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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161773
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】洗浄液供給装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/44 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A47L15/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072319
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】509334170
【氏名又は名称】花王プロフェッショナル・サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】本間 薫
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082CC01
3B082CC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粉末・顆粒状洗剤を噴射される水に良好に溶解可能であり、水圧が低い場合でも溶け残りや成分の水和、失活といった問題の生じない食器洗浄機用洗剤供給装置の提供。
【解決手段】粉状・顆粒状洗剤31を収容するための容器32と、容器32の一端に設けられた開口33と、開口33を覆って配置される網状部材35と、網状部材35に設けられた開放孔40と、開口33を下にして設置された容器32内へと開放孔40を介して水を噴射するためのノズル36とを含む、洗浄液供給装置30。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状・顆粒状洗剤を収容するための容器と、
前記容器の一端に設けられた開口と、
前記開口を覆って配置される網状部材と、
前記網状部材に設けられた開放孔と、
前記開口を下にして設置された前記容器内へと前記開放孔を介して水を噴射するためのノズルとを含む、
洗浄液供給装置。
【請求項2】
前記網状部材は円形形状を有し、前記開放孔は前記網状部材の中央に形成されている、請求項1の洗浄液供給装置。
【請求項3】
前記ノズルは前記開放孔に隣接して設けられる広角ノズルである、請求項1または2の洗浄液供給装置。
【請求項4】
前記ノズルの先端に設けられるカバーリングを備える、請求項1から3の何れか1の洗浄液供給装置。
【請求項5】
前記容器は前記粉末・顆粒状洗剤が充填されたカートリッジ容器であり、前記開口に水溶性フィルムが備えられている、請求項1から4の何れか1の洗浄液供給装置。
【請求項6】
前記網状部材は前記水溶性フィルムを覆って前記容器に装着される網状キャップであり、バージンシールによってシール可能である、請求項5の洗浄液供給装置。
【請求項7】
前記容器は前記粉末・顆粒状洗剤を補充可能なレフィル容器であり、前記開口に粉末透過防止板が備えられている、請求項1から4の何れか1の洗浄液供給装置。
【請求項8】
前記容器を設置するためのホルダーを含み、前記ノズルは前記ホルダーに配置され、前記粉状・顆粒状洗剤に水が噴射されて生成された洗浄液が前記ホルダーを介して供給される、請求項1から7の何れか1の洗浄液供給装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1の洗浄液供給装置を装着してなり、洗浄槽内の洗浄液濃度の測定に応じて洗浄液供給装置から洗浄液が供給される自動食器洗浄機。
【請求項10】
一端に開口が設けられた容器内に粉状・顆粒状洗剤を収容し、
前記容器を前記開口を下にしてノズルの上方に設置し、
開放孔を有する網状部材を前記開口を覆って配置し、
前記ノズルから前記容器内へと前記開放孔を介して水を容器内の粉状・顆粒状洗剤の表面に一様に噴射し、溶解させて洗浄液を生成し、
