IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2023-161826燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法
<>
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図1
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図2
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図3
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図4
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図5
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図6
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図7
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図8
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図9
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図10
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図11
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図12
  • 特開-燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161826
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/60 20060101AFI20231031BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231031BHJP
   F01D 25/28 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F23R3/60
F02C7/00 D
F01D25/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072415
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 覚
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 勇人
(72)【発明者】
【氏名】持田 俊輔
(57)【要約】
【課題】燃焼筒の位置調節を容易にすることが可能な燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法を提供する。
【解決手段】燃焼器取付用治具は、燃焼器の燃焼筒をガスタービンに取り付けるための治具であって、前記ガスタービンの車室の燃焼器挿入穴部に固定可能な固定部と、前記固定部に支持されるアーム部と、を備え、前記アーム部は、前記アーム部の長手方向における一端部であって、作業者が操作可能な第1端部と、前記アーム部の前記長手方向における他端部であって、前記燃焼筒を受けることが可能な第2端部と、を含み、前記アーム部は、前記長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸の周りを回動可能に前記固定部に支持される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器の燃焼筒をガスタービンに取り付けるための治具であって、
前記ガスタービンの車室の燃焼器挿入穴部に固定可能な固定部と、
前記固定部に支持されるアーム部と、を備え、
前記アーム部は、
前記アーム部の長手方向における一端部であって、作業者が操作可能な第1端部と、
前記アーム部の前記長手方向における他端部であって、前記燃焼筒を受けることが可能な第2端部と、を含み、
前記アーム部は、前記長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸の周りを回動可能に前記固定部に支持された
燃焼器取付用治具。
【請求項2】
前記固定部は、前記車室に前記固定部を取り付けるためのボルトが挿通される穴を有する
請求項1に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項3】
前記固定部と前記アーム部との間に設けられる土台部を備える
請求項1又は2の何れか一項に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項4】
前記固定部に支持されるとともに、前記アーム部が取り付けられるアーム支持部を備え、
前記アーム支持部は、前記支点軸と交差する方向に延びる回転軸の周りを回転可能に前記固定部に支持された
請求項3に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項5】
前記支点軸周りの前記アーム部の回転運動範囲を規制する規制部を備える
請求項1又は2に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項6】
前記固定部に支持されるとともに、前記アーム部が取り付けられるアーム支持部を備え、
前記規制部は、
前記アーム支持部に固定されるとともに、前記支点軸よりも前記第1端部側にて前記支点軸の方向における前記アーム部の両側に設けられる一対のピン支持部と、
前記一対のピン支持部の間を延在するように前記一対のピン支持部にそれぞれ設けられた一対の孔に挿通可能なピンと、
を含む
請求項5に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項7】
前記アーム部の前記第2端部は、
外筒と、
前記外筒の内周面と摺動可能な外周面を有する摺動部と、を含み、
