(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161749
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】捕虫器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/14 20060101AFI20231031BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20231031BHJP
A01M 1/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A01M1/14 S
A01M1/02 T
A01M1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072280
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 重郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野 史也
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121BA03
2B121BA07
2B121BA09
2B121BA52
2B121DA37
(57)【要約】
【課題】シート状の捕虫部材が作物に貼り付くのを抑制できる技術を提供する
【解決手段】シート状の粘着部材9を取り付け可能な捕虫器1は、粘着部材9を取り付け可能な固定部50と、固定部50の上方に配置される連結部40と、固定部50の少なくとも下方を覆うカバー30とを有する。連結部40は、テープまたは紐に対して取り付け可能である。固定部50は、粘着部材9を上下方向および前後方向に延びる平面に沿って取り付け可能である。カバー30は、固定部50の下方において前後方向に延びる下カバー部36を有する。下カバー部36は、前後方向に見て、下方へむかうにつれてすぼむ。これにより、粘着部材9の下方に配置された作物が上方へと伸びた場合に、下カバー部36によって作物が左右へ分かれて伸びる。このため、粘着部材9に作物が貼り付くのを抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の粘着部材を取り付け可能な捕虫器であって、
前記粘着部材を取り付け可能な固定部と、
前記固定部の上方に配置され、テープまたは紐に対して取り付け可能な連結部と、
前記固定部の少なくとも下方を覆うカバーと、
を有し、
前記固定部は、前記粘着部材を上下方向および前後方向に延びる平面に沿って取り付け、
前記カバーは、
前記固定部の下方において前後方向に延びる下カバー部
を有し、
前記下カバー部は、前後方向に見て、下方へ向かうにつれてすぼむ、捕虫器。
【請求項2】
請求項1に記載の捕虫器であって、
前記下カバー部は、前後方向に見て、V字型またはU字型である、捕虫器。
【請求項3】
請求項1に記載の捕虫器であって、
前記カバーは、
前記下カバー部の上方に配置され、前記固定部を挟んで左右方向に向かい合う一対の側カバー部
を有し、
前記側カバー部は、複数の貫通孔を有する、捕虫器。
【請求項4】
請求項3に記載の捕虫器であって、
前記固定部は、
右側の前記側カバー部から左側の前記側カバー部へ向けて延びる第1突起と、
左側の前記側カバー部から右側の前記側カバー部へ向けて延びる第2突起と、
を有する、捕虫器。
【請求項5】
請求項4に記載の捕虫器であって、
前記固定部は、
複数の前記第1突起と、
複数の前記第2突起と、
を有し、
前記第1突起および前記第2突起はそれぞれ、左右方向に延びるピン状または板状である、捕虫器。
【請求項6】
請求項1に記載の捕虫器であって、
前記固定部、前記連結部および前記カバーを有する本体部と、
前記連結部を取り付け可能なテープ状部と、
を有し、
前記テープ状部は、下面に、光源を有する、捕虫器。
【請求項7】
請求項6に記載の捕虫器であって、
前記本体部は、前記光源の下方に配置される、捕虫器。
【請求項8】
請求項7に記載の捕虫器であって、
前記カバーは、
前記連結部の下方かつ前記固定部の上方に配置され、前記光源から前記固定部へ向かう光の一部を遮る遮光部
をさらに有する、捕虫器。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の捕虫器であって、
1つの前記テープ状部が複数の前記光源を有するとともに、
1つの前記テープ状部に対して複数の前記本体部が取り付けられる、捕虫器。
【請求項10】
請求項9に記載の捕虫器であって、
