(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161850
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/16 20230101AFI20231031BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231031BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231031BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20231031BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20231031BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20231031BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231031BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H05B33/22 B
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 C
H05B33/22 D
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072457
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛窪 孝洋
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD51
3K107DD52
3K107DD72
3K107DD75
3K107GG01
3K107GG11
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA13
(57)【要約】
【課題】フォトリソグラフィを行う際に、一部の層が溶剤や大気に曝露されたとしても特性の劣化が少ない有機EL表示装置及びその製造方法を提供する
【解決手段】
複数の副画素からなる画素を有する有機EL表示装置であって、基板と、前記基板の上側に設けられた下部電極と、前記下部電極の上に設けられ、前記副画素ごとに異なる色を発する発光層を含む有機EL層と、前記有機EL層の上側に配置された上部電極と、を含み、前記有機EL層と前記上部電極の間に、前記副画素ごとに保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層がこの順に積層された曝露保護層を有し、前記曝露保護層と前記上部電極の間に発光層を有しないことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の副画素からなる画素を有する有機EL表示装置であって、
基板と、
前記基板の上側に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上に設けられ、前記副画素ごとに異なる色を発する発光層を含む有機EL層と、
前記有機EL層の上側に配置された上部電極と、
を含み、
前記有機EL層と前記上部電極の間に、前記副画素ごとに保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層がこの順に積層された曝露保護層を有し、
前記曝露保護層と前記上部電極の間に発光層を有しない、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記有機EL層が前記副画素毎に少なくとも前記発光層を2層以上含む、タンデム構造を有することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記曝露保護層は、前記副画素ごとに設けられた前記第1保護用正孔輸送層の上側に接し、かつ、前記各副画素に共通に設けられた第2保護用正孔輸送層がさらに積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
隣接する前記副画素の間に配置され、該隣接する副画素を区分するバンクをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記有機EL層は、
前記下部電極の上に配置された第1正孔注入層と、
前記第1正孔注入層の上に配置された第1正孔輸送層と、
前記第1正孔輸送層の上に配置された第1電子ブロック層と、
前記第1電子ブロック層の上に配置され赤、緑、または、青色の光を発する第1発光層と、
前記第1発光層の上に配置された第1正孔ブロック層と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記有機EL層は、
前記下部電極の上に配置された第1正孔注入層と、
前記第1正孔注入層の上に配置された第1正孔輸送層と、
前記第1正孔輸送層の上に配置された第1電子ブロック層と、
前記第1電子ブロック層の上に配置され赤、緑、または、青色の光を発する第1発光層と、
前記第1発光層の上に配置された第1正孔ブロック層と、
前記第1正孔ブロック層の上に配置された電荷発生層と、
前記電荷発生層の上に配置された第2正孔輸送層と、