前記アーム部の前記長手方向に沿って前記外筒に対して前記摺動部を動かすことで前記アーム部の長さを調節可能に構成された
請求項1又は2に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項8】
前記アーム部の前記第2端部は、前記アーム部の幅よりも大きな幅を有するプレートを含む
請求項1又は2に記載の燃焼器取付用治具。
【請求項9】
固定部と、前記固定部に支持され、第1端部及び第2端部を有するアーム部と、を含む燃焼器取付用治具を用いたガスタービン用燃焼器の燃焼筒の取付方法であって、
車室の燃焼器挿入穴部に前記固定部を固定するステップと、
前記アーム部の前記第2端部で燃焼筒を受けるステップと、
前記アーム部の前記第1端部を操作して、前記アーム部の長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸の周りに前記アーム部を回動させることで、前記第2端部を動かして前記燃焼筒の位置を調節するステップと、
を備える燃焼器の取付方法。
【請求項10】
前記アーム部は、前記固定部に支持されるアーム支持部に取り付けられ、
前記アーム部の前記第1端部を操作して、前記支点軸と交差する方向に延びる回転軸の周りを前記アーム支持部とともに前記アーム部を回転させることで、前記第2端部を動かして前記燃焼筒の位置を調節するステップを備える
請求項9に記載の燃焼器の取付方法。
【請求項11】
前記アーム部の前記支点軸周りの回動を規制するステップを備える
請求項9又は10に記載の燃焼器の取付方法。
【請求項12】
前記アーム部の前記第2端部は、
外筒と、
前記外筒の内周面と摺動可能な外周面を有する摺動部と、を含み、
前記アーム部の前記長手方向に沿っておいて前記外筒に対して前記摺動部を動かすことで前記アーム部の長さを調節するステップを備える
請求項9又は10に記載の燃焼器の取付方法。
【請求項13】
前記アーム部の前記第1端部を操作して前記第2端部を動かすことにより、前記燃焼筒の芯出しをするステップを備える
請求項9又は10に記載の燃焼器の取付方法。
【請求項14】
前記燃焼筒の一端部を前記車室に支持される静止部に固定するステップを備え、
前記燃焼筒を受けるステップでは、前記第2端部で前記燃焼筒の他端部を受け、
前記燃焼筒の位置を調節するステップでは、前記燃焼筒の前記一端部が前記静止部に固定された状態で、前記アーム部の前記第1端部を操作する
請求項9又は10に記載の燃焼器の取付方法。
【請求項15】
前記燃焼筒を吊り下げ用具で吊り下げながら前記車室内に搬入するステップを備え、
前記固定するステップでは、前記燃焼筒を前記吊り下げ用具で吊り下げた状態で、前記燃焼筒の前記一端部を前記静止部に固定する
請求項14に記載の燃焼器の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器を適切な位置に取り付けるために治具が用いられる。
【0003】
特許文献1には、ガスタービンの燃焼器の設置時に、燃焼器の内筒と燃焼器の尾筒との位置決めを行うための治具が開示されている。この治具は、尾筒の内周形状に沿った外周形状を有する芯出し部を有する。尾筒設置時に、治具の芯出し部を尾筒内に挿入することで、尾筒の位置決めをすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-218117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスタービンの車室内において燃焼筒を適切な位置に取り付けるため、燃焼筒の位置を調節する必要がある。しかし、燃焼筒は、重く、円筒形であり、また、取付作業位置から設置位置までの距離もあるため、取付時の位置調節が難しい。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、燃焼筒の位置調節を容易にすることが可能な燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る燃焼器取付用治具は、
燃焼器の燃焼筒をガスタービンに取り付けるための治具であって、
前記ガスタービンの車室の燃焼器挿入穴部に固定可能な固定部と、
前記固定部に支持されるアーム部と、を備え、
前記アーム部は、
前記アーム部の長手方向における一端部であって、作業者が操作可能な第1端部と、
前記アーム部の前記長手方向における他端部であって、前記燃焼筒を受けることが可能な第2端部と、を含み、
前記アーム部は、前記長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸の周りを回動可能に前記固定部に支持される。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る燃焼器の取付方法は、
固定部と、前記固定部に支持され、第1端部及び第2端部を有するアーム部と、を含む燃焼器取付用治具を用いたガスタービン用燃焼器の燃焼筒の取付方法であって、
車室の燃焼器挿入穴部に前記固定部を固定するステップと、
前記アーム部の前記第2端部で燃焼筒を受けるステップと、
前記アーム部の前記第1端部を操作して、前記アーム部の長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸の周りに前記アーム部を回動させることで、前記第2端部を動かして前記燃焼筒の位置を調節するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、燃焼筒の位置調節を容易にすることが可能な燃焼器取付用治具及び燃焼器の取付方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るガスタービンの概略構成図である。
図2図1に示すガスタービンの燃焼器の概略断面図である。
図3】一実施形態に係る燃焼器取付用治具の概略的な斜視図である。
図4】一実施形態に係る燃焼器取付用治具の概略図である。
図5図4に示す燃焼器取付用治具を矢印Aの方向から視た概略図である。
図6】一実施形態に係る燃焼器取付用治具の概略図である。
図7図6に示す燃焼器取付用治具を矢印Bの方向から視た概略図である。
図8】一実施形態に係る燃焼器取付用治具の概略図である。
