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特開2023-161774緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置最適化プログラムおよびサービス拠点配置最適化方法
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  • 特開-緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置最適化プログラムおよびサービス拠点配置最適化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161774
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置最適化プログラムおよびサービス拠点配置最適化方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20231031BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072321
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武富 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】石垣 司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】サービス拠点配置の一層の最適化を実現可能な緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置プ最適化ログラムおよびサービス拠点配置最適化方法を提供する。
【解決手段】需要およびサービス拠点に関する情報を入力する情報入力部101と、情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出部102と、分担率と、配置候補とに基づいて、分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化部103とを備え、需要およびサービス拠点に関する情報は、サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、需要の集合に関する情報、配置候補から各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要に対して緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するサービス拠点配置最適化システムであって、
前記需要および前記サービス拠点に関する情報を入力する情報入力部と、
前記情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、前記需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出部と、
導出された前記分担率と、前記配置候補とに基づいて、前記分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化部と、
を備え、
前記需要および前記サービス拠点に関する情報は、前記サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、前記需要の集合に関する情報、前記配置候補から前記各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを特徴とする緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム。
【請求項2】
前記導出部は、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、前記分担率に基づいて、前記移動時間の加重平均の最小値を求めることを特徴とする請求項1に記載の緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム。
【請求項3】
前記導出部は、前記分担率による移動時間の加重平均を目的関数とし、前記加重平均を最小化する数理モデルに基づいて定式化した下記の結果に基づいて、前記配置情報の最適値を導出することを特徴とする請求項2に記載の緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム。
【請求項4】
前記分担率は、前記各サービス拠点の前記対応率以下となるように制約されることを特徴とする請求項3に記載の緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム。
【請求項5】
コンピュータで実行され、需要に対して緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するサービス拠点配置最適化プログラムであって、
前記需要および前記サービス拠点に関する情報を入力する情報入力ステップと、
前記情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、前記需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出ステップと、
導出された前記分担率と、前記配置候補とに基づいて、前記分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化ステップと、
を有し、
前記需要および前記サービス拠点に関する情報は、前記サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、前記需要の集合に関する情報、前記配置候補から前記各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを特徴とする緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化プログラム。
