IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図1
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図2
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図3
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図4
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図5
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図6
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図7
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図8
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図9
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図10
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図11
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図12
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図13
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図14
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図15
  • 特開-植生マットおよび法面緑化方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161803
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】植生マットおよび法面緑化方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
E02D17/20 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072378
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226747
【氏名又は名称】日新産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友人
(72)【発明者】
【氏名】石田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】長沼 寛
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA12
(57)【要約】
【課題】植生植物の乾燥害を抑え、地面または法面をより早期かつ効率的に緑化することを可能とする植生マットを提供する。
【解決手段】緑化すべき地面に設置される植生マット10は、縦横に平面状に延在して地面に敷設される、透水性を有する植生シート11と、植生シート11に装着される、遮水性を有する1または複数の保水シート15と、を備える。保水シート15は、植生シート11に連結される連結部16と、連結部16を固定端として自由端が浮き上がるように変形可能である可動部17とを有する。可動部17は、植生シート11上に発芽または生長した植生植物Pによって保水シート15の自由端が持ち上げられるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑化すべき地面に設置される植生マットであって、
縦横に平面状に延在して地面に敷設される、透水性を有する植生シートと、
前記植生シートに装着される、遮水性を有する1または複数の保水シートと、を備え、
前記保水シートは、前記植生シートに連結される連結部と、前記連結部を固定端として自由端が浮き上がるように変形可能である可動部とを有し、
前記可動部は、前記植生シート上に発芽または生長した植生植物によって前記保水シートの自由端が持ち上げられるように構成されていることを特徴とする植生マット。
【請求項2】
前記植生シートは、網状シートを含むことを特徴とする請求項1に記載の植生マット。
【請求項3】
前記植生シートと前記保水シートとが水溶性接着剤によって接着され、前記植生シートが、前記連結部を貫通する固定部材を介して地面に部分的に固定されることを特徴とする請求項1に記載の植生マット。
【請求項4】
前記保水シートは、前記植生マットの横方向に沿って延びる短冊形状を有することを特徴とする請求項1に記載の植生マット。
【請求項5】
前記保水シートの面積当たりの重量が60g/m未満であり、かつ、前記保水シートの固定端から自由端までの距離が10~100mmであることを特徴とする請求項1に記載の植生マット。
【請求項6】
前記保水シートは、遮水性および断熱性を有する発泡樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の植生マット。
【請求項7】
前記植生シートは、種子材、肥料材、土壌改良材および土壌のうちの少なくとも1種以上を含む緑化材を保持していることを特徴とする請求項1に記載の植生マット。
