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特開2023-161764エントロピー源搭載基板保護構造、およびエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161764
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】エントロピー源搭載基板保護構造、およびエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/86 20130101AFI20231031BHJP
【FI】
G06F21/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072306
(22)【出願日】2022-04-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度国立研究開発法人情報通信研究機構 高度通信・放送研究開発委託研究/「超長期セキュア秘密分散保管システム技術の研究開発 課題A 物理乱数源の研究開発」、産業技術力強化法第 17 条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000139377
【氏名又は名称】株式会社ワイ・デー・ケー
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮内 浩二
(72)【発明者】
【氏名】飯田 伴則
(72)【発明者】
【氏名】馬場 謙一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】人形 康之
(72)【発明者】
【氏名】上村 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 謙一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エントロピー源搭載基板を正当な権限なき者から保護するとともに、正当な権限なき者の攻撃を段階的に把握するエントロピー源搭載基板保護構造及びその分解方法を提供する。
【解決手段】エントロピー源搭載基板保護構造を採用した物理乱数発生装置1は、エントロピー源搭載基板10と電気的に接続するためのピンヘッダ21を備えてエントロピー源搭載基板10が生成する乱数を活用するためのメイン基板20と、エントロピー源搭載基板10との間に位置するブレークプレート40と、メイン基板20におけるピンヘッダ21側の空間を囲うためにメイン基板20に固定される外周フレーム30と、エントロピー源搭載基板10におけるメイン基板20とは反対側の空間を閉じるためのインナーカバー材50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エントロピー源搭載基板と、
前記のエントロピー源搭載基板と電気的に接続するためのピンヘッダを備えてエントロピー源搭載基板が生成する乱数を活用するためのメイン基板と、
前記のピンヘッダに貫通されることで前記のメイン基板との電気的な接続を妨げずに前記のエントロピー源搭載基板との間に位置するブレークプレートと、
前記のメイン基板における前記のピンヘッダ側の空間を囲うためにメイン基板に固定される外周フレームと、
前記のエントロピー源搭載基板における前記のメイン基板とは反対側の空間を閉じるためのインナーカバー材と、
を備えたエントロピー源搭載基板保護構造であって、
前記のブレークプレートは、前記のメイン基板との間に固定用下空間を確保するとともに、前記のインナーカバー材との間にも固定用上空間を確保するように前記の外周フレームに支持固定され、
前記の固定用下空間および固定用上空間は、熱硬化性樹脂にて固化することで、ブレークプレートおよびメイン基板と、エントロピー源搭載基板およびインナーカバー材と、をそれぞれ固定することとした
エントロピー源搭載基板保護構造。
【請求項2】
前記のインナーカバー材における前記のブレークプレートが位置する反対側を覆うアウターカバー材を備えることとし、
そのアウターカバー材は、前記のインナーカバー材との間に位置させた両面テープを用いて固定することとした
請求項1に記載のエントロピー源搭載基板保護構造。
【請求項3】
前記のエントロピー源搭載基板は、第一基板および第二基板の二つとし、
前記のピンヘッダは、前記の第一基板および前記の第二基板と電気的に接続することとし、
前記のブレークプレートにおける長手方向の中央部には、前記の第一基板および前記の第二基板の間に固定用中央空間が存在させるために2つの中央立設部およびその2つの中央立設部に挟まれた中央水平部を備えることとし、
前記の熱硬化性樹脂は、前記の固定用中央空間をも固化することした
請求項1または請求項2のいずれかに記載のエントロピー源搭載基板保護構造。
【請求項4】
エントロピー源搭載基板と、
前記のエントロピー源搭載基板と電気的に接続するためのピンヘッダを備えてエントロピー源搭載基板が生成する乱数を活用するためのメイン基板と、
前記のピンヘッダに貫通されることで前記のメイン基板との電気的な接続を妨げずに前記のエントロピー源搭載基板との間に位置するブレークプレートと、
前記のメイン基板における前記のピンヘッダ側の空間を囲うためにメイン基板に固定される外周フレームと、
前記のエントロピー源搭載基板における前記のメイン基板とは反対側の空間を閉じるためのインナーカバー材と、
を備え、
前記のブレークプレートは、前記のメイン基板との間に固定用下空間を確保するとともに、前記のインナーカバー材との間にも固定用上空間を確保するように前記の外周フレームに支持固定され、
前記の固定用下空間および固定用上空間は、熱硬化性樹脂にて固化することで、ブレークプレートおよびメイン基板と、エントロピー源搭載基板およびインナーカバー材と、をそれぞれ固定することとし、
前記のインナーカバー材における前記のブレークプレートが位置する反対側を覆うアウターカバー材を備えることとし、
