(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161818
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ヨークカバー
(51)【国際特許分類】
F16D 3/84 20060101AFI20231031BHJP
F16D 1/08 20060101ALI20231031BHJP
F16D 3/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16D3/84 Z
F16D1/08
F16D3/26 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072405
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 行弘
(72)【発明者】
【氏名】和賀 保
(57)【要約】
【課題】ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できるヨークカバーを提供する。
【解決手段】ヨークカバー1は、カバー基部28を備える。カバー基部28は、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の周囲に全周にわたり配置され、かつ、軸方向他方側の側面29がヨーク基部14の軸方向他方側の端面30よりも軸方向他方側に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有する筒状のヨーク基部と、該ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から該ヨーク基部の軸方向一方側に伸長する1対のヨーク腕部とを備え、前記ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、軸方向他方側部分において前記スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、該1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有し、該1対のボルト孔にボルトの軸部が挿通または螺合され、かつ、前記1対のヨークフランジ部を構成する一方のヨークフランジ部の外側面に前記ボルトの頭部が当接する自在継手用ヨークに組み付けられる、ヨークカバーであって、
前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の周囲に全周にわたり配置され、かつ、軸方向他方側の側面が前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面よりも軸方向他方側に位置するカバー基部を備える、
ヨークカバー。
【請求項2】
前記カバー基部は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に、全周にわたり尖った角部を有していない、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項3】
前記カバー基部が、前記ボルトの前記頭部に対し、前記ヨーク基部の軸方向他方側から対向する頭部用他方側対向部を有する、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項4】
前記カバー基部が、前記1対のヨークフランジ部を構成する他方のヨークフランジ部の外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の外側面に当接するナットにより構成される、凸部に対し、前記ヨーク基部の軸方向他方側から対向する凸部用他方側対向部を有する、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項5】
前記カバー基部に接続され、かつ、前記スリット内に進入するスリット進入部を備え、該スリット進入部は、前記1対のボルト孔と整合する位置に、前記ヨーク基部の径方向内側に開口し、かつ、前記軸部と係合する切り欠き状のボルト係合部を有する、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項6】
前記カバー基部のうち前記スリットに対して径方向反対側に位置する部分から前記ヨーク基部の軸方向一方側に延びる延出部と、該延出部から前記ヨーク基部の周方向両側に向けて伸長し、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分を抱持する1対の抱持腕部とを備え、前記1対の抱持腕部の先端部に、互いに近づき合う方向に突出した1対の爪部が備えられている、請求項1~5のいずれかに記載のヨークカバー。
【請求項7】
前記1対の抱持腕部のうち、前記一方のヨークフランジ部側に位置する一方の抱持腕部が、前記ボルトの前記頭部に対し、前記ヨーク基部の軸方向一方側から対向する頭部用一方側対向部を有する、請求項6に記載のヨークカバー。
【請求項8】
前記1対の抱持腕部のうち、前記1対のヨークフランジ部を構成する他方のヨークフランジ部側に位置する他方の抱持腕部が、前記他方のヨークフランジ部の外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の外側面に当接するナットにより構成される、凸部に対し、前記ヨーク基部の軸方向一方側から対向する凸部用一方側対向部を有する、請求項6に記載のヨークカバー。
【請求項9】
前記1対の抱持腕部の前記1対の爪部が、前記1対のヨークフランジ部のうち、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分よりも径方向外側に張り出した張出部に対し、前記ヨーク基部の軸方向一方側から対向する位置に存在する、請求項6に記載のヨークカバー。
【請求項10】