【請求項8】
法面を緑化する方法であって、
請求項1から7のいずれか一項の植生マットを準備する工程と、
前記植生シートの縦方向が法面の傾斜方向に沿うように、前記植生シートを法面に敷設する工程と、
前記各保水シートの長手方向が前記植生シートの横方向に沿って延在し、前記各保水シートの自由端が法面の傾斜方向を向いて配置されるように、前記各保水シートの前記連結部を前記植生シートに連結する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面などの地面を緑化するための植生マットおよび法面緑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種法面や新規造成地等の施工面においては、その緑化を積極的に行って、法面等の美化と共に土砂の流失を防止することが行われている。従来、土、種子、肥料、保水材などの緑化材(または植生基材)を保持する植生マットが土壌にピンやアンカーなどを用いて固定されることにより、緑化とともに斜面の保護が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、自然植生植物で緑化すべき土壌の表面に敷設される植生マットを示している。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。植生マット(100)は、緑化すべき土壌(P)の自然環境に対応する埋土種子(111)を含む現地発生土(106)を収容した第1収容部(102)と、第1収容部(102)と異なる位置で人工土(107)を収容した第2収容部(103)と、を備える。第1及び第2収容部(102,103)は、長手方向に延伸する網状の長筒体から構成され、現地発生土(106)又は人工土(107)を収容する植生袋(108)を保持可能に構成されている。植生マット(100)は、法面等の美化と共に土砂の流失を防止するために土壌(P)に設置される。
【0004】
特許文献2は、法面などの緑化工事に用いられる植生マットを示している。以下、当該段落において、()内に特許文献2の符号を示す。植生マット(M)は、少なくとも部分的に分解可能な素材よりなる上面シート(1)と下面シート(2)との間に、高分子吸収体などの保水材を内部に充填した袋体(F)と植物種子(3)と植生基材(4)とを介在させたものである。または、特許文献2には、植生マット(M)は、上面シート(1)の外面側に植物種子の発芽生育が可能な目合いを有するネットを付設してなる植生マット(1)のカット部分(8)における上面シート(1)と下面シート(2)との間に植物性繊維材,不織布,高分子吸収体,吸水性を有する紙材と適度の耐水性を有する紙材とを積層したものであってもよいことが示されている。すなわち、植生マット(M)は、高分子吸収体などの保水材を含むことにより、保水性を向上させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5981062号公報
【特許文献2】特許第2649030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような従来の植生マットは、植生袋を収容部に収容することで法面を含む斜面の緑化を促進するものである。しかしながら、植生マット自体は、保水性を有していないので、特に雨量が少ない乾燥した環境では、水分不足により植生植物の生長が不十分となる場合があった。これに対し、特許文献2の植生マットのように、植生マットに高分子吸収体などの保水材を設けることもまた行われている。しかしながら、植生マットに保水材を加えると、植生マットが嵩張って重量化することから、その運搬性や施工性が著しく損なわれることが問題であった。さらに、吸水材料を用いた保水材の利用は、降雨後の保水効果をある程度発揮可能である一方で、降雨の頻度が少ない乾燥した環境では、保水材自体が植生植物や土壌から水分を内部に吸収し、植生環境の乾燥を助長するように働くことで、却って、植生植物の生長を阻害するといった問題もあった。これら問題点に対し、発明者らは、高分子吸収体からなる吸水材料を用いなくても、植生植物の乾燥害を抑えつつ、より早期かつ効率的に地面または法面を緑化することを可能とすることを解決すべき課題とした。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より早期かつ効率的な植生の導入を可能とする植生マット、および、法面緑化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態の植生マットは、緑化すべき地面に設置される植生マットであって、
縦横に平面状に延在して地面に敷設される、透水性を有する植生シートと、
前記植生シートに装着される、遮水性を有する1または複数の保水シートと、を備え、
前記保水シートは、前記植生シートに連結される連結部と、前記連結部を固定端として自由端が浮き上がるように変形可能である可動部とを有し、
