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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161751
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1343 20060101AFI20231031BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231031BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/13 505
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072285
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】西脇 章剛
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H192
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088HA08
2H088HA12
2H088HA14
2H088JA04
2H088MA01
2H092GA14
2H092GA17
2H092GA29
2H092GA49
2H092GA50
2H092GA64
2H092HA04
2H092JA24
2H092JA46
2H092KA04
2H092KA12
2H092NA01
2H092QA06
2H092RA10
2H192AA24
2H192BB12
2H192BB52
2H192BB73
2H192BC31
2H192CB34
2H192EA25
2H192EA43
2H192FB22
2H192FB42
2H192FB72
2H192JA33
2H192JB01
(57)【要約】
【課題】透過光量の低下を抑制する。
【解決手段】表示装置11は、第1基板21と、第2基板20と、第1方向に沿って延在する第1配線27と、第1配線27に対し第2方向に隣り合って配され、第1配線27よりも第2基板20に近い第1電極24と、第1電極24よりも第2基板20に近く、第1配線27及び第1電極24と重畳して配される第2電極25と、第1方向に沿って延在し、少なくとも第1配線27と重畳して配され、光を遮る第1重畳部29と、第1配線27よりも第2基板20に近く、第1電極24よりも第2基板20から遠い第3電極34と、を備え、第2電極25には、第1方向と交差する向きに沿って延在し、第1配線27及び第1電極24をそれぞれ横切り、間隔を空けて配される複数のスリット25Sが形成され、第3電極34は、少なくとも第1配線27及びスリット25Sの双方と重畳して配される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の主面と対向する主面を有する第2基板と、
前記第1基板に設けられ、前記第1基板の主面に沿う第1方向に沿って延在する第1配線と、
前記第1基板に設けられ、前記第1配線に対し、前記第1基板の主面に沿う方向であって前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配され、前記第1配線よりも前記第2基板に近い側に位置して配される第1電極と、
前記第1基板に設けられ、前記第1電極よりも前記第2基板に近い側に位置し、前記第1配線及び前記第1電極と重畳して配される第2電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1方向に沿って延在し、少なくとも前記第1配線と重畳して配され、光を遮る第1重畳部と、
前記第1基板に設けられ、前記第1配線よりも前記第2基板に近い側に位置し、前記第1電極よりも前記第2基板から遠い側に位置して配される第3電極と、を備え、
前記第2電極には、前記第1基板の主面に沿う向きであって前記第1方向と交差する向きに沿って延在し、前記第1配線及び前記第1電極をそれぞれ横切り、間隔を空けて配される複数のスリットが形成され、
前記第3電極は、少なくとも前記第1配線及び前記スリットの双方と重畳して配される表示装置。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第1方向に沿う長手状をなしており、
前記第2電極には、複数の前記スリットが、前記第1方向に対する角度よりも前記第2方向に対する角度の方が小さい向きに沿って延在して形成される請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1配線及び前記第1電極は、前記第2方向に交互に並んで複数ずつが配され、
前記第2電極には、複数の前記スリットが、複数ずつの前記第1配線及び前記第1電極を横切って形成される請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層を備え、
前記第1基板の主面は、複数ずつの前記第1配線及び前記第1電極が配されて画像が表示される表示領域と、少なくとも複数の前記第1電極が非配置とされて画像が表示されない非表示領域と、に区分されており、
前記第2電極には、複数の前記スリットが、前記表示領域の全域にわたって延在して形成され、
前記第2電極は、前記スリットに並行して延在し、前記第1配線及び前記第1電極をそれぞれ横切り、間に前記スリットを挟んで配される複数の第2電極部と、前記非表示領域に配されて複数の前記第2電極部に連ねられて枠状をなす枠状部と、を有する請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2電極は、前記スリットに並行して延在し、前記第1配線及び前記第1電極をそれぞれ横切り、間に前記スリットを挟んで配される複数の第2電極部を有しており、
前記第2電極部の幅が、前記スリットの幅よりも小さい請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1基板に設けられ、前記第1配線及び前記第1電極のそれぞれに接続されるスイッチング素子を備え、
前記第3電極は、前記第1電極と前記スイッチング素子との接続箇所と重畳する開口部を有し、前記開口部を除いてはベタ状に延在して配される請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1重畳部は、前記第1電極のうち、前記第1方向に沿う縁部と重畳して配される請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層を備え、
前記第2電極には、複数の前記スリットが、前記第1方向及び前記第2方向の双方に対して傾いた斜め方向に沿って延在し、ジグザグ状に屈曲して形成される請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1配線及び前記第1電極は、前記第2方向に交互に並んで複数ずつが配され、
前記第2電極には、複数の前記スリットの屈曲部が、前記第1配線と重畳して形成される請求項8記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置の一例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の表示装置は、絶縁性基材上にある複数の映像線および複数の走査線と、複数の映像線および複数の走査線と重畳する遮光膜と、平面視において、複数の映像線と複数の走査線とに囲まれた副画素領域内にある画素電極および共通電極と、画素電極と共通電極との間で発生する電界によって駆動される液晶層と、画素電極と共通電極との間にある第1絶縁層と、を備える。共通電極は、第1絶縁層と液晶層との間にあり、複数の映像線および複数の走査線と重畳し、画素電極と重畳する開口部を有する。遮光膜で囲まれた光透過領域において、画素電極の形状は、分岐部を有しない線形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-146694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような表示装置において、アレイ基板と対向基板とを貼り合わせる際に、遮光膜が映像線及び画素電極等に対して横方向に位置ずれすると、画素電極のうち、本来は遮光膜により遮光されない部分が遮光されるようになり、本来は遮光膜により遮光される部分が遮光されなくなることがある。その結果、画素電極の透過光量が減少する。特許文献1に記載の表示装置では、共通電極の開口部が画素電極の範囲に限定して配されており、具体的には1本の縦長な開口部が画素電極に対して重畳して配されている。このため、画素電極のうち開口部の縁部から最も遠い部分と開口部の縁部との距離が大きくなりがちであった。ここで、画素電極の透過光量は、開口部の縁部からの距離が大きくなるほど少なくなる傾向にある。この傾向に基づくと、上記した位置ずれに伴って、画素電極のうち開口部の縁部から最も遠い部分が、遮光膜により遮光されなくなれば、当該部分の透過光量が極端に少なくなる。このため、位置ずれに起因して画素電極の透過光量が大きく低下する、という問題が生じていた。
【0005】