前記1対の抱持腕部の前記1対の爪部と前記カバー基部との間隔が、前記1対のヨークフランジ部の前記張出部の軸方向一方側の側面のうち前記1対の爪部が軸方向に対向する部分と前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面との間隔よりも小さい、請求項9に記載のヨークカバー。
【請求項11】
前記1対の抱持腕部の前記1対の爪部が、前記ヨーク基部の軸方向に関して前記1対のボルト孔と重畳する位置に存在する、請求項6に記載のヨークカバー。
【請求項12】
前記カバー基部の内周面の周方向複数箇所に、前記ヨーク基部の外周面に圧接するクラッシュリブを備える、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項13】
前記カバー基部に接続され、かつ、前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面に当接するストッパ部を備える、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項14】
前記ボルトの軸方向に関する前記頭部用他方側対向部の肉厚が、前記ボルトの前記頭部の軸方向寸法よりも大きい、請求項3に記載のヨークカバー。
【請求項15】
前記ボルトの軸方向に関する前記凸部用他方側対向部の肉厚が、前記凸部の軸方向寸法よりも大きい、請求項4に記載のヨークカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリング装置に組み込まれる自在継手を構成するヨークを覆うヨークカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のステアリング装置では、同一直線上に配置されていないステアリングシャフトと中間シャフトとのそれぞれの端部同士が、自在継手により接続されている。該自在継手を構成するヨークのうち、ステアリングシャフトの前端部に結合される後側のヨークとして、たとえば、金属製の素材に鍛造加工および切削加工などを施して造られた、ピンチボルトタイプのヨークが用いられる。
【0003】
該ヨークは、ヨーク基部と、1対のヨーク腕部とを備える。ヨーク基部は、シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有し、筒状に構成されている。1対のヨーク腕部は、ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から、ヨーク基部の軸方向一方側に伸長している。また、ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有する。
【0004】
このようなヨークに対してステアリングシャフトの前端部を結合する際には、ステアリングシャフトの前端部をヨーク基部の内側に、ヨーク基部の軸方向他方側から挿入する。そして、1対のボルト孔に挿通または螺合したボルトを締め付けることで、ヨーク基部の内周面を縮径し、該内周面をステアリングシャフトの前端部の外周面に圧接させる。
【0005】
従来、ヨークに対してシャフトの先端部を正規の位置関係で組み付けられるようにするために用いられるヨークカバーの構造が、各種提案されている(たとえば、特開2008-202742号公報、特開2009-108875号公報、特許第5223914号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-202742号公報
【特許文献2】特開2009-108875号公報
【特許文献3】特許第5223914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乗用車用のステアリング装置では、ステアリングシャフトと中間シャフトとを接続する自在継手は、通常、ステアリングコラムのアンダーカバーなどの内側に配置されており、車室内側に露出していない。このため、該自在継手が、たとえば運転者の足に触れたり、車室内の清掃時に人の手に触れたりすることはない。
【0008】
これに対し、商用車用のステアリング装置では、ステアリングシャフトと中間シャフトとを接続する自在継手が、車室内側に露出して配置されるケースがある。近年、このようなケースにおいて、特に、ステアリングシャフトの前端部に結合される後側のヨークのうち、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部に対して、運転者の足などが触れることを十分に防止することが提案されている。
【0009】
具体的な防止策として、ヨークに組み付けられるヨークカバーを用いる方法が考えられる。しかしながら、従来構造のヨークカバーは、ヨークに対するシャフトの端部の誤組み付けを防止することに特化した構造を有しており、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部に対して、運転者の足などが触れることを十分に防止できる構造を有していない。すなわち、従来構造のヨークカバーをヨークに組み付けた状態では、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部のうち、少なくとも周方向の一部分が、ヨークカバーの外部に露出する。
【0010】
本発明は、ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できるヨークカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様のヨークカバーが組み付けられる自在継手用ヨークは、シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有する筒状のヨーク基部と、該ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から該ヨーク基部の軸方向一方側に伸長する1対のヨーク腕部とを備え、前記ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、軸方向他方側部分において前記スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、該1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有し、該1対のボルト孔にボルトの軸部が挿通または螺合され、かつ、前記1対のヨークフランジ部を構成する一方のヨークフランジ部の外側面に前記ボルトの頭部が当接する。