前記洗浄液を自動食器洗浄機へと導く、洗浄液供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄液供給装置および方法に関し、特に業務用の自動食器洗浄機に対して洗剤の水溶液を自動的に供給する装置およびそのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用の自動食器洗浄機に用いられる洗剤としては、液体タイプの洗剤、粉末・顆粒タイプの洗剤、および固形タイプの洗剤などがある。これらの洗剤は独立したユニットとして設けられる洗浄液供給装置からそのままで、あるいは水で希釈または溶解された洗浄液として、自動食器洗浄機に対して供給可能であり、そのために種々の提案が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、液体タイプの洗剤が使い切られるまでの回数を予測し、予測された設定回数に応じて洗剤容器内の洗剤交換を行うための洗剤供給ユニットが記載されている。
【0004】
特許文献2には、粉粒状洗剤を自動供給するために、洗浄槽内の濃度測定に応じて混合室内に粉粒状洗剤を落下させ、そこに水を供給して得られた洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄槽に自動供給するシステムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、固形タイプの洗剤を使用し、自動食器洗浄機に対するすすぎ水の供給に応じて、網で支持された固形洗剤の底部に水を噴射して溶解し、得られた洗剤溶液を食器洗浄機に供給する洗剤供給装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-162937号公報
【特許文献2】特開2016-10609号公報
【特許文献3】特開2009-66103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粉末・顆粒タイプの洗剤は液体タイプの洗剤よりも可搬性にすぐれ、また固形タイプの洗剤よりも溶解性、補充性にすぐれるといった利点を有しているが、吸湿等によって固形化・固着化して流動性が失われる場合がある。特許文献2のシステムでは、粉粒状洗剤の容器等への固結・固着に対処するためにホッパー内部に撹拌翼を設け、粉粒状洗剤を混合室へと掻き落とすように構成されているが、装置が大型化・複雑化するのは避けられない。
【0008】
図1はこのような欠点のない、粉末・顆粒タイプの洗剤に用いられる別の装置の例について、運転中の模式的な状態を示している。粉末・顆粒タイプの洗剤1は広口ボトル状の容器2に入れられ、容器2は開口3を下にしてホルダー4に装填されている。開口3には図2で示すような網状キャップ5が被せられており、網状キャップ5から下方に間隔を置いて設けられたノズル6から溶解水7が上方に噴射されて洗剤が溶解される。なお図1では洗剤はドーム型に溶解された状態で示されているが、これは例示であり、溶解状態は粉末や顆粒の物性によって変化しうる。得られた洗浄液(洗剤溶解液)8はホルダー4の下部に設けられた通路9から図示しない食器洗浄機へと送られる。
【0009】
特許文献3は網や固形洗剤の詳細について記載していないが、図1のように容器2内の粉末・顆粒状洗剤1を網状キャップで支持する場合には、粉末の透過を防止するために目開きの小さな網を使用する必要がある。しかしながらこうした構成では網の目開き以外の部分が抵抗になり、噴射水の一部が透過できなかったり、噴射水の水量が不足したり勢いが弱まったりして溶解性が低下するため、水圧等によっては設置しても充分な作動が得られない場合があると共に、粉末・顆粒状洗剤が容器内で溶け残る問題が生じうる。
【0010】
また網目を介して粉末・顆粒状洗剤に水を噴射した場合、一様な噴射・噴霧は困難であり、溶け残りの問題に加えて、偏った濡れによって粉末・顆粒状洗剤の成分が水和したり失活したりする不具合も生じうる。特に広角での一様な噴射は、面積あたりの単位圧力が低下するため困難であり、狭角で噴射強度を上げた場合には容器内の粉末・顆粒状洗剤の一部に水流が集中して粉末・顆粒状洗剤全体が水和し、固化や成分の失活につながりやすい。
【0011】
本発明の課題は、粉末・顆粒状洗剤から得られる洗浄液を食器洗浄機に対して自動的に供給するための装置であって、粉末・顆粒状洗剤を噴射される水に良好に溶解可能であり、水圧が低い場合でも粉末・顆粒状洗剤の溶け残りや成分の水和、失活といった問題の生じない食器洗浄機用洗剤供給装置を提供することにある。
【0012】