本明細書に記載の技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、透過光量の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本明細書に記載の技術に関わる表示装置は、第1基板と、前記第1基板の主面と対向する主面を有する第2基板と、前記第1基板に設けられ、前記第1基板の主面に沿う第1方向に沿って延在する第1配線と、前記第1基板に設けられ、前記第1配線に対し、前記第1基板の主面に沿う方向であって前記第1方向と直交する第2方向に隣り合って配され、前記第1配線よりも前記第2基板に近い側に位置して配される第1電極と、前記第1基板に設けられ、前記第1電極よりも前記第2基板に近い側に位置し、前記第1配線及び前記第1電極と重畳して配される第2電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1方向に沿って延在し、少なくとも前記第1配線と重畳して配され、光を遮る第1重畳部と、前記第1基板に設けられ、前記第1配線よりも前記第2基板に近い側に位置し、前記第1電極よりも前記第2基板から遠い側に位置して配される第3電極と、を備え、前記第2電極には、前記第1基板の主面に沿う向きであって前記第1方向と交差する向きに沿って延在し、前記第1配線及び前記第1電極をそれぞれ横切り、間隔を空けて配される複数のスリットが形成され、前記第3電極は、少なくとも前記第1配線及び前記スリットの双方と重畳して配される。
【0007】
(2)また、上記表示装置は、上記(1)に加え、前記第1電極は、前記第1方向に沿う長手状をなしており、前記第2電極には、複数の前記スリットが、前記第1方向に対する角度よりも前記第2方向に対する角度の方が小さい向きに沿って延在して形成されてもよい。
【0008】
(3)また、上記表示装置は、上記(1)または上記(2)に加え、前記第1配線及び前記第1電極は、前記第2方向に交互に並んで複数ずつが配され、前記第2電極には、複数の前記スリットが、複数ずつの前記第1配線及び前記第1電極を横切って形成されてもよい。
【0009】
(4)また、上記表示装置は、上記(3)に加え、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層を備え、前記第1基板の主面は、複数ずつの前記第1配線及び前記第1電極が配されて画像が表示される表示領域と、少なくとも複数の前記第1電極が非配置とされて画像が表示されない非表示領域と、に区分されており、前記第2電極には、複数の前記スリットが、前記表示領域の全域にわたって延在して形成され、前記第2電極は、前記スリットに並行して延在し、前記第1配線及び前記第1電極をそれぞれ横切り、間に前記スリットを挟んで配される複数の第2電極部と、前記非表示領域に配されて複数の前記第2電極部に連ねられて枠状をなす枠状部と、を有してもよい。
【0010】
(5)また、上記表示装置は、上記(1)から上記(4)のいずれかに加え、前記第2電極は、前記スリットに並行して延在し、前記第1配線及び前記第1電極をそれぞれ横切り、間に前記スリットを挟んで配される複数の第2電極部を有しており、前記第2電極部の幅が、前記スリットの幅よりも小さくてもよい。
【0011】
(6)また、上記表示装置は、上記(1)から上記(5)のいずれかに加え、前記第1基板に設けられ、前記第1配線及び前記第1電極のそれぞれに接続されるスイッチング素子を備え、前記第3電極は、前記第1電極と前記スイッチング素子との接続箇所と重畳する開口部を有し、前記開口部を除いてはベタ状に延在して配されてもよい。
【0012】
(7)また、上記表示装置は、上記(1)から上記(6)のいずれかに加え、前記第1重畳部は、前記第1電極のうち、前記第1方向に沿う縁部と重畳して配されてもよい。
【0013】
(8)また、上記表示装置は、上記(1)から上記(7)のいずれかに加え、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層を備え、前記第2電極には、複数の前記スリットが、前記第1方向及び前記第2方向の双方に対して傾いた斜め方向に沿って延在し、ジグザグ状に屈曲して形成されてもよい。
【0014】
(9)また、上記表示装置は、上記(8)に加え、前記第1配線及び前記第1電極は、前記第2方向に交互に並んで複数ずつが配され、前記第2電極には、複数の前記スリットの屈曲部が、前記第1配線と重畳して形成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に記載の技術によれば、透過光量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係るヘッドマウントディスプレイを使用者が頭部に装着した状態を示す概略斜視図
図2】ヘッドマウントディスプレイを構成する頭部装着器具に備わる液晶表示装置及びレンズ部と、使用者の眼球と、の光学的関係を示す概略側面図
図3】液晶表示装置を構成する液晶パネルとフレキシブル基板と制御回路基板との接続構成を示す概略平面図
図4】液晶パネルに備わるアレイ基板の表示領域における画素配列を示す回路図
図5】液晶パネルの表示領域における画素配列を示す平面図
図6】液晶パネルのvi-vi線断面図
図7】液晶パネルのvii-vii線断面図
図8】液晶パネルの表示領域における画素配列を示し、第3透明電極膜からなる構成を網掛け状に示す平面図
図9】アレイ基板の全体を示し、第3透明電極膜からなる構成を網掛け状に示す平面図
図10】液晶パネルの表示領域における画素配列を示し、第1透明電極膜からなる構成を網掛け状に示す平面図
図11】比較実験1の比較例1に係る液晶パネルの表示領域における画素配列を示し、共通電極を網掛け状に示す平面図
図12】比較実験1の比較例1において、アレイ基板及び対向基板がX軸方向に位置ずれしない場合の透過率分布を示す図
図13】比較実験1の比較例1において、アレイ基板に対して対向基板がX軸方向に位置ずれした場合の透過率分布を示す図
図14】比較実験1の実施例1において、アレイ基板及び対向基板がX軸方向に位置ずれしない場合の透過率分布を示す図
図15】比較実験1の実施例1において、アレイ基板に対して対向基板がX軸方向に位置ずれした場合の透過率分布を示す図
図16】比較実験2において、アレイ基板に対する対向基板のX軸方向の位置ずれ量と相対透過率との関係を表すグラフ
図17】比較実験3において、液晶パネルの表示領域の中央部を選択的に白表示し、その周りを黒表示した状態を示す説明図
図18】比較実験3の比較例2に係る透過率分布を示す図
図19】比較実験3の実施例1に係る透過率分布を示す図
図20】実施形態2に係る液晶パネルの表示領域における画素配列を示し、第1透明電極膜からなる構成を網掛け状に示す平面図
図21】実証実験1の実施例2に係る透過率分布を示す図
図22】実施形態3に係る液晶パネルの表示領域における画素配列を示し、第1透明電極膜からなる構成を網掛け状に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図19によって説明する。本実施形態では、ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head-Mounted Display)10HMD及びそれに用いられる液晶表示装置10を例示する。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。
【0018】
図1を用いてゴーグル型のヘッドマウントディスプレイ10HMDの外観を説明する。ヘッドマウントディスプレイ10HMDは、図1に示すように、使用者の頭部10HDに装着される頭部装着器具10HMDaを備える。頭部装着器具10HMDaは、使用者の両方の眼を囲っている。
【0019】
図2を用いて頭部装着器具10HMDaの構成を説明する。頭部装着器具10HMDaには、図2に示すように、画像を表示する液晶表示装置10と、液晶表示装置10に表示された画像を使用者の眼球10EYに結像させるレンズ部10REと、が少なくとも内蔵されている。液晶表示装置10は、液晶パネル(表示装置)11と、液晶パネル11に光を照射するバックライト装置(照明装置)12と、を少なくとも備える。液晶パネル11のうちの、レンズ部10RE側の主面が、画像を表示する表示面11DSとされる。レンズ部10REは、液晶表示装置10と使用者の眼球10EYとの間に介在するよう配される。レンズ部10REにより光に屈折作用が付与される。このレンズ部10REの焦点距離を調整することで、使用者は、眼球10EYの水晶体10EYaを介して網膜10EYbに結像される像が、眼球10EYからの距離L2の位置に見かけ上存在する仮想ディスプレイ10VDに表示されている、と認識することができる。この距離L2は、眼球10EYから液晶表示装置10までの実際の距離L1よりも遙かに大きい。これにより、使用者は、液晶表示装置10の画面サイズ(例えば0.数インチから数インチ程度)よりも遙かに大きな画面サイズ(例えば数十インチから数百インチ程度)の仮想ディスプレイ10VDに表示された虚像である拡大画像を視認することができる。
【0020】
なお、頭部装着器具10HMDaに液晶表示装置10を1つ搭載し、その液晶表示装置10に右目用画像と左目用画像とを表示させることが可能である。それ以外に、頭部装着器具10HMDaに液晶表示装置10を2つ搭載し、一方の液晶表示装置10に右目用画像を、他方の液晶表示装置10に左目用画像を、それぞれ表示させことも可能である。また、頭部装着器具10HMDaには、使用者の耳に宛てがわれて音声を発するイヤフォンなどが備えられてもよい。
【0021】
図3等を用いて液晶表示装置10に備わる液晶パネル11の構成について説明する。なお、バックライト装置12の構成は、既知の通りであり、例えば、LEDなどの光源や光源からの光に光学作用を付与することで面状の光に変換する光学部材などを有する。液晶パネル11には、図3に示すように、表示駆動を行うためのドライバ13と、フレキシブル基板14と、がACF(Anisotropic Conductive Film)を介して実装されている。フレキシブル基板14には、ドライバ13に対して各種入力信号を外部から供給する制御回路基板(信号供給源)15が接続されている。