図9図8に示す燃焼器取付用治具を矢印Cの方向から視た概略図である。
図10】一実施形態に係る燃焼器取付用治具の部分的な概略断面図である。
図11】一実施形態に係る燃焼器の取付方法のフローチャートである。
図12】一実施形態に係る燃焼器の取付方法を説明するための図である。
図13】一実施形態に係る燃焼器の取付方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
(ガスタービンの構成)
図1は、幾つかの実施形態に係る燃焼器取付用治具が適用される燃焼器を含むガスタービンを示す概略構成図である。図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結される。
【0013】
圧縮機2は、圧縮機車室10側に固定された複数の静翼16と、静翼16に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼18と、を含む。圧縮機2には、空気取入口12から取り込まれた空気が送られるようになっており、この空気は、複数の静翼16及び複数の動翼18を通過して圧縮されることで高温高圧の圧縮空気となる。
【0014】
燃焼器4には、燃料と、圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給されるようになっており、該燃焼器4において燃料が燃焼され、タービン6の作動流体である燃焼ガスが生成される。図1に示すように、ガスタービン1は、車室(ケーシング)20内にロータ8(ロータ軸線C1)を中心として周方向に沿って複数配置された燃焼器4を有する。
【0015】
タービン6は、タービン車室22によって形成される燃焼ガス通路28を有し、該燃焼ガス通路28に設けられる複数の静翼24及び動翼26を含む。タービン6の静翼24及び動翼26は、燃焼ガスの流れに関して燃焼器4の下流側に設けられている。静翼24はタービン車室22側に固定されており、ロータ8の周方向に沿って配列される複数の静翼24が静翼列を構成している。また、動翼26はロータ8に植設されており、ロータ8の周方向に沿って配列される複数の動翼26が動翼列を構成している。静翼列と動翼列とは、ロータ8の軸方向において交互に配列されている。
【0016】
タービン6では、燃焼ガス通路28に流れ込んだ燃焼器4からの燃焼ガスが複数の静翼24及び複数の動翼26を通過することでロータ8が回転駆動され、これにより、ロータ8に連結された発電機が駆動されて電力が生成されるようになっている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気室30を介して外部へ排出される。
【0017】
(燃焼器の構成)
図2は、図1に示すガスタービン1の燃焼器4の概略断面図である。図2に示すように、ロータ8を中心として周方向に複数配置される燃焼器4(図1参照)の各々は、車室(ケーシング)20の中に設けられる燃焼筒(尾筒)60及び燃料ノズル42,44を含む。
【0018】
燃料ノズル42,44は、燃料ポート46,48からの燃料がそれぞれ供給されるように構成されるとともに、燃焼筒60内に燃料を噴出するように構成される。燃料ノズル42,44の周囲にはスワラ43,45がそれぞれ設けられており、圧縮機2(図1参照)からの圧縮空気がスワラ43,45を介して燃焼筒60内に供給されるようになっている。
【0019】
燃料ノズル42,44、スワラ43,45及び/又は燃料ポート46,48は、ノズル組立体40を構成する。このノズル組立体40は、車室20に設けられた燃焼器挿入穴部120を介して部分的に車室20の内部に挿入され、燃焼器挿入穴部120を塞ぐように設けられる蓋部64、及び、該蓋部64に接続される内筒52を介して車室20に支持される。
【0020】
内筒52は、燃料ノズル42、44の周りを囲むように設けられる。内筒52の外周面と筒部65の内周面との間に、圧縮機からの空気が流れる空気通路が形成される。内筒52の先端部(下流側端部)は、燃焼筒60の上流側端部に連結される。内筒52と燃焼筒60とは、内筒52の先端部が燃焼筒60に挿入された状態で、内筒52と燃焼筒60との間に設けられる接続部56(例えば板ばね)を介して接続される。
【0021】
蓋部64は、燃料ノズル42,44の軸方向(燃料ノズル42,44の中心軸Oの方向)に沿って延在する筒部65と、筒部65の一端側において筒部65から径方向外側に突出するフランジ部66と、を含む。蓋部64は、フランジ部66に設けられる複数のボルト穴67、及び、車室20に設けられる複数のボルト穴21にそれぞれねじ込まれる複数のボルト62によって車室(ケーシング)20に取り付けられる。
【0022】
このように構成された燃焼器4では、燃料ノズル42,44から噴出された燃料と、空気通路及びスワラ43,45を介して供給される圧縮空気とによって、燃焼筒60内に燃料と空気の混合気が形成される。燃焼筒60に流れ込んだ混合気は、点火装置(不図示)で着火されることにより又はパイロット火炎により着火されて燃焼し、これにより燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは、燃焼筒60を流れてタービン6(図1参照)に導かれるようになっている。
【0023】
(燃焼器取付用治具の構成)
次に、幾つかの実施形態に係る燃焼器取付用治具について説明する。以下に説明する燃焼器取付用治具は、燃焼器4の燃焼筒(尾筒)60をガスタービン1に取り付けるための治具である。
【0024】
図3は、一実施形態に係る燃焼器取付用治具の概略的な斜視図である。図4図6及び図8は、それぞれ、一実施形態に係る燃焼器取付用治具の概略図である。図5は、図4に示す燃焼器取付用治具を矢印Aの方向(燃焼器の軸方向に沿った方向)から視た概略図であり、図7は、図6に示す燃焼器取付用治具を矢印Bの方向(燃焼器の径方向に沿った方向)から視た概略図であり、図9は、図8に示す燃焼器取付用治具を矢印Cの方向(燃焼器の径方向に沿った方向)から視た概略図である。なお、図4図9は、ガスタービン1の車室20に取り付けられた状態の燃焼器取付用治具を示す図である。
【0025】
