(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161844
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20231031BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072447
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 昭裕
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053JJ01
4C053JJ04
4C053JJ18
4C053JJ24
4C053JJ40
(57)【要約】
【課題】布電極の導電布に供給される電力の低下を抑制できる電気刺激装置を提供する。
【解決手段】電気刺激装置は、電気刺激を付与するための電極部106と、電極部106に電力を供給する制御ユニット108と、を備える。電極部106は、使用者の身体に接触される導電布と、導電布に固定され、制御ユニット側接続部136に着脱自在に接続される電極部側接続部128と、含み、導電布には、電極部側接続部128を介して制御ユニット108から電力が供給され、電極部106はさらに、導電布と電極部側接続部128との間に、電極部側接続部128よりも耐蝕性が高い導電部材130を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激を付与するための電極部と、
前記電極部に電力を供給する制御ユニットと、
を備え、
前記電極部は、使用者の身体に接触される導電布と、前記導電布に固定され、制御ユニット側接続部に着脱自在に接続される電極部側接続部と、含み、
前記導電布には、前記電極部側接続部を介して前記制御ユニットから電力が供給され、
前記電極部はさらに、前記導電布と前記電極部側接続部との間に、前記電極部側接続部よりも耐蝕性が高い導電部材を含む電気刺激装置。
【請求項2】
前記電極部側接続部は、スナップボタンのオスおよびメスの一方であり、
前記制御ユニット側接続部は、スナップボタンのオスおよびメスの他方である請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記導電部材は、前記電極部側接続部よりも軟質である請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユーザの筋肉に電気刺激を付与する筋肉刺激装置を開示する。この筋肉刺激装置は、筋肉に微弱な電流を流して筋肉を緊張および弛緩させることで、筋肉を運動させる。これにより、例えば筋力強化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極に導電布を用いた布電極の開発が進められている。布電極では、通電性を安定させるために、水を吹きかけるなどして導電布が水を含んだ状態で使用される。この場合、導電布に固定された端子(すなわち金属部材)が腐蝕する。端子が腐蝕すると、その電気抵抗が高くなり、布電極に供給される電力が低下し、意図した電気刺激を付与できなくなる。
【0005】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、布電極の導電布に供給される電力の低下を抑制できる電気刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電気刺激装置は、電気刺激を付与するための電極部と、電極部に電力を供給する制御ユニットと、を備える。電極部は、使用者の身体に接触される導電布と、導電布に固定され、制御ユニット側接続部に着脱自在に接続される電極部側接続部と、含む。導電布には、電極部側接続部を介して制御ユニットから電力が供給され、電極部はさらに、導電布と電極部側接続部との間に、電極部側接続部よりも耐蝕性が高い導電部材を含む。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布電極の導電布に供給される電力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電気刺激装置100の斜視図である。
【
図2】
図1の電気刺激装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の電気刺激装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の電極部とその周辺を示す断面図である。
【
図6】変形例に係る電気刺激装置の電極部とその周辺を示す断面図である。
【
図7】別の変形例に係る電気刺激装置の電極部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る電気刺激装置100の斜視図である。電気刺激装置100は、使用者の筋肉に電気刺激を与えるEMS(Electrical Muscle Stimulation)機器である。電気刺激装置100は、装着具102と、装着具102に取り付けられた電気刺激部104と、を備える。
【0012】
装着具102は、本実施の形態では、腹部に装着可能に構成される。装着具102は、筒状であり、腹部を環囲するように腹部に装着される。装着具102は、伸縮性を有し、腹部に密着する。装着具102の素材は特に限定されない。
