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特開2023-161799シートバックパネル、シートバックフレーム及び車両用シート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161799
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】シートバックパネル、シートバックフレーム及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20231031BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20231031BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/64
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072371
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 巧
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】矢動丸 裕介
(72)【発明者】
【氏名】半田 昌巳
(72)【発明者】
【氏名】西尾 寿光
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EC01
3B084EC04
3B084HA03
3B084HA04
3B084HA12
3B087CD03
3B087DB02
(57)【要約】
【課題】車両の後面衝突時における着座者の背中のシートバックへの入り込み量を増加させる。
【解決手段】シートバックパネル36は、車両用シート10のシートバック14の背部に配置され、シートバックフレーム18の本体部19の一部を構成すると共に、着座者Pの背中と対向する箇所に開口40が形成されたパネル本体38と、本体部19に取り付けられて開口40を閉塞する別体パネル42とを備えている。別体パネル42は、車両の後面衝突時に着座者Pの背中から荷重を受けてパネル本体38に対してシートバック14の後方側へ相対変位する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックの背部に配置され、シートバックフレームの本体部の一部を構成すると共に、着座者の背中と対向する箇所に開口が形成されたパネル本体と、
前記本体部に取り付けられて前記開口を閉塞し、車両の後面衝突時に前記背中から荷重を受けて前記パネル本体に対して前記シートバックの後方側へ相対変位する別体パネルと、
を備えたシートバックパネル。
【請求項2】
前記別体パネルは、前記開口の縁部に対して前記シートバックの後方側から当接する当接部を有する請求項1に記載のシートバックパネル。
【請求項3】
前記別体パネルは、前記本体部に対して弾性部材を介して連結されている請求項1又は請求項2に記載のシートバックパネル。
【請求項4】
前記別体パネルの一端部は、前記本体部に対して回転可能に連結され、前記別体パネルの他端部は、前記本体部に対して弾性部材を介して連結されている請求項1又は請求項2に記載のシートバックパネル。
【請求項5】
前記別体パネルは、前記別体パネルを屈曲させるヒンジ部を有すると共に、前記ヒンジ部と直交する方向の一端部が前記本体部に対して回転可能に連結され、前記ヒンジ部と直交する方向の他端部が前記本体部に対して前記一端部側へ相対変位可能に連結されている請求項1又は請求項2に記載のシートバックパネル。
【請求項6】
前記別体パネルは、一側部と他側部とに二分割され、前記一側部における前記他側部とは反対側の端部が前記本体部に対して回転可能に連結され、前記他側部における前記一側部とは反対側の端部が前記本体部に対して回転可能に連結され、前記一側部と前記他側部とが弾性部材を介して連結されている請求項1又は請求項2に記載のシートバックパネル。
【請求項7】
車両用シートのシートバックに設けられ、前記シートバックの前後方向視で枠状をなすフレーム本体と、
前記フレーム本体に対して前記シートバックの後方側に配置され、前記フレーム本体に前記パネル本体が固定されて前記本体部が構成された請求項1又は請求項2に記載のシートバックパネルと、
を備えたシートバックフレーム。
【請求項8】
着座者が着座するシートクッションと、
