(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161763
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】屋根上作業のための安全用具
(51)【国際特許分類】
E04D 15/00 20060101AFI20231031BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20231031BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E04D15/00 V
E04G21/32 D
A62B35/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072305
(22)【出願日】2022-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】505216472
【氏名又は名称】株式会社マスタックエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】舩木 主税
(72)【発明者】
【氏名】宮川 政次
(72)【発明者】
【氏名】舩木 弥一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博之
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA05
2E184KA06
2E184LA03
(57)【要約】
【課題】屋根上作業中に棟と軒先との間に主綱をしっかりと張り渡す屋根上作業のための安全用具を提供する。
【解決手段】平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部100と、本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部200と、本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部300と、水下側車輪部400と、水上側車輪部500を有し、軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むように略コの字形に折れ曲がり、主綱を主綱結合部に結んだ状態で安全用具を棟から軒先に移動させた際に屋根上面から水下側車輪部が外れ、軒先係合部が、屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱の張力により屋根の軒先に係合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定する屋根上作業のための安全用具であって、
平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部と、前記本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部と、前記本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部と、前記軒先係合部に備わった回転自在な水下側車輪部と、前記本体部の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部を有し、
前記水下側車輪部と水上側車輪部は、前記主綱を前記主綱結合部につないだ状態で前記屋根の棟側にいる前記作業者がこの主綱を送り出したり引き寄せたりすることで、前記屋根上作業のための安全用具を屋根の水上側である棟と水下側である軒先との間で前記本体部の下側面を屋根の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根の棟と軒先との間で前記主綱に繋がれた状態で往復移動可能とするように前記本体部に備え付けられており、
前記軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有し、
前記主綱を前記主綱結合部に結びつけられた状態で前記屋根上作業のための安全用具を前記屋根の棟から軒先に移動させた際に前記屋根上面から前記水下側車輪部が外れた状態になると共に、前記軒先係合部が、前記屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱を棟側に引っ張ることで生じる張力により前記屋根の軒先に係合するようになったことを特徴とする屋根上作業のための安全用具。
【請求項2】
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、前記本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方が磁性材料からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で磁石を先端に備えた棒状部材の当該磁石が前記係合解除手段に及ぼす磁気引っ張り力を利用して、前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から係合解除して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項3】
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、前記本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方に備わった安全用具側係合部からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で前記安全用具側係合部と取り外し可能に係合する回収具側係合部を先端に備えた棒状部材の当該安全用具側係合部と前記回収具側係合部とを互いに係合させることで前記係合解除手段に前記安全用具側係合部の係合力を利用して前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から外して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項4】
前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の棟側の幅が、前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の軒先側の幅よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項5】
前記本体部の上面側には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように屋根面対向離間用山折り部が側面視で略への字状をなすように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項6】
前記本体部には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上作業中に使用する屋根上作業用の安全用具であって、屋根上作業中に棟と軒先との間に主綱をしっかりと張り渡すために特に好適に使用可能な屋根上作業のための安全用具に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大きな建物の屋根の施工や修理を行う場合は、作業者の屋根上作業の効率化とは安全を図るために屋根上作業用の足場を設けることが義務付けられている。
【0003】
一方、それほど大きくない建物の屋根の施工や、屋根への太陽光発電パネルの後付け設置、屋根の一部破損部分の補修・張り替え、スレート板に金属板を被せて補強するような作業を行う場合は、上述のような大掛かりな足場を屋根上の作業スペースに隣接して設ける必要はなく、例えば作業者が梯子を建物の軒先に立てかけて屋根の上に昇り、屋根上作業が一般的に行われている。
【0004】
そして、このような屋根上作業を行うにあたって、作業者の安全を確保するために例えば棟と軒先との間に主綱を屋根の大きさに応じて一本又は所定間隔を隔てた状態で複数本しっかりと張り渡してこの主綱を屋根の上面に固定した上で、安全ロープの一端を主綱に取り付けると共に、その他端を作業者が身に付けるハーネス型安全帯にしっかりとつないで屋根上作業を安全に行うことが通常行われている。
【0005】
ここで主綱を棟と軒先との間にしっかりと張り渡すために主綱の軒先側や建物の軒先に様々な工夫がなされることが知られている(例えば特許文献1乃至特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2991612号公報
【特許文献2】特開2002-327540号公報
【特許文献3】国際公開2011-148966号公報
【特許文献4】特開2015-190165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の内容は、アルミ角パイプ材を折り曲げた略コ字状の鉤部を主綱であるベルトの端部に結びつけて、この鉤部を軒先にかけた状態で主綱を屋根の上に棟を介して張り渡し、この主綱にロープ伸縮調整部の一方の端部を取り付け、他方の端部を作業者に結びつけて屋根上作業の安全を確保するようにしている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の内容によると、このような主綱の張り渡しの形態を実現するために作業者が主綱の端部に備わった鉤部を持って屋根の上を軒先まで下り歩いて軒先のすぐ近傍において鉤部を軒先に引っ掛けて固定する作業を行わなければならない。そのため、軒先が傷んでいたりすると、作業者の体重が加わることでその軒先部分が大きく破損して作業者が屋根から思いがけず落下してしまう恐れがある。
【0009】