本発明の別の課題は、粉末・顆粒状洗剤から得られる洗浄液を食器洗浄機に対して自動的に供給するための方法であって、粉末・顆粒状洗剤を噴射される水に良好に溶解可能であり、水圧が低い場合でも粉末・顆粒状洗剤の溶け残りや成分の水和、失活といった問題の生じない食器洗浄機用洗剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの例示的な態様によれば、粉状・顆粒状洗剤を収容するための容器と、前記容器の一端に設けられた開口と、前記開口を覆って配置される網状部材と、前記網状部材に設けられた開放孔と、前記開口を下にして設置された前記容器内へと前記開放孔を介して水を噴射するためのノズルとを含む、洗浄液供給装置が提供される。この態様によれば水は容器内の粉末・顆粒状洗剤に対して下方から、網状部材によって妨げられることなく噴射される。したがって水圧(水量)が多少低くとも、粉末・顆粒状洗剤に対して溶解水を十分に供給可能であり、設置可能な自動食器洗浄機の幅が広がると共に、容器内での溶け残りの問題も軽減される。
【0014】
本発明の別の例示的な態様によれば、前記網状部材は円形形状を有し、前記開放孔は前記網状部材の中央に形成されている。容器の開口も網状部材に対応した円形形状を有していてよく、開口の直径は例えば9~10cm程度であってよい。網状部材の網の形状に特に制限はなく、正方形や長方形が並んだ格子状、またはスリットが放射状に配列されたパターンや、円形のパンチ孔が密に並べられたパターンなどを有することができる。放射状のスリットを用いる場合には、大きさや位置の違う半径方向のスリットを円の中心から外側に向けて適宜配列することができる。開放孔は円形であってよく、その径は例えばノズルの先端部分の径と同程度の、例えば1~2cm程度、典型的な例では1.4cm程度であってよい。これによってノズルから噴射される水は、網状部材の網による抵抗を受けることなしに容器内へと直接導かれる。
【0015】
本発明の別の例示的な態様によれば、前記ノズルは前記開放孔に隣接して設けられる広角ノズルである。広角ノズルは例えば90°~110°の噴霧角度にわたって水を円錐状に噴射(スプレー)可能なノズルである。これによって、容器の開口に向かって露出されている容器内の粉末・顆粒状洗剤に対して、溶解水を広範かつ一様に直接的に噴射することが可能になる。1つの例では、広角ノズルの噴霧角度は100°であってよい。
【0016】
本発明の別の例示的な態様によれば、前記ノズルはその先端に設けられるカバーリングを備える。上記のようにノズルは開放孔に隣接して配置可能であるが、網状部材や開放孔の周縁部分との間に隙間が形成される場合がある。カバーリングは例えばノズルに被せられる円筒部分と、この円筒部分の一端から半径方向外方に延びる円環状フランジを有していてよく、例えばノズルに対する容器(網状部材)の配置に多少のズレがあったとしても、このフランジによって隙間を塞いで粉末・顆粒状洗剤の透過を防止することができる。円環状フランジの外径は、開放孔の径よりも大きくてよい。
【0017】
また本発明の洗浄液供給装置は、例えば図1に示されたような装置の網状キャップを本発明の網状部材に交換することによっても提供できるが、その場合にはノズルが網状部材から下方に例えば10~20mm程度、典型的には15mm程度の間隔を置いて設けられている場合があることから、適宜ノズル延長パイプなどを用いて、ノズルが開放孔に隣接して配置されるようにしてよい。
【0018】
本発明の別の例示的な態様によれば、前記容器は前記粉末・顆粒状洗剤が充填されたカートリッジ容器であってよい。カートリッジ容器は、例えば3~4kg程度の粉末・顆粒状洗剤を収容可能な円筒状の樹脂製ボトルであってよく、その一端に設けられた開口は水溶性フィルムを備えていてよい。水溶性フィルムは、カートリッジ容器を開口を下にして、すなわち上下を逆にして設置した場合に、溶解水の噴射に先立って粉末・顆粒状洗剤が網状部材を透過するのを防止できる。溶解水の噴射が開始された後は水溶性フィルムは溶解して、溶解水が粉末・顆粒状洗剤へと直接噴射されることが可能になり、また生成された洗浄液が網状部材を透過することが可能になる。
【0019】
本発明の別の例示的な態様によれば、前記カートリッジ容器の前記網状部材は前記水溶性フィルムを覆って前記容器に装着される網状キャップであってよい。カートリッジ容器は前記開口を形成する円筒形のネック部分を有していてよく、網状キャップは中央に開放孔を有し、ネック部分に被せられてねじ込みその他によってカートリッジ容器に取り付けられてよい。網状キャップはさらにバージンシールによってシールしてもよい。使用時の1つの例によれば、使用者はバージンシールを剥がし、カートリッジ容器の開口を下にして、網状キャップの開放孔がノズルに隣接するように設置する。粉末・顆粒状洗剤がなくなった場合に、カートリッジ容器は廃棄され、新たなカートリッジ容器が設置される。