複数の前記光源は、
第1波長を中心波長とする、第1光源と、
前記第1波長とは異なる第2波長を中心波長とする、第2光源と、
を含む、捕虫器。
【請求項11】
請求項10に記載の捕虫器であって、
前記第1光源は、495nm以上570nm以下の緑色波長帯域を中心波長とする、捕虫器。
【請求項12】
請求項11に記載の捕虫器であって、
前記第2光源は、315nm以上380nm以下の近紫外線UV-A領域の波長帯域を中心波長とする、捕虫器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫を捕獲するための捕虫器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘引剤や誘引光を用いて昆虫を誘引し、昆虫を捕まえる捕虫器が知られている。近年、有機栽培の増加により、農薬を用いることなく、捕虫器によって捕獲することによって害虫となる昆虫を駆除する方法が特に注目されている。従来の捕虫器については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の捕虫器では、長時間継続して捕虫を行う場合、粘着シートの他に、誘引剤も定期的に取り替える必要がある。このため、農園などで複数の捕虫器を使用する場合、全ての捕虫器に誘引剤の交換等のメンテナンスが必要となると、大きな手間となってしまう。このため、多くの農園では、単に粘着シートを作物の周辺に吊り下げる、原始的な方法が使用されている。
【0005】
このような原始的な方法では、メンテナンス作業は簡単であるものの、作物の成長に伴って粘着シートが作物に貼り付いてしまうという問題が生じる。一方で、粘着シートが作物に貼り付かないように作物から離れた位置に配置すると、作物に集まる昆虫の捕虫効果が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、シート状の捕虫部材が作物に貼り付くのを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、シート状の粘着部材を取り付け可能な捕虫器であって、前記粘着部材を取り付け可能な固定部と、前記固定部の上方に配置され、テープまたは紐に対して取り付け可能な連結部と、前記固定部の少なくとも下方を覆うカバーと、を有し、前記固定部は、前記粘着部材を上下方向および前後方向に延びる平面に沿って取り付け、前記カバーは、前記固定部の下方において前後方向に延びる下カバー部
を有し、前記下カバー部は、前後方向に見て、下方へ向かうにつれてすぼむ。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の捕虫器であって、前記下カバー部は、前後方向に見て、V字型またはU字型である。
【0009】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の捕虫器であって、前記カバーは、前記下カバー部の上方に配置され、前記固定部を挟んで左右方向に向かい合う一対の側カバー部を有し、前記側カバー部は、複数の貫通孔を有する。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれか一発明の捕虫器であって、前記固定部は、右側の前記側カバー部から左側の前記側カバー部へ向けて延びる第1突起と、左側の前記側カバー部から右側の前記側カバー部へ向けて延びる第2突起と、を有する。
【0011】
本願の第5発明は、第4発明の捕虫器であって、前記固定部は、複数の前記第1突起と、複数の前記第2突起と、を有し、前記第1突起および前記第2突起はそれぞれ、左右方向に延びるピン状または板状である。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明ないし第5発明のいずれか一発明の捕虫器であって、前記固定部、前記連結部および前記カバーを有する本体部と、前記連結部を取り付け可能なテープ状部と、を有し、前記テープ状部は、下面に、光源を有する。
【0013】
本願の第7発明は、第6発明の捕虫器であって、前記本体部は、前記光源の下方に配置される。
【0014】
本願の第8発明は、第7発明の捕虫器であって、前記カバーは、前記連結部の下方かつ前記固定部の上方に配置され、前記光源から前記固定部へ向かう光の一部を遮る遮光部をさらに有する。
【0015】
本願の第9発明は、第6発明ないし第8発明のいずれか一発明の捕虫器であって、1つの前記テープ状部が複数の前記光源を有するとともに、1つの前記テープ状部に対して複数の前記本体部が取り付けられる。
【0016】