【0013】
電気刺激部104は、一対の電極部106と、制御ユニット108と、を備える。一対の電極部106は、装着具102の内周側、具体的には腹直筋に対応する箇所に設けられる。一対の電極部106は、制御ユニット108と電気的に接続される。一対の電極部106には制御ユニット108から電力が供給される。一対の電極部106は、使用者の腹直筋に、供給された電力による電気刺激を付与する。
【0014】
制御ユニット108は、装着具102の外周側に、図示の例では装着具102を挟んで一対の電極部106と対向する位置に、着脱自在に取り付けられる。制御ユニット108の筐体110には、操作部112が設けられる。操作部112はユーザによって操作される。ユーザが操作部112を操作すると、その操作に応じた操作信号が生成される。制御ユニット108の制御部118(後述)は当該操作信号に基づく制御を実行する。操作部112は、電気刺激のレベルを上げたり下げたりするボタンを含んでいてもよい。
【0015】
図2は、電気刺激装置100の機能構成を示すブロック図である。
図2に示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0016】
電気刺激部104は、接触検出部114と、通信部116と、制御部118と、充電端子120と、電池122と、をさらに含む。
【0017】
接触検出部114は、一対の電極部106が肌に接触している場合に、そのことを検出する。接触検出部114は、本実施形態では、一対の電極部106の間を流れる電流を検知する電流検知部として構成される。すなわち、一対の電極部106が肌に適切に接触している場合、肌を介して一対の電極部106の間に電流が流れるため、その電流を検知することで肌の接触を検出できる。
【0018】
通信部116は、外部装置との間で通信を行う。通信部116は、無線通信部として構成されてもよいし、有線通信部として構成されてもよい。通信の目的は特に限定されないが、電気刺激装置100に格納されたデータや電気刺激装置100によるトレーニング履歴を外部装置に送信したり、電気刺激装置100の操作や設定情報の変更に関する指令を外部装置から受信したりすることができる。
【0019】
電池122は、制御部118に電気的に接続され、制御部118に電力を供給する。電池122は、好ましくはリチウムイオン電池等の二次電池であるが、一次電池であってもよい。充電端子120は、電池122を充電するための電力を受電して制御部118に出力する。充電端子120には、種々のコネクタを用いることができる。電池122は、充電端子120で受電した電力により充電される。電池122は、ワイヤレス充電などの非接触式の充電システムによって充電されるように構成されてもよい。
【0020】
制御部118は、充電端子120で受電した充電用の電力を制御して電池122に供給する。
【0021】
また制御部118は、接触検出部114によって一対の電極部106が肌に接していることが検出されると、運動制御プログラムにしたがって、所定の動作時間(例えば10分)、所定の周期(例えば、周波数が20Hzとなる周期)で、一対の電極部106の間に電圧を印加する。すなわち、各電極が配置された箇所(この例では腹直筋)に電気刺激を与える。運動制御プログラムには2種類のモードがあり、筋肥大を目的とする第1のモードでは主に20Hzの周波数で電気刺激を加え、有酸素運動を目的とする第2のモードでは主に20Hzより低い周波数(例えば4~10Hz)で電気刺激を加える。第1のモードは、例えば20Hzの周波数を基本とし、電気刺激装置100からの電気刺激による不随意運動を中心に、筋肥大を目的としてゆっくりとした動作の随意運動のみを加えるレジスタンストレーニングに用いられる。第2のモードは、例えば4Hzの周波数を基本とし、電気刺激装置100からの電気刺激による不随意運動にバイクトレーニングなどの随意運動を加えたハイブリッドトレーニングとして、カーディオトレーニングに用いられる。カーディオトレーニングは、スピード動作による無酸素運動やカロリー消費による脂肪燃焼を狙った有酸素運動である。
【0022】
以上が電気刺激装置100の基本構成である。続いて、その動作を説明する。
【0023】
図3は、電気刺激装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
図3は、ユーザが電気刺激装置100を装着した状態で電源をオンにし、電気刺激を開始してから終了するまでの処理S100を示している。
【0024】
電気刺激装置100の電源がオンにされる(S102)。
【0025】
制御部118は、接触検出部114による検出結果に基づいて、電極部106が肌に接しているか否かを判定する(S104)。電極部106が肌に接していない場合(S104のN)、所定の肌接触待ち時間(例えば120秒)が経過したか否かを判定する(S106)。所定の肌接触待ち時間が経過していない場合(S106のN)、制御部118は所定の待機時間待機してから処理をS104に戻す。肌との接触が検出されないまま所定の肌接触待ち時間が経過した場合(S106のY)、処理を終了する。この際、電気刺激装置100の電源がオフにされてもよい。
【0026】