図3図9に示すように、幾つかの実施形態に係る燃焼器取付用治具70は、車室20の燃焼器挿入穴部120に固定可能な固定部72と、固定部72に支持されるアーム部80と、アーム部80と、を備える。アーム部80は、該アーム部80の両端部である第1端部81及び第2端部82を有する。第1端部81は、作業者が手動又は工具を用いて操作可能に構成される。第2端部82は、燃焼筒60を受けることが可能に(あるいは、燃焼筒60が接触可能に)構成される。アーム部80は、長手方向における第1端部81と第2端部82との間に位置する支点軸Pの周りを回動可能に固定部72に支持される。
【0026】
図示する実施形態では、固定部72は、燃焼器取付用治具70を車室20に取り付けた状態で、車室20の表面124に沿って延在する第1部分74と、車室20の燃焼器挿入穴部120の内壁面122に沿って延在する第2部分76と、を含む。図3及び図5に示すように、第2部分76のうち、燃焼器挿入穴部120の内壁面122に接する部分は、燃焼器挿入穴部120の形状に対応した曲面形状を有していてもよい。
【0027】
固定部72は、車室20に固定部72を取り付けるためのボルト73(図4図6及び図8参照)が挿通される穴71を有していてもよい。図示する実施形態では、該穴71は、第1部分74に設けられている。なお、ボルト73は、固定部72の穴71に挿通された状態で、車室20のボルト穴21に螺合されるようになっていてもよい。
【0028】
図示する実施形態では、アーム部80は、固定部72に支持されるアーム支持部90に回転可能に支持されている。アーム部80には、該アーム部80の長手方向に直交する方向に沿って延在するシャフト部84が設けられている。アーム支持部90は、固定部72側に位置する底部91と、支点軸Pの方向におけるアーム部80の両側方に設けられ、該底部91に接続される一対の側部92と、を有する。シャフト部84は、アーム支持部90の一対の側部92にそれぞれ設けられた孔90aに嵌め込まれており、該シャフト部84の中心線と略一致する支点軸Pの周りを、アーム部80がシャフト部84とともに回転するようになっている。
【0029】
ガスタービン1の車室20内において燃焼筒60を適切な位置に取り付けるため、燃焼筒60の位置を調節する必要がある。しかし、燃焼筒60は、重く、円筒形であり、また、取付作業位置から設置位置までの距離もあるため、取付時の位置調節が難しい。
【0030】
この点、上述の実施形態によれば、燃焼器取付用治具70は、車室20の燃焼器挿入穴部120に固定される固定部72に支持されるアーム部80を含み、該アーム部80は、長手方向における第1端部81と第2端部82の間に位置する支点軸Pの周りを回動可能である。よって、第1端部81を力点とし、第2端部82を作用点とするてこ(アーム部80)を用いて(すなわち、てこの原理を利用して)、燃焼筒60の位置を容易に調節することができる。
【0031】
なお、アーム部80は、断面形状が角形のパイプから形成されてもよい。この場合、アーム部80の第2端部82と燃焼筒60の接触面積を比較的大きくすることができ、第2端部82で燃焼筒60を受けやすい。このため、第1端部81を操作することにより、第2端部82で受けられた燃焼筒60を適切に動かしやすい。
【0032】
幾つかの実施形態では、例えば、図6図9に示すように、アーム部80の第2端部82は、アーム部80の幅W1よりも大きな幅W2を有するプレート86を含んでもよい。ここで、アーム部80の幅W1及びプレート86の幅W2は、アーム部80の支点軸Pの方向における幅である。
【0033】
このように、アーム部80の第2端部82が、アーム部80の幅W1よりも大きな幅W2を有するプレートを86含むことにより、該プレート86を含む第2端部82によって、燃焼筒60を受けやすくなる。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば図4及び図6図9に示すように、アーム部80の第2端部82は、該第2端部82にてアーム部80の表面に設けられる傷防止用保護材85を含んでもよい。図6図9に示すように、傷防止用保護材85は、第2端部82に設けられるプレート86の表面に設けられていてもよい。傷防止用保護材85は、ラバーシートを含んでもよい。
【0035】
このように、アーム部80の第2端部82に傷防止用保護材85を設けることで、アーム部80と燃焼筒60との接触に起因する燃焼筒60の傷の発生を抑制することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、例えば図1図9に示すように、燃焼器取付用治具70は、固定部72とアーム部80との間に設けられる土台部78を備える。図示する実施形態において、土台部78は、固定部72の第2部分76の表面(車室20と反対側の面)に固定されている。
【0037】
上述の実施形態では、固定部72とアーム部80との間に土台部78が設けられるので、車室20に固定される固定部72とアーム部80との間にある程度の距離を持たせることができる。よって、支点軸P周りのアーム部80の可動範囲を大きくすることができ、このため、燃焼筒60の位置調節をよりしやすくなる。
【0038】
幾つかの実施形態では、アーム部80を支持するアーム支持部90は、アーム部80の支点軸Pと交差する方向に延びる回転軸Qの周りを回転可能に固定部72に支持される。すなわち、アーム部80は、アーム支持部90とともに、回転軸Qの周りを回転可能である。
【0039】
図6図9に示す例示的な実施形態では、土台部78に設けられた貫通孔79に挿通されたボルト100が、アーム支持部90の底部91に設けられたねじ孔91aに螺合されている。ここで、貫通孔79の径は、ボルト100の径よりも若干大きい。したがって、アーム支持部90がアーム部80とともに、ボルト100の中心軸(回転軸Q)の周りを、土台部78及び固定部72に対して回転可能である。なお、図示する実施形態では、支点軸Pと回転軸Qとは互いに直交している。
【0040】
上述の実施形態によれば、アーム支持部90に支持されるアーム部80が支点軸Pの周りを回転可能であるのに加え、アーム支持部90が、支点軸Pと交差する方向に延びる回転軸Qの周りを回転可能である。よって、アーム部80の可動範囲がより広くなるため、燃焼筒60の位置をより自在に調節可能である。
【0041】
