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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161836
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20231031BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H05B6/12 308
H05B6/12 324
A47J27/00 103A
A47J27/00 103L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072432
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】福島 光起
(72)【発明者】
【氏名】倉 拓海
【テーマコード(参考)】
3K151
4B055
【Fターム(参考)】
3K151AA33
3K151BA14
3K151BA15
3K151CA48
4B055AA02
4B055BA26
4B055DA01
4B055DB14
4B055GC12
(57)【要約】
【課題】コイルによる誘導加熱によって鍋内に生じる対流による調理物の撹拌効率を向上できる調理器を提供する。
【解決手段】調理器1は、炊飯鍋10と、炊飯鍋10の軸線A側に配置された内側コイル51と、軸線Aに対して内側コイル51よりも離れて配置された外側コイル55とを備える。内側コイル51による加熱量が外側コイル55による加熱量以上になるように、内側コイル51と外側コイル55それぞれのインダクタンスが設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の鍋と、
前記鍋の外面側に間隔をあけて位置し、前記鍋の軸線側に配置された内側コイルと、
前記鍋の外面側に間隔をあけて位置し、前記軸線に対して前記内側コイルよりも離れて配置された外側コイルと
を備え、
前記内側コイルによる加熱量が前記外側コイルによる加熱量以上になるように、前記内側コイルと前記外側コイルそれぞれのインダクタンスが設定されている、調理器。
【請求項2】
前記内側コイルのインダクタンスは前記外側コイルのインダクタンスよりも大きく、これらのインダクタンスの差は0.15μH以上である、請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記内側コイルのターン数は、前記外側コイルのターン数よりも多い、請求項1又は2に記載の調理器。
【請求項4】
前記軸線が延びる方向から見た前記鍋の形状は円形であり、
前記内側コイルは、前記鍋の径方向に延びる長軸と、前記鍋の周方向に延びる短軸とを有する非円形状であり、
前記外側コイルは、前記鍋の周方向に延びる長軸と、前記鍋の径方向に延びる短軸とを有する非円形状であり、
前記内側コイルと前記外側コイルは、前記軸線を挟んで前記鍋の対向位置に配置され、前記軸線まわりに並べて複数設けられている、
請求項1又は2に記載の調理器。
【請求項5】
前記鍋の径方向における前記外側コイルの内端は、前記鍋の径方向における前記内側コイルの内端と前記内側コイルの外端との間に位置し、
前記鍋の径方向における前記外側コイルの外端は、前記鍋の径方向における前記内側コイルの外端よりも外側に位置している、
請求項4に記載の調理器。
【請求項6】
前記鍋の対向位置にある前記内側コイルと前記外側コイルを一組のコイル群とし、複数組の前記コイル群を個別に制御する制御部を備える、請求項4に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体内に収容した鍋を複数のコイルによって誘導加熱する電気炊飯器(調理器)が開示されている。特許文献2には、平坦な加熱面上に配置した鍋を複数のコイルによって誘導加熱する誘導加熱調理器が開示されている。また、特許文献2には、周方向に間隔をあけて配置した複数のコイルのうち2個を一組のコイル群とし、複数組のコイル群を個別に制御する調理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-242912号公報
【特許文献2】特開2013-149470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2では、複数のコイルを周方向に並べて配置しているだけであり、鍋の軸線からの複数のコイルの径方向距離は全て同じである。そのため、複数のコイルを個別に制御したり、2個のコイルを一組のコイル群として制御しても、鍋内に生じる対流の向きが違うだけで、対流の性質は同じである。この場合、引用文献2のように対向する2個のコイルを一組のコイル群として制御すると、2個のコイルによる2つの対流が互いに打ち消し合い、かえって調理物の撹拌効率を低下させることがある。よって、引用文献1,2の調理器には、鍋内に生じる対流による調理物の撹拌効率について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、コイルによる誘導加熱によって鍋内に生じる対流による調理物の撹拌効率を向上できる調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、有底筒状の鍋と、前記鍋の外面側に間隔をあけて位置し、前記鍋の軸線側に配置された内側コイルと、前記鍋の外面側に間隔をあけて位置し、前記軸線に対して前記内側コイルよりも離れて配置された外側コイルとを備え、前記内側コイルによる加熱量が前記外側コイルによる加熱量以上になるように、前記内側コイルと前記外側コイルそれぞれのインダクタンスが設定されている、調理器を提供する。