【0012】
本発明の一態様のヨークカバーは、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の周囲に全周にわたり配置され、かつ、軸方向他方側の側面が前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面よりも軸方向他方側に位置するカバー基部を備える。
【0013】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー基部は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に、全周にわたり尖った角部を有していない。すなわち、該一態様のヨークカバーでは、前記カバー基部は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に角部を有していないか、あるいは、角部を有する場合でも、該角部はR形状を有する。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
【0014】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー基部が、前記ボルトの前記頭部に対し、前記ヨーク基部の軸方向他方側から対向する頭部用他方側対向部を有する。
【0015】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー基部が、前記1対のヨークフランジ部を構成する他方のヨークフランジ部の外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の外側面に当接するナットにより構成される、凸部に対し、前記ヨーク基部の軸方向他方側から対向する凸部用他方側対向部を有する。
【0016】
本発明の一態様のヨークカバーは、前記カバー基部に接続され、かつ、前記スリット内に進入するスリット進入部を備え、該スリット進入部は、前記1対のボルト孔と整合する位置に、前記ヨーク基部の径方向内側に開口し、かつ、前記軸部と係合する切り欠き状のボルト係合部を有する。
【0017】
本発明の一態様のヨークカバーは、前記カバー基部のうち前記スリットに対して径方向反対側に位置する部分から前記ヨーク基部の軸方向一方側に延びる延出部と、該延出部から前記ヨーク基部の周方向両側に向けて伸長し、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分を抱持する1対の抱持腕部を備え、前記1対の抱持腕部の先端部に、互いに近づき合う方向に突出した1対の爪部が備えられている。
【0018】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の抱持腕部のうち、前記一方のヨークフランジ部側に位置する一方の抱持腕部が、前記ボルトの前記頭部に対し、前記ヨーク基部の軸方向一方側から対向する頭部用一方側対向部を有する。
【0019】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の抱持腕部のうち、前記1対のヨークフランジ部を構成する他方のヨークフランジ部側に位置する他方の抱持腕部が、前記凸部に対し、前記ヨーク基部の軸方向一方側から対向する凸部用一方側対向部を有する。
【0020】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の抱持腕部の前記1対の爪部が、前記1対のヨークフランジ部のうち、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分よりも径方向外側に張り出した張出部に対し、前記ヨーク基部の軸方向一方側から対向する位置に存在する。
【0021】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の抱持腕部の前記1対の爪部と前記カバー基部との間隔が、前記1対のヨークフランジ部の前記張出部の軸方向一方側の側面のうち前記1対の爪部が軸方向に対向する部分と前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面との間隔よりも小さい。
【0022】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の抱持腕部の前記1対の爪部が、前記ヨーク基部の軸方向に関して前記1対のボルト孔と重畳する位置に存在する。
【0023】
本発明の一態様のヨークカバーは、前記カバー基部の内周面の周方向複数箇所に、前記ヨーク基部の外周面に圧接するクラッシュリブを備える。
【0024】
本発明の一態様のヨークカバーは、前記カバー基部に接続され、かつ、前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面に当接するストッパ部を備える。
【0025】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記ボルトの軸方向に関する前記頭部用他方側対向部の肉厚が、前記ボルトの前記頭部の軸方向寸法よりも大きい。
【0026】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記ボルトの軸方向に関する前記凸部用他方側対向部の肉厚が、前記凸部の軸方向寸法よりも大きい。
【0027】