前記可動部は、前記植生シート上に発芽または生長した植生植物によって前記保水シートの自由端が持ち上げられるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態の植生マットによれば、保水シートが植生シートに連結された状態で、植生植物が植生シートから発芽または生長すると、植生植物によって、保水シートが地面から浮き上がるように持ち上げられる。保水シートは、発芽または生長した植生植物に近接または接触するとともに、植生植物の上方および/または側方から覆うように延在する。そして、保水シートが遮水性であることから、保水シートが植生植物から蒸散した水蒸気から露の形成を促し、保水シートの表面に露が水滴として付着する。保水シート表面に付着した水滴によって、保水シートの周囲領域の湿度が上昇し、少なくとも保水シートの周囲領域において、植生植物の表面への露の形成が連鎖的に拡がる。これにより、植生マットは、植生植物に継続的に水分を供給し、植生植物の乾燥害を効果的に抑えることが可能である。したがって、本発明の植生マットは、地面をより早期かつ効率的に緑化することを可能とするものである。
【0010】
本発明のさらなる形態の植生マットは、上記形態の植生マットにおいて、前記植生シートは、網状シートを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる形態の植生マットは、上記形態の植生マットにおいて、前記植生シートと前記保水シートとが水溶性接着剤によって接着され、前記植生シートが、前記連結部を貫通する固定部材を介して地面に部分的に固定されることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる形態の植生マットは、上記形態の植生マットにおいて、前記保水シートは、前記植生マットの横方向に沿って延びる短冊形状を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる形態の植生マットは、上記形態の植生マットにおいて、前記保水シートの面積当たりの重量が60g/m未満であり、かつ、前記保水シートの固定端から自由端までの距離が10~100mmであることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる形態の植生マットは、上記形態の植生マットにおいて、前記保水シートは、遮水性および断熱性を有する発泡樹脂フィルムからなることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらなる形態の植生マットは、上記形態の植生マットにおいて、前記植生シートは、種子材、肥料材、土壌改良材および土壌のうちの少なくとも1種以上を含む緑化材を保持していることを特徴とする。
【0016】
本発明の一形態の方法は、法面を緑化する方法であって、
上記形態の植生マットを準備する工程と、
前記植生シートの縦方向が法面の傾斜方向に沿うように、前記植生シートを法面に敷設する工程と、
前記各保水シートの長手方向が前記植生シートの横方向に沿って延在し、前記各保水シートの自由端が法面の傾斜方向を向いて配置されるように、前記各保水シートの前記連結部を前記植生シートに連結する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の植生マット、植生マットおよび法面緑化方法は、高分子吸収体からなる吸水材料を用いることがなくても、植生植物の乾燥害を抑え、地面または法面をより早期かつ効率的に緑化することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の植生マットの概略斜視図。
図2図1の植生マットの断面図。
図3】本発明の一実施形態の植生マットの法面設置直後の形態を示す模式図。
図4】本発明の一実施形態の植生マットの法面設置後の発芽期の形態を示す模式図。
図5】本発明の一実施形態の植生マットの法面設置後の生育前期の形態を示す模式図。
図6】本発明の一実施形態の植生マットの法面設置後の生育後期の形態を示す模式図。
図7】本発明の植生マットの実証試験に係る(a)比較例1、(b)比較例2、(c)比較例3の植生マットを示す模式図。
図8】本発明の植生マットの実証試験における設置直後の状態の写真であって、実施例1,2および比較例1~3を示す。
図9】本発明の植生マットの実証試験における10日経過後の状態の写真であって、実施例1,2および比較例1~3を示す。
図10】本発明の植生マットの実証試験における3週間経過後の状態の写真であって、実施例1,2および比較例1~3を示す。
図11】本発明の植生マットの実証試験における6週間経過後の状態の写真であって、実施例1,2および比較例1~3を示す。
図12】本発明の別実施形態(第2実施形態)の植生マットを示す概略斜視図。
図13図12の植生マットの概略断面図を示し、(a)法面設置直後の形態を示し、(b)経時後の形態を示す。
図14】本発明の別実施形態(第3実施形態)の植生マットを示す模式図。
図15】本発明の変形例の植生マットを示す模式図。
図16】本発明の変形例の植生マットを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0020】
本発明の一実施形態の植生マット10は、法面等の地面に設置されることで、植生植物による法面緑化の促進を可能とするものである。なお、本明細書では、植生マット10が法面に敷設されたときに法面の傾斜方向に沿う方向を「縦」方向とし、法面の等高線方向に沿う方向を「横」方向として定義する。
【0021】
図1は、本実施形態の植生マット10の概略斜視図である。図2は、植生マット10の概略断面図である。図1および図2に示すとおり、植生マット10は、縦横に平面状に延在して地面に敷設される透水性の植生シート11と、該植生シート11に装着される、遮水性を有する複数の保水シート15と、を備える。
【0022】
