(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161816
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20231031BHJP
E04B 7/02 20060101ALI20231031BHJP
E04H 3/02 20060101ALI20231031BHJP
E04H 3/04 20060101ALI20231031BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E04B9/00 Z
E04B7/02 501B
E04H3/02 B
E04H3/04
E04H1/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072403
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】市川 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA15
2E025AA22
(57)【要約】
【課題】 軒天井面の高さに変化を有しつつ、落ち着いた印象であり、様々な用途で利用可能な半屋外空間を有する建築物を提供する。
【解決手段】建築物は、屋外に突出して形成された軒構造と、前記軒構造の下方に形成される半屋外空間と、を備えた建築物であって、前記軒構造は上面が棟部から両側に下り勾配に形成されており、下面となる軒裏天井面が前記上面と同じ傾斜の勾配天井面である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に突出して形成された軒構造と、
前記軒構造の下方に形成される半屋外空間と、
を備えた建築物であって、
前記軒構造は上面が棟部から両側に下り勾配に形成されており、下面となる軒裏天井面が前記上面と同じ傾斜の勾配天井面であることを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記半屋外空間は、平面視矩形であり、少なくとも2面が外壁面に面するととともに、当該外壁面に沿って屋内側に複数の飲食店が配置されており、前記外壁面には、前記半屋外空間とそれぞれの前記飲食店とを接続する開口部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記半屋外空間の床面は、建築物の屋内空間の床面と面一であり、
前記開口部は、前記屋内空間の床面から前記屋内空間の天井面までの高さを有し、前記半屋外空間と前記屋内空間とを行き来可能に形成されており、
前記外壁面は、前記開口部の上に前記半屋外空間に向かって店舗看板及びガラリが上下に並べて形成されることを特徴とする請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記外壁面に前記半屋外空間から屋内空間に出入り可能な出入口が形成されるとともに、当該外壁面の上階の床梁又は小屋梁よりも高い位置に換気口が形成されることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項5】
前記出入口に隣接した位置又は前記出入口から通路を挟んだ位置にトイレ室が配置され、
前記換気口は前記トイレ室に連通することを特徴とする請求項4に記載の建築物。
【請求項6】
前記軒構造の傾斜する少なくとも一方の上面が、棟を有する屋根から面一に連続して形成されることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項7】
前記半屋外空間は、屋外に寄った位置に前記軒構造を支持する複数の独立柱が並べて配置されるとともに、当該独立柱の屋内側に無柱の各辺が9m以上の矩形大空間が形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の建築物。
【請求項8】
前記複数の独立柱はぞれぞれ、柱本体と、当該柱本体を囲う化粧柱材と、を有し、
前記柱本体は、前記独立柱ごとに断面積が異なり、
前記化粧柱材は、同一外形であることを特徴とする請求項7に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に突出して軒構造が形成され、当該軒構造の下方に半屋外空間が形成される建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば住宅などの建物において、居室空間と、掃き出し窓によって居室空間と区切られた半屋外空間とを備えており、居室空間と半屋外空間とが行き来可能であり、居室空間の天井面と半屋外空間の軒裏面とを略面一とした建物が提案されている。この建物は、居室空間と半屋外空間との連続性が強調されるので、居室空間を屋内に居ながら屋外を感じることができる居心地のよい空間とすることができるものである(特許文献1)。