また、近年の異常気象に起因して気温は非常に高くなる真夏日がかなり増加している。そして、屋根上作業は雨が降っていないときしかできない作業であるため、屋根上作業をスケジュール通りに行うため、このような真夏日であってもかなりのハードスケジュールで処理すべき作業を行っていかなければならない。そのため、屋根上作業者が特に温度が高くなる屋根の上で真夏日に作業を続けていると、極めて熱中症になりやすい作業環境となる。そして、屋根上作業中に熱中症によって体調を崩してそのまま倒れ込んだりしてしまうと、屋根上の滑落や軒先からの落下を招くなどの極めて危険な状況に陥る。従って、このような限られた作業条件において、極めて気温が高くなる真夏日に屋根上作業を行うためには、作業自体の質を低下させることなく作業の効率化や短縮化を図ることが極めて重要である。
【0010】
このように屋根上作業の作業自体の質を低下させることなく作業の効率化や短縮化を図ることが重要である点については、作業環境が真夏日である条件に限らず、天候不順により風がかなり強い日や建物の立地している地理的条件に起因する恒常的な強風発生地域における屋根上作業においても同様である。
【0011】
また、鉤部がアルミ角パイプ材を略コ字状に折り曲げて形成されているため、鉤部を軒先にひっかけた後に主綱を屋根の上にしっかりと張り渡すために十分な張力を主綱に加えると、この張力が鉤部と軒先との極めて狭い係合部に引っ張り力として作用して元々傷みかけていた軒先がこの引っ張り力で局部的に破損してしまう恐れがある。
【0012】
また、特許文献1の図面には明記されていないが、軒先には屋根から流れ落ちてくる雨水を排水するための雨樋が軒先に対して建物から僅かに離れた軒先の下側に位置するように軒先に沿って延在して設けられているのが一般的である。そして、雨樋は、雨水の排水のための役目を果たす性質上、樹脂材等でできており十分な強度を有していないのが通常である。
【0013】
ここで、作業者が屋根の棟から軒先に下り歩いて行き、軒先に鉤部をひっかけようとする場合、その場所でそのような作業をすること自体が上述したように非常に危険が伴うため、しっかりと確認しながら作業を行うことができず、硬い材質のアルミ材でできた鉤部を雨樋にぶつけてしまって雨樋を破損させてしまうことがある。
【0014】
そして、軒先に加えて雨樋ごと鉤部の内側を引っ掛けたまま気付かずその後に十分な張力が作用するように主綱を屋根の上に張り渡すことで、鉤部の一部は雨樋に押し付けられて雨樋自体をかなりひどく損傷させてしまう恐れがある。
【0015】
このように軒先に鉤部をかける作業に伴って雨樋を破損させてしまうと、屋根上作業後に雨が降った際に屋根の上の雨水の排水がうまく行われず、場合によっては流下する雨水が建物の壁部に流れ落ちて建物自体を傷めてしまい、窓枠から雨水を浸入させて室内に雨水を流入させてしまう恐れも考えられる。
【0016】
また、特許文献2において開示された内容も、特許文献1において開示された内容と同等であり、上述したいくつかの重大な問題を生じさせる。更には、特に特許文献2の
図2(ハ)からも理解できるように、主綱の軒先側端部に接続したフック状の鉤部の先端が軒先の張り出しの下側に引っ掛かった状態で主綱は棟と軒先との間で張り渡されることになる。そのため、主綱に係る張力によって鉤部に作用する引っ張り力がこの鉤部の先端に集中して作用してしまい、軒先のこの部分を破損させる恐れが十分に考えられる。
【0017】
また、特許文献3に開示された内容は、主綱を建物の棟から軒先に引っ掛けて建物の建っている地面にまで垂れ下ろして地面上に置いた錘としての水タンクからなるアンカーに結びつけている。そして、アンカーの重さを利用して建物の棟から地面にまで達する主綱に張力を作用させて軒先の部分に位置する主綱を軒先に押し付けることで、棟と軒先の間で主綱を張り渡すようになっている。
【0018】
しかしながら、このような構成では屋根上作業の現場において建物の骨と軒先に張り渡す主綱の数に見合うだけの重さを有する多数の水タンクからなるアンカーを必ず準備しなければならず、屋根上作業にあたっての事前の準備作業や事後の片付け作業が極めて面倒である。特に同文献の
図1に示すような構成を実現するためには、梯子を何回も昇ったり降りたりしなければならずその準備作業が面倒であることに加えて、梯子の昇り降りに伴う転落の危険性が増し、好ましいとは言えない形態である。
【0019】
これに加えて、特許文献1及び特許文献2において指摘された問題も同様に生じる。具体的には、軒先には主綱に備えたそれほど幅の広くない保護部材を介して主綱からの押し付け力が局所的に作用する。このような力の軒先への加わり方は通常生じ得ることはないので、この力に対する抗力を軒先が十分に有している構造とはなっていないのが通常である。これに加えて、かつ屋根の長年の使用により軒先はある程度傷んでいて主綱を張って屋根上作業している最中に軒先のこの主綱の引っ掛かった部分が破損してしまう恐れが十分に考えられる。これと共に、この
図1では示されていないが、このような主綱の張り方を行うと必ず主綱の一部が軒先の斜め下方に突出して軒先に沿って延在する雨樋に引っかかってしまう。そして、上述した屋根上作業中の主綱から屋根に作用する張力に基づく押し付け力によって、上述したように元々の役割上十分な強度を有していない樹脂材などでできた雨樋を壊してしまい、特許文献1において記載した様々な問題を生じさせてしまう恐れも十分に考えられる。
【0020】
また、特許文献4に開示された内容は、主綱を建物棟と軒先との間でしっかりと張り渡すにあたって、軒先の下側の建物の壁部分を特別に貫通させた状態でこの部分に固定する特別な固定具である主綱支持部を建物の壁自体に取り付ける構成となっている。しかしながら、このような内容によると、建物の棟から軒先まで張り渡す主綱の軒先の端部ごとに建物の壁に貫通孔を形成してこのような固定具をそれぞれ建物に余計に取り付けることになる。
【0021】
そのため、それ自体の作業が必要になるばかりか、取り付け準備に時間や日数がかかりコストが嵩む。これに加えて、建物の軒先近くの壁に余分な取り付け穴をあけることになるため、屋根上作業完了後にこの取り付け穴を介して建物内に雨水が侵入する恐れが十分に考えられる。
【0022】
本発明の目的は、屋根上作業中に使用する屋根上作業用の安全用具であって、屋根上作業中に棟と軒先との間に主綱をしっかりと張り渡すために特に好適に使用可能な屋根上作業のための安全用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の請求項1に係る屋根上作業のための安全用具は、
屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定する屋根上作業のための安全用具であって、
平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部と、前記本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部と、前記本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部と、前記軒先係合部に備わった回転自在な水下側車輪部と、前記本体部の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部を有し、
前記水下側車輪部と水上側車輪部は、前記主綱を前記主綱結合部につないだ状態で前記屋根の棟側にいる前記作業者がこの主綱を送り出したり引き寄せたりすることで、前記屋根上作業のための安全用具を屋根の水上側である棟と水下側である軒先との間で前記本体部の下側面を屋根の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根の棟と軒先との間で前記主綱に繋がれた状態で往復移動可能とするように前記本体部に備え付けられており、
前記軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有し、
前記主綱を前記主綱結合部に結びつけられた状態で前記屋根上作業のための安全用具を前記屋根の棟から軒先に移動させた際に前記屋根上面から前記水下側車輪部が外れた状態になると共に、前記軒先係合部が、前記屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱を棟側に引っ張ることで生じる張力により前記屋根の軒先に係合するようになったことを特徴としている。
【0024】
また、本発明の請求項2に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、前記本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方が磁性材料からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で磁石を先端に備えた棒状部材の当該磁石が前記係合解除手段に及ぼす磁気引っ張り力を利用して、前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から係合解除して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴としている。
【0025】
また、本発明の請求項3に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、前記本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方に備わった安全用具側係合部からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で前記安全用具側係合部と取り外し可能に係合する回収具側係合部を先端に備えた棒状部材の当該安全用具側係合部と前記回収具側係合部とを互いに係合させることで前記係合解除手段に前記安全用具側係合部の係合力を利用して前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から外して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴としている。
【0026】