請求項7に記載のシートバックフレームによって骨格が構成され、前記着座者の背凭れとなるシートバックと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にシートバックに設けられるシートバックフレーム、及びシートバックフレームの一部を構成するシートバックパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の後席用シートのシートバック構造が開示されている。このシートバック構造では、シートバックフレームの着座面側にクッション材が配設されている。シートバックフレームは、フレーム(フレーム本体)と、シートバックパネルとによって構成されている。フレーム本体は、金属製のパイプ材によって構成されており、シート前後方向視で枠状をなしている。シートバックパネルは、金属製の板材からなり、フレーム本体のシート後方側に配置され、溶接等の手段でフレーム本体に固定されている。このシートバックパネルは、シートバックが前倒しされた状態において、荷物を載置可能な載置面(すなわち荷室の床部)として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-197038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、シートバックの背部にシートバックパネルが配設されているため、車両の後面衝突時に車両後方側へ慣性移動しようとする着座者の背中がシートバックに入り込み難くなる。その結果、シートバックの上部に設けられたヘッドレストに着座者の頭部が支持されるタイミングが遅くなる(所謂コンタクトタイムが長くなる)。このコンタクトタイムを短縮することは、着座者の鞭打ち症の発生抑制に寄与する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の後面衝突時における着座者の背中のシートバックへの入り込み量を増加させることができるシートバックパネル、シートバックフレーム及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のシートバックパネルは、車両用シートのシートバックの背部に配置され、シートバックフレームの本体部の一部を構成すると共に、着座者の背中と対向する箇所に開口が形成されたパネル本体と、前記本体部に取り付けられて前記開口を閉塞し、車両の後面衝突時に前記背中から荷重を受けて前記パネル本体に対して前記シートバックの後方側へ相対変位する別体パネルと、を備えている。
【0007】
第1態様のシートバックパネルでは、パネル本体は、車両用シートのシートバックの背部に配置され、シートバックフレームの本体部の一部を構成する。このパネル本体には、着座者の背中と対向する箇所に開口が形成されている。この開口は、シートバックフレームの本体部に取り付けられた別体パネルによって閉塞されている。この別体パネルは、車両の後面衝突時に着座者の背中から荷重を受けてパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位する。これにより、着座者の背中のシートバックへの入り込み量を増加させることができる。
【0008】
第2の態様のシートバックパネルは、第1の態様において、前記別体パネルは、前記開口の縁部に対して前記シートバックの後方側から当接する当接部を有する。
【0009】
第2の態様のシートバックパネルでは、別体パネルに設けられた当接部がパネル本体の開口の縁部に対してシートバックの後方側から当接する。これにより、例えばシートバックが通常使用位置に位置する場合に、別体パネルがパネル本体に対してシートバックの前方側に不用意に脱落することを防止できる。
【0010】
第3の態様のシートバックパネルは、第1の態様又は第2の態様において、前記別体パネルは、前記本体部に対して弾性部材を介して連結されている。
【0011】
第3の態様のシートバックパネルでは、車両の後面衝突時に着座者の背中からの荷重が別体パネルに加わると、別体パネルをシートバックフレームの本体部に対して連結した弾性部材が弾性変形する。これにより、別体パネルがシートバックフレームの本体部に対してシートバック後方側へ相対変位する。また、上記の荷重が別体パネルに加わらなくなると、弾性部材が弾性復帰する。これにより、別体パネルを元の位置に戻すことができる。
【0012】
第4の態様のシートバックパネルは、第1の態様又は第2の態様において、前記別体パネルの一端部は、前記本体部に対して回転可能に連結され、前記別体パネルの他端部は、前記本体部に対して弾性部材を介して連結されている。
【0013】
第4の態様のシートバックパネルでは、車両の後面衝突時に着座者の背中からの荷重が別体パネルに加わると、別体パネルの他端部をシートバックフレームの本体部に対して連結した弾性部材が弾性変形する。これにより、別体パネルが一端部を回転中心としてシートバックフレームの本体部に対してシートバック後方側へ相対変位する。また、上記の荷重が別体パネルに加わらなくなると、弾性部材が弾性復帰する。これにより、別体パネルを元の位置に戻すことができる。
【0014】