【0022】
液晶パネル11の主面のうちの中央側部分は、図3に示すように、画像を表示可能な表示領域(アクティブエリア)AAとされる。液晶パネル11の主面のうちの表示領域AAを取り囲む外周側部分は、平面に視て枠状(額縁状)をなす非表示領域(ノンアクティブエリア)NAAとされる。なお、図3では、一点鎖線が表示領域AAの外形を表しており、当該一点鎖線よりも外側の領域が非表示領域NAAとなっている。液晶パネル11は、一対の基板20,21を貼り合わせてなる。一対の基板20,21のうち、表側(正面側)の基板が、対向基板(第2基板、CF基板)20とされる。一対の基板20,21のうち、裏側(背面側)の基板が、アレイ基板(第1基板、アクティブマトリクス基板)21とされる。対向基板20及びアレイ基板21は、互いの内側の主面(内面)が対向して配される。対向基板20及びアレイ基板21の各主面は、X軸方向及びY軸方向に沿う面であり、その法線方向がZ軸方向と一致している。対向基板20及びアレイ基板21は、それぞれほぼ透明なガラス基板(基板)20GS,21GSを有しており、各ガラス基板20GS,21GSの内面側に各種の膜が積層形成されてなる。なお、両基板20,21の外面側には、それぞれ偏光板が貼り付けられている。
【0023】
図4を用いてアレイ基板21の表示領域AAにおける画素配列の概要を説明する。アレイ基板21の表示領域AAにおける内面側には、図4に示すように、格子状をなす複数本ずつのゲート配線(第2配線、走査配線)26及びソース配線(第1配線、画像配線)27が配されている。ゲート配線26及びソース配線27の交差部位付近には、TFT(スイッチング素子、薄膜トランジスタ)23及び画素電極(第1電極)24が設けられている。ゲート配線26は、表示領域AAを横断する形でX軸方向(第2方向)に沿って延在し、各TFT23のゲート電極23Aに接続される。ゲート配線26は、複数がX軸方向と直交するY軸方向(第1方向)に間隔を空けて並んで配される。ソース配線27は、表示領域AAを縦断する形でY軸方向に沿って延在し、各TFT23のソース電極23Bに接続される。ソース配線27は、複数がX軸方向に間隔を空けて配される。TFT23及び画素電極24は、複数ずつX軸方向及びY軸方向に沿って規則的に並んでマトリクス状(行列状)に平面配置されている。画素電極24は、TFT23のドレイン電極23Cに接続されている。TFT23は、上記したゲート電極23A、ソース電極23B及びドレイン電極23Cに加えて、半導体部23Dを有する。半導体部23Dは、半導体材料からなり、ソース電極23Bとドレイン電極23Cとに接続される。そして、TFT23は、ゲート配線26に供給される走査信号に基づいて駆動されると、ソース配線27に供給される画像信号(データ信号)に基づいた電位に画素電極24を充電する。上記したゲート配線26、ソース配線27及びTFT23は、画素を駆動する回路である画素回路部を構成する。
【0024】
図5を用いてアレイ基板21の表示領域AAにおける画素配列を具体的に説明する。図5には、X軸方向に並ぶ3つの画素列が図示されている。画素電極24は、図5に示すように、平面に視て縦長の方形状とされる。画素電極24は、Y軸方向に間隔を空けた2つのゲート配線26と、X軸方向に間隔を空けた2つのソース配線27と、により囲まれた領域に配されている。画素電極24は、短辺が長辺の約1/3の長さとされる。X軸方向に間隔を空けて並ぶ複数のソース配線27の配列間隔は、Y軸方向に間隔を空けて並ぶ複数のゲート配線26の配列間隔の約1/3程度とされる。
【0025】
ゲート配線26は、図5に示すように、線幅が、Y軸方向に隣り合う2つの画素電極24の間の間隔よりも僅かに大きい。従って、ゲート配線26は、X軸方向に沿う両側縁部が、Y軸方向に隣り合う2つの画素電極24のY軸方向の各端部に対してそれぞれ僅かに重畳している。ゲート配線26よりも図5の上側には、画素電極24及びTFT23のドレイン電極23Cの双方と重畳する第1コンタクトホール23CHが配されている。第1コンタクトホール23CHは、画素電極24とドレイン電極23Cとの間に介在する絶縁膜(後述する第2絶縁膜F2及び第3絶縁膜F3)に開口して形成されている。画素電極24は、第1コンタクトホール23CHを通してドレイン電極23Cに接続されている。第1コンタクトホール23CHは、画素電極24のうち、Y軸方向の一方(図5の下側)の端部付近に配されている。なお、ドレイン電極23Cは、平面に視て第1コンタクトホール23CHよりも一回り大きい程度の大きさの方形状をなしている。
【0026】
ソース配線27は、図5に示すように、線幅が、X軸方向に隣り合う2つの画素電極24の間の間隔よりも僅かに大きい。従って、ソース配線27は、Y軸方向に沿う両側縁部が、X軸方向に隣り合う2つの画素電極24のX軸方向の各端部に対してそれぞれ僅かに重畳している。なお、ソース配線27の線幅は、ゲート配線26の線幅よりも小さい。ソース配線27は、部分的に拡幅されており、その拡幅部分がTFT23のソース電極23Bを構成している。ソース電極23Bは、上記したドレイン電極23Cよりもゲート電極23AからY軸方向に遠い配置とされる。ソース電極23Bには、半導体部23Dの一方の端部が接続される。また、ドレイン電極23Cには、半導体部23Dの他方の端部が接続される。なお、半導体部23Dは、ソース電極23Bからドレイン電極23Cに至るまで途中で2つのゲート電極23Aを縦断するよう途中で複数回屈曲されている。
【0027】
主に図6を用いて液晶パネル11における画素PXの中央部付近の断面構成を説明する。液晶パネル11は、図6に示すように、一対の基板20,21間に配されて電界印加に伴って光学特性が変化する物質である液晶分子を含む液晶層(媒質層)22を有する。液晶パネル11を構成する対向基板20の内面側における表示領域AAには、青色(B)、緑色(G)及び赤色(R)を呈する3色のカラーフィルタ28が設けられている。互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ28は、ゲート配線26の延在方向(X軸方向)に隣り合うよう並んで配される。互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ28は、ソース配線27の延在方向(概ねY軸方向)に沿って延在している。このように、互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ28は、全体としてストライプ状に配列されている。これらのカラーフィルタ28は、アレイ基板21側の各画素電極24と平面に視て重畳する配置とされている。互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ28は、その境界(色境界)がソース配線27と重畳する配置とされる。この液晶パネル11においては、X軸方向に沿って並ぶR,G,Bのカラーフィルタ28と、各カラーフィルタ28と対向する3つの画素電極24と、が3色の画素PXをそれぞれ構成している。そして、この液晶パネル11においては、X軸方向に沿って隣り合うR,G,Bの3色の画素PXによって所定の階調のカラー表示を可能な表示画素が構成されている。画素PXにおけるY軸方向の配列ピッチは、X軸方向の配列ピッチの3倍程度とされる。
【0028】
本実施形態に係る液晶パネル11は、上記したヘッドマウントディスプレイ10HMDに用いられるものであることから、極めて高い精細度となっており、X軸方向についての画素PXの配列ピッチは、例えば6μm程度となっている。なお、液晶パネル11の画素密度は、例えば1410ppi程度とされる。これに対し、ゲート配線26やソース配線27の線幅は、例えば1.5μm~2.5μm程度となっている。
【0029】
対向基板20には、図5及び図6に示すように、互いに異なる色を呈する複数のカラーフィルタ28を仕切るよう、第1遮光部(第1重畳部、ブラックマトリクス)29が設けられている。第1遮光部29は、遮光性を有する遮光性材料(例えばアクリルやポリイミドなどの感光性樹脂材料にカーボンブラックなどの顔料を含有させた材料等)からなる。第1遮光部29は、バックライト装置12から照射される光等を遮る。第1遮光部29は、Y軸方向に沿ってほぼ直線状に延在し、X軸方向にカラーフィルタ28を挟むよう間隔を空けて複数が並んで配される。第1遮光部29は、アレイ基板21のソース配線27と重畳する配置とされる。第1遮光部29は、ソース配線27と協働して、異なる色を呈する画素PX間に生じ得る混色を防ぐことができる。第1遮光部29は、幅寸法(X軸方向の寸法)が、ソース配線27の線幅よりも大きい。従って、第1遮光部29は、Y軸方向に沿う両側縁部が、X軸方向に隣り合う2つの画素電極24のうち、Y軸方向に沿う各縁部(X軸方向の各縁部)に対して重畳している。第1遮光部29と画素電極24との重畳幅は、ソース配線27と画素電極24との重畳幅よりも大きい。また、カラーフィルタ28の上層側(液晶層22側)には、平坦化のために対向基板20のほぼ全域にわたってベタ状に配されるオーバーコート膜30が設けられている。両基板20,21のうち、液晶層22に接する最内面(最上層)には、液晶層22に含まれる液晶分子を配向させるための配向膜31,32がそれぞれ形成されている。配向膜31,32は、その表面に光配向処理が行われることで、液晶分子に配向規制力を付与することが可能となる光配向膜とされる。図5には、配向膜31,32によって配向される液晶分子の配向方向(チルト方向、液晶層22に電圧が印加されていないときに液晶分子の方向)が矢線により示されている。本実施形態では、液晶分子の配向方向は、X軸方向と一致している。液晶分子の配向方向は、製造過程で配向膜31,32に照射される配向処理光の照射方向と一致している。