また、本発明の請求項4に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の棟側の幅が、前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の軒先側の幅よりも小さくなっていることを特徴としている。
【0027】
また、本発明の請求項5に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記本体部の上面側には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように屋根面対向離間用山折り部が側面視で略への字状をなすように形成されていることを特徴としている。
【0028】
また、本発明の請求項6に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記本体部には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、屋根上作業中に使用する屋根上作業用の安全用具であって、屋根上作業中に棟と軒先との間に主綱をしっかりと張り渡すために特に好適に使用可能な屋根上作業のための安全用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る屋根上作業のための安全用具(以下適宜「安全用具」とする)を斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る屋根上作業のための安全用具を斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示した安全用具を上側から見た平面図である。。
【
図4】本実施形態に係る安全用具を用いて建物の屋根の棟から軒先に主綱を張り渡す作業工程を示す説明図である。
【
図6】
図5に示す作業工程を終えて、主綱を棟と軒先続く作業工程を示す説明図である。
【
図7】
図6に続く作業工程を終えて建物の屋根の棟から軒先に主綱を張り渡した後に、作業者が屋根の上で作業を行う状態を示した説明図であり、より詳細には
図6に示す作業工程を終えて、主綱を棟と軒先との間に張り渡し、屋根上作業者の着用する安全用具ハーネスや安全帯と主綱を安全ロープで結んだ後、屋根上作業を実際に行っている状態を示す説明図である。
【
図8】作業者が
図7に示した屋根上作業作業を終えて安全用具を回収する第1の方法を示す説明図である。
【
図9】作業者が
図7に示した屋根上作業作業を終えて安全用具を回収する第2の方法を示す説明図である。
【
図10】安全用具を屋根の棟から軒先付近まで下り降ろした後に安全用具の水下側に備わる軒先係合部を屋根の軒先にしっかりと係合させる手順を
図10(a)乃至
図10(d)の順に示す説明図である。
【
図11】屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具の軒先係合部を軒先から外して回収する手順を
図11(a)乃至
図11(d)の順に示す説明図である。
【
図12】
図11とは異なる手順であって、屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具の軒先係合部を軒先から外して回収する手順を
図12(a)乃至
図12(d)の向かって示す説明図である。
【
図13】
図11及び
図12とは異なる手順であって、屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具の軒先係合部を軒先から外して回収する手順を
図13(a)乃至
図13(d)の向かって示す説明図である。
【
図17】安全装置の本体部の本発明の範囲に属する様々な折り曲げ形態を
図17(a)乃至
図17(f)に亘って側面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る屋根上作業のための安全用具について説明する。本発明の一実施形態に係る屋根上作業のための安全用具(以下、適宜「屋根上作業のための安全用具」又は単に「安全用具」とする)は、屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定するのに好適に利用可能な屋根上作業のための安全用具である。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る屋根上作業のための安全用具(以下適宜「安全用具」とする)を斜め上方から見た斜視図である。また、
図2は、本発明の一実施形態に係る屋根上作業のための安全用具を斜め下方から見た斜視図である。また、
図3は、
図1及び
図2に示した安全用具を上側から見た平面図である。
【0033】
屋根上作業のための安全用具10は、
図1乃至
図3に示すように、平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部100と、本体部100の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部200と、本体部100の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部300と、軒先係合部200に備わった回転自在な水下側車輪部410,420(400)と、本体部100の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部500を有している。
【0034】
そして、本実施形態においては、本体部100と、軒先係合部200と、主綱結合部300のそれぞれは、全て厚さ0.5mm~1.5mm程度の磁性を有する1枚の鋼板で形成されている。
【0035】
続いて、本体部100の構成について説明する。本体部100は、本実施形態においては、略矩形の板材(鋼板)を所定箇所において山折り部101と谷折り部102を板材の幅方向全体に亘って形成するように折り曲げて構成されている。そして、軒先係合部200の延在方向と平行な本体部100の棟側の幅が、軒先係合部200の延在方向とは平行な本体部100の軒先側の幅よりも小さくなっている。
【0036】
これによって、屋根上作業のための安全用具10の発揮する作用効果を十分に維持しつつ、安全用具10の全体の重量の軽量化を図り、屋根上作業者が梯子80を使って屋根50の上の棟51までにこの安全用具10を持ち運んでいくのに伴う身体的負担を軽減させている。
【0037】
なお、屋根面対向離間用山折り部101は、安全用具10を屋根50の棟51から軒先52まで転がり下ろす際に、本体部100の下面と屋根50の上面との間に十分な隙間を確保すると共に、安全用具10の軒先係合部200が軒先52にしっかりと係合した状態で本体部100の下面と屋根50の上面との間に十分な隙間を確保することで、屋根50の表面に傷が付いたりすることを防止して、屋根の上面を保護しながら作業できるようにするためのものである。
【0038】
また、本体部100の上面側には、軒先係合部200から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って軒先係合部200の延在方向と平行になるように屋根面対向離間用山折り部101が側面視で略への字状をなすように形成されている。
【0039】
また、本体部100には、軒先係合部200から所定の長さだけ離間した位置、即ち安全用具10を使用時において相対的に水上側となる位置において、その幅方向全体に亘って軒先係合部200の延在方向と平行になるように軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部102が形成されている。本体部100に形成された軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部102は、本実施形態においては、具体的には本体部100の谷折り部102として構成されている。
【0040】
谷折り部102は、安全用具10を軒先52に係合させて棟51と軒先52との間で主綱60を張り渡した際に、本体部100に主綱60の余分な張力が作用した際に谷折り部102の谷折り角度が拡開するように変形することで、その分の余分な張力を吸収する役目を果たしている。これによって、この余分な張力が軒先52に直接作用して屋根50の軒先52を傷めないようにしている。
【0041】
主綱結合部300は、本実施形態においては、本体部100の水上側端部の幅方向全体から安全用具10を屋根50の上においた状態で斜め上方向に向かって折り曲げられた起立部310と、起立部310の中央に形成された主綱端部結合孔320とで形成されている。
【0042】
なお、主綱結合部300は、本実施形態の場合、本体部100の水上側端部から延長した部分を折り曲げて形成されているが、本体部100と主綱結合部300とを別体で形成し、公知の結合手段で両者を一体にするように構成しても良い。
【0043】
また、上述の説明及びこれを具体的に示す
図10においては、主綱60の端部61を、主綱端部結合孔320を利用して主綱結合部300にしっかりと結びつけていたが、この代わりに主綱60の端部61に金属製の結合用フック(図示せず)を備えて、この結合用フックを主綱端部結合部に係合させて両者をしっかりと結合するようにしても良い。
【0044】
この場合、主綱結合部300は、上述したように本体部100から斜め上方に延在するように形成されているので、主綱端部結合孔320の形成位置についても安全用具10を屋根50の上に載せた時に屋根50の上面からその分高い位置に留まる。これによって、金属製の結合用フックを係合させて安全装置の屋根50の棟51から軒先52まで転がり下ろす過程で結合用フックが屋根50の上面に接触することによる屋根50の上面への傷つけ等、屋根50の美観や質感を失う問題が生じないようにする。
【0045】
なお、本実施形態に対応する図面では、主綱60は太いロープ状のものとして示しているが、主綱60の種類については本発明においてはこれに限定されるものではなく、主綱60の作用効果を十分に発揮しその役目を果たすものであれば、このような形態とは異なり強度を充分有する樹脂素材などでできた帯状(ベルト状)のものであっても構わないことは言うまでもない。
【0046】
