(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161757
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】黒色隔壁材用分散液
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20231031BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231031BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20231031BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231031BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231031BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20231031BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20231031BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C09D17/00
G02B5/20 101
G02B5/22
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
C09C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072297
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】平井 淳一
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
4J037
【Fターム(参考)】
2H148BE36
2H148BG02
2H148BG06
2H148BH04
2H148CA01
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA19
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC35
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE27
3K107FF15
4J037AA30
4J037CC16
4J037CC18
4J037DD05
4J037FF05
(57)【要約】
【課題】黒色隔壁材のテーパー角を大きくすることができ、かつ、反射率も低下させることができ、高精細なディスプレイを作製することのできる黒色隔壁材用分散液を提供する。
【解決手段】ラクタムブラックと、アクリル系分散剤と、樹脂と、溶剤とを含み、ラクタムブラックは、体積基準粒径D50値が、20~60nmであり、体積基準粒径D90値が、40~110nmであり、アクリル系分散剤は、ブロック型共重合体を含む、黒色隔壁材用分散液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクタムブラックと、アクリル系分散剤と、樹脂と、溶剤とを含み、
前記ラクタムブラックは、
体積基準粒径D50値が、20~60nmであり、
体積基準粒径D90値が、40~110nmであり、
前記アクリル系分散剤は、ブロック型共重合体を含む、黒色隔壁材用分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色隔壁材用分散液に関する。より詳細には、本発明は、黒色隔壁材のテーパー角を大きくすることができ、かつ、反射率も低下させることができ、高精細なディスプレイを作製するための、黒色隔壁材用分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイで使用される黒色隔壁材は、誤動作防止のために高い電気絶縁性が求められる。黒色着色剤として使用されるカーボンブラックは、高い電気絶縁性を得るために、表面が絶縁性材料で被覆される。被覆が完全でない場合、電気絶縁性が発現せず、充分な信頼性が得られなかった。また、フレキシブルタイプのディスプレイは、反射防止に使用する円偏光板を取り除き、反射防止のためにカラーフィルターが使用される。カラーフィルターに使用する黒色隔壁材は、従来よりも低反射率のものが求められる。これらの用途で注目される黒色着色剤としてラクタムブラックがある(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のラクタムブラックを分散させた樹脂組成物は、黒色隔壁材に用いた場合に、テーパー角が充分に得られず、ディスプレイの高精細化には適していなかった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、黒色隔壁材のテーパー角を大きくすることができ、かつ、反射率も低下させることができ、高精細なディスプレイを作製することのできる黒色隔壁材用分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、微細化されたラクタムブラックと、ブロック型共重合体であるアクリル系分散剤とを併用した分散剤を用いることにより、上記課題を同時に解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0007】
(1)ラクタムブラックと、アクリル系分散剤と、樹脂と、溶剤とを含み、前記ラクタムブラックは、体積基準粒径D50値が、20~60nmであり、体積基準粒径D90値が、40~110nmであり、前記アクリル系分散剤は、ブロック型共重合体を含む、黒色隔壁材用分散液。
【0008】
このような構成によれば、得られる黒色隔壁材のテーパー角を大きくすることができ、かつ、反射率も低下させることができ、高精細なディスプレイを作製することのできる黒色隔壁材用分散液を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、黒色隔壁材のテーパー角を大きくすることができ、かつ、反射率も低下させることができ、高精細なディスプレイを作製することのできる黒色隔壁材用分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<黒色隔壁材用分散液>
本発明の一実施形態の黒色隔壁材用分散液(以下、分散液ともいう)は、ラクタムブラックと、アクリル系分散剤と、樹脂と、溶剤とを含む。ラクタムブラックは、体積基準粒径D50値が、20~60nmであり、体積基準粒径D90値が、40~110nmである。アクリル系分散剤は、ブロック型共重合体を含む。以下、それぞれについて説明する。
【0011】
(ラクタムブラック)
ラクタムブラックは、以下の構造を有する公知のラクタムブラックである。具体的には、ラクタムブラックは、Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)等である。
【0012】
【0013】
