(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161828
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 21/18 20060101AFI20231031BHJP
B62D 21/12 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B62D21/18 C
B62D21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072422
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘示
(72)【発明者】
【氏名】江川 史洋
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA23
3D203BA02
3D203BA07
3D203BA13
3D203CB09
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】多品種少量生産体制に容易に対応することができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、フロントアクスルケースと、フロントアクスルケースが固定されるサポートフレーム部と、サポートフレーム部よりも前方に位置するフロントバンパー部と、サポートフレーム部およびフロントバンパー部と分割され、サポートフレーム部およびフロントバンパー部に対して左右方向の両側に位置する左右一対のサイドフレーム部と、を備える。左右のサイドフレーム部はそれぞれ、サポートフレーム部およびフロントバンパー部と連結される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントアクスルケースと、
前記フロントアクスルケースが固定されるサポートフレーム部と、
前記サポートフレーム部よりも前方に位置するフロントバンパー部と、
前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部と分割され、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部に対して左右方向の両側に位置する左右一対のサイドフレーム部と、を備え、
左右の前記サイドフレーム部はそれぞれ、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部と連結される、作業車両。
【請求項2】
前記フロントバンパー部は、前記サポートフレーム部と離れて位置する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記サイドフレーム部に挿通され、前記フロントバンパー部に固定される第1締結部材をさらに備える、請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記サイドフレーム部に挿通され、前記サポートフレーム部に固定される第2締結部材をさらに備える、請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記サポートフレーム部よりも後方に位置するエンジンをさらに備え、
左右の前記サイドフレーム部はそれぞれ、前記エンジンに対して、左右方向の両側に位置して前記エンジンと連結される、請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記サイドフレーム部に挿通され、前記エンジンに固定される第3締結部材をさらに備える、請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
左右の前記サイドフレーム部のそれぞれに対して、前記エンジンとは反対側に位置する補強フレーム部をさらに備え、
前記補強フレーム部は、前記サイドフレーム部を介して前記エンジンと連結される、請求項5に記載の作業車両。
【請求項8】
前記補強フレーム部および前記サイドフレーム部に挿通され、前記エンジンに固定される第4締結部材をさらに備える、請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記補強フレーム部は、前記サイドフレーム部を介して前記サポートフレーム部と連結される、請求項7に記載の作業車両。
【請求項10】
前記補強フレーム部および前記サイドフレーム部に挿通され、前記サポートフレーム部に固定される第5締結部材をさらに備える、請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
