(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161786
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】防舷材用ゴム組成物および防舷材
(51)【国際特許分類】
E02B 3/26 20060101AFI20231031BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20231031BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20231031BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231031BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20231031BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E02B3/26 J
C08L9/06
C08L7/00
C08K3/04
C08L91/00
C08K3/06
E02B3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072341
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】辰亥 太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC012
4J002AC081
4J002AE053
4J002DA036
4J002DA047
4J002FD016
4J002FD147
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】引裂強さおよび耐ガソリン性に優れた防舷材を作製できるゴム組成物を提供する。
【解決手段】防舷材用ゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤、および、加硫促進剤を含有し、前記ゴム成分が、少なくとも天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含み、前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が50質量%~65質量%であり、前記オイルの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して15質量部~22質量部であり、前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して1.0質量部~2.2質量部であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤、および、加硫促進剤を含有し、前記ゴム成分は少なくとも天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含み、
前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が、50質量%~65質量%であり、
前記オイルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15質量部~22質量部であり、
前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1.0質量部~2.2質量部であることを特徴とする防舷材用ゴム組成物。
【請求項2】
前記硫黄系加硫剤中の硫黄および前記加硫促進剤の合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、2.6質量部~4.7質量部である請求項1に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が、55質量%~65質量%である請求項1または2に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部~90質量部である請求項1または2に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の防舷材用ゴム組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする防舷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防舷材の形成に使用する防舷材用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等は、接岸時や係留時に岸壁等に衝突するため、この衝突の衝撃を和らげるために、岸壁等には防舷材が設置されている。このような防舷材としては、構造が簡単であり、かつ、壊れにくいことから、全体をゴム架橋物によって一体形成したものが、広く普及している。
【0003】
このような防舷材に使用されるゴム組成物が種々提案されている。例えば、特許文献1、2には、架橋性のゴム成分にカーボンブラックなどの充填剤、ゴム成分を架橋させるための架橋成分、および各種添加剤等を配合して調製したゴム組成物(特許文献1、2参照)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-194155号公報
【特許文献2】特開2016-223199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されているような防舷材用ゴム組成物では、ゴム成分が天然ゴムを多く含むため、非極性油であるガソリンに対する耐性(耐ガソリン性)が十分でない。そのため、例えば、船舶等から漏れ出したり、漏れ出して岸壁付近の水面に漂ったりしているガソリンが防舷材に付着すると、防舷材が膨潤してゴム物性が低下し、緩衝性能が大幅に低下するという問題があった。
なお、ゴム組成物中の硫黄や加硫促進剤の配合量を増加し、架橋密度を向上させることで、耐ガソリン性を高めることができると考えられる。しかしながら、架橋密度を過度に高めると、防舷材の弾性が低下し、引裂強さが低下する傾向がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、引裂強さおよび耐ガソリン性に優れた防舷材を作製できるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明の防舷材用ゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤、および、加硫促進剤を含有し、前記ゴム成分が少なくとも天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含み、前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が50質量%~65質量%であり、前記オイルの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して15質量部~22質量部であり、前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して1.0質量部~2.2質量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防舷材用ゴム組成物を用いれば、引裂強さおよび耐ガソリン性に優れた防舷材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[防舷材用ゴム組成物]
本発明の防舷材用ゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤、および、加硫促進剤を含有する。
【0010】
<ゴム成分>
前記ゴム成分は、少なくとも天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含有する。天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムをある一定の範囲内で含有することで、得られる防舷材用ゴム組成物の引裂強度と耐ガソリン性が向上する。
【0011】
(天然ゴム)
