(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161791
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231031BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B32B15/08 P
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072358
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】永井 彬雄
(72)【発明者】
【氏名】朝河 孝元
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DC00B
4F100EJ08C
4F100EJ08D
4F100GB87
4F100JB12C
4F100JB12D
4F100JK12D
(57)【要約】
【課題】高い表面硬度を備えながら各層の密着性に優れ、高輝度外観を維持しやすい、金属層を有する積層体を提供する。
【解決手段】母材11と、不連続領域を有するように母材11上に設けられる金属層13と、母材11及び金属層13を覆う連続領域を有する第1樹脂層14と、第1樹脂層14を覆う連続領域を有する第2樹脂層15と、を備え、第2樹脂層15のJIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さは、第1樹脂層14のJIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さより大きいことを特徴とする積層体10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と、
不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、
前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層を覆う連続領域を有し、前記第1樹脂層より硬い第2樹脂層と、
を備える積層体。
【請求項2】
母材と、
不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、
前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層を覆う連続領域を有する第2樹脂層と、
を備え、
前記第2樹脂層の超微小負荷硬さは、前記第1樹脂層の超微小負荷硬さより大きいことを特徴とする積層体。
【請求項3】
母材と、
不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、
前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層を覆う連続領域を有する第2樹脂層と、
を備え、
前記第2樹脂層のJIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さは、前記第1樹脂層のJIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さより大きいことを特徴とする積層体。
【請求項4】
前記金属層がインジウムを主成分とする、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層とが、各々アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物との反応で得られるアクリルウレタン樹脂で構成されている、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1樹脂層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第2樹脂層は、前記第1硬化性樹脂組成物とは異なる第2硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されている、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1硬化性樹脂組成物と、前記第2硬化性樹脂組成物とは、各々異なる硬化剤を含有する、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1樹脂層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第2樹脂層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第1硬化性樹脂組成物と前記第2硬化性樹脂組成物とは、各々アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料である、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記第1硬化性樹脂組成物における主剤と硬化剤との混合比率は、前記第2硬化性樹脂組成物における主剤と硬化剤との混合比率と異なる、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記母材と前記金属層との間に、さらに下地層を有する、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記第1樹脂層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記下地層は、下地用硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第1硬化性樹脂組成物が、アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料であると共に、