そのアウターカバー材は、前記のインナーカバー材との間に位置させた両面テープを用いて固定することとしたエントロピー源搭載基板保護構造を分解する方法であって、
前記のアウターカバー材を前記のインナーカバー材から外す第一ステップと、
前記のインナーカバー材を前記のブレークプレートから外す第二ステップと、
を含むこととしたエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法。
【請求項5】
エントロピー源搭載基板と、
前記のエントロピー源搭載基板と電気的に接続するためのピンヘッダを備えてエントロピー源搭載基板が生成する乱数を活用するためのメイン基板と、
前記のピンヘッダに貫通されることで前記のメイン基板との電気的な接続を妨げずに前記のエントロピー源搭載基板との間に位置するブレークプレートと、
前記のメイン基板における前記のピンヘッダ側の空間を囲うためにメイン基板に固定される外周フレームと、
前記のエントロピー源搭載基板における前記のメイン基板とは反対側の空間を閉じるためのインナーカバー材と、
を備え、
前記のブレークプレートは、前記のメイン基板との間に固定用下空間を確保するとともに、前記のインナーカバー材との間にも固定用上空間を確保するように前記の外周フレームに支持固定され、
前記の固定用下空間および固定用上空間は、熱硬化性樹脂にて固化することで、ブレークプレートおよびメイン基板と、エントロピー源搭載基板およびインナーカバー材と、をそれぞれ固定することとし、
前記のインナーカバー材における前記のブレークプレートが位置する反対側を覆うアウターカバー材を備えることとし、
そのアウターカバー材は、前記のインナーカバー材との間に位置させた両面テープを用いて固定することとしたエントロピー源搭載基板保護構造を分解する方法であって、
前記のメイン基板と前記の外周フレームとの固定箇所を外す第一ステップを含むこととしたエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乱数を発生させるチップを正当な権限なき者から物理的に保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータプログラムの実行を制御したり、セキュリティを向上させたりするため、暗号作成などに利用する乱数を発生させる乱数生成器を用いる場面は、多数存在する。
ランダムに発生する物理現象を使って乱数を生成する手法としては、たとえば、ダイオードが生成するノイズや熱雑音をセンサにて検出し、そのセンサの検出信号に基づいて乱数を生成する方法がある。その方法を実現するための乱数生成チップは、ダイオードおよびノイズセンサを組み込んで一体化したチップであり、「エントロピー源搭載基板」と称される。
【0003】
さて、エントロピー源搭載基板を応用した通信セキュリティ機器は、前述したエントロピー源搭載基板をメイン基板に半田付けするなどして製造する。以下、エントロピー源搭載基板を組み込んだ機器を「物理乱数生成装置」とする。
しかし、正当な権限なき者が、物理乱数生成装置に組み込まれたエントロピー源搭載基板そのものにアクセスしたり、エントロピー源搭載基板を改ざんしたりするなどの行為を許すわけにはいかない。
【0004】
例えば、特許文献1には、機密データを記録(格納)したメモリチップを、正当な権限なき者の(通信的な)アクセスから保護するための技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、遊技機における不正行為に対して効果的に対処しうる不正防止対策として、以下のような構成を採用している。すなわち、遊技機の動作を不正に改変しようとする不正遊技者が認証チップ(エントロピー源搭載基板)を取り外すために証紙カバーを取り外そうとすると、認証チップ(エントロピー源搭載基板)の配線が容易に切断され、認証チップ(エントロピー源搭載基板)はメインCPUとの間で認証処理の実行不能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-535744号公報
【特許文献2】特開2007-089942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
正当な権限のない者が物理乱数生成装置に対して、エントロピー源搭載基板にアクセスしたり、改ざんしたりしようとする場合、あるいはエントロピー源搭載基板を盗み出そうとする場合、エントロピー源搭載基板組み込み装置を解体するという行為を伴う。この解体に対して、特許文献2に開示された技術では、認証チップ(エントロピー源搭載基板)とメインCPUとの情報処理を物理的に切断するのみであり、認証チップ(エントロピー源搭載基板)そのものを無傷で取り出すことは防げない。
【0008】
エントロピー源搭載基板にアクセスしたり、改ざんしたりしようとする者が、どの程度の動機(目的達成への精神的な強さ)を抱いてその不正行動をしようとしたのか、という痕跡が段階的に把握できれば、好ましい。不正行動の初期段階を把握して警告を発したり、防犯設備と連動させるなどして実行者を特定したり、再発防止の対策を講じたり、応用発展系の開発に役立つからである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、エントロピー源搭載基板を正当な権限なき者から保護するとともに、正当な権限なき者の攻撃を段階的に把握することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第一の発明)
第一の発明は、
エントロピー源搭載基板(10)と、
前記のエントロピー源搭載基板(10)と電気的に接続するためのピンヘッダ(21)を備えてエントロピー源搭載基板(10)が生成する乱数を活用するためのメイン基板(20)と、
前記のピンヘッダ(21)に貫通されることで前記のメイン基板(20)との電気的な接続を妨げずに前記のエントロピー源搭載基板(10)との間に位置するブレークプレート(40)と、