【請求項6】
前記導出ステップは、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、前記分担率に基づいて、前記移動時間の加重平均の最小値を求めることを特徴とする請求項5に記載の緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化プログラム。
【請求項7】
コンピュータ等の機械で運用され、需要に対して緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するサービス拠点配置最適化方法であって、
前記需要および前記サービス拠点に関する情報を入力する情報入力過程と、
前記情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、前記需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出過程と、
導出された前記分担率と、前記配置候補とに基づいて、前記分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化過程と、
を有し、
前記需要および前記サービス拠点に関する情報は、前記サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、前記需要の集合に関する情報、前記配置候補から前記各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを特徴とする緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化方法。
サービスのサービス拠点配置最適化方法。
【請求項8】
前記導出過程は、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、前記分担率に基づいて、前記移動時間の加重平均の最小値を求めることを特徴とする請求項7に記載の緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば救急搬送サービスや車両のロードサービス等の緊急時対応サービスを行う際のサービス拠点となる店舗や施設等の配置を最適化する緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置プログラムおよびサービス拠点配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から運用されている例えば救急搬送サービスや車両のロードサービスに代表される緊急時対応サービスは、できるだけ短時間で需要者の居る場所に到着することが望ましい。
【0003】
特に、救急車を用いた救急医療サービスなど、サービス提供者が需要者からの要請を受け、現場に移動して救命活動等を行うような緊急時対応サービスにおいては、人命に関わる場合もあるため可能な限り短い時間で現場に到着することが求められる。
【0004】
所定数のサービス拠点を活用して、できるだけ短時間で需要者に緊急時対応サービスを提供するための有効な方策として、サービス拠点の配置を最適化することが考えられる。
【0005】
そして、従来から、サービス拠点配置最適化を理論的に行うための数理モデルの1つとして、「p-median問題(p-メディアン問題)」がある。
【0006】
ここで、「p-median問題」とは、点集合と枝集合より構成されるグラフ内の点または枝上、または空間内の任意の点に顧客集合(需要集合)、施設(例えばサービス拠点や店舗)の配置可能地点が与えられ、さらに選択する施設の個数(p)が与えられたときに、顧客(需要者)から最も近い施設への距離の総和を最小化するように施設を配置する問題をいう。
【0007】
「p-median問題」では、サービスの需要者からの要請に対し最寄りのサービス拠点がサービスを提供することを仮定するが、現実的には需要者からの要請に対し最寄りのサービス拠点が対応できず、別の拠点で対応する場合が想定される。
【0008】
また、要請に対してサービス拠点が対応できない確率(対応率)を考えたとき、その対応率がサービス拠点ごとに異なるケース(例えば、サービス拠点ごとに人員やサービスカー等の保有インフラが異なる場合など)も考えられる。
【0009】
そのため、サービス拠点配置の一層の最適化を実現するためには、上述のような現実に起こり得る事態を勘案した数理モデルの拡張を考える必要がある。
【0010】
ここで、緊急時対応サービスのサービス拠点配置の最適化において、最寄りの拠点が対応できないケースを考慮した「p-median問題の拡張モデル」としては、下記の非特許文献1、2が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jerry R. Weaver, Richard L. Church,(1985) A Median Location Model with Nonclosest Facility Service. Transportation Science 19(1):58-74.
【非特許文献2】Mumtaz Karatas, Ertan Yakici,(2019) An analysis of p-median location problem: Effects of backup service level and demand assignment policy,European Journal of Operational Research,Vol272, 207-218.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1、2で開示される「p-median問題の拡張モデル」においてもサービス拠点ごとに異なる対応率は考慮されていない。
【0013】