本実施形態のラクタムブラックは、公知のラクタムブラックを微細化したラクタムブラックである。微細化方法は特に限定されない。一例を挙げると、微細化は、公知のラクタムブラックに、水溶性無機塩および湿潤剤を用いて前処理する方法である。具体的には、前処理は、ラクタムブラックを水溶性無機塩および湿潤剤と共に混練する段階、得られた顔料を濾過および水洗する段階によって行い得る。混練は、40~100℃の温度で行うことができる。濾過および水洗は、水などを使用して無機塩を水洗した後、濾過して行い得る。水溶性無機塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム等である。
【0014】
微細化された本実施形態のラクタムブラックの体積基準粒径D50値は、20nm以上であればよく、30nm以上であることが好ましい。また、D50値は、60nm以下であればよく、50nm以下であることが好ましい。D50値が20nm未満である場合、分散液は、分散安定性が悪くなる。一方、D50値が60nmを超える場合、分散液は、得られる黒色隔壁材のテーパー角が小さくなり、反射率が高くなる。
【0015】
微細化された本実施形態のラクタムブラックの体積基準粒径D90値は、40nm以上であればよく、50nm以上であることが好ましい。また、D90値は、110nm以下であればよく、100nm以下であることが好ましい。D90値が40nm未満である場合、分散液は、分散安定性が悪くなる。一方、D90値が110nmを超える場合、分散液は、得られる黒色隔壁材のテーパー角が小さくなり、反射率が高くなる。
【0016】
微細化された本実施形態のラクタムブラックの体積基準粒径D10値は、5nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。また、D10値は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。
【0017】
本実施形態において、体積基準粒径は、ナノトラック(UPA-EX150、日機装社製)を用いて、レーザー回析式粒度測定法により測定し得る。
【0018】
本実施形態の分散液は、体積基準粒径の中でも、特にD50およびD90が所定の範囲に含まれることを特徴とする。すなわち、D50とD90が上記範囲内であることにより、得られる黒色隔壁材は、テーパー角が大きくなり、反射率が低くなる。すなわち、顔料粒子径が小さいほど、光が透過しやすくなるため、反射光が減る。また、顔料粒子径が小さくなれば、UV光が顔料の裏側まで回析しやすくなり、全体的に硬化が進みやすく、熱フローしにくくなる。さらに、顔料粒子径が小さくなると、樹脂や分散剤と相互作用する顔料の表面積が増える。その結果、塗膜は、塗膜内の結合力が高くなり、熱フローしにくくなる。
【0019】
ラクタムブラックの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ラクタムブラックの含有量は、分散液中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、ラクタムブラックの含有量は、分散液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。ラクタムブラックの含有量が上記範囲内であることにより、分散液は、分散安定性が良好になる。
【0020】
(アクリル系分散剤)
アクリル系分散剤は、ブロック型共重合体(アクリル系ブロック共重合体)を含む。アクリル系ブロック共重合体は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系ブロック共重合体は、アミン化合物を単量体として含むアクリル系ブロック共重合体である。
【0021】
アミン化合物である単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を構成するブロックの種類は、2種であってもよく、3種以上であってもよい。そのうち1種以上のブロックは、アミン化合物であるラジカル重合性不飽和結合を有する単量体を含むブロックである。
【0022】
このブロックを構成する単量体は、非環式アミン化合物、複素環式アミン化合物、又は4級アンモニウムカチオン化合物であり、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等の非環式アミン化合物、ビニルピリジン、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等の複素環式アミン化合物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートを塩化ベンジルにより4級化しカチオン化してなる化合物等の4級アンモニウムカチオン化合物等であることが好ましい。これらの単量体のうちの1種の単量体からなるブロックでも良く、2種以上の単量体がランダム重合してなるブロックや、2種以上の単量体がブロック重合してなるブロックでも良い。また、ペンタメチルピペリジニルメタクリレートおよび/又はジメチルアミノプロピルアクリレートのブロックと、他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックとからなる構造を有するものが特に好ましい。
【0023】
アミン化合物である単量体に由来するブロックと共重合する他の重合可能なブロックは、1種の単量体からなるブロックであってもよく、2種以上の単量体がランダム重合したブロックであってもよい。アミノ基やピリジン環を含む単量体由来の単位を有しないことが好ましい。また、カルボン酸基、水酸基、チオール基、硫黄やリン含有の基を有しないことがさらに好ましい。なお、他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックは1種であってもよく、2種のブロックであってもよい。
【0024】
この他の重合可能なエチレン性不飽和単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノアクリレート等のグリセロール(メタ)クリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体等である。ただし、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
【0025】
ブロック共重合体は、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用し得る。
【0026】
アクリル系分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系分散剤の含有量は、分散液中、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、アクリル系分散剤の含有量は、分散液中、30.0質量%以下であることが好ましく、25.0質量%以下であることがより好ましい。アクリル系分散剤の含有量が上記範囲内であることにより、分散液は、粒度分布が所望の範囲内の粒径に調製されやすく、分散安定性が良好になる。
【0027】
(樹脂)
樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂等であることがより好ましい。これらの中でも、樹脂は、現像性、分子設計の幅、およびコストの点から、アクリル系共重合樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂が含まれることにより、分散液は、アルカリ現像液で現像可能となり、隔壁等のパターンを作成し得る。