前記フロントアクスルケースのスイングを規制するスイングストッパー部をさらに備え、
前記スイングストッパー部は、左右の前記サイドフレーム部のそれぞれに連結される、請求項7に記載の作業車両。
【請求項12】
前記スイングストッパー部は、左右の前記サイドフレーム部の外側面にそれぞれ連結される、請求項11に記載の作業車両。
【請求項13】
前記スイングストッパー部および前記サイドフレーム部に挿通され、前記サポートフレーム部に固定される第6締結部材をさらに備える、請求項12に記載の作業車両。
【請求項14】
前記スイングストッパー部は、第1作業機フレーム固定部を有する、請求項12または13に記載の作業車両。
【請求項15】
前記補強フレーム部は、第2作業機フレーム固定部を有する、請求項14に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタなどの作業車両では、フロントアクスルケースとも呼ばれる前車軸ケースがフレームに支持される。例えば特許文献1では、前車軸ケースが、前車軸フレームの底部にボルト締結によって支持されるトラクタが開示されている。前車軸ケースの前壁部には、ウェイト支持部材が設けられる。ウェイト支持部材は、バランスウェイトの着脱を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のトラクタの前車軸フレームは、前壁部と底部とを含む一体物のフレームで構成されている。このため、例えば、フロントPTO(Power take-off)出力を利用する部品を装着する機種または仕様に対応する場合、および、フロントローダまたはフロントドーザ等を装着する機種や仕様に対応する場合には、前車軸フレームを全く別の構造部品として準備しなければならなかった。その結果、少量生産で多様な仕様のトラクタを実現し得る多品種少量生産体制に対応することが容易ではなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、多品種少量生産体制に容易に対応することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る作業車両は、フロントアクスルケースと、前記フロントアクスルケースが固定されるサポートフレーム部と、前記サポートフレーム部よりも前方に位置するフロントバンパー部と、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部と分割され、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部に対して左右方向の両側に位置する左右一対のサイドフレーム部と、を備え、左右の前記サイドフレーム部はそれぞれ、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部と連結される。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、作業車両の多品種少量生産体制に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る作業車両の一例であるトラクタの概略の構成を示す側面図である。
【
図2】上記トラクタの前方内部を、斜め上方から見たときの斜視図である。
【
図3】上記トラクタの前方内部を、斜め下方から見たときの斜視図である。
【
図4】上記トラクタのフロントアクスルケースとサポートフレーム部との固定部分を拡大して示す斜視図である。
【
図7】作業機フレームを、第1作業機フレーム固定部および第2作業機フレーム固定部に取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に挙げて説明するが、作業車両としては、トラクタの他、各種の収穫機、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等の乗用型作業車両を考えることができる。
【0010】
また、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、作業車両としてのトラクタが作業時に進行する方向を「前」とし、その逆方向を「後」とする。また、トラクタの進行方向に向かって右側を右とし、左側を左とする。そして、トラクタの前後方向および左右方向に垂直な方向を上下方向とする。このとき、重力方向を下とし、その反対側を上とする。図面では、適宜、前方向をFで示し、後方向をBで示し、左方向をLで示し、右方向をRで示し、上方向をUで示し、下方向をDで示す。