即ち、本出願時点において、サービス拠点ごとに異なる対応率を考慮した「p-median問題の拡張モデル」は存在せず、サービス拠点配置の十分な最適化は実現されていなかった。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サービス拠点配置の一層の最適化を実現可能な緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置プ最適化ログラムおよびサービス拠点配置最適化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システムは、需要に対して緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するサービス拠点配置最適化システムであって、前記需要および前記サービス拠点に関する情報を入力する情報入力部と、前記情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、前記需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出部と、導出された前記分担率と、前記配置候補とに基づいて、前記分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化部と、を備え、前記需要および前記サービス拠点に関する情報は、前記サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、前記需要の集合に関する情報、前記配置候補から前記各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを特徴とすることを要旨とする。
【0016】
また、前記導出部は、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、前記分担率に基づいて、前記移動時間の加重平均の最小値を求めるようにしてもよい。
【0017】
また、前記導出部は、前記分担率による移動時間の加重平均を目的関数とし、前記加重平均を最小化する数理モデルに基づいて定式化した結果に基づいて、前記配置情報の最適値を導出するようにできる。
【0018】
また、前記分担率は、前記各サービス拠点の前記対応率以下となるように制約されるようにできる。
【0019】
また、他の態様に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化プログラムは、コンピュータで実行され、需要に対して緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するサービス拠点配置最適化プログラムであって、前記需要および前記サービス拠点に関する情報を入力する情報入力ステップと、前記情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、前記需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出ステップと、導出された前記分担率と、前記配置候補とに基づいて、前記分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化ステップと、を有し、前記需要および前記サービス拠点に関する情報は、前記サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、前記需要の集合に関する情報、前記配置候補から前記各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを要旨とする。
【0020】
また、前記導出ステップは、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、前記分担率に基づいて、前記移動時間の加重平均の最小値を求めるようにしてもよい。
【0021】
また、他の態様に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化方法は、コンピュータ等の機械で運用され、需要に対して緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するサービス拠点配置最適化方法であって、前記需要および前記サービス拠点に関する情報を入力する情報入力過程と、前記情報に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率と、前記需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補とを導出する導出過程と、導出された前記分担率と、前記配置候補とに基づいて、前記分担率による移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化過程と、を有し、前記需要および前記サービス拠点に関する情報は、前記サービス拠点の配置候補の集合に関する情報、前記需要の集合に関する情報、前記配置候補から前記各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率に関する情報および配置する前記サービス拠点の最大数の情報を含むことを要旨とする。
【0022】
また、前記導出過程は、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、前記分担率に基づいて、前記移動時間の加重平均の最小値を求めるようにできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サービス拠点配置の一層の最適化を実現可能な緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置プ最適化ログラムおよびサービス拠点配置最適化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】比較例に係る数理モデルを適用した場合のサービス拠点配置の模式図である。
図3】本発明に係る数理モデルを適用した場合のサービス拠点配置の模式図である。