【0028】
アルカリ可溶性樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH2))等のアニオン性基を含む樹脂等である。
【0029】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像性の観点から、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、酸価は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0030】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、レジスト膜の形成性の観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0031】
アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等である。これらの中でも、アルカリ可溶性樹脂は、現像性、分子設計の幅、およびコストの観点から、アクリル系共重合樹脂であることが好ましい。
【0032】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、ラクタムブラック100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、ラクタムブラック100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
【0033】
(溶剤)
溶剤は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤は、ラクタムブラックを安定的に分散させ、樹脂等を充分に溶解させることができる観点から、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、含窒素系溶剤等が好ましい。
【0034】
エステル系溶剤は、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n-アミル等である。
【0035】
エーテル系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等である。
【0036】
エーテルエステル系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等である。
【0037】
ケトン系溶剤は、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等である。
【0038】
芳香族炭化水素系溶剤は、トルエン、キシレン、アルキルナフタレン等である。
【0039】
含窒素系溶剤は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等である。
【0040】
溶剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤の含有量は、分散液中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、分散液中、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、分散液は、ラクタムブラックの分散安定性が優れる。
【0041】
分散液全体の説明に戻り、本実施形態の分散液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、分散液は、各種材料を混合し、ビーズミル等で一昼夜練肉することにより調製し得る。
【0042】
本実施形態の分散液は、黒色隔壁材のテーパー角を大きくすることができ、かつ、反射率も低下させることができ、高精細なディスプレイを作製することができる。
【0043】
<黒色隔壁材>
黒色隔壁材は、上記した分散液を硬化したものである。具体的には、まず、本実施形態の分散液を基板上に塗布して樹脂層(塗布膜)を形成する。その後、所定のパターンのマスクを介して、樹脂層を露光して、露光部分を光硬化させる。そして、未露光部分および半露光部をアルカリ現像液で現像して黒色隔壁材を形成する。その後、必要に応じて、黒色隔壁材をポストベークする。
【0044】
基板は特に限定されない。一例を挙げると、基板は、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、アルミニウム基板、プリント配線基板、アレイ基板等である。
【0045】
分散液の塗布方法は特に限定されない。一例を挙げると、分散液の塗布方法は、スクリーン印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、スピンコート法等である。また、分散液の塗布後、必要に応じて、循環式オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレート等の加熱手段を用いて加熱することにより、樹脂層に含まれる溶剤を揮発させてもよい。加熱条件は、使用する分散液の組成に応じて適宜設定すればよい。一般には、加熱条件は、50℃~120℃の温度で、30秒~30分である。
【0046】
樹脂層の露光方法は特に限定されない。一例を挙げると、露光方法は、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線の照射である。エネルギー線量は、分散液の組成に応じて適宜設定すればよい。一例を挙げると、エネルギー染料は、30~2000mJ/cm2である。露光に用いられる光源は特に限定されない。一例を挙げると、光源は、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等である。
【0047】
現像に用いられるアルカリ現像液は特に限定されない。一例を挙げると、現像液は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液;エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン系化合物の水溶液;テトラメチルアンモニウム、3-メチル-4-アミノ-N,N-ジエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メタンスルホンアミドエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メトキシエチルアニリンおよびこれらの硫酸塩、塩酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩等のp-フェニレンジアミン系化合物の水溶液等である。なお、アルカリ現像液は、必要に応じて、消泡剤、界面活性剤等が添加されてもよい。
【0048】
アルカリ現像により形成された黒色隔壁材は、ポストベークされることにより、樹脂の硬化が促進され得る。ポストベークの条件は特に限定されない。一例を挙げると、ポストベークの条件は、80℃~250℃の温度で、10分~4時間である。
【0049】
得られる黒色隔壁材は、テーパー角が大きく、かつ、反射率が低く、高精細なディスプレイを作製することができる。
【0050】
<画像表示装置>