植生シート11は、ロール状に巻取り可能であるように十分な可撓性および柔軟性を有する。植生シート11は、縦横に平面状に延在する網状シート12と、植生植物の種子が播種された種子付シート13と、を備える。網状シート12は、該種子付シート13の表面に接着剤等の任意の結合手段で貼り付けられている。網状シート12は、縦糸及び横糸を略直交に編み込んで形成されたものであり、その縦糸および横糸は、合成樹脂材料や天然材料の繊維から形成され得る。この網状シート12は、法面の土砂の流出などを抑える法面の保護効果を発揮し得る。網状シート12の網目模様や目合いは任意に選択され得る。また、種子付シート13は、複数の種子が貼り付けられた、平面状に延在するシート体から構成されている。種子付シート13は、緑化材の1種として植生マット10に保持されている。種子付シート13は、紙、織布または不織布から形成され得る。この種子付シート13は、降雨によって消失する水解性または水溶性を有してもよい。
【0023】
複数の保水シート15は、植生シート11の横方向に沿って延在するとともに、縦方向に所定の間隔で植生シート11の表面に装着されている。複数の保水シート15の縦方向の配置間隔は、100mm~1000mmであることが好ましく、200mm~600mmであることがより好ましい。
【0024】
保水シート15は、通水性の植生シート11と異なり、水分を通さない遮水性を有する材料で形成された。保水シート15は、比較的薄手の可撓性シートであり、植生シート11の横方向の全体に沿って延びる短冊形状を有する。また、図2に示すように、保水シート15は、植生シート11に連結される連結部16と、連結部16を固定端として自由端が浮き上がるように変形可能である可動部17とを備える。
【0025】
本実施形態では、保水シート15の幅方向(縦方向)の略中央に連結部16が形成されている。連結部16は、長手方向に延びる直線領域に形成され、任意の接続手段によって、植生シート11に連結されるものである。例えば、接続手段は、水溶性接着剤、非水溶性接着剤、縫製、熱溶着、超音波溶着、テープ材、ピン(固定部材)、アンカー(固定部材)などの任意な手段から選択され得る。また、連結の態様は、点付け、線付けまたは面付けのいずれであってもよい。
【0026】
本実施形態では、可動部17は、連結部16を中心とした幅方向の両側に形成されている。ここで、連結部16が固定端となり、かつ、保水シート15の幅方向の両縁が自由端となることで、可動部17は、その自由端が捲れ上がるように可撓変形することができる。そして、可動部17は、植生シート11に発芽した植生植物によって保水シート15の自由端が持ち上げられて変形可能であるように構成されている。すなわち、保水シート15の可動部17が植生植物の発芽による弱い力であっても反り上がって変形するように、保水シート15の寸法形状(厚みや可動幅)や素材が定められた。より具体的には、保水シート15の面積当たりの重量が60g/m未満であることが好ましい。植生植物の種類にもよるが、保水シート15の面積当たりの重量が60g/m未満であれば、保水シート15が発芽または生長する植生植物によって持ち上げられることが想定される。また、保水シート15の固定端から自由端までの距離(可動幅)が10~100mmであることが好ましい。
【0027】
また、本実施形態では、保水シート15の材質は、可撓性、遮水性および断熱性を有する発泡樹脂シートから選択された。発泡樹脂シートは、表面に微細な凹凸を有することから、凹凸を有しないシートと比べて、より大きい表面積を確保することができる。保水シート15の表面積の増大により、後述する保水シート15によって捕集される露の付着量を効果的に増加させることができる。なお、本実施形態では、保水シート15を構成する発泡樹脂シートとして、発泡ポリエチレンシートが選択されたが、他の樹脂材料が選択されてもよい。
【0028】
次に、本実施形態の植生マット10を法面Gに設置した設置構造およびその経時変化について説明する。図3は、植生マット10の法面G設置直後の形態を示す模式図である。図4は、植生マット10の法面G設置後の発芽期の形態を示す模式図である。図5は、植生マット10の法面G設置後の生育前期の形態を示す模式図である。図6は、植生マット10の法面G設置後の生育後期の形態を示す模式図である。
【0029】
植生マット10の設置構造において、1または複数の植生マット10が法面G上に敷設され、土壌表面に複数の固定部材18を用いて固定されている。ここで、植生マット10の横方向に延びる保水シート15が法面Gの傾斜方向と直交する方向(等高線)に沿って配置されている。また、複数の保水シート15は、法面Gの傾斜方向にほぼ等間隔に並んでいる。より具体的には、図3に示すように、ピンとしての固定部材18が、植生マット10を貫通するように法面Gに打設されている。また、固定部材18は、保水シート15の連結部16を貫通するように配置されている。これにより、保水シート15の植生シート11および/または法面Gへの連結を効果的に補強することができる。
【0030】
図3に示す植生マット10設置直後の設置構造では、保水シート15が平面状に延在し、可動部17が植生シート11表面に接することで、植生シート11および土壌表面を上方から覆っている。つまり、遮水性の保水シート15が植生シート11および土壌表面を覆うことにより、降雨等によって土壌に蓄えられた水分が法面Gの土壌表面から蒸散することを抑えるように機能する。
【0031】