【0011】
〔1.トラクタの概略の構成〕
図1は、本実施形態の作業車両の一例であるトラクタ1の概略の構成を示す側面図である。トラクタ1は車体2を備える。車体2の前部は、左右一対の前輪3で支持される。車体2の後部は、左右一対の後輪4で支持される。
【0012】
車体2の前部には、ボンネット5が配置される。ボンネット5の下方には、駆動源としてのエンジン6が配置される。エンジン6は、例えばディーゼルエンジンで構成されるが、これに限定されるわけではなく、例えばガソリンエンジンで構成されてもよい。
【0013】
車体2におけるエンジン6の後方には、操縦者(運転者)が搭乗する運転席7が設けられる。運転席7には、運転者が操向操作するための操縦ハンドル8と、運転者の運転座席9と、が設けられる。操縦ハンドル8は、ステアリングコラム10により、旋回可能に支持される。運転席7には、運転者によって操作される操作レバーLV、ペダルP等も設けられる。
【0014】
車体2の後方側には、3点リンク機構が設けられる。3点リンク機構は、左右一対のロアリンク11と、アッパリンク(図示せず)と、を含んで構成される。3点リンク機構には、作業装置を装着することが可能である。作業装置としては、例えば耕耘装置、プラウ、施肥装置を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。また、車体2の後方側には、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置(図示せず)が設けられる。昇降装置が3点リンク機構を昇降させることにより、上記作業装置を昇降させることができる。
【0015】
車体2において、運転席7(運転座席9)の後部には、ロプスフレーム12が設けられる。本実施形態のトラクタ1は、運転座席9がキャビンで覆われていないタイプである。そのため、トラクタ1の転倒時に運転者を保護する目的で、ロプスフレーム12が設けられる。
【0016】
車体2において、エンジン6の後方、かつ、運転席7の下方には、ミッションケース13が位置する。ミッションケース13の内部には、動力伝達装置(図示せず)が配置される。エンジン6の回転動力は、ミッションケース13内の動力伝達装置を介して、前輪3および後輪4の少なくとも一方に伝達される。
【0017】
〔2.トラクタのフロントアクスルケース付近の構成〕
図2は、トラクタ1の前方内部を、斜め上方から見たときの斜視図である。
図3は、トラクタ1の前方内部を、斜め下方から見たときの斜視図である。トラクタ1は、フロントアクスルケース21と、サポートフレーム部22と、を備える。フロントアクスルケース21は、前車軸(図示せず)を収容する前車軸ケースである。フロントアクスルケース21の左右両側には、前車軸を介して前輪3(
図1参照)が取り付けられる。フロントアクスルケース21は、サポートフレーム部22に固定される。より詳しく説明すると、以下の通りである。
【0018】
図4は、フロントアクスルケース21とサポートフレーム部22との固定部分を拡大して示す斜視図である。
図5は、上記固定部分の左側面図である。フロントアクスルケース21は、ケース本体21aと、前側固定部21bと、後側固定部21cと、を有する。ケース本体21aは、左右方向に延びて位置し、前車軸を収容する。前側固定部21bは、ケース本体21aの前端部の左右2か所に設けられる。後側固定部21cは、ケース本体21aの後端部の左右2か所に設けられる。
【0019】
図6は、サポートフレーム部22の斜視図である。サポートフレーム部22は、本体部22aと、前側支持部22bと、後側支持部22cと、を有する。本体部22aは、底部22a1と、側面部22a2と、を有する。底部22a1は、上方から見てほぼ四角形の形状で形成される。側面部22a2は、底部22a1の前側および左右の各端部から上方に延びて位置する。前側支持部22bは、本体部22aの底部22a1の前側左右の各角部から下方に延びて位置する。後側支持部22cは、本体部22aの底部22a1の後側左右の各角部から下方に延びて位置する。なお、サポートフレーム部22の上記形状は一例であり、サポートフレーム部22は上記形状に限定されるわけではない。
【0020】
上記したフロントアクスルケース21の前側固定部21bおよび後側固定部21cはそれぞれ、サポートフレーム部22の前側支持部22bおよび後側支持部22cの下方に位置し、前側支持部22bおよび後側支持部22cに対してボルトB0(
図3~
図5参照)よって締結される。これにより、フロントアクスルケース21がサポートフレーム部22に支持されるとともに固定される。
【0021】
図2および