前記のメイン基板(20)における前記のピンヘッダ(21)側の空間を囲うためにメイン基板(20)に固定される外周フレーム(30)と、
前記のエントロピー源搭載基板(10)における前記のメイン基板(20)とは反対側の空間を閉じるためのインナーカバー材(50)と、
を備えたエントロピー源搭載基板の保護構造に係る(図2参照)。
前記のブレークプレート(40)は、前記のメイン基板(20)との間に固定用下空間(25)を確保するとともに、前記のインナーカバー材(50)との間にも固定用上空間(55)を確保するように前記の外周フレーム(30)に支持固定される(図4参照)。
前記の固定用下空間(25)および固定用上空間(55)は、熱硬化性樹脂(80)にて固化することで、ブレークプレート(40)およびメイン基板(20)と、エントロピー源搭載基板(10)およびインナーカバー材(50)と、をそれぞれ固定する(図11参照)。
【0011】
(用語説明)
エントロピー源搭載基板(10)は、ひとつのメイン基板(20)に対して単独でも良いが、他の請求項にて示すように、ひとつのメイン基板(20)に対して複数を備えてもよい(図2における11,12)。
【0012】
「熱硬化性樹脂(80)」とは、絶縁体であり、エントロピー源搭載基板(10)の活動に伴う発熱によって膨張(追従)可能であり、且つエントロピー源搭載基板(10)の前記の発熱を放熱できる樹脂である。具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが該当する。エポキシ樹脂は追従性が不十分である場合があり、シリコン樹脂は価格的に高価なので、ウレタン樹脂を採用することが多い。
【0013】
(作用)
ブレークプレート(40)をメイン基板(20)のピンヘッダ(21)を貫通させた後に、エントロピー源搭載基板(10)をピンヘッダ(21)と電気的に接続させる。それによって、メイン基板(20)のピンヘッダ(21)側には、ブレークプレート(40)を挟んでエントロピー源搭載基板(10)が位置することとなる。
メイン基板(20)に対して外周フレーム(30)を固定することで、メイン基板(20)における前記のピンヘッダ(21)側の空間は、外周フレーム(30)によって囲まれる。そして、インナーカバー材(50)によってエントロピー源搭載基板(10)における前記のメイン基板(20)とは反対側の空間を閉じられる。
【0014】
固定用下空間(25)および固定用上空間(55)に対しては、熱硬化性樹脂(80)を流し込み、固化させる。流し込まれた熱硬化性樹脂(80)は、ブレークプレート(40)およびメイン基板(20)と、エントロピー源搭載基板(10)およびインナーカバー材(50)と、をそれぞれ固定する。
【0015】
本願発明に係る乱数生成チップの保護構造に対して、正当な権限なき者がエントロピー源搭載基板(10)を改ざんしようとする場合、まず、インナーカバー材(50)を外周フレーム(30)から外そうとする。インナーカバー材(50)は、固定用上空間(55)の熱硬化性樹脂(80)によってエントロピー源搭載基板(10)に固定されており、エントロピー源搭載基板(10)はメイン基板(20)に固定されている。したがって、インナーカバー材(50)を外周フレーム(30)から外そうとすれば、その外力が固定用上空間(55)の熱硬化性樹脂(80)やエントロピー源搭載基板(10)に伝わり、エントロピー源搭載基板(10)が破損する可能性が高い。エントロピー源搭載基板(10)が破損すれば、改ざん行為は未然に防止できる。
【0016】
また、インナーカバー材(50)を外周フレーム(30)から外そうとする外力は、ブレークプレート(40)を介してメイン基板(20)にも伝わるため、エントロピー源搭載基板(10)と電気的に接続されたメイン基板(20)が破損する可能性も高い。メイン基板(20)が破損すれば、改ざん行為は容易ではなくなり、未然防止に寄与する。
【0017】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のインナーカバー材(50)における前記のブレークプレート(40)が位置する反対側を覆うアウターカバー材(60)を備えることとし、
そのアウターカバー材(60)は、前記のインナーカバー材(50)との間に位置させた両面テープ(59)を用いて固定することとする。(図13参照)。
【0018】
(作用)
アウターカバー材(60)は、インナーカバー材(50)におけるブレークプレート(40)が位置する反対側を覆うように、インナーカバー材(50)との間に位置させた両面テープ(59)を用いて固定される。
【0019】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のエントロピー源搭載基板(10)は、第一基板(11)および第二基板(12)の二つとし、
前記のメイン基板(20)には、前記の第一基板(11)および前記の第二基板(12)と電気的に接続するためのピンヘッダ(21)を備え、
前記のブレークプレート(40)における長手方向の中央部には、前記の第一基板(11)および前記の第二基板(12)の間に固定用中央空間(26)が存在させるために2つの中央立設部(45)およびその2つの中央立設部(45)に挟まれた中央水平部(46)を備えることとし、
前記の熱硬化性樹脂(80)は、前記の固定用中央空間(26)をも固化することとする。
【0020】
(用語説明)
「第一基板(11)および第二基板(12)」の二つを備えることは、以下のような意義がある。
第一に、乱数を発生させる速度を速められる。第二に、一方のエントロピー源搭載基板に不具合(たとえば電気的な接触不良)が発生して機能不全となっても、もう一方で乱数を発生させることができる。そのため、本願発明を組み込んだ物理乱数発生装置の信頼度を高めることに寄与する。
【0021】
(作用)