図4に示す植生マット10の設置構造では、数回の降雨などを経て、植生シート11の種子付シート13の種子から植生植物Pが発芽している。この発芽期において、保水シート15の下側には、比較的多くの水分が蓄えられていることから、植生植物Pが発芽し易い。そして、保水シート15の下側で植生シート11表面から発芽した植生植物Pによって、保水シート15の可動部17が上側に持ち上げられる。つまり、発芽期の設置構造では、保水シート15が植生シート11表面から浮き上がっている。発芽した植生植物Pの生長に必要な通気性や日照を確保しつつ、保水シート15が植生シート11を近接した位置で上方から覆うことで、法面Gの土壌表面からの水分の蒸散を抑えることができる。また、保水シート15が植生植物Pに対面して接触または近接していることから、保水シート15には、土壌表面や植生植物Pから蒸発した水分が露Dとして付着する。つまり、保水シート15は、植生植物Pから蒸発する水分を水滴としてその表面に保持することができる。これにより、生育環境における水切れを抑え、保水シート15付近の植生植物Pの生長を促進することができる。
【0032】
図5に示す植生マット10の設置構造では、植生植物Pが発芽期の後の生育前期にある。図5に示すように、この段階では、植生植物Pが比較的大きく生長し、それに伴い、保水シート15の可動部17が反り上がるように変形している。このとき、保水シート15が、植生植物Pに側方から対面して接触または近接しているので、この段階でも同様に、保水シート15には、土壌表面や植生植物Pから蒸発した水分が露Dとして付着する。露Dは、保水シート15表面だけでなく、保水シート15に隣接する植生植物Pの表面にも付着している。
【0033】
図6に示す植生マット10の設置構造では、植生植物Pが生育前期からさらに生長した生育後期にある。図6に示す段階では、植生植物Pが繁茂し、それに伴い、保水シート15が植生植物Pの茂みに隠れるとともに、可動部17が法面Gに略直角に立ち上がるように変形している。このとき、保水シート15が植生植物Pに側方から対面して接触または近接しているので、植生植物Pが繁茂しても継続的に、保水シート15が植生植物Pから蒸発した水分を表面に保持することができる。露Dは、保水シート15表面に加え、図5の設置構造よりも広い範囲の植生植物Pの表面にも付着している。つまり、露Dは、隣接する植生植物Pを伝って全体に広がる。
【0034】
このように、本実施形態の植生マット10は、保水シート15が植生植物Pから蒸発した水分を露として捕集し、再度、植生植物Pに水分を継続的に補給することを可能とする。そして、保水シート15の表面に保持された水滴により、保水シート15の周辺領域の湿度が結果的に上昇し、植生植物Pの表面へと露の形成が連鎖的に拡大する。したがって、植生マット10は、降雨の頻度が少ない環境であっても、植生植物Pから蒸散した水分を再利用するべく露の生成を促進させることで、植生植物Pへの乾燥害を効果的に抑え、植生の早期化を実現することが可能である。
【0035】
続いて、植生マット10を用いて法面Gを緑化する方法について説明する。まず、法面Gの緑化すべき領域の面積に合わせて、所定の寸法の1または複数の植生マット10を準備する。植生シート11の縦方向が法面Gの傾斜方向に沿うように、植生マット10の植生シート11を法面Gに敷設する。そして、各保水シート15の長手方向が植生シート11の横方向に沿って延在し、その自由端が法面Gの傾斜方向を向いて配置されるように、各保水シート15の連結部16が植生シート11に連結される。なお、複数の保水シート15は、植生シート11に敷設前に予め装着されていてもよいが、植生シート11の敷設後に植生シート11に装着されてもよい。次に、複数の固定部材18を植生マット10を貫通させて法面Gに打設する。いくつかの固定部材18は、保水シート15の連結部16を貫通するように打設されることが好ましい。以上の工程を経て、植生マット10を法面Gに設置し、法面Gの保護および緑化を促進することができる。
【0036】
発明者らは、上述した本発明の植生マットの作用効果を確認するために実証試験を行った。実証試験は、法面と同様の環境を擬似的に構築するように、約45度傾斜させて設置したトレイに土壌を形成し、土壌表面に各種形態の植生マットを設置し、そして、その経時変化を観察することによって実施された。この実証試験は、外部からの立ち入りが禁止された完全に非公開の敷地内において、9月上旬~10月上旬の植物の生育に適切な気候の下、屋外にて実施された。
【0037】
実施例1,2の植生マットは、図1および図2に示した植生マットと同様の形態を有するように準備された。具体的には、種子付シート表面に網状シートが貼り合わされることで植生シートが形成され、網状シートの表面に保水シートが装着された。保水シートは、所定厚の発泡ポリエチレンシートで形成され、その幅方向中央を連結部とし、ピンによって植生シートおよび土壌に固定された。また、保水シートの縦方向の幅は50mmとした。実施例1の植生マットは、保水シートの厚みを0.5mm(面積当たりの重量21g/m)とし、固定端から自由端までの幅を20mmとした。一方、実施例2の植生マットは、保水シートの厚みを1.0mm(面積当たりの重量26g/m)とし、固定端から自由端までの幅を20mmとした。
【0038】