図3に示すように、トラクタ1は、フロントバンパー部23を備える。フロントバンパー部23は、サポートフレーム部22よりも前方に位置する。フロントバンパー部23には、
図1に示すように、ウェイト支持部材31を介してバランスウェイト32が取り付けられる。ウェイト支持部材31は、例えばボルト(図示せず)によってフロントバンパー部23に固定される。
【0022】
図2~
図5に示すように、トラクタ1は、左右一対のサイドフレーム部24を備える。各サイドフレーム部24は、サポートフレーム部22およびフロントバンパー部23と分割された(分けられた)別部品である。各サイドフレーム部24は、サポートフレーム部22およびフロントバンパー部23に対して、左右方向の両側に位置する。各サイドフレーム部24は、フロントバンパー部23の左側または右側の位置から後方に延び、斜め下方に一旦屈曲してさらに後方に延びる形状を有する。なお、各サイドフレーム部24の上記形状は一例であり、各サイドフレーム部24は上記形状に限定されるわけではない。
【0023】
左右のサイドフレーム部24はそれぞれ、サポートフレーム部22およびフロントバンパー部23と連結される。これについて、より詳しく説明すると、以下の通りである。
【0024】
左右のサイドフレーム部24には、複数の貫通孔24aが設けられている。各貫通孔24aは、サイドフレーム部24において上下方向および前後方向に並んで設けられている。
【0025】
左右のサイドフレーム部24の所定の貫通孔24aにボルトB1を挿通し、ボルトB1を回転させてフロントバンパー部23に固定する。これにより、左右のサイドフレーム部24はそれぞれ、フロントバンパー部23と連結される。
【0026】
なお、本実施形態では、フロントバンパー部23の所定位置に、ボルトB1の挿通孔が形成されているとともに、上記挿通孔の内周面にボルトB1のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。したがって、ボルトB1を回転させながら上記挿通孔に挿入し、ボルトB1の頭部(ねじ山が形成された軸部と連結される大径部分)によってサイドフレーム部24をフロントバンパー部23に押し付けることにより、サイドフレーム部24とフロントバンパー部23とが連結される。他の方法として、上記挿通孔に挿通されたボルトB1と噛み合うナットを別途用意し、上記ナットとボルトB1とを噛み合わせることにより、サイドフレーム部24とフロントバンパー部23とを連結してもよい。
【0027】
また、左右のサイドフレーム部24の所定の貫通孔24aにボルトB2を挿通し、サポートフレーム部22に固定する。これにより、左右のサイドフレーム部24はそれぞれ、サポートフレーム部22と連結される。
【0028】
なお、本実施形態では、サポートフレーム部22の所定位置に凹部22P1(
図6参照)が形成されているとともに、凹部22P1の内周面にボルトB2のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。したがって、ボルトB2を回転させながら凹部22P1に挿入し、ボルトB2の頭部(ねじ山が形成された軸部と連結される大径部分)によってサイドフレーム部24をサポートフレーム部22に押し付けることにより、サイドフレーム部24とサポートフレーム部22とが連結される。
【0029】
本実施形態のように、各サイドフレーム部24がサポートフレーム部22およびフロントバンパー部23と連結されることにより、例えばフロントバンパー部23を複数種類用意しておき、その中から、使用者が用途や要望に応じたフロントバンパー部23を選択して左右のサイドフレーム部24に連結して使用することができる。例えば、エンジン6の動力から取り出されるフロントPTO出力を利用する部品を使用したい場合でも、上記部品を装着可能なフロントバンパー部23を選択し、左右のサイドフレーム部24に連結して使用することができる。これにより、フロントバンパー部23の交換だけで、同じトラクタ1を引き続き使用することができる。なお、フロントローダまたはフロントドーザ等の作業機を使用したい場合も上記と同様に、フロントバンパー部23の交換だけで、同じトラクタ1を使用することができる。したがって、トラクタ1を生産するメーカー側としては、多様な仕様のトラクタ1を大量に生産しなくて済む。つまり、少量生産で多様な仕様のトラクタ1を実現し得る多品種少量生産体制に容易に対応することができる。
【0030】