【0003】
また、例えば講堂などのように多数の人が集まる非居住性の建物において、軒裏面が勾配を有して形成される構造が提案されている(特許文献2参照)。この構造は、軒構造の下方の空間がエントランスの屋外側の空間として利用されており、玄関となる開口部の上縁から下り勾配に突出して、軒構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-1891号公報
【特許文献2】特開2020-197069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軒天井面が水平な平坦面である場合、半屋外空間は単調で変化のない印象となる。また、軒天井面が屋外側に向かって下り勾配な平坦面である場合、半屋外空間は屋外側に向かって閉じられた印象となる。
【0006】
本発明は、軒天井面の高さに変化を有しつつ、落ち着いた印象であり、様々な用途で利用可能な半屋外空間を有する建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建築物は、屋外に突出して形成された軒構造と、前記軒構造の下方に形成される半屋外空間と、を備えた建築物であって、前記軒構造は上面が棟部から両側に下り勾配に形成されており、下面となる軒裏天井面が前記上面と同じ傾斜の勾配天井面であることを特徴としている。
【0008】
本発明の建築物は、前記半屋外空間は、平面視矩形であり、少なくとも2面が外壁面に面するととともに、当該外壁面に沿って屋内側に複数の飲食店が配置されており、前記外壁面には、前記半屋外空間とそれぞれの前記飲食店とを接続する開口部が形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の建築物は、前記半屋外空間の床面は、建築物の屋内空間の床面と面一であり、前記開口部は、前記屋内空間の床面から前記屋内空間の天井面までの高さを有し、前記半屋外空間と前記屋内空間とを行き来可能に形成されており、前記外壁面は、前記開口部の上に前記半屋外空間に向かって店舗看板及びガラリが上下に並べて形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明の建築物は、前記外壁面に前記半屋外空間から屋内空間に出入り可能な出切口が形成されるとともに、当該外壁面の上階の床梁又は小屋梁よりも高い位置に換気口が形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の建築物は、前記出入口に隣接した位置又は前記出入口から通路を挟んだ位置にトイレ室が配置され、前記換気口は前記トイレ室に連通することを特徴としている。
【0012】
本発明の建築物は、前記軒構造の傾斜する少なくとも一方の上面が、棟を有する屋根から面一に連続して形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の建築物は、前記半屋外空間は、屋外に寄った位置に前記軒構造を支持する複数の独立柱が並べて配置されるとともに、当該独立柱の屋内側に無柱の各辺が9m以上の矩形大空間が形成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の建築物は、前記複数の独立柱はぞれぞれ、柱本体と、当該柱本体を囲う化粧柱材と、を有し、前記柱本体は、前記独立柱ごとに断面積が異なり、前記化粧柱材は、同一外形であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築物によると、屋外に突出して形成される軒構造が、上面が棟部から両側に下り勾配に形成されており、下面となる軒裏天井面が上面と同じ傾斜の勾配天井面であるので、半屋外空間から見上げると、棟部を挟んで両側に下り勾配の天井面となり、屋根が下り勾配となっていることで落ち着いた印象の空間となりつつも、軒天井面の高さの変化によって単調な印象を避けることができる。また、棟部の下の天井の高い位置に例えば舞台を設置し、又は、イベントのシンボルとなる樹木や像を配置するなどのように、天井の高さに変化があることによって、落ち着いた空間でありつつもその高さを利用して様々な用途で空間を利用することができる。