図7(a)~(c)は、実証試験における比較例1~3の植生袋の形態を模式的に示している。比較例の植生シートは、実施例のものと同じものが用いられた。図7(a)に示す比較例1の植生マットは、植生シートのみから構成された。図7(b)に示す比較例2の植生マットは、植生シートの表面に、透水性の不織布による植生袋を配置したものである。植生袋は、幅50mmとし、その内部に土壌改良材を充填している。図7(c)に示す比較例3の植生マットは、実施例2の植生マットの保水シートと同じ形状寸法を有する保水シートを装着したものであるが、保水シートの幅方向の両端が、ピンによって植生シートに固定されている。つまり、比較例3の保水シートには可動部が設けられていない。なお、図7中の11は植生シートを示し、12は、網状シートを示し、13は、種子付シートを示し、15は、保水シートを示し、16は連結部を示し、18は、固定部材を示し、19は、植生袋を示すものである。
【0039】
図8は、設置直後の状態の実施例1,2および比較例1~3の植生マットの写真を示している。評価方法として、植生マットを図8の設置直後の状態から10日経過後、3週間経過後、および6週間経過後に種子付シートからの種子の発芽状態および植生植物の生育状態を撮影および観察して、各実施例および比較例を目視により比較した。また、3週間経過後および6週間経過後の試料については、目視による観察により、植生シート表面の植生植物の割合に基づいて緑化被覆率を計測し、さらに、植生植物の草丈の最大値を測定した。
【0040】
図9は、実証試験の試験結果として、植生マットを設置してから10日経過後の実施例1,2および比較例1~3の植生マットの写真を示している。図9に示すように、10日経過後、各植生マットの種子付シートから発芽が確認された。比較例1の植生マットが、発芽の度合いが最も少なく、その次に、比較例2の植生マットの発芽の度合いが少ない。これに対し、実施例1,2および比較例3の植生マットでは、比較例1,2と比べて、植生植物の発芽の度合いが比較的多く観察された。一方で、実施例1,2および比較例3の植生マットでは、発芽量において有意な差が見られない。すなわち、実施例1,2および比較例3の植生マットでは、少なくとも保水シートが植生シート表面に装着されていることにより、保水シートに覆われた箇所およびその周辺の土壌の水分や湿度が効果的に保たれ、種子の発芽が促進されたことが考えられる。また、実施例1,2では、保水シートが、発芽した植生植物によって持ち上げられていることが観察された。さらに、当該試料において、保水シートをめくると、保水シート表面には、無数の露の付着が観察された。他方、比較例3では、保水シートは植生シートに接触しており、保水シート表面には、露の付着が観察されなかった。
【0041】
図10は、実証試験の試験結果として、植生マットを設置してから3週間経過後の実施例1,2および比較例1~3の植生マットの写真を示している。図10に示すように、3週間経過した試料において、実施例と比較例との間で植生植物の生長の差が有意に観察された。この時点での観察結果を以下の表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
図10および表1に示すように、実施例1の植生マットが緑化被覆率30~40%を示し、実施例2の植生マットが緑化被覆率40~50%を示している。つまり、実施例1,2の植生マットは、緑化被覆率において、比較例1~3の植生マットに対して有利な結果を示している。また、実施例1,2では、保水シートが、植生植物の生長に伴い、反り上がるように変形していることが観察された。さらに、当該試料において、保水シート表面には、無数の露の付着が観察されるとともに、保水シート周囲の植生植物の表面にも多数の露の付着が観察された。他方、比較例3では、保水シートは植生シートに接触しており、保水シートおよび植生植物表面に露の付着が観察されなかった。
【0044】
図11は、実証試験の試験結果として、植生マットを設置してから6週間経過後の実施例1,2および比較例1~3の植生マットの写真を示している。図11に示すように、6週間経過した試料において、実施例と比較例との間で植生植物の生長の差がより顕著に観察された。この時点での観察結果を以下の表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
図11および表2に示すように、実施例1の植生マットが緑化被覆率60~70%を示し、実施例2の植生マットが緑化被覆率70~80%を示している。つまり、実施例1,2の植生マットは、緑化被覆率において、比較例1~3の植生マットに対して顕著に有利な結果を示している。また、実施例1,2では、保水シートが、植生植物の繁茂に伴い、ほぼ斜面に対して略直角に立ち上がるように変形していることが観察された。さらに、当該試料において、保水シート表面には、無数の露の付着が観察されるとともに、保水シート周囲の植生植物の表面にも多数の露の付着が観察された。他方、比較例3では、保水シートは植生シートに接触しており、保水シートおよび植生植物表面に露の付着が観察されなかった。
【0047】
したがって、本試験により、実施例1、2の植生マットは、比較例1~3の植生マットと対比して、保水シートが発芽期から生育後期に亘って植生植物に対して水分を継続的に補給するように機能することにより、植生植物の乾燥害を抑えるとともに植生植物の早期導入が可能となることが実証された。
【0048】