【0007】
配置が異なる内側コイルと外側コイルを有するため、内側コイルによって鍋の軸線側を誘導加熱でき、外側コイルによって鍋の外周側を誘導加熱できる。内側コイルによる誘導加熱によって生じる対流は、鍋の軸線に沿う方向の直流になり、外側コイルによる誘導加熱によって生じる対流は、鍋の周壁に沿って上昇した後に鍋の径方向内側に向かう旋回流になり得る。
【0008】
内側コイルによる加熱量が外側コイルによる加熱量以上であるため、内側コイルによる単位面積当たりの水の上昇温度は、外側コイルによる単位面積当たりの水の上昇温度以上である。また、内側コイルによる鍋の軸線に沿う方向の対流には流動抵抗がなく、外側コイルによる旋回する対流には流動抵抗がある。そのため、内側コイルによる対流の流動水圧は、外側コイルによる対流の流動水圧よりも高くなり得る。このように、内側コイルと外側コイルによる誘導加熱によって生じる性質が異なる2種の対流は、互いに打ち消し合うことなく衝突後には分流するため、鍋の中心部分での調理物の滞留を低減でき、撹拌効率を向上できる。
【0009】
前記内側コイルのインダクタンスは前記外側コイルのインダクタンスよりも大きく、これらのインダクタンスの差は0.15μH以上である。これにより、内側コイルと外側コイルのインダクタンスに製造誤差(バラツキ)が生じても、内側コイルの加熱量を外側コイルの加熱量以上に設定できる。
【0010】
前記内側コイルのターン数は、前記外側コイルのターン数よりも多い。これにより、内側コイルと外側コイルのインダクタンスに製造誤差(バラツキ)が生じても、内側コイルの加熱量を外側コイルの加熱量以上に設定できる。
【0011】
前記軸線が延びる方向から見た前記鍋の形状は円形であり、前記内側コイルは、前記鍋の径方向に延びる長軸と、前記鍋の周方向に延びる短軸とを有する非円形状であり、前記外側コイルは、前記鍋の周方向に延びる長軸と、前記鍋の径方向に延びる短軸とを有する非円形状であり、前記内側コイルと前記外側コイルは、前記軸線を挟んで前記鍋の対向位置に配置され、前記軸線まわりに並べて複数設けられている。これにより、鍋の外面側に内側コイルと外側コイルを敷き詰めて配置できるため、鍋に非加熱領域が生じることを抑制できる。
【0012】
前記鍋の径方向における前記外側コイルの内端は、前記鍋の径方向における前記内側コイルの内端と前記内側コイルの外端との間に位置し、前記鍋の径方向における前記外側コイルの外端は、前記鍋の径方向における前記内側コイルの外端よりも外側に位置している。これにより、鍋に非加熱領域が生じることを確実に抑制できる。また、鍋の中心側を内側コイルによって確実に加熱でき、鍋の外周側を外側コイルによって確実に加熱できるため、鍋内に向きが異なる対流を確実に生じさせることができる。
【0013】
前記鍋の対向位置にある前記内側コイルと前記外側コイルを一組のコイル群とし、複数組の前記コイル群を個別に制御する制御部を備える。これにより、2種の対流によって調理物を効率的に撹拌しながら調理できる。しかも、内側コイルの加熱量が外側コイルの加熱量以上であるため、内側コイルによる鍋の軸線に沿う方向の対流が、外側コイルによる鍋の径方向に沿う方向の対流よりも強くなり得る。その結果、鍋の中心部分での調理物の滞留を低減でき、確実に撹拌効率を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調理器では、コイルによる誘導加熱によって鍋内に生じる対流による調理物の撹拌効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る調理器の1つである炊飯器の概略断面図。
図2】鍋に対するコイルの配置と制御部の構成を示すブロック図。
図3A】鍋に対するコイルの配置を示す右側面図。
図3B】鍋に対するコイルの配置を示す左側面図。
図4図2の内側コイルを内側コイルの軸線が延びる方向から見た図。
図5図2の外側コイルを外側コイルの軸線が延びる方向から見た図。
図6A】1組の内側コイルと外側コイルに通電したときの対流を示す模式的な断面図。
図6B図6Aの対流を上方から見た模式図。
図7A】全て同じコイルを周方向に配置した比較例の炊飯器の対流を示す模式的な断面図。
図7B図7Aの対流を上方から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る調理器の1つである炊飯器1は、炊飯鍋10と、炊飯鍋10を収容する炊飯器本体20と、炊飯器本体20に開閉可能に取り付けられた蓋体30とを備える。この炊飯器1は、炊飯鍋10の加熱部50として複数のコイル51,55を炊飯器本体20内に配置したマルチコイル式である。本実施形態では、形状が異なる2種のコイル51,55を炊飯鍋10の径方向の異なる位置に配置し、内側コイル51による加熱量を外側コイル55による加熱量以上に設定することで、炊飯鍋10内に生じる対流による飯米(調理物)の撹拌効率向上を図る。