前記下地用硬化性樹脂組成物が、アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料である、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記下地層は、前記第1樹脂層と化学結合可能な樹脂で構成されている、請求項10に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。更に詳しくは、高い表面硬度を備えながら各層の密着性に優れ、高輝度外観を維持しやすい、金属層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属層は、物品に高輝度外観をもたらすために広く利用されている。金属層が連続層であると支障が生じる場合には、金属層を多数の島状領域からなる不連続層、いわゆる海島構造とすることが行われている(特許文献1、2)。
特許文献1、2では、金属層を保護するために、トップコート層を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-138270号公報
【特許文献2】特開2011-189322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物品が落下等した際にも、傷がつきにくく、金属層がもたらす高輝度外観を維持するために、物品には高い表面硬度が求められる。特に、物品が過酷な使用環境に晒されるアウトドア製品(例えば、釣竿、魚釣用リールなど)の場合、高い表面硬度が求められる。
しかし、金属層を保護するトップコート層を高硬度の塗膜とすると、内部応力が高くなりやすい。そのため、母材や金属層との密着性を得ることが困難で、長期間に亘って金属層を保護することができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い表面硬度を備えながら各層の密着性に優れ、高輝度外観を維持しやすい、金属層を有する積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0007】
[1]母材と、
不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、
前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層を覆う連続領域を有し、前記第1樹脂層より硬い第2樹脂層と、
を備える積層体。
【0008】
[2]母材と、
不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、
前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層を覆う連続領域を有する第2樹脂層と、
を備え、
前記第2樹脂層の超微小負荷硬さは、前記第1樹脂層の超微小負荷硬さより大きいことを特徴とする積層体。
【0009】
[3]母材と、
不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、
前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層を覆う連続領域を有する第2樹脂層と、
を備え、
前記第2樹脂層のJIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さは、前記第1樹脂層のJIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さより大きいことを特徴とする積層体。
【0010】
[4]前記金属層がインジウムを主成分とする、[1]~[3]の何れか一項に記載の積層体。
【0011】
[5]前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層とが、各々アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物との反応で得られるアクリルウレタン樹脂で構成されている、[1]~[4]の何れか一項に記載の積層体。
【0012】
[6]前記第1樹脂層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第2樹脂層は、前記第1硬化性樹脂組成物とは異なる第2硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されている、[1]~[5]の何れか一項に記載の積層体。
【0013】
[7]前記第1硬化性樹脂組成物と、前記第2硬化性樹脂組成物とは、各々異なる硬化剤を含有する、[6]に記載の積層体。
【0014】
[8]前記第1樹脂層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第2樹脂層は、第2硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第1硬化性樹脂組成物と前記第2硬化性樹脂組成物とは、各々アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料である、[1]~[7]の何れか一項に記載の積層体。