【0016】
本発明の建築物によると、平面視矩形の半屋外空間の少なくとも2面が外壁面に面しており、当該外壁面に沿って屋内側に複数の飲食店が配置されており、外壁面には、半屋外空間とそれぞれの飲食店とを接続する開口部が形成されるので、半屋外空間をフードコートやイートインスペースとして利用することができる。
【0017】
本発明の建築物によると、半屋外空間は屋内空間と床面が面一で開口部が屋内空間の床面から天井面までの高さを有するので、屋内空間と半屋外空間とがスムーズに移動でき、例えば飲食物を持った状態で安全に移動することができる。また、外壁面は、開口部の上に半屋外空間に向かって店舗看板及びガラリを上下に並べて形成されるので、十分な大きさの看板及び換気経路を形成することができる。
【0018】
本発明の建築物によると、外壁面に、出入口と、換気口とが形成されており、当該換気口は外壁面の上階の床梁又は小屋梁よりも高い位置に形成されているので、屋内から排出されるにおいが半屋外空間の高い位置を通って屋外に排出されることとなり、半屋外空間の利用者が当該においを感じることを抑制できる。
【0019】
本発明の建築物によると、一般に出入口に近い位置に配置されるトイレ室からの排気が高い位置から排出されるので、半屋外空間ににおいが漂うことを抑制できる。
【0020】
本発明の建築物によると、軒構造の傾斜する少なくとも一方の上面が、棟を有する屋根から面一に連続して形成されるので、切妻屋根の統一されたデザインの建築物とすることができ、軒構造の下方に形成される半屋外空間が、屋内から連続した空間として認識されやすく、屋内側から連続した用途に利用しやすくなる。
【0021】
本発明の建築物によると、半屋外空間は、独立柱の屋内側に無柱の各辺が9m以上の矩形大空間が形成されるので、半屋外空間を様々な用途で利用しやすい。
【0022】
本発明の建築物によると、複数の独立柱の断面積を異ならせることで、軒構造を支持するために必要十分な独立柱を配置することができ、化粧柱材の外形が同一であることで、統一感のある意匠性に優れた半屋外空間とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】軒構造を有する建築物の1階の平面配置を示す図。
【
図3】
図1の半屋外空間が設けられた部分を説明する一部省略拡大図。
【
図5】(A)は2つの水平梁の間に架設される勾配下地材の構成を示す
図2のa部分拡大図、(B)は(A)の変形例を示す
図2のb部分拡大図。
【
図6】勾配梁の軒先付近の軒裏吊り木の構成を示す
図2のc部分拡大図。
【
図7】(A)は水平梁に勾配軒裏下地材が固定された状態を説明する
図2のd部分拡大図、(B)は(A)よりも水平梁の梁せいが長い変形例を示す
図2のe部分拡大図。
【
図8】棟部水平梁に棟部軒裏下地材が固定された状態を説明する
図2のf部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る建築物の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。建築物2は、軒構造1と、軒構造1の下に形成される半屋外空間5と、を有している。軒構造1は、
図2に示すように、建築物2の外壁3よりも屋外側に突出して形成されており、
図1に示すように、当該建築物2のエントランス空間でありつつ、例えばフードコートやイベントスペースとして利用可能な半屋外空間5の屋根となる構造である。建築物2の外壁3は2面が後退して入隅状に形成されており、半屋外空間5は、この入隅状の部分に配置される平面視略矩形の空間である。半屋外空間5は、少なくとも2面が外壁3に面している。半屋外空間5は、地上階に地面とは区画されたテラス又はデッキ状の床面23が形成される空間であり、軒構造1によって上部が塞がれた空間である。
【0025】
軒構造1の下側に形成される半屋外空間5は、
図3及び