第5の態様のシートバックパネルは、第1の態様又は第2の態様において、前記別体パネルは、前記別体パネルを屈曲させるヒンジ部を有すると共に、前記ヒンジ部と直交する方向の一端部が前記本体部に対して回転可能に連結され、前記ヒンジ部と直交する方向の他端部が前記本体部に対して前記一端部側へ相対変位可能に連結されている。
【0015】
第5の態様のシートバックパネルでは、車両の後面衝突時に着座者の背中からの荷重が別体パネルに加わると、別体パネルに設けられたヒンジ部において別体パネルが屈曲する。この際には、別体パネルにおいて、ヒンジ部と直交する方向の一端部がシートバックフレームの本体部に対して回転し、ヒンジ部と直交する方向の他端部がシートバックフレームの本体部に対して上記一端部側へ相対変位する。これにより、別体パネルをシートバックフレームの本体部に対してシートバック後方側へ相対変位させることができる。
【0016】
第6の態様のシートバックパネルは、第1の態様又は第2の態様において、前記別体パネルは、一側部と他側部とに二分割され、前記一側部における前記他側部とは反対側の端部が前記本体部に対して回転可能に連結され、前記他側部における前記一側部とは反対側の端部が前記本体部に対して回転可能に連結され、前記一側部と前記他側部とが弾性部材を介して連結されている。
【0017】
第6の態様のシートバックパネルでは、車両の後面衝突時に着座者の背中からの荷重が別体パネルに加わると、別体パネルの一側部と他側部とを連結した弾性部材が弾性変形し、一側部が他側部とは反対側の端部を中心としてシートバックフレームの本体部に対して回転し、他側部が一側部とは反対側の端部を中心としてシートバックフレームの本体部に対して回転する。これにより、別体パネルをシートバックフレームの本体部に対してシートバック後方側へ相対変位させることができる。
【0018】
第7の態様のシートバックフレームは、車両用シートのシートバックに設けられ、前記シートバックの前後方向視で枠状をなすフレーム本体と、前記フレーム本体に対して前記シートバックの後方側に配置され、前記フレーム本体に前記パネル本体が固定されて前記本体部が構成された第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のシートバックパネルと、を備えている。
【0019】
第7の態様のシートバックフレームでは、フレーム本体は、車両用シートのシートバックに設けられ、シートバックの前後方向視で枠状をなしている。シートバックパネルは、フレーム本体に対してシートバックの後方側に配置され、フレーム本体にパネル本体が固定されてシートバックフレームの本体部が構成されている。このシートバックパネルは、第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【0020】
第8の態様の車両用シートは、着座者が着座するシートクッションと、第7の態様のシートバックフレームによって骨格が構成され、前記着座者の背凭れとなるシートバックと、を備えている。
【0021】
第8の態様の車両用シートでは、シートクッションに着座者が着座し、シートバックが着座者の背凭れとなる。このシートバックは、第7の態様のシートバックフレームによって骨格が構成されているため、前述した作用及び効果が得られる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るシートバックパネル、シートバックフレーム及び車両用シートでは、車両の後面衝突時における着座者の背中のシートバックへの入り込み量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る車両用シートを示す側面図である。
図2】第1実施形態に係るシートバックフレームを示す斜視図である。
図3図2に示される構成の一部を拡大して示す斜視図である。
図4図3に示される構成をシートバックの後方側から見た状態で示す斜視図である。
図5図3のF5-F5線に沿った切断面を示す断面図である。
図6】別体パネルがパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位した状態を示す図3に対応した斜視図である。
図7】第1実施形態に係るシートバックフレームの一部を示す側面図である。
図8】別体パネルがパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位した状態を示す図7に対応した側面図である。
図9】比較例に係る車両用シートにおける後面衝突時の状況を示す概略的な側面図である。
図10】第1実施形態に係る車両用シートにおける後面衝突時の状況を示す概略的な側面図である。
図11】第1実施形態に係るシートバックパネルの第1変形例を示す図4に対応した斜視図である。
図12図11のF12-F12線に沿った切断面を示す断面図である。
図13】第1実施形態に係るシートバックパネルの第2変形例を示す図4に対応した斜視図である。
図14図13のF14-F14線に沿った切断面を示す断面図である。