天然ゴムは、シス-1,4-ポリイソプレンであり、シートゴム、ブロックゴムのいずれも使用できる。また、天然ゴムには、天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、マレイン酸変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムも含まれる。前記天然ゴムは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記天然ゴムとしては、技術的格付けゴム(Technical Specified Rubbers, TSR)、視覚的格付けゴム(Ribbed Smoked Sheet,RSS)が好ましく、特に、TSR-20、RSS#3が好ましい。
【0013】
前記ゴム成分中の天然ゴムの含有率は、35質量%以上が好ましく、より好ましくは37質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは48質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。前記天然ゴムの含有率が35質量%以上であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が向上し、50質量%以下であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上する。
【0014】
(スチレンブタジエンゴム(SBR))
前記SBRは、スチレンと1,3-ブタジエンとの共重合体であり、架橋性を有する種々のSBRが、いずれも使用可能である。前記SBRは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記SBRは、乳化重合法によって得られたもの、溶液重合法によって得られたものなどが挙げられ、乳化重合法によって得られたものが好ましい。
【0015】
前記SBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、非油展タイプのSBRが好ましい。なお、油展タイプの場合、添加された伸展油の質量は、ゴム成分の質量に含まない。
【0016】
前記SBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRが、いずれも使用可能である。前記SBRのスチレン含有率は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、45質量%以下が好ましく、より好ましくは35質量%以下である。
【0017】
前記ゴム成分中のSBRの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは52質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、65質量%以下が好ましく、より好ましくは63質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。前記SBRの含有率が50質量%以上であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上し、65質量%以下であれば得られるゴム組成物から形成された防舷材の引裂強さが向上する。
【0018】
前記ゴム成分中の天然ゴムとSBRとの質量比(天然ゴム/SBR)は、35/65以上が好ましく、より好ましくは37/63以上、さらに好ましくは40/60以上であり、50/50以下が好ましく、より好ましくは48/52以下、さらに好ましくは45/55以下である。
【0019】
(他のゴム成分)
前記ゴム組成物は、ゴム成分として、天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムのみを含有することが好ましいが、本発明の効果を損なわない程度に天然ゴム、スチレンブタジエンゴム以外の他のゴム成分を含有してもよい。この場合、ゴム成分中の天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムの合計含有率は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0020】
前記他のゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴムが挙げられる。
【0021】
<カーボンブラック>
前記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。カーボンブラックを含有することでゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度と耐ガソリン性が向上する。
【0022】
前記カーボンブラックの種類は特に限定されない。前記カーボンブラックとしては、SAF(Super Abrasion Furnace Black)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace Black)、IISAF(Intermediate ISAF)、HAF(High Abrasion Furnace Black)、MAF(Medium Abrasion Furnace Black)、FEF(Fast Extruding Furnace Black)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace Black)、GPF(General Purpose Furnace Black)、FF(Fine Furnace Black)、CF(Conductive Furnace Black)などのファーネスカーボンブラック;FT(Fine Thermal Black)、MT(Medium Thermal Black)などのサーマルカーボンブラック;EPC(Easy Processing Channel Black)、MPC(Medium Processing Channel Black)などのチャンネルカーボンブラック;アセチレンブラックが挙げられる。前記カーボンブラックは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記カーボンブラックは、HAF、または、GPFが好ましく、HAFとGPFを併用することがより好ましい。
【0024】
前記カーボンブラックの一次粒子径は、15nm以上が好ましく、より好ましくは25nm以上、さらに好ましくは28nm以上であり、75nm以下が好ましく、より好ましくは65nm以下、さらに好ましくは62nm以下である。前記カーボンブラックの一次粒子径が15nm以上であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が向上し、75nm以下であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上する。本発明において、一次粒子径とは、電子顕微鏡を用いて測定される一次粒子の個数平均粒子径である。なお、2種以上のカーボンブラックを配合する場合、各カーボンブラックが上記範囲を満たすことが好ましい。
【0025】
前記カーボンブラックとして、一次粒子径が15nm以上45nm未満である第1カーボンブラックと、一次粒子径が45nm以上75nm以下である第2カーボンブラックとを含有することが好ましい。これらの第1カーボンブラックと第2カーボンブラックとを併用することで、ゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が一層向上する。前記第1カーボンブラックと第2カーボンブラックとの質量比(第1カーボンブラック/第2カーボンブラック)は、1.5以上が好ましく、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、5.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。
【0026】