本願の第10発明は、第9発明の捕虫器であって、複数の前記光源は、第1波長を中心波長とする、第1光源と、前記第1波長とは異なる第2波長を中心波長とする、第2光源と、を含む。
【0017】
本願の第11発明は、第10発明の捕虫器であって、前記第1光源は、495nm以上570nm以下の緑色波長帯域を中心波長とする。
【0018】
本願の第12発明は、第10発明または第11発明の捕虫器であって、前記第2光源は、315nm以上380nm以下の近紫外線UV-A領域の波長帯域を中心波長とする。
【発明の効果】
【0019】
本願の第1発明から第12発明によれば、粘着部材の下方に配置された作物が上方へと伸びた場合に、下カバー部によって作物が左右へ分かれて伸びる。このため、粘着部材に作物が貼り付くのを抑制できる。
【0020】
特に、本願の第2発明によれば、作物が左右へと分かれやすい。
【0021】
特に、本願の第3発明によれば、作物が下カバー部よりも上方へと伸びた場合に、粘着部材が作物に貼り付くのを抑制できる。
【0022】
特に、本願の第5発明によれば、固定部と粘着部材との接触面を小さくできる。したがって、捕虫効果のある粘着面を広くすることができる。
【0023】
特に、本願の第6発明によれば、光によって昆虫を誘引することができる。
【0024】
特に、本願の第7発明によれば、光源からの光に誘引された昆虫を効率良く捕獲できる。
【0025】
特に、本願の第8発明によれば、粘着部材に光と影のコントラストを作ることにより、捕虫効果を向上できる。
【0026】
特に、本願の第9発明によれば、広い範囲において効率良く本体部を配置することができる。
【0027】
特に、本願の第10発明によれば、2種類以上の波長帯域の光を用いることにより、誘引される昆虫の種類が増える。これによって、より効率良く昆虫を捕らえることができる。
【0028】
特に、本願の第11発明によれば、ミナミキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、タバココナジラミ、ナガマドキノコバエ、チャバネアオカメムシ等の昆虫を効率良く誘引できる。
【0029】
特に、本願の第12発明によれば、ミカンキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、タバココナジラミ、ナガマドキノコバエ、アシグロハモグリバエ、ショウジョウバエ、チャバネアオカメムシ等の昆虫を効率良く誘引できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】一実施形態に係る捕虫器の使用時の様子を示した図である。
【
図6】一実施形態に係る捕虫器の配置の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
<1.第1実施形態>
図1は、一実施形態に係る捕虫器1の斜視図である。
図2は、捕虫器1の使用時の様子を示した図である。
図3および
図4は、捕虫器1を開いた状態における斜視図である。
図5は、捕虫器1の断面図である。
【0033】
捕虫器1は、飛翔性昆虫(以下、単に「昆虫」と称する)をシート状の粘着部材9を用いて捕らえるための装置である。
図1に示すように、捕虫器1は、本体部10と、保持テープ20とを有する。本体部10は、保持テープ20に対して取り付けられる。また、本体部10の内部には、粘着部材9が保持される。
【0034】
図2に示すように、捕虫器1は、1つの保持テープ20に対して複数の本体部10を取り付けることができる。
図2においては、畝81に植えられた複数の作物82の上方に捕虫器1が配置されている。このように、作物82の上方に捕虫器1の本体部10を配置した場合、作物82の成長にともなって、作物82が上方へと伸びる。このとき、粘着部材9が露出した状態であると、粘着部材9に作物82が貼り付いてしまうという問題が生じる。この捕虫器1では、カバー30が粘着部材9を覆うことにより、作物82が粘着部材9に貼り付くことを抑制している。
【0035】
以下では、本体部10の連結部40に対してカバー30および固定部50を下側として上下方向を定義している。また、上下方向に対して垂直な方向を水平方向と称する。なお、水平方向のうち、カバー30の延びる方向を前後方向、前後方向に垂直な方向を左右方向と称する。この方向の定義は、捕虫器の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0036】