ブレークプレート(40)における長手方向の中央部に2つの中央立設部(45)およびその2つの中央立設部(45)に挟まれた中央水平部(46)を備えたことで、第一基板(11)および第二基板(12)の間に固定用中央空間(26)が存在することとなる。その固定用中央空間(26)は、熱硬化性樹脂(80)を流し込むことによって固化されるので、ブレークプレート(40)およびメイン基板(20)の間がより強固になる。
【0022】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明におけるバリエーション1に対応するエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法に係る。
ここで、エントロピー源搭載基板保護構造とは、エントロピー源搭載基板(10)と、
前記のエントロピー源搭載基板(10)と電気的に接続するためのピンヘッダ(21)を備えてエントロピー源搭載基板(10)が生成する乱数を活用するためのメイン基板(20)と、
前記のピンヘッダ(21)に貫通されることで前記のメイン基板(20)との電気的な接続を妨げずに前記のエントロピー源搭載基板(10)との間に位置するブレークプレート(40)と、
前記のメイン基板(20)における前記のピンヘッダ(21)側の空間を囲うためにメイン基板(20)に固定される外周フレーム(30)と、
前記のエントロピー源搭載基板(10)における前記のメイン基板(20)とは反対側の空間を閉じるためのインナーカバー材(50)と、
を備えるとともに、
前記のブレークプレート(40)は、前記のメイン基板(20)との間に固定用下空間(25)を確保するとともに、前記のインナーカバー材(50)との間にも固定用上空間(55)を確保するように前記の外周フレーム(30)に支持固定され、
前記の固定用下空間(25)および固定用上空間(55)は、熱硬化性樹脂(80)にて固化することで、ブレークプレート(40)およびメイン基板(20)と、エントロピー源搭載基板(10)およびインナーカバー材(50)と、をそれぞれ固定することとし、
前記のインナーカバー材(50)における前記のブレークプレート(40)が位置する反対側を覆うアウターカバー材(60)を備えることとし、
そのアウターカバー材(60)は、前記のインナーカバー材(50)との間に位置させた両面テープ(59)を用いて固定することとしたエントロピー源搭載基板保護構造である。
そして、エントロピー源搭載基板保護構造の分解方法とは、前記のアウターカバー材(60)を前記のインナーカバー材(50)から外す第一ステップと、
前記のインナーカバー材(50)を前記のブレークプレート(40)から外す第二ステップと、
を含む方法である。
【0023】
前記の第二ステップにおいて、固化した熱硬化性樹脂(80)がエントロピー源搭載基板(10)を保護している箇所と保護していない箇所があるため、分解しようとする力が保護していない箇所に集中し、エントロピー源搭載基板(10)は破損することが多く、エントロピー源搭載基板(10)を無傷で取り出すことを困難にしている。
【0024】
(第三の発明)
第三の発明もまた、第一の発明におけるバリエーション1に対応するエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法に係り、エントロピー源搭載基板保護構造は、第二の発明と同様である。
第三の発明に係るエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法は、前記のメイン基板(20)と前記の外周フレーム(30)との固定箇所を外す第一ステップと、
を含む方法である。
【0025】
前記の第一ステップにおいて、固化した熱硬化性樹脂(80)がエントロピー源搭載基板(10)を保護している箇所と保護していない箇所があるため、分解しようとする力が保護していない箇所に集中し、エントロピー源搭載基板(10)は破損することが多く、エントロピー源搭載基板(10)を無傷で取り出すことを困難にしている。
【0026】
第二の発明および第三の発明は、第一の発明におけるバリエーション1に対応するエントロピー源搭載基板保護構造を、前記の第一ステップおよび第二ステップの順で正当な権限なき者が分解した場合、特許権侵害に該当させる旨を意図している。
【発明の効果】
【0027】
第一の発明によれば、エントロピー源搭載基板を正当な権限なき者から保護するとともに、正当な権限なき者の攻撃を段階的に把握することができるエントロピー源搭載基板保護構造を提供することができた。
第二および第三の発明によれば、エントロピー源搭載基板を正当な権限なき者から保護するとともに、正当な権限なき者の攻撃を段階的に把握することができるエントロピー源搭載基板保護構造の分解方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る物理乱数発生装置を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る物理乱数発生装置の主要部品を示す組立斜視図である。
図3】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるアウターカバー材およびインナーカバー材を示す平面図である。
図4】実施形態に係る物理乱数発生装置を示す垂直断面図である。
図5】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるブレークプレートを組み込む際の組立斜視図である。
図6】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるブレークプレートを組み込んだ状態を示す斜視図である。
図7】実施形態に係る物理乱数発生装置の側面図であり、樹脂製スペーサを中心とした図である。
図8】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材を組み込む際の組立斜視図である。
図9】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材を組み込んだ斜視図(a)、および側面図(b)である。