【0015】
[9]前記第1硬化性樹脂組成物における主剤と硬化剤との混合比率は、前記第2硬化性樹脂組成物における主剤と硬化剤との混合比率と異なる、[8]に記載の積層体。
【0016】
[10]前記母材と前記金属層との間に、さらに下地層を有する、[1]~[9]の何れか一項に記載の積層体。
【0017】
[11]前記第1樹脂層は、第1硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記下地層は、下地用硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
前記第1硬化性樹脂組成物が、アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料であると共に、
前記下地用硬化性樹脂組成物が、アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料である、[10]に記載の積層体。
【0018】
[12]前記下地層は、前記第1樹脂層と化学結合可能な樹脂で構成されている、[10]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金属層を有する積層体は、高い表面硬度を備えながら各層の密着性に優れ、金属層がもたらす高輝度外観を維持しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の積層体は、母材と、不連続領域を有するように前記母材上に設けられる金属層と、前記母材及び前記金属層を覆う連続領域を有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層を覆う連続領域を有する第2樹脂層を備える。第2樹脂層は、第1樹脂層より硬い。母材と前記金属層との間には、さらに下地層を有していてもよい。
【0022】
図1に本発明の一実施形態に係る積層体10を示す。なお、
図1は模式的な断面図であり、各層の厚さの比率は正確ではない。
積層体10は、母材11、下地層12、金属層13、第1樹脂層14、第2樹脂層15が順次積層されて形成されている。金属層13は、多数の島状部3が互いに連続せずに存在している不連続領域を形成している。
【0023】
母材11の材質と形状に特に限定はなく、用途に応じて適宜選択できる。
母材11の材質としては、例えば、ナイロン等の樹脂、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属が挙げられる。
母材11は、多層構造であってもよい。例えば、アルミニウム表面に陽極酸化皮膜を作る処理(アルマイト処理)を施したものであってもよい。
【0024】
金属層13は、少なくとも一部が不連続領域を形成していればよく、一部が連続領域となっていてもよい。ただし、第1樹脂層14が下地層12と密着しやすいことから、全体が不連続領域となっていることが好ましい。
金属層13の材質は、蒸着により容易に不連続領域を形成できることから、インジウムまたはスズを主成分とすることが好ましい。特に白色の外観を得られるインジウムの方が意匠性の幅を広げられることから、インジウムを主成分とすることが好ましく、インジウムであることが特に好ましい。なお、主成分とは、当該成分が全体の5質量%以上を占めることを意味し、好ましくは、50質量%以上を占めることを意味する。
【0025】
また、結晶構造が同一であり格子定数差が10%以内である少なくとも2種の金属であって真空蒸着では不連続構造を相対的に形成しやすい易形成金属と、相対的に形成しにくい難形成金属とが、その順で切り替わってスパッタリングされた部分を含んで成膜された層(特許文献1参照)であってもよい。
易形成金属としてはがインジウムが、難形成金属としてはアルミニウム、パラジウムが挙げられる。
【0026】
金属層13の厚さは、各島状部3における最大厚さの平均値として、10~100nmが好ましく、15~50nmがより好ましい。金属層13の厚さが好ましい下限値以上であれば、外観上十分な光輝性が得られると共に、第1樹脂層14を構成するための第1硬化性樹脂組成物が各島状部3の間を通過して、母材11又は下地層12の表面に到達しやすい。
また、金属層13の厚さが好ましい上限値以下であれば、金属の使用量が適切な量となり、コスト的に有利である。
なお、金属層13の厚さは、断面TEM(Transmission Electron Microscopic)観察により測定できる。
【0027】
金属層13を構成する各島状部3の平均面積は、20~125,700nm2程度(直径で5~400nm程度)であることが好ましく、70~32,000nm2程度(直径で10~200nm程度)であることがより好ましい。各島状部3の平均面積が好ましい下限値以上であれば十分な輝度が得られるようになる。各島状部3の平均面積が好ましい上限値以下であれば隙間を有することによる高輝度外観の品質確保がし易い。
なお、各島状部3の平均面積は、蒸着層の断面TEM観察より、蒸着層のインジウムの大きさを確認することにより求められる。
【0028】
金属層13を構成する各島状部3同士の間隙は、1~400nmであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましい。各島状部3同士の間隙が好ましい下限値以上であれば第1樹脂層14を構成する塗料が下地層12に浸透しやすくなる。各島状部3同士の間隙が好ましい上限値以下であれば高輝度外観にできる。