前記カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸収量は、75cm3/100g以上が好ましく、より好ましくは85cm3/100g以上、さらに好ましくは87cm3/100g以上であり、115cm3/100g以下が好ましく、より好ましくは105cm3/100g以下、さらに好ましくは101cm3/100g以下である。前記カーボンブラックのDBP吸収量が75cm3/100g以上であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上し、115cm3/100g以下であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が向上する。本発明において、DBP吸収量は、JIS K6217-4(2017)に従い非圧縮試料について測定する。なお、2種以上のカーボンブラックを配合する場合、各カーボンブラックが上記範囲を満たすことが好ましい。
【0027】
前記カーボンブラックの合計含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上、90質量部以下が好ましく、より好ましくは85質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。前記カーボンブラックの含有量が50質量部以上であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上し、90質量部以下であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が向上する。
【0028】
<オイル>
前記ゴム組成物は、所定量のオイルを含有する。オイルを含有することでゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が向上する。
【0029】
前記オイルとしては、例えば、鉱油(伸展油、プロセスオイル)、植物油、又はその混合物が挙げられる。前記オイルは、ゴム組成物を調製する際に添加するものだけでなく、予めゴム分に配合された伸展油や、オイル処理粉末硫黄に含まれるオイルも含む。前記鉱油は、その分子構造的に芳香族系炭化水素(CA)、パラフィン系炭化水素(CP)、ナフテン系炭化水素(CN)を含有し、その含有比率CA(質量%)、CP(質量%)、CN(質量%)に応じて芳香族系鉱油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油に大別される。前記鉱油としては、芳香族系炭化水素の含有率が20質量%以上である芳香族系鉱油が好ましい。
【0030】
前記オイルの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、より好ましくは17質量部以上、さらに好ましくは19質量部以上であり、22質量部以下が好ましく、より好ましくは21質量部以下、さらに好ましくは20.5質量部以下である。前記オイルの含有量が15質量部以上であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強さが向上し、22質量部以下であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上する。
【0031】
<硫黄系加硫剤>
前記ゴム組成物は、加硫剤として、硫黄系加硫剤を含有する。硫黄系加硫剤を含有することでゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度と耐ガソリン性が向上する。
【0032】
前記硫黄系加硫剤としては、硫黄が挙げられる。前記硫黄としては、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等が挙げられる。前記硫黄系架橋剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記架橋剤としては、硫黄が好ましい。
【0033】
前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.4質量部以上であり、2.2質量部以下が好ましい。前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が1.0質量部以上であれば得られる防舷材用ゴム組成物の耐ガソリン性が向上し、2.2質量部以下であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強さが向上する。
【0034】
<加硫促進剤>
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有する。加硫促進剤を含有することでゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度と耐ガソリン性が向上する。
【0035】
前記加硫促進剤としては、無機促進剤、有機促進剤のいずれも使用できる。前記無機促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等が挙げられる。前記有機促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系促進剤、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等が挙げられる。加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スルフェンアミド系促進剤が好ましい。
【0036】
前記スルフェンアミド系促進剤としては、例えば、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。
【0037】
前記加硫促進剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、2.5質量部以下が好ましく、より好ましくは2.4質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。前記加硫促進剤の含有量が0.5質量部以上であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上し、2.5質量部以下であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強度が向上する。
【0038】
前記硫黄系加硫剤中の硫黄および加硫促進剤の合計含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、2.6質量部以上が好ましく、より好ましくは2.8質量部以上、さらに好ましくは3.1質量部以上であり、4.7質量部以下が好ましく、より好ましくは4.2質量部以下、さらに好ましくは3.7質量部以下である。合計含有量が2.6質量部以上であればゴム組成物から形成された防舷材の耐ガソリン性が向上し、4.7質量部以下であればゴム組成物から形成された防舷材の引裂強さが向上する。
【0039】
<他の成分>
前記ゴム組成物は、老化防止剤、ワックス、加硫助剤、加工助剤など、本発明の趣旨を害さない範囲で、ゴムの配合剤として一般的に使用される配合剤を使用することができる。
【0040】
(老化防止剤)
前記老化防止剤を配合することで、高温環境下での経時変化による緩衝性能の低下やクラックの発生を抑制できる。前記老化防止剤としては、芳香族第二級アミン系の老化防止剤、アミン-ケトン系の老化防止剤が好ましい。
【0041】
前記芳香族第二級アミン系の老化防止剤としては、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。前記アミン-ケトン系の老化防止剤としては、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物等が挙げられる。
【0042】
前記老化防止剤を使用する場合、その使用量は前記ゴム成分100質量部に対して、1.5質量部以上が好ましく、6質量部以下が好ましい。
【0043】
(ワックス)
ワックスとしては、天然ワックス、合成ワックスのいずれも使用できる。前記天然ワックスとしては、植物系ワックス、動物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックスが挙げられる。前記合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系合成ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸アミドワックス、水素硬化油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記ワックスを使用する場合、その使用量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1.5質量部以上が好ましく、6質量部以下が好ましい。