また、安全用具10の主綱結合部300に主綱60の端部61を結合させる作業を、屋根50の棟51において屋根上作業者が主綱60を実際に棟51と軒先52との間で張り渡す準備作業の直前に行ってももちろん問題ない。
【0047】
しかしながら、作業者が梯子80を利用して屋根50の上に昇る前に予めこの結合作業を終えて棟固定式主綱送出し・巻取り機70と主綱60の端部61に結合済みの安全用具10を1組のセットとして作業袋などに入れて身に付けながら作業者が梯子80を昇って棟51まで棟固定式主綱送出し・巻取り機70と主綱60の端部61に結合済みの安全用具10を持って行くのが、準備作業としてより好ましい形態である。このようにすることで、屋根50上の棟51における主綱張り渡しのための準備作業を省略できるとともに、不注意による安全用具10の屋根50からの脱落を防止できる。
【0048】
軒先係合部200は、本体部100の水下側端部においてその幅方向全体に亘って形成されている。そして、その具体的構成は、安全用具10が軒先係合部200に完全に係合した際に側面視で屋根50の軒先52が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有している。即ち、軒先係合部200は、本体部100の水下側端部から本体部100を構成する板材の一部を上述のような向きで略コの字形に折り曲げることで構成されている。
【0049】
そして、軒先係合部200は、主綱60を主綱結合部300に結び付けられた状態で屋根上作業のための安全用具10を屋根50の棟51から軒先52に転がり降ろした際に屋根上面から水下側車輪部410,420(400)が外れた状態になると共に、軒先係合部200が、屋根50の棟51から張り渡された主綱60の張力により屋根50の軒先52に係合する直前の状態に至るようになっている。
【0050】
水下側車輪部410,420(400)と水上側車輪部500は、主綱60を主綱結合部300につないだ状態で屋根50の棟側にいる作業者がこの主綱60を送り出したり巻き取ったりすることで、屋根上作業のための安全用具10を主綱送出し・巻取り機70によって屋根50の水上側である棟51と水下側である軒先52との間で本体部100の下側面を屋根50の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根50の棟51と軒先52との間で主綱60に繋がれた状態で往復移動可能とする役目を果たすものである。
【0051】
本実施形態において2つの水下側車輪部410,420(400)は、本実施形態においては、軒先係合部200の折り返し部分の両端部に備わっている。より詳細には、軒先係合部200の折り返し部分の両端部近傍領域を本体部100に対して離間する方向に更に垂直に起立するように折り返し、この部分を折り返し部分の両端近傍に備わる水下側車輪回転用シャフト取り付け部211,212として形成している。
【0052】
そして、各水下側車輪回転用シャフト取り付け部211,212にシャフト取り付け穴を設け、シャフト450の端部近傍をそれぞれの各水下側車輪回転用シャフト取り付け部211,212に挿通した後、シャフト450の端部に水下側車輪部410,420(400)をそれぞれ回転自在に取り付けている。
【0053】
水上側車輪部500は、本実施形態においては、軒先係合部200の幅方向両端においてそれぞれ1つずつ合計2つの車輪からなる水下側車輪部410,420(400)とは異なり、1つの車輪で構成されている。そして、水上側車輪部500の車輪の回転中心軸線は、本体部100の谷折り部102と主綱結合部300との間であって谷折り部102の近傍において本体部100の幅方向略中央に備わっている。
【0054】
本体部100の谷折り部102の幅方向中央部分においては、本実施形態では、この部分を巻き取りながら水上側である主綱結合部300に向かって細長い矩形状の切り抜き部150が形成されている。切り抜き部150は、水上側車輪部500の車輪を回転させる水上側車輪取り付け部550を取り付けると共に、取り付け後に車輪の一部を本体部100の上面から突出させるためのものである。
【0055】
そして、
図1乃至
図3に示すように、安全用具10が屋根50の棟51(水上側)と軒先52(水下側)との間を移動可能となるように車輪を転がり回転させるべく車輪取り付け部がボルトやナット、ワッシャーなどの締結具で本体部100の切り抜き部150の近傍に取り付けられている。
【0056】
なお、この際、水上側車輪部500の車輪の回転中心軸線が、本体部100の谷折り部102よりも水上側に若干偏倚するように車輪取り付け部が本体部100の切り抜き部150の周囲を利用して取り付けられている。これは、主綱60の引っ張り時に必要以上の引っ張り力が安全用具10に加わった場合に軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部102が変形して吸収するようになっているが、この変形の影響を受けないように位置的に若干ずらしたことに起因する。これは、主綱60の引っ張り時に余分な張力を本体部100の谷折り部102が変形して吸収する際に、この変形の影響を受けないようにするためである。
【0057】
屋根上作業のための安全用具10が以上のような構成を有することで、作業者は、安全用具10と棟固定式主綱送出し・巻取り機70を好ましくは予め一対のセットに組み合わせる。そして、この一対のセットを持って梯子80を使って軒先52から棟51に昇り歩いて行き、再び軒先52に降ることなく棟51の部分で棟固定式主綱送出し・巻取り機70から安全用具10を屋根50の棟51において転がり下ろす準備をする。
【0058】
そして、この状態で屋根上作業のための安全用具10を屋根50の棟51から軒先52に重力によって転がり降ろし、安全用具10の軒先係合部200の下側に備わった水下側車輪部410,420(400)が屋根50の軒先52から外れた状態になった後に、棟固定式主綱送出し・巻取り機70によって主綱60を適当な長さだけ巻き取ることで、軒先係合部200が、屋根50の棟51から軒先52の間において一定の張力で張り渡す作業を屋根上作業者が屋根50の棟51の付近で安全に行うことができる。
【0059】
続いて、上述の屋根上作業のための安全用具10を用いて屋根上作業者が主綱60を棟51と軒先52との間に張り渡すまでの具体的作業を以下に図面に基づいて詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る安全用具10を用いて建物5の屋根50の棟51から軒先52に主綱60を張り渡す作業工程を示す説明図である。また、
図5は、
図4に続く作業工程を示す説明図である。また、
図6は、
図5に続く作業工程を示す説明図である。
【0060】
また、
図7は、
図6に続く作業工程を終えて建物5の屋根50の棟51から軒先52に主綱60を張り渡した後に、作業者が屋根50の上で本来の作業を行う状態を示した図で張り、より詳細には
図6に示す作業工程を終えて、主綱60を棟51と軒先52との間に張り渡し、屋根上作業者の着用する安全用具ハーネスや安全帯と主綱60を安全ロープ65で結んだ後、屋根上作業を実際に行っている状態を示す説明図である。
【0061】
また、
図10は、安全用具10を屋根50の棟51から軒先付近まで下り降ろした後に安全用具10の水下側に備わる軒先係合部200を屋根50の軒先52にしっかりと係合させる手順を
図10(a)乃至
図10(d)の順に示す説明図である。
【0062】
最初に屋根上作業者(以下「作業者」とする)は、梯子80を建物5の屋根50の軒先52に立てかけた後、作業者の昇降に際して梯子80が倒れないように軒先52にしっかりと固定する。そして、作業者は、本実施形態に係る安全用具10とここでは詳細な構成については説明を省略する棟固定式主綱送出し・巻取り機70とを持ちながら梯子80を登って屋根50の上の棟51まで持っていく。
【0063】
なお、棟固定式主綱送出し・巻取り機70は、ここでは詳細な構造については説明しないが、磁石を備えた厚板状固定部と、これに備わる主綱送出し・巻き取り部と、主綱送出し・巻き取り部に備わる屋根上作業用の主綱60を有している。
【0064】
そして、棟固定式主綱送出し・巻取り機70を棟51の上の所定位置に位置決めして載せ、ベース部に備わる磁石の磁力を利用して棟固定式主綱送出し・巻取り機70を棟51にしっかりと取り付ける。次いで、棟固定式主綱送出し・巻取り機70の主綱60の先端に結びつけた安全用具10を屋根50の棟51の近傍に仮置きする。
【0065】
そして、本実施形態に係る屋根上作業のための安全用具10を作業者が棟51にとどまったまま軒先52まで降り降りることなく安全用具10を軒先52に向かって転がり下ろしていく。
【0066】
これによって、作業者が棟固定式主綱送出し・巻取り機70から主綱60を送り出すごとに、安全用具10が棟51から軒先52に向かって転がり下ろしながら軒先52に近づいていく。そして、やがては軒先係合部200に備わった2つの車輪が軒先52から外れて軒先係合部200自体が主綱60に引っ張られながら屋根50の軒先52の側方近傍にずれ出た状態で位置する。
【0067】
この状態において、作業者は、今度は棟固定式主綱送出し・巻取り機70から送り出された主綱60を若干巻き取る。これによって、安全用具10が軒先52に引き寄せられてやがては軒先52が側面視コの字状を有する軒先係合部200の内側に幅方向全体に亘って入り込んで安全用具10が軒先52にしっかりと係合させることができる。
【0068】
これに加えて、本発明においては、主綱60から軒先52に作用する引っ張り力は主綱の太さに集中して軒先52にそのまま加わることがない。即ち、これは軒先係合部200がその構造上本質的にある程度の幅を有しているため、この場全体に亘って上記張力が略均等に分散されることになる。これによって、軒先52に対しても主綱60が引っかかっている極めて局所的な部分に主綱に作用する引っ張り力が軒先52を建物5の壁側に向かって大きな力で押し付けることを回避することができる。
【0069】