【0030】
アレイ基板21の表示領域AAにおける内面側には、図6に示すように、全ての画素電極24と重畳する共通電極(第2電極、上層側共通電極)25が設けられている。共通電極25は、画素電極24よりも上層側に形成されている。共通電極25は、少なくとも表示領域AAのほぼ全域にわたって延在している。共通電極25には、後述するスリット25Sが形成されている。共通電極25には、共通電位(基準電位)の共通電位信号(基準電位信号)が供給される。画素電極24が充電されると、互いに重畳する画素電極24と共通電極25のスリット25Sの縁部との間に電位差が生じる。すると、画素電極24と共通電極25との間には、アレイ基板21の主面に沿う成分に加えて、アレイ基板21の主面に対する法線方向の成分を含むフリンジ電界(斜め電界)が生じる。このフリンジ電界を利用することで液晶層22に含まれる液晶分子の配向状態を制御することができる。つまり、本実施形態に係る液晶パネル11は、動作モードがFFS(Fringe Field Switching)モードの一種とされている。なお、共通電極25の詳しい構成については、後に改めて説明する。
【0031】
ここで、アレイ基板21のガラス基板21GSに積層される各種の膜について、図6を参照して詳しく説明する。アレイ基板21のガラス基板21GSには、図6に示すように、下層側(ガラス基板21GS側)から順に、第1金属膜(第1遮光膜)、ベースコート膜、半導体膜、第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)、第2金属膜、第2絶縁膜21F1、第3金属膜、第3絶縁膜21F2、第1透明電極膜、第4絶縁膜21F3、第2透明電極膜、第5絶縁膜21F4、第3透明電極膜、配向膜31、が少なくとも積層形成されている。なお、図6には、第2金属膜よりも上層側の膜が図示されている。
【0032】
第1金属膜、第2金属膜及び第3金属膜は、いずれも1種類の金属材料からなる単層膜または異なる種類の金属材料からなる積層膜や合金とされることで導電性及び遮光性を有している。半導体膜は、多結晶化されたシリコン薄膜(多結晶シリコン薄膜)の一種であるCGシリコン(Continuous Grain Silicon)薄膜からなる。CGシリコン薄膜は、例えばアモルファスシリコン薄膜に金属材料を添加し、550℃以下程度の低温で短時間の熱処理を行うことで形成されており、それによりシリコン結晶の結晶粒界における原子配列に連続性を有している。第1透明電極膜、第2透明電極膜及び第3透明電極膜は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明電極材料からなる。ベースコート膜、第1絶縁膜、第2絶縁膜21F1、第4絶縁膜21F3及び第5絶縁膜21F4は、いずれも無機材料(無機樹脂材料)の一種であるSiO(酸化シリコン、シリコン酸化物)やSiN(窒化シリコン)などからなる。第3絶縁膜21F2は、有機材料(有機樹脂材料)の一種であるPMMA(アクリル樹脂)などからなる。有機材料からなる第3絶縁膜21F2は、無機材料からなるベースコート膜、第1絶縁膜、第2絶縁膜21F1、第4絶縁膜21F3及び第5絶縁膜21F4よりも膜厚が大きいのが通常である。
【0033】
半導体膜は、図5に示すように、TFT23の半導体部23Dを構成する。第2金属膜は、ゲート配線26及びTFT23のゲート電極23A等を構成する。第1絶縁膜は、互いに重畳する半導体部23Dとゲート電極23Aとの間に介在してこれらの間の間隔を所定の値に保つ。このように、本実施形態に係るTFT23は、ゲート電極23Aが、半導体部23Dに対して第1絶縁膜を介して上層側に重畳配置される、いわゆるトップゲート型である。第3金属膜は、ソース配線27、TFT23のソース電極23B及びドレイン電極23C等を構成する。第2絶縁膜21F1は、互いに交差するゲート配線26とソース配線27との間に介在してこれらを絶縁する。第2透明電極膜は、画素電極24を構成する。第3金属膜と第2透明電極膜との間に介在する第3絶縁膜21F2及び第4絶縁膜21F3のうち、ドレイン電極23C及び画素電極24の双方と重畳する位置には、既述した第1コンタクトホール23CHが開口形成されている。第3透明電極膜は、共通電極25を構成する。第2透明電極膜と第3透明電極膜との間に介在する第5絶縁膜21F4は、互いに重畳する画素電極24と共通電極25との間に介在してこれらを絶縁する。また、半導体膜と第3金属膜との間に介在する第1絶縁膜及び第2絶縁膜21F1のうち、ソース電極23Bと重畳する位置には、第2コンタクトホールが開口形成されている。第2コンタクトホールを通してソース電極23Bと半導体部23Dとが接続される。第1絶縁膜及び第2絶縁膜21F1のうち、ドレイン電極23Cと重畳する位置には、第3コンタクトホールが開口形成されている。第3コンタクトホールを通してドレイン電極23Cと半導体部23Dとが接続される。
【0034】
第1金属膜は、図5に示すように、アレイ基板21において少なくとも半導体部23Dに対して重畳して配される第2遮光部33を構成する。第2遮光部33は、半導体部23Dに対して下層側に配されているので、バックライト装置12から半導体部23Dに対して下層側から照射される光を遮ることができる。これにより、半導体部23Dに光が照射された場合に生じ得るTFT23の特性の変動を抑制することができる。第2遮光部33は、複数の画素PXに跨がるようX軸方向に沿って延在する横長の帯状をなす。第2遮光部33は、幅寸法がX軸方向についての位置に応じて変化するものの、最小の幅寸法がゲート配線26の線幅よりも大きい。第2遮光部33は、重畳する画素PXに備わる各TFT23の半導体部23Dに対してほぼ全域にわたって重畳して配される。また、第2遮光部33は、各TFT23に備わるゲート電極23Aの全域に対して重畳し、ドレイン電極23Cの一部または全域に対して重畳して配される。ベースコート膜は、第1金属膜からなる第2遮光部33と、半導体膜からなる半導体部23Dと、の間に介在し、両者を絶縁状態に保つ。また、ベースコート膜によりガラス基板21GSからの不純物が半導体膜に拡散するのを防ぐことができる。
【0035】
ここで、主に図6から図9を用いて第3透明電極膜からなる共通電極25の構成について詳しく説明する。図8及び図9には、第3透明電極膜からなる構成(共通電極25)を網掛け状にして図示されている。共通電極25には、図8に示すように、Y軸方向と交差する向きに沿って延在するスリット25Sが設けられている。スリット25Sは、X軸方向及びY軸方向の双方に対して傾いた斜め方向に沿って延在する帯状の開口である。具体的には、スリット25Sは、Y軸方向に対して約80°傾くとともに、X軸方向に対して約10°傾いた斜め方向に沿って延在し、図8の右上がりの傾斜となっている。上記した斜め方向に沿って延在するスリット25Sは、ソース配線27及び画素電極24をそれぞれ横切る。スリット25Sの延在方向は、液晶分子の配向方向と交差する関係となっている。スリット25Sは、Y軸方向に間隔を空けて複数が配されている。共通電極25のうち、スリット25Sの非形成部分が、共通電極部25Pである。共通電極部25Pは、スリット25Sに並行して延在する帯状をなしており、ソース配線27及び画素電極24をそれぞれ横切っている。共通電極部25Pは、Y軸方向に間隔を空けて複数が配されている。Y軸方向に隣り合う2つの共通電極部25Pの間には、スリット25Sが挟まれる。Y軸方向に隣り合う2つのスリット25Sの間には、共通電極部25Pが挟まれる。複数ずつの共通電極部25P及びスリット25Sは、Y軸方向に交互に繰り返し並んで配されている。
【0036】
ところで、液晶パネル11の製造過程において、アレイ基板21及び対向基板20を、互いの主面が対向するよう配する際には、両基板20,21にX軸方向に位置ずれが生じる場合がある。その場合、対向基板20に設けられた第1遮光部29が、アレイ基板21に設けられたソース配線27及び画素電極24に対してX軸方向に位置ずれする。この位置ずれが生じると、画素電極24の透過光量が低下する。その点、本実施形態によれば、上記のように共通電極25のスリット25Sを画素電極24の範囲外にまで延ばすようにしている。従って、高精細化に伴って画素電極24の短辺寸法が約6μm程度にまで小型化した場合でも、画素電極24に対して複数のスリット25Sを重畳配置することができる。このようにすれば、画素電極24のうち、共通電極25におけるスリット25Sの縁部から最も遠い部分は、共通電極部25Pを挟む2つのスリット25Sの中間位置となり、スリット25Sの縁部との距離が従来よりも小さくなる。ここで、画素電極24の透過光量は、共通電極25におけるスリット25Sの縁部からの距離が大きくなるほど低下する傾向にある。この傾向に基づけば、画素電極24のうち、共通電極25におけるスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離が従来よりも小さくされることで、従来よりも画素電極24の透過光量を多く確保することができる。これにより、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下が従来よりも抑制される。
【0037】
