(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161777
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】食品加工装置
(51)【国際特許分類】
A22C 7/00 20060101AFI20231031BHJP
B02C 18/36 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A22C7/00 A
B02C18/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072324
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】森本 浩人
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065DD16
4D065DD20
4D065DD26
4D065EB07
4D065ED13
4D065ED23
(57)【要約】
【課題】加工食品への漏出物の混入を少なくして商品価値を高めるとともに、この漏出物を容易に回収できるものとする。
【解決手段】多数の貫通孔を形成した板状部材の外周縁を、移送部材を囲繞する筒状部材の終端部内周縁に嵌合して配置し、移送部材の終端部に、板状部材の内側面に近接または接触する位置でこの移送部材と一体的に回転して食品を細断する切断刃を設け、移送部材によって板状部材の内側面に押し付けられる食品を、切断刃で細断しながら貫通孔を通過させて外部へ押し出す構成とし、筒状部材内の圧力によって板状部材の外周縁と筒状部材の終端部内周縁との嵌合部から漏出する漏出物を、貫通孔を通過して押し出される食品とは独立させて所定の位置から外部へ排出する排出通路を設けた食品加工装置とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔(28b)を形成した板状部材(28)の外周縁を、移送部材(8)を囲繞する筒状部材(22)の終端部内周縁に嵌合して配置し、前記移送部材(8)の終端部に、前記板状部材(28)の内側面に近接または接触する位置でこの移送部材(8)と一体的に回転して食品を細断する切断刃(27)を設け、前記移送部材(8)によって板状部材(28)の内側面に押し付けられる食品を、前記切断刃(27)で細断しながら貫通孔(28b)を通過させて外部へ押し出す構成とし、前記筒状部材(22)内の圧力によって前記板状部材(28)の外周縁と前記筒状部材(22)の終端部内周縁との嵌合部から漏出する漏出物を、前記貫通孔(28b)を通過して押し出される食品とは独立させて所定の位置から外部へ排出する排出通路(T,30,31)を設けた食品加工装置。
【請求項2】
前記筒状部材(22)に対する板状部材(28)の位置を固定する環状ないし筒状の固定部材(29)を、前記筒状部材(22)の終端部外周面に嵌合させて取り付け、前記筒状部材(22)の終端と、この終端に対向する固定部材(29)の内側面との間に空間部(30)を形成し、前記板状部材(28)の外周縁と筒状部材(22)の終端部内周縁との嵌合部から漏出する漏出物が、前記空間部(30)を介して外部へ排出される構成とした請求項1に記載の食品加工装置。
【請求項3】
前記筒状部材(22)の周壁の肉厚内に排出路(31)を形成し、この排出路(31)の始端部を前記空間部(30)に連通するとともに、この排出路(31)の終端部を前記筒状部材(22)の外周面に開口した請求項2に記載の食品加工装置。
【請求項4】
前記筒状部材(22)の周壁における前記板状部材(28)の内側面に臨む部位に主排出口(33)を開口し、前記板状部材(28)に形成された貫通孔(28b)を通過しない食品の一部が、前記切断刃(27)の回転によって前記板状部材(28)の外周側へ移動し、前記主排出口(33)を通過して外部へ排出される構成とした請求項3に記載の食品加工装置。
【請求項5】
前記主排出口(33)に主排出路(34)の始端部を連通し、この主排出路(34)の途中部位に、前記排出路(31)の終端部を連通した請求項4に記載の食品加工装置。
【請求項6】
前記主排出路(34)に弁部材(35)を設け、前記主排出路(34)における前記弁部材(35)を設けた部位よりも下流側の部位に、前記排出路(31)の終端部を連通した請求項5に記載の食品加工装置。
【請求項7】
前記弁部材(35)を作動させるアクチュエータ(38)を設け、このアクチュエータ(38)を設定時間間隔で作動させる構成とした請求項6に記載の食品加工装置。
【請求項8】
前記弁部材(35)に、前記主排出路(34)内の下流側へ向けて空気を吹き込むノズル(37)を設け、前記アクチュエータ(38)の作動と同期してこのノズル(37)から空気を噴出する構成とした請求項7に記載の食品加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生肉などの食品を加工する食品加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の食品加工装置として、例えば塊状の生肉を挽肉に加工するチョッパーまたはグラインダーと呼ばれる食肉加工装置(挽肉製造装置)がある。
この食肉加工装置は、例えばフレーカーと呼ばれる装置で破砕された冷凍生肉を収容する容器と、この容器の底部に配置された移送螺旋と、容器から外部に突出して設けられ、移送螺旋の移送終端側の部位を囲繞する筒状部材とを備えている。
そして、
図1に示すように、この筒状部材aの終端部内周縁に、多数の貫通孔bを形成した板状部材cの外周縁を嵌合し、移送螺旋dの終端部には、この移送螺旋dと一体回転する切断刃eを設けている。
【0003】
これにより、移送螺旋dを回転駆動すると、容器内の生肉が移送螺旋dに取り込まれて移送され、筒状部材aの内部に圧送される。
圧送された生肉は、板状部材cの内側面に押し付けられ、切断刃eで細断されながら板状部材cの貫通孔bから外部へ線状に押し出される。
このようにして食肉加工装置から押し出された線状の挽肉は、以後、適宜の長さに分割されて食品トレーに盛り付けられ、ラッピングされて商品となる。
【0004】
このような従来の技術として、例えば特許文献1には、多数の貫通孔を形成した板状部材の外周縁を、移送部材を囲繞する筒状部材の終端部内周縁に嵌合し、移送部材の終端部に、この移送部材と一体的に回転して食品を細断する切断刃を設け、移送部材によって板状部材の内側面に押し付けられる食品を、切断刃で細断しながら貫通孔を通過させて外部へ押し出す食肉加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工対象の食品が、上述の冷凍生肉のような低温の食品である場合、板状部材cの貫通孔bから押し出すときの抵抗が大きくなるため、筒状部材aの内部の圧力が高くなる。
図1に太い破線で示すように、この圧力によって、板状部材cの外周縁と筒状部材aの内周縁との嵌合部fから肉汁や脂肪分などの漏出物hが薄膜状となって漏出し、この漏出物hが貫通孔bから押し出された挽肉に混入してしまい、この挽肉の商品価値が低下する問題があった。
【0007】
このような板状部材cの外周縁と筒状部材aの内周縁との嵌合部fから漏出する漏出物hの混入の問題は、この嵌合部fのような僅かな隙間しかない構造であっても発生する。
また、冷凍生肉以外の食品を加工する食品加工装置でも、同様の問題が生じうる。
また、上述の嵌合部fは環状を呈し、この嵌合部fのあらゆる位置から漏出物hが漏出しうるため、この漏出物の適所への廃棄または回収が困難となる。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決し、貫通孔から押し出された加工食品に、加工時に発生した漏出物が混入されにくいものとして加工食品の商品価値を高めることができ、この漏出物の廃棄や回収も行い易い食品加工装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、多数の貫通孔(28b)を形成した板状部材(28)の外周縁を、移送部材(8)を囲繞する筒状部材(22)の終端部内周縁に嵌合して配置し、前記移送部材(8)の終端部に、前記板状部材(28)の内側面に近接または接触する位置でこの移送部材(8)と一体的に回転して食品を細断する切断刃(27)を設け、前記移送部材(8)によって板状部材(28)の内側面に押し付けられる食品を、前記切断刃(27)で細断しながら貫通孔(28b)を通過させて外部へ押し出す構成とし、前記筒状部材(22)内の圧力によって前記板状部材(28)の外周縁と前記筒状部材(22)の終端部内周縁との嵌合部から漏出する漏出物を、前記貫通孔(28b)を通過して押し出される食品とは独立させて所定の位置から外部へ排出する排出通路(T,30,31)を設けた食品加工装置とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記筒状部材(22)に対する板状部材(28)の位置を固定する環状ないし筒状の固定部材(29)を、前記筒状部材(22)の終端部外周面に嵌合させて取り付け、前記筒状部材(22)の終端と、この終端に対向する固定部材(29)の内側面との間に空間部(30)を形成し、前記板状部材(28)の外周縁と筒状部材(22)の終端部内周縁との嵌合部から漏出する漏出物が、前記空間部(30)を介して外部へ排出される構成とした請求項1に記載の食品加工装置とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記筒状部材(22)の周壁の肉厚内に排出路(31)を形成し、この排出路(31)の始端部を前記空間部(30)に連通するとともに、この排出路(31)の終端部を前記筒状部材(22)の外周面に開口した請求項2に記載の食品加工装置とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記筒状部材(22)の周壁における前記板状部材(28)の内側面に臨む部位に主排出口(33)を開口し、前記板状部材(28)に形成された貫通孔(28b)を通過しない食品の一部が、前記切断刃(27)の回転によって前記板状部材(28)の外周側へ移動し、前記主排出口(33)を通過して外部へ排出される構成とした請求項3に記載の食品加工装置とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記主排出口(33)に主排出路(34)の始端部を連通し、この主排出路(34)の途中部位に、前記排出路(31)の終端部を連通した請求項4に記載の食品加工装置とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記主排出路(34)に弁部材(35)を設け、前記主排出路(34)における前記弁部材(35)を設けた部位よりも下流側の部位に、前記排出路(31)の終端部を連通した請求項5に記載の食品加工装置とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記弁部材(35)を作動させるアクチュエータ(38)を設け、このアクチュエータ(38)を設定時間間隔で作動させる構成とした請求項6に記載の食品加工装置とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記弁部材(35)に、前記主排出路(34)内の下流側へ向けて空気を吹き込むノズル(37)を設け、前記アクチュエータ(38)の作動と同期してこのノズル(37)から空気を噴出する構成とした請求項7に記載の食品加工装置とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食品加工時に発生する漏出物が混入されにくいものとして加工食品の商品価値を高め、また、この漏出物の廃棄や回収も行い易い食品加工装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の食品加工装置における要部を一部断面して示す説明用の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態における食品加工装置の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態における食品加工装置の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態における食品加工装置の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態における食品加工装置の内部説明用の側面図である。
【
図6】本発明の実施形態における要部を一部断面および展開して示す説明用の側面図である。
【
図8】本発明の実施形態における弁部材を一部断面して示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態における要部の説明図である。
【
図10】本発明の別実施形態における要部を一部断面および展開して示す説明用の側面図である。
【
図11】本発明の別実施形態における要部の説明図である。
【
図12】参考例における要部を一部断面して示す説明用の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態においては、食品加工装置の一実施例として、食肉加工装置である挽肉製造装置を例示し、以下に説明する。
なお、この挽肉製造装置における原料肉の移送方向(ないし挽肉の押出し方向)を基準として、その上流側を「後側」、下流側を「前側」と定義し、下流側に向いた姿勢での左手側を「左側」、右手側を「右側」と定義して説明する。
【0020】
(挽肉製造装置の全体構成)
図2~
図5に示すように、挽肉製造装置(本発明の「食品加工装置」)1は、支持脚2によって支持された本体部3の上部に槽部4を設け、この槽部4の下側から後側にわたる部位に伝動部5を設け、槽部4の前側に押し出し部6を設け、本体部3の前側上部に操作部Sを設けて構成する。
【0021】
(槽部)
槽部4は、側面視で矩形、正面視および背面視で逆三角近似形状のステンレス製の容器7に対して、その底部に前後方向の軸心周りに回転する移送螺旋(請求項の「移送部材」)8を配置して構成する。
この移送螺旋8は、容器7の前壁底部に形成した開口部4aから後方へ挿し込み、この移送螺旋8の回転軸となる螺旋軸8aの後端部を、容器7の後壁底部に形成した貫通穴から後方へ突出させる。
この移送螺旋8の螺旋軸8aの後端部の軸受構造については、伝動部5の構造説明にて詳述する。
【0022】
そして、容器7の上部に形成された開放部9の右側縁部に、矩形に枠組みされた防護部材10の右側端部をヒンジ11で上下回動自在に取り付ける。
なお、この防護部材10には、前後方向の多数の棒状部材10aを、人の手が入らない程度の間隔をおいて、左右方向に並列させて設ける。
また、この防護部材10を上昇回動する方向へ付勢するガススプリング12を、本体部3上面の左側端部と防護部材10の後部にわたって取り付ける。
これにより、防護部材10を下方回動させて開放部9を覆う状態から、防護部材10を上昇回動させて起立させると、この起立状態(開放状態)がガススプリング12によって保持される。
【0023】
また、
図5に示すように、移送螺旋8の上側において、容器7の後壁から前壁にわたって撹拌部材13の回転軸13aを渡架し、この回転軸13aの前後の軸端を、容器7の前壁と後壁に設けた軸受14,14によって回転自在に支持する。
この撹拌部材13は、回転軸13aの後部に、3枚の撹拌板13kの基部を軸心方向に位相を変えて溶接固定し、回転軸13aの前部には螺旋板13sを溶接固定して形成する。
【0024】
(伝動部)
上述の本体部3における槽部4の下方空間(容器7の下方空間)に、電動モーター15を設置する。
また、容器7の後壁の下部後側に入力軸16を配置し、この入力軸16の前後2箇所を前部軸受17と後部軸受18によって回転自在に支持する。
なお、前部軸受17は、螺旋軸8aの軸心方向に掛かる荷重(スラスト荷重)を受ける機能を有するものである。
すなわち、螺旋軸8aを回転駆動して原料肉を挽肉として押し出す際に、この反力が螺旋軸8aを後方へ押すように作用するが、この反力を前部軸受17によって適切に受けることができる。
【0025】
また、この前部軸受17を内蔵した軸受ケース17aと後部軸受18を本体部3側の支持ステー19に固定し、軸受ケース17aの前端部を容器7の後壁底部に形成した貫通穴の内周部に嵌合させる。
なお、入力軸16の前端部に、角穴を有する嵌合部16aを設け、移送螺旋8を開口部4aから後方へ挿し込んだときに、螺旋軸8aの後端部に形成した角軸部が、嵌合部16aの角穴に嵌合して一体回転するようになる。
【0026】
しかして、上述の電動モーター15の出力軸15aに取り付けた2連の出力スプロケット15bと、入力軸16の後端部に取り付けた2連の入力スプロケット16bにわたって、2連の無端伝動チェーン20を巻き掛ける。
また、上述の撹拌部材13の回転軸13aの後端に角軸部を形成する一方、容器7の後壁側に軸受される回転筒軸21の前端部に角穴を形成する。
なお、回転筒軸21は、容器7の後壁の後面側に固定した伝動ケース24内の軸受14によって回転自在に支持する。
【0027】
そして、回転軸13aの後端の角軸部を回転筒軸21の前端部の角穴に嵌合させて、両軸13a,21が一体回転するように構成する。
上述の伝動ケース24内において、回転筒軸21の後端部に固定した歯車(図示省略)に、電動モーター25の出力軸に固定した歯車(図示省略)を噛み合わせる。
なお、回転筒軸21の軸心と電動モーター25の出力軸の軸心は、直交する方向に配置している。
この電動モーター25の駆動によって、撹拌部材13が回転する。
【0028】
(押し出し部)
しかして、
図5に示すように、上述の押し出し部6は、容器7の前壁の前面側に、シリンダー(請求項の「筒状部材」)22の基部(後端部)22Kをボルト23で締結固定する。
この基部22Kは、その内部空間の断面積が後側ほど大きくなるように拡開した形状とし、側断面視において、その上壁に前下がり傾斜した傾斜面22Sを形成する。
基部22Kの後端部に開口する内部空間が、容器7の前壁底部に形成された開口部4aに連通する。
【0029】
また、このシリンダー22における基部22Kから連続して前方へ延在する部位は、均一な内径を有した円筒部22Cとし、この円筒部22Cの前端部に、段差部22Fを形成することで内径を拡大した嵌合支持部22Dを形成する。
なお、
図6、
図9に示すように、円筒部22Cの内周面には、前後方向に螺旋状に延在する6条のリブ22Eを形成する。
【0030】
一方、
図5、
図6に示すように、上述の移送螺旋8は、その後端部(移送方向上流側の端部)から前端部(移送方向下流側の端部)にかけて螺旋のピッチを徐々に小さく形成する。
この移送螺旋8を容器7の底部に設置した状態で、この移送螺旋8の前端部は容器7の開口部4aから前方へ突出した状態となり、この突出部分がシリンダー22によって囲繞される。
【0031】
図6に示すように、移送螺旋8の螺旋軸8aの前端部には、軸心方向に沿う丸穴を穿設し、この丸穴に支持ピン26の円柱状の基部を嵌合させる。
この丸穴の底面と支持ピン26の後端面との間に圧縮スプリングを介装してもよい。
【0032】
そして、支持ピン26の前後方向中間部に、四つの刃縁を備えた回転刃(請求項の「切断刃」)27の中心孔を嵌合し、この回転刃27を螺旋軸8aの前端部に形成した凹溝に係合させる。
これによって、螺旋軸8aと回転刃27が一体回転するようになり、この回転刃27が、後述する多孔板の内側面に近接または接触する位置で回転する。
【0033】
また、上述の円筒部22Cの前端部に形成した嵌合支持部22Dの内周面(請求項の「筒状部材の終端部内周縁」)に、多孔板28の外周面(請求項の「板状部材の外周縁」)を嵌合させ、キー28kによって廻り止めを施す。
そして、支持ピン26の前部を、この多孔板28の中心部に形成したボス部28aに挿通して回転自在に支持する。
【0034】
嵌合支持部22Dに対する多孔板28の嵌合位置(深さ)は、円筒部22Cの内周面に形成した段差部22Fとの当接によって規制される。
なお、上述の多孔板28は、多数の貫通孔28bを形成した底面部と、この底面部の外周部から起立する周縁部から、浅い皿状(ないし短尺の円筒状)に形成する。
【0035】
このような嵌合・当接構造によって、多孔板28の外周面と嵌合支持部22Dの内周面との間、および、多孔板28の後面と段差部22Fの前面との間に、肉汁や脂肪分等の粒子の細かい異物が通過可能な隙間Tが形成される。
(請求項では、この隙間Tを通過する(隙間Tから漏出する)異物を「漏出物」と称する。)
そして、内周部に吐出口29dを開口し環状ないし筒状に形成した螺合部材(請求項の「固定部材」)29の内周面を、嵌合支持部22Dの前端部外周面に螺合させて固定する。
【0036】
すなわち、この螺合部材29の内周面に形成した雌螺子部と、嵌合支持部22Dの前端部外周面に形成した雄螺子部とから螺合部29Rを形成し、この螺合部29Rによって締結固定する。
これによって、螺合部材29の後側面の段差部に嵌合したカラー29cが、多孔板28の前端面に当接し、この多孔板28が嵌合支持部22D内に固定される。
【0037】
この状態で、シリンダー22における嵌合支持部22Dの前端面(請求項の「筒状部材の終端」)と、螺合部材29の後側面と、多孔板28の後端外周面と、螺合部材29の内周面とによって囲われた環状の空間(請求項の「空間部」)30が形成される。
しかして、上述の円筒部22Cの前端部に形成した嵌合支持部22Dの周壁の肉厚内に、前後方向の排出孔(請求項の「排出路」)31を穿設し、この排出孔31の前端部(請求項の「始端部」)を空間30に連通させる。
【0038】
以上により、上述の隙間Tと、空間30と、排出孔31とから、外部に連通する排出経路(請求項の「排出通路」)が形成される。
この排出経路を通過して外部へ排出される異物は、上述の多孔板28の貫通孔28bから押し出される挽肉とは分離(独立)した状態で外部へ排出される。
そして、
図6、
図7に示すように、排出孔31の後端部(請求項の「排出路の終端部」)を、シリンダー22における円筒部22Cの外周面に開口させて開口部31aを形成し、この開口部31aに排出管32の基部を連通させる。
【0039】
一方、シリンダー22の円筒部22Cの周壁における多孔板28の内側面に臨む部位(多孔板28の内側面の直前の部位)に、上述の開口部31aよりも大径の貫通孔(請求項の「主排出口」)33を開口させる。
この貫通孔33には、多孔板28の貫通孔28bを通過しない骨片等の比較的大きな異物が、回転刃27の回転によって外周方向(円筒部22Cの内周面側)へ押されることで流入する。
そして、この貫通孔33に排出筒(請求項の「主排出路」)34を連通させる。
【0040】
図6、
図9に示すように、排出筒34の中間部にはバルブ(請求項の「弁部材」)35を設ける。
図6、
図8に示すように、このバルブ35は、円筒状のバルブケース35a内に回転式のバルブスプール35bを内蔵し、このバルブスプール35bの一側部に形成した突起に係合する調節軸35cをブッシュ35dで軸受して構成する。
【0041】
また、調節軸35cにおけるバルブケース35aの一側からの突出端部に、調節アーム35eの基部を嵌合し、ナット35fで締結固定する。
また、バルブケース35aの他側端部にはキャップ35gを螺合して取り付け、このキャップ35gを外すことによって、バルブスプール35bをバルブケース35aから外部へ抜き出し、洗浄等のメンテナンスを行える構成とする。
【0042】
しかして、
図9に示すように、バルブケース35aの周壁の2箇所に流入孔35aaと流出孔35abを形成し、流入孔35aaに上述の貫通孔33側に連通した上流側の排出筒34を連通させる。
また、流出孔35abには下流側の排出筒34を連通させ、この排出筒34の終端部に排出案内管36の一端部を連通させ、この排出案内管36の他端部を、貯留用の容器等に連通させる。
【0043】
図8、
図9に示すように、上述のバルブスプール35bには、その回転軸心と直交する方向に大径の穴35hを形成し、この大径の穴35hの底部に連通する小径の孔35iを形成する。
なお、これら大径の穴35hと小径の孔35iは、いずれもバブルスプール35bの外周面に開口する。
【0044】
また、
図9に示すように、バルブケース35aの周壁の一部に、バルブスプール35bの小径の孔35iと連通しうる孔35jを形成し、この孔35jにノズル37の先端部を嵌合させて取り付ける。
また、上述の調節アーム35eの先端部に、エアシリンダー(請求項の「アクチュエータ」)38のロッドの先端部を軸着し、このエアシリンダー38の伸縮作動によって、バルブスプール35bが回転するように構成する。
【0045】
図9に示す状態では、バルブスプール35bの大径の穴35hが流出孔35abを介して下流側の排出筒34に連通し、ノズル37から噴出された空気が、バルブスプール35bの小径の孔35iから大径の穴35hへ吹き込まれ、この大径の穴35hに溜まっていた原料肉中の骨片等の異物が排出筒34から排出案内管36を通過して排出される。
また、上述の排出管32と下流側の排出筒34の途中部位に開口した合流口39とを、連通管40で連通させる。
【0046】
これによって、排出孔31から排出される脂肪分や肉汁等の異物が、連通管40を介して下流側の排出筒34内に流入し、この排出筒34内を通過する骨片等の異物と共に排出案内管36を通過して排出される。
【0047】
なお、上述のエアシリンダー38は、制御部(図示省略)からの出力によって所定時間間隔で伸縮作動し、このエアシリンダー38が短縮作動すると、
図9に示す状態に切り替わって異物の排出が行われる。
このエアシリンダー38の短縮作動とノズル37からの空気の噴出とは同期して行われるように構成している。
【0048】
この異物の排出は短時間で終了し、この後、エアシリンダー38が伸長作動し、バルブスプール35bの回転によって大径の穴35hが上流側の排出筒34に連通した状態となり、貫通孔33から排出された異物がこの大径の穴35h内に貯留されるようになる。
なお、この状態では、貫通孔33から排出案内管36に至る排出筒34の経路は、その途中の部位で遮断されている。
【0049】
(作用)
上述した実施形態による作用を説明する。
まず、防護部材10を開放操作し、冷凍状態の原料肉(フレーカー等によって破砕されたもの)を開放部9から容器7内に投入して堆積させる。
そして、防護部材10を閉鎖操作した後に、操作部Sに設けた起動スイッチ(図示省略)を入り操作すると、電動モーター15および電動モーター25が駆動を開始する。
これによって、撹拌部材13と移送螺旋8が回転駆動し、原料肉が撹拌部材13の撹拌板13k等で撹拌されながら、下側にある移送螺旋8に取り込まれて前方へ移送される。
【0050】
容器7の前壁まで至った原料肉は、開口部4aを経て傾斜面22Sによって案内されながらシリンダー22の円筒部22Cの内部へ押し込まれる。
円筒部22Cの内部へ押し込まれた原料肉は、移送螺旋8の移送作用によって多孔板28の内側面に押し付けられ、移送螺旋8と一体回転する切断刃27によって細断されながら多孔板28の貫通孔28bから外部へ線状に押し出される。
このようにして押し出された挽肉は、螺合部材29に形成された吐出口29dを通過してコンベア上に移載される。
【0051】
この押し出しの際に、貫通孔28bでの押し出し抵抗によって円筒部22C内の原料肉の圧力が過剰に高まる。
この圧力によって、原料肉中の肉汁や脂肪分等の粒子の細かい異物が、多孔板28の後面と段差部22Fの前面との間の隙間Tを通過し、多孔板28の外周面と嵌合支持部22Dの内周面との間の隙間Tを通過して環状の空間30内に流入する。
【0052】
図9に示すように、排出孔31、開口部31a、排出管32を嵌合支持部22Dの下側周部に設けているため、空間30内の異物は円滑に排出される。
なお、排出孔31、開口部31a、排出管32を嵌合支持部22Dの上側周部に設けた場合、空間30内に流入した異物は、その体積が空間30の容積を超えると排出孔31内へ押し出され、開口部31aから排出管32内へ排出される。
【0053】
排出管32から排出された異物は、連通管40を経て合流口39から排出筒34内に流入し、この排出筒34内を通過する骨片等の異物と共に排出案内管36を通過して排出される。
【0054】
(別実施形態)
一方、
図10、
図11に示す別実施形態において、押し出し部6の基本構造については、上述の実施形態のものと同一であるため、説明を省略する。(各部材に同一の符号を付している。)
この別実施形態は、上述の実施形態における排出孔31の終端を、バルブ35よりも上流側の排出筒34に合流させる構成としたものである。
これによって、連通管40等を設ける必要がなくなり、構造が簡素化される。
【0055】
(参考例)
図12に示す参考例においても、押し出し部6の基本構造については上述の実施形態のものと同一であるため説明を省略する。(各部材に同一の符号を付している。)
この参考例は、上述の実施形態における排出孔31を設けず、押し出し部6の前部下方に排出案内板41を後下がり方向へ傾斜させて設けたものである。
これによって、環状の空間30から螺合部29Rを通過して外部へ漏出し落下する異物を、排出案内板41上に受けて所定の位置へ排出させ、多孔板28の貫通孔28bから押し出された挽肉への混入を防止することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 挽肉製造装置(食品加工装置)
8 移送螺旋(移送部材)
22 シリンダー(筒状部材)
27 回転刃(切断刃)
28 多孔板(板状部材)
28b 貫通孔
29 螺合部材(固定部材)
30 空間(空間部)
31 排出孔(排出路)
33 貫通孔(主排出口)
34 排出筒(主排出路)
35 バルブ(弁部材)
38 エアシリンダー(アクチュエータ)