その結果、ただでさえそのような力のかかり具合に対して抵抗力がない軒先であって、長期間屋根の一部としての役目を果たして強度的にも集中した応力の作用により疲労破壊し易い軒先が本発明によると変形したり、破損したり、スレート板の場合のようにそれ自体が破断して屋根上工事を終えてしばらくしてから思わぬ時にその破損物が軒先から落下してくるような危険な状態を回避することができる。
【0070】
具体的には、本実施形態においては軒先側の車輪が軒先52から外れることによって安全用具10の先端部が軒先52の高さよりも若干下がることで、安全用具10の谷折り部102の高さも相対的に低くなり、やがてはこの側面視コの字状を有する軒先係合部200の内側にはまり込む直前の状態となる。
【0071】
作業者は、この状態で棟固定式主綱送出し・巻取り機70をより強く引っ張り棟51と軒先52との間で主綱60を一定の張力を保ちながら張り渡すことができる。この際、主綱60に発生する余分な張力は、安全用具10の谷折り部102が拡開弾性変形して吸収される。これによって、屋根50の軒先52が破損するのを防止している。
【0072】
以上説明したように、従来においては、主綱60の端部61に軒先係合用のフックを備えた形態を取ったり軒先52の下に置いた錘に主綱60の軒先52の下にいる他の作業者に主綱60の先端を結びつけてもらうために、フックの部分や主綱60の先端を持って軒先52まで下り降りて行き、軒先52が傷んで作業者の体重で軒先52が破損したり作業者の体調や軒先52に向けた注意力を考え事に気を取られたりするなどの何かの事情で低下させたりして予期せずバランスを崩し、屋根50からの落下の恐れの危険性が非常に高かったが、本発明によると、作業者が軒先52まで降りて行かずに主綱60を棟51と軒先52との間にしっかりと張り渡すことが可能になるので、安全上極めて優れた利点を有している。
【0073】
また、作業者がこの作業を1人で行う場合、従来のように主綱60の端部61に錘としてとの水バケツなどを事前に準備して、この端部61を錘に結びつけた状態で梯子80を登って棟51まで屋根50の上を歩いていったり、主綱60の端部61を持ちながら屋根50の棟51から軒先52まで下がっていき、その主綱60の端部61を軒先52の下まで垂らして、再度梯子80で屋根50から降りて主綱60の端部61を錘としての水バケツに結びつけ、再び梯子80で屋根50の軒先52に昇って屋根50の棟51まで登り歩いていったりして、次なる作業を行うような大変手間を要する作業工程を一気に簡略化できる。
【0074】
なお、以上説明した主綱張り渡しのための準備作業を行って、主綱60を棟51から軒先52に張り渡した後、作業者は、ハーネス型安全帯やベルト型安全帯に結合した安全ロープ65の端部を屋根50の上に張り渡した主綱60の所定位置に安全ロープ65を介して結び付け、屋根上作業の安全性を確保する。そして、作業者はこのような状態で先程主綱60を張り渡した屋根50の面と反対側の面に向かって同じような手順で、棟固定式主綱送出し・巻取り機70から主綱60の先端に結びつけた安全用具10を屋根50の棟51から軒先52まで転がり下ろしていき、先程と同等の手順で先程の屋根50と反対側の屋根50の軒先52まで転がり下ろす。そして、棟固定式主綱送出し・巻取り機70で主綱60を若干巻き取ることによって、安全用具10を軒先52に完全に係合させて固定させると共に、主綱60を屋根50の棟51と軒先52との間においてしっかりと張り渡す。
【0075】
そして、主綱60を棟51と軒先52との間でしっかりと張り渡した、即ち主綱60の張り渡し部分にゆるみが生じることなく安全な屋根上作業のために必要かつ十分な張力を維持できるように、主綱60の巻き取り状態を棟固定式送出し・巻取り機70が作業者の意図に反しておける送り出し・巻き取り動作機能が行えないように装置安全ロックをかけた後に、その次の作業工程を行うようにする。
【0076】
なお、主綱の張り渡し本数については、屋根の棟方向の長さや屋根の上での必要とする作業エリアに応じて図面に示すように2本かそれ以上の複数本、若しくは1本張り渡すが、主綱を3本以上張り渡す必要がある場合においても、上述と同様に棟の新たな固定場所に棟固定式主綱送出し・巻取り機を棟と軒先との間に張り渡す位置に対応する棟の位置に取り付け、上述した作業を繰り返し効率良く行う。
【0077】
これによって、作業者は、主綱の張り渡しの本数が増えれば増えるほど作業効率を向上させることができる。また、或る程度年数が経過して補修が必要な屋根であって特に軒先付近が痛んでいる可能性が高いような屋根や、一見丈夫そうな屋根であっても、実際にかなり傷んでいて見た目で痛み具合が予測不可能な屋根であっても棟と軒先との間で主綱を安全に張り渡すことができる。
【0078】
同様に、作業者が軒先の近くまで下がっていた不注意や体調不良でバランスを崩したり、軒先近傍の屋根の一部が滑りやすくなっていてこれに気付かず足を滑らせてしまい、そのまま軒先から建物の下に転落したりするような思わぬ重大事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0079】
また、屋根面対向離間用山折り部101が形成されることで、安全用具10を屋根50の棟51から軒先52まで転がり下ろす際に本体部10の下側面と屋根50の上面との間に十分な空間を確保しておくことができ、屋根50の上面が安全用具10の一部でこすれて傷つくことを防止できる。同様に、安全用具10が軒先52にしっかりと係合した際においても、本体部10の下側面と屋根50の上面との間に十分な空間を確保しておくことができ、屋根50の上面が安全用具10の一部でこすれて傷つくことを防止できる。更には、屋根上作業を終えた後に安全用具10を回収するにあたって、本体部10の下側面が屋根50の上面にこすれて屋根50を傷つけるのを防止することができる。
【0080】
また、安全用具の本体部の軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部としての谷折り部が、安全用具を軒先に係合させて棟と軒先との間で主綱を張り渡した際に、本体部の主綱の余分な張力が作用した際にその分の余分な張力を谷折り部の谷折り角度が拡開するように変形するようになっているので、棟と軒先との間で主綱を張り渡す際に生じる余分な張力を吸収し、この余分な張力が軒先に直接作用して屋根の軒先を傷めないようにできる。
【0081】
また、軒先係合部の延在方向に平行する本体部の棟側の幅が、軒先係合部の延在方向と平行な本体部の棟側の幅よりも小さくなっているので、屋根上作業のための安全用具の発揮する作用効果を十分に維持しつつ、この安全用具の全体の重量の軽量化を図り、屋根上作業者が梯子を使って屋根の上の棟までにこの安全用具を持ち運んでいくのに伴う身体的負担を軽減させ、屋根上の作業を開始した際にそれまでの準備作業の疲労感を残すことなく、屋根上作業を安全に開始することが可能となる。
【0082】
以上のようにして作業者は、作業者自身のバンド式安全帯やハーネス式安全帯と主綱を結合して屋根の上で安全に作業するにあたって、必ず行わなければならない準備作業としての屋根の棟と軒先との間における主綱の張り渡し作業を屋根の棟に上った状態でわざわざ危険性のある軒先まで歩いて下りていかずに済ますことができる。
【0083】
これによって、屋根の上での実際の作業を行うためのこのような主綱の張り渡しの準備段階において思わぬ転落事故を招くことはなく、かつこのような準備段階の作業に時間を要することなく、余分な体力や注意力を消耗せずにその後の実際の屋根上作業、即ちそれほど大きくない建物の屋根の施工や、屋根への太陽光発電パネルの後付け設置、屋根の一部破損部分の補修・張り替え、スレート板に金属板を被せて補強するような作業を行うにあたって注意力を充分に払いながら、今までの準備作業によってその後に行う屋根上作業に必要な体力を浪費せずに体調を整えた状態でその後の実際の屋根上作業を効率良く行うことが可能となる。
【0084】
続いて、実際の屋根上作業を行ってこれを終えた後に、本発明に係る安全用具を回収する幾つかの具体的手順についての説明を行う。なお、屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具10の軒先係合部200を軒先52から外して回収するにあたっては、基本的に以下に説明する安全用具回収具900を用いる。この作業に当たっては、実際の屋根上作業を行う前に行う準備作業である主綱60の棟51を軒先52との間での張り渡し作業に伴う安全用具10の軒先係合部200の軒先52への係合を解除することを最初に行う。
【0085】
この係合解除にあたっては、主綱60の巻き取り状態を棟固定式送り出し・巻き取り機70の主綱張り渡しロックを解除して主綱60を若干送り出して、安全用具10の重みを利用して安全用具の軒先係合部200を軒先52から下方にずらすようにして係合解除する。この際、主綱60の送り出しの長さは若干の長さであるため、安全用具10が軒先52からその下方に勢い良く落下してしまうことはない。また、この若干の長さに関しては、屋根50の軒先52に沿って設けられた樋55を破損させないように調整しながら作業することが可能である。
【0086】
そして、以下の文章の記載及びこれに対応する図面に示すように、安全用具回収具900を用いて安全装置100の回収を行う。なお、安全用具回収具900を用いることなく、主綱60をゆっくりと送り出すことだけで安全用具10が軒先52を傷つけたり破損させたりしないような配置関係を建物の軒先52と樋55が有している場合は、上述の安全用具回収具900を必ずしも使用しなくても安全用具10を回収することができる。この点の説明についても、以下の文章及びそれに対応する図面において説明を行っている。
【0087】
図8は、作業者が屋根上作業を終えて安全用具を屋根の棟に向かって回収するやり方を示す説明図である。また、
図11は、
図8に示す図面に対応する図であって、屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具の軒先係合部を軒先から外して棟に向かって回収する手順を
図11(a)乃至
図11(d)の順に示す説明図である。
【0088】
また、
図9は、屋根上の作業者が屋根上作業を終えて安全用具を屋根の軒先から建物の下にいる作業者によって回収する