【0018】
まず、炊飯器1の概要について説明する。
【0019】
図1を参照すると、炊飯鍋10は、底壁部11、筒状の周壁部12、及び底壁部11と周壁部12に連なる連続部13を有する有底筒状であり、炊飯鍋10の軸線Aが延びる方向から見て円形状である。この炊飯鍋10は磁性材料からなり、プレス加工又は鋳造によって成形されている。但し、炊飯鍋10は、炊飯が阻害されない範囲であれば半球状であってもよく、幾何学的に厳密な意味での有底筒状でなくてもよい。
【0020】
図1及び図2を参照すると、底壁部11は、中央部11aと、中央部11aの外側に連なる外周部11bとを有する。
【0021】
中央部11aは、軸線Aが延びる方向から見て円形状であり、中心が軸線A上に位置し、軸線Aに対して直交方向かつ平坦に延びている。中央部11aは、幾何学的に厳密な意味で平坦に延びる構成に限られず、誘導加熱によって生じる対流が軸線Aに沿って流動する範囲であれば、湾曲していてもよい。
【0022】
外周部11bは、軸線Aが延びる方向から見て円環状であり、径方向の内側から外側に向けて上側へ傾斜している。外周部11bは、本実施形態では下向きに若干膨出した曲面形状であるが、下端から上端まで直線状に延びる逆円錐形状であってもよい。中央部11aに対する外周部11bの傾斜角度は5度以上30度以下である。湾曲した外周部11bの傾斜角度とは、外周部11bの下端と上端を結ぶ仮想線(図示せず)が、中央部11aに対して傾斜する角度として定義される。また、若干膨出した曲面形状とは、直線に近似した曲率であることを意味する。
【0023】
周壁部12は、底壁部11の外形に対応する形の筒状であり、下側部12aと、下側部12aの上端に連なる上側部12bとを有する。底壁部11の中央部11aに対する下側部12aの傾斜角度は60度以上90度未満である。
【0024】
下側部12aは、下端から上端まで直径が漸増し、拡開した筒状である。下側部12aは、本実施形態では径方向外向きに若干膨出した曲面形状であるが、下端から上端まで直線状に延びる逆円錐筒状であってもよい。湾曲した下側部12aの傾斜角度とは、下側部12aの下端と上端を結ぶ仮想線(図示せず)が、中央部11aに対して傾斜する角度として定義される。
【0025】
上側部12bは、直径が一様な円筒状であり、上端に径方向外向きに突出したフランジ部12cを備える。但し、上側部12bは、下側から上側に向けて直径が漸増した逆円錐筒状であってもよいし、径方向外向きに若干膨出した曲面形状であってもよい。
【0026】
連続部13は、下側から上側に直径が漸増した筒状であり、内周部が底壁部11の外周部11bに連なり、外周部が周壁部12の下側部12aに連なっている。連続部13の断面形状は、下向きかつ径方向外向きに膨出した円弧状である。
【0027】
引き続いて図1を参照すると、炊飯器本体20は、図1において右側に位置する背部にヒンジ接続軸22を有する外装体21を備える。外装体21の上面には円形状の開口が形成され、この開口の下側に炊飯鍋10を着脱可能に収容する収容部23が形成されている。収容部23は、炊飯鍋10の平面視形状と対応する円筒状で金属製の内胴24と、内胴24の下端を塞ぐ受皿状で樹脂(非導電性材料)製の保護枠25とを備える有底筒状である。この収容部23内に炊飯鍋10を配置することで、保護枠25の軸線と炊飯鍋10の軸線Aとが一致する。
【0028】
保護枠25の内面形状と外面形状は、炊飯鍋10の形状に対応している。具体的には、保護枠25は、炊飯鍋10の底壁部11に沿う形状の底部25a、炊飯鍋10の下側部12aに沿う形状の外周部25b、及び炊飯鍋10の連続部13に沿う形状の連続部25cを備える。
【0029】
引き続いて図1を参照すると、外装体21の内部には、炊飯鍋10を誘導加熱するための加熱部50が設けられている。加熱部50は、2種かつそれぞれ複数のコイル51,55からなる。コイル51,55は、炊飯鍋10の外面側に間隔をあけて位置するように、保護枠25の外装体21側の外側面に取り付けられている。具体的には、コイル51,55の外側にはフェライトコアを保持したホルダ(図示せず)が配置され、このホルダと保護枠25の間にコイル51,55が保持されている。なお、コイル51,55の具体的構成については後に詳述する。
【0030】
蓋体30は、外装体21のヒンジ接続軸22に回転可能に取り付けられている。蓋体30は、炊飯鍋10を臨む内面側(図1において下側)に放熱板31を備える。放熱板31の下面には、炊飯鍋10の上端開口を閉塞する内蓋32が取り付けられている。放熱板31の上面には、放熱板31を介して内蓋32を加熱し、内蓋32に付着した露を蒸発させる蓋ヒータ33が配設されている。また、蓋体30には、炊飯鍋10内の蒸気を外部に排出するための排気通路34が形成されている。
【0031】