前記第2正孔輸送層の上に配置された第2電子ブロック層と、
前記第2電子ブロック層の上に配置され赤、緑、または、青色の光を発する第2発光層と、
前記第2発光層の上に配置された第2正孔ブロック層と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
複数の副画素からなる画素を有する有機EL表示装置の製造方法であって、
基板の上側に下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の上に、前記副画素ごとに異なる色を発する発光層を含む有機EL層を形成する工程と、
前記有機EL層の上に接して、前記副画素ごとに保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層がこの順に積層された曝露保護層を形成する工程と、
前記曝露保護層の上側に上部電極を形成する工程と、
を含み、
前記曝露保護層と前記上部電極の間に発光層を形成しない、
ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置は、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)や有機発光ダイオード(OLED)などが形成される。OLEDは、一対の電極間に有機層を備える。有機層は、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等が積層されて構成される。発光層は、白色の光を発する材料で形成される場合や、画素を構成する副画素ごとに異なる色を発する材料で形成される場合がある。
【0003】
発光層を白色の光を発する材料で形成する場合、隣接する副画素間で電流リークが発生するリスク(特許文献1参照)や、カラーフィルターによる光の吸収により、輝度が低下する問題がある。そのため、近年、発光層は、副画素ごとに異なる色を発する材料で形成されることが多い。
【0004】
上記の問題を解決するために、特許文献1では、リーク電流が流れる経路となる隔壁の上部に形成された正孔輸送層を除去する点を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
副画素ごとに異なる色を発する発光層と形成すると、隣接する画素間生じるリーク電流やカラーフィルターによる光の吸収を低減できる。しかしながら、フォトリソグラフィによって有機EL層を形成する必要が生じるため、一部の層が大気や溶剤に曝露され、特性が劣化することがある。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フォトリソグラフィを行う際に、一部の層が溶剤や大気に曝露されたとしても特性の劣化が少ない有機EL表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一側面に係る有機EL表示装置は、複数の副画素からなる画素を有する有機EL表示装置であって、基板と、前記基板の上側に設けられた下部電極と、前記下部電極の上に設けられ、前記副画素ごとに異なる色を発する発光層を含む有機EL層と、前記有機EL層の上側に配置された上部電極と、を含み、前記有機EL層と前記上部電極の間に、前記副画素ごとに保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層がこの順に積層された曝露保護層を有し、前記曝露保護層と前記上部電極の間に発光層を有しないことを特徴とする。
【0009】
本開示明の他の一側面に係る有機EL表示装置の製造方法は、複数の副画素からなる画素を有する有機EL表示装置の製造方法であって、基板の上側に下部電極を形成する工程と、前記下部電極の上に、前記副画素ごとに異なる色を発する発光層を含む有機EL層を形成する工程と、前記有機EL層の上に接して、前記副画素ごとに保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層がこの順に積層された曝露保護層を形成する工程と、前記曝露保護層の上側に上部電極を形成する工程と、を含み、前記曝露保護層と前記上部電極の間に発光層を形成しない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フォトリソグラフィを行う際に、一部の層が溶剤や大気に曝露されたとしても特性の劣化が少ない有機EL表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る有機EL表示装置の概略の構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る有機EL表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る有機EL層及び曝露保護層の層構成を示す図である。
【
図5】有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
【
図6】有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
【
図7】有機EL表示装置の製造方法について説明するための図である。
【
図8】第1実施形態の変形例に係る有機EL層及び曝露保護層の層構成を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る有機EL層及び曝露保護層の層構成を示す図である。