図10】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材に対して、樹脂を投入する前後を示す斜視図である。
図11】実施形態に係る物理乱数発生装置において、投入された樹脂を示す断面図である。
図12】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるアウターカバー材を組み込む際の組立斜視図である。
図13】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるアウターカバー材を組み込んだ状態の部分断面図であり、組み込んだ状態(a)と、攻撃を受けた場合(b)とを示す。
図14】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材を組み込んだ状態の部分断面図であり、組み込んだ状態(a)と、攻撃を受けた場合(b)とを示す。
図15】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材を組み込んだ状態を、図14とは別方向からの部分断面図であり、組み込んだ状態(a)と、攻撃を受けた場合(b)とを示す。
図16】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材に攻撃を受けた場合の、拡大断面図を示す。
図17】実施形態に係る物理乱数発生装置におけるインナーカバー材に攻撃を受けた場合の、拡大断面図を示す。
図18】実施形態に係る物理乱数発生装置における半田付け箇所に攻撃を受けた場合の、拡大断面図を示す。
図19】実施形態に係る物理乱数発生装置における半田付け箇所に攻撃を受けた場合の、図18とは別の方向からの拡大断面図を示す。
図20】各構成要素の関係性を示すブロック図である。
図21】エントロピー源搭載基板がひとつだけの物理乱数発生装置を示す断面図であり、樹脂を投入する前の状態を示す。
図22】エントロピー源搭載基板の組み合わせを示す組立斜視図である。第一基板を二つ組み込んだ状態(a)、第二基板を二つ組み込んだ状態(b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ここで使用する図面は、図1から図22である。以下において、特に断りを入れていない限り、紙面の上が、物理的にも上方向を示す。
【0030】
図1
図1は、本発明に係るエントロピー源搭載基板保護構造を採用した実施形態に係る物理乱数発生装置1を示す斜視図である。(a)、(b)は、異なる方向から見た状態を示している。
この物理乱数発生装置1は、メイン基板20と、そのメイン基板20の上面の外周よりも内側で立設固定された四角枠状の外周フレーム30と、その外周フレーム30の上面を覆って固定されたアウターカバー材60を備える。アウターカバー材60の下面、外周フレーム30の内側面、およびメイン基板20の上面で囲まれた空間に、エントロピー源搭載基板保護構造を備える(正確には、メイン基板20や外周フレーム30は、本発明に係るエントロピー源搭載基板保護構造を構成する)。
【0031】
図2
図2は、本実施形態に係る物理乱数発生装置1を構成する部品群の組立斜視図である。
前述したメイン基板20の上面には、図示を省略した電子回路が組み込まれており、その電子回路との接続のために、多数のピンヘッダ21が立設されている。
【0032】
外周フレーム30は、前述したように、メイン基板20の上面の外周よりも内側で立設固定された長方形の四角枠であり、その高さは、前述のピンヘッダ21よりも高い。外周フレーム30とメイン基板20とは、容易には分割できないように、半田付けで全周囲を固定されている。
【0033】
ブレークプレート40は、外周フレーム30の短辺方向の上端に載置させる最外水平部41(図5参照)を両端とし、概ね10回の折曲げをした形状をなしている。前記のピンヘッダ21を貫通させつつ支持するヘッダ支持部43(図5参照)を備えており、組み込まれるとメイン基板20の上方に位置することとなる。
なお、外周フレーム30とブレークプレート40との固定は、図5を用いて説明する。
【0034】
ブレークプレート40における中央水平部46(図5参照)等を隔てて形成された2つの空間には、エントロピー源搭載基板10である第一基板11および第二基板12が位置することとなる。第一基板11および第二基板12とも、平面形状が長方形をなしており、長辺方向にはピンヘッダ21を貫通させて電気的に接続される貫通孔を備えている。その貫通孔をピンヘッダ21が貫通することで、ブレークプレート40に隔てられているものの、第一基板11および第二基板12とメイン基板20とは電気的に接続されることとなる。
【0035】
本願発明としては、エントロピー源搭載基板10が単数でも複数でも構わない(図示した例示は省略するが、3個以上でも構わない)が、本実施形態においては、ピンヘッダ21を貫通させて電気的に接続される貫通孔を備えるチップ様式を共通化させ、エントロピー源搭載基板10は2個のチップ(第一基板11および第二基板12)を採用している。その趣旨は、以下の通りである。
【0036】
第一に、同じ種類または異なる種類のエントロピー源搭載基板を2つ搭載することができる。この場合、出力する乱数の信頼性を向上させることに寄与する(図22参照)。たとえば、一方のエントロピー源搭載基板が故障しても、他方のエントロピー源搭載基板が正常であれば、乱数を発生させることができる。
なお、本実施形態に係る物理乱数発生装置1に一つのエントロピー源搭載基板しか組み込まないとしても、機能させることができる。したがって、エントロピー源搭載基板が入手困難となった場合であっても、物理乱数発生装置1の需要に対する供給の安定化に寄与する。
【0037】
第二に、一つのエントロピー源搭載基板が正当な権限なき者によって改ざんされてしまったとしても、他のエントロピー源搭載基板が生成する乱数とで演算を行うことで改ざんの意図を消去した乱数を発生させることができるため安全性を確保できる。
【0038】