【0020】
本発明の別の例示的な態様によれば、前記容器は前記粉末・顆粒状洗剤を補充可能なレフィル容器であってよい。レフィル容器は、例えば4kg程度の粉末・顆粒状洗剤を収容可能な円筒状の樹脂製ホッパーとして構成されてよく、レフィルすなわち補充を行うための開閉可能な開口部が、ホッパー底部に位置する前記開口とは別に設けられる。例えばこの開口部はホッパーの上端に設けられて、蓋によって開閉可能とされてよい。レフィル容器を用いる場合には、前記開口に粉末透過防止板を備えることができる。これはホッパーの上端から補充用の粉末・顆粒状洗剤を例えば2kg程度投入した場合に、洗剤が網状部材を透過して洗浄液の供給経路に詰まるのを防止する。
【0021】
本発明の別の例示的な態様によれば、洗浄液供給装置は前記容器を設置するためのホルダーを含み、前記ノズルは前記ホルダーに配置され、前記粉状・顆粒状洗剤に水が噴射されて生成された洗浄液が前記ホルダーを介して供給される。1つの例では、ホルダーは段差の付いたカップ状の形状を有していてよく、容器は段差に対応するショルダ部においてホルダーに受容されてよい。ノズルは、容器がホルダーに受容された位置において、開放孔に隣接して配置されるよう位置決めされていてよい。カートリッジ容器またはレフィル容器が配置されていないときに異物が混入するのを防止するために、ホルダーは適宜カバーを有していてよい。ホルダーはまた、粉末・顆粒状洗剤に水が噴射されて生成される洗浄液を自動食器洗浄機へと導く流路を含んでいてよい。
【0022】
本発明の別の例示的な態様によれば、上記した構成を有する洗浄液供給装置を装着した自動食器洗浄機が提供される。自動食器洗浄機は例えば、機内に収容された食器に対して洗浄槽内の洗浄液が噴霧される構成を有していてよく、洗浄液供給装置は洗浄槽内の洗浄液濃度の測定に応じて、自動食器洗浄機に対して洗浄液を供給してよい。自動食器洗浄機自体は、本発明の洗浄液供給装置とは独立して製造・販売等されてよく、本発明の洗浄液供給装置はこうした自動食器洗浄機に対して洗浄液を自動的に供給するように、設置現場において別途取り付けられてよい。
【0023】
本発明の他の例示的な態様によれば、洗浄液供給方法が提供される。この方法は例えば、一端に開口が設けられた容器内に粉状・顆粒状洗剤を収容し、前記容器を前記開口を下にしてノズルの上方に設置し、開放孔を有する網状部材を前記開口を覆って配置し、前記ノズルから前記容器内へと前記開放孔を介して水を容器内の粉状・顆粒状洗剤の表面に一様に噴射し、溶解させて洗浄液を生成し、そして前記洗浄液を自動食器洗浄機へと導くことを含んでいてよい。この態様によれば水は容器内の粉末・顆粒状洗剤に対して下方のノズルから、網状部材の開放孔を介して直接的に噴射される。したがって水圧(水量)が多少低くとも、粉末・顆粒状洗剤に対して溶解水を十分に供給可能であり、容器内での粉状・顆粒状洗剤の溶け残りの問題も軽減される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、図1のように網状キャップを透過させて溶解水を供給する構造の場合に、網状キャップが抵抗になり溶解水が容器内に十分に供給されないため、低い水圧(水量)の現場では溶解水が網状キャップを透過できなかったり、透過する水量と勢いが小さくなって供給しにくいといった問題があった。また溶解水を網状キャップを透過させるためには相対的に挟角のノズルの設置が必要なため、早い段階で粉状・顆粒状洗剤の一部に穴が開いて粉末全体が水和し、成分失活や水和固化になりすい。
【0025】
本発明の洗浄液供給装置および方法によれば、溶解水は粉状・顆粒状洗剤に対して直噴され、溶解水は抵抗なく100%が粉状・顆粒状洗剤に供給される。したがって例えば図1の場合よりも低い水圧(水量)で溶解水を供給可能であり、洗浄液供給装置を設置可能な現場が広がると共に、広角ノズルを選択可能であることから溶解水を広く薄く噴霧することが可能であり、粉状・顆粒状洗剤に部分的に穴が開くことがないため全体が水和しにくく、成分失活や水和固化といった問題に対しても効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】粉末・顆粒タイプの洗剤に用いられる装置の例について運転中の模式的な状態を示す説明図である。
図2図1の装置に用いられる網状キャップの例を示す平面図である。
図3】本発明の洗浄液供給装置に関連して使用可能な自動食器洗浄機の例を示す説明図である。
図4】本発明の洗浄液供給装置の1つの実施形態について運転中の模式的な状態を示す説明図である。