以上を踏まえ、本発明の一実施形態の植生マット10の作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態の植生マット10によれば、保水シート15が植生シート11に連結された状態で、植生植物Pが植生シート11から発芽または生長すると、植生植物Pによって、保水シート15が地面から浮き上がるように持ち上げられる。保水シート15は、発芽または生長した植生植物Pに近接または接触するとともに、植生植物Pの上方および/または側方から覆うように延在する。そして、保水シート15が遮水性であることから、保水シート15が植生植物Pから蒸散した水蒸気から露の形成を促し、保水シート15の表面に露が水滴として付着する。保水シート15表面に付着した水滴によって、保水シート15の周囲領域の湿度が上昇し、少なくとも保水シートの周囲領域において、植生植物Pの表面への露の形成が連鎖的に拡がる。これにより、植生マット10は、植生植物Pに継続的に水分を供給し、植生植物Pの乾燥害を効果的に抑えることが可能である。したがって、本実施形態の植生マット10は、法面Gをより早期かつ効率的に緑化することを可能とするものである。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されず、さらなる実施形態および種々の変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態および変形例を説明する。なお、別実施形態および各変形例において、符番が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0051】
[第2実施形態]
図12および図13は、第2実施形態の植生マット10Aを示している。植生マット10Aは、基本的構成を成す第1実施形態の植生マット10に対してさらなる特徴を付加したものである。図12に示すように、植生シート11(網状シート12)は、横方向に筒状に延びる植生袋19を収容するための複数の収容部14を備えている。植生マット10Aは、緑化材としての植生袋19を収容部14に保持している。本実施形態では、網状シート12は、所謂、2重織ネットからなる。収容部14は、長手方向に延伸する網状の長筒体から構成され、緑化材を内包する袋状または筒状の植生袋19を保持可能に構成されている。緑化材は、種子材、肥料材、土壌改良材および土壌のうちの少なくとも1種以上を含む植生に用いられる材料である。収容部14は、縦方向に位置する複数の縦糸と、該縦糸を連結する横糸とにより構成されて、横糸を表裏に分割してこれら各横糸のそれぞれに各縦糸を横方向に対して交互に編み込むことにより筒状を形成したものである。つまり、収容部14は、2枚のネットが重ね合わされた袋状に形成されている。そして、収容部14は、その長手方向が植生シート11の横方向に沿うように一端から他端に亘って延在している。該収容部14の長手方向の端部の一端又は両端が開口し、筒状の植生袋19を開口から挿入可能に構成されている。
【0052】
図13(a)に示すように、各収容部14の表面には、遮水性の保水シート15が装着されている。各保水シート15は、各収容部14の表面全体を覆うとともに、各収容部14の全幅を越えてその縦方向の両側に延在している。保水シート15の連結部16は、収容部14の幅方向の両端付近の2点に形成され、連結部16の幅方向両側の2つの領域にそれぞれ可動部17が形成された。つまり、各可動部17は、連結部16を固定端として、その幅方向両端の自由端が浮き上がるように変形可能である。図13(b)に示すように、植生植物Pは、植生袋19の幅方向の両側から優先的に発芽および生長する。植生マット10Aは、植生植物Pの生長に伴い、各可動部17が上方に持ち上げられるように構成されている。上記第1実施形態と同様に、保水シート15は、植生植物Pから蒸散した水蒸気から露の形成を促すように機能し得る。したがって、本実施形態の植生マット10Aは、保水シート15の保水効果と、植生袋19の緑化効果の両方を発揮することを可能とする。
【0053】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態の植生マット10Bを示している。植生マット10Bは、基本的構成を成す第1実施形態の植生マット10に対してさらなる特徴を付加したものである。図14に示すように、植生シート11(網状シート12)は、横方向に筒状に延びる植生袋19を収容するための複数の収容部14を備えている。植生マット10Bは、緑化材としての植生袋19を収容部14に保持している。本実施形態では、網状シート12は、所謂、半開型2重織ネットからなる。収容部14は、長手方向に延伸する網状の長筒体から構成され、緑化材を内包する袋状または筒状の植生袋19を保持可能に構成されている。より具体的には、収容部14は、目が粗い粗部14a、および、目が細かい密部14bを組み合わせてなる。粗部14aは、植生マット10の平面視において、収容部14の長手方向に直交する幅方向の一端側に偏って形成されている。植生マット10平面における縦方向の略上側半分を粗部14aが占め、残りの略下側半分を密部14bが占めている。これにより、図14(a)に示すように、植生マット10Bが法面に敷設されたときに、収容部14の外周の一部を占める粗部14aが斜面の上側に位置し、収容部14の外周の残りを占める密部14bが斜面の下側に位置する。また、植生袋19は、数回の降雨によって消失する水解性の袋から形成された。植生袋19の袋体が水解した後、収容部14の下半分の密部14bによって緑化材が保持され、粗部14aから緑化材が露出する。図14(b)に示すように、収容部14の粗部14aを介して、植生植物Pが伸び出ることが可能である。
【0054】