本発明は、上述した各一態様のヨークカバーの構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様のヨークカバーによれば、ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例のヨークカバーが組み付けられるステアリング装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークを軸方向他方側から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークの側面図であり、
図4(b)は、該ヨークを
図4(a)の反対側から見た側面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4(a)の上側から見た図であり、
図5(b)は、
図4(a)の下側から見た図である。
【
図6】
図6(a)は、
図4(a)のA-A断面図であり、
図6(b)は、
図4(a)の右側(軸方向他方側)から見た図である。
【
図7】
図7は、第1例のヨークカバーを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、第1例のヨークカバーを軸方向他方側から見た斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、第1例のヨークカバーの側面図であり、
図9(b)は、該ヨークカバーを
図9(a)の反対側から見た側面図である。
【
図11】
図11(a)は、
図9(a)の左側(軸方向一方側)から見た図であり、
図11(b)は、
図9(a)の右側(軸方向他方側)から見た図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態の第2例のヨークカバーを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図14】
図14は、第2例のヨークカバーを軸方向他方側から見た斜視図である。
【
図15】
図15は、第2例のヨークカバーを軸方向他方側から見た図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態の第3例に関する、
図6(a)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図12を用いて説明する。
【0031】
図1は、本例のヨークカバー1(
図2~
図6(b)参照)が組み付けられる自動車用のステアリング装置2を模式的に示す図である。
【0032】
本例における以下の説明において、前後方向は、車両の前後方向を意味し、上下方向は、車両の上下方向を意味し、左右方向は、車両の幅方向を意味する。
【0033】
本例のステアリング装置2は、ステアリングホイール3と、ステアリングシャフト4と、ステアリングコラム5と、1対の自在継手6a、6bと、中間シャフト7と、ステアリングギヤユニット8とを備える。
【0034】
運転者が回転操作するステアリングホイール3は、ステアリングシャフト4の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト4は、車体に支持されたステアリングコラム5の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト4の前端部は、自在継手6a、中間シャフト7、および別の自在継手6bを介して、ステアリングギヤユニット8のピニオンシャフト9に接続されている。ピニオンシャフト9は、ステアリングギヤユニット8のラック10に噛合している。このため、運転者がステアリングホイール3を回転操作すると、ステアリングホイール3の回転は、ピニオンシャフト9に伝達される。そして、ピニオンシャフト9の回転が、ラック10の直線運動に変換される。この結果、ラック10の両端部に連結された1対のタイロッド11が押し引きされ、左右の操舵輪12にステアリングホイール3の回転操作量に応じた舵角が付与される。
【0035】
図示は省略するが、ステアリング装置2は、ステアリングホイール3の回転操作に必要な力を軽減するために、ステアリングシャフト4、ピニオンシャフト9、ラック10などのいずれかの操舵力伝達部材に、電動式あるいは油圧式のアシスト装置からアシスト駆動力を付与することができる。ステアリングシャフトにアシスト駆動力を付与する場合には、ステアリングシャフトの前端部を、アシスト駆動力が付与される出力シャフトにより構成することができる。
【0036】
本例のヨークカバー1は、自在継手6aを構成する一方のヨーク13、具体的には、ステアリングシャフト4の前端部に接続される一方のヨーク13に組み付けられる。自在継手6aは、一方のヨーク13と、中間シャフト7の後端部に接続される不図示の他方のヨークとを、不図示の十字軸を介して接続することにより構成される。
【0037】
本例のヨーク13は、
図2~
図6(b)に示すように、金属製の素材に鍛造加工および切削加工を施すことにより造られており、筒状のヨーク基部14と、1対のヨーク腕部15とを備える。1対のヨーク腕部15は、ヨーク基部14の軸方向一方側(
図4(a)、
図5(a)、
図5(b)の左側)の端部の径方向反対側となる2箇所から、ヨーク基部14の軸方向一方側に伸長している。1対のヨーク腕部15を構成するそれぞれのヨーク腕部15は、先端部に互いに同軸に配置された円孔16を有する。これらの円孔16の内側には、前記十字軸の端部がニードル軸受を介して回転自在に支持される。
【0038】
ヨーク基部14は、ステアリングシャフト4(
図4(a)参照)の先端部である前端部の外周面17と嵌合する内周面18を有する。本例では、ステアリングシャフト4の前端部の外周面17に雄セレーションが形成されており、かつ、ヨーク基部14の内周面18に、該雄セレーションと係合可能な雌セレーションが形成されている。
【0039】
ヨーク基部14は、軸方向他方側(
図4(a)、