図4に示すように、屋外の地面よりも高くなるようにコンクリートで形成されたテラスであり、表面に例えばタイルなどで装飾されて半屋外空間5の床面23となっている。半屋外空間5の床面23は、人が出入することから屋内空間の床面24と面一であることが好ましい。半屋外空間5には、本実施形態においては、複数のテーブル25及び椅子26が配置されて、フードコートとして利用されている。半屋外空間5には利用者がセルフサービスで飲み水を汲む冷水器や手洗いコーナー27等も設けられている。半屋外空間5は平面視略矩形であり、互いに隣接する2面が建築物2の外壁3に面し、他の2面が屋外に開放されている。屋外に開放される2面には複数の独立柱9が並べて配置されており軒構造1を支持している。なお、軒構造1の軒先は片持ちで独立柱9よりも屋外側にまで突出している。独立柱9の内側には、建築物2の外壁3に至るまで無柱に形成されており、平面寸法が例えば一辺が17.5mで他辺が9mの大空間となっている。軒構造1との関係では、半屋外空間5は、軒構造1の水平梁8又は棟部水平梁6と直交する方向に17.5mで、軒構造1の水平梁8及び棟部水平梁6の長さ方向に9mの大空間である。なお、半屋外空間5の寸法はこれに限定されるものではないが、少なくとも各辺が9m以上であることが好ましい。
【0026】
半屋外空間5に面する一方の外壁3に沿って屋内側には、3つの飲食店28が配置されている。また、半屋外空間5に面する他方の外壁3に沿って屋内側には、1つの飲食店28が配置されている。それぞれの飲食店28は、バックヤードエリアが半屋外空間5から離れた位置に配置され、客席エリアが半屋外空間5に隣接して配置されている。これらの飲食店28と半屋外空間5との間には、それぞれ開口部が形成されて、互いに連通している。本実施形態においては、半屋外空間5の床面23と飲食店28の床面24とは面一に形成されている。
【0027】
開口部29は、飲食店28の床面24から飲食店28の天井面までの高さを有する透明な引き違いドアである。開口部29は、半屋外空間5と屋内空間である飲食店28とを行き来可能に形成されている。外壁3は、開口部29の上に半屋外空間5に向かって店舗看板30及びガラリ31が上下に並べて形成されている。ガラリ31は、飲食店28のバックヤードエリアに設けられている換気扇から延びて、当該飲食店28の天井裏に配置されるダクトに連通しており、開口部29の幅とほぼ同じ幅に形成されている。また、店舗看板30は長方形状で開口部29の幅よりも若干短い幅に形成されている。
【0028】
なお、開口部29は、例えば飲食物の受け渡しが可能な程度開口していれば、上下方向の全面に開口するものに限られるものではない。
【0029】
半屋外空間5に面する外壁3のうち、1つの飲食店28が屋内側に配置される外壁3には、当該飲食店28に隣接して、屋内空間である通路40に出入り可能な出入口32が形成されている。出入口32は例えば透明な引き戸式の自動ドアである。
図2に示すように、当該出入口32の上方の外壁3には、換気口33が形成されている。換気口33は、建築物2が2階建て以上である場合には、2階の床梁よりも高い位置に形成されており、建築物2が平屋である場合には、小屋組を支持する小屋梁42よりも高い位置に形成されている。
【0030】
出入口32の屋内側には、通路40が設けられている。通路40には、出入口32を挟んで反対側にトイレ室34が隣接して配置されている。トイレ室34は男性用トイレ室、バリアフリートイレ室、女性用トイレ室が並べて配置されている。トイレ室34には、換気ダクト41が連通しており、換気ダクト41は外壁3に形成された換気口33に繋がっている。換気口33が外壁3の比較的高い位置に形成されていることで、一般に出入口32の付近に配置されるトイレ室34からの排気を半屋外空間5の高い位置に排出し、半屋外空間5から屋外に排出するので、半屋外空間5ににおいが漂うことを抑制できる。なお、トイレ室34は、外壁3に沿って出入口32に隣接した位置に配置されていてもよく、その場合でも換気ダクト41を介して換気口33に繋がることで、半屋外空間5に高い位置からにおいを排出することで半屋外空間5の防臭を図ることができる。
【0031】
建築物2の屋内側には、図示しないが例えばコンビニエンスストアなどの物品を販売する店舗や例えば美容院などのサービスを提供する店舗などの様々な店舗や施設が配置されていてもよい。
【0032】
半屋外空間5を覆うように当該半屋外空間の上方に配置される軒構造1は、
図2に示すように、棟部4を挟んで一方の面が建築物2の屋根39の一方の勾配面と面一に連続し、棟部4を挟んで他方の面が屋根39の他方の勾配面よりも低く平行に形成されている。軒構造1は、建築物2の屋根39の一方の勾配面の途中に棟部4が繋がるように形成されている。軒構造1は、棟部4を挟んで両側が下り勾配に形成されている。なお、本実施形態においては、軒構造1は、棟部4を挟んで一方の面が建築物2の屋根39と面一に連続し、他方の面が屋根39よりも低く形成されているが、軒構造1は棟部4を挟んで両側が屋根39と面一に形成されていてもよい。軒構造1は、棟部4を形成する棟部水平梁6と、棟部水平梁6の両側面にそれぞれ接合されて、屋根勾配を形成する複数の勾配梁7と、勾配梁7の間に間隔をあけて架設される複数の水平梁8と、を備えて躯体を形成している。棟部水平梁6は、屋根39の棟木を延長して形成される断面矩形の木製梁材である。棟部水平梁6の屋外側の端部は、半屋外空間5の屋外側に形成された独立柱9に支持されている。