しかも、複数のスリット25Sは、図8に示すように、Y軸方向に対する角度よりもX軸方向に対する角度の方が小さい向きに沿って延在して形成されている。仮にスリット25Sが、Y軸方向に対する角度よりもX軸方向に対する角度の方が大きい向きに沿って延在する場合に比べると、より多くのスリット25Sを画素電極24に対して重畳配置させることができる。このように、共通電極25にスリット25Sが多く形成されると、スリット25Sの配列ピッチ(共通電極部25Pの幅)が小さくなる。このことから、画素電極24のうち、共通電極25におけるスリット25Sの縁部から最も遠い部分と、共通電極25におけるスリット25Sの縁部と、の距離がより小さくなる。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下がより抑制される。
【0038】
さらには、複数のスリット25Sは、図8に示すように、X軸方向に交互に繰り返し並ぶ複数(少なくとも3つ)ずつのソース配線27及び画素電極24を横切って形成されている。仮に、スリット25Sの形成範囲が1つずつのソース配線27及び画素電極24に限定される場合に比べると、より多くのスリット25Sを画素電極24に対して重畳配置し易くなる。このようにすれば、画素電極24のうち、共通電極25におけるスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離をより小さくすることができる。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下がより抑制される。
【0039】
複数のスリット25Sは、図9に示すように、アレイ基板21において表示領域AAの全域にわたって延在し、その延在方向の端部が非表示領域NAAに達するよう形成されている。上記した通り、複数のスリット25Sは、Y軸方向に対する角度よりもX軸方向に対する角度の方が小さい向きに沿って延在して形成されている。従って、複数のスリット25Sには、表示領域AAにおいてX軸方向に沿って並ぶ複数ずつのソース配線27及び画素電極24を全て横切るものが含まれる。図9では、スリット25Sの見やすさを担保するため、スリット25Sを実際よりも太く誇張して図示している。これに伴い、共通電極25を構成する複数の共通電極部25Pは、アレイ基板21において表示領域AAの全域(X軸方向の全長)にわたって延在し、その延在方向(Y軸方向に対する角度よりもX軸方向に対する角度の方が小さい向き)の端部が非表示領域NAAに達するよう形成されている。複数の共通電極部25Pには、表示領域AAにおいてX軸方向に沿って並ぶ複数ずつのソース配線27及び画素電極24を全て横切るものが含まれる。共通電極25は、複数の共通電極部25Pに加えて、複数の共通電極部25Pに連ねられる枠状部25Fを有する。枠状部25Fは、アレイ基板21の非表示領域NAAに配され、平面に視て非表示領域NAAに沿って延在する枠状をなしている。枠状部25Fには、複数の共通電極部25Pにおける延在方向の両端部がそれぞれ連ねられている。枠状部25Fには、アレイ基板21に設けられた配線が接続されており、フレキシブル基板14によりアレイ基板21に伝送される共通電位が、上記した配線によって枠状部25Fに供給されている。このように、複数のスリット25Sにおける延在方向の各端部が非表示領域NAAに配置されているから、スリット25Sにおける延在方向の端部付近において液晶分子の配向乱れが生じても、表示領域AAに表示される画像に悪影響が及び難くなる。また、複数の共通電極部25Pは、非表示領域NAAに配された枠状部25Fに連ねられることで、枠状部25Fを介して電位が供給される。
【0040】
共通電極部25Pの幅W1は、図8に示すように、スリット25Sの幅W2よりも小さい。具体的には、共通電極部25Pの幅W1が例えば1.5μm程度とされるのに対し、スリット25Sの幅W2が例えば2μm程度とされる。複数の共通電極部25Pは、幅W1が同一とされる。複数のスリット25Sは、幅W2が同一とされる。このようにすれば、仮に共通電極部25Pとスリット25Sとの幅の大小関係を逆にした場合に比べると、画素電極24のうち、共通電極25におけるスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離をより小さくすることができる。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下がより抑制される。
【0041】
上記したように、共通電極25には、ソース配線27及び画素電極24を横切るスリット25Sが形成されている。この構成により、ソース配線27のうち、スリット25Sと重畳する部分は、図7に示すように、共通電極25により表側から覆われることがない。このため、ソース配線27のうち、スリット25Sと重畳する部分から生じる電界は、共通電極25により遮蔽されずに、液晶層22に含まれる液晶分子の配向に影響を与え得る。すると、液晶分子の配向に乱れが生じるため、光漏れが発生し易くなり、コントラスト性能等の表示性能が悪化するおそれがある。
【0042】
これに対し、本実施形態に係るアレイ基板21には、図7及び図10に示すように、第1透明電極膜からなる遮蔽電極(第3電極、下層側共通電極)34が設けられている。以下では、主に図7及び図10を用いて遮蔽電極34の構成について詳しく説明する。図10には、第1透明電極膜からなる構成(遮蔽電極34)を網掛け状にして図示されている。第1透明電極膜からなる遮蔽電極34は、第3金属膜からなるソース配線27よりも対向基板20に近い側、つまり表側(上層側)に位置し、第2透明電極膜からなる画素電極24よりも対向基板20から遠い側、つまり裏側(下層側)に位置して配されている。遮蔽電極34には、共通電位の共通電位信号が供給されている。従って、遮蔽電極34及び共通電極25は、同電位とされる。そして、遮蔽電極34は、少なくともソース配線27及びスリット25Sの双方と重畳して配されている。つまり、ソース配線27のうち、スリット25Sと重畳していて共通電極25により覆われない部分は、遮蔽電極34により覆われている。従って、ソース配線27から生じる電界のうち、スリット25Sに起因して共通電極25では遮蔽されない電界を、遮蔽電極34によって良好に遮蔽することができる。これにより、スリット25Sに起因する電界漏れが抑制され、電界漏れに起因する表示品位の悪化を抑制することができる。
【0043】
遮蔽電極34は、図10に示すように、画素電極24とTFT23(ドレイン電極23C)との接続箇所である第1コンタクトホール23CHと重畳する開口部34Aを有する。第2透明電極膜からなる画素電極24は、第3絶縁膜21F2及び第4絶縁膜21F3の第1コンタクトホール23CHと、第1透明電極膜からなる遮蔽電極34の開口部34Aと、を通して、第3金属膜からなるドレイン電極23Cに接続されている。そして、遮蔽電極34は、アレイ基板21の面内において、開口部34Aを除いてはベタ状に延在して配されている。遮蔽電極34は、表示領域AAの全域にわたって延在し、その外周端部が非表示領域NAAに至るとともに共通電極25の枠状部25Fと重畳する。従って、遮蔽電極34は、表示領域AAにおいて、画素電極24の一部(TFT23との接続箇所)を除いた大部分に対して重畳するとともに、ソース配線27のほぼ全域に対して重畳して配されている。このような遮蔽電極34により、ソース配線27から生じる電界が良好に遮蔽され、液晶層22側に漏れ出すことが避けられる。これにより、電界漏れに起因して液晶分子の配向に乱れが生じるのを避けることができ、表示品位をより良好に保つことができる。
【0044】
ここで、本実施形態に係る液晶パネル11の優位性を検証するため、以下の比較実験1を行った。この比較実験1では、比較実験1よりも前の段落にて説明した構成の液晶パネル11を実施例1とし、共通電極25-1を変更した上で、第1透明電極膜からなる遮蔽電極34及び第4絶縁膜21F3を除去した構成の液晶パネルを比較例1とした。比較例1に係る液晶パネルにおける画素配列は、図11に示される通りである。図11では、共通電極25-1を網掛け状にして図示している。比較例1に備わる共通電極25-1には、図11に示すように、画素電極24の形成範囲に限定されたスリット25S-1が形成されている。スリット25S-1は、Y軸方向に対して約10°傾いた斜め方向に沿って延在し、図11の右上がりの傾斜となっている。つまり、スリット25S-1は、X軸方向に対する角度よりもY軸方向に対する角度の方が小さい向きに沿って延在する。スリット25S-1は、1つの画素電極24に対して1つが重畳して配されており、ソース配線27を横切ることはない。スリット25S-1の幅寸法は、2μm程度とされる。共通電極25-1において、X軸方向に隣り合う2つのスリット25S-1の間の間隔は、4μm程度とされる。なお、X軸方向に隣り合う2つのスリット25S-1の間に、もう1本のスリット25S-1を設けようとすると、スリット25S-1間の間隔が1μm程度となり、共通電極25-1に断線が生じ易くなる。このため、そのような構成は、実現が困難である。
【0045】
比較実験1では、上記した比較例1及び実施例1に係る各液晶パネルにおいて、アレイ基板21及び対向基板20がX軸方向に位置ずれしない場合と、アレイ基板21に対して対向基板20をX軸方向に位置ずれさせた場合と、でそれぞれ全画面の白表示(最大階調表示)を行った上で透過光量を測定し、透過率分布を作成した。比較例1に係る透過率分布は、図12及び図13に示されている。実施例1に係る透過率分布は、図14及び図15に示されている。図12及び図14は、両基板20,21が位置ずれしない場合の透過率分布を示す。図13及び図15は、対向基板20を位置ずれさせた場合の透過率分布を示す。対向基板20は、アレイ基板21に対して図13及び図15の右側に1.5μm程度位置ずれしている。図12から図15に示される透過率分布では、透過率の高低がグレースケールの濃淡により表されており、透過率が高い(明るい)ほど薄くなり、透過率が低い(暗い)ほど濃くなる傾向にある。なお、図12から図15には、X軸方向に沿って続けて並ぶ3つの画素電極24における透過率分布が示されている。