幾つかの実施形態では、例えば図6図9に示すように、燃焼器取付用治具70は、支点軸P周りのアーム部80の回転運動範囲を規制する規制部93を備える。
【0042】
上述の実施形態によれば、支点軸P周りのアーム部80の回転運動範囲を規制可能である。よって、例えば、燃焼筒60の取付位置に対応する位置範囲内にアーム部80が位置するように、アーム部80の支点軸P周りの回転運動範囲を規制することにより、燃焼器取付用治具70を用いた燃焼筒60の位置調節がしやすくなる。
【0043】
図6及び図7に示す例示的な実施形態では、規制部93は、アーム支持部90に固定されるとともに、支点軸Pよりも第1端部81側にて(即ち第2端部82と反対側の端部側にて)支点軸Pの方向におけるアーム部80の両側に設けられる一対のピン支持部94と、一対のピン支持部94の間を延在するように一対のピン支持部94にそれぞれ設けられた一対の孔95に挿通可能なピン98と、を含む。ピン98は、支点軸Pの方向に沿って延在するように設けられる。
【0044】
上述の実施形態によれば、アーム支持部90に固定されるとともに、アーム部80の両側に設けられる一対のピン支持部94と、該一対のピン支持部94に設けられる孔95に挿通されるピン98とを含む簡素な構成で、支点軸P周りのアーム部80の回転運動範囲を規制可能である。よって、このような簡素な構成で、燃焼器取付用治具70を用いた燃焼筒の位置調節がしやすくなる。
【0045】
なお、図6及び図7に示す例示的な実施形態では、一対のピン支持部94は、ボルト96によりアーム支持部90の側部92に固定されている。
【0046】
また、一対のピン支持部94は、互いに異なる位置に設けられる複数の孔95(95A~95D)を有している。複数の孔95のうち、ガスタービン1の周方向(すなわちロータ8の周方向)における燃焼器4の取付位置に対応する孔95(95A~95D)にピン98を挿通させることで、燃焼器4の取付位置に応じてアーム部80の支点軸P周りの回転運動範囲を規制することができる。これにより、燃焼筒60を、ガスタービン1の周方向における燃焼器4の取付位置に応じた適切な位置に位置させやすくなる。
【0047】
図8及び図9に示す例示的な実施形態では、規制部93は、アーム部80のアーム支持部90に対する動きを固定可能なクランプレバー99を含む。本実施形態では、アーム支持部90の側部92は、底部91に接続される基部92Aと、基部92Aとともにシャフト部84を挟むように設けられる上部92Bと、を含む。基部92Aと上部92Bとはボルト101,102により締結されている。クランプレバー99はラチェット機構を有していてもよく、クランプレバー99の操作により、ボルト102を緩めたり締めたりすることが容易にできる。クランプレバー99によってボルト102が緩められた状態では、シャフト部84及びアーム部80は、支点軸Pの周りを動くことができる。一方、クランプレバー99によってボルト102が締められた状態では、シャフト部84がボルト101,102に締結力、及び、側部92(基部92A及び上部92B)との摩擦力によって固定され、シャフト部84及びアーム部80が動かないようになっている。
【0048】
なお、幾つかの実施形態では、燃焼器取付用治具70は、図6及び図7に示すピン支持部94及びピン98を含む規制部93、及び、図8及び図9に示すクランプレバー99を含む規制部93の両方を備えていてもよい。
【0049】
図10は、一実施形態に係る燃焼器取付用治具70の部分的な概略断面図である。幾つかの実施形態では、例えば図10に示すように、アーム部80の第2端部82は、外筒104と、外筒104の内周面104aと摺動可能な外周面106aを有する摺動部106と、を含む。アーム部80の長手方向に沿って外筒104に対して摺動部106を動かすことでアーム部80の長さを調節可能になっている。
【0050】
図10に示す例示的な実施形態では、摺動部106には、摺動部106の外周面106aから凹むように、アーム部80の長手方向に沿って延びる溝105が形成されている。また、外筒104には、ねじ孔103が形成されている。アーム部80が所望の長さとなるように、摺動部106の長手方向における位置を調整し、ボルト108の先端部が溝105の内部に位置した状態でボルト108をねじ孔103にねじ込んで、摺動部106に押し付け力を与えることで、摺動部106が外筒104に対して固定される。このようにして、アーム部80の長さを調節可能である。
【0051】
上述の実施形態によれば、アーム部80の長手方向に沿って外筒104に対して摺動部106を動かすことでアーム部80の長さを調節可能である。よって、例えばガスタービン1の周方向における燃焼器4の取付位置に応じて燃焼器挿入穴部120と燃焼筒60との距離が異なる場合であっても、共通の燃焼器取付用治具70を用いて、燃焼筒60の位置調節をすることができる。
【0052】
(燃焼器の取付方法)
次に、上述の燃焼器取付用治具70を用いた燃焼筒60の取付方法について説明する。図11は、一実施形態に係る燃焼器の取付方法のフローチャートである。図12及び図13は、一実施形態に係る燃焼器の取付方法を説明するための図であり、ガスタービン1の車室20の内部を示す概略図である。
【0053】
一実施形態に係る方法では、まず、燃焼筒60を車室20の内部に搬入する(S2)。ステップS2では、車室20の上半部分の一部(図12において鎖線で示す部分)を取り外し、このように車室20の一部を取り外すことでできたスペースを介して、燃焼筒60を車室20の内部に搬入してもよい。ステップS2では、燃焼筒60を吊り下げ用具(ナイロンスリング等)で吊り下げながら車室20内に搬入してもよい。
【0054】
次に、燃焼筒60の一端部60b(タービン6側の端部)を、車室20に支持される静止部に固定する(S4)。図12に示す例では、燃焼筒60の一端部60bに設けられたガセット部34を、ボルト36によって翼環32(静翼24を支持する部材;上述の静止部)に固定する。ステップS4では、ステップS2において燃焼筒60の搬入に使用した吊り下げ用具で燃焼筒60を吊り下げた状態で、燃焼筒60の一端部60bを静止部に固定してもよい。
【0055】