【0033】
勾配梁7は、棟部水平梁6の両側にそれぞれ水上側の端部が接合されている。また屋外側に向かって下り勾配の勾配梁7の水下側の端部は、水下側の軒先に形成される勾配支持柱10に支持されている。一方、屋内側に向かって下り勾配の勾配梁7の水下側の端部は、半屋外空間5に面する外壁3内に配置されている図示しない柱に支持されている。水平梁8は、勾配梁7の間に複数架設される断面矩形の木材である。水平梁8は架設される位置によって梁せいが異なって形成されている。また勾配梁7の間には母屋材11もまた架設されている。
【0034】
軒構造1は、水平梁8及び母屋材11の上に複数の垂木15が勾配梁7と同じ勾配で固定されている。垂木15の上には、図示しないが、建築物2の屋根39から連続するように野地板、ルーフィングシート、及び屋根材が配置されて、軒構造1の上面を形成している。
【0035】
勾配梁7の間に架設される複数の水平梁8の内、隣接する2つの水平梁8の間には、
図5に示すように、角材により形成された勾配下地材12が架設されている。勾配下地材12は断面矩形の木材であり、斜めに架設されたときに水下側の端部が鉛直な木口面となるように切断されている。勾配下地材12は水下側の端部が、水下側の水平梁8に接合金具13を介して固定されている。また、水上側の端部は、斜めに架設されたときに水平梁8の下側の角部に整合する切欠部14が形成されている。切欠部14は、勾配下地材12が斜めの状態で鉛直面及び水平面を形成するように、当該勾配下地材12の水上側の端部の上面及び木口面から切断して形成されている。勾配下地材12は、切欠部14が水上側の水平梁8に接合金具13を介して固定されている。なお、勾配下地材12の長さは2つの水平梁8の間の距離に応じて決定されるので、本実施形態においては、2つの長さの異なる勾配下地材12が設けられている。また、本実施形態においては、勾配下地材12の水上側の端部に切欠部14を設けたが、例えば切欠部14は、水下側の水平梁8にかみ合うように、勾配下地材12の水下側の端部に形成されていてもよく、水上側及び水下側の両方に設けられていてもよい。このように勾配下地材12は、切欠部14を有することで、水平梁8の下側の角部を基準にして簡単に位置決めすることができ、勾配下地材12に後述する軒裏野縁17を介して固定される軒裏面材の位置決め精度を高めることができ、施工性を向上させることができる。
【0036】
また、垂木15の側面には、
図6に示すように、下方に垂れ下がって形成される軒裏吊り木16が設けられている。勾配下地材12及び軒裏吊り木16の下面には、それぞれ軒裏野縁17が水平方向に架設されている。軒裏野縁17は下面が同一の勾配面上に配置されるように位置決めされている。このように、本実施形態の軒構造1によると、水平梁8によって高さ位置が決まる垂木15に固定される軒裏吊り木16が軒裏野縁17の位置を決めることとなるので、水平梁8を基準にして軒裏野縁17の位置が決められ、軒裏面材19の位置決め精度を高めることができ、施工性を向上させることができる。
【0037】
また、水平梁8の内、勾配下地材12が架設された水平梁8とは異なる少なくとも1以上の水平梁8の下面には、
図7に示すように、下面が勾配梁7と同じ勾配に形成された勾配軒裏下地材18が固定されている。勾配軒裏下地材18は、上面及び両側面が直角で下面が斜めに形成された断面直角台形に形成されている。勾配軒裏下地材18は、水平梁8の下面にビス固定されている。なお、
図7(A)(B)に示すように、勾配軒裏下地材18は、水平梁8の梁せいに応じて上面と下面との距離が異なる2種類が設けられており、水平梁8の梁せいが異なる場合でも、勾配軒裏下地材18の下面は同一の勾配面上に配置される。このように勾配軒裏下地材18が水平梁8の下面に固定されることで水平梁8を基準にして後述する軒裏面材19の位置決め精度を高めつつ、施工性を向上させることができる。
【0038】
また棟部水平梁6の下面には、
図8に示すように、棟部軒裏下地材20が固定されている。棟部軒裏下地材20は、棟部水平梁6の下面に固定され、その下面に逆V字状の溝部21が形成されている。溝部21を形成する2つの面はそれぞれ勾配梁7と同じ勾配に形成されており、上述の勾配軒裏下地材18の下面と同一の勾配面上に配置される。棟部水平梁6の下面に棟部軒裏下地材20が固定されることで、棟部4においても棟部水平梁6を基準として軒裏面材19の位置決め精度を高めつつ、施工性を向上させることができる。