図4A図4のノズル部分の部品の位置関係を示す展開図である。
図5】本発明の洗浄液供給装置に使用可能な網状キャップの例の平面図である。
図6】本発明の洗浄液供給装置の部材の位置関係の例を示す展開図である。
図7】本発明の洗浄液供給装置の別の実施形態について運転中の模式的な状態を示す説明図である。
図8】本発明の洗浄液供給装置の部材の位置関係の例を示す展開図である。
図9図1図4の洗浄液供給装置について粉末・顆粒状洗剤の溶解状況のイメージを対比して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の洗剤供給装置を設置して運転可能な、例示的な業務用の自動食器洗浄機について、図3を参照して説明する。業務用の自動食器洗浄機10はハウジング11と、ハウジング11内の上部に配置された洗浄室12と、下部に配置された洗浄槽13とを有している。
【0028】
洗浄室12は食器などの被洗浄物14をラック15などによって収容可能な収容空間16を有し、被洗浄物14に対して洗浄水による洗浄とすすぎ水によるすすぎ洗いが施される。典型的な例では、洗浄は約50秒間行われ、次いですすぎ洗いが約10秒間行われる。
【0029】
収容空間16の上下には、洗浄水を噴射して被洗浄物14を洗浄するための複数個の洗浄ノズル17と、すすぎ水を噴射してすすぎ洗いを行う複数個のすすぎノズル18が対をなして設けられている。洗浄槽13には所定濃度の洗浄水19が貯留されており、洗浄ポンプ20によって洗浄液管21を通して洗浄ノズル17へと加圧供給される。洗浄ノズル17は、洗浄ポンプ20によって洗浄槽13から送出される洗浄水19を被洗浄物14に噴射して洗浄する。洗浄後の洗浄水は洗浄槽13に流下して循環使用され、余剰量の洗浄水はオーバーフロー管22から排出される。
【0030】
他方、すすぎノズル18に対しては、例えば図示しないタンクに貯留され加温されたすすぎ水が、すすぎポンプ23によって加圧供給される。すすぎノズル18から噴射されたすすぎ水も洗浄槽13に流下し、洗浄水19として循環使用される。このように洗浄槽13に貯留された洗浄水19は循環利用されて洗浄が繰り返されるが、すすぎ洗いのため新たに供給されるすすぎ水が洗浄水19を希釈するため、洗浄水19の洗剤濃度を所定の濃度に維持するためには、洗浄槽13に洗浄液を追加供給する必要がある。
【0031】
本発明の例による洗剤供給装置はこうした用途に使用可能であり、例えば図3で30で示すようにして自動食器洗浄機10に付設されてよい。この例では洗浄水19の洗剤濃度が濃度センサー24で検知され、この検知信号に基づいて自動食器洗浄機10の洗浄槽13に対する洗浄液の供給量を制御して、洗浄水19の洗剤濃度を適正濃度に維持することができる。
【0032】
図4以降を参照して以下で説明するように、本発明の例による洗剤供給装置30においては、開放孔を有する網状部材で支持された粉状・顆粒状洗剤の底部にノズルから溶解水が直接噴射されて洗浄液が生成されるが、自動食器洗浄機10に図3のように付設された例では、洗浄液を自動食器洗浄機10の洗浄槽13へ送る洗浄液供給パイプまたはホース25と、ノズルへと溶解水を供給する給水パイプまたはホース26と共に、コントローラ27を設けてよい。1つの例では給水パイプまたはホース26には電磁弁28を介設し、この電磁弁28の開閉を制御する制御回路をコントローラ27内に配設し、ケーブル29を介して濃度センサー24からの信号を受信するように接続可能である。
【0033】
上記のような洗剤供給装置30の動作時には、濃度センサー24の信号から洗浄水19の洗剤濃度低下を検知すると、この検知信号に基づいてコントローラ27内の制御回路が電磁弁28を開放してノズルから溶解水が噴射される。それによって洗剤供給装置30から洗浄槽13に対して洗浄液が供給される。この制御は例えば、洗浄液の供給(溶解水の噴射)を3秒間行い、7秒間放置した後に濃度センサー24による検出を行い、濃度が不足している場合には、洗浄水19の洗剤濃度が所定の設定濃度に達するまで供給を繰り返すことによって行ってよい。
【0034】
図4は本発明の例による洗剤供給装置30の1つの実施形態を示している。粉末・顆粒タイプの洗剤31は広口ボトル状のカートリッジ容器32に入れられ、カートリッジ容器32は開口33を下にしてホルダー34に装填されている。開口33には網状部材である網状キャップ35が被せられており、図3に示すような給水パイプまたはホース26の先端に設けられたノズル36から溶解水37が上方に噴射されて洗剤が溶解される。得られた洗浄液(洗剤溶解液)38はホルダー34の下部に設けられた通路39から、例えば図3に示す洗浄液供給パイプまたはホース25を通して食器洗浄機10の洗浄槽13へと送られる。