次に、燃焼器取付用治具70を車室20に設置する(S6)。すなわち、燃焼器取付用治具70の固定部72を、車室20の燃焼器挿入穴部120に、例えばボルト73を用いて固定する(図12参照)。ステップS6では、燃焼器取付用治具70で燃焼筒60の自重を受けることができるように、燃焼筒60の下方にアーム部80の第2端部82が位置するように、燃焼器取付用治具70を設置する。
【0056】
次に、アーム部80の第2端部82で燃焼筒60の他端部60aを受けるとともに、アーム部80の第1端部81を操作して、第2端部82を動かして燃焼筒60の位置を調節しながら、タービン6の静翼24(1段静翼)、及び/又は、燃焼筒60と静翼24との接続部38のシールを組み付ける(S8)。
【0057】
ステップS8では、アーム部80の第1端部81を操作して支点軸Pの周りにアーム部80を回転させることで、及び/又は、アーム部80の第1端部81を操作して回転軸Qの周りにアーム支持部90及びアーム部80を回転させることで、第2端部82を動かして燃焼筒60の位置を調節する。
【0058】
ステップS8では、アーム部80の支点軸P周りの回動範囲を規制しながら、アーム部80の第1端部81を操作して燃焼筒60の位置調節をしてもよい。
【0059】
ステップS8では、アーム部80の長さを調節してから、アーム部80の第1端部81を操作して燃焼筒60の位置調節をしてもよい。アーム部80の長さは、アーム部80の長手方向に沿っておいてアーム部80を構成する外筒104に対して摺動部106を動かすことで調節してもよい(図10参照)。
【0060】
ステップS8の後、燃焼筒60を支持するために車室20内に設けられるサポート110を、ボルト112等で燃焼筒60に固定してもよい(図13参照)。
【0061】
次に、燃焼器取付用治具70を車室20に設置する(S10)。ステップS10で設置する燃焼器取付用治具70は、ステップS6で設置された燃焼器取付用治具70とは異なるものであってもよいし、同一の物であってもよい。後者の場合、ステップS10の前に、ステップS6で車室20に設置された燃焼器取付用治具70を車室20から取り外す必要がある。
【0062】
ステップS10では、燃焼器取付用治具70の固定部72を、車室20の燃焼器挿入穴部120に、例えばボルト73を用いて固定する(図13参照)。ステップS10では、燃焼器取付用治具70で燃焼筒60の芯出しをすることができるように、燃焼筒60の例えば上方にアーム部80の第2端部82が位置するように、燃焼器取付用治具70を設置する。
【0063】
ステップS10では、アーム部80の第1端部81を操作して支点軸Pの周りにアーム部80を回転させることで、及び/又は、アーム部80の第1端部81を操作して回転軸Qの周りにアーム支持部90及びアーム部80を回転させることで、第2端部82を動かして燃焼筒60の位置を調節する。
【0064】
次に、アーム部80の第2端部82で燃焼筒60の他端部60aを受けるとともに、アーム部80の第1端部81を操作して、第2端部82を動かして燃焼筒60の位置を調節して、燃焼筒60の芯出しを行う(S12)。燃焼筒60の芯出しができているか否かは、例えば特許文献1に開示される治具を用いて、あるいは、ゲージ等を用いて計測することで確認することができる。
【0065】
ステップS12では、アーム部80の支点軸P周りの回動範囲を規制しながら、アーム部80の第1端部81を操作して燃焼筒60の位置調節をしてもよい。
【0066】
ステップS12では、アーム部80の長さを調節してから、アーム部80の第1端部81を操作して燃焼筒60の位置調節をしてもよい。アーム部80の長さは、アーム部80の長手方向に沿っておいてアーム部80を構成する外筒104に対して摺動部106を動かすことで調節してもよい(図10参照)。
【0067】
ステップS12で燃焼筒60の芯出しができたら、ボルト73を外し、燃焼器取付用治具70を車室20から取り外す(S14)。
【0068】
なお、ステップS14に続いて、ノズル組立体40を車室20に取り付けることで、燃焼器4をガスタービン1に取り付けることができる。
【0069】
上述の実施形態によれば、車室20の燃焼器挿入穴部120に固定される固定部72に支持されるアーム部80を含む燃焼器取付用治具70を用い、アーム部80の第1端部81を操作して、アーム部80の長手方向における第1端部81と第2端部82との間に位置する支点軸Pの周りにアーム部80を回動させることで、第2端部82を動かして燃焼筒の位置を調節する。このように、第1端部81を力点とし、第2端部82を作用点とするてこ(アーム部80)を用いて(すなわち、てこの原理を利用して)、燃焼筒60の位置を容易に調節することができる。
【0070】
また、上述の実施形態では、燃焼筒60の一端部60bが静止部(翼環32等)に固定された状態で、燃焼筒60の他端部60aを燃焼器取付用治具70で受けて該治具を操作するので、一端部60bを固定しない場合に比べて、燃焼筒60の位置調節がしやすい。
【0071】
また、上述したように、幾つかの実施形態では、燃焼筒60を吊り下げ用具で吊り下げながら車室20内に搬入するとともに、燃焼筒60を吊り下げ用具で吊り下げた状態で、燃焼筒60の一端部60bを静止部(翼環32等)に固定してもよい。このように、燃焼筒60の一端部60bを固定した状態にすることで、燃焼器取付用治具70を用いて、燃焼筒60の位置調節を適切に行うことができる。
【0072】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0073】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃焼器取付用治具(70)は、
燃焼器(4)の燃焼筒(60)をガスタービン(1)に取り付けるための治具であって、
前記ガスタービンの車室(20)の燃焼器挿入穴部(120)に固定可能な固定部(72)と、
前記固定部に支持されるアーム部(80)と、を備え、
前記アーム部は、
前記アーム部の長手方向における一端部であって、作業者が操作可能な第1端部(81)と、
前記アーム部の前記長手方向における他端部であって、前記燃焼筒を受けることが可能な第2端部(82)と、を含み、
前記アーム部は、前記長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸(P)の周りを回動可能に前記固定部に支持される。