第三に、同種類のエントロピー源搭載基板を2つ搭載することで、乱数発生を並行処理することが可能となり、生成速度を約2倍とすることができる。
【0039】
ブレークプレート40にエントロピー源搭載基板10を組み込んだら、ブレークプレート40の上にインナーカバー材50を固定する。そして、樹脂投入(図10参照)を経て、アウターカバー材60を固定する。
【0040】
図3
図3は、アウターカバー材60の下面、およびインナーカバー材50の下面に貼付する両面テープの位置を示す平面図である。
アウターカバー材60の下面には、中央部を除いた枠状に両面テープ59を貼付している。
インナーカバー材50の下面には、長辺方向中央部と端部とに、両面テープ48,49,49を貼付している。
【0041】
図4
図4は、各部品が組み込まれた場合、どこに空間があるか、を示す縦断面図である。図中、空間については、部品番号にアンダーラインを付すことで空間を示すこととしている。この図に示す空間には、図10で示す樹脂が投入され、流れ込むこととなる。
【0042】
第一基板11の下面および第二基板12の下面と、ブレークプレート40の上面との間には、エントロピー源搭載基板下空間15,15が存在する。
また、第一基板11および第二基板12が位置するブレークプレート40の下面とメイン基板20の上面との間には、固定用下空間25,25が存在する。
【0043】
外周フレーム30の内側、メイン基板20の上面、およびブレークプレート40の下面で囲まれた空間には、固定用側空間27,27が存在する。
第一基板11および第二基板12に挟まれ、メイン基板20の上面、およびブレークプレート40の下面で囲まれた空間には、固定用中央空間26が存在する。
【0044】
第一基板11の上面および第二基板12の上面と、インナーカバー材50の下面との間には、固定用上空間55,55が存在する。
また、インナーカバー材50の上面と、アウターカバー材60の下面との間には、中央上空間65が存在する。
【0045】
図5
図5は、外周フレーム30を固定したメイン基板20に第一基板11および第二基板12を組み込んだ状態を示す(b)に対して、(a)に示すブレークプレート40を組み込む状態を示している。
【0046】
外周フレーム30の外面における上部には、ブレークプレート40との固定をするための固定用突起31が備えられている。
外周フレーム30の上端は、内側に向かって折り曲げられた水平折り曲げ部32が備えられている。水平折り曲げ部32の角部には開口部34が設けられており、ブレークプレート40の最外垂直部42Cが挿し込まれるようになっている。
【0047】
ブレークプレート40は、長方形の薄板を以下のように折り曲げて形成している。すなわち、長辺方向の両端となる最外水平部41,41と、その最外水平部41,41から最外立設部42とは反対方向で下側へ折り曲げられた最外垂直部42C,42Cと、前記の最外水平部41,41から下側へ折り曲げた最外立設部42,42と、その最外立設部42,42から水平方向に折り曲げたエントロピー源搭載基板支持部44,44と、そのエントロピー源搭載基板支持部44,44から上方向に折り曲げた中央立設部45,45と、その中央立設部45,45に挟まれて水平をなす中央水平部46と備える。
【0048】
それぞれの最外水平部41の下面と外周フレーム30が接する部位には、外周フレーム30に固定するための両面テープ48,49が貼付される(図8参照)。
それぞれのエントロピー源搭載基板支持部44の両側には、メイン基板20から上方向に立設されるピンヘッダ21を貫通させて指示するヘッダ支持部43を備えている。
【0049】
それぞれの最外立設部42の上部両端付近には、水平方向を長手方向とする長円形の貫通孔であるカバー固定用孔42Bが設けられている。このカバー固定用孔42Bは、インナーカバー材50を固定するためにインナーカバー材50側に設けられた固定用楔57Aを貫通させるものである(図8参照)。
また、カバー固定用孔42Bの下には、円形および長円形の貫通孔42Aが設けられている。この貫通孔42Aは、図10で示す段階で投入される樹脂を、図4に示した固定用側空間27へ流し込むために機能する。
【0050】
それぞれの中央立設部45には、中央水平部46側を凸とした縦方向の溝である縦溝45Aが設けられている。この縦溝45Aは、図10で示す段階で投入される樹脂を、図4に示したエントロピー源搭載基板下空間15や固定用下空間25へ流し込むために機能する。
【0051】
中央水平部46には、円形の貫通孔46Aが設けられている。この貫通孔46Aは、図10で示す段階で投入される樹脂を、図4に示したエントロピー源搭載基板下空間15や固定用中央空間26へ流し込むために機能する。
【0052】
図6
図6は、外周フレーム30を固定したメイン基板20にブレークプレート40を組み込んだ後、第一基板11および第二基板12が組み込まれた状態を示す。
樹脂を流し込むために設けられた貫通孔42A,46Aや縦溝45Aは、流し込まれた樹脂に肺胞されてしまった気泡を、上方向(インナーカバー材50の上方)へ逃がす役割も果たす。
【0053】
図7
図7は、ピンヘッダ21とブレークプレート40との間、より具体的には、メイン基板20の上面とブレークプレート40の下面との間、および第一基板11の下面および第二基板12の下面とブレークプレート40の上面との間に樹脂スペーサ29を存在させていることを示す。
【0054】
ブレークプレート40は、前述したような複雑な形状をなし、且つ各種の貫通孔を備えているので、金属板を折り曲げたり、打ち抜いたりすることで製造するのが合理的である。しかし、金属製となると、ピンヘッダ21との絶縁が必要となるため、樹脂スペーサ29にて電気的に縁を切っている。
【0055】
図8
図8は、図6に示した状態の各部材に対して、インナーカバー材50を固定する状態を示す。
ブレークプレート40の最外水平部41の上面には、両面テープ49が貼付してある。また、中央水平部46の上面には、両面テープ48が貼付してある。
【0056】