電極部106が肌に接している場合(S104のY)、制御部118は、運動制御プログラムにしたがった電気刺激の付与を開始する(S108)。電気刺激が付与されることにより、血流を促進できる。また、筋肉が持続的に収縮し、筋肉が肥大することが期待される。
【0027】
制御部118は、終了条件が満たされるか否か判定する(S110)。終了条件は、例えば運動制御プログラムが終了したことや、また例えば一対の電極部106が肌と接しなくなったことや、また例えば外部(例えば使用者)から終了の指示を受け付けたことであってもよい。終了条件が満たされない場合(S110のN)、制御部118は所定の待機時間待機してから処理をS108の先頭に戻す。終了条件が満たされている場合(S110のY)、処理を終了する。この際、電気刺激装置100の電源がオフにされてもよい。
【0028】
続いて、電極部106についてより詳細に説明する。
【0029】
図4は、電極部106の1つとその周辺を示す断面図である。
図4では、制御ユニット108を装着具102から取り外した状態を示している。
【0030】
電極部106は、クッション材124と、クッション材124を覆う導電布126と、導電布126に固定される電極部側接続部128と、導電部材130と、を含む。
【0031】
導電布126は、その外縁が全周にわたって装着具102に縫い付けられる。導電布126は、導電性を有する。導電布126は、特に限定されないが本実施の形態では、布132と、布132の一方側の表面に形成された導電層134と、を含む。
【0032】
布132は、絹等の繊維またはナイロン等の合成繊維で編んだものであってもよい。
【0033】
導電層134は、導電材料の層である。導電材料は、特に限定されないが、導電性高分子であってもよい。導電性高分子は、PEDOT-pTS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-p-トルエンスルホン酸)やPEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸)等であってもよい。この場合、導電層134は、素材に金属を含まないため、洗濯耐久性が高い。また、酸化、腐食による導電性の低下の心配がない。また、金属アレルギーを招くおそれもない。また、摩擦で金属が剥離することによる導電性の低下のおそれもない。なお、導電層134は、銀や銅などの金属を含んでいてもよい。
【0034】
導電布126は、導電材料を付着または含浸させて形成される導電性繊維で編んだ布であってもよい。
【0035】
導電布126で電極を構成することにより、従来の筋電気刺激装置の電極のようにジェルパッドを貼付することなく一対の電極部106間に通電することができる。
【0036】
導電布126が濡れていないと肌に対して局所的に電気刺激が付与されるおそれがあるため、スプレー等で導電布126を濡らして軽く保水させる。これにより、汗をかいていない状態であっても一対の電極部106間の通電状態を安定させることができる。いずれにせよ、導電布126は吹きかけられた水や汗のような導電性の液体等で濡れた状態で使用される。
【0037】
クッション材124は例えば直方体のスポンジであり、クッション材124によって電極部106の全体形状である凸形状を形作る。またクッション材124が導電布126の中に収納されることにより、導電布126と肌との密着力を高めることができる。
【0038】
クッション材124は撥水性を有していてもよい。導電布126を濡らす際、導電布126が保水できる量を超えるとクッション材124側にも水が入り込む。クッション材124が撥水性を有しない場合、クッション材124側に入り込んだ水はクッション材124に保持されて導電布126に浸透していかない。これに対し、クッション材124が撥水性を有する場合、クッション材124側に入り込んだ水は積極的に導電布126に浸透する。これにより、導電布126が濡れた状態を維持できる。
【0039】
電極部側接続部128は、制御ユニット側接続部136と物理的かつ電気的に着脱自在に構成される。制御ユニット側接続部136は、制御部118と電気的に接続されており、この例では制御ユニット108の筐体110に固定されている。制御ユニット108は、制御ユニット側接続部136が電極部側接続部128に接続されることにより、電極部側接続部128ひいては装着具102に支持される。
【0040】
本実施の形態では、電極部側接続部128および制御ユニット側接続部136はスナップボタンを構成する。詳しくは、電極部側接続部128は、スナップボタンのオスであり、ホソ138およびゲンコ140を含む。制御ユニット側接続部136は、スナップボタンのメスである。
【0041】
ホソ138およびゲンコ140は、いずれもSUSなどの金属製である。ホソ138は装着具102の内周側すなわち装着具102に対して導電布126と同じ側に設けられ、ゲンコ140は装着具102の外周側すなわち装着具102に対して導電布126とは反対側に設けられる。
【0042】
ホソ138は、円板部142と、円板部142の中央から突出する突出部144とを含む。突出部144は、中空であってもよいし、中実であってもよい。つまり、突出部144は、円筒形状であっても円柱形状であってもよい。前者の場合、突出部144の先端側(ゲンコ140側)は図示のように塞がっていてもよいし、図示とは異なり開口していてもよい。