図15】第2実施形態に係るシートバックフレームの一部を示す図3に対応した斜視図である。
図16】別体パネルがパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位した状態を示す図15に対応した斜視図である。
図17】第2実施形態に係るシートバックフレームの一部を示す側面図である。
図18】別体パネルがパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位した状態を示す図17に対応した側面図である。
図19】第3実施形態に係るシートバックフレームの一部を示す側面図である。
図20】別体パネルがパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位した状態を示す図19に対応した側面図である。
図21】第3実施形態において別体パネルに設けられるヒンジの一例を示す側面図である。
図22図21に示されるヒンジにおいて別体パネルが屈曲した状態を示す側面図である。
図23】第3実施形態において別体パネルに設けられるヒンジの他の例を示す側面図である。
図24図23に示されるヒンジにおいて別体パネルが屈曲した状態を示す側面図である。
図25】第4実施形態に係るシートバックフレームの一部を示す図3に対応した斜視図である。
図26】第4実施形態に係るシートバックフレームの一部を示す側面図であり、別体パネルがパネル本体に対してシートバックの後方側へ相対変位した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、図1図14を参照して本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜記載された矢印FR、UPは、車両用シート10が搭載された車両の前方及び上方をそれぞれ示している。また、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員である着座者Pが着座するシートクッション12と、着座者Pの背凭れとなるシートバック14とを備えている。この車両用シート10は、車両の2列目又は3列目のシートであり、一例として3人掛けのシートである。この車両用シート10のシートバック14は、一例として6:4の分割可倒式であり、シートバック14の車両後方には、荷室LRが設けられている。なお、各図中に適宜記載された矢印BFR、BLH及びBUPは、シートバック14の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、シートバック14に対する方向を示すものとする。
【0026】
図2に示されるように、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム18は、左側フレーム18Lと右側フレーム18Rとに分割されている。本実施形態では、一例として右側フレーム18Rの方が左側フレーム18Lよりも左右方向の寸法が大きく設定されている。左側フレーム18L及び右側フレーム18Rに対して前方側にはそれぞれ、クッション材である図示しないシートバックパッドが取り付けられており、左側フレーム18L及び右側フレーム18Rと各シートバックパッドとがそれぞれシートバック表皮20(図1参照)によって覆われている。
【0027】
左側フレーム18L及び右側フレーム18Rはそれぞれ、図示しないヒンジを介して車体の床部に回転可能に連結されている。左側フレーム18Lの上部の左端部及び右側フレーム18Rの上部の右端部には、それぞれ図示しないロック機構が取り付けられる。これらのロック機構が車体に設けられたラッチと係合することにより、左側フレーム18L及び右側フレーム18Rが通常使用位置(図1参照)に保持される。また、上記各ロック機構のロックが解除されることにより、左側フレーム18L及び右側フレーム18Rがシートクッション12の上方に重なる前倒し位置へと前倒し可能となる。左側フレーム18L及び右側フレーム18Rが通常使用位置に位置する状態では、シートバック14の前後左右上下の方向と車両の前後左右上下の方向とが略一致する。
【0028】
左側フレーム18L及び右側フレーム18Rはそれぞれ、前後方向視で枠状をなすフレーム本体22と、フレーム本体22に対して後方側に配置され、フレーム本体22に固定されたシートバックパネル36と、を備えている。左側フレーム18Lのフレーム本体22は、互いに左右方向に間隔をあけて上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム24と、左右のサイドフレーム24の上端部を左右方向に繋いだアッパフレーム26と、左右のサイドフレーム24の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム28とを有している。左側フレーム18Lのアッパフレーム26の左右方向中間部には、左右一対のヘッドレストサポートブラケット32が固定されている。