ここで、例えばフロントバンパー部23とサポートフレーム部22とがボルト等によって連結されていると、フロントバンパー部23の交換の際に、フロントバンパー部23とサイドフレーム部24との連結(ボルト締結)を解除するだけでなく、フロントバンパー部23とサポートフレーム部22との連結(ボルト締結)を解除することが必要となる。また、例えばフロントバンパー部23とサポートフレーム部22とが一体的に構成されていると、フロントバンパー部23の交換の際に、サポートフレーム部22とサイドフレーム部24との連結(ボルト締結)も解除することが必要となる。サイドフレーム部24に対するフロントバンパー部23の交換作業(取り付け作業および取り外し作業)を容易に行う観点では、フロントバンパー部23は、サポートフレーム部22とボルト締結されておらず、かつ、別体であることが望ましい。つまり、フロントバンパー部23は、サポートフレーム部22と離れて位置することが望ましい。
【0031】
また、左右のサイドフレーム部24に対するフロントバンパー部23の着脱を容易にする観点では、フロントバンパー部23と左右のサイドフレーム部24とは、ボルト締結による連結であることが望ましい。つまり、トラクタ1は、サイドフレーム部24に挿通されてフロントバンパー部23に固定されるボルトB1を第1締結部材として備えることが望ましい。
【0032】
また、例えば、フロントバンパー部23とサイドフレーム部24とを溶接すると、溶接時の熱によってサイドフレーム部24に溶接歪みが発生する。本実施形態では、後述するように、サイドフレーム部24がエンジン6と連結される。この構成では、サイドフレーム部24に歪みが生じると、エンジン6のシリンダブロック、オイルパン等に、大きな荷重またはねじれ力が加わり、シリンダブロック等に亀裂や破損が生じるおそれがある。このような溶接歪みに起因する不都合を回避する観点でも、ボルトB1によってサイドフレーム部24とフロントバンパー部23とを連結することが望ましい。
【0033】
また、サポートフレーム部22に対するサイドフレーム部24の着脱を容易にする観点では、サポートフレーム部22と左右のサイドフレーム部24とは、ボルト締結による連結であることが望ましい。つまり、トラクタ1は、サイドフレーム部24に挿通されてサポートフレーム部22に固定されるボルトB2を第2締結部材として備えることが望ましい。
【0034】
図2~
図4に示すように、サポートフレーム部22よりも後方には、エンジン6が位置する。左右のサイドフレーム部24はそれぞれ、エンジン6に対して、左右方向の両側に位置してエンジン6と連結される。より詳しくは、左右のサイドフレーム部24の所定の貫通孔24aにボルトB3を挿通し、エンジン6(例えばシリンダブロック)の側面部に固定する。これにより、左右のサイドフレーム部24はそれぞれ、エンジン6と連結される。
【0035】
なお、本実施形態では、エンジン6の側面部の所定位置に、凹部が形成されているとともに、上記凹部の内周面にボルトB3のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。したがって、ボルトB3を回転させながら上記凹部に挿入し、ボルトB3の頭部(ねじ山が形成された軸部と連結される大径部分)によってサイドフレーム部24をエンジン6の側面部に押し付けることにより、サイドフレーム部24とエンジン6とが連結される。
【0036】
エンジン6に対する左右のサイドフレーム部24の着脱を容易にする観点では、左右のサイドフレーム部24とエンジン6とは、ボルト締結による連結であることが望ましい。つまり、トラクタ1は、サイドフレーム部24に挿通されてエンジン6に固定されるボルトB3を第3締結部材として備えることが望ましい。
【0037】
図2~
図5に示すように、本実施形態では、トラクタ1は、補強フレーム部25をさらに備える。補強フレーム部25は、左右のサイドフレーム部24のそれぞれに対して、エンジン6とは反対側に位置する。補強フレーム部25の前後方向の長さは、サイドフレーム部24の前後方向の長さよりも短い。補強フレーム部25は、サイドフレーム部24の外側面24Sに溶接によって固定されている。補強フレーム部25によってサイドフレーム部24が補強されるため、サイドフレーム部24の耐久性が向上する。すなわち、サイドフレーム部24に何らかの力が加わった場合でも、サイドフレーム部24の破損のおそれが低減される。
【0038】
補強フレーム部25には、サイドフレーム部24の貫通孔24aと対応する位置に、挿通孔(図示せず)が形成されている。補強フレーム部25の上記挿通孔およびサイドフレーム部24の貫通孔24aにボルトB4を挿通し、エンジン6(例えばシリンダブロック)の側面部に固定する。これにより、左右のサイドフレーム部24は、補強フレーム部25によって補強された状態で、エンジン6と連結される。
【0039】