【0043】
ゲンコ140は、円板部152と、円板部152の中央から突出する突出部154とを有する。突出部154は中空である。
【0044】
ホソ138とゲンコ140とをカシメることにより、ホソ138およびゲンコ140(すなわち電極部側接続部128)が、導電布126および装着具102に固定される。なお、ホソ138の突出部144は導電部材130、導電布126、装着具102および補強プレート170をこの順に貫通してゲンコ140の中空の突出部144に嵌め込まれ、ホソ138およびゲンコ140の円板部142,152は、導電部材130、導電布126、装着具102および補強プレート170を挟み込む。
【0045】
なお、ホソ138およびゲンコ140の構成はこの例に限定されず、公知の、あるいは将来利用可能な技術を用いて構成されればよい。
【0046】
導電部材130は、導電性を有する。また、導電部材130は、水分を通さない部材である。ホソ138の円板部142とゲンコ140の円板部152によって上述のように挟み込まれるため、導電部材130とホソ138の円板部142のゲンコ140側の面142aとが接触し、導電部材130と導電布126の導電層134とが接触する。
【0047】
導電部材130は、導電布126と接触するゲンコ140側の表面130aの少なくとも一部が、ホソ138よりも耐蝕性が高い素材で形成される。耐蝕性は、腐蝕に耐える性能をいう。腐蝕は、金属材料が水や酸素などとの化学反応によって表面から変質、消耗することをいう。耐蝕性は、公知の、あるいは将来利用可能な技術を用いて評価されればよい。ホソ138(金属製)よりも耐蝕性が高い素材は、典型的には非金属であるが、金属であってもよい。
【0048】
例えば導電部材130の全体が、ホソ138よりも耐蝕性が高い素材で形成されていてもよい。
【0049】
また例えば導電部材130は、ホソ138と耐蝕性が同じかあるいはホソ138よりも耐蝕性が低い素材を、ホソ138よりも耐蝕性が高い素材で被覆した部材であってもよい。この場合、導電部材130の全体がホソ138よりも耐蝕性が高い素材で被覆されていてもよいし、導電部材130のゲンコ140側の表面130aの全体あるいは一部がホソ138よりも耐蝕性が高い素材で被覆されていてもよい。
【0050】
また例えば導電部材130は、ホソ138よりも耐蝕性が高い素材に、ホソ138と同じかあるいはホソ138よりも耐蝕性が低い素材が含有された部材であってもよい。この場合、導電部材130のゲンコ140側の表面130aは、一部がホソ138と耐蝕性が同じかあるいはホソ138よりも耐蝕性が低い素材で形成され、それ以外の部分はホソ138よりも耐蝕性が高い素材で形成される。
【0051】
いずれにせよ導電部材130は、制御ユニット側接続部136およびゲンコ140を介してホソ138に供給される電力を導電布126に供給可能とする。加えて、導電部材130が導電布126とホソ138の円板部142との間に存在することによって導電布126に吹きかけられた水がホソ138の円板部142の導電布126側に付着することを抑止できる。これにより、ホソ138が腐蝕したり、導電層134の導電性高分子に基づく硫黄がホソ138に付着したりするのを抑止できる。一方で、上述のように、導電層134と接触する導電部材130のゲンコ140側の表面130aの少なくとも一部が耐蝕性が高い素材で形成されるため、導電布126に吹きかけられた水が導電部材130の表面130aに付着しても、導電部材130が腐蝕するのを抑止できる。つまり、ホソ138の円板部142と導電布126との間における電気抵抗が上がるのを抑止できる。
【0052】
導電部材130は、好ましくは、ホソ138の円板部のゲンコ140側の面の全体を覆う形状および多きに形成される。これにより、ホソ138の円板部への水の付着をより一層抑止できる。
【0053】
導電部材130は、好ましくは、少なくとも外表面が、ホソ138よりも軟質である。導電部材130は、その全体または外表面が、例えばシリコンおよびカーボンブラックもしくはグラファイトを主として形成されたシート状の弾性体であってもよい。ここで、導電布126の布132は経糸と緯糸とで織られているため、経糸間と緯糸間との間には凹みが形成される。したがって導電布126の表面は比較的でこぼこしている。導電布126と金属製である硬質のホソ138の円板部142とを直接に接触させる場合、導電布126の表面の凹みはホソ138の円板部142とは接触しないあるいは接触しづらいため、導電布126とホソ138の円板部142との実質的な接触面積は比較的小さくなり、電気抵抗は比較的大きくなる。
【0054】
これに対し、導電布126とホソ138よりも軟質な導電部材130とを接触させる場合、極端に言えば導電部材130が導電布126の凹みに入り込むように導電布126に密着することになるため、導電布126と導電部材130との接触面積は比較的大きくなる。したがってホソ138の円板部142と導電布126との間における電気抵抗は比較的小さくなる。
【0055】
つまり、導電部材130を備える場合、導電部材130を備えない場合と比べて、電気抵抗が小さくなり、電力消費を抑えられる。
【0056】
発明者は、実施の形態が奏する効果を確認するための実験を行った。