なお、各島状部3同士の間隙は、断面TEM観察により測定できる。
【0029】
第1樹脂層14は、母材11及び金属層13を覆う連続領域を有している。第1樹脂層14は、少なくとも一部が母材11及び金属層13を覆う連続領域を形成していればよく、一部が不連続領域となっていてもよい。ただし、金属層13を保護しやすいことから、全体が連続領域となっていることが好ましい。また、少なくとも金属層13が存在する部分においては、母材11及び金属層13を覆っていることが好ましい。
【0030】
第1樹脂層14の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~40μmであることがより好ましい。第1樹脂層14の厚さが好ましい下限値以上であれば、応力緩和層としての効果を発揮し始める。第1樹脂層14の厚さが好ましい上限値以下であれば、内部応力を低減することが出来る。
【0031】
第2樹脂層15は、第1樹脂層14を覆う連続領域を有している。第2樹脂層15は、少なくとも一部が第1樹脂層14を覆う連続領域を形成していればよく、一部が不連続領域となっていてもよい。ただし、第1樹脂層14とその下の金属層13を保護しやすいことから、全体が連続領域となっていることが好ましい。また、少なくとも金属層13が存在する部分においては、第1樹脂層14を覆っていることが好ましい。
【0032】
第2樹脂層15の厚さは、5~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましい。第2樹脂層15の厚さが好ましい下限値以上であれば、屋外用製品として必要最低限の耐摩耗性を発揮できる。第2樹脂層15の厚さが好ましい上限値以下であれば、内部応力を低減することが出来る。
なお、第1樹脂層14と第2樹脂層15の厚さは、断面TEM観察等により測定できる。
【0033】
第2樹脂層15は、第1樹脂層14よりも硬い。具体的には、第2樹脂層の超微小負荷硬さは、前記第1樹脂層の超微小負荷硬さより大きい。超微小負荷硬さは、JIS Z 2255(2003)に規定される超微小負荷硬さである。
これにより、第2樹脂層15によって高い表面硬度を達成しながら、比較的柔らかい第1樹脂層14が金属層13と第2樹脂層15の間に存在することにより、内部応力が高くなることを回避して、各層の良好な密着性を得ることができる。
【0034】
第1樹脂層14の超微小負荷硬さは、HMs1.0 ~250.0N/mm2であることが好ましく、HMs1.0 ~230.0N/mm2(鉛筆硬度で言うと2B~3H程度)であることがより好ましい。第1樹脂層14の超微小負荷硬さが好ましい上限値以下であることにより、金属層13に対する第1樹脂層14の密着性が向上する。第1樹脂層14の超微小負荷硬さが好ましい下限値以上であることにより、屋外用製品としての耐傷付き性を確保できる。
【0035】
第2樹脂層15の超微小負荷硬さは、HMs2.0~400.0N/mm2(鉛筆硬度で言うと8H程度であることが好ましく、HMs100.0 ~250.0N/mm2(鉛筆硬度で言うと2Hから4H程度)であることがより好ましい。第2樹脂層15の超微小負荷硬さが好ましい下限値以上であることにより、高い表面硬度が得られ、過酷な使用環境に晒されるアウトドア製品にも対応可能となる。第2樹脂層15の超微小負荷硬さが好ましい上限値以下であることにより、第1樹脂層14に対する第2樹脂層15の密着性が向上する。
【0036】
第2樹脂層15と第1樹脂層14の超微小負荷硬さの差は、HMs10.0N/mm2以上であることが好ましく、HMs30.0N/mm2以上であることがより好ましい。第2樹脂層15と第1樹脂層14の超微小負荷硬さの差が好ましい下限値以上であることにより、内部応力を緩和する度合いが高くなり、密着不良が生じにくくなる。
【0037】
第1樹脂層14と第2樹脂層15は、充分な硬さを得やすいことから、いずれも硬化性樹脂組成物の硬化物(硬化性樹脂)で構成されていることが好ましい。また、硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂でも光硬化性樹脂でも良い。
釣具の場合は立体形状への塗装となる場合が多く、光照射だと影になってしまう部分も出てきてしまうことから、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0038】
硬化性樹脂としてはアクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、塩素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂を含む硬化性樹脂が挙げられる。
中でもアクリルウレタン樹脂は、主剤であるアクリルポリオールと硬化剤の組み合わせにより、物性を操作できる幅が広いことから好ましい。
【0039】
第1樹脂層14を形成するための第1硬化性樹脂組成物と、第2樹脂層15を形成するための第2硬化性樹脂組成物は、何れも一液型でも二液型でもよいが、製造が容易であることから、焼き付け硬化反応の二液型であることが好ましい。
二液型の硬化性樹脂組成物としては、各々ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料(主材はアクリルポリオール)、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
中でも密着性や耐候性、光沢、耐水性等に優れていることから、2液型アクリルウレタン塗料であることが好ましい。
【0040】