【0074】
上記(1)の構成によれば、燃焼器取付用治具は、車室の燃焼器挿入穴部に固定される固定部に支持されるアーム部を含み、該アーム部は、長手方向における第1端部と第2端部の間に位置する支点軸の周りを回動可能である。よって、第1端部を力点とし、第2端部を作用点とするてこ(アーム部)を用いて(すなわち、てこの原理を利用して)、燃焼筒の位置を容易に調節することができる。
【0075】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記固定部は、前記車室に前記固定部を取り付けるためのボルト(73)が挿通される穴(71)を有する。
【0076】
上記(2)の構成によれば、固定部は、車室に固定部を取り付けるためのボルトが挿通される穴を有するので、該穴に挿通されるボルトを用いて、燃焼器取付用治具を車室に取り付けることができる。
【0077】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記燃焼器取付用治具は、
前記固定部と前記アーム部との間に設けられる土台部(78)を備える。
【0078】
上記(3)の構成によれば、固定部とアーム部との間に土台部が設けられるので、車室に固定される固定部とアーム部との間にある程度の距離を持たせることができる。よって、支点軸周りのアーム部の可動範囲を大きくすることができ、このため、燃焼筒の位置調節をよりしやすくなる。
【0079】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記燃焼器取付用治具は、
前記固定部に支持されるとともに、前記アーム部が取り付けられるアーム支持部(90)を備え、
前記アーム支持部は、前記支点軸と交差する方向に延びる回転軸(Q)の周りを回転可能に前記固定部に支持される。
【0080】
上記(4)の構成によれば、アーム支持部に支持されるアーム部が支点軸周りを回転可能であるのに加え、アーム支持部が、支点軸と交差する方向に延びる回転軸周りを回転可能である。よって、アーム部の可動範囲がより広くなるため、燃焼筒の位置をより自在に調節可能である。
【0081】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記燃焼器取付用治具は、
前記支点軸周りの前記アーム部の回転運動範囲を規制する規制部(93)を備える。
【0082】
上記(5)の構成によれば、支点軸周りのアーム部の回転運動範囲を規制可能である。よって、例えば、燃焼筒の取付位置に対応する位置範囲内にアーム部が位置するように、アーム部の支点軸周りの回転運動範囲を規制することにより、燃焼器取付用治具を用いた燃焼筒の位置調節がしやすくなる。
【0083】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記燃焼器取付用治具は、
前記固定部に支持されるとともに、前記アーム部が取り付けられるアーム支持部を備え、
前記規制部は、
前記アーム支持部に固定されるとともに、前記支点軸よりも前記第1端部側にて前記支点軸の方向における前記アーム部の両側に設けられる一対のピン支持部(94)と、
前記一対のピン支持部の間を延在するように前記一対のピン支持部にそれぞれ設けられた一対の孔(95)に挿通可能なピン(98)と、
を含む。
【0084】
上記(6)の構成によれば、アーム支持部に固定されるとともに、アーム部の両側に設けられる一対のピン支持部と、該一対のピン支持部に設けられる孔に挿通されるピンとを含む簡素な構成で、支点軸周りのアーム部の回転運動範囲を規制可能である。よって、このような簡素な構成で、燃焼器取付用治具を用いた燃焼筒の位置調節がしやすくなる。
【0085】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記アーム部の前記第2端部は、
外筒(104)と、
前記外筒の内周面(104a)と摺動可能な外周面(106a)を有する摺動部(106)と、を含み、
前記燃焼器取付用治具は、
前記アーム部の前記長手方向に沿って前記外筒に対して前記摺動部を動かすことで前記アーム部の長さを調節可能に構成される。
【0086】
上記(7)の構成によれば、アーム部の長手方向に沿って外筒に対して摺動部を動かすことでアーム部の長さを調節可能である。よって、例えばガスタービンの周方向における燃焼器の取付位置に応じて燃焼器挿入穴部と燃焼筒との距離が異なる場合であっても、共通の燃焼器取付用治具を用いて、燃焼筒の位置調節をすることができる。
【0087】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記アーム部の前記第2端部は、前記アーム部の幅よりも大きな幅を有するプレート(86)を含む。
【0088】
上記(8)の構成によれば、アーム部の第2端部は、アーム部の幅よりも大きな幅を有するプレートを含むので、該プレートを含む第2端部によって、燃焼筒を受けやすくなる。
【0089】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃焼器(4)の取付方法は、
固定部(72)と、前記固定部に支持され、第1端部(81)及び第2端部(82)を有するアーム部(80)と、を含む燃焼器取付用治具(70)を用いたガスタービン用燃焼器の燃焼筒(60)の取付方法であって、
車室の燃焼器挿入穴部に前記固定部を固定するステップ(S6,S10)と、
前記アーム部の前記第2端部で燃焼筒を受けるステップ(S8,S12)と、
前記アーム部の前記第1端部を操作して、前記アーム部の長手方向における前記第1端部と前記第2端部との間に位置する支点軸の周りに前記アーム部を回動させることで、前記第2端部を動かして前記燃焼筒の位置を調節するステップ(S8,S12)と、
を備える。
【0090】
上記(9)の方法によれば、車室の燃焼器挿入穴部に固定される固定部に支持されるアーム部を含む燃焼器取付用治具を用い、アーム部の第1端部を操作して、アーム部の長手方向における第1端部と第2端部との間に位置する支点軸の周りにアーム部を回動させることで、第2端部を動かして燃焼筒の位置を調節する。このように、第1端部を力点とし、第2端部を作用点とするてこ(アーム部)を用いて(すなわち、てこの原理を利用して)、燃焼筒の位置を容易に調節することができる。