【0039】
勾配下地材12及び軒裏吊り木16の下面に水平に架設される軒裏野縁17、勾配軒裏下地材18、棟部軒裏下地材20の下面には、軒裏面材19が貼り付けられており、半屋外空間5の軒裏天井面22を形成している。このように、半屋外空間5の軒裏天井面22は、全体として棟部4から両側に下り勾配となっているので、半屋外空間5から見上げると、落ち着いた印象の空間となりつつも、軒裏天井面22の高さの変化によって単調な印象を避けることができる。また、軒裏天井面22が下り勾配となっていることで、半屋外空間5への屋外側からの風雨や日射の影響や屋外側からの視線を減らして、半屋外空間5を落ち着いた空間とすることができる。そして、棟部4の下の天井の高い位置に例えば舞台を設置し、又は、イベントのシンボルとなる樹木や像を配置するなどのように、天井の高さに変化があることによって、落ち着いた空間でありつつもその高さを利用して様々な催しを開催することができる。
【0040】
軒構造1を支える独立柱9は、
図2に示すように、棟部水平梁6及び水平梁8の軒先側の下面を支持するように配置されている。独立柱9は、
図9から
図11に示すように、3つの等間隔に並んだ角材の柱本体35a,35bと、それぞれの柱本体35a,35bに固定されるスペーサ36と、柱本体35a,35b及びスペーサ36にビス止めされて外装材37を固定する固定金具38と、固定金具38によって柱本体35a,35b又はスペーサ36に固定され、3つの柱本体35a,35bを覆うように形成される外装材37と、を備える。
【0041】
3つの柱本体35a,35bは、
図10及び
図11に示すように、棟部水平梁6及び水平梁8の長さ方向に並んで立設されるものであり、柱頭でこれら棟部水平梁6又は水平梁8に接合している。柱本体35a,35bは木製の四角柱であり、独立柱9の設置場所によって、3つの柱本体35a,35bのうち中央の柱本体35bの断面形状が異なる2種類の独立柱9が用いられる。一方の独立柱9の柱本体35aは、それぞれ断面寸法が一辺120mmの正方形となる柱本体35aを等間隔に3つ並べて形成される。他方の独立柱9は両側の柱本体35aは断面寸法が一辺120mmの正方形となり、中央の柱本体35bは一辺180mmの正方形となっている。スペーサ36は一辺が120mmの柱本体35aと外装材37との間隙を埋めるスペーサ36であり、厚さ30mmのスペーサ36が120mmの柱本体35の外装材37側を向く2面に固定されて、一辺が180mmの柱本体35bの表面と同じ位置になるように形成されている。
【0042】
外装材37は、例えばサイディング材であり、2枚の平板外装材37aと、4つの角部をそれぞれ形成する直角の2つの役物外装材37bとを有する。2つの役物外装材37bを突き合わせて独立柱9の短辺を形成するとともに、平板外装材37aの両端に役物外装材37bを突き合わせて独立柱9の長辺を形成する。これら平板外装材37a及び役物外装材37bの間には図示しない目地材が充填される。平板外装材37a及び役物外装材37bは上下方向に複数並べて配置される。外装材37は120mmの柱本体35aが3つ並んだ一方の独立柱9、及び120mm及び180mmの柱本体35a,35bが並んだ他方の独立柱9のいずれも同一形状に形成されている。したがって、外装材37が取り付けられた独立柱9の外観形状は一方の独立柱9及び他方の独立柱9のいずれでも同一形状となっている。このように、複数の独立柱9の断面積を異ならせることで、軒構造1を支持するために必要十分な独立柱9を配置することができ、外装材37の外形が同一であることで、統一感のある意匠性に優れた半屋外空間5とすることができる。
【0043】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る軒構造1は、例えば商業施設などの屋外フードコートとして利用される半屋外空間5の上部を覆う軒構造1として好適である。
【符号の説明】
【0045】
1 軒構造
2 建築物
3 外壁
4 棟部
5 屋根
9 独立柱
22 軒裏天井面
23 半屋外空間の床面
24 屋内空間の床面
28 飲食店
29 開口部
30 店舗看板
31 ガラリ
32 出入口
33 換気口
34 トイレ室
35a,35b 柱本体
37 外装材
40 通路
41 換気ダクト
42 小屋梁