2液型アクリルウレタン塗料の主剤であるアクリルポリオールは、アクリル酸エステルとビニル化合物などを共重合したアクリル樹脂である。
アクリルポリオールは、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを含有する混合物を、例えば、塊状重合法や有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって得られる。
【0041】
熱硬化性、相溶性の観点から、アクリルポリオールの水酸基価は、1~200mgKOH/gであることが好ましく、2~150mgKOH/gであることが、より好ましい。
また、アクリルポリオールの重量平均分子量は、相溶性、ブロッキング性の観点から、3,000~100,000が好ましく、4,000~80,000がより好ましく、5,000~50,000がさらに好ましい。
アクリルポリオールは1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0042】
2液型アクリルウレタン塗料の主剤は、ポリエステルポリオールを含んでいてもよい。ポリエステルポリオールを含む場合、アクリルポリオール100質量部に対するポリエステルポリオール配合量は、5~100質量部であることが好ましく、25~45質量部であることがより好ましい。
2液型アクリルウレタン塗料の主剤に配合するポリエステルポリオールとしては、ユニチカ社製UE‐3620ポリエステルポリオールが挙げられる。
2液型アクリルウレタン塗料の主剤のガラス転移温度Tgは、50℃以上であれば保護膜に所望の硬度や耐傷つき性を付与することができ、一方、ガラス転移温度が100°Cを超えると、保護膜の光沢感、平滑性、肉持ち感が低下し、高外観性が損なわれる傾向となる。なお、肉持ち感とは、塗膜の厚みがふっくらと肉付き良く、いかにも厚い膜であるかのように見えるさまをいう。そのため、ガラス転移温度は50~100℃であることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。
【0043】
2液型アクリルウレタン塗料の硬化剤であるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)等の芳香族ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;
およびこれらのビュレット体、ヌレート体、トリメチロールプロパン(TMP)アダクト体、ウレトジオン体等;が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0044】
第1樹脂層14と第2樹脂層15の硬さに差を付ける方法に特に限定はないが、第1樹脂層14を形成するための第1硬化性樹脂組成物と、第2樹脂層15を形成するための第2硬化性樹脂組成物の組成を異なるものとすることにより調整できる。具体的には、例えば、以下の(i)~(iii)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
(i)第1硬化性樹脂組成物と、第2硬化性樹脂組成物とを、互いに異なる硬化剤を含有するものとする。
一般的に、官能基数(硬化剤がポリイソシアネート化合物の場合、1分子中のイソシアネート基の数)が多い硬化剤を使用した方が、架橋密度が大きくなり、得られる硬化物を硬くしやすい。また、芳香環を含む硬化剤を使用すると、芳香環を含まない硬化剤を使用した場合より、得られる硬化物を硬くしやすい。また、架橋点間分子量が大きいほど、得られる硬化物を柔らかくしやすい。
【0046】
(ii)第1硬化性樹脂組成物における主剤と硬化剤との混合比率を、第2硬化性樹脂組成物における主剤と硬化剤との混合比率と異なるものとする。
一般的に、硬化剤の混合比率が高い配合の方が、得られる硬化物を硬くしやすい。
【0047】
(iii)第1硬化性樹脂組成物のイソシアネートインデックスを、第2硬化性樹脂組成物のイソシアネートインデックスと異なるものとする。
イソシアネートインデックスは、硬化性樹脂組成物におけるポリオール、架橋剤および水等のすべての活性水素の合計に対するイソシアネート基の数の100倍で表した数値である。
一般的に、イソシアネートインデックスが大きい配合の方が、得られる硬化物を硬くしやすい。
【0048】
下地層12は必須ではないが、下地層12を有することにより金属層13の母材11に対する密着性が向上する。
本実施形態の下地層12は、母材11の金属層13が形成されている部分全体を連続して覆う連続領域を形成している。下地層12は一部又は全部が不連続領域を形成していてもよい。
【0049】
下地層12の厚さは、3~40μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。下地層12の厚さが好ましい下限値以上であれば、塗膜の肉持ち感を得られる。下地層12の厚さが好ましい上限値以下であれば、塗装が溜まりやすい部分において、塗膜垂れなどの外観不良が発生し難くなる。
なお、下地層12の厚さは、断面TEM観察等により測定できる。
【0050】
下地層12は硬化性樹脂組成物の硬化物(硬化性樹脂)で構成されていることが好ましい。
下地層12を構成する硬化性樹脂としては、第1樹脂層14又は第2樹脂層15を構成する硬化性樹脂と同様のものが使用できる。
また、下地層12を形成するための下地用硬化性樹脂組成物としては、第1樹脂層14を形成するための第1硬化性樹脂組成物、及び第2樹脂層15を形成するための第2硬化性樹脂組成物と同様のものが使用できる。