【0029】
右側フレーム18Rのフレーム本体22は、互いに左右方向に間隔をあけて上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム24と、左右のサイドフレーム24の上端部を左右方向に繋いだアッパフレーム26と、左右のサイドフレーム24の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム28と、アッパフレーム26の左右方向中間部とロアフレーム28の左右方向中間部とを上下方向に繋いだセンタフレーム30とを有している。右側フレーム18Rのアッパフレーム26の右側部分と左側部分とには、それぞれ左右一対のヘッドレストサポートブラケット32が固定されている。サイドフレーム24、アッパフレーム26、ロアフレーム28、センタフレーム30及びヘッドレストサポートブラケット32は、例えば金属製のパイプ材によって構成されている。
【0030】
図1に示されるように、右側フレーム18Rのアッパフレーム26の右側部分に固定された左右のヘッドレストサポートブラケット32には、3人掛けの車両用シート10において右側に着座する着座者Pの頭部Hを支持するヘッドレスト16がヘッドレストサポート34を介して連結される。また、右側フレーム18Rのアッパフレーム26の左側部分に固定された左右のヘッドレストサポートブラケット32には、3人掛けの車両用シート10において中央に着座する着座者(図示省略)の頭部を支持するヘッドレスト16がヘッドレストサポート34を介して連結される。また、左側フレーム18Lのアッパフレーム26に固定された左右のヘッドレストサポートブラケット32には、3人掛けの車両用シート10において左端に着座する着座者(図示省略)の頭部を支持するヘッドレスト16がヘッドレストサポート34を介して連結される。
【0031】
左側フレーム18L及び右側フレーム18Rのシートバックパネル36は、パネル本体38と、別体パネル42とを有している。パネル本体38は、フレーム本体22と共に左側フレーム18L及び右側フレーム18Rの本体部19(シートバックフレーム18の本体部19)を構成している。パネル本体38及び別体パネル42は、例えば金属製、樹脂製又はダンボールプラスチック製の板材によって構成されており、前後方向を板厚方向として配置されている。右側フレーム18Rのパネル本体38には、3人掛けの車両用シート10において右側に着座する着座者Pの背中Bと対向する箇所に開口40が形成されている。左側フレーム18Lのパネル本体38には、3人掛けの車両用シート10において左側に着座する着座者の背中Bと対向する箇所に開口40が形成されている。各開口40はそれぞれ、別体パネル42によって閉塞されている。
【0032】
なお、左側フレーム18Lのシートバックパネル36と右側フレーム18Rのシートバックパネル36とは、別体パネル42の周辺の構成が基本的に同様の構成とされているため、以下、図3図8を参照して主に右側のシートバックパネル36について説明する。
【0033】
図3図6に示されるように、パネル本体38に形成された開口40は、前後方向視で上下方向を長手とする長尺矩形状をなしている。この開口40は、着座者Pの頭部Hを支持するヘッドレスト16の真下に配置されており、着座者Pの背中Bの真後ろに配置される。この着座者Pは、例えばAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)のダミーと同等の体格を有している。開口40の左右方向の寸法は、例えば着座者Pの左右の肩甲骨の上角間の寸法と同等に設定されている。開口40の上下方向の寸法は、例えば着座者Pの第1胸椎から第12胸椎までの寸法と同等に設定される。この開口40は、着座者Pの第1胸椎から第12胸椎までの高さの範囲において、着座者Pの左右の肩甲骨の上角間の寸法と同等の幅で、着座者Pの背中Bに対して車両後方側から対向する。
【0034】
別体パネル42は、前後方向視で開口40と同様の長尺矩形状をなしており、開口40の内側に嵌合している。この別体パネル42は、シートバックパネル36において、車両の後面衝突時に着座者Pの背中からの荷重が最初に入力される領域に配置されている。別体パネル42の外周部には、開口40の縁部に対して後方側から当接したフランジ部44が形成されている。このフランジ部44は、パネル本体38に対する別体パネル42の前方側への相対変位を規制している。このフランジ部44は、本発明における「当接部」に相当する。
【0035】