図14(a)に示すように、各収容部14の表面には、遮水性の保水シート15が装着されている。各保水シート15は、各収容部14の幅方向両端間の領域を覆うように延在している。保水シート15の連結部16は、収容部14の密部14b上の粗部14aに隣接した位置に形成され、連結部16の幅方向両側の2つの領域にそれぞれ可動部17が形成された。つまり、各可動部17は、連結部16を固定端として、その幅方向両端の自由端が浮き上がるように変形可能である。図14(b)に示すように、半開型2重織ネットの場合、植生植物Pは、収容部14の粗部14aから優先的に発芽および生長する。植生マット10Bは、植生植物Pの生長に伴い、各可動部17が上方に持ち上げられるように構成されている。上記第1実施形態と同様に、保水シート15は、植生植物Pから蒸散した水蒸気から露の形成を促すように機能し得る。したがって、本実施形態の植生マット10Bは、半開型2重織ネットを利用した場合であっても同様に、保水シート15の保水効果と、植生袋19の緑化効果の両方を発揮することを可能とする。
【0055】
[第4実施形態]
第4実施形態の植生マット(図示せず)は、第1実施形態の植生マット10に対して、植生シートと保水シートとが水溶性接着剤によって接着されたものである。また、保水シートは、固定部材によって植生シートおよび地面に固定される連結部と、連結部を固定端として自由端が浮き上がるように変形可能である可動部とを有するように構成された。つまり、植生シートは、連結部を貫通する固定部材を介して地面に部分的に固定される。本実施形態では、可動部が水溶性接着剤によって植生シートに接着されたことを特徴とする。そのため、植生マット出荷時などの初期状態では可動部は変形しない。植生マットを地面に設置した後、植生植物の発芽前の期間、保水シートは、地面を覆い、土壌の水分を維持し、発芽を促進するように作用する。一方で、植生マットの設置後、1または複数回の降雨によって、水溶性接着剤が消失する。これにより、第1実施形態と同様に、可動部は、植生シート上に発芽または生長した植生植物によって保水シートの自由端が持ち上げられるように変形可能となる。すなわち、本発明の植生マットは、保水シートの可動部が植生シートに一時的に固定された形態を含むものである。
【0056】
[変形例]
(1)本発明の植生マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。図15に示す植生マット10Cのように、保水シート15は、植生シート11の表面(外面)ではなく、植生シート11の内側に装着されてもよい。具体的には、植生シート11は、2重織ネットからなる網状シート12を有し、網状シート12の下層側のネット12aに保水シート15が連結されてもよい。つまり、保水シート15は、下層側のネット12aと上層側のネット12bとの間の袋状部分14’に配置されている。図15(a)に示すように、植生マット10Cの法面Gへの設置直後では、上層側のネット12bの表面側から固定部材18が法面Gに打設されるとともに、植生シート11および保水シート15が連結部16で連結されている。この状態では、網状シート12および保水シート15が法面G表面に沿って平面状に寝ている。これに対し、経時により植生植物Pが生長すると、図15(b)に示すように、保水シート15の可動部17が、植生植物Pに持ち上げられて連結部16を固定端として、上層側のネット12bとともに浮き上がる。すなわち、当該形態の植生マット10Cも同様に、本発明の植生マットの作用効果を発揮することができる。
【0057】
(2)本発明の植生マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。本発明において、保水シートの連結部および可動部の位置および形状は、特定の形態に限定されることなく、任意に選択され得る。例えば、図16(a)に示すように、保水シート15は、その幅方向上方に自由端を有するように、コ字状の連結部16と、該連結部16に隣接する領域に可動部17を有してもよい。また、図16(b)に示すように、保水シート15は、その幅方向上方のみに自由端を有するように、幅方向下端に形成された連結部16と、該連結部16の上側の領域に可動部17を有してもよい。さらに、図16(c)に示すように、保水シート15は、長手方向に対して斜めに延在する連結部16と、該連結部16を境とした両側の領域に可動部17を有してもよい。
【0058】
(3)本発明の植生マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、植生シートは、網状シートと種子付シートとの組みあわせによって形成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、植生シートは、種子付シートを含まずに、網状シートのみで構成されてもよい。あるいは、植生シートは、網状シートを含まずに、単層状または多層状の不織布、織布、紙等で構成されてもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、植生袋および植生マットが法面の緑化に用いられているが、本発明の植生袋および植生マットは法面以外の緑化にも使用されてもよい。
【0060】
なお、本発明は上述した複数の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0061】
10 植生マット
11 植生シート
12 網状シート
13 種子付シート
14 収容部
15 保水シート
16 連結部
17 可動部
18 固定部材
19 植生袋
G 法面
P 植生植物
D 水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16