図8及び
図11とは異なるやり方を示す説明図である。また、
図12は、
図9に示す図面に対応する図であって、屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具の軒先係合部を軒先から外して建物の下において回収する手順を
図12(a)乃至
図12(d)の順に示す説明図である。
【0089】
これらの図面に示した安全用具回収具900は、棒状の本体部910と、本体部910の先端に備わった安全用具取り外し磁性部材920から構成され、安全用具の本体部又は軒先係合部の少なくとも何れか一方で磁性材料からなる部分に安全用具取り外し磁性部材920を磁力でしっかりと固着させ、軒先から安全用具を取り外すためのものである。この際、主綱を緩めた状態で磁石を先端に備えた棒状部材の磁石を介して安全用具回収具900の磁気引っ張り力を利用して屋根の軒先に対して離れた場所から軒先係合部を屋根の軒先から係合解除して屋根上作業のための安全用具を回収可能とする。
【0090】
また、
図13は、上述と同様の安全用具回収具900を用いて、
図11及び
図12とは異なる手順で安全用具を軒先から外すようにした説明図である。この図においても、屋根上作業を終えた後に軒先にしっかりと係合させた安全用具の軒先係合部を、主綱の張り具合を緩めることで安全用具を軒先から外し、屋根の軒先からそのまま地上に吊り降ろして回収する手順を上から下に向かって示す説明図である。
【0091】
この図面に示すやり方は、上述したように棟51に取り付けた棟固定式主綱送出し・巻取り機70から主綱60を送り出し続けてこれに伴い安全用具10を軒先52からそのまま軒先52の直下の地面まで吊り降ろしても、軒先52の近傍に備わった例えば樋55を傷つけたり破損させたりする恐れがない場合に作業の簡略化を図る上で好ましい回収方法である。
【0092】
図14は、本発明の別の変形例を示す平面図、底面図、斜視図である。このような形態であっても、本発明の作用効果を発揮することが十分に可能であるため本発明の範囲内に属することを明確化するために示した。
【0093】
図15は、本発明の更に別の変形例を示す平面図、底面図、斜視図である。このような形態であっても、本発明の作用効果を発揮することが十分に可能であるため本発明の範囲内に属することを明確化するために示した。
【0094】
図16は、
図14及び
図15とは異なる本発明の他の変形例を示す平面図、底面図、斜視図である。このような形態によると、安全用具の本体部の軒先側と棟側の幅が略同一となっているので、上述の実施形態よりも安全用具自体の重量が増加する。
【0095】
しかしながら、屋根の棟から軒先に向かってより安定した下り動作を可能とするため、屋根の上面がかなり歪んでいたり凹凸があったりしても、安全用具を棟から軒先に向かって確実に下らせることができる。そのため、このような形態であっても、本発明の作用効果を発揮することが十分に可能であるため本発明の範囲内に属することを明確化するために示した。
【0096】
図17は、安全装置の本体部の本発明の範囲に属する様々な折り曲げ形態を側面視で示す説明図である。このような様々な折り曲げ形態を有していたり、
図17(f)に示すように本体部において折り曲げ部分を有しなかったりしても、本発明の作用効果を発揮し得ることは十分に可能である。そのため、これらの折り曲げ形態を有する変形例や本体部に折り曲げ部を有さない変形例も本発明の範囲内に属するものである。
【0097】
これに加えて、折り曲げ部が多ければ多いほど、又は折り曲げ角度が小さければ小さいほど、若しくは折り曲げられた傾斜面が広ければ広いほど安全用具の軒先係合部を軒先に完全にはめ込む際に軒先自体を傷めることなくこの嵌め込み動作をするために主綱をより大きな引っ張り力で棟側から引っ張っても、この折り曲げ部の弾性変形によって余分な引っ張り力を吸収することができるので、建物の屋根の軒先を傷めることなく安全用具を軒先に取り付けることが可能となる。
【0098】
また、
図17(f)に示すように、本体部に折り曲げ部が形成されていない形態の場合、最小限の折り曲げ加工で安全用具を作成することができ、建物の屋根の作業エリアがかなり広く主綱を何本も棟から軒先に亘って張り渡す必要がある場合に、必要な多数の安全用具を迅速に準備することが可能となる。
【0099】
なお、以上本発明の実施形態で説明した屋根上作業のための安全用具に関する形状、寸法、個数についてはあくまで実施形態における一例を示したものに過ぎず、本発明の作用を発揮し得る範囲内であればどのような折板屋根材の材質や形状、寸法、個数のものであっても適用可能であることは言うまでもない。
【0100】
例えば、屋根上作業のための安全用具は、上述の実施形態の代わりに本体部と軒先係合部の少なくとも一方に備わった係合用フックからなり、かつ主綱を緩めた状態で係合用フックと取り外し可能に係合するフック係合部を先端に備えた棒状部材として構成されていても良い。この場合、係合用フックと安全用具に追加して備えたフック係合部とを互いに係合させることで安全装置のフック係合部に安全用具の係合用フックが係合する際に生じる係合力を利用して、屋根の軒先に対して離れた場所から軒先係合部を屋根の軒先から遠隔で外すことができる。これによって、屋根上作業のための安全用具を安全に回収することができる。
【0101】
また、屋根上作業のための安全用具は、上述の実施形態及びその変形例の代わりに主綱の張り具合を緩めた際に屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有していても良い。この場合、安全用具回収具は、前記本体部に形成された係合解除用孔からなり、かつ主綱を緩めた状態で係合解除用孔にひっかけ可能な係合解除用ひっかけ部を先端に備えた棒状部材の係合解除用ひっかけ部を係合解除用孔に係合させることで、安全装置に備わった係合解除孔に係合解除用ひっかけ部が引っかかった際の係合力を利用して屋根の軒先に対して離れた場所から軒先係合部を屋根の軒先から外して屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようにしても良い。
【0102】
また、安全用具の軒先係合部は、上述の実施形態においては側面視コの字状の構成を有していたが、軒先の形状に合わせて側面視U字状をなしていても良い。また、安全用具の軒先係合部は、上述の実施形態のように安全用具の本体部の軒先側端部から延在する板状部材を折り曲げて形成する代わりに、別体で構成すると共に互いにしっかりと結合する形態としても良い。
【0103】
この際、軒先係合部に関して上述したように側面視の形状や内側の凹み部の大きさがそれぞれ異なる多種類の軒先係合部を用意して、実際に屋根上作業を行う建物の屋根の軒先に合わせた軒先係合部を選び、これを本体部に固定して使用しても良い。
【0104】
また、屋根の軒先が特殊な形状の場合、安全用具の軒先係合部もその軒先に合わせた形状を有する特注品として制作してこれを備えた回収用具を現場で使用しても良い。
【0105】
また、安全用具に備わった車輪の個数は上述の実施形態では軒先側車輪部については2つとしたが、これ以上の個数でも構わないことは言うまでもない。同様に棟側車輪部についてもその個数は上述の実施形態に限定されるものでもない。
【0106】
また、安全用具に備わった車輪の大きさ及び材質は様々な形態が考えられ、本発明の作用効果に反しない限りそれらは全て本発明の範囲内に含まれる。即ち、安全用具を屋根の棟と軒先の間で移動させるにあたって、屋根の上を転がす車輪によって屋根の表面が傷付くようなことがなければ、ゴム製の車輪や柔らかい樹脂製の車輪以外の様々な材質や形状を有する車輪を利用可能である。
【0107】
例えば、軒先側車輪部を1本の長い塩ビ管を切断した上でこの両端に回転自在な支持部材を備えて上述の実施形態のような車輪支持用のシャフトで軒先係合部に回転自在に取り付けても良い。
【0108】
より詳細には、安全用具に備わった車輪の大きさ及び材質は様々な形態が考えられ、本発明の作用効果に反しない限りそれらは全て本発明の範囲内に含まれる。例えば軒先側車輪部を1本の長い塩ビ管を切断した上でこの両端に回転自在な支持部材を備えて上述の実施形態のような車輪支持用のシャフトで軒先係合部に回転自在に取り付けても良い。同じく棟側車輪部についてもこのような構成を有するようにしても良い。
【0109】
この場合、安全用具の軒先係合部において1つのローラー状の車輪が備わるようになり、いわゆる地面をローラーで踏み固める建設機械の一種であるロードローラーの前側ローラー部分のような外形形態をとるようになる。同じく棟側車輪部についてもこのような構成を有するようにしても良い。
【0110】
また、安全用具に備わった車輪の個数は、上述の実施形態では軒先側車輪部については2つとしたが、これ以上の個数でも構わないことは言うまでもない。同様に棟側車輪部についても、その個数は上述の実施形態に限定されるものでもない。
【0111】
また、上述の実施形態とは異なり、屋根上作業を終えた後に安全用具を屋根の軒先から外して回収するにあたって以下のような簡便な方法で行うことも安全用具の軒先係合部の形状や屋根の軒先に樋55が備わっていない場合や樋55の配置に問題がない場合に応じて可能となる。
【0112】
具体的には、屋根上作業を終えた後に屋根上作業者が主綱送出し・巻取り機によって主綱を若干送り出して安全用具を軒先から外して軒先から下に主綱の端部をつないだ状態で垂れ下がるようにする。この際、樋55が配置されている場合は樋55を壊さないように気を付けて行う。そして、更に主綱を送り出すことで安全用具を建物の地面までゆっくりと降下させる。
【0113】
そして、他の作業者がその軒先の下にいる場合はその作業者に、いない場合は屋根上作業者が梯子を使って建物の屋根の下まで降りて安全用具の降下位置まで行き、主綱の端部と安全用具の主綱結合部との結合を分離させるようにする。次いで、主綱送出し・巻取り機によって主綱を再び巻き取り、主綱を完全にこの主綱送出・巻取り機によって巻き取った後にこれを棟から外して梯子を使って建物の下まで降りるようにしても良い。
【0114】