別体パネル42の下端部(一端部)の左右両端部には、それぞれブラケット46が固定されている。これら左右のブラケット46に対応してロアフレーム28には、左右のブラケット48が固定されている。左右のブラケット48の上端部は、左右のブラケット46に対して左右方向の外側から対向している。これらのブラケット46、48には、左右方向を軸線方向とするシャフト54が貫通している。これにより、別体パネル42の下端部は、パネル本体38に対してシャフト54回りに回転可能に連結されている。なお、シャフト54の代わりにリベット等を用いてもよい。なお、ブラケット48がパネル本体38に固定される構成にしてもよい。
【0036】
別体パネル42の上端部(他端部)の左右両端部には、それぞれブラケット50が固定されている。これら左右のブラケット50に対応してパネル本体38には、左右のブラケット52が固定されている。これらのブラケット52は、ブラケット50に対して左右方向の外側から対向している。ブラケット52とブラケット50との間には、それぞれ弾性部材である引張りコイルスプリング56が架け渡されている。これにより、別体パネル42の上端部は、パネル本体38に対して左右の引張りコイルスプリング56を介して連結されている。なお、弾性部材は引張りコイルスプリング56に限らず、他の種類のばねやゴムであってもよい。
【0037】
上記構成の車両用シート10では、通常時には別体パネル42が左右の引張りコイルスプリング56によって図1図5及び図7に示される通常位置に保持されている。この状態では、パネル本体38の開口40に別体パネル42が嵌合することで、開口40が閉塞されている。
【0038】
車両の後面衝突時には、車両後方側へ慣性移動しようとする着座者Pの背中Bからの荷重が別体パネル42に入力される。これにより、図6及び図8に示されるように、別体パネル42がパネル本体38に対して後方側へ相対変位するように構成されている。具体的には、車両の後面衝突時に着座者Pの背中Bからの荷重が別体パネル42に加わると、別体パネル42の上端部をパネル本体38に対して連結した左右の引張りコイルスプリング56が引張り方向に弾性変形する。これにより、別体パネル42の下端部に設けられたシャフト54を回転中心として別体パネル42がパネル本体38に対して後方側へ相対変位するように構成されている。また、上記の荷重が別体パネル42に加わらなくなると、左右の引張りコイルスプリング56が弾性復帰する。これにより、別体パネル42が元の通常位置に復帰されるように構成されている。なお、上記の後面衝突は、例えば中国車両安全基準(CNCAP)が規定する後突頚部障害保護試験の後面衝突と同様の衝突である。
【0039】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
本実施形態では、車両用シート10のシートバック14の背部に、シートバックフレーム18の本体部19の一部を構成するシートバックパネル36が配置されている。このシートバックパネル36のパネル本体38には、着座者Pの背中Bと対向する箇所に開口40が形成されている。この開口40は、本体部19に取り付けられた別体パネル42によって閉塞されている。この別体パネル42は、車両の後面衝突時に着座者Pの背中Bから荷重を受けてパネル本体38に対して後方側へ相対変位する。これにより、着座者Pの背中Bのシートバック14への入り込み量を増加させることができる。その結果、着座者Pの頭部Hがヘッドレスト16に支持されるタイミングが早くなる(所謂コンタクトタイムが短くなる)ので、着座者Pの鞭打ち症の発生抑制に寄与する。
【0041】
上記の効果について図9に示される比較例を参照して補足する。この比較例では、シートバックパネル36がパネル本体38と別体パネル42とに分割されていないため、車両の後面衝突時には、着座者Pの背中Bがシートバックに入り込み難くなり、着座者Pの頭部Hがヘッドレスト16に支持されるタイミングが遅くなる。これに対し、本実施形態では、図10に示されるように、別体パネル42が着座者Pの背中Bに押されて後方側へ変位することにより、着座者Pの背中Bのシートバック14への入り込みが促進され、着座者Pの頭部Hが早期にヘッドレスト16に支持される。
【0042】
また、本実施形態では、別体パネル42の外周部に設けられたフランジ部44がパネル本体38の開口40の縁部に対して後方側から当接する。これにより、シートバック14が通常使用位置に位置する場合に、別体パネル42がパネル本体38に対してシートバック14の前方側に不用意に脱落することを防止できる。また、シートバック14が通常使用位置に位置する状態で車両が前面衝突をすると、荷室LRに置かれた荷物がシートバック14に対して後方側から衝突する場合があるが、そのような場合でも、別体パネル42がパネル本体38に対してシートバック14の前方側に不用意に脱落することを防止できる。
【0043】