【0046】
比較実験1の実験結果について説明する。図12及び図14によれば、比較例1及び実施例1は、いずれもスリット25S,25S-1の縁部と重畳する位置にて透過率が最も高く、スリット25S,25S-1の縁部から遠ざかるに連れて次第に透過率が低下する傾向にあることが分かる。図12から図15によると、対向基板20に位置ずれが生じると、画素電極24のうち、本来は第1遮光部29によって遮光されない左端側部分が遮光されるようになるとともに、本来は第1遮光部29によって遮光されていた右端側部分が遮光されないようになる。なお、図12から図15に示される左端の画素電極24の上端側部分と、右端の画素電極24の下端側部分と、は、第2遮光部33の拡幅部分によってそれぞれ遮光されている。
【0047】
比較例1の実験結果について詳しく説明する。図12によれば、比較例1では、画素電極24の左端側部分が、スリット25S-1の縁部に近くて透過率が比較的高い部分を多く含み、当該部分が対向基板20の位置ずれに伴って、図13に示されるように、第1遮光部29によって遮光されている。一方、図13によれば、比較例1では、画素電極24の右端側部分が、スリット25S-1の縁部から遠くて透過率が比較的低い部分を多く含み、当該部分が対向基板20の位置ずれに伴って第1遮光部29によって遮光されなくなっている。特に、比較例1では、画素電極24のうち、スリット25S-1の縁部から最も遠くて透過率が最も低い右下角部が、対向基板20の位置ずれに伴って第1遮光部29によって遮光されなくなっている。このため、比較例1では、位置ずれしない場合に比べると、位置ずれした場合の方が画素電極24の透過光量が大きく減少する。
【0048】
続いて、実施例1の実験結果について詳しく説明する。図14によれば、実施例1では、多くのスリット25Sが画素電極24に対して重畳配置されているので、画素電極24のうち、スリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との間の距離が、比較例1よりも小さくなっている。そして、実施例1では、画素電極24の左端側部分と右端側部分とには、スリット25Sの縁部に近い部分とスリット25Sから遠い部分とが概ね均等に含まれている。従って、図15に示すように、対向基板20の位置ずれに伴って画素電極24の左端側部分が第1遮光部29によって遮光されるようになり、画素電極24の右端側部分が第1遮光部29によって遮光されないようになっても、画素電極24の透過光量が大きく減少することが避けられる。結果として、実施例1は、比較例1よりも、対向基板20の位置ずれに伴う画素電極24の透過率の低下が抑制される、と言える。
【0049】
次に、比較実験1にて説明した比較例1及び実施例1に係る各液晶パネルにおいて、アレイ基板21に対する対向基板20のX軸方向の位置ずれ量を変化させたとき、透過率がどのように変化するか、について知見を得るため、比較実験2を行った。比較実験2では、比較例1及び実施例1に係る各液晶パネルにおいて、アレイ基板21に対する対向基板20のX軸方向の位置ずれ量を、0μm、0.5μm、1μm、1.5μmとし、これらの各液晶パネルにおける透過光量をそれぞれ測定し、相対透過率を算出した。相対透過率は、位置ずれ量を0μmとした場合を基準(1.0)として規格化した相対値である。なお、位置ずれ量が0μmの場合は、位置ずれが生じなかった場合を意味する。実験結果は、図16のグラフに示される通りである。図16の横軸が、アレイ基板21に対する対向基板20のX軸方向の位置ずれ量(単位は「mm」)であり、図16の縦軸が相対透過率(無単位)である。また、図16には、比較例1及び実施例1の凡例が記されており、「●」のプロットが実施例1であり、「×」のプロットが比較例1である。
【0050】
比較実験2の実験結果について説明する。図16によれば、比較例1及び実施例1は、いずれも対向基板20の位置ずれ量が大きくなるほど、相対透過率が低下することが分かる。特に、対向基板20の位置ずれ量が0.5μmを超えると、相対透過率の低下率が大きくなっている。そして、比較例1と実施例1とを比べると、対向基板20の位置ずれ量が0.5μm、1μm、1.5μmの場合、実施例1は、比較例1よりも常に相対透過率が高い。つまり、対向基板20に位置ずれが生じると、その位置ずれ量を問わず、実施例1の相対透過率は、比較例1の相対透過率よりも高くなっている。従って、実施例1によれば、対向基板20に位置ずれが生じても、比較例1よりも高い透過率を得ることができる、と言える。
【0051】
次に、ソース配線27からの電界漏れと、コントラスト性能と、の関係性について知見を得るべく、比較実験3を行った。この比較実験3では、比較実験1の実施例1と、次に説明する比較例2と、を用いる。比較例2は、実施例1とは、第1透明電極膜からなる遮蔽電極34及び第4絶縁膜21F3が除去されている点でのみ相違し、共通電極25の構成(スリット25S等)は実施例1と同じである。比較実験3では、比較例2及び実施例1に係る各液晶パネルにおいて、図17に示されるように、表示領域AAの中央部を選択的に白表示(最大階調表示)し、その周りを黒表示(最小階調表示)した。図17では、黒表示部分を網掛け状にして図示し、白表示部分を白抜きにして図示している。そして、黒表示部分のうち、白表示部分に対して図17の上側部分(図17にて破線で囲った部分)の透過光量を測定し、透過率分布を作成した。図17にて破線で囲った部分では、1フレーム表示期間においてソース配線27に対して白表示を行わせるための最大階調の電位が供給されるため、仮にソース配線27からの電界が液晶層22側に漏れ出すと、光漏れが生じる可能性がある。比較例2に係る透過率分布は、図18に示されている。実施例1に係る透過率分布は、図19に示されている。図18及び図19に示される透過率分布では、透過率の高低がグレースケールの濃淡により表されており、透過率が高い(明るい)ほど薄くなり、透過率が低い(暗い)ほど濃くなる傾向にある。図18及び図19には、第1遮光部29及び共通電極25が二点鎖線により図示されている。なお、図18及び図19には、X軸方向に沿って続けて並ぶ3つの画素電極24における透過率分布が示されている。また、比較例2及び実施例1において、両基板20,20に位置ずれは生じていない。
【0052】
比較実験3の実験結果について説明する。図18によれば、比較例2では、第1遮光部29に対してX軸方向に隣り合う複数箇所で光漏れが生じていることが分かる。比較例2では、ソース配線27のうち、共通電極25のスリット25Sと重畳する部分から生じる電界が、共通電極25により遮蔽されず、液晶層22側に漏れ出すことで、液晶分子の配向が乱れ、結果として光漏れが生じたと推考される。一方、図19によれば、実施例1では、ほぼ全域にわたって光漏れが生じていないことが分かる。これは、実施例1に備わる遮蔽電極34によってソース配線27から生じる電界が良好に遮蔽されたため、と推考される。
【0053】
以上説明したように本実施形態の液晶パネル(表示装置)11は、アレイ基板(第1基板)21と、アレイ基板21の主面と対向する主面を有する対向基板(第2基板)20と、アレイ基板21に設けられ、アレイ基板21の主面に沿う第1方向に沿って延在するソース配線(第1配線)27と、アレイ基板21に設けられ、ソース配線27に対し、アレイ基板21の主面に沿う方向であって第1方向と直交する第2方向に隣り合って配され、ソース配線27よりも対向基板20に近い側に位置して配される画素電極(第1電極)24と、アレイ基板21に設けられ、画素電極24よりも対向基板20に近い側に位置し、ソース配線27及び画素電極24と重畳して配される共通電極(第2電極)25と、対向基板20に設けられ、第1方向に沿って延在し、少なくともソース配線27と重畳して配され、光を遮る第1遮光部(第1重畳部)29と、アレイ基板21に設けられ、ソース配線27よりも対向基板20に近い側に位置し、画素電極24よりも対向基板20から遠い側に位置して配される遮蔽電極(第3電極)34と、を備え、共通電極25には、アレイ基板21の主面に沿う向きであって第1方向と交差する向きに沿って延在し、ソース配線27及び画素電極24をそれぞれ横切り、間隔を空けて配される複数のスリット25Sが形成され、遮蔽電極34は、少なくともソース配線27及びスリット25Sの双方と重畳して配される。
【0054】
アレイ基板21及び対向基板20を、互いの主面が対向するよう配する際には、両基板20,21に第2方向に位置ずれが生じる場合がある。その場合、対向基板20に設けられた第1遮光部29が、アレイ基板21に設けられたソース配線27及び画素電極24に対して第2方向に位置ずれする。この位置ずれが生じると、画素電極24の透過光量が低下する。
【0055】