この場合、上述の実施形態のように特別な回収用具を用いることなく、屋根の棟から軒先までの主綱張り渡し作業を安全に終えることが可能となる。また、このような形態を取ることで、安全用具の本体部や軒先係合部の少なくとも何れかを磁性材料でできた板状部材を利用して制作する必要はなく、例えば強度と耐久性を充分保つ樹脂材を用いて製作しても良い。このような材料を用いることで共通の金型で安全用具を大量生産することが可能となる。
【0115】
また、回収用具として磁石を備えた回収用具を用いる場合、安全用具の本体部又は軒先係合部の少なくとも何れか一方に関してそれ自体全体を磁性材でできた板状部材とする必要はなく、磁性材でできた板状部材を十分な接着力成のある接着部材等を介して安全用具の本体部又は軒先係合部の少なくとも何れか一方に固着させるようにしても良い。
【0116】
本発明によると、以上のような内容により、屋根上作業の作業自体の質を低下させることなく作業の効率化や短縮化を図ることが可能となる。そのため、屋根上作業の安全を図る上で上述したように建物の屋根ごとにその構成が通常異なっていることや、屋根の長年の使用による天候などの環境的影響に基づく外見では気が付かない屋根自体の劣化等に起因して屋根上作業中に作業者の体重が加わることによる予期せぬ屋根の破損等に基づく作業者の屋根上の滑落や軒先からの落下などの重大事故が発生するのを防止できる。
【0117】
以上のような重大事故発生の要因に加えて、近年の異常気象に起因して気温は非常に高くなる真夏日がかなり増加している。そして、屋根上作業は雨が降っていないときしかできない作業であるため、屋根上作業をスケジュール通りに行うため、このような真夏日であってもかなりのハードスケジュールで処理すべき作業を行っていかなければならない。
【0118】
そのため、屋根上作業者が特に温度が高くなる屋根の上で真夏日に多くの作業を急いで進めていると、極めて熱中症になりやすい作業環境となる。そして、屋根上作業中に熱中症によって体調が急に悪化してそのまま倒れ込んだりしてしまうと、屋根上の滑落や軒先からの落下を招くなどの極めて危険な状況に陥る。
【0119】
従って、このような限られた作業条件において、極めて気温が高くなる真夏日に屋根上作業を行うためには、作業自体の質を低下させることなく作業の効率化や短縮化を図ることが極めて重要であるが、本発明によると、近年益々重要度が高まっているこのような異常気象条件下における屋根上作業に伴う作業者の体調悪化の防止及びこれによる日々繰り返す安全な屋根上作業を確実に行うにあたって極めて重要となる必要条件を全てクリアすることができる。
【0120】
このように屋根上作業の作業自体の質を低下させることなく作業の効率化や短縮化を図ることが重要である点については、作業環境が真夏日である条件に限らず、天候不順により風がかなり強い日や建物の立地している地理的条件に起因する恒常的な強風発生地域における屋根上作業においても同様であり、台風や低気圧の通過による強風と多量の降雨後に天候が回復した直後の屋根の上での作業や、大雪による屋根上の大量の積雪後に雪の重さで傷んだ屋根の上での作業等にも当てはまる。そして、本発明によると、このような屋根上作業を安全に行うにあたって極めて重要となる必要条件を全てクリアすることができる。
【符号の説明】
【0121】
5 建物
10 屋根上作業のための安全用具(安全用具)
50 屋根
51 棟
52 軒先
55 樋
60 主綱
61 端部
65 安全ロープ
70 棟固定式主綱送出し・巻取り機
80 梯子
100 本体部
101 屋根面対向離間用山折り部
102 軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部(谷折り部)
150 切り抜き部
200 軒先係合部
211,212 水下側車輪回転用シャフト取り付け部
300 主綱結合部
310 起立部
320 主綱端部結合孔
410,420(400) 水下側車輪部
450 シャフト
500 水上側車輪部
550 水上側車輪取り付け部
900 安全用具回収具
910 本体部
920 安全用具取り外し磁性部材
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定する屋根上作業のための安全用具であって、
平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部と、前記本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部と、前記本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部と、前記軒先係合部に備わった回転自在な水下側車輪部と、前記本体部の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部を有し、
前記水下側車輪部と水上側車輪部は、前記主綱を前記主綱結合部につないだ状態で前記屋根の棟側にいる作業者がこの主綱を送り出したり引き寄せたりすることで、前記屋根上作業のための安全用具を屋根の水上側である棟と水下側である軒先との間で前記本体部の下側面を屋根の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根の棟と軒先との間で前記主綱に繋がれた状態で往復移動可能とするように前記本体部に備え付けられており、
前記軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有し、
前記主綱を前記主綱結合部に結びつけられた状態で前記屋根上作業のための安全用具を前記屋根の棟から軒先に移動させた際に前記屋根上面から前記水下側車輪部が外れた状態になると共に、前記軒先係合部が、前記屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱を棟側に引っ張ることで生じる張力により前記屋根の軒先に係合するようになったことを特徴とする屋根上作業のための安全用具。
【請求項2】
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、かつ前記安全用具は、この板状をなす本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方が磁性材料からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で前記取り外し部材に備わる磁石を先端に備えた安全用具回収具の当該磁石が前記屋根上作業のための安全用具に及ぼす磁気引っ張り力を利用して、前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から係合解除して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項3】
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、前記安全用具は、この板状をなす本体部と軒先係合部の少なくとも一方に安全用具側係合部を備え、かつ前記主綱を緩めた状態で前記安全用具側係合部と取り外し可能に係合する回収具側係合部を前記取り外し部材に備え、前記安全用具の当該安全用具側係合部と前記回収具側係合部とを互いに係合させることで前記係合解除手段に前記安全用具側係合部の係合力を利用して前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から外して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項4】
前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の棟側の幅が、前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の軒先側の幅よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項5】
前記本体部の上面側には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように屋根面対向離間用山折り部が側面視で略への字状をなすように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項6】
前記本体部には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の請求項1に係る屋根上作業のための安全用具は、
屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定する屋根上作業のための安全用具であって、
平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部と、前記本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部と、前記本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部と、前記軒先係合部に備わった回転自在な水下側車輪部と、前記本体部の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部を有し、
前記水下側車輪部と水上側車輪部は、前記主綱を前記主綱結合部につないだ状態で前記屋根の棟側にいる作業者がこの主綱を送り出したり引き寄せたりすることで、前記屋根上作業のための安全用具を屋根の水上側である棟と水下側である軒先との間で前記本体部の下側面を屋根の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根の棟と軒先との間で前記主綱に繋がれた状態で往復移動可能とするように前記本体部に備え付けられており、
前記軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有し、