図5(a)、
図5(b)の右側)の半部の周方向1箇所において、径方向両側および軸方向他方側に開口するスリット19を有する。
【0040】
ヨーク基部14は、スリット19を挟んで対向する1対のヨークフランジ部20a、20bを有する。ヨークフランジ部20a、20bは、径方向外側部に、ヨーク基部14の軸方向一方側の半部よりも径方向外側に張り出した張出部21a、21bを有する。
【0041】
ヨーク基部14は、1対のヨークフランジ部20a、20bを貫通する1対のボルト孔22a、22bを有する。ボルト孔22a、22bは互いに同軸に配置されている。ボルト孔22a、22bの少なくとも一部分は、張出部21a、21bに形成されており、ヨーク基部14の軸方向一方側の半部よりも径方向外側に位置している。本例では、一方(
図5(a)の下側、
図6(a)の右側、
図6(b)の左側)のヨークフランジ部20aを貫通する一方のボルト孔22aは、ボルト23の軸部24を挿通するための通孔により構成されている。他方(
図5(a)の上側、
図6(a)の左側、
図6(b)の右側)のヨークフランジ部20bを貫通する他方のボルト孔22bは、ボルト23の軸部24を螺合するための雌ねじ孔により構成されている。
【0042】
一方のヨークフランジ部20aの外側面のうち、一方のボルト孔22aの開口部の周囲部分は、ボルト23の頭部25の内側面が当接する座面として用いられる。他方のヨークフランジ部20bは、外側面のうち、他方のボルト孔22bの周囲部分に、他の部分よりもボルト孔22bの軸方向に突出した円筒状のボス部49を有する。
【0043】
本発明のヨークカバーを取り付けるヨークとして、1対のボルト孔を構成するそれぞれのボルト孔が通孔により構成されたヨークを用いることもできる。この場合には、他方のヨークフランジの外側面のうち、他方のボルト孔の開口部の周囲部分にボス部を設けず、他方のボルト孔から突出したボルトの軸部の先端部に、ナットを螺合する。そして、他方のヨークフランジの外側面のうち、他方のボルト孔の開口部の周囲部分を、ナットの内側面が当接する座面として用いる。本発明のヨークカバーを取り付けるヨークとして、ヨーク基部の周方向に関する1対のヨーク腕部の配置の位相が、本例のヨーク13に対して任意の角度(たとえば90゜程度)ずれたヨークを用いることもできる。
【0044】
ヨーク13にステアリングシャフト4(
図4(a)参照)の前端部が結合された状態で、ステアリングシャフト4の前端部は、ヨーク基部14の内側に、ヨーク基部14の軸方向他方側から挿入されている。ステアリングシャフト4の前端部の外周面の周方向1箇所に備えられた切り欠き状のボルト係合部27が、1対のボルト孔22a、22bに整合する位置に配置されている。1対のボルト孔22a、22bに、ボルト23の軸部24が挿通または螺合されている。具体的には、一方のボルト孔22aに挿通したボルト23の軸部24が、他方のボルト孔22bに螺合されている。軸部24の中間部が、ボルト係合部27に係合している。これにより、ステアリングシャフト4の前端部がヨーク基部14の内側から軸方向に抜け出ることを阻止されている。ボルト23の頭部25の内側面が、一方のヨークフランジ部20aの外側面に当接した状態で、ボルト23が締め付けられている。これにより、ヨーク基部14の内周面18が縮径し、該内周面18がステアリングシャフト4の前端部の外周面17に圧接している。具体的には、内周面18に備えられた雌セレーションが外周面17に備えられた雄セレーションに強く係合している。これにより、ヨーク13にステアリングシャフト4の前端部がトルク伝達可能に結合されている。
【0045】
さらに、この状態で、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)に示すように、ボルト23の軸部24の先端部がボス部49の外側に少しだけ突出している。本例では、これらのボス部49および軸部24の先端部が凸部26を構成する。なお、本発明を実施する場合には、ボス部49を省略し、他方のボルト孔22bから突出した軸部24の先端部により、凸部を構成することもできる。さらに、本発明を実施する場合で、前述したように、ボルトの軸部の先端部にナットを螺合する構成を採用する場合には、これらの軸部の先端部およびナットが凸部を構成する。
【0046】
本例のヨークカバー1は、
図2~
図6(b)に示すように、ヨーク13に取り付けられる。
図7~
図12は、本例のヨークカバー1を、単品の状態で示す図である。
【0047】
本例のヨークカバー1は、全体が合成樹脂により一体に造られており、カバー基部28を備える。
【0048】
カバー基部28は、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の周囲に全周にわたり配置され、かつ、軸方向他方側の側面29がヨーク基部14の軸方向他方側の端面30よりも軸方向他方側に位置する。
【0049】
具体的には、本例のカバー基部28は、嵌合筒部32と、カバーフランジ部33とを有する。
【0050】
嵌合筒部32は、略矩形筒形状を有する。嵌合筒部32は、ヨーク基部14の軸方向他方側の端部に締り嵌めで外嵌される。このために、本例のヨークカバー1は、嵌合筒部32の内周面の周方向複数箇所に、ヨーク基部14の外周面に圧接するクラッシュリブ34を備える。クラッシュリブ34は、軸方向に伸長する突条により構成されている。
【0051】
本発明を実施する場合、カバー基部をヨーク基部に締り嵌めで外嵌できる限り、クラッシュリブの数および周方向に関する配置箇所は、任意に設定することができる。本発明を実施する場合、カバー基部の内周面にクラッシュリブを設けることなく、カバー基部をヨーク基部に締り嵌めで外嵌することもできる。
【0052】