サイドフレーム部24とエンジン6との連結を補強する観点では、上記のように補強フレーム部25は、サイドフレーム部24を介してエンジン6と連結されることが望ましい。
【0040】
なお、本実施形態では、エンジン6の側面部の所定位置に、凹部が形成されているとともに、上記凹部の内周面にボルトB4のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。したがって、ボルトB4を回転させながら上記凹部に挿入し、ボルトB4の頭部(ねじ山が形成された軸部と連結される大径部分)によって補強フレーム部25およびサイドフレーム部24をエンジン6の側面部に押し付ける。これにより、補強フレーム部25がサイドフレーム部24を介してエンジン6と連結される。
【0041】
エンジン6に対する左右のサイドフレーム部24の着脱を容易にする観点では、補強フレーム部25およびサイドフレーム部24と、エンジン6とは、ボルト締結による連結であることが望ましい。つまり、トラクタ1は、補強フレーム部25およびサイドフレーム部24に挿通されてエンジン6に固定されるボルトB4を第4締結部材として備えることが望ましい。
【0042】
また、サイドフレーム部24と前述のサポートフレーム部22との連結を補強する観点では、補強フレーム部25は、サイドフレーム部24を介してサポートフレーム部22と連結されることが望ましい。本実施形態では、補強フレーム部25の前方側がサイドフレーム部24を介してサポートフレーム部22と連結され、後方側がサイドフレーム部24を介してエンジン6と連結される。
【0043】
なお、本実施形態では、サポートフレーム部22の所定位置に凹部22P2(
図6参照)が形成されているとともに、凹部22P2の内周面にボルトB5のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。したがって、ボルトB5を回転させながら凹部22P2に挿入し、ボルトB5の頭部(ねじ山が形成された軸部と連結される大径部分)によって補強フレーム部25およびサイドフレーム部24をサポートフレーム部22に押し付ける。これにより、補強フレーム部25がサイドフレーム部24を介してサポートフレーム部22と連結される。
【0044】
サポートフレーム部22に対する左右のサイドフレーム部24の着脱を容易にする観点では、補強フレーム部25およびサイドフレーム部24と、サポートフレーム部22とは、ボルト締結による連結であることが望ましい。つまり、トラクタ1は、補強フレーム部25およびサイドフレーム部24に挿通されてサポートフレーム部22に固定されるボルトB5を第5締結部材として備えることが望ましい。
【0045】
図2~
図5に示すように、本実施形態のトラクタ1は、スイングストッパー部26をさらに備える。スイングストッパー部26は、フロントアクスルケース21の前後方向の軸周りのスイングを規制する部材である。
図5に示すように、スイングストッパー部26は、左右方向から見てほぼ五角形状であり、その下端部26aは、フロントアクスルケース21のケース本体21aの上方に位置する。トラクタ1の走行時にフロントアクスルケース21が上記軸周りにスイングし、そのスイング角度(上記軸周りの回転角度)が所定角度を超えようとすると、ケース本体21aの上部がスイングストッパー部26の下端部26aに当たり、それ以上のスイングが規制される。これにより、フロントアクスルケース21がスイングしてもサイドフレーム部24に当たらなくなる。したがって、フロントアクスルケース21のスイングによるサイドフレーム部24の損傷が回避される。
【0046】
スイングストッパー部26の交換を容易にする等、スイングストッパー部26のメンテナンス性を向上させる点では、スイングストッパー部26はサイドフレーム部24に取り付けられることが望ましい。すなわち、スイングストッパー部26は、左右のサイドフレーム部24のそれぞれに連結されることが望ましい。
【0047】
このとき、例えば、スイングストッパー部26が左右のサイドフレーム部24の下端部に連結されると、その直下にフロントアクスルケース21が位置するため、スイングストッパー部26の交換作業が困難となるおそれがある。スイングストッパー部26の交換作業を確実に容易にする観点では、スイングストッパー部26は、左右のサイドフレーム部24の外側面24Sにそれぞれ連結されることが望ましい。
【0048】
本実施形態では、サポートフレーム部22の所定位置に凹部22P3(