【0035】
図4の例においては、カートリッジ容器32の開口33は円形形状を有し、網状キャップ35はこれに対応する円形形状の網部35Aと網部35Aの周縁から立ち上がる円筒部35Bを有していて、開口33を画定しているカートリッジ容器32の円筒形ネック部分32Aに外側から、例えばねじ込みによって装着されている。
【0036】
図5の例に示すように、網状キャップ35の網部35Aの中央には開放孔40が形成されており、その周囲には大きさや位置を異ならせた半径方向のスリット35Cが円の中心から外側に向けて放射状に配列されている。このスリット35Cは粉末・顆粒状洗剤の透過を実質的に防止できる一方で、生成される洗浄液が透過するのを実質的に妨げない大きさであってよい。また同様の機能を果たすものであれば、網部35Aはスリット35Cでなくとも、任意の形状および大きさの網目、例えば格子状の網目を有していてよい。
【0037】
開放孔40は円形であってよく、その径は例えばノズル36の先端部分の径と同程度であってよい。これによってノズル36の中央から噴射される水は、網状キャップの網部分による抵抗を受けることなしに、容器内の粉末・顆粒状洗剤へと直接に導かれる。したがって水圧(水量)が多少低くとも、粉末・顆粒状洗剤31に対して溶解水を十分に供給可能である。
【0038】
ノズル36は開放孔40に臨んで隣接して設けられた、例えば噴霧角度が100°の広角ノズルであってよい。任意選択的に、ノズル36はその先端に、一端に半径方向に延出する円環状フランジ41を有する円筒形のカバーリング42を備えていてよい。円環状フランジ41の外径は、開放孔40の径よりも大きくてよく、これによってノズル36と開放孔40の間における多少の半径方向のずれが許容される。
【0039】
カートリッジ容器32は、予め所定量の粉末・顆粒状洗剤31が収容された円筒状の樹脂製ボトルであり、開口33は当初、網状キャップ35の内側に配置された水溶性フィルム43を備えていてよい。水溶性フィルム43は溶解水の噴射や生成された洗浄液によって容易に溶解される。網状キャップ35の外側は当初、バージンシール44によってシールされていてもよい。図6は、こうした例によるカートリッジ容器32を示している。
【0040】
洗浄液供給装置30は、カートリッジ容器32を設置するためのホルダー34を含んでいてよく、ノズル36はホルダー34内へと延びた給水パイプ26の先端に配置されていてよい。この場合に給水パイプ26は、ホルダー34と一体成形されたものであってもよい。粉状・顆粒状洗剤31にノズル36から溶解水が噴射されて生成された洗浄液はホルダー34の漏斗状の下部に集められ、通路39から洗浄液供給パイプ25を介して自動食器洗浄機の洗浄槽へと供給される。
【0041】
ホルダー34は段差の付いたカップ状の形状を有し、カートリッジ容器32はこの段差に対応する、ネック部分32Aから外側に張り出したショルダ部32Bにおいて、ホルダー34に受容されている。給水パイプ先端のノズル装着位置が下方にある図1に示すような既存の設備を利用する場合には、給水パイプ26の先端にノズル延長パイプ45などを設けて、ノズル36が開放孔40に隣接するように位置を調節してもよい。図4および図4Aはこうした例をカバーリング42と共に示しているが、ホルダー34を新規に作成する場合には、給水パイプ26自体をこの延長した長さで作成してよい。46で示されているのは粗い網状のカバーであり、容器が配置されていないときに異物が混入するのを防止する役割を有する。
【0042】
図7は、粉末・顆粒状洗剤を補充可能なレフィル容器50として構成した容器の例を示している。レフィル容器50は、円筒状の樹脂製ホッパー51として構成されており、レフィルを行うための開閉可能な開口部52が、底部に位置する開口53とは反対側のホッパー51の上端に設けられて、蓋54によって開閉可能とされている。図4のカートリッジ容器32と同様に、レフィル容器50も開口53に網状キャップ55が装着されている。網状キャップ55は図4および図5で説明した網状キャップ35と同様であってよく、中央に開放孔55Aが設けられている。
【0043】