嵌合筒部32は、内周面のうち、ヨーク基部14のスリット19に対して径方向反対側に位置する箇所に、軸方向に伸長する逃げ溝35を有する。逃げ溝35は、ヨーク基部14の外周面のうち、スリット19に対して径方向反対側に位置する部分に軸方向に伸長するように備えられた突条36との干渉を避けるための部位である。突条36は、ヨーク13を製造する際に金属素材に鍛造加工を施す工程で、隣り合う金型の合わせ部に形成されるパーティング部と呼ばれる部位である。本発明を実施する場合には、逃げ溝35を省略することもできる。
【0053】
嵌合筒部32は、ボルト23の頭部25と整合する周方向一部分に、頭部25に対して軸方向他方側から対向する頭部用他方側対向部37を有する。本例では、頭部用他方側対向部37は、軸方向一方側の側面に、軸方向一方側に開口する半円形の凹部38を有する。ヨーク基部14の軸方向に関して、ボルト23の頭部25の他方側の半部は、凹部38の内側に配置される。本例では、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向一方側に移動することを、頭部25と頭部用他方側対向部37との係合に基づいて防ぐことができる。
【0054】
嵌合筒部32は、ヨーク13の凸部26と整合する周方向一部分に、凸部26に対して軸方向他方側から対向する凸部用他方側対向部39を有する。本例では、凸部用他方側対向部39は、軸方向一方側に開口する半円形の凹部40を有する。ヨーク基部14の軸方向に関して、凸部26の他方側の半部は、凹部40の内側に配置される。本例では、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向一方側に移動することを、凸部26と凸部用他方側対向部39との係合に基づいて防ぐことができる。
【0055】
カバーフランジ部33は、嵌合筒部32の軸方向他方側の端部から全周にわたり径方向外側に突出している。カバーフランジ部33の軸方向他方側の半部は、嵌合筒部32の軸方向他方側の端面よりも軸方向他方側に位置している。本例では、カバーフランジ部33の軸方向他方側の側面により、カバー基部28の軸方向他方側の側面29が構成されている。該側面29は、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面30よりも軸方向他方側に配置される。
【0056】
本例では、カバー基部28は、軸方向他方側の端部の径方向外端部である、カバーフランジ部33の径方向外端部31に、全周にわたり尖った角部を有していない。
【0057】
具体的には、カバーフランジ部33の径方向外端部31は、軸方向から見て、
図6(a)および
図6(b)に示すように、略矩形の輪郭形状を有しているが、四隅の角部は尖っておらず、曲率半径が大きいR形状を有している。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。本例では、カバーフランジ部33の径方向外端部31のうち、
図6(a)および
図6(b)における下端部は、左右両側の2つのR形状の角部が直接接続されることで、軸方向から見て半円形状を有している。
【0058】
カバーフランジ部33の径方向外端部31は、全周にわたり、尖った角部を有しない断面形状、具体的には、半円形の断面形状を有する(
図2、
図3、
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)、
図5(b)参照)。本発明を実施する場合には、カバーフランジ部の径方向外端部の断面形状を、軸方向両側の端部でR形状とし、軸方向中間部で直線形状とすることもできる。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
【0059】
本発明を実施する場合には、カバー基部の軸方向他方側の端部に径方向外側突出するカバーフランジ部を有しない構造を採用することもできる。この場合も、カバー基部の軸方向他方側の端部の径方向外端部を、全周にわたり尖った角部を有しない形状とすることができる。具体的には、カバー基部の軸方向他方側の端部の径方向外端部を軸方向から見た輪郭形状を、尖った角部を有しない輪郭形状とし、かつ、カバー基部の外周面と軸方向他方側の側面との接続部に存在する角部の断面形状をR形状とすることができる。
【0060】
本例のヨークカバー1は、カバー基部28に接続された2つのストッパ部41を備える。2つのストッパ部41は、カバーフランジ部33の軸方向他方側の半部の内周面のうち、ヨーク13のスリット19に対して周方向両側に90゜ずれた2箇所から互いに近づく方向に伸長している。2つのストッパ部41は、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面30に当接する。これにより、ヨーク13に対するヨークカバー1の軸方向の位置決めが図られる。本発明を実施する場合、ストッパ部の数および周方向位置は、任意に設定することができる。ストッパ部を、ヨーク基部の全周に設けることもできる。
【0061】
本例のヨークカバー1は、スリット進入部42を、さらに備える。
【0062】
スリット進入部42は、カバー基部28のうち、スリット19と整合する周方向部分に接続されている。より具体的には、本例のスリット進入部42は、カバー基部28を構成する嵌合筒部32のうち、スリット19と整合する周方向部分の内周面に接続され、かつ、該周方向部分から径方向内側および軸方向一方側に伸長した平板状に構成されている。スリット進入部42は、スリット19内に進入する。スリット進入部42は、ヨーク基部14の内周面18よりも径方向内側には突出しない。スリット進入部42は、1対のボルト孔22a、22bと整合する位置に、ヨーク基部14の径方向に関する内側に開口する切り欠き状のボルト係合部43を有する。ボルト係合部43は、ボルト23の軸部24の中間部に係合する。本例では、該係合に基づいて、ヨーク13に対するヨークカバー1の軸方向移動を防ぐことができる。本発明を実施する場合には、スリット進入部42を省略することもできる。
【0063】
本例のヨークカバー1は、カバー基部28のうち、スリット19に対して径方向反対側に位置する部分からヨーク基部14の軸方向一方側に延びる延出部44と、延出部44の軸方向一方側の端部からヨーク基部14の周方向両側に向けて伸長し、ヨーク基部14の軸方向一方側部分を抱持する1対の抱持腕部45を、さらに備える。
