率rwを測定し、その反射率rwおよび下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwに基づいて端縁部放射温度計20に入射する外乱光の強度を算定している。そして、半導体ウェハーWの加熱処理中に端縁部放射温度計20が受光した光の強度(測定値Ip4)から外乱光の強度を減じて半導体ウェハーWの温度を算定している。
【0094】
チャンバー6に搬入する前に別チャンバー(例えば、半導体ウェハーWの向きを調整するアライメントチャンバー)にて専用の反射率測定機構を用いて半導体ウェハーWの反射率を事前に測定する手法も考えられる。しかし、チャンバー内の周辺環境(例えば、放射温度計の設置角度など)が異なると、測定される反射率の相違するものとなる。本実施形態においては、チャンバー6内に半導体ウェハーWを搬入してから実際の熱処理環境と同じ環境にて半導体ウェハーWの反射率を求めているため、熱処理環境におけるより正確な半導体ウェハーWの反射率を得ることができる。その結果、端縁部放射温度計20に入射する外乱光の強度を正確に算定してより高い精度にて半導体ウェハーWの温度を測定することができる。半導体ウェハーWの温度を正確に測定することができれば、例えば予備加熱時における半導体ウェハーWの温度制御の精度を向上させることができる。
【0095】
また、第1実施形態においては、複数のハロゲンランプHLのランプパワーと下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwとの関係を表す数理モデルを構築し、その数理モデルから経過時間とともに逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを求めている。このため、逐次変化する外乱光の強度もより適切に算定してより正確に半導体ウェハーWの温度を測定することができる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを数理モデルから求めていたのに対して、第2実施形態では下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを実測により求めている。
【0097】
図12は、第2実施形態の熱処理装置1aの構成を示す縦断面図である。
図12において、第1実施形態の熱処理装置1(
図1)と同一の要素については同一の符号を付している。第2実施形態の熱処理装置1aが第1実施形態と相違するのは下窓放射温度計29を備えている点である。下窓放射温度計29は、例えばチャンバー6とハロゲン加熱部4との間に設けられる。下窓放射温度計29は、下側チャンバー窓64から放射された放射光を受光して下側チャンバー窓64の温度を測定する。下窓放射温度計29を除く熱処理装置1aの残余の構成は第1実施形態と同じである。
【0098】
第2実施形態の熱処理装置1aにおける処理動作も第1実施形態(
図8)と概ね同様である。但し、第2実施形態においては、ステップS5で式(7)から半導体ウェハーWの反射率rwを算定するときに、下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを下窓放射温度計29の実測値としている。すなわち、制御部3は、下窓放射温度計29、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の実測値を用いて式(7)より半導体ウェハーWの反射率rwを算定する。
【0099】
また、第2実施形態においては、ステップS7で外乱光の強度を算定するときに、逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを下窓放射温度計29の実測値としている。制御部3は、下窓放射温度計29の実測値に半導体ウェハーWの裏面の反射率rwを乗じることによって外乱光である下側チャンバー窓64からの反射光の強度を算定する。そして、制御部3は、端縁部放射温度計20の測定値Ip4から外乱光の強度を減じることによって加熱処理中の半導体ウェハーWから放射される放射光の強度Iwを算定し、半導体ウェハーWの温度を算定する。
【0100】
第2実施形態においては、下窓放射温度計29による実測値に基づいて逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを求めている。そして、測定器による実測より求めた放射光の強度Ilwと半導体ウェハーWの反射率rwとに基づいて端縁部放射温度計20に入射する外乱光の強度を算定し、加熱処理中の半導体ウェハーWの温度を算定している。このため、逐次変化する端縁部放射温度計20に入射する外乱光の強度を正確に算定して高い精度にて半導体ウェハーWの温度を測定することができる。
【0101】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1および第2実施形態においては、下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを求め、下側チャンバー窓64からの反射光を端縁部放射温度計20に入射する外乱光としてその強度算定を行っていたが、これに限定されるものではない。これに代えて、半導体ウェハーWよりも上方に放射温度計を設け、上側チャンバー窓63から放射されて半導体ウェハーWの表面で反射された反射光を当該放射温度計に入射する外乱光として扱うようにしても良い。この場合、上側チャンバー窓63から放射される放射光の強度を求め、それと半導体ウェハーWの表面の反射率とに基づいて外乱光の強度を算定することとなる。
【0102】
また、第1実施形態においては、下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを推定する数理モデルとして伝達関数を用いていたが、これに限定されるものではなく、例えば状態空間表現、ARX(Auto-Regressive with eXogenous)モデル、非線形ARXモデル、ニューラルネットワークなどを用いるようにしても良い。すなわち、逐次変化する下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを出力することができる数理モデルであれば良い。
【0103】
また、第2実施形態において、下側チャンバー窓64から放射される放射光の強度Ilwを下窓放射温度計29によって実測するのに加えて第1実施形態の如き数理モデルからも求め、それらの差が予め設定された閾値を超えた場合には制御部3が異常と判断して加熱処理を停止するようにしても良い。
【0104】
本発明に係る技術は、2枚以上の半導体ウェハーWを順次に加熱処理するときにそれぞれの半導体ウェハーWの温度を測定するときに適用するようにしても良い。むしろ、本発明に係る技術は、ロットを構成する複数枚の半導体ウェハーWを1枚ずつ順次にチャンバー6内に搬入して加熱処理する際に、2枚目以降の半導体ウェハーWの温度を測定するのに好適である。その理由は、2枚目以降の半導体ウェハーWを処理するときには、下側チャンバー窓64などが昇温していて外乱光の強度が強くなっているからである。
【0105】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0106】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱処理を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて予備加熱処理を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0107】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
12 リフトピン
20 端縁部放射温度計
25 中央部放射温度計
29 下窓放射温度計
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
74 サセプタ
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー