(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161781
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20231031BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20231031BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F1/12 Q
E04H9/02 341C
E04H9/02 341E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072331
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】車 創太
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 朋典
(72)【発明者】
【氏名】陶山 春菜
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 庸介
(72)【発明者】
【氏名】飯野 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 純平
(72)【発明者】
【氏名】塩出 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松永 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】奥出 久人
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀人
(72)【発明者】
【氏名】田垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AB03
2E139AC19
2E139AC41
2E139AC61
2E139BB02
2E139BB09
2E139BB26
2E139BB49
2E139BC04
2E139BC13
2E139BD18
2E139BD33
3J048AD07
3J048BC02
3J048BF04
3J048CB18
3J048CB23
3J048EA38
3J059AA01
3J059AD02
3J059BA01
3J059BB03
3J059BD01
3J059CA01
3J059DA17
(57)【要約】
【課題】制振対象構造物と制振装置の錘部との振動数のズレを容易に解消できるようにして、地震や風などの影響による制振対象構造物の振動を好適に抑制できるようにする。
【解決手段】錘部11と、錘部11を上下方向に案内する案内部材12と、錘部11を上下方向に移動可能に支持する上下のコイルバネ13,14とが備えられた制振装置10において、案内部材12は、錘部11の中央部位を貫通する状態でコイルバネ13,14の内部に配置された棒状部材で構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘部と、当該錘部を上下方向に案内する案内部材と、前記錘部を上下方向に移動可能に支持する上下のコイルバネとが備えられた制振装置において、
前記案内部材は、前記錘部の中央部位を貫通する状態で前記コイルバネの内部に配置された棒状部材で構成されている制振装置。
【請求項2】
前記コイルバネは、前記錘部を上下方向から挟む状態で支持する圧縮コイルバネであり、
前記圧縮コイルバネの座屈を防止する座屈防止手段が備えられている請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記座屈防止手段は、前記圧縮コイルバネをその上下中間部で上側コイルバネと下側コイルバネとに二分割した上下二分割構造とし、前記上側コイルバネと前記下側コイルバネとの分割端を支持する状態で前記案内部材に上下移動自在に外嵌されるリング状の支持部材を備えることで構成されている請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記座屈防止手段は、前記圧縮コイルバネの上下中間部を上下方向に案内可能に支持する状態で前記案内部材に外嵌されたリング状の支持部材で構成されている請求項2に記載の制振装置。
【請求項5】
前記案内部材は、屋根架構の上弦材と下弦材とにわたる束材であり、
上側の前記圧縮コイルバネは、所定の圧縮状態で前記上弦材と前記錘部との間に位置するように前記束材に外嵌され、下側の前記圧縮コイルバネは、所定の圧縮状態で前記下弦材と前記錘部との間に位置するように前記束材に外嵌されている請求項3又は4に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錘部と、当該錘部を上下方向に案内する案内部材と、前記錘部を上下方向に移動可能に支持する上下のコイルバネとが備えられた制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、例えば、ドーム屋根(制振対象構造物)におけるトラスばりの上下弦材間にほぼ鉛直に取り付けられるパイプ状の束材の内部に、その上下にわたるコイルばねと、コイルばねのほぼ中央部に取り付けられる錘部としての付加重量とを備え、付加重量をドーム屋根の振動に同調させることで、地震や風などの影響によるドーム屋根の振動を抑制するように構成された制振装置などがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、制振対象構造物(ドーム屋根)の振動に同調させる錘部を上下のコイルばねとともに束材の内部に備えることから、制振対象構造物と錘部の振動数にズレが生じている場合には、錘部の重量調整を行うために錘部を束材の内部から取り出す必要がある。そのため、制振対象構造物と錘部との振動数のズレを解消する上においてかなりの手間を要することになり、制振装置にて制振対象構造物の振動を好適に抑制することが難しくなる。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、制振対象構造物と制振装置の錘部との振動数のズレを容易に解消できるようにして、地震や風などの影響による制振対象構造物の振動を好適に抑制できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、錘部と、当該錘部を上下方向に案内する案内部材と、前記錘部を上下方向に移動可能に支持する上下のコイルバネとが備えられた制振装置において、
前記案内部材は、前記錘部の中央部位を貫通する状態で前記コイルバネの内部に配置された棒状部材で構成されている点にある。
【0007】
本構成によると、制振対象構造物の振動に同調させる錘部を外部に露出させた状態で備えることができ、これにより、制振対象構造物と錘部の振動数にズレが生じている場合には、錘部の重量調整を外部から容易に行うことができ、この重量調整により、制振対象構造物と錘部との振動数のズレを容易に解消することができる。
その結果、制振装置の錘部を制振対象構造物の振動に容易に同調させることができ、地震や風などの影響による制振対象構造物の振動を好適に抑制することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記コイルバネは、前記錘部を上下方向から挟む状態で支持する圧縮コイルバネであり、
前記圧縮コイルバネの座屈を防止する座屈防止手段が備えられている点にある。
【0009】
本構成によると、コイルバネが圧縮コイルバネであることにより、引張コイルバネのように端部を錘部などに連結する必要がないことから、制振装置の設置を容易にすることができるとともに、錘部に対するコイルバネの連結箇所が錘部の重量調整に支障を来す虞を回避することができる。
又、コイルバネが圧縮コイルバネであることで生じる虞あるコイルバネの座屈は座屈防止手段にて防止することができる。
その結果、制振装置の設置を容易にしながら、制振装置の錘部を制振対象構造物の振動に容易に同調させることができ、地震や風などの影響による制振対象構造物の振動をより好適に抑制することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記座屈防止手段は、前記圧縮コイルバネをその上下中間部で上側コイルバネと下側コイルバネとに二分割した上下二分割構造とし、前記上側コイルバネと前記下側コイルバネとの分割端を支持する状態で前記案内部材に上下移動自在に外嵌されるリング状の支持部材を備えることで構成されている点にある。
【0011】
本構成によると、上下の各圧縮コイルバネを上側コイルバネと下側コイルバネとに二分割した上下二分割構造とすることで、各圧縮コイルバネとしての全長を変えることなく、コイルバネ単体での長さを短くすることができ、これにより、適正なバネ定数を確保しながら、各圧縮コイルバネの座屈をより好適に防止することができる。
そして、各圧縮コイルバネを前述した上下二分割構造としながらも、それらの分割端が案内部材に上下移動自在に外嵌されたリング状の支持部材で支持されることにより、上側コイルバネと下側コイルバネとを錘部の上下動に応じて好適に伸縮させることができる。
しかも、座屈防止手段は、前述したように各圧縮コイルバネを上下二分割構造とし、それらの分割端をリング状の支持部材で支持する構成であることから、上下の圧縮コイルバネにて上下方向から挟み込まれた状態で支持されている錘部に対する外部からの重量調整が座屈防止手段にて阻害される虞を回避することができる。
その結果、各圧縮コイルバネの座屈をより好適に防止しながら、制振装置の錘部を制振対象構造物の振動に容易かつ適正に同調させることができ、地震や風などの影響による制振対象構造物の振動を好適に抑制することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記座屈防止手段は、前記圧縮コイルバネの上下中間部を上下方向に案内可能に支持する状態で前記案内部材に外嵌されたリング状の支持部材で構成されている点にある。
【0013】
本構成によると、リング状の支持部材により上下の各圧縮コイルバネの支点間距離を短くすることができ、これにより、上下の各圧縮コイルバネを上下に分割することによる構成部品の増加などを招くことなく、各圧縮コイルバネの座屈を防止することができる。
そして、リング状の支持部材は、各圧縮コイルバネの上下中間部を上下方向に案内可能に支持するものであることから、各圧縮コイルバネを錘部の上下動に応じて好適に伸縮させることができる。
しかも、座屈防止手段は、各圧縮コイルバネの上下中間部を案内部材に外嵌されたリング状の支持部材で支持する構成であることから、上下の圧縮コイルバネにて上下方向から挟み込まれた状態で支持されている錘部に対する外部からの重量調整が座屈防止手段にて阻害される虞を回避することができる。
その結果、構成部品の増加などを招くことなく各圧縮コイルバネの座屈を好適に防止しながら、制振装置の錘部を制振対象構造物の振動に容易かつ適正に同調させることができ、地震や風などの影響による制振対象構造物の振動を好適に抑制することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記案内部材は、屋根架構の上弦材と下弦材とにわたる束材であり、
上側の前記圧縮コイルバネは、所定の圧縮状態で前記上弦材と前記錘部との間に位置するように前記束材に外嵌され、下側の前記圧縮コイルバネは、所定の圧縮状態で前記下弦材と前記錘部との間に位置するように前記束材に外嵌されている点にある。
【0015】
本構成によると、屋根架構の束材が制振装置の案内部材に兼用されることで制振装置としての構成の簡素化を図りながら、屋根架構の振動に応じて錘部を束材に沿って鉛直方向に案内することができ、その結果、地震や風などの影響による屋根架構の鉛直振動を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】制振装置を備えた屋根架構などの構成を示す要部の側面図
【
図2】第1実施形態での制振装置の構成を示す要部の垂直断面図
【
図4】第2実施形態での制振装置の構成を示す要部の垂直断面図
【
図5】第3実施形態での制振装置の構成を示す要部の垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る制振装置の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る制振装置10は、スタジアムやアリーナなどに設置された大規模な屋根架構30に備えることで、当該屋根架構30の鉛直振動を抑制するように構成されている。
【0019】
屋根架構30は、片持ち梁形式の鉄骨造で、フィールド(図示せず)を囲むように設置された下部構造体40の上部に備えられたスタンド41などの上方を覆うように備えられている。
尚、屋根架構30は、片持ち梁形式のものに限らず、例えばアーチ形式のものなどであってもよい。
【0020】
屋根架構30には、複数のトラス梁31が大梁として備えられている。各トラス梁31は、上弦材32と下弦材33とを、それらにわたる複数の斜材34と束材35とで連結して構成されている。上弦材32と下弦材33と斜材34と束材35のそれぞれには円形鋼管が採用されている。
尚、屋根架構30の大梁としては、上弦材32と下弦材33と斜材34と束材35のそれぞれに、円形鋼管以外の例えば角形鋼管やH形鋼などが採用されたものであってもよい。
【0021】
図2~3に示すように、制振装置10は、錘部11と、当該錘部11を上下方向に案内する案内部材12と、錘部11を上下方向に移動可能に支持する上下のコイルバネ13,14とが備えられ、錘部11が屋根架構30の固有振動数と同調する固有振動数を有するように重量調整されることで、地震や風の影響による屋根架構30の鉛直振動を抑制するTMD(チューンド・マス・ダンパー)として機能するように構成されている。
【0022】
制振装置10は、屋根架構30の周方向に所定間隔を置いて配置された複数のトラス梁31のうちの所定のトラス梁31に備えられている。制振装置10の案内部材12には、屋根架構30の上弦材32と下弦材33とにわたる円形鋼管で構成された束材35が兼用されており、束材35は、錘部11の中央部位を貫通する状態で各コイルバネ13,14の内部に配置されている。錘部11の内周部には、束材35に対する錘部11の上下摺動を円滑にする摺動部材15が備えられている。
尚、案内部材12として、円形鋼管やH形鋼などの棒状部材で構成された専用部材を備えるようにしてもよい。摺動部材15には、スライドベアリングやスライドブッシュなどを採用することができる。
【0023】
上下の各コイルバネ13,14には、錘部11を上下方向から挟む状態で支持する圧縮コイルバネが採用されており、上側の圧縮コイルバネ13は、所定の圧縮状態で上弦材32と錘部11との間に位置するように束材35に外嵌され、下側の圧縮コイルバネ14は、所定の圧縮状態で下弦材33と錘部11との間に位置するように束材35に外嵌されている。
【0024】
制振装置10には、各圧縮コイルバネ13,14の座屈を防止する座屈防止手段16が備えられている。各座屈防止手段16は、上下の各圧縮コイルバネ13,14をそれらの上下中間部で上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとに二等分した上下二分割構造とし、上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとの分割端を支持する状態で束材35に上下移動自在に外嵌されるリング状の支持部材17を備えることで構成されている。各支持部材17は、それらの外周部が上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとで挟持保持されることで、上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとの分割端を支持する状態になっている。
尚、各圧縮コイルバネ13,14は、上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとに二等分されるものに限らず、異なる長さで二分割されるものであってもよい。
【0025】
上記の通り、本発明に係る制振装置10においては、その錘部11を案内する案内部材12に屋根架構30の束材35が兼用されることで、制振装置10としての構成の簡素化を図りながら、屋根架構30の振動に応じて錘部11を鉛直方向に案内することができる。
【0026】
そして、案内部材12を兼ねる束材35が、錘部11の中央部位を貫通する状態で上下の圧縮コイルバネ13,14の内部に配置されていることにより、屋根架構30の揺れに同調させる錘部11を外部に露出させた状態で備えることができ、これにより、屋根架構30と錘部11の振動数にズレが生じている場合には、錘部11の重量調整を外部から容易に行うことができ、この重量調整により、屋根架構30と錘部11との振動数のズレを容易に解消することができる。
【0027】
更に、制振装置10のコイルバネとして圧縮コイルバネ13,14が採用されていることにより、引張コイルバネのように端部を錘部11などに連結する必要がないことから、制振装置10の設置を容易にすることができるとともに、引張コイルバネとの連結箇所が錘部11の重量調整に支障を来す虞を回避することができる。
【0028】
又、圧縮コイルバネ13,14を採用することで生じる虞ある圧縮コイルバネ13,14の座屈は、制振装置10に備えられた座屈防止手段16にて防止することができる。
【0029】
そして、座屈防止手段16は、上下の各圧縮コイルバネ13,14をそれらの上下中間部で上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとに二等分した上下二分割構造であることから、各圧縮コイルバネ13,14としての全長を変えることなく、コイルバネ単体での長さを短くすることができ、これにより、適正なバネ定数を確保しながら、各圧縮コイルバネ13,14の座屈を好適に防止することができる。
【0030】
又、座屈防止手段16は、各圧縮コイルバネ13,14を前述した上下二分割構造としながらも、それらの分割端を支持する状態で束材35に上下移動自在に外嵌されるリング状の支持部材17を備える構成であることから、上側コイルバネ13A,14Aと下側コイルバネ13B,14Bとを錘部11の上下動に応じて好適に伸縮させることができる。
【0031】
しかも、座屈防止手段16は、前述したように各圧縮コイルバネ13,14を上下二分割構造とし、それらの分割端をリング状の支持部材17で支持する構成であることから、上下の圧縮コイルバネ13,14にて上下方向から挟み込まれた状態で支持されている錘部11に対する外部からの重量調整が座屈防止手段16にて阻害される虞を回避することができる。
【0032】
つまり、制振装置10としての構成の簡素化を図りつつ、制振装置10の設置を容易にし、かつ、各圧縮コイルバネ13,14の座屈を好適に防止しながら、制振装置10の錘部11を屋根架構30の振動に容易かつ適正に同調させることができ、その結果、地震や風などの影響による屋根架構30の鉛直振動を好適に抑制することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る制振装置の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、この第2実施形態で例示する制振装置は、上記の第1実施形態で例示した制振装置とは座屈防止手段の構成が異なるだけであることから、以下においては、座屈防止手段の構成についてのみ説明する。
【0034】
図4に示すように、第2実施形態で例示する制振装置10の座屈防止手段18は、各圧縮コイルバネ13,14の上下中間部を上下方向に案内可能に支持する状態で案内部材12を兼ねる束材35に外嵌されたリング状の支持部材19で構成されている。各リング部材19は、それらの外周部が圧縮コイルバネ13,14の内周部に摺接する状態で束材35に溶接接合などによって外嵌固定されている。
【0035】
従って、この座屈防止手段18によると、リング状の各支持部材19により上下の各圧縮コイルバネ13,14の支点間距離を短くすることができ、これにより、上下の各圧縮コイルバネ13,14を上下に分割することによる構成部品の増加などを招くことなく、各圧縮コイルバネ13,14の座屈を防止することができる。
【0036】
そして、各支持部材19は、各圧縮コイルバネ13,14の上下中間部を上下方向に案内可能に支持するものであることから、各圧縮コイルバネ13,14を錘部11の上下動に応じて好適に伸縮させることができる。
【0037】
しかも、各座屈防止手段18は、各圧縮コイルバネ13,14の上下中間部を束材35に外嵌固定されたリング状の支持部材19にて支持する構成であることから、上下の圧縮コイルバネ13,14にて上下方向から挟み込まれた状態で支持されている錘部11に対する外部からの重量調整が上下の座屈防止手段18にて阻害される虞を回避することができる。
【0038】
つまり、構成部品の増加などを招くことなく各圧縮コイルバネ13,14の座屈を防止しながら、制振装置10の錘部11を屋根架構30の振動に容易かつ適正に同調させることができ、その結果、地震や風などの影響による屋根架構30の鉛直振動を好適に抑制することができる。
【0039】
〔第3実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る制振装置の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、この第3実施形態で例示する制振装置は、上記の第1実施形態及び第2実施形態で例示した制振装置とは座屈防止手段の構成が異なるだけであることから、以下においては、座屈防止手段の構成についてのみ説明する。
【0040】
図5に示すように、第3実施形態で例示する制振装置10の座屈防止手段20は、各圧縮コイルバネ13,14の上下中間部を上下方向に案内可能に支持する状態で案内部材12を兼ねる束材35に外嵌されたリング状の支持部材21で構成されている。各リング部材21は、それらの外周部が圧縮コイルバネ13,14にクリップなどの固定具22を介して固定された状態で束材35に上下移動自在に外嵌されている。
【0041】
従って、この座屈防止手段20によると、リング状の各支持部材21により上下の各圧縮コイルバネ13,14の支点間距離を、各圧縮コイルバネ13,14の伸縮にかかわらず一定の比率で短くすることができ、これにより、上下の各圧縮コイルバネ13,14を上下に分割することによる構成部品の増加などを招くことなく、各圧縮コイルバネ13,14の座屈を好適に防止することができる。
【0042】
そして、各支持部材21は、各圧縮コイルバネ13,14の上下中間部を上下方向に案内可能に支持するものであることから、各圧縮コイルバネ13,14を錘部11の上下動に応じて好適に伸縮させることができる。
【0043】
しかも、各座屈防止手段20は、各圧縮コイルバネ13,14の上下中間部を束材35に上下移動自在に外嵌されたリング状の支持部材21にて支持する構成であることから、上下の圧縮コイルバネ13,14にて上下方向から挟み込まれた状態で支持されている錘部11に対する外部からの重量調整が上下の座屈防止手段20にて阻害される虞を回避することができる。
【0044】
つまり、構成部品の増加などを招くことなく各圧縮コイルバネ13,14の座屈を好適に防止しながら、制振装置10の錘部11を屋根架構30の振動に容易かつ適正に同調させることができ、その結果、地震や風などの影響による屋根架構30の鉛直振動を好適に抑制することができる。
【0045】
尚、上記の第3実施形態では、制振装置10の座屈防止手段20として、各リング部材21の外周部が固定具22を介して圧縮コイルバネ13,14に固定されるものを例示したが、これに限らず、各リング部材21の外周部が圧縮コイルバネ13,14にねじ込み可能な雄ネジ状に形成されたものであってもよく、又、各リング部材21の外周部が圧縮コイルバネ13,14にカシメ接合されるものであってもよい。
【0046】
〔別実施形態〕
上記の各実施形態においては、制振装置10として、上下のコイルバネ13,14に圧縮コイルバネが採用されたものを例示したが、これに限らず、上下のコイルバネ13,14に引張コイルバネが採用されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
11 錘部
12 案内部材
13 コイルバネ(圧縮コイルバネ)
13A 上側コイルバネ
13B 下側コイルバネ
14 コイルバネ(圧縮コイルバネ)
14A 上側コイルバネ
14B 下側コイルバネ
16 座屈防止手段(第1実施形態)
17 支持部材(第1実施形態)
18 座屈防止手段(第2実施形態)
19 支持部材(第2実施形態)
20 座屈防止手段(第3実施形態)
21 支持部材(第3実施形態)
30 屋根架構
32 上弦材
33 下弦材
35 束材