図4】実施形態に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システムで実行されるサービス拠点配置最適化処理の処理手順の例を示すフローチャートである。
図5】本発明を適用した仮想問題の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から図5を参照して、本発明の実施形態に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システムS1および本発明の比較例について説明する。
【0026】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。
【0027】
(サービス拠点配置最適化システムの概略構成)
図1の機能ブロック図を参照して、実施形態に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システムS1の概略構成について説明する。
【0028】
緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システムS1は、例えば汎用のコンピュータやサーバ等のハードウェアと、所定のソフトウェア(プログラム)との協働により実現される。
【0029】
本実施形態に係る緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム(以下、サービス拠点配置最適化システムと呼称する)S1は、救急患者や交通事故等の需要(需要者)に対して、救命作業や事故処理等の緊急時の対応サービスを提供するサービス拠点の配置を最適化するシステムである。
【0030】
図1に示すように、サービス拠点配置最適化システムS1は、需要およびサービス拠点に関する情報を入力する所定の入力デバイスで構成される情報入力部101を備える。
【0031】
需要およびサービス拠点に関する情報としては、サービス拠点の配置候補の集合に関する情報(D1)、需要の集合に関する情報(D2)、配置候補から各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報(D3)、各配置候補について実際に対応可能な確率としての対応率Rに関する情報(D4)および配置するサービス拠点の最大数の情報(D5)を含んでいる。
【0032】
また、サービス拠点配置最適化システムS1は、入力された情報D1~D5に基づいて、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率Wと、需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補Cとを導出する導出部102を備える。
【0033】
なお、導出部102は、図1に示すように、分担率Wを導出する分担率導出部102aと、サービス拠点の配置候補Cを導出する配置候補導出部102bとから構成され、両者の協働により分担率Wおよびサービス拠点の配置候補Cが同時並行的に導出される。
【0034】
また、サービス拠点配置最適化システムS1は、導出された分担率Wと、配置候補Cとに基づいて、分担率Wによる移動時間の加重平均を最小化するサービス拠点の配置情報を最適値として算出するサービス拠点配置最適化部103を備える。
【0035】
また、サービス拠点配置最適化システムS1は、算出されたサービス拠点の配置情報を例えば2Dマップや3Dマップなどとして表示するディスプレイなどで構成される表示部104を備える。
【0036】
さらに、サービス拠点配置最適化システムS1は、算出されたサービス拠点の配置情報Cを無線ネットワークNなどを介してサーバや外部端末装置等で構成される外部装置200に送信する通信部105を備えている。
【0037】
このような構成により、対応率R等を考慮して、サービス拠点配置の一層の最適化を実現することができる。
【0038】
なお、導出部102は、1つの需要に対し複数のサービス拠点が分担してサービスを提供する場合において、分担率Wに基づいて、移動時間の加重平均の最小値を求めるようにできる。
【0039】
これにより、分担率Wに基づいて、サービス拠点配置のより一層の最適化を実現することができる。
【0040】
また、導出部102は、分担率Wによる移動時間の加重平均を目的関数とし、加重平均を最小化する数理モデル(数2として後述。なお、詳細については後述する)に基づいて定式化した結果に基づいて、配置情報の最適値を導出するようにできる。
【0041】
(数理モデルの比較例について)
ここで、本発明に適用される数理モデル(数2)等について説明するに先立って、本発明者が数理モデル(数2)を創出する基礎となった比較例としての数理モデル(数1)について説明する。
【0042】
【数1】
【0043】
比較例に係る数理モデル(数1)は、施設ごとの対応率を考慮したい場合に一般的に考えられる理論的妥当性のある方法である。
【0044】
数1に係る数理モデルは、(a)~(f)の式で構成されている。
【0045】
数1に係る数理モデルの式(a)は、ある需要に対し、ある施設sが対応するか否かを施設ごとの対応率のベルヌーイ確率とし、移動時間の期待値を最小化するものである。
【0046】
式(a)~(f)において、記号sは、サービス拠点(施設)を示す添字で、記号Sは、候補施設の集合(サービス拠点の配置候補の集合)を表す。
【0047】
また、記号vは、需要を表す添字で、記号Vは、需要の集合を表す。
【0048】
また、記号Tsvは、施設sから需要vまでの移動距離で所与(予め用意されている)とする。
【0049】
また、記号asvは、施設sの対応確率(対応率)で所与(予め用意されている)とする。
【0050】
また、記号bは需要vの量を表す値で所与(予め用意されている)とする。
【0051】
また、記号Pは、配置される施設数(サービス拠点の数)の最大値で所与(予め用意されている)とする。
【0052】
また、記号W svは、需要vに対してp番目に割り当てられる施設を示す変数で、施設sが需要vにp番目に割り当てられた場合には「1」を、それ以外の場合には「0」を取る。