【0051】
下地用硬化性樹脂組成物は、第1樹脂層14と密着性を得やすい下地層12を形成できる組成物であることが好ましい。第1樹脂層14と密着性を得やすい下地層12を形成できる組成物であれば、金属層13の隙間から下地層12側に侵入する第1硬化性樹脂組成物と接触して、第1樹脂層14との密着性が向上する。
【0052】
第1樹脂層14と密着性を得やすい下地層12を形成できる組成物としては、以下の(iv)~(vi)の何れか1以上の関係を満たす組成物が挙げられる。
(iv)第1硬化性樹脂組成物と同じ又は類似の組成物。
(v)第1硬化性樹脂組成物と化学結合可能な樹脂で構成されている組成物。
(vi)第1樹脂層14を構成する樹脂と溶解度パラメータ(SP値)が近い樹脂で構成されている組成物。
【0053】
具体的には、第1硬化性樹脂組成物が、アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料であると共に、下地用硬化性樹脂組成物が、アクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料であることが好ましい。
この場合、上記(iv)~(vi)の総てを満たすことができる。
【0054】
積層体10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、母材11に必要に応じて下地用硬化性樹脂組成物を塗布し硬化させることにより、下地層12を形成する。
下地用硬化性樹脂組成物の塗布方法に限定はなく、例えば吹付塗装、静電塗装等により塗布できる。下地用硬化性樹脂組成物の硬化は、下地用硬化性樹脂組成物の組成に応じて、加熱、放射線照射、光照射等により行う。
【0055】
金属層13は、母材11に直接又は下地層12を形成した母材11上に、蒸着又はスパッタリングにより形成することが好ましく、蒸着により形成することが特に好ましい。
蒸着の場合、インジウム又はスズを、結晶構造が繋がらないように、エレクトリックビーム型又は熱抵抗動作型等の真空蒸着機により真空蒸着することが好ましい。
【0056】
スパッタリングにより形成する場合は、特許文献1の記載に従い、結晶構造が同一であり格子定数差が10%以内である少なくとも2種の金属であって真空蒸着では不連続構造を相対的に形成しやすい易形成金属と、相対的に形成しにくい難形成金属とを、その順で切り替えてスパッタリングするステップを含む方法で形成することが好ましい。
【0057】
第1樹脂層14は、第1硬化性樹脂組成物を母材11及び金属層13を覆うように塗布し硬化させることにより形成する。
第1硬化性樹脂組成物の塗布方法に限定はなく、例えば吹付塗装、静電塗装等により塗布できる。第1硬化性樹脂組成物の硬化は、第1硬化性樹脂組成物の組成に応じて、加熱、放射線照射、光照射等により行う。
【0058】
下地層12を形成した場合、第1硬化性樹脂組成物は、下地用硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化状態の内に塗布することが好ましい。これにより、下地層12との密着性が向上する。
第1硬化性樹脂組成物は、フォードカップ#4により測定した粘度が10~15秒となる温度、より好ましくは11~14秒となる温度で塗布することが好ましい。これにより、塗布した第1硬化性樹脂組成物が金属層13の隙間を通って、母材11又は下地層12の表面に到達しやすくなるので、母材11又は下地層12との密着性が向上する。
【0059】
第2樹脂層15は、第2硬化性樹脂組成物を第1樹脂層14を覆うように塗布し硬化させることにより形成する。
第2硬化性樹脂組成物の塗布方法に限定はなく、例えば吹付塗装、静電塗装等により塗布できる。第2硬化性樹脂組成物の硬化は、第2硬化性樹脂組成物の組成に応じて、加熱、放射線照射、光照射等により行う。
第2硬化性樹脂組成物は、第1硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化状態の内に塗布することが好ましい。これにより、第1樹脂層14との密着性が向上する。
【0060】
下地層12、第1樹脂層14、第2樹脂層15の硬化方法が熱硬化である場合、これら各層の硬化を一度の加熱で纏めて行うことも好ましい。
下地層12、第1樹脂層14、及び第2樹脂層15が何れもアクリルポリオールを主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、2液型アクリルウレタン塗料の硬化物である場合、硬化温度は、50~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。硬化温度が好ましい下限値以上であれば、硬化反応が進行し、要求物性が満足できるようになる。硬化温度が好ましい上限値以下であれば一部樹脂製品においても変形せずに塗装することが可能である。
【0061】
また、下地層12、第1樹脂層14、及び第2樹脂層15が何れも上記2液型アクリルウレタン塗料の硬化物である場合、硬化時間は、5~60分が好ましく、10~40分がより好ましい。硬化時間が好ましい下限値以上であれば、良好な塗膜物性が得られるようになる。硬化時間が好ましい上限値以下であれば生産効率が良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の積層体は、例えば、釣り具、自転車部品、ロウイング部品等に使用できる。
【符号の説明】
【0063】
3 島状部
10 積層体
11 母材
12 下地層
13 金属層
14 第1樹脂層
15 第2樹脂層