インナーカバー材50は、概ね長方形の板状体である上面フレーム51と、その上面フレーム51の下面における外周付近から立設する最外立設部52とを備える。上面フレーム51における長手方向の両端からは、下方向へ傾斜する傾斜フレーム53が延設され、両方の傾斜フレーム53に挟まれるように位置して水平面をなす中央水平部54が位置する。
【0057】
最外立設部52には、貫通孔52Aが備えられている。この貫通孔52Aは、外周フレーム30の外周上側において、外方向に向かって凸となるように備えられた固定用突起31に合致する位置に設けられている。また、差し込みフレーム57にはブレークプレート40に係合する固定用楔57Aが設けられている。
【0058】
上面フレーム51における短辺外周と傾斜フレーム53との間には、長方形の貫通孔である空気抜き孔51Aが備えられている。この空気抜き孔51Aは、図10で示す樹脂を投入し、流れ込んだ樹脂に含まれていた気泡を抜く機能をなす。
【0059】
傾斜フレーム53において、空気抜き孔51Aと中央水平部54とに囲まれた部位には、樹脂投入口53Aが設けられている。この樹脂投入口53Aから図10で示す樹脂を投入することとなる。
【0060】
図9
図9は、外周フレーム30、ブレークプレート40、およびインナーカバー材50が相互に固定し合う状態を示すための図である。図9(a)の斜視図におけるB-B断面が、図9(b)である。
【0061】
外周フレーム30の短辺方向の上端は、内側に向かって折り曲げられて折り曲げ水平部(図5参照、折り曲げ水平部32)を形成しており、ブレークプレート40の最外水平部41が置かれる。
【0062】
ブレークプレート40の最外水平部41の上面に貼付された両面テープ49は、インナーカバー材50の下面との固定を行う。また、ブレークプレート40における最外立設部(図5参照、最外立設部42)に設けられたカバー固定用孔42Bは、インナーカバー材50の固定用楔57Aと係合する。
【0063】
外周フレーム30の固定用突起31は、インナーカバー材50の固定用孔52Aにはめ込まれることで、外周フレーム30とインナーカバー材50とが固定される。
以上によって、外周フレーム30、ブレークプレート40、およびインナーカバー材50が相互に固定し合うこととなる。
【0064】
図10
図10は、樹脂投入機70によって、インナーカバー材50の上方から樹脂80を流し込む前後を示している。
投入は、図10(a)に示すように、インナーカバー材50における樹脂投入口53Aや貫通孔54Aの上方から実施する。そして、貫通孔54Aが樹脂80で隠れる程度(図11に示す固定用上空間55や樹脂溜まり空間56が満たされる)まで投入する。
【0065】
投入に用いる樹脂80は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂を採用する理由は、第一基板11,第二基板12が活動する際に発熱するが、その発熱による膨張に追従することで第一基板11,第二基板12を破損するような事態を回避するためである。
【0066】
投入に用いる樹脂の種類としては、絶縁体であり、エントロピー源搭載基板10の活動に伴う発熱によって膨張(追従)可能であり、且つエントロピー源搭載基板10の前記の発熱を放熱できる、という性能が要求される。本実施形態においては、ウレタン樹脂を採用した。
【0067】
図11
図11は、図10で示した樹脂投入機70によって投入された樹脂がどの空間に充填されるかを示したものである。
【0068】
樹脂たまり空間56から貫通孔54Aを経由した樹脂80は、固定用中央空間26を満たす。
【0069】
樹脂たまり空間56から樹脂投入口53Aを経由した樹脂80は、固定用上空間55を満たす。そして、ブレークプレート40の縦溝45A(図5参照)を経由してエントロピー源搭載基板下空間15や固定下空間25をも満たす。
固定用上空間55に達した樹脂の一部は、ブレークプレート40の貫通孔42Aを経由して固定用側空間27をも満たす。
【0070】
図12
図12は、図11で示したように樹脂80が各種の空間を満たした後に、アウターカバー材60を固定する様子を示している。
インナーカバー材50の上面に両面テープ59を貼付し、その両面テープ59によってアウターカバー材60を固定する。
【0071】
図13
図13(a)は、図12で示したアウターカバー材60とインナーカバー材50とを含め、外周フレーム30およびブレークプレート40との関係をも示す。
アウターカバー材60の上面部61の外周端部から下方向へ折り曲げられた側面部62は、その端部である折り返し部62Aはやや内側へ曲げられており、インナーカバー材50の下端を覆っている。
【0072】
図13(b)は、 図13(a)で示した固定状態に対して、権限なき者が折り返し部62Aと外周フレーム30との僅かな隙間にマイナスドライバーの先端などをねじ込み、アウターカバー材60を外そうとした一例を示している。両面テープ59の存在により、上面端部61Aが持ち上がるように、アウターカバー材60が変形することが多い。
【0073】
図14
図14(a)は、図13(b)で示した攻撃によってアウターカバー材60が取り外されてしまった状態を示している。
【0074】
図14(b)は、アウターカバー材60が取り外されてしまった後に、インナーカバー材50が権限なき者によって更なる攻撃を受けた場合を示している。両面テープ49の存在により、インナーカバー材50の外周部が持ち上がるように変形することが多い。
【0075】
図15
図15(a)は、図14(a)で示した状態を別方向から見た場合を示している。
また、図15(b)は、図14(b)で示した状態において、インナーカバー材50が別方向からを攻撃された場合を示している。
【0076】
図16
図16は、両面テープ49を剥がすほどの応力でインナーカバー材50が攻撃を受けた場合を示している。固定用楔57Aがカバー固定用孔42Bから外れかけている。このような応力を受けると、ブレークプレート40の下方にある樹脂製スペーサ29とブレークプレート40との間に隙間が発生し、エントロピー源搭載基板10を割ってしまうように前記の応力が伝わる。