また、本実施形態では、車両の後面衝突時に着座者Pの背中Bからの荷重が別体パネル42に加わると、別体パネル42の上端部を本体部19に対して連結した左右の引張りコイルスプリング56が弾性変形する。これにより、別体パネル42の下端部に設けられたシャフト54を回転中心として別体パネル42が本体部19に対して後方側へ相対変位する。また、上記の荷重が別体パネル42に加わらなくなると、左右の引張りコイルスプリング56が弾性復帰する。これにより、別体パネル42を元の通常位置に戻すことができるので、シートバック14の修理が不要である。
【0044】
なお、上記第1実施形態では、別体パネル42の下端部が本体部19に対して回転可能に連結され、別体パネル42の上端部が本体部19に対して引張りコイルスプリング56(弾性部材)を介して連結されたが、これに限るものではない。別体パネル42の上端部、左端部又は右端部が本体部19に対して回転可能に連結され、別体パネル42の下端部、右端部又は左端部が本体部19に対して弾性部材を介して連結された構成にしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態において、チャイルドシートのトップテザーを係止するテザーアンカ(テザーワイヤ)をシートバックフレーム18に設ける場合、別体パネル42より下方側にテザーアンカを設けることが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、別体パネル42の外周部に設けられたフランジ部44(当接部)がパネル本体38の開口40の縁部に対して後方側から当接する構成にしたが、これに限るものではない。例えば図11及び図12に示される第1変形例や、図13及び図14に示される第2変形例のように構成してもよい。
【0047】
第1変形例では、別体パネル42の左右両端部に上下一対の引掛爪60が設けられている。これらの引掛爪60は、本発明の「当接部」に相当するものであり、パネル本体38の後面側(背面側)で別体パネル42から左右方向の外側へ延びている。各引掛爪60の先端部は前方側へ屈曲しており、パネル本体38に形成された貫通孔62に挿入されている。これにより、後方側から別体パネル42に加わる荷重に対して別体パネル42をパネル本体38に強固に保持させることができる。
【0048】
第2変形例では、別体パネル42の上端部及び左右両端部に断面L字状の引掛フランジ部64が設けられている。これらの引掛フランジ部64は、本発明の「当接部」に相当するものである。これらの引掛フランジ部64に対応してパネル本体38の開口40の縁部には、後方側へ屈曲した屈曲部66が設けられている。これらの屈曲部66に各引掛フランジ部64が引っ掛けられている。これにより、後方側から別体パネル42に加わる荷重に対して別体パネル42をパネル本体38に強固に保持させることができる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付しその説明を省略する。
【0050】
<第2の実施形態>
図15及び図16には、本発明の第2実施形態に係るシートバックフレーム18の一部が斜視図にて示されている。また、図17及び図18には、第2実施形態に係るシートバックフレーム18の一部が側面図にて示されている。この実施形態では、別体パネル42の下端部に固定された左右のブラケット46と、パネル本体38に固定された左右のブラケット48との間に、それぞれ弾性部材である引張りコイルスプリング56が架け渡されている。これにより、別体パネル42の上端部及び下端部がそれぞれパネル本体38に対して左右の引張りコイルスプリング56を介して連結されている。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。
【0051】
この実施形態では、通常時には別体パネル42が各引張りコイルスプリング56によって図15及び図17に示される通常位置に保持されている。車両の後面衝突時には、着座者Pの背中Bからの荷重が別体パネル42に加わることにより、別体パネル42をパネル本体38に連結した各引張りコイルスプリング56が引張り方向に弾性変形する。これにより、別体パネル42がパネル本体38に対して後方側へ相対変位する。また、上記の荷重が別体パネル42に加わらなくなると、各引張りコイルスプリング56が弾性復帰する。これにより、別体パネル42を元の通常位置に戻すことができる。この実施形態においても第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0052】
<第3の実施形態>
図19及び図20には、本発明の第3実施形態に係るシートバックフレーム18の一部が側面図にて示されている。この実施形態では、別体パネル42の上端部(一端部)がシャフト54を介してパネル本体38に回転可能に連結されている。別体パネル42の下端部(他端部)には、左右方向の外側に突出したピン68が設けられており、当該ピン68がパネル本体38に形成された長孔70に挿入されている。この長孔70は、上下方向を長手方向としており、別体パネル42の下端部はパネル本体38に対して上下方向に相対変位可能に連結されている。別体パネル42の上下方向中間部には、ヒンジ部72が設けられている。このヒンジ部72は左右方向に延在している。このヒンジ部72は、図21及び図22に示されるようなヒンジ軸74を有するものでもよいし、図23及び図24に示されるようなインテグラルヒンジであってもよい。このヒンジ部72において別体パネル42は屈曲可能とされている(図20図22及び図24参照)。