本体部10は、カバー30と、2つの連結部40と、固定部50とを有する。本体部10は、左右方向に対称に形成された第1部材11と第2部材12とからなる。第1部材11は、本体部10の右側半分を構成する。また、第2部材12は、本体部10の左側半分を構成する。このため、第1部材11および第2部材12にはそれぞれ、カバー30の半分と、各連結部40の半分と、固定部50の半分とが含まれる。なお、本実施形態において、本体部10は、樹脂によって一体に成型されている。第1部材11の下端部と第2部材12の下端部とは、つながっている。
【0037】
このように、本体部10が左右対称形状であることにより、左右いずれの方向からも、同様に取り扱うことができる。したがって、圃場において多数の本体部10を取り付けたり、多数の本体部10について粘着部材9を交換したりする場合に、左右の向きを考慮せずに作業することができる。
【0038】
捕虫器1の使用時には、本体部10は、
図1に示すように、第1部材11と第2部材12とが左右対称となるように閉じられた閉状態で使用される。また、捕虫器の使用時には、粘着部材9が、上下方向および前後方向に延びる平面に沿う姿勢で、固定部50に取り付けられる。なお、本体部10の内部に粘着部材9を取り付けたり、粘着部材9を交換する場合には、
図3および
図4に示すように、本体部10の第1部材11と第2部材12とを開いた開状態とすることができる。
【0039】
カバー30は、内部に空間を有する筐体である。カバー30の内部には、粘着部材9を固定するための固定部50が配置されている。固定部50に粘着部材9が取り付けられると、カバー30は、粘着部材9を覆う。以後では、固定部50に粘着部材9が取り付けられ、かつ、カバー30が閉状態であることを「使用状態」と称する。
【0040】
図1および
図3~
図5に示すように、カバー30は、それぞれ、上カバー部31、左右一対の側カバー部32,33、および、前後一対の端カバー部34,35を有する。カバー30は、その大部分の領域に、貫通孔300が設けられている。貫通孔300は、捕獲対象とする昆虫が十分に通過できる大きさとなっている。
【0041】
上カバー部31は、固定部50の上方に配置され、固定部50の上方を覆う。すなわち、使用状態において、上カバー部31は、粘着部材9の上方に配置され、粘着部材9の上方を覆う。
【0042】
上カバー部31は、左右方向の中央付近に遮光部311が設けられている。遮光部311には、貫通孔300が配置されていない。これにより、遮光部311は、上カバー部31の上方から固定部50に向かう光の一部を遮断することができる。すなわち、遮光部311は、カバー30の上方から固定部50に固定された粘着部材9へ向かう光の一部を遮断することができる。粘着部材9上に、光と影のコントラストを作ることにより、捕虫効果を向上できる。
【0043】
一対の側カバー部32,33はそれぞれ、上カバー部31の左右の端部から下方へ延びる。ここで、右側の側カバー部32を右側カバー部32、左側の側カバー部33を左側カバー部33と称する。本実施形態では、左右の側カバー部32,33の下端部はつながっている。
【0044】
右側カバー部32は、固定部50の右側に配置される。右側カバー部32は、使用状態において、粘着部材9の右側の面を覆う。右側カバー部32は、第1右側カバー部321と、第2右側カバー部322とを有する。左側カバー部33は、固定部50の左側に配置される。左側カバー部33は、使用状態において、粘着部材9の左側の面を覆う。左側カバー部33は、第1左側カバー部331と、第2左側カバー部332とを有する。
【0045】
第1右側カバー部321は、上カバー部31の右側の端部から下方へ延びる。第1左側カバー部331は、上カバー部31の左側の端部から下方へ延びる。第1右側カバー部321と、第1左側カバー部331とは、左右方向に間隔を空けて略平行に配置される。
【0046】
第2右側カバー部322は、第1右側カバー部321の下端部から、下方かつ左側へ延びる。第2左側カバー部332は、第1左側カバー部331の下端部から、下方かつ右側へ延びる。第2右側カバー部322および第2左側カバー部332は、下端部において接続する。これにより、
図1および
図5に示すように、第2右側カバー部322および第2左側カバー部332は、固定部50の下方において前後方向に延びる下カバー部36を構成する。下カバー部36は、前後方向に見て、下方へ向かうにつれてすぼむ。
【0047】
一対の端カバー部34,35はそれぞれ、カバー30の前後方向の端部に配置される。ここで、前側の端カバー部34を前端カバー部34、後ろ側の端カバー部35を後端カバー部35と称する。前端カバー部34は、使用状態において、粘着部材9の前方を覆う。また、後端カバー部35は、使用状態において、粘着部材9の後方を覆う。
【0048】