図7の例による洗浄液供給装置においてもノズル56およびホルダー57が設けられ、これらは図4の例によるノズル36およびホルダー34と同様であってよい。ただし図7に示す例では、ノズル延長パイプを使用しない例が示されており、ノズル56は給水パイプ26先端に設けられて開放孔55Aに隣接している。レフィル容器50を用いる場合には、開口53に粉末透過防止板58を備えることができる。図8は粉末透過防止板58を備えた場合の洗浄液供給装置の部材の位置関係の1つの例を示している。粉末透過防止板58は、ホッパー51の開口部52から補充用の粉末・顆粒状洗剤を投入した場合に、洗剤が網状キャップ55を大量に透過してその下の供給経路で詰まりが発生するのを防止する役割を有し、例えば網状キャップ55の網目よりも粗い網目を有して構成され、中央部には開放孔56よりも径の大きな孔部59が設けられて、ノズル56からの噴射に干渉しないようになっている。
【0044】
本発明の洗浄液供給装置に使用可能な粉末・顆粒状洗剤には、従来公知の洗剤組成物が使用されてよい。配合される界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などを使用することができるが、洗浄性の観点からは、ノニオン界面活性剤が好ましい。またハイドロトロープ剤、分散剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、抑泡剤、漂白剤、漂白活性化剤などの成分を適宜を配合することができる。具体的な例としては、花王プロフェッショナルサービス(株)から市販されている「アクシャル」シリーズや「クリアロン」シリーズを挙げることができる。
【実施例0045】
図2の網状キャップ5を備えた図1に示すような洗浄液供給装置と、図5の網状キャップ35を備えた図4に示すような洗浄液供給装置とを用い、実際に自動食器洗浄機を連続運転して洗浄液を供給し、全体を通じての粉末・顆粒状洗剤の溶解状況、カートリッジ容器内に溶解水が噴射されることによる貫通穴の発生状況、および自動食器洗浄機に所要の洗浄液が供給できなくなった時点について比較を行った。使用した自動食器洗浄機はホシザキ電機製JWE-680A型であった。
【0046】
容器としてはカートリッジ式の容器を使用し、約3kgの自動食器洗浄機用洗剤(花王ニュースタープレミアム)を充填した。自動食器洗浄機のセンサーの洗剤濃度設定値は、0.10質量%とし、カートリッジ容器の開口に取り付けられた網状キャップの下方から1.5L/分の流量で水道水をノズルから噴射した。
【0047】
図1の装置と図4の装置の両者について粉末・顆粒状洗剤(グレーの部分)の溶解状況を比較するためのイメージを図9の(A)および(B)に、それぞれの溶解水噴霧パターンと共に示す。黒い部分は粉末・顆粒状洗剤が噴霧された水により濡れている部分を示している。なお図7の装置の場合も図4と同様のパターンが得られる。
【0048】
図1の構成の場合には、網状キャップ5を透過させて溶解水を容器内に噴射するために、ノズル6として噴霧角度50°のノズルを使用し、網状キャップ5の約15mm程度下方から勢いをつけて噴射する必要があった。そのため容器内に充填された粉末・顆粒状洗剤の中央に穴が開きやすく、その穴を通して粉末・顆粒状洗剤全体が濡れ、水和によって固化したり成分が失活したりしやすい。このような構成による噴霧パターンの例を図9(A)の左端に洗剤が充填されていない状態で示している。
【0049】
これに対して図4の構成の場合には、ノズル36は網状キャップ35の開放孔40に臨んで隣接配置されており、網部35Aの抵抗を考慮する必要がないため、噴霧角度100°のノズルを使用することができた。このような構成による噴霧パターンの例を図9(B)の左端に洗剤が充填されていない状態で示している。計算上、噴霧角度50°のノズルと比較して、単位面積当たりの水量は約1/7になり、噴霧面積は約7倍になる。従って中央に穴が開くまでの時間も長くなり(貫通時の粉末・顆粒状洗剤の残量が多い)、また穴が開いたとしても穴から透過する水の量は相対的に少ないため、水和による不具合を抑えることができる。さらに広範かつ一様に溶解水を噴射・噴霧可能であることから、粉末・顆粒状洗剤の溶解性を向上させ、溶け残りの量を少なくすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の洗浄液供給装置および方法は、特に特に業務用の自動食器洗浄機に関連して好適に使用できる。
【符号の説明】
【0051】
30:洗浄液供給装置
31:粉状・顆粒状洗剤
32,50:容器
33,53:開口
35,55:網状部材
36,56:ノズル
40,55A:開放孔

図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9