図6参照)が形成されているとともに、凹部22P3の内周面にボルトB6のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。また、スイングストッパー部26には、ボルトB6が挿通される挿通孔(図示せず)が形成されている。したがって、スイングストッパー部26の上記挿通孔およびサイドフレーム部24の所定の貫通孔24aにボルトB6を挿通し、ボルトB6を回転させながら凹部22P3に挿入し、ボルトB5の頭部(ねじ山が形成された軸部と連結される大径部分)によってスイングストッパー部26およびサイドフレーム部24をサポートフレーム部22に押し付ける。これにより、スイングストッパー部26がサイドフレーム部24に連結されると同時に、サイドフレーム部24がサポートフレーム部22に固定される。
【0049】
サイドフレーム部24に対するスイングストッパー部26の着脱を容易にする観点では、上記のようにスイングストッパー部26は、サイドフレーム部24およびサポートフレーム部22に対してボルト締結されることが望ましい。つまり、トラクタ1は、スイングストッパー部26およびサイドフレーム部24に挿通され、サポートフレーム部22に固定されるボルトB6を第6締結部材として備えることが望ましい。
【0050】
図5に示すように、スイングストッパー部26は、第1作業機フレーム固定部26Pを有する。第1作業機フレーム固定部26Pは、スイングストッパー部26の平板部26Qに対して、サイドフレーム部24との接触側とは反対側に突出して位置する。第1作業機フレーム固定部26Pには、ボルトB7(
図7参照)が挿通される挿通孔26P1が上下に2つ並んで形成されている。挿通孔26P1の内周面には、ボルトB7のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。なお、挿通孔26P1は、第1作業機フレーム固定部26Pに少なくとも1つ形成されていればよい。
【0051】
また、上記した補強フレーム部25は、第2作業機フレーム固定部25Pを有する。第2作業機フレーム固定部25Pは、補強フレーム部25の外側面25Sに溶接等によって固着される。第2作業機フレーム固定部25Pには、ボルトB8(
図7参照)が挿通される挿通孔25P1が複数形成されている。挿通孔25P1の内周面には、ボルトB8のねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。なお、挿通孔25P1は、第2作業機フレーム固定部25Pに少なくとも1つ形成されていればよい。また、
図5では、第2作業機フレーム固定部25Pは、補強フレーム部25に2つ設けられているが、少なくとも1つ設けられればよい。
【0052】
図7は、作業機フレームFを、第1作業機フレーム固定部26Pおよび第2作業機フレーム固定部25Pに取り付けた状態を示す側面図である。作業機フレームFを有する作業機としては、例えばフロントローダ、フロントドーザなどを想定することができる。作業機フレームFの所定の位置に設けられた貫通孔、および第1作業機フレーム固定部26Pの挿通孔26P1にボルトB7を挿入し、回転させる。また、作業機フレームFの所定の位置に設けられた貫通孔、および第2作業機フレーム固定部25Pの挿通孔25P1にボルトB8を挿入し、回転させる。これにより、作業機フレームFが、スイングストッパー部26および補強フレーム部25に固定される。したがって、作業機フレームFは、スイングストッパー部26および補強フレーム部25を介してサイドフレーム部24に固定される。
【0053】
スイングストッパー部26および補強フレーム部25を、作業機フレームFの固定用の土台として有効利用する観点では、本実施形態のように、スイングストッパー部26が第1作業機フレーム固定部26Pを有し、補強フレーム部25が第2作業機フレーム固定部25Pを有することが望ましい。
【0054】
〔3.補足〕
サポートフレーム部22とサイドフレーム部24とをそれぞれ複数種類用意し、所望のサポートフレーム部22およびサイドフレーム部24を適宜選択し、これらをボルト締結によって連結してもよい。この場合、フロントアクスルケース21の種類、ホイルベースの長さ、エンジン6の種類など、トラクタ1の仕様分けに容易に対応することができる。
【0055】
サポートフレーム部22とサイドフレーム部24との間にアクスル間座を配置し、アクスル間座を介してサポートフレーム部22とサイドフレーム部24とをボルト締結する構成であってもよい。
【0056】
エンジン6とサイドフレーム部24との間にフレーム間座を配置し、フレーム間座を介してエンジン6とサイドフレーム部24とをボルト締結する構成であってもよい。また、フレーム間座をエンジン6に直接ボルトで締結し、サイドフレーム部24をフレーム間座にボルトで締結してもよい。この場合、サイドフレーム部24を締結するボルトのピッチを比較的に長くとれるため、ボルトの締結力も増す(ボルトが緩みにくくなる)。