本実施形態の画像表示装置(ディスプレイ)は、上記した黒色隔壁材を備える。画像表示装置の具体例は、液晶表示装置、有機EL表示装置等である。画像表示装置は、上記した黒色隔壁材を形成すること以外は、常法に従って製造され得る。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0052】
使用した原料を以下に示す。
<ラクタムブラック>
ラクタムブラック:IrgaphorS100CF(BASF社製)
・微細化ラクタムブラックの調製
トリミックスTX-15(井上製作所製)のタンクに、上記ラクタムブラックを800質量部、粒径20μmの塩化ナトリウム8000質量部、ジエチレングリコール1920質量部を投入した。定格電流値9.3Aの70%となる範囲で、45℃で3時間混練し、ソルトミリングを行った。得られた混練物1300質量部を3リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌しスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返し塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、40℃にて一昼夜乾燥し、95質量部の微細化ラクタムブラックを得た。
・微細化ラクタムブラック(ソルトリミング強化品)の調製
上記微細化ラクタムブラックの調製方法において、ラクタムブラックを400質量部、6時間混錬する以外は同様に調製し、40質量部の微細化ラクタムブラック(ソルトリミング強化品)を得た。
<分散剤>
・アクリル系分散剤(ABAトリブロック)の調製
脱気したガラス製装置にメタクリル酸メチル(MMA)を17g、ブチルメタクリレート(BMA)を24g、テトラヒドロフラン(THF)を1L投入し、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液を4.5mmol投入し、MMAとBMAのランダム共重合体部分を合成した。次いで、-78℃まで冷却し、2時間攪拌した。次いで、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート(PMPMA)を33g投入して2時間攪拌し、MMAとBMAのランダム共重合体部分に結合したPMPMAのブロック部分を合成した。さらに、MMAを17g、BMAを24g投入して、ABA型のトリブロック共重合体を合成し、2時間攪拌後、反応を停止した。大量のメタノールに合成終了した溶液を滴下し、沈殿させた。ろ紙にて分散剤を採取し、メタノールで数回洗浄し、60℃で減圧乾燥してアクリル系分散剤を得た。得られたアクリル系分散剤は、ABAトリブロック共重合体であり、BMA/MMA//b-PMPMA//b-BMA/MMA=(24/17)//18//(24/17)であった。なお「/」で区切られたモノマーはランダムに重合しており、「//b-」で区切られたモノマーはブロック構造を形成している。
アクリル系分散剤(グラフト):BYKJET-9151(ビックケミー社製)
ウレタン系分散剤(グラフト):DISPERBYK-167(ビックケミー社製)
<光重合性化合物>
DPEHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
<光重合開始剤>
イルガキュアOXE02(BASF社製)
<溶剤>
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<樹脂>
フォレットZAH-110(アルカリ可溶性感光性樹脂、固形分35質量%、綜研化学社製)
ZCR-1569H(アルカリ可溶性感光性樹脂、固形分70質量%、日本化薬社製)
<レベリング剤>
メガファックF-554(DIC社製)
【0053】
<実施例1~4、比較例1~6>
(黒色隔壁材用顔料分散液の調製)
表1の組成(単位は質量%)となるように各種材料を混合し、ビーズミルで一昼夜練肉し、実施例1~4、比較例1~6の黒色隔壁材用顔料分散液を調製した。得られた分散液における分散組成物の粒子径は、ナノトラック(UPA-EX150、日機装社製)を使用し、D10粒径、D50粒径、D90粒径を、レーザー回析式粒度測定法により測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(黒色隔壁材用顔料分散液レジスト組成物の調製)
顔料濃度15質量%の上記分散液を40.00質量部、アルカリ可溶性感光性樹脂ZCR-1569Hを10.60質量部、DPEHAを3.00質量部、イルガキュアOXE02を0.80質量部、メガファックF-554を0.05質量部、PGMEAを45.55質量部となる組成にて、高速攪拌機を用いて均一に混合した後、孔径3μmのフィルターでろ過して、それぞれの黒色隔壁材用顔料分散液レジスト組成物を得た。
【0055】
得られたレジスト組成物を用いて、以下の方法により、粘度安定性、テーパー角および反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(粘度安定性)
上記実施例、比較例の黒色隔壁材用顔料分散液レジスト組成物を40℃で1週間保管し、保管前後の粘度変化を測定し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:粘度変化は、10%以下であった。
△:粘度変化は、10%を超え、20%以下であった。
×:粘度変化は、20%を超えた。
【0057】
(テーパー角)
上記実施例、比較例の黒色隔壁材用顔料分散液レジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング1737)上に塗布し、100℃で2分間プレベークした。その後、ラインパターンを有するフォトマスクと基板とのギャップを20μmとして、高圧水銀灯を用い、UV積算光量40mJ/cm2で露光した。23℃、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)2.4質量%水溶液中、0.07MPaのシャワーにて現像を行い、0.07MPaのシャワー水洗を行った。その後、250℃で30分間ポストベークした。得られた基板を、ガラスカッターを用いてパターン幅方向に分割した。6μmパターンの分割面を、電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析によってテーパー角を測定した。結果を表1に示す。テーパー角は、大きいほど好ましい。
【0058】
(反射率)
上記テーパー角と同様の操作を行い、露光後の現像操作は行わず、100℃で30分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成された塗膜を得た。得られたベタ部の塗膜面での波長360~740nmの反射率(単位は%)を反射率計(photal MC-7300:SC、大塚電子社製)で平均値を測定した。結果を表1に示す。反射率の平均値は、小さいほど好ましい。
【0059】
【0060】
表1に示されるように、本発明の黒色隔壁材用分散液は、粘度変化が小さく、体積基準粒径(特にD50値およびD90値)が所定の範囲内になるよう調製されていた。これにより、本発明の黒色隔壁材用分散液は、黒色隔壁材用として用いた場合に、テーパー角を大きくすることができ、かつ、低反射率の塗膜が得られ、ディスプレイ材料として好適であることが分かった。