【0053】
つまり、この実施形態では、別体パネル42は、別体パネル42を屈曲させるヒンジ部72を有すると共に、ヒンジ部72と直交する方向の一端部(上端部)がパネル本体38に対して回転可能に連結され、ヒンジ部72と直交する方向の他端部(下端部)がパネル本体38に対して上記一端部側(上方側)へ相対変位可能に連結されている。別体パネル42は、例えば下端部が図示しない付勢部材によって下方側へ付勢されている。これにより、別体パネル42は、通常時には図19に示される通常位置に保持されている。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。
【0054】
この実施形態では、車両の後面衝突時に着座者Pの背中Bからの荷重が別体パネル42に加わると、ヒンジ部72において別体パネル42が屈曲する。この際には、別体パネル42の上端部がパネル本体38に対してシャフト54回りに回転し、別体パネル42の下端部がパネル本体38に対して上方側へ相対変位する。これにより、別体パネル42をパネル本体38に対して後方側へ相対変位させることができる。また、上記の荷重が別体パネル42に加わらなくなった際には、図示しない付勢部材の付勢力によって別体パネル42を元の通常位置に戻すことができる。この実施形態においても第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。なお、別体パネル42に設けられるヒンジ部72は、左右方向に延在するものに限らず、上下方向に延在するものでもよい。
【0055】
<第4の実施形態>
図25には、本発明の第4実施形態に係るシートバックフレーム18の一部が斜視図にて示されており、図26には、このシートバックフレーム18の一部が側面図にて示されている。この実施形態では、別体パネル42は、上側部42U(一側部)と下側部42L(他側部)とに上下に二分割されている。上側部42Uの上端部に固定された左右のブラケット50と、パネル本体38に固定された左右のブラケット52とには、左右方向を軸線方向とするシャフト54が貫通している。これにより、上側部42Uの上端部は、パネル本体38に対してシャフト54回りに回転可能に連結されている。上側部42Uと下側部42Lとの間には、左右一対の引張りコイルスプリング56(弾性部材)が架け渡されている。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。
【0056】
この実施形態では、通常時には別体パネル42の上側部42U及び下側部42Lが左右の引張りコイルスプリング56によって図25に示される通常位置に保持されている。車両の後面衝突時には、着座者Pの背中Bからの荷重が別体パネル42に加わることにより、上側部42Uと下側部42Lとを連結した左右の引張りコイルスプリング56が引張り方向に弾性変形する。これにより、上側部42Uの上端部(下側部42Lとは反対側の端部)に設けられたシャフト54を中心として上側部42Uがパネル本体38に対して回転すると共に、下側部42Lの下端部(上側部42Uとは反対側の端部)に設けられたシャフト54を中心として下側部42Lがパネル本体38に対して回転する。これにより、別体パネル42をパネル本体38に対して後方側へ相対変位させることができる。また、上記の荷重が別体パネル42に加わらなくなると、左右の引張りコイルスプリング56が弾性復帰する。これにより、上側部42U及び下側部42Lを元の通常位置に戻すことができる。この実施形態においても第1実施形態と基本的に同様の効果が得られる。なお、別体パネル42が上下に二分割される構成に限らず、左右に二分割される構成にしてもよい。
【0057】
以上、幾つかの実施形態及び変形例を挙げて本発明について説明したが、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態や上記各変形例に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 シートバックフレーム
19 本体部
22 フレーム本体
36 シートバックパネル
38 パネル本体
40 開口
42 別体パネル
42U 上側部(一側部)
42L 下側部(他側部)
44 フランジ部(当接部)
56 引張りコイルスプリング(弾性部材)
60 引掛爪(当接部)
64 引掛フランジ部(当接部)
72 ヒンジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26