連結部40は、テープまたは紐に対して取り付け可能な部位である。本実施形態では、連結部40は、保持テープ20に対して取り付けられる。連結部40は、カバー30および固定部50の上方に配置される。連結部40は、カバー30の上端から上方へ延びる。これにより、本体部10が、保持テープ20にぶら下げられる。
【0049】
2つの連結部40は、前後方向に間隔を空けて配置される。連結部40が2箇所あることにより、本体部10が保持テープ20に対して傾きにくい。
【0050】
具体的には、
図5に示すように、連結部40は、第1部材11に属する第1首部41および第1C字状部42と、第2部材12に属する第2首部43および第2C字状部44とを有する。第1首部41および第2首部43とは、上カバー部31の上面から上方に延びる。第1C字状部42は、第1首部41の上方に配置される。第2C字状部44は、第2首部43の上方に配置される。第1C字状部42は、前後方向に見て、左側に凹むC字状である。第2C字状部44は、前後方向に見て、右側に凹むC字状である。
【0051】
カバー30が閉状態となると、第1C字状部42と第2C字状部44とが接触し、第1C字状部42と第2C字状部44とによって前後に延びる筒状となる。使用前にカバー30を開状態から閉状態とする際に、第1C字状部42と第2C字状部44との間に保持テープ20を挟み込むことによって、連結部40を保持テープに連結できる。
【0052】
固定部50は、粘着部材9を取り付け可能な部位である。本実施形態では、固定部50は、第1部材11に含まれる2つの第1突起51と、第2部材12に含まれる2つの第2突起52とを有する。
【0053】
第1突起51は、右側カバー部32から左側へと延びる。第2突起52は、左側カバー部33から右側へと延びる。そして、第1突起51の左側の端部と、第2突起52の右側の端部とが、隙間を介して左右方向に対向する。
【0054】
第1突起51と第2突起52とはそれぞれ、前後方向に直交する板状である。すなわち、第1突起51と第2突起52とは、左右方向に延びる板状である。このため、粘着部材9と向かい合う第1突起51の左端部と、第2突起52の右端部との面積が小さい。これにより、固定部50と粘着部材9との接触面を小さくできる。したがって、粘着部材9の捕虫効果のある粘着面を広くすることができる。なお、第1突起51および第2突起52は、板状に限らず、左右方向に延びるピン状(細い柱状)であってもよい。その場合であっても、固定部50と粘着部材9との接触面を小さくできる。
【0055】
捕虫器1の使用時には、
図3に示すように、2つの第1突起51の左側の端部に粘着部材9を貼り付ける。その後、カバー30を閉状態とすることにより、第2突起52が粘着部材9の右側の面に沿って配置される。このように、第1突起51と第2突起52とによって粘着部材9を左右から挟み込むことによって、粘着部材9が左右方向にずれるのが抑制される。
【0056】
なお、本実施形態では、2つの第1突起51の双方が第2突起52と左右方向に向かい合っているが、本発明はこの限りではない。カバー30が複数の第1突起51と複数の第2突起52とを有している場合に、全ての第1突起51が第2突起52と向かい合わなくてもよいし、一部の第1突起51のみが第2突起52と向かい合ってもよい。
【0057】
このように、本体部10が、粘着部材9の下方を覆う下カバー部36を有する。これにより、作物82の上方に粘着部材9を配置した場合に、作物82が成長により上方へ伸びた場合であっても、粘着部材9に作物82が貼り付くのを抑制できる。
【0058】
特に、下カバー部36は、前後方向に見て、V字型である。すなわち、下カバー部36は、前後方向に見て、下方へ向かうにつれてすぼむ形状をしている。これにより、成長により作物82が下カバー部36に接触した後、さらに上方へ伸びる際に、下カバー部36の左右両側に沿って、左右へ分かれて成長しやすい。なお、下カバー部36は、前後方向に見てU字状であってもよい。その場合も同様に、作物82が下カバー部36に接触した後も、下カバー部36の左右両側に分かれて成長しやすい。
【0059】
なお、本実施形態では、カバー30が、下カバー部36の上方に第1右側カバー部321および第2左側カバー部332を有する。このように、右側カバー部32および左側カバー部33が粘着部材9の両面を覆うことにより、作物82が下カバー部36よりも上方まで成長した場合であっても、粘着部材9に作物82が貼り付くのを抑制できる。
【0060】
保持テープ20は、本体部10を保持するためのテープ状部である。保持テープ20はテープ状の部材であるが、本体部10は紐状の部材によって保持されてもよい。