図1において左側に位置する炊飯器本体20の正面側には、ホルダ40を介して制御基板41が配置されている。図2を参照すると、制御基板41には、電気部品を制御する制御部42、及び加熱部50に電力を供給するためのインバータ回路43と切換部44が設けられている。但し、制御部42、インバータ回路43、及び切換部44は、2つ又は3つの制御基板に分けて設けられてもよし、炊飯器本体20と保護枠25の間の空間内に対する配置も必要に応じて変更が可能である。
【0032】
制御部42は、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されている。制御部42は、記憶部(メモリ)42aと計時部(タイマ)42bを備える。記憶部42aには、炊飯処理と保温処理を実行するためのプログラム、及びプログラムに用いられる設定値(温度や時間)等が記憶されている。計時部42bは、炊飯処理及び保温処理での時間を計測する。
【0033】
炊飯処理では、制御部42は、2つの温度センサ45A,45B(図1参照)の検出結果に基づいて、予熱工程、中ぱっぱ工程(昇温工程)、沸騰維持工程、炊き上げ工程及びむらし工程をこの順で実行し、炊飯鍋10内の飯米を炊き上げる。保温処理では、制御部42は、2つの温度センサ45A,45Bの検出結果に基づいて、炊き上げた米飯(炊飯鍋10)を定められた温度に温調する。温度センサ45Aは、炊飯鍋10の温度を検出する鍋センサであり、本実施形態では周壁部12の下側部12aの温度を検出するサイドセンサである。温度センサ45Bは、放熱板31と内蓋32を介して炊飯鍋10内の温度を検出する蓋センサである。
【0034】
インバータ回路43は、コイル51,55の数に応じて設けられた複数のパワートランジスタ(例えばIGBT)を備える。インバータ回路43によるコイル51,55への電力投入は、電気的に接続された制御部42により制御(デューティ制御)される。
【0035】
切換部44は、制御部42とインバータ回路43に電気的に接続されている。切換部44は、例えばコイル51,55の数に応じて設けられた複数のスイッチ(例えばリレー)によって構成されている。切換部44は、制御部42の指令に従って、複数のコイル51,55のうち、定められた1以上のコイルに高周波電流を通電し、残りのコイルへの通電が遮断されるように、インバータ回路43と複数のコイル51,55との接続状態を切り換える。
【0036】
次に、加熱部50を構成するコイル51,55について具体的に説明する。
【0037】
図2を参照すると、加熱部50は、形状が異なるそれぞれ複数の内側コイル51と外側コイル55を備え、制御部42によってインバータ回路43から高周波電流が通電されることで、渦電流を発生させて炊飯鍋10を誘導加熱する。個々の内側コイル51と個々の外側コイル55とは、軸線Aを挟んで炊飯鍋10の対向位置に配置され、軸線Aまわりに並べて敷設されている。本実施形態では、内側コイル51と外側コイル55がいずれも3個ずつ用いられている。
【0038】
周方向に隣り合う内側コイル51は互いに間隔をあけて配置され、周方向に隣り合う外側コイル55は互いに間隔をあけて配置されている。また、径方向に隣り合う内側コイル51と外側コイル55は、互いに間隔をあけて配置されている。これらの間隔は、隣り合うコイル51,55による炊飯鍋10の加熱領域の一部が重なり合う距離である。
【0039】
図2図3A、及び図3Bを参照すると、内側コイル51は、炊飯鍋10のうち底壁部11の中央部11aから連続部13に跨がって位置するように、炊飯鍋10の軸線A側に配置され、炊飯鍋10のうち周壁部12以外の領域を誘導加熱する。内側コイル51は、図1に示す保護枠25の底部25aから連続部25cまでの形状に沿った曲面状である。
【0040】
外側コイル55は、炊飯鍋10のうち底壁部11の外周部11bから周壁部12の下側部12aに跨がって位置するように、軸線Aに対して内側コイル51よりも径方向外側に離れて配置され、炊飯鍋10のうち底壁部11の中央部11a以外の領域を誘導加熱する。外側コイル55は、図1に示す保護枠25の底部25aから外周部25bまでの形状に沿った曲面状である。
【0041】
これらのコイル51,55は、いずれも複数の巻線を巻回し、ワニスによって定められた形状に固められている。コイル51,55の形状は、巻線を巻回する治具の形状に依存している。巻線のターン数及びコイル51,55の形状等よって、コイル51,52のインダクタンスは変わる。本実施形態では、内側コイル51と外側コイル55に同一デューティ比で同時に通電すると、内側コイル51による加熱量が外側コイル55による加熱量以上になるように、コイル51,52それぞれのインダクタンスが設定されている。
【0042】
例えば、5合炊きの炊飯器1の場合、内側コイル51のターン数は、15回以上17回以下に設定される。外側コイル55のターン数は、13回以上16回以下、かつ内側コイル51のターン数よりも少なく設定される。内側コイル51のターン数と外側コイル55のターン数の差は、3回以上であることが好ましい。これにより、後に詳述する形状の内側コイル51のインダクタンスは15.57μH以上16.87μH以下に設定され、後に詳述する形状の外側コイル55のインダクタンスは、13.87μH以上15.03μH以下に設定される。つまり、内側コイル51のインダクタンスと外側コイル55のインダクタンスとの差は、0.54μH以上に設定されている。これにより、コイル51,55のインダクタンスに不可避な製造誤差が生じても、一対の内側コイル51と外側コイル55に同一デューティ比で通電すると、内側コイル51には概ね635Wの電力が投入され、外側コイル55には概ね565Wの電力が投入される。
【0043】
炊飯鍋10と保護枠25の形状(大きさ)は、5合炊きの炊飯器1用よりも10合炊きの炊飯器1用の方が大きくなり、内側コイル51の形状と外側コイル55の形状も炊飯鍋10と保護枠25の形状に対応して、5合炊きの炊飯器1用よりも10合炊きの炊飯器1用の方が大きくなる。
【0044】
10合炊きの炊飯器1の場合、内側コイル51のターン数は、14回以上18回以下に設定される。外側コイル55のターン数は、12回以上16回以下、かつ内側コイル51のターン数よりも少なく設定される。内側コイル51のターン数と外側コイル55のターン数の差は、4回以上であることが好ましい。これにより、後に詳述する内側コイル51のインダクタンスは17.85μH以上18.95μH以下に設定され、後に詳述する外側コイル55のインダクタンスは16,65μH以上17.68μH以下に設定される。つまり、内側コイル51のインダクタンスと外側コイル55のインダクタンスとの差は、0.17μH以上に設定されている。これにより、コイル51,55のインダクタンスに不可避な製造誤差が生じても、一対の内側コイル51と外側コイル55に同一デューティ比で通電すると、内側コイル51には概ね678Wの電力が投入され、外側コイル55には概ね632Wの電力が投入される。
【0045】
以上のように、ターン数は、外側コイル55よりも内側コイル51の方が多く設定されている。また、ターン数と形状等によって定められるインダクタンスは、外側コイル55よりも内側コイル51の方が大きく設定されている。そして、内側コイル51のインダクタンスと外側コイル55のインダクタンスとの差は、少なくとも0.15μH以上に設定されている。これにより、一対の内側コイル51と外側コイル55に同一デューティ比で通電すると、外側コイル55よりも内側コイル51の方に大きな電力が投入され、内側コイル51による加熱量の方が大きくなるように設定されている。また、コイル51,55の製造誤差やフェライトコア等の他の要因によってインダクタンスに誤差が生じても、内側コイル51による加熱量が外側コイル55による加熱量以上になるように設定されている。
【0046】
以下、内側コイル51と外側コイル55の形状について、より具体的に説明する。
【0047】
図2及び図4を参照すると、内側コイル51は、長軸L1と短軸S1を有する非円形状であり、本実施形態では、短軸S1の位置が長軸L1の中央よりも炊飯鍋10の軸線A側に位置する概ね凧形状である。内側コイル51の長軸L1は炊飯鍋10の径方向に延びる姿勢で配置され、内側コイル51の短軸S1は炊飯鍋10の周方向に延びる姿勢で配置される。
【0048】
より具体的には、内側コイル51は、炊飯鍋10の軸線A側に配置される内側部52と、内側部52から炊飯鍋10の径方向外側に延在する外側部53とを備える。内側部52と外側部53は、所定曲率で湾曲した一対の連続部54を介して連なっている。
【0049】
内側部52は、所定曲率の円弧状であり、炊飯鍋10の中央部11aと対向する位置に配置され、全体として炊飯鍋10の周方向に延びている。外側部53は、一対の延在部53aと1つの湾曲部53bとで構成され、炊飯鍋10の外周部11bと連続部13と対向する位置に配置され、全体として炊飯鍋10の径方向に延びている。連続部54は、内側部52及び外側部53の湾曲部53bのいずれよりも曲率半径が小さい円弧状であり、一端が内側部52に連なり、他端が外側部53の延在部53aに連なっている。
【0050】
内側部52の内周部から外周部までの幅Wa1は概ね一様であり、内側部52の厚みも概ね一様である。連続部54の内周部から外周部までの幅Wa3は概ね一様であり、連続部54の厚みも概ね一様である。連続部54の幅Wa3は内側部52の幅Wa1よりも大きく、連続部54の厚みは内側部52の厚みよりも薄い。外側部53の内周部から外周部までの幅Wa2は、連続部54から内側コイル51の外端51bである外側部53の頂部に向けて漸減し、外端51bが位置する部分では内側部52の幅Wa1よりも小さくなっている。外側部53の厚みは連続部54から離れるに従って漸増している。
【0051】
図4に最も明瞭に示すように、内側コイル51の内端51aである内側部52の頂部と内側部52の両端をそれぞれ通る一対の基準線がなす角はαである。内側コイル51の外端51bである外側部53の頂部と外側部53の両端をそれぞれ通る一対の基準線がなす角はβである。内側部52側のなす角αは外側部53側のなす角βよりも大きい。
【0052】
3個の内側コイル51を配置する場合、内側部52のなす角αは、100度以上140度以下に設定することが好ましい。なす角αを過度に小さくした場合、隣り合う内側コイル51の間隔が広くなるため、炊飯鍋10の底壁部11に非加熱領域が生じ易くなる。なす角αを過度に大きくした場合、隣り合う内側コイル51が重ならないように配置すると、湾曲部52bが軸線Aから離れるため、炊飯鍋10の底壁部11の中央に非加熱領域が生じ易くなる。これらの不都合を防ぐために、内側部52のなす角αは上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0053】
それぞれ3個の内側コイル51と外側コイル55を配置する場合、外側部53のなす角βは、30度以上70度以下に設定することが好ましい。なす角βを過度に小さくした場合、炊飯鍋10の周方向に隣り合う内側コイル51と外側コイル55の間隔が広くなるため、炊飯鍋10の外周部11bに非加熱領域が生じ易くなる。なす角βを過度に大きくした場合、隣り合う内側コイル51と外側コイル55が重ならないように配置すると、長軸L1側の寸法を短くする必要があるため、炊飯鍋10の底壁部11に非加熱領域が生じ易くなる。これらの不都合を防ぐために、外側部53のなす角βは上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0054】
図2及び図5を参照すると、外側コイル55は、長軸L2と短軸S2を有する非円形状であり、本実施形態では、短軸S2が長軸L2の中央に位置する楕円形状である。外側コイル55の長軸L2は炊飯鍋10の周方向に延びる姿勢で配置され、外側コイル55の短軸S2は炊飯鍋10の径方向に延びる姿勢で配置される。
【0055】
より具体的には、外側コイル55は、曲率が小さい一対の大径部56と、曲率が大きい一対の小径部57とを備える。一対の大径部56は、短軸S2が延びる方向に対向している。一対の小径部57は、長軸L2が延びる方向に対向し、一対の大径部56それぞれに連なっている。長軸L2が延びる方向の外側コイル55の寸法は、短軸S1が延びる方向の内側コイル51の寸法よりも長い。
【0056】
炊飯鍋10の径方向において、外側コイル55の内端55aは、内側コイル51の内端51aと外端51bとの間に配置され、外側コイル55の外端55bは、内側コイル51の外端51bよりも外側に配置される。より具体的には、図2図3A、及び図3Bに示すように、一対の大径部56のうちの一方の一部が、内側コイル51に対して炊飯鍋10の径方向に重複するように配置される。また、一対の大径部56のうちの一方の残り、一対の大径部56のうちの他方、及び一対の小径部57が、炊飯鍋10の径方向において、内側コイル51に対して重複することなく、径方向外側に位置するように配置される。
【0057】
一対の大径部56の内周部から外周部までの幅Wb1はそれぞれ概ね一様であり、一対の大径部56の厚みもそれぞれ概ね一様である。一対の小径部57の内周部から外周部までの幅Wb2は、大径部57から小径部57の頂部に向けて漸増し、頂部が位置する部分の幅Wb2が最も大きくなっている。小径部57の厚みは、小径部56から離れるに従って漸減している。これにより、長軸L2が延びる方向の外側コイル55の寸法を、炊飯鍋10の誘導加熱に支障をきたさない範囲で可能な限り確保している。また、この構成により、炊飯鍋10の周方向における外側コイル55の端をサイドセンサとしての温度センサ45Aに近づけ、外側コイル55により加熱された炊飯鍋10の温度の検出応答性向上を図っている。
【0058】
このように構成された内側コイル51と外側コイル55は、図2に示すように、炊飯鍋10の軸線Aまわりに間隔をあけて3個ずつ配置され、制御部42がインバータ回路43と切換部44を制御することで、通電状態が切り換えられる。以下の説明では、3個の内側コイルを51A,51B,51Cと区別していい、3個の外側コイルを55A,55B,55Cと区別していうことがある。
【0059】
引き続いて図2を参照すると、制御部42は、インバータ回路43と切換部44によって、炊飯鍋10の対向位置にある内側コイル51Aと外側コイル55A、内側コイル51Bと外側コイル55B、及び内側コイル51Cと外側コイル55Cを、それぞれ一組のコイル群とし、3組のコイル群を個別に制御する。一組の内側コイル51と外側コイル55それぞれの図心は、軸線Aを挟んで炊飯鍋10の対向位置にあり、炊飯鍋10の径方向に延びる基準線(図示せず)上に位置する。
【0060】
制御部42は、コイル51A,55Aに高周波電流を通電し、コイル51B,51C,55B,55Cへの通電を遮断する第1通電モード、コイル51B,55Bに高周波電流を通電し、コイル51A,51C,55A,55Cへの通電を遮断する第2通電モード、及びコイル51C,55Cに高周波電流を通電し、コイル51A,51B,55A,55Bへの通電を遮断する第3通電モードを、繰り返し行う。つまり、制御部42は、複数のコイル群のうち、1つに高周波電流を通電し、残りへの通電を遮断する通電モードを繰り返し行う。
【0061】
図6A及び図6Bは、本実施形態の内側コイル51と外側コイル55によって炊飯鍋10を誘導加熱した場合の対流を示す。図7A及び図7Bは、1種のコイル60によって炊飯鍋10を誘導加熱した比較例の対流を示す。なお、比較例のコイル60は、コイル60の軸線が延びる方向から見て楕円形状であり、底壁部11の中央部11aから周壁部12の下側部12aまでの領域を加熱するように、図1に示す保護枠25に配置されている。
【0062】
まず、図7A及び図7Bを参照すると、比較例では、対向する2個のコイル60に高周波電流を通電すると、炊飯鍋10の底壁部11から周壁部12までの周方向の一部、より具体的には通電されるコイル60が配置された角度範囲が局所的に誘導加熱される。炊飯鍋10内において、コイル60による加熱領域の近傍に位置する水は間接的に加熱され、加熱領域から離れた水は加熱されない。
【0063】
炊飯鍋10内では、加熱水と非加熱水の温度差によって対流が発生し、沸騰温度に近くなると、加熱領域から発生する気泡が伴うため対流速度は早くなる。コイル60による加熱によって生じる対流は、周壁部12に沿って上向きに流動した後、水面において炊飯鍋10の中央に向けて径方向に流れて収束する旋回流になる。図7Bを参照すると、対向する2個のコイル60を同時に通電した場合、2個のコイル60による2つの旋回対流が炊飯鍋10の中央で衝突し、互いに打ち消し合う。また、図7Aを参照すると、炊飯鍋10の底中央に位置する飯米は、上から下に向けた対流によって底壁部11に押し付けられるため、撹拌作用は得られない。
【0064】
一方、本実施形態のように形状と配置が異なるコイル51,55を用いた場合、炊飯鍋10内に生じる対流は以下のようになる。
【0065】
図6A及び図6Bを参照すると、内側コイル51Aに高周波電流を通電すると、炊飯鍋10の底壁部11と連続部13のうち、内側コイル51Aが配置された角度範囲が局所的に誘導加熱される。また、外側コイル55Aに高周波電流を通電すると、炊飯鍋10の稜部、つまり底壁部11の外周部11b、連続部13、及び周壁部12の下側部12aのうち、外側コイル55Aが配置された角度範囲が局所的に誘導加熱される。炊飯鍋10内において、内側コイル51Aによる内側加熱領域の近傍に位置する水は加熱され、内側加熱領域から離れた水は加熱されない。また、外側コイル55Aによる外側加熱領域の近傍に位置する水は加熱され、外側加熱領域から離れた水は加熱されない。なお、コイル51B,55Bに通電した場合、及びコイル51C,55Cに通電した場合も同様である。
【0066】
炊飯鍋10内では、加熱水と非加熱水の温度差によって対流X,Yが生じ、水が沸騰温度に近くなると、加熱領域から発生する気泡が伴って対流X,Yの流速が早くなる。図6Aを参照すると、内側コイル51による加熱によって生じる対流Xの流動方向は、内側コイル51が周壁部12よりも内側に位置しているため、炊飯鍋10の軸線Aに沿う直流になる。外側コイル55による加熱によって生じる対流Yは、周壁部12に沿って上向きに流動した後、水面において炊飯鍋10の中央に向けて径方向に流れて収束する旋回流になる。
【0067】
この際、本実施形態の内側コイル51による加熱量は外側コイル55による加熱量以上であるため、内側コイル51による単位面積当たりの水の上昇温度は、外側コイル55による単位面積当たりの水の上昇温度以上である。しかも、飯米を除けば、下から上に直進するだけの内側コイル51による対流Xには流動抵抗がなく、周壁部12に沿って旋回する外側コイル55による対流Yには流動抵抗がある。そのため、内側コイル51による対流Xの流動水圧は、外側コイル55による対流Yの流動水圧よりも強くなる。よって、図6Bに示すように、対流X,Yが炊飯鍋10の中央で衝突すると対流Yの方が分流し、図6Aに示すように、炊飯鍋10の底中央では飯米を押し付けるような上から下に向けた流れは生じない。
【0068】
このように、本実施形態では、形状と配置が異なる2種のコイル51,55によって、流動方向が異なる2種の対流X,Yを生じさせることができる。そして、内側コイル51による下から上に向けた対流Xによって、炊飯鍋10の底壁部11の中央に位置する飯米は、水面側へ持ち上げられる。また、外側コイル55による周壁部12に沿った対流Yによって、炊飯鍋10の外周部11bに位置する飯米は、水面側へ持ち上げられた後、径方向の対向位置に向けて横向きに流れる。2種の対流X,Yの衝突後は、外側コイル55による対流(分流)Yによって、対流Xによって持ち上げられた飯米が周壁部12側へ流れる。
【0069】
以上のように、本実施形態の炊飯器1では、内側コイル51による対流Xによって炊飯鍋10の底の飯米を水面側へ持ち上げた後、外側コイル55による対流Yによって飯米を径方向と周方向に流動させることができる。よって、飯米の撹拌効率を飛躍的に向上できる。
【0070】
このように構成した炊飯器1は、以下の特徴を有する。
【0071】
配置が異なる内側コイル51と外側コイル55を有するため、内側コイル51によって炊飯鍋10の軸線A(中心)側を誘導加熱でき、外側コイル55によって炊飯鍋10の外周側を誘導加熱できる。内側コイル51による誘導加熱によって生じる対流Xは、炊飯鍋10の軸線Aに沿う方向の直流になり、外側コイル55による誘導加熱によって生じる対流Yは、炊飯鍋10の周壁部12に沿って上昇した後に炊飯鍋10の径方向内側に向かう旋回流になり得る。
【0072】
内側コイル51による加熱量が外側コイル55による加熱量以上であるため、内側コイル51による単位面積当たりの水の上昇温度は、外側コイル55による単位面積当たりの水の上昇温度以上である。また、内側コイル51による炊飯鍋10の軸線Aに沿う方向の対流Xには流動抵抗がなく、外側コイル55による旋回する対流Yには流動抵抗がある。そのため、内側コイル51による対流Xの流動水圧は、外側コイル55による対流Yの流動水圧よりも高くなり得る。
【0073】
このように、内側コイル51と外側コイル55による誘導加熱によって生じる性質が異なる2種の対流X,Yは、互いに打ち消し合うことなく衝突後には分流するため、炊飯鍋10の底中心部分での飯米の滞留を低減でき、撹拌効率を向上できる。また、内側コイル51による対流Xが強くなるため、内蓋32に対する露の付着も低減できる。
【0074】
内側コイル51のインダクタンスは外側コイル55のインダクタンスよりも大きく、これらのインダクタンスの差は0.15μH以上である。これにより、内側コイル51と外側コイル55のインダクタンスに製造誤差(バラツキ)が生じても、内側コイル51の加熱量を外側コイル55の加熱量以上に設定できる。
【0075】
内側コイル51のターン数は、外側コイル55のターン数よりも多い。これにより、内側コイル51と外側コイル55のインダクタンスに製造誤差(バラツキ)が生じても、内側コイル51の加熱量を外側コイル55の加熱量以上に設定できる。
【0076】
内側コイル51は、炊飯鍋10の径方向に延びる長軸L1と炊飯鍋10の周方向に延びる短軸S1とを有する非円形状であり、外側コイル55は、炊飯鍋10の周方向に延びる長軸L2と炊飯鍋10の径方向に延びる短軸S2とを有する非円形状であり、内側コイル51と外側コイル55は、軸線Aを挟んで炊飯鍋10の対向位置に配置され、軸線Aまわりに並べて複数設けられている。これにより、炊飯鍋10の外面側に内側コイル51と外側コイル55を敷き詰めて配置できるため、炊飯鍋10に非加熱領域が生じることを抑制できる。
【0077】
炊飯鍋10の径方向における外側コイル55の内端55aは、炊飯鍋10の径方向における内側コイル51の内端51aと内側コイル51の外端51bとの間に位置し、炊飯鍋10の径方向における外側コイル55の外端55bは、炊飯鍋10の径方向における内側コイル51の外端51bよりも外側に位置している。これにより、炊飯鍋10に非加熱領域が生じることを確実に抑制できる。また、炊飯鍋10の中心側を内側コイル51によって確実に加熱でき、炊飯鍋10の外周側を外側コイル55によって確実に加熱できるため、炊飯鍋10内に向きが異なる対流を確実に生じさせることができる。
【0078】
炊飯鍋10の対向位置にある内側コイル51と外側コイル55を一組のコイル群とし、複数組のコイル群を個別に制御する制御部42を備える。これにより、2種の対流によって飯米を効率的に撹拌しながら炊飯できる。しかも、内側コイル51の加熱量が外側コイル55の加熱量以上であるため、内側コイル51による炊飯鍋10の軸線Aに沿う方向の対流が、外側コイル55による炊飯鍋10の径方向に沿う方向の対流よりも強くなり得る。その結果、炊飯鍋10の中心部分での飯米の滞留を低減でき、確実に撹拌効率を向上できる。
【0079】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、制御部42は、それぞれ3個の内側コイル51と外側コイル55を、全て個別に通電するように切り換えて制御してもよい。また、内側コイル51と外側コイル55それぞれの数は4個以上であってもよい。
【0081】
内側コイル51のインダクタンスが外側コイル55のインダクタンスよりも大きくなるのであれば、内側コイル51のターン数と外側コイル55のターン数は同じであってもよく、インダクタンスの設定方法は必要に応じて変更可能である。
【0082】
内側コイル51を炊飯鍋10の軸線A側に配置でき、外側コイル55を軸線Aに対して内側コイル51よりも離れて配置できるのであれば、それぞれのコイル51,55の形状と配置は必要に応じて変更が可能である。
【0083】
前記実施形態では炊飯器1を例に挙げて説明したが、焼く、蒸す、揚げるといった種々の調理が可能なマルチクッカーであってもよく、本発明は、有底筒状の鍋の外面側に複数のコイルを配置する調理器であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 炊飯器(調理器)
10 炊飯鍋(鍋)
11 底壁部
11a 中央部
11b 外周部
12 周壁部
12a 下側部
12b 上側部
12c フランジ部
13 連続部
20 炊飯器本体
21 外装体
22 ヒンジ接続軸
23 収容部
24 内胴
25 保護枠
25a 底部
25b 外周部
25c 連続部
30 蓋体
31 放熱板
32 内蓋
33 蓋ヒータ
34 排気通路
40 ホルダ
41 制御基板
42 制御部
42a 記憶部
42b 計時部
43 インバータ回路
44 切換部
45A,45B 温度センサ
50 加熱部
51 内側コイル
51a 内端
51b 外端
52 内側部
53 外側部
53a 延在部
53b 湾曲部
54 連続部
55 外側コイル
55a 内端
55b 外端
56 大径部
57 小径部
L1 内側コイルの長軸
L2 外側コイルの長軸
S1 内側コイルの短軸
S2 外側コイルの短軸
X 内側コイルによる対流
Y 外側コイルによる対流
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B