【0064】
1対の抱持腕部45の先端部には、互いに近づき合う方向に突出した1対の爪部46が備えられている。これらの爪部46は、ヨーク基部14の軸方向一方側部分の外周面のうち、周方向に関して1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面と同位相となる部分に係合する。
【0065】
1対の抱持腕部45の1対の爪部46は、1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側部である張出部21a、21bに対し、ヨーク基部14の軸方向一方側から対向する。本例では、ヨーク13に対するヨークカバー1の正規の組み付け位置において、すなわち、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面30にヨークカバー1のストッパ部41が当接した状態で、1対の抱持腕部45の1対の爪部46と張出部21a、21bとの間に、軸方向の隙間が形成される。ただし、該隙間をなくすこともできる。
【0066】
1対の抱持腕部45の1対の爪部46とカバー基部28(嵌合筒部32)との間隔W1は、1対のヨークフランジ部20a、20bの張出部21a、21bの軸方向一方側の側面のうち1対の爪部46が軸方向に対向する部分とヨーク基部14の軸方向他方側の端面30との間隔W2よりも小さい(W1<W2)。このため、仮に、ヨーク13にボルト23が取り付けられる前の状態で、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向他方側に移動したとしても、1対の抱持腕部45の1対の爪部46が1対の張出部21a、21bの軸方向一方側の側面と係合することに基づいて、ヨーク基部14に対するカバー基部28(嵌合筒部32)の嵌合が外れることを防ぐことができる。
【0067】
本例では、1対の抱持腕部45の1対の爪部46が、ヨーク基部14の軸方向に関して、ヨーク13の1対のボルト孔22a、22bと重畳する位置に存在する。このため、仮に、ヨーク13にボルト23が取り付けられる前の状態で、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向他方側に移動して、1対の抱持腕部45の1対の爪部46が1対の張出部21a、21bの軸方向一方側の側面と係合した後、1対の抱持腕部45の1対の爪部46の間隔が弾性的に広がって該係合が解除され、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向他方側にさらに移動した場合でも、1対の抱持腕部45の1対の爪部46を1対のボルト孔22a、22bに係合させることができる。これにより、ヨーク13に対してヨークカバー1が脱落するのを防ぐことができる。
【0068】
1対の抱持腕部45のうち、一方のヨークフランジ部20a側に位置する一方の抱持腕部45は、その先端側部分に、ボルト23の頭部25に対して軸方向一方側から対向する頭部用一方側対向部47を有する。本例では、ヨーク13に対するヨークカバー1の正規の組み付け位置において、頭部用一方側対向部47と頭部25との間には、軸方向の隙間が形成される。ただし、該隙間をなくすこともできる。本例では、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向他方側に移動する際には、頭部用一方側対向部47と頭部25との係合に基づいて、該移動を防ぐことができる。
【0069】
1対の抱持腕部45のうち、他方のヨークフランジ部20b側に位置する他方の抱持腕部45は、その先端側部分に、ヨーク13の凸部26に対して軸方向一方側から対向する凸部用一方側対向部48を有する。本例では、ヨーク13に対するヨークカバー1の正規の組み付け位置において、凸部用一方側対向部48と凸部26との間には、軸方向の隙間が形成される。ただし、該隙間をなくすこともできる。本例では、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向他方側に移動する際には、凸部用一方側対向部48と凸部26との係合に基づいて、該移動を防ぐことができる。本発明を実施する場合には、延出部44および1対の抱持腕部45を省略することもできる。
【0070】
本例の構造では、ヨーク13にヨークカバー1を組み付けた後に、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を、ボルト23を用いて結合する。
【0071】
ヨーク13にヨークカバー1を組み付ける際には、まず、1対の抱持腕部45の1対の爪部46の間隔を弾性的に拡げつつ、これらの爪部46の間を通じて、ヨーク基部14の軸方向中間部を、1対の抱持腕部45の間に径方向に挿入する。次いで、ヨーク基部14にカバー基部28を外嵌し、かつ、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面30にストッパ部41を当接させる。
【0072】
ヨークカバー1が組み付けられたヨーク13に対して、ステアリングシャフト4の前端部を結合する際には、まず、ステアリングシャフト4の前端部を、ヨーク基部14の内側に軸方向他方側から挿入し、ステアリングシャフト4の前端部の外周面の周方向1箇所に備えられたボルト係合部27を、1対のボルト孔22a、22bに整合する位置に配置する。次いで、一方のボルト孔22aに挿通したボルト23の軸部24を、他方のボルト孔22bに螺合し、かつ、軸部24の中間部を、ステアリングシャフト4のボルト係合部27、および、ヨークカバー1のボルト係合部43に係合させる。そして、ボルト23の頭部25の内側面を、一方のヨークフランジ部20aの外側面に当接させた状態で、ボルト23を締め付ける。これにより、ヨーク基部14の内周面18を縮径させ、内周面18に備えられた雌セレーションを、外周面17に備えられた雄セレーションに強く係合させる。