【0057】
エンジン6とミッションケース13(
図1参照)とを、上記のフレーム間座で繋いでもよい。エンジン6とミッションケース13との締結部は、断面形状が大きく変化して応力が集中しやすい。フレーム間座により、応力が集中しやすい部分を補強することができ、これによって、トラクタ1の骨格全体の剛性も向上する。
【0058】
〔4.付記〕
本実施形態で説明したトラクタ1は、以下の作業車両として表現することができる。
【0059】
(1)フロントアクスルケースと、
前記フロントアクスルケースが固定されるサポートフレーム部と、
前記サポートフレーム部よりも前方に位置するフロントバンパー部と、
前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部と分割され、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部に対して、左右方向の両側に位置する左右一対のサイドフレーム部と、を備え、
左右の前記サイドフレーム部はそれぞれ、前記サポートフレーム部および前記フロントバンパー部と連結される、作業車両。
【0060】
(2)前記フロントバンパー部は、前記サポートフレーム部と離れて位置する、(1)に記載の作業車両。
【0061】
(3)前記サイドフレーム部に挿通され、前記フロントバンパー部に固定される第1締結部材をさらに備える、(1)または(2)に記載の作業車両。
【0062】
(4)前記サイドフレーム部に挿通され、前記サポートフレーム部に固定される第2締結部材をさらに備える、(1)から(3)のいずれかに記載の作業車両。
【0063】
(5)前記サポートフレーム部よりも後方に位置するエンジンをさらに備え、
左右の前記サイドフレーム部はそれぞれ、前記エンジンに対して、左右方向の両側に位置して前記エンジンと連結される、(1)から(4)のいずれかに記載の作業車両。
【0064】
(6)前記サイドフレーム部に挿通され、前記エンジンに固定される第3締結部材をさらに備える、(5)に記載の作業車両。
【0065】
(7)左右の前記サイドフレーム部のそれぞれに対して、前記エンジンとは反対側に位置する補強フレーム部をさらに備え、
前記補強フレーム部は、前記サイドフレーム部を介して前記エンジンと連結される、(5)または(6)に記載の作業車両。
【0066】
(8)前記補強フレーム部および前記サイドフレーム部に挿通され、前記エンジンに固定される第4締結部材をさらに備える、(7)に記載の作業車両。
【0067】
(9)前記補強フレーム部は、前記サイドフレーム部を介して前記サポートフレーム部と連結される、(7)または(8)に記載の作業車両。
【0068】
(10)前記補強フレーム部および前記サイドフレーム部に挿通され、前記サポートフレーム部に固定される第5締結部材をさらに備える、(9)に記載の作業車両。
【0069】
(11)前記フロントアクスルケースのスイングを規制するスイングストッパー部をさらに備え、
前記スイングストッパー部は、左右の前記サイドフレーム部のそれぞれに連結される、(7)から(10)のいずれかに記載の作業車両。
【0070】
(12)前記スイングストッパー部は、左右の前記サイドフレーム部の外側面にそれぞれ連結される、(11)に記載の作業車両。
【0071】
(13)前記スイングストッパー部および前記サイドフレーム部に挿通され、前記サポートフレーム部に固定される第6締結部材をさらに備える、(12)に記載の作業車両。
【0072】
(14)前記スイングストッパー部は、第1作業機フレーム固定部を有する、(12)または(13)に記載の作業車両。
【0073】
(15)前記補強フレーム部は、第2作業機フレーム固定部を有する、(14)に記載の作業車両。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えばトラクタなどの作業車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 トラクタ(作業車両)
6 エンジン
21 フロントアクスルケース
22 サポートフレーム部
23 フロントバンパー部
24 サイドフレーム部
24S1 外側面
25 補強フレーム部
25P 第2作業機フレーム固定部
26 スイングストッパー部
26P 第1作業機フレーム固定部
B1 ボルト(第1締結部材)
B2 ボルト(第2締結部材)
B3 ボルト(第3締結部材)
B4 ボルト(第4締結部材)
B5 ボルト(第5締結部材)
B6 ボルト(第6締結部材)