その点、共通電極25のスリット25Sは、アレイ基板21の主面に沿う向きであって第1方向に対して交差する向きに沿って延在され、ソース配線27及び画素電極24をそれぞれ横切るとともに間隔を空けて複数配されている。つまり、共通電極25のスリット25Sを画素電極24の範囲外にまで延ばすことで、画素電極24が高精細化に伴って小型化した場合でも、画素電極24に対して複数のスリット25Sを重畳配置することができる。このようにすれば、画素電極24のうちスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離を従来よりも小さくすることができる。ここで、画素電極24の透過光量は、スリット25Sの縁部からの距離が大きくなるほど低下する傾向にある。この傾向に基づけば、画素電極24のうち、共通電極25におけるスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離が従来よりも小さくされることで、従来よりも画素電極24の透過光量を多く確保することができる。これにより、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下が抑制される。
【0056】
このように、スリット25Sがソース配線27を横切る構成を採ると、ソース配線27から生じる電界が共通電極25では十分に遮蔽されず、表示品位に悪影響を及ぼすおそれがある。これに対し、遮蔽電極34は、少なくともソース配線27及びスリット25Sの双方と重畳して配されているので、ソース配線27から生じる電界のうち、スリット25Sに起因して共通電極25では遮蔽されない電界を、遮蔽電極34によって良好に遮蔽することができる。以上により、第1遮光部29の位置ずれに起因する透過光量の低下を抑制した上で、スリット25Sに起因する電界漏れを抑制することができる。
【0057】
また、画素電極24は、第1方向に沿う長手状をなしており、共通電極25には、複数のスリット25Sが、第1方向に対する角度よりも第2方向に対する角度の方が小さい向きに沿って延在して形成される。仮に、共通電極25のスリット25Sが、第1方向に対する角度よりも第2方向に対する角度の方が大きい向きに沿って延在する場合に比べると、より多くのスリット25Sを画素電極24に対して重畳配置させることができる。このようにすれば、画素電極24のうちスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離をより小さくすることができる。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下がより抑制される。
【0058】
また、ソース配線27及び画素電極24は、第2方向に交互に並んで複数ずつが配され、共通電極25には、複数のスリット25Sが、複数ずつのソース配線27及び画素電極24を横切って形成される。仮に、スリット25Sの形成範囲が1つずつのソース配線27及び画素電極24に限定される場合に比べると、より多くのスリット25Sを画素電極24に対して重畳配置し易くなる。このようにすれば、画素電極24のうちスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離をより小さくすることができる。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下がより抑制される。
【0059】
また、アレイ基板21と対向基板20との間に挟持される液晶層22を備え、アレイ基板21の主面は、複数ずつのソース配線27及び画素電極24が配されて画像が表示される表示領域AAと、少なくとも複数の画素電極24が非配置とされて画像が表示されない非表示領域NAAと、に区分されており、共通電極25には、複数のスリット25Sが、表示領域AAの全域にわたって延在して形成され、共通電極25は、スリット25Sに並行して延在し、ソース配線27及び画素電極24をそれぞれ横切り、間にスリット25Sを挟んで配される複数の共通電極部(第2電極部)25Pと、非表示領域NAAに配されて複数の共通電極部25Pに連ねられて枠状をなす枠状部25Fと、を有する。スリット25Sにおける延在方向の端部付近では、液晶層22に含まれる液晶分子の配向状態に乱れが生じ易くなっている。その点、上記のように、共通電極25には、複数のスリット25Sが表示領域AAの全域にわたって延在して形成されることで、スリット25Sにおける延在方向の端部を非表示領域NAAに配置することが可能となる。これにより、スリット25Sにおける延在方向の端部付近において液晶分子の配向乱れが生じても、表示領域AAに表示される画像に悪影響が及び難くなる。また、複数の共通電極部25Pは、非表示領域NAAに配された枠状部25Fに連ねられることで、枠状部25Fを介して電位が供給される。
【0060】
また、共通電極25は、スリット25Sに並行して延在し、ソース配線27及び画素電極24をそれぞれ横切り、間にスリット25Sを挟んで配される複数の共通電極部25Pを有しており、共通電極部25Pの幅W1が、スリット25Sの幅W2よりも小さい。このようにすれば、仮に共通電極部25Pとスリット25Sとの幅の大小関係を逆にした場合に比べると、画素電極24のうちスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離をより小さくすることができる。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下がより抑制される。
【0061】
また、アレイ基板21に設けられ、ソース配線27及び画素電極24のそれぞれに接続されるTFT(スイッチング素子)23を備え、遮蔽電極34は、画素電極24とTFT23との接続箇所と重畳する開口部34Aを有し、開口部34Aを除いてはベタ状に延在して配される。このようにすれば、ソース配線27よりも対向基板20に近い側に位置し、画素電極24よりも対向基板20から遠い側に位置して配される遮蔽電極34の開口部34Aを通して、TFT23と画素電極24との接続が図られる。遮蔽電極34は、開口部34Aを除いてはベタ状に延在して配されているから、ソース配線27から生じる電界を良好に遮蔽することができる。
【0062】
また、第1遮光部29は、画素電極24のうち、第1方向に沿う縁部と重畳して配される。画素電極24のうち、本来は第1遮光部29と重畳して遮光される縁部は、第1遮光部29が第2方向に位置ずれすると、第1遮光部29により遮光されなくなるおそれがある。その場合でも、複数のスリット25Sが画素電極24に対して重畳配置されることで、画素電極24のうちスリット25Sの縁部から最も遠い部分とスリット25Sの縁部との距離が従来よりも小さくなっている。これにより、従来よりも画素電極24の透過光量をより多く確保することができるので、上記した位置ずれに起因する画素電極24の透過光量の低下が抑制される。
【0063】
<実施形態2>
実施形態2を図20または図21によって説明する。この実施形態2では、共通電極125の構成を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0064】
本実施形態に係る共通電極125には、図20に示すように、複数のスリット125Sが、X軸方向及びY軸方向の双方に対して傾いた斜め方向に沿って延在し、ジグザグ状に繰り返し屈曲して形成されている。複数の共通電極部125Pは、スリット125Sに並行して延在し、ジグザグ状に繰り返し屈曲して形成されている。
【0065】
詳しくは、スリット125Sは、図20の右上がりの傾斜部分(第1傾斜スリット)と、図20の右下がりの傾斜部分(第2傾斜スリット)と、がX軸方向に交互に繰り返し連なる構成となっている。スリット125Sのうちの、図20の右上がりの傾斜部分と、図20の右下がりの傾斜部分と、がX軸方向に対してなす角度は、いずれも10°程度で同一とされる。共通電極部125Pは、図20の右上がりの傾斜部分(第1傾斜部)と、図20の右下がりの傾斜部分(第2傾斜部)と、がX軸方向に交互に繰り返し連なる構成となっている。共通電極部125Pのうちの、図20の右上がりの傾斜部分と、図20の右下がりの傾斜部分と、がX軸方向に対してなす角度は、いずれも10°程度で同一とされる。スリット125S及び共通電極部125Pは、互いに連なる2つの傾斜部分の継ぎ目に屈曲部125Bを有する。このような構成では、画素電極124と共通電極125との間に電位差が生じたとき、スリット125S及び共通電極部125Pの屈曲部125B付近では、液晶層22(図6を参照)の液晶分子が回転しなくなる。これに起因して、液晶層22は、スリット125Sの延在方向に沿うドメイン(特定の配向方向を持つ領域)を含み、そのドメインは、スリット125S及び共通電極部125Pの屈曲部125Bを境にして複数に分割されることになる。液晶層22に含まれる液晶分子の動きは、ドメインが小さくなるほど速くなる傾向にある。従って、スリット125Sがジグザグ状に屈曲されることで、液晶層22に含まれるドメインが細分化されるので、応答速度の高速化が図られる。
【0066】
しかも、複数ずつのスリット125S及び共通電極部125Pの屈曲部125Bは、ソース配線127と重畳する配置とされる。つまり、スリット125S及び共通電極部125Pは、X軸方向に間隔を空けて並ぶ複数のソース配線127を横切る度に屈曲されつつ延在している。スリット125S及び共通電極部125Pの屈曲部125Bの数(屈曲回数)と、ソース配線127のX軸方向の並び数と、は一致している。スリット125S及び共通電極部125Pにおける2つの屈曲部125Bの間の長さは、間に画素電極124を挟む2つのソース配線127の間隔、つまり画素電極124のX軸方向の配列間隔程度とされる。このようにすれば、液晶層22に含まれるドメインは、X軸方向に並ぶ画素電極124毎に分割されることになる。つまり、ドメインの長さは、画素電極124のX軸方向の配列間隔程度となる。これにより、液晶層22に含まれるドメインがより細分化されるので、応答速度のさらなる高速化が図られる。