図5に示すように、保持テープ20は、テープ本体21と、複数の光源22とを有する。テープ本体21は、布や樹脂等で形成されたテープ状の部材である。複数の光源22はそれぞれ、テープ本体21の下面に取り付けられる。すなわち、複数の光源22は、保持テープ20の下面に配置される。
【0061】
複数の光源22は、LED光源である。光源22は、保持テープ20のうち、本体部10が取り付けられる位置に配置される。1つの本体部10に対して、1つの光源22が配置されてもよいし、複数の光源22が配置されてもよい。例えば、2つの連結部40の間に、間隔を空けて5つの光源22が配置される。
【0062】
このようにすれば、光源22の発する光が、本体部10の周辺に広がる。すると、光源22の発する光に誘引された昆虫が、カバー30の周辺に集まる。このとき、貫通孔300を通ってカバー30の内部へと入った昆虫が、粘着部材9に捕らえられる。これにより、昆虫を駆除することができる。
【0063】
図6は、捕虫器1の配置の例を示した図である。
図6には、ハウス80内における畝81と捕虫器1の配置の例を示している。
図6の例では、4つの畝81のそれぞれに対して、電源100と、保持テープ20と、6つの本体部10とが配置されている。
【0064】
保持テープ20は、各本体部10が取り付けられる位置に、それぞれ1つまたは複数の光源22を有する。すなわち、
図6の例では、1つの保持テープ20は、8つの本体部10がそれぞれ配置される8箇所に、1つまたは複数の光源22を有する。
【0065】
図6の例では、複数の光源22は、第1波長を中心波長とする複数の第1光源と、第2波長を中心波長とする複数の第2光源とを含む。第2波長は、第1波長とは異なる波長である。このように、2種類以上の波長帯域の光を用いることにより、誘引される昆虫の種類が増える。これによって、効率良く昆虫を誘引できる。
【0066】
図6の例では、保持テープ20は、本体部10が配置される箇所として、3つの第1位置P1と、3つの第2位置P2とを有する。第1位置P1と、第2位置P2とは交互に配置される。保持テープ20の第1位置P1には、第1光源が配置される。保持テープ20の第2位置P2には、第2光源が配置される。これにより、第1位置P1に配置された本体部10には、第1波長によって誘引されやすい昆虫が集まる。また、第2位置P2に配置された本体部10には、第2波長によって誘引されやすい昆虫が集まる。
【0067】
本実施形態では、第1波長は、495nm以上570nm以下の緑色波長帯域の波長である。この第1波長の光により、ミナミキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、タバココナジラミ、ナガマドキノコバエ、チャバネアオカメムシ等の昆虫を効率良く誘引できる。
【0068】
また、第2波長は、315nm以上380nm以下の近紫外線UV-A波長帯域の波長である。この第2波長の光により、ミカンキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、タバココナジラミ、ナガマドキノコバエ、アシグロハモグリバエ、ショウジョウバエ、チャバネアオカメムシ等の昆虫を効率良く誘引できる。
【0069】
なお、
図6の例では、1つの本体部10の周辺に1種類の光源が配置されたが、本発明はこの限りではない。それぞれの本体部10の周辺に複数種類の光源が配置されてもよい。
【0070】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0071】
上記の実施形態では、本体部10は、光源22を有する保持テープ20に取り付けられた。しかしながら、本体部10は、光源を有していないテープや紐に取り付けられてもよい。
【0072】
上記の実施形態では、連結部40は、2つの部材によって構成された筒状の部位によってテープまたは紐を囲む構造であった。しかしながら、連結部40は、テープまたは紐に連結することができれば、他の構造であってもよい。連結部40は、例えば、フック状であってもよい。
【0073】
上記の実施形態では、
図1に示すように、カバー30の上カバー部31および側カバー部32,33に設けられた貫通孔300は長方形状であった。しかしながら、貫通孔300は、三角形状、四角形状、または六角形状等の任意の形状であってもよい。
【0074】
また、捕虫器の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 捕虫器
9 粘着部材
10 本体部
20 保持テープ
21 テープ本体
22 光源
30 カバー
31 上カバー部
32,33 側カバー部
36 下カバー部
40 連結部
50 固定部
51 第1突起
52 第2突起
300 貫通孔
311 遮光部