【
図10】第2実施形態の変形例に係る有機EL層及び曝露保護層の層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
なお、以下の説明において参照する図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であり、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る有機EL表示装置2の概略の構成を示す模式図である。有機EL表示装置2は、画像を表示する画素アレイ部4と、画素アレイ部4を駆動する駆動部とを備える。有機EL表示装置2は、基板404(
図4参照)上にTFT10,12やOLED6などの積層構造が形成された構成を有する。なお、
図1に示した概略図は一例であって、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0015】
画素アレイ部4には、画素に対応してOLED6および画素回路8がマトリクス状に配置される。画素回路8は複数のTFT10,12やキャパシタ14で構成される。
【0016】
上記駆動部は、走査線駆動回路20、映像線駆動回路22、駆動電源回路24および制御装置26を含み、画素回路8を駆動しOLED6の発光を制御する。
【0017】
走査線駆動回路20は、画素の水平方向の並び(画素行)ごとに設けられた走査信号線28に接続されている。走査線駆動回路20は、制御装置26から入力されるタイミング信号に応じて走査信号線28を順番に選択し、選択した走査信号線28に、点灯TFT10をオンする電圧を印加する。
【0018】
映像線駆動回路22は、画素の垂直方向の並び(画素列)ごとに設けられた映像信号線30に接続されている。映像線駆動回路22は、制御装置26から映像信号を入力され、走査線駆動回路20による走査信号線28の選択に合わせて、選択された画素行の映像信号に応じた電圧を各映像信号線30に出力する。当該電圧は、選択された画素行にて点灯TFT10を介してキャパシタ14に書き込まれる。駆動TFT12は、書き込まれた電圧に応じた電流をOLED6に供給し、これにより、選択された走査信号線28に対応する画素のOLED6が発光する。
【0019】
駆動電源回路24は、画素列ごとに設けられた駆動電源線32に接続され、駆動電源線32および選択された画素行の駆動TFT12を介してOLED6に電流を供給する。
【0020】
ここで、OLED6の下部電極324(
図3、4参照)は、駆動TFT12に接続される。一方、各OLED6の上部電極44(
図2、4参照)は、全画素のOLED6に共通の電極で構成される。下部電極324を陽極(アノード)として構成する場合は、高電位が入力され、上部電極44は陰極(カソード)となって低電位が入力される。下部電極324を陰極(カソード)として構成する場合は、低電位が入力され、上部電極44は陽極(アノード)となって高電位が入力される。
【0021】
図2は、
図1に示す有機EL表示装置2の一例を示す模式的な平面図である。有機EL表示装置2の表示領域42に、
図1に示した画素アレイ部4が設けられ、上述したように画素アレイ部4にはOLED6が配列される。上述したようにOLED6を構成する上部電極44は、各画素に共通に形成され、表示領域42全体を覆う。
【0022】
矩形である有機EL表示装置2の一辺には、部品実装領域46が設けられ、表示領域42につながる配線が配置される。部品実装領域46には、駆動部を構成するドライバ集積回路(ドライバIC48)が搭載されたり、フレキシブルプリント基板(FPC50)が接続されたりする。FPC50は、制御装置26やその他の回路20,22,24等に接続されたり、その上にICを搭載されたりする。
【0023】
各画素は、複数の副画素から構成される。具体的には、例えば、各画素は、赤色の光を発する第1副画素52と、緑色の光を発する第2副画素54と、青色の光を発する第3副素56と、を含む。
【0024】
図3は、画素周辺の断面を示す図である。
図3では、断面構造を見易くするため、一部の層のハッチングを省略している。以下の説明では、積層方向を上方向とする。
【0025】
基板300は、例えばポリイミド等の可撓性がある樹脂からなる。基板300の上面はアンダーコート層304によって覆われている。アンダーコート層304上には半導体層306が形成されており、半導体層306はゲート絶縁膜308によって覆われている。ゲート絶縁膜308上にはゲート電極310が形成されており、ゲート電極310はパシベーション膜312によって覆われている。ドレイン電極314及びソース電極316は、ゲート絶縁膜308とパシベーション膜312とを貫通して半導体層306に接続されている。半導体層306、ゲート電極310、ドレイン電極314及びソース電極316により点灯TFT10が構成される。点灯TFT10は、複数の単位画素のそれぞれに対応するように設けられている。アンダーコート層304、ゲート絶縁膜308及びパシベーション膜312は、例えばSiO2又はSiN等の無機絶縁材料で形成されている。半導体層306は、例えばLTPS(Low Temperature Poly-silicon)等の半導体で構成されている。
【0026】