【0067】
本実施形態に係る液晶パネル111を用いて実証実験1を行った。実証実験1では、本段落の前の段落にて説明した構成の液晶パネル111を実施例2とした。実証実験1では、実施例2に係る液晶パネル111において、全画面で白表示(最大階調表示)を行った上で透過光量を測定し、透過率分布を作成した。なお、実施例2に係る液晶パネル111では、第1遮光部29が省略されている。実施例2に係る透過率分布は、図21に示されている。図21に示される透過率分布では、透過率の高低がグレースケールの濃淡により表されており、透過率が高い(明るい)ほど薄くなり、透過率が低い(暗い)ほど濃くなる傾向にある。なお、図21には、X軸方向に沿って続けて並ぶ3つの画素電極124における透過率分布が示されている。
【0068】
実証実験1の実験結果について説明する。図21によれば、実施例2では、スリット125Sの屈曲部125Bを境にして複数に分割されたドメイン間に暗部が介在しているのが分かる。これは、屈曲部125B付近では、液晶層22の液晶分子が回転しなくなることで、暗部として視認されるため、と推考される。このように、屈曲部125B付近において液晶分子が回転しなくなることで、液晶層22が屈曲部125Bを境にして複数のドメインに分割される。液晶層22が複数のドメインに分割されると、各ドメインでの液晶分子の動きが速くなる。これにより、応答速度の高速化が図られている。
【0069】
以上説明したように本実施形態によれば、アレイ基板21と対向基板20との間に挟持される液晶層22を備え、共通電極125には、複数のスリット125Sが、第1方向及び第2方向の双方に対して傾いた斜め方向に沿って延在し、ジグザグ状に屈曲して形成される。液晶層22は、スリット125Sの延在方向に沿うドメインを含み、そのドメインは、スリット125Sの屈曲部125Bを境にして複数に分割される。液晶層22に含まれる液晶分子の動きは、ドメインが小さくなるほど速くなる傾向にある。従って、スリット125Sがジグザグ状に屈曲されることで、液晶層22に含まれるドメインが細分化されるので、応答速度の高速化が図られる。
【0070】
また、ソース配線127及び画素電極124は、第2方向に交互に並んで複数ずつが配され、共通電極125には、複数のスリット125Sの屈曲部125Bが、ソース配線127と重畳して形成される。液晶層22に含まれるドメインは、第2方向に並ぶ画素電極124毎に分割される。これにより、液晶層22に含まれるドメインがより細分化されるので、応答速度のさらなる高速化が図られる。
【0071】
<実施形態3>
実施形態3を図22によって説明する。この実施形態3では、上記した実施形態1から共通電極225の構成を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0072】
本実施形態に係る共通電極225は、図22に示すように、複数のスリット225Sが、X軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐに延在している。複数の共通電極部225Pは、スリット225Sに並行し、X軸方向に沿ってほぼ真っ直ぐに延在している。これに対し、本実施形態での液晶分子の配向方向は、X軸方向に対して約10°傾いた斜め方向であり、図22の右上がりの傾斜となっている。図22には、液晶分子の配向方向が矢線により示されている。従って、スリット225Sの延在方向と、液晶分子の配向方向と、が互いに交差する関係となっている。
【0073】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0074】
(1)スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225PがX軸方向に対してなす具体的な角度は、適宜に変更可能である。その場合、スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの延在方向を、X軸方向に対して45°よりも小さい角度でもって傾けるのが好ましいが、必ずしもその限りではない。
【0075】
(2)スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの具体的な長さは、適宜に変更可能である。例えば、スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pが、表示領域AAのX軸方向の全長に至らない長さであってもよい。その場合、スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの端部が表示領域AAに存することになる。スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの長さを変更する場合、スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pが複数ずつのソース配線27,127及び画素電極24,124を横切るような長さとされるのが好ましいが、必ずしもその限りではない。
【0076】
(3)スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの具体的な幅は、適宜に変更可能である。例えば、スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの幅を同一とすることが可能である。また、スリット25S,125S,225Sの幅を共通電極部25P,125P,225Pの幅よりも小さくすることも可能である。
【0077】
(4)遮蔽電極34の具体的な形成範囲は、適宜に変更可能である。例えば、遮蔽電極34が共通電極25,125,225のスリット25S,125S,225Sと重畳する範囲に選択的に形成されていてもよい。その場合、遮蔽電極34は、共通電極25,125,225の共通電極部25P,125P,225Pと重畳する位置にスリットを有することになる。
【0078】
(5)第1遮光部29は、画素電極24,124に対して非重畳となる設計であってもよい。
【0079】
(6)実施形態1に記載の構成において、スリット25S及び共通電極部25Pの延在方向は、X軸方向に対して図8の左上がりの傾斜であってもよい。
【0080】
(7)実施形態2に記載の構成において、スリット125S及び共通電極部125Pの屈曲部125Bの数(屈曲回数)が、ソース配線127のX軸方向の並び数よりも少なくてもよい。例えば、スリット125S及び共通電極部125Pが複数の画素電極124を横切る度にソース配線127と重畳する位置にて屈曲されてもよい。
【0081】
(8)実施形態3に記載の構成において、液晶分子の配向方向は、X軸方向に対して図22の左上がりの傾斜であってもよい。
【0082】
(9)スリット25S,125S,225S及び共通電極部25P,125P,225Pの延在方向と、液晶分子の配向方向と、がなす具体的な角度は、10°以外にも適宜に変更可能である。
【0083】
(10)画素電極24,124の具体的な平面形状は、縦長の方形以外にも適宜に変更可能である。
【0084】
(11)第2遮光部33が省略されてもよい。
【0085】
(12)ゲート配線26及びソース配線27,127の平面に視たパターンは、適宜に変更可能である。例えば、ゲート配線26及びソース配線27,127の少なくとも一方は、直線的に延在せず、斜めに延在して途中で繰り返し屈曲されてもよい。
【0086】
(13)画素PXの配列ピッチやゲート配線26及びソース配線27,127の線幅に関する具体的な数値は、適宜に変更可能である。また、液晶パネル11,111の画素密度の具体的な数値は、適宜に変更可能である。
【0087】
(14)TFT23は、トップゲート型以外にもボトムゲート型でもよい。
【0088】
(15)半導体膜は、アモルファスシリコン薄膜や酸化物半導体薄膜などでもよい。
【0089】
(16)液晶パネル11,111の表示モードは、IPSモードなどでもよい。
【0090】
(17)液晶パネル11,111の平面形状は、横長の長方形、正方形、円形、半円形、長円形、楕円形、台形などでもよい。
【0091】
(18)液晶層22に誘電率異方性が負のネガ型の液晶材料を用いることも可能である。その場合、実施形態1,2に記載の構成においては、液晶分子の配向方向をY軸方向と一致させることができる。実施形態3に記載の構成においては、液晶分子の配向方向をY軸方向に対して10°程度傾けることができる。
【0092】
(19)ヘッドマウントディスプレイ10HMD以外にも、液晶パネル11,111に表示された画像を、レンズなどを用いて拡大表示する機器として、例えばヘッドアップディスプレイやプロジェクターなどにも適用可能である。また、拡大表示機能を持たない表示装置(テレビ受信装置、タブレット型端末、スマートフォンなど)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
11,111…液晶パネル(表示装置)、20…対向基板(第2基板)、21…アレイ基板(第1基板)、22…液晶層、23…TFT(スイッチング素子)、24,124…画素電極(第1電極)、25,125,225…共通電極(第2電極)、25F…枠状部、25P,125P,225P…共通電極部(第2電極部)、25S,125S,225S…スリット、27,127…ソース配線(第1配線)、29…第1遮光部(第1重畳部)、34…遮蔽電極(第3電極)、34A…開口部、125B…屈曲部、AA…表示領域、NAA…非表示領域
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