【0053】
また、記号Zは、施設sが配置されるか否かを示す変数で、施設sが配置された場合には「1」を、それ以外の場合には「0」を取る。
【0054】
ここで、式(a)は、目的関数で、移動時間の期待値を最小化するものである。
【0055】
また、式(b)は、配置される施設数がP以下であることを保証するものである。
【0056】
また、式(c)は、需要vに対してp番目に割り当てられる施設が1つであることを保証するものである。
【0057】
また、式(d)は、需要vに対して割り当てられる施設は、配置される施設で、且つ全てのpで異なることを保証するものである。
【0058】
なお、上記のS、V、Tsv、asv、Pは必須のインプット要素である。
【0059】
図2に示す模式図を参照して、比較例に係る数理モデルを適用した場合のサービス拠点配置の例について説明する。
【0060】
この例では、3箇所のサービス拠点(施設)A~Cについて適用した場合を想定する。
【0061】
この例において、施設Aの対応率はa、施設Bの対応率は(1-a)a、施設Cの対応率は(1-a)(1-a)aで示される。
【0062】
また、需要vとの移動距離は、施設AについてはTsAv、施設BについてはTsBv、施設CについてはTsCvで示される。
【0063】
つまり、需要vに対する移動距離の期待値は、TsAv+TsBv(1-a)a+TsCv(1-a)(1-a)aで表される。
【0064】
ここで、より具体的な仮想問題について説明すると、例えば大型車両向けの緊急ロードサービスの過去のレスキュー要請受付データを用いて、レスキュー要請を受けてからサービスカーが現場(需要)に到着するまでの移動時間の平均値が最小となるように、候補となる施設群(サービス拠点群)の中から限られた数の施設を選び出す仮想問題を想定した。
【0065】
なお、上記仮想問題の詳細については、後述する本発明の実施例において説明する。
【0066】
そして、数1に係る数理モデルを適用したプログラム(ソフトウェア)を作成し、予め用意したトラブルデータおよび施設データから、入力するデータ(トラブルデータ:200個、施設データ:12箇所)をランダムに選んで10回の試行(シミュレーション)を行った。
【0067】
その結果、10回のうち8回で、同じ3施設の組み合わせが選ばれる結果(例えば、図2の模式図のような結果)となったが、この比較例による計算時間の平均値は771.7秒という比較的長時間となることが判明した。
【0068】
このように、比較例に係る数理モデルを適用した場合、最適化で選ぶ施設数をp個とした場合に、数1に示すように、目的関数はp次の非線形の式で表されるため、比較的大きな計算資源を要し、また求解の計算時間に比較的長時間を要するという課題があることが分かった。
【0069】
そこで、本発明者は、上記比較例の課題を解消すべく、さらに研究を続けた結果、本発明に適用される新たな数理モデル(数2)を案出するに至った。
【0070】
(実施例について)
ここで、本発明の実施例における数理モデル(数2)の詳細について説明する。
【0071】
【数2】
【0072】
数2に係る数理モデルは、(1)~(6)の式で構成されている。
【0073】
数2に係る数理モデルは、1つの需要に対し複数の拠点が分担してサービスを提供すると捉え、分担率による移動時間の加重平均を最小化するものである。
【0074】
ここで、数2に係る数理モデルは、目的関数(式(1))を線形としたので、求解の計算コストを軽減することができるモデルである。
【0075】
式(1)~(6)において、記号sは、サービス拠点(施設)を示す添字で、記号Sは、候補施設の集合(サービス拠点の配置候補の集合)を表す。
【0076】
また、記号vは、需要を表す添字で、記号Vは、需要の集合を表す。
【0077】
また、記号Tsvは、施設sから需要vまでの移動距離で所与(予め用意されている)とする。
【0078】
また、記号asvは、施設sの対応確率(対応率)で所与(予め用意されている)とする。
【0079】
また、記号bは需要vの量を表す値で所与(予め用意されている)とする。
【0080】
また、記号Pは、配置される施設数(サービス拠点の数)の最大値で所与(予め用意されている)とする。
【0081】
また、記号Wsvは、需要vに対して割り当てられる施設を示すと共に、割り当ての分担率を示す変数で、0≦Wsv≦1の連続値を取る。
【0082】
また、記号Zは、施設sが配置されるか否かを示す変数で、施設sが配置された場合には「1」を、それ以外の場合には「0」を取る。
【0083】
なお、上記のS、V、Tsv、asv、Pは必須のインプット要素である。
【0084】
ここで、式(1)は、目的関数で、移動時間の分担率による加重平均を最小化するものである。
【0085】
また、式(2)は、配置される施設数がP以下であることを保証するものである。
【0086】
また、式(3)は、需要vに対して割り当てられる施設の分担率の合計が「1」になることを保証するものである。
【0087】
また、式(4)は、需要vに対して割り当てられる施設は、配置される施設であることを保証するものである。
【0088】
また、式(5)は、需要に対して割り当てられる施設sの分担率asv以下であることを保証するものである。
【0089】
なお、分担率は施設ごとの対応率以下になる制約(式5)を与えることで、移動時間の加重平均が、比較例における数理モデルの移動時間の期待値と非常に近くなることから、比較例と同じ結果もしくは非常に近い結果を得ることができる。
【0090】
ここで、図3に示す模式図を参照して、本発明における数理モデル(数2)を適用した場合のサービス拠点配置の例について説明する。
【0091】
この例では、3箇所のサービス拠点(施設)A~Cについて適用した場合を想定する。
【0092】
この例において、施設Aの分担率はWsv(≦a)、施設Bの分担率はWsv(≦a)、施設Cの分担率はWsv(≦a)で示される。
【0093】