【0091】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の方法において、
前記アーム部は、前記固定部に支持されるアーム支持部に取り付けられ、
前記燃焼器の取付方法は、
前記アーム部の前記第1端部を操作して、前記支点軸と交差する方向に延びる回転軸の周りを前記アーム支持部とともに前記アーム部を回転させることで、前記第2端部を動かして前記燃焼筒の位置を調節するステップ(S8,S12)を備える。
【0092】
上記(10)の方法によれば、固定部に支持されるアーム部を支点周りに回転させるのに加え、土台部の設置面に垂直な方向に沿った回転軸周りにアーム部を回転させる。よって、アーム部の可動範囲がより広くなるため、燃焼筒に位置をより自在に調節可能である。
【0093】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)の方法において、
前記燃焼器の取付方法は、
前記アーム部の前記支点軸周りの回動を規制するステップ(S8,S12)を備える。
【0094】
上記(11)の方法によれば、支点周りのアーム部の回転運動範囲を規制する。よって、例えば、燃焼筒の取付位置に対応する位置範囲内にアーム部が位置するように、アーム部の回転運動範囲を規制することにより、燃焼器取付用治具を用いた燃焼筒の位置調節がしやすくなる。
【0095】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れかの方法において、
前記アーム部の前記第2端部は、
外筒(104)と、
前記外筒の内周面(104a)と摺動可能な外周面(106a)を有する摺動部(106)と、を含み、
前記燃焼器の取付方法は、
前記アーム部の前記長手方向に沿っておいて前記外筒に対して前記摺動部を動かすことで前記アーム部の長さを調節するステップ(S8,S12)を備える。
【0096】
上記(12)の方法によれば、アーム部の長手方向に沿って外筒に対して内筒を動かすことでアーム部の長さを調節する。よって、例えばガスタービンの周方向における燃焼器の取付位置に応じて燃焼器挿入穴部と燃焼器との距離が異なる場合であっても、共通の燃焼器取付用治具を用いて、燃焼筒の位置調節をすることができる。
【0097】
(13)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(12)の何れかの方法において、
前記燃焼器の取付方法は、
前記アーム部の前記第1端部を操作して前記第2端部を動かすことにより、前記燃焼筒の芯出しをするステップ(S8,S12)を備える。
【0098】
上記(13)の方法によれば、第1端部を力点とし、第2端部を作用点とするてこ(アーム部)を用いて(すなわち、てこの原理を利用して)、燃焼筒の位置を容易に調節することができる。
【0099】
(14)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(13)の何れかの方法において、
前記燃焼器の取付方法は、
前記燃焼筒の一端部を前記車室に支持される静止部に固定するステップ(S4)を備え、
前記燃焼筒を受けるステップでは、前記第2端部で前記燃焼筒の他端部を受け、
前記燃焼筒の位置を調節するステップでは、前記燃焼筒の前記一端部が前記静止部に固定された状態で、前記アーム部の前記第1端部を操作する。
【0100】
上記(14)の方法によれば、燃焼筒の一端部が静止部に固定された状態で、燃焼筒の他端部を燃焼器取付用治具で受けて該治具を操作するので、一端部を固定しない場合に比べて、燃焼筒の位置調節がしやすい。
【0101】
(15)幾つかの実施形態では、上記(14)の方法において、
前記燃焼器の取付方法は、
前記燃焼筒を吊り下げ用具で吊り下げながら前記車室内に搬入するステップ(S2)を備え、
前記固定するステップでは、前記燃焼筒を前記吊り下げ用具で吊り下げた状態で、前記燃焼筒の前記一端部を前記静止部に固定する。
【0102】
上記(15)の方法によれば、燃焼筒を吊り下げ用具で吊り下げながら車室内に搬入するとともに、燃焼筒を吊り下げ用具で吊り下げた状態で、燃焼筒の一端部を静止部に固定する。このように、燃焼筒の一端部を静止部に固定した状態にすることで、燃焼器取付用治具を用いて、燃焼筒の位置調節を適切に行うことができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0104】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0105】
1 ガスタービン
2 圧縮機
4 燃焼器
6 タービン
8 ロータ
10 圧縮機車室
12 空気取入口
16 静翼
18 動翼
20 車室
21 ボルト穴
22 タービン車室
24 静翼
26 動翼
28 燃焼ガス通路
30 排気室
32 翼環
34 ガセット部
36 ボルト
38 接続部
40 ノズル組立体
42 燃料ノズル
43 スワラ
44 燃料ノズル
45 スワラ
46 燃料ポート
48 燃料ポート
52 内筒
56 接続部
60 燃焼筒
60a 他端部
60b 一端部
62 ボルト
64 蓋部
65 筒部
66 フランジ部
67 ボルト穴
70 燃焼器取付用治具
71 穴
72 固定部
73 ボルト
74 第1部分
76 第2部分
78 土台部
79 貫通孔
80 アーム部
81 第1端部
82 第2端部
84 シャフト部
85 傷防止用保護材
86 プレート
90 アーム支持部
90a 孔
91 底部
91a ねじ孔
92 側部
92A 基部
92B 上部
93 規制部
94 ピン支持部
95 孔
96 ボルト
98 ピン
99 クランプレバー
100 ボルト
101 ボルト
102 ボルト
103 ねじ孔
104 外筒
104a 内周面
105 溝
106 摺動部
106a 外周面
108 ボルト
110 サポート
112 ボルト
120 燃焼器挿入穴部
122 内壁面
124 表面
C1 ロータ軸線
O 中心軸
支点軸
Q 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13