【0073】
このような結合作業を行う際に、本例の構造では、ヨーク13に対してヨークカバー1が正規の軸方向位置に組み付けられていない場合には、ボルト孔22a、22bの間に、ヨークカバー1のスリット進入部42の一部が配置された状態となる。その結果、ボルト23の軸部24を、他方のボルト孔22bに螺合することができなくなる。したがって、本例の構造では、スリット進入部42の存在に基づいて、ヨーク13に対してヨークカバー1が正規の軸方向位置からずれた軸方向位置で組み付けられることを防止できる。
【0074】
本例のヨークカバー1によれば、ヨーク13を構成するヨーク基部14の軸方向他方側の端面30の周縁部に存在する角部が人の手や足などに触れることを防止できる。
【0075】
すなわち、本例のヨークカバー1は、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の周囲に全周にわたり配置されたカバー基部28を備えており、カバー基部28の軸方向他方側の側面29が、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面30よりも軸方向他方側に位置する。このため、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面30の周縁部に存在する角部が、カバー基部28の外部に露出せず、カバー基部28の径方向内側に配置される。したがって、該角部が人の手や足などに触れることを防止できる。具体的には、該角部が、運転者の足に触れたり、車室内の清掃時に人の手に触れたり、ヨーク13にヨークカバー1を組み付けた後、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を結合する作業者の手に触れたりすることを防止できる。
【0076】
本例では、カバー基部28は、軸方向他方側の端部の径方向外端部である、カバーフランジ部33の径方向外端部31に、全周にわたり尖った角部を有していない。このため、カバーフランジ部33の径方向外端部31に運転者の足などが触れた場合の安全性を確保することができる。
【0077】
本例では、カバーフランジ部33の径方向外端部31が、ボルト23の頭部25およびヨーク13の凸部26よりも径方向外側に張り出している。このため、カバーフランジ部33の径方向外端部31の存在に基づいて、ボルト23の頭部25およびヨーク13の凸部26に、運転者の足などが触れることを防ぎやすい。
【0078】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図13~
図15を用いて説明する。
【0079】
本例のヨークカバー1aは、第1例のストッパ部41(
図3参照)を備えていない。本例では、嵌合筒部32の頭部用他方側対向部37をボルト23の頭部25(
図4(a)参照)に軸方向他方側から当接させること、および/または、嵌合筒部32の凸部用他方側対向部39を凸部26(
図4(b)参照)に軸方向他方側から当接させることにより、ヨーク13に対するヨークカバー1aの軸方向の位置決めが図られる。
【0080】
本例では、ヨークカバー1aが第1例のストッパ部41を備えていない分、ヨークカバー1aの材料費を抑えることができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0081】
[第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、
図16を用いて説明する。
【0082】
本例では、ヨークカバー1bの嵌合筒部32aの径方向の肉厚を、第1例よりも大きくしている。これにより、ボルト23の軸方向に関する頭部用他方側対向部37aの肉厚T1を、頭部25の軸方向寸法t1よりも大きくしている(T1>t1)。これにより、ボルト23の軸方向に関して、頭部用他方側対向部37aを、頭部25よりも外側に張り出させている。このため、本例の構造では、頭部用他方側対向部37aの存在に基づいて、ボルト23の頭部25に、運転者の足などが触れることを防ぎやすい。
【0083】
本例では、ボルト23の軸方向に関する凸部用他方側対向部39aの肉厚T2を、凸部26の軸方向寸法t2よりも大きくしている(T2>t2)。これにより、ボルト23の軸方向に関して、凸部用他方側対向部39aを、凸部26よりも外側に張り出させている。このため、本例の構造では、凸部用他方側対向部39aの存在に基づいて、ヨーク13の凸部26に、運転者の足などが触れることを防ぎやすい。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0084】
本発明は、上述した各実施の形態の構造を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
1、1a、1b ヨークカバー
2 ステアリング装置
3 ステアリングホイール
4 ステアリングシャフト
5 ステアリングコラム
6a、6b 自在継手
7 中間シャフト
8 ステアリングギヤユニット
9 ピニオンシャフト
10 ラック
11 タイロッド
12 操舵輪
13 ヨーク
14 ヨーク基部
15 ヨーク腕部
16 円孔
17 外周面
18 内周面
19 スリット
20a、20b ヨークフランジ部
21a、21b 張出部
22a、22b ボルト孔
23 ボルト
24 軸部
25 頭部
26 凸部
27 ボルト係合部
28 カバー基部
29 側面
30 端面
31 径方向外端部
32、32a 嵌合筒部
33 カバーフランジ部
34 クラッシュリブ
35 逃げ溝
36 突条
37、37a 頭部用他方側対向部
38 凹部
39、39a 凸部用他方側対向部
40 凹部
41 ストッパ部
42 スリット進入部
43 ボルト係合部
44 延出部
45 抱持腕部
46 爪部
47 頭部用一方側対向部
48 凸部用一方側対向部
49 ボス部