【0045】
(加硫助剤)
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の加硫助剤の1種または2種以上が挙げられる。
前記加硫助剤を使用する場合、その使用量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、7質量部以下が好ましい。
【0046】
前記ゴム組成物は、ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤および加硫促進剤、ならびに必要に応じて他の原料を配合し、混練することで調製できる。混練の方法および条件は生産スケールによって適宜選択される。混錬方法としては、密閉式混練り機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等が使用できる。
【0047】
[防舷材]
本発明の防舷材は、前記防舷材用ゴム組成物を用いて形成されたものである。前記防舷材は、前記防舷材用ゴム組成物を用いて、全体を一体に形成されたものが好ましい。
【0048】
前記防舷材を製造する工程は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。前記防舷材を製造する方法としては、前記ゴム組成物を所望とする形状に成形した後、加圧しながら加熱する方法が挙げられる。前記防舷材の寸法、形状は設置場所により適宜選択すればよい。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
[評価方法]
1.引裂試験
引裂試験は、JIS K6252-1(2015)に準拠し、切込みありクレセント形引裂強さを測定した。
ゴム組成物をシート状に成形し、このシートを加圧しながら150℃で30分間加熱して、厚み2.0mm、長さ340mm、幅80mmの加硫ゴムシートを作製した。この加硫ゴムシートから、クレセント形試験片を打ち抜いた。試験片の凹部の中央に1.0mmの切込みを入れ、切込みありクレセント形試験片を作製した。
切込みを入れた試験片は、速やかに切込み長さの測定と引裂試験を行った。試験条件は、温度23℃、湿度50%、引張速度500mm/minとした。
各ゴム組成物の引裂強さは、ゴム組成物No.3の引裂強さを100として、指数化した値で示した。
【0051】
2.耐ガソリン試験
耐ガソリン試験は、JIS K6258(2016)に準拠し、体積変化を測定した。
ゴム組成物をシート状に成形し、このシートを加圧しながら150℃で30分間加熱して、厚み2.0mm、長さ340mm、幅80mmの加硫ゴムシートを作製した。この加硫ゴムシートから、縦30mm、幅30mmの試験片を切り出した。
試験片を、試験用液体(液温23℃)に2時間浸せきした後、比重計を用いて体積膨潤率を求めた。なお、試験用液体としては、工業ガソリン5号に該当するドライソルベントハイソフト(ENEOS製)を用いた。
各ゴム組成物の体積膨潤率は、ゴム組成物No.3の体積膨潤率を100として、指数化した値で示した。
【0052】
[ゴム組成物の調製]
表1に示した配合となるように各成分を配合し、密閉式混練り機で混練りすることでゴム組成物を作製した。
【0053】
【0054】
NR:TSR20
SBR:住友化学製、SBR1502(スチレンブタジエンゴム、スチレン含量23.5質量%)
シースト(登録商標)3:東海カーボン製、シースト3(カーボンブラック、HAF、一次粒子径28nm、DBP吸収量101cm3/100g)
シースト V:東海カーボン製、シーストV(カーボンブラック、GPF、一次粒子径62nm、DBP吸収量87cm3/100g)
オイル:ENEOS製、プロセスNC300SN(芳香族系プロセスオイル)
オイル処理粉末硫黄:細井化学製、5%オイル処理粉末硫黄(オイルは鉱油)
加硫促進剤:大内新興化学製、ノクセラー(登録商標)NS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
老化防止剤:大内新興化学製、ノクラック(登録商標)6C(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋製、オゾエース(登録商標)0355(パラフィンワックス)
酸化亜鉛:ハクスイテック製、酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油製、ステアリン酸つばき
【0055】
ゴム組成物No.1~6は、ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤、および、加硫促進剤を含有し、前記ゴム成分が、少なくとも天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含み、前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が50質量%~65質量%であり、前記オイルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部~22質量部であり、前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1.0質量部~2.2質量部である。これらのゴム組成物No.1~6から作製した硬化物は、引裂試験および耐ガソリン試験の結果が良好であり、総合判定は〇であった。
【0056】
ゴム組成物No.7は、ゴム成分中のスチレンブタジエンゴムの含有率が65質量%超である。このゴム組成物No.7から形成された硬化物は、引裂強さが劣っていた。
ゴム組成物No.8は、ゴム成分中のスチレンブタジエンゴムの含有率が50質量%未満である。このゴム組成物No.8から形成された硬化物は、耐ガソリン性が劣っていた。
【0057】
ゴム組成物No.9は、オイルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部未満である。このゴム組成物No.9から形成された硬化物は、引裂強さが劣っていた。
【0058】
ゴム組成物No.10は、前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1.0質量部未満である。このゴム組成物No.10から形成された硬化物は、耐ガソリン性が劣っていた。
ゴム組成物No.11は、前記硫黄系加硫剤中の硫黄の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して2.2質量部超である。このゴム組成物No.11から形成された硬化物は、引裂強さが劣っていた。
【0059】
本発明(1)は、ゴム成分、カーボンブラック、オイル、硫黄系加硫剤、および、加硫促進剤を含有し、前記ゴム成分が、少なくとも天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含み、前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が、50質量%~65質量%であり、前記オイルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15質量部~22質量部であり、前記硫黄系加硫剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1.0質量部~2.2質量部であることを特徴とする防舷材用ゴム組成物である。
【0060】
本発明(2)は、前記硫黄系加硫剤および加硫促進剤の合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、2.6質量部~4.7質量部である本発明(1)に記載の防舷材用ゴム組成物である。
【0061】
本発明(3)は、前記ゴム成分中の前記スチレンブタジエンゴムの含有率が、55質量%~65質量%である本発明(1)または(2)に記載の防舷材用ゴム組成物である。
【0062】
本発明(4)は、前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部~90質量部である本発明(1)~(3)のいずれかに記載の防舷材用ゴム組成物である。
【0063】
本発明(5)は、本発明(1)~(4)のいずれかに記載の防舷材用ゴム組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする防舷材である。