ドレイン電極314及びソース電極316は層間絶縁膜318によって覆われており、層間絶縁膜318は平坦化膜322によって覆われている。ドレイン電極314及びソース電極316は、例えばAl、Ag、Cu、Ni、Ti、Mo等を含む導電性材料で形成されている。層間絶縁膜318は、例えばSiO2又はSiN等の無機絶縁材料で形成されている。平坦化膜322は、例えばアクリル樹脂等の有機絶縁材料で形成され、平坦な上面を有している。
【0027】
平坦化膜322上には下部電極324が形成されている。下部電極324は、平坦化膜322と層間絶縁膜318とを貫通してソース電極316に接続された接続電極320に接続されている。下部電極324は、複数の単位画素のそれぞれに対応するように個別に設けられている。本実施形態では、有機EL表示装置2はトップエミッション型であり、下部電極324は反射電極として形成されている。下部電極324は、例えばAl、Ag、Cu、Ni、Ti、Mo等を含む導電性材料や、ITO、IZO等の導電性酸化物を含んで形成されている。
【0028】
有機EL層326は、下部電極324の上に設けられ、副画素ごとに異なる色を発する発光層を含む。具体的には、有機EL層326は、副画素ごとに設けられた下部電極324の上に配置される。各副画素の有機EL層326は、副画素ごとに特定の色の光を発する。有機EL層326の詳細な層構成については後述する。
【0029】
曝露保護層328は、有機EL層326と上部電極44の間に配置され、副画素ごとに保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層416(
図4参照)がこの順に積層された構成を含む。曝露保護層328の詳細な層構成については後述する。図中、電荷発生層をCGL(Charge Generation Layer)と記載し、正孔輸送層をHTL(Hole Transport Layer)と記載する。
【0030】
バンク334は、隣接する副画素の間に配置され、該隣接する副画素を区分する。具体的には、バンク334は、1の副画素に配置された曝露保護層328の端部から、該1の副画素に隣接する曝露保護層328の端部にかけて配置される。バンク334の内縁部分は曝露保護層328の周縁部分に載っており、バンク334は、断面視で底部から上方に向かうに従って幅が細くなる順テーパー形状を有している。バンク334は、例えばアクリル樹脂やポリイミド樹脂等の有機絶縁材料で形成されている。これにより、バンク334は、隣接する副画素を区分する。なお、バンク334が有機EL層326の下側に配置され、有機EL層326及び曝露保護層328がバンク334の端部に乗り上げる構成としてもよい。バンク334はリブとも呼ばれる。
【0031】
曝露保護層328及びバンク334は上部電極44によって覆われている。上部電極44は、表示領域42の全体に広がる一様な膜(いわゆるベタ膜)として形成されている。有機EL層326並びに有機EL層326を挟む下部電極324及び上部電極44によって有機発光ダイオード(OLED)が構成され、下部電極324と上部電極44の一方が陽極、他方が陰極となる。これにより、有機EL層326は下部電極324と上部電極44との間を流れる電流によって発光する。上部電極44は、例えばITO、IZO等の透明導電材料又はMgAg等の金属薄膜で形成される。発光層は、有機EL層326の内部にのみ設けられており、有機EL表示装置2は、曝露保護層328と上部電極44の間に発光層を有しない。
【0032】
上部電極44は、封止膜330(パシベーション膜)によって覆われることで封止され、水分から遮断される。封止膜330は、例えばSiO2又はSiN等の無機絶縁材料で形成されている。封止膜330は、保護膜336によって覆われている。保護膜336は、例えばアクリル樹脂等の有機絶縁材料で形成されており、機械的な耐性を確保する。
【0033】
続いて、有機EL層326及び曝露保護層328の詳細について説明する。
図4は、第1実施形態に係る有機EL層326及び曝露保護層328の層構成について説明するための図であって、下部電極324から上部電極44までの層構成を模式的に示す図である。なお、以下の説明においては、下部電極324がアノードであって、上部電極44がカソードである場合について説明する。
【0034】
有機EL層326は、第1正孔注入層402と、第1正孔輸送層404と、第1電子ブロック層406と、第1発光層408と、第1正孔ブロック層410と、を含む。図中、正孔注入層をHIL(Hole Injection Layer)とし、電子ブロック層をEBL(Electron Blocking Layer)とし、発光層をEML(Emission Layer)とし、正孔ブロック層をHBL(Hole Blocking Layer)と記載する。
【0035】
第1正孔注入層402(図中第1HTL)は、副画素毎に下部電極324の上に配置され、下部電極324から正孔が供給される。
【0036】
第1正孔輸送層404は、副画素毎に配置される。具体的には、例えば、第1副画素52には赤色の光を発する副画素用の第1正孔輸送層404R(図中第1R-HTL)が配置される。第2副画素54には緑色の光を発する副画素用の第1正孔輸送層404G(図中第1G-HTL)が配置される。第3副画素56には青色の光を発する副画素用の第1正孔輸送層404B(図中第1B-HTL)が配置される。各第1正孔輸送層404は、各副画素が発する光の色に応じて適宜設定された膜厚及び材料で形成される。
【