また、需要vとの移動距離は、施設AについてはTsAv、施設BについてはTsBv、施設CについてはTsCvで示される。
【0094】
つまり、需要vに対する移動距離の荷重平均は、TsAvsAv+TsBvsBv+TsCvsCvで表される。
【0095】
そして、数1に係る数理モデルを適用したプログラム(ソフトウェア)を作成して、図4に示すサービス拠点配置最適化処理を実行できるようにした。
【0096】
より具体的には、モデルの計算には、プログラミング言語の一種であるPython(登録商標)のpyomoパッケージ(最適化問題を解くためのパッケージ)を用いた。
【0097】
また、ソルバーにはMIPソルバーにGLPKを、NLPソルバー(非線形ソルバー)にIPOPTを用いた。
【0098】
(サービス拠点配置最適化処理について)
図4のフローチャートを参照して、数2に係る数理モデルを適用したプログラム(ソフトウェア)を実行可能なサービス拠点配置最適化システムS1によるサービス拠点配置最適化処理の処理手順の例について説明する。
【0099】
この処理が開始されると、まずステップS10で、需要およびサービス拠点(施設)に関する情報を入力する。
【0100】
具体的には、所定の入力デバイスを介して、サービス拠点の配置候補の集合に関する情報(D1)、需要の集合に関する情報(D2)、配置候補から各需要の地点までの移動時間、移動距離に関する情報(D3)、対応率に関する情報(D4)、サービス拠点の最大数の情報(D5)を入力してステップS11に移行する。
【0101】
ステップS11では、前述の数2で示す数理最適化モデルを適用して、各サービス拠点におけるサービス提供の分担率Wと、需要に対して対応可能なサービス拠点の配置候補Cとを導出する。
【0102】
なお、分担率Wと配置候補Cとは、サービス提供の分担率導出部102aと、サービス拠点の配置候補導出部102bの協働によって、同時並行的に処理されて導出される。
【0103】
次いでステップS12に移行して、分担率Wと配置候補Cに基づいて、サービス拠点配置の最適値を算出してステップS13に移行する。
【0104】
ステップS13では、最適化された配置情報D10を液晶ディスプレイ等の表示部104に表示出力、あるいは通信部105を介してサーバ等の外部装置200に出力されて処理を終了する。
【0105】
これにより、比較例の場合に比して、より短時間でサービス拠点配置の最適化を実現することができる。
【0106】
(仮想問題について)
ここで、図5を参照して、本実施形態に係るサービス拠点配置最適化処理を適用する例として設定した仮想問題について説明する。
【0107】
図5に示すように、例えば東京、大阪間の主要高速道路R1~R5において、ある特殊なタイヤ(例えば特殊車両専用のタイヤなど)向けの緊急ロードサービスを展開するケースを考える
図5に示す例では、ロードサービスを提供する候補となる施設(店舗)は、SC1~SC12の12箇所あり、それぞれ過去の対応率実績データがあるものとする。
【0108】
そして、過去のトラブル発生地Tとして200地点を抽出したデータを参照し、レスキュー要請からサービスカーがトラブル発生地に到着するまでの移動時間が最短となるように、SC1~SC12の12施設の中から3つの施設の組合せを選び出すことを仮想問題とした。
【0109】
なお、図5は、あくまでも模式図であるので、200個のトラブル発生地Tの全てがプロットされているわけではない。
【0110】
また、全候補施設(店舗)と全トラブル発生地Tとの間の移動時間は与えられているものとする。
【0111】
そして、この仮想問題について、数2に係る数理モデルを適用したサービス拠点配置最適化処理プログラム(ソフトウェア)を実行して、手持ちのトラブルデータおよび施設データから、入力するデータ(トラブルデータ:200、施設データ12)をランダムに選んで10回の試行(シミュレーション)を行った。
【0112】
その結果、10回の試行のうち8回で、同じ3施設(店舗)の組み合わせが選ばれる結果(例えば、図3の模式図のような結果)となり、計算時間の平均値は9.5秒であった。
【0113】
上述したように、数1の数理モデルを適用した比較例で同様の仮想問題を計算させた場合の計算時間の平均値は771.7秒であったから、本実施形態として数2に係る数理モデルを適用したサービス拠点配置最適化処理は約81倍も速く、飛躍的な時間短縮を実現できることが分かる。
【0114】
このように、数2に係る数理モデルの目的関数は、最適化で選ぶ施設数に関わらず線形な式で表されるため、求解の計算時間が比較例の数理モデル(数1)に比べ非常に小さくなることが分かる。
【0115】
これにより、より迅速な救命や事故処理等の緊急時対応サービスを提供することが可能となる。
【0116】
なお、モデル中の移動時間は、各種距離(道路に即した経路距離、地図上のユークリッド距離、その他で定義される各種距離)でも可能である。
【0117】
また、本発明における数理モデル(数2)において、殆どの施設の対応率が低い場合に実行可能解が無い場合が考えられる。その場合には、数2の式(3)の右辺を「1」ではなく「0~1」の間の適当な値に調整することで実行可能解を得ることができる。
【0118】
以上、本発明の緊急時対応サービスのサービス拠点配置最適化システム、サービス拠点配置プ最適化ログラムおよびサービス拠点配置最適化方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0119】
例えば、本発明について、数2に係る数理モデルを適用したサービス拠点配置最適化処理プログラムを実行する処理装置(コンピュータ等)は、ノイマン型コンピュータに限らず、例えば量子コンピュータなどの非ノイマン型コンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0120】
S1 サービス拠点配置最適化システムS1
101 情報入力部
102 導出部
102a 分担率導出部
102b 配置候補導出部
103 サービス拠点配置最適化部
104 表示部
105 通信部
200 外部装置
図1
図2
図3
図4
図5