【0077】
図17
図17は、図16に示したような攻撃を受けた場合に、ブレークプレート40を介してエントロピー源搭載基板10(図中では第二基板12)がどのように影響を受けるか、を示している。
ブレークプレート40が変形し、エントロピー源搭載基板10(第二基板12)におけるピンヘッダ21の内側部分という厚さ方向寸法の小さい部位に応力が掛かり、多くの場合、エントロピー源搭載基板10(第二基板12)が破壊される。
【0078】
なお、外周フレーム30の短辺における内側には、プレート固定用突起33が複数箇所に設けられている。このプレート固定用突起33は、ブレークプレート40における対応箇所(図示を省略)に設けられた貫通孔にはまり込み、外周フレーム30とブレークプレート40とを固定する。
【0079】
図18
図18(a)は、メイン基板20と外周フレーム30における短辺部分との半田付け箇所を、権限なき者が攻撃した場合を示している。
図18(b)に示すように、ブレークプレート40が変形し、エントロピー源搭載基板10(第二基板12)におけるピンヘッダ21の内側部分という厚さ方向寸法の小さい部位に応力が掛かる。この図では、樹脂80を省略しているが、多くの場合、エントロピー源搭載基板10(第二基板12)が破壊される。
【0080】
図19
図19(a)は、メイン基板20と外周フレーム30における長辺部分との半田付け箇所を、権限なき者が攻撃した場合を示している。
図19(b)に示すように、固定用楔57Aがカバー固定用孔42Bから外れかけている。このような応力を受けると、ブレークプレート40の下方にある樹脂製スペーサ29とブレークプレート40との間に隙間が発生し、エントロピー源搭載基板10を割ってしまうように前記の応力が伝わる。
【0081】
図20
図20は、エントロピー源搭載基板10、メイン基板20、ピンヘッダ21、外周フレーム30、ブレークプレート40、インナーカバー材50、およびアウターカバー材60が、どのような部材を介して固定されているか、の関係を示している。
【0082】
図21
図21は、エントロピー源搭載基板10が一つだけの物理乱数発生装置を示す断面図であり、樹脂を投入する前の状態を示している。
エントロピー源搭載基板10を一つ備えた物理乱数発生装置についても、基本的な構造は、図2に示したように、メイン基板20、外周フレーム30、ブレークプレート40という順で積層され、メイン基板20から上方へ突出したピンヘッダ21を貫通させたブレークプレート40の上にエントロピー源搭載基板10がセットされる。
【0083】
ブレークプレート40および外周フレーム30に固定されるインナーカバー材50がエントロピー源搭載基板10の上方を覆う。インナーカバー材50が固定された状態で樹脂80が樹脂投入口53Aから投入され、固定用下空間25、固定用側空間27,エントロピー源搭載基板下空間15、固定用上空間55、樹脂溜まり56に充填される(エントロピー源搭載基板10を一つなので、固定用中央空間25が存在しない)。
前記のインナーカバー材50は、インナーカバー材50外周フレーム30に固定されるアウターカバー材60が固定される。
【0084】
以上のようにして構成されたエントロピー源搭載基板保護構造もまた、権限なき者が攻撃した場合には、図13~19に示したような状態となり、エントロピー源搭載基板10が破壊されることとなる。
【0085】
なお、アウターカバー材60を、インナーカバー材50から取り外そうとした段階で、エントロピー源搭載基板10の改ざん行為を諦めたとした場合には、折り返し部62Aおよび外周フレーム30のどこかに傷がついていたり、変形したりしているはずである。
アウターカバー材60をインナーカバー材50から取り外し、外周フレーム30からインナーカバー材50を取り外そうとした段階で、エントロピー源搭載基板10の改ざん行為を諦めたとした場合には、インナーカバー材50の外周部分のいずれかが変形したり、外周フレーム30の固定用突起31が露出したりしているはずである。
以上のように、本発明に係るエントロピー源搭載基板保護構造を採用した場合、権限なき者が攻撃した痕跡を、事後に段階的に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、情報通信機器の製造業、情報通信機器の設置サービス業を含む情報通信サービス業、情報通信サービスのためのコンピュータソフトウェアを作成するソフトウェア産業、などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0087】
1 ;物理乱数発生装置
10 ;エントロピー源搭載基板(エントロピー源)
11 ;第一基板
12 ;第二基板
15 ;エントロピー源搭載基板下空間
20 ;メイン基板
21 ;ピンヘッダ
25 ;固定用下空間
26 ;固定用中央空間
27 ;固定用側空間
29 ;樹脂製スペーサ
30 ;外周フレーム
31 ;固定用突起
32 ;水平折り曲げ部
33 ;プレート固定用突起
34 ;開口部
40 ;ブレークプレート
41 ;最外水平部
42 ;最外立設部 42A;貫通孔
42B;カバー固定用孔 42C;最外垂直部
43 ;ヘッダ支持部
44 ;エントロピー源搭載基板支持部
45 ;中央立設部 45A;縦溝
46 ;中央水平部 46A;貫通孔
48 ;両面テープ(中央部)
49 ;両面テープ(側部)
50 ;インナーカバー材
51 ;上面フレーム 51A;空気抜き孔
52 ;最外立設部 52A;固定用孔
53 ;傾斜フレーム 53A;樹脂投入口
54 ;中央水平部 54A;貫通孔
55 ;固定用上空間
56 ;樹脂溜まり空間
57 ;差し込みフレーム 57A;固定用楔
59 :両面テープ
60 ;アウターカバー材
61 ;上面部 61A;上面端部
62 ;側面部 62A;折り返し端部
65 ;中央上空間
70 ;樹脂投入機
80 ;樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22