前記主綱を前記主綱結合部に結びつけられた状態で前記屋根上作業のための安全用具を前記屋根の棟から軒先に移動させた際に前記屋根上面から前記水下側車輪部が外れた状態になると共に、前記軒先係合部が、前記屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱を棟側に引っ張ることで生じる張力により前記屋根の軒先に係合するようになったことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
また、本発明の請求項2に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、かつ前記安全用具は、この板状をなす本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方が磁性材料からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で前記取り外し部材に備わる磁石を先端に備えた安全用具回収具の当該磁石が前記屋根上作業のための安全用具に及ぼす磁気引っ張り力を利用して、前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から係合解除して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴としている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
また、本発明の請求項3に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、前記安全用具は、この板状をなす本体部と軒先係合部の少なくとも一方に安全用具側係合部を備え、かつ前記主綱を緩めた状態で前記安全用具側係合部と取り外し可能に係合する回収具側係合部を前記取り外し部材に備え、前記安全用具の当該安全用具側係合部と前記回収具側係合部とを互いに係合させることで前記係合解除手段に前記安全用具側係合部の係合力を利用して前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から外して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴としている。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定する屋根上作業のための安全用具であって、
平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部と、前記本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部と、前記本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部と、前記軒先係合部に備わった回転自在な水下側車輪部と、前記本体部の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部を有し、
前記水下側車輪部と水上側車輪部は、前記主綱を前記主綱結合部につないだ状態で前記屋根の棟側にいる作業者がこの主綱を送り出したり引き寄せたりすることで、前記屋根上作業のための安全用具を屋根の水上側である棟と水下側である軒先との間で前記本体部の下側面を屋根の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根の棟と軒先との間で前記主綱に繋がれた状態で往復移動可能とするように前記本体部に備え付けられており、
前記軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有し、
前記主綱を前記主綱結合部に結びつけられた状態で前記屋根上作業のための安全用具を前記屋根の棟から軒先に移動させた際に前記屋根上面から前記水下側車輪部が外れた状態になると共に、前記軒先係合部が、前記屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱を棟側に引っ張ることで生じる張力により前記屋根の軒先に係合するようになったことを特徴とする屋根上作業のための安全用具。
【請求項2】
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、かつ前記安全用具は、この板状をなす本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方が磁性材料からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で前記取り外し部材に備わる磁石を先端に備えた安全用具回収具の当該磁石が前記屋根上作業のための安全用具に及ぼす磁気引っ張り力を利用して、前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から係合解除して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項3】
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、前記安全用具は、この板状をなす本体部と軒先係合部の少なくとも一方に安全用具側係合部を備え、かつ前記主綱を緩めた状態で前記安全用具側係合部と取り外し可能に係合する回収具側係合部を前記取り外し部材に備え、前記安全用具の当該安全用具側係合部と前記回収具側係合部とを互いに係合させることでこの係合力を利用して前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から外して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項4】
前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の棟側の幅が、前記軒先係合部の延在方向と平行な前記本体部の軒先側の幅よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項5】
前記本体部の上面側には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように屋根面対向離間用山折り部が側面視で略への字状をなすように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【請求項6】
前記本体部には、前記軒先係合部から所定の長さだけ離間した位置において、その幅方向全体に亘って前記軒先係合部の延在方向と平行になるように軒先係合時主綱張力一部吸収用変形可能折り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上作業のための安全用具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の請求項1に係る屋根上作業のための安全用具は、
屋根上作業中に使用する安全作業用の主綱を棟と軒先との間で張り渡した状態で固定する屋根上作業のための安全用具であって、
平面視で一方の面を上面側とし他方の面を下面側とした板状をなす本体部と、前記本体部の一方の端部をなす水下側端部に沿って備わった軒先係合部と、前記本体部の他方の端部をなす水上側に備わった主綱結合部と、前記軒先係合部に備わった回転自在な水下側車輪部と、前記本体部の水上側端部近傍に備わった水上側車輪部を有し、
前記水下側車輪部と水上側車輪部は、前記主綱を前記主綱結合部につないだ状態で前記屋根の棟側にいる作業者がこの主綱を送り出したり引き寄せたりすることで、前記屋根上作業のための安全用具を屋根の水上側である棟と水下側である軒先との間で前記本体部の下側面を屋根の上面に対して一定の間隔を隔てて対向させた状態で屋根の棟と軒先との間で前記主綱に繋がれた状態で往復移動可能とするように前記本体部に備え付けられており、
前記軒先係合部は、側面視で屋根の軒先が内側に入り込むような略コの字形に折れ曲がった形状を有し、
前記主綱を前記主綱結合部に結びつけられた状態で前記屋根上作業のための安全用具を前記屋根の棟から軒先に移動させた際に前記屋根上面から前記水下側車輪部が外れた状態になると共に、前記軒先係合部が、前記屋根の棟から軒先まで張り渡される主綱を棟側に引っ張ることで生じる張力により前記屋根の軒先に係合するようになったことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
また、本発明の請求項2に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、かつ前記安全用具は、この板状をなす本体部と前記軒先係合部の少なくとも一方が磁性材料からなり、かつ前記主綱を緩めた状態で前記取り外し部材に備わる磁石を先端に備えた安全用具回収具の当該磁石が前記屋根上作業のための安全用具に及ぼす磁気引っ張り力を利用して、前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から係合解除して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴としている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
また、本発明の請求項3に係る屋根上作業のための安全用具は、請求項1に係る作業のための安全用具において、
前記屋根上作業のための安全用具は、前記主綱の張り具合を緩めた際に当該屋根上作業のための安全用具をこの安全用具に対して離れた位置から前記軒先との係合を解除して回収可能とする安全用具回収具を有し、
前記安全用具回収具は、棒状の本体部と、前記棒状の本体部の先端に備わった安全用具取り外し部材から構成され、前記安全用具は、この板状をなす本体部と軒先係合部の少なくとも一方に安全用具側係合部を備え、かつ前記主綱を緩めた状態で前記安全用具側係合部と取り外し可能に係合する回収具側係合部を前記取り外し部材に備え、前記安全用具の当該安全用具側係合部と前記回収具側係合部とを互いに係合させることでこの係合力を利用して前記屋根の軒先に対して離れた場所から前記軒先係合部を前記屋根の軒先から外して前記屋根上作業のための安全用具を回収可能とするようになったことを特徴としている。