図5は、その実験結果を示す図である。実験では、電気刺激装置100_1~電気刺激装置100_12のそれぞれを繰り返し使用(1回あたり23分使用)し、所定の使用回数ごとに抵抗値[Ω]を測定した。
図5から、導電部材130を備えることにより、電気抵抗が高くなることが抑えられることがわかる。また、使用回数が0回の時点で、導電部材130を備える場合の電気抵抗が、導電部材130を備えない場合の電気抵抗よりも小さくなっている。このことから、導電部材130を設けたことにより、表面が比較的でこぼこしている導電布126との真実接触面積が比較的大きくなり、電気抵抗が小さくなることがわかる。
【0057】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0058】
(変形例1)
図6は、変形例に係る電気刺激装置100の電極部106とその周辺を示す断面図である。本変形例では、装着具102は表地160と裏地162が重ねられた複層構造を有する。
図6では、構造を説明する都合上、表地160と裏地162を大きく離して描くが、実際には、表地160と裏地162とはより密着し、適宜の位置で互いに縫製されている。
【0059】
電極部106は、電極部側接続部128のゲンコ140を除いて裏地162の内周側に設けられ、ゲンコ140は表地160と裏地162との間に設けられる。ホソ138は、円板部142と、円板部142から突出する先端が尖った複数の突出部146を有する。複数の突出部146は、導電布126や装着具102を貫通して円板部142にはまり込んでいる。
【0060】
制御ユニット108は、表地160の外周側に設けられる。制御ユニット側接続部136は、表地160と裏地162との間に設けられ、そこで電極部側接続部128と接続される。制御ユニット側接続部136は、電気ケーブル164を介して制御ユニット108と電気的に接続される。
【0061】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
(変形例2)
装着具102は身体に装着可能であればよく、実施の形態のそれには限定されない。例えば装着具102はベルトタイプであり、腹部、腕、脚、その他の身体部位に装着可能であってもよい。また例えば装着具102は衣類(ウェア)タイプであり、上半身または下半身に装着可能であってもよい。
【0063】
(変形例3)
実施の形態とは異なり、電極部106が装着具102から着脱自在であってもよい。
図7は、別の変形例に係る情報処理装置の電極部106の断面図である。電極部106は、袋状に縫製された導電布126と、その中に収納されたクッション材124と、導電布126に固定された一対(
図7では1つのみ表示されている)の電極部側接続部128と、を含む。ホソ138は導電布126の袋の中に設けられ、ゲンコ140は外に設けられる。導電布126のホソ138と対向する面には、強度を上げるために溶着布168が貼付されている。本変形例では、ゲンコ140の円板部152と、導電布126の表面の導電層134との間に、導電部材130が設けられている。なお、電流がホソ138にも流れる場合、導電部材130をホソ138と導電布126(溶着布)との間にも設けてもよい。本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0064】
(変形例4)
実施の形態および上述の変形例とは異なり、導電部材130は、ホソ138やゲンコ140の円板部142,152の導電布126側を被覆するコーティング層として形成されてもよい。
【0065】
(変形例5)
実施の形態および上述の変形例では、電極部側接続部128がスナップボタンのオスで、制御ユニット側接続部136がスナップボタンのメスであったが、電極部側接続部128がスナップボタンのメスで、制御ユニット側接続部136がスナップボタンのオスであってもよい。この場合、電極部側接続部128は、アタマとバネを含む。そして、実施の形態および上述の変形例におけるホソ138、ゲンコ140をそれぞれ、適宜、アタマ、バネに読み替えればよい。
【0066】
(変形例6)
実施の形態および上述の変形例では、電極部側接続部128および制御ユニット側接続部136がスナップボタンを構成する場合について説明したが、これには限定されない。少なくとも電極部側接続部128が金属であり、電極部側接続部128と制御ユニット側接続部136とが物理的かつ電気的に着脱自在に構成されればよく、電極部側接続部128および制御ユニット側接続部はスナップボタン以外の留め具を構成してもよい。
【0067】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0068】
また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。例えば、請求項に記載の第1部材、第2部材はそれぞれ、実施の形態のホソ138、ゲンコ140により実現されてもよい。また例えば、請求項に記載の第1部材、第2部材はそれぞれ、変形例3のゲンコ140、ホソ138により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 電気刺激装置、 102 装着具、 104 電気刺激部、 106 電極部、108 制御ユニット、 128 電極部側接続部、 130 導電部材、 136 制御ユニット側接続部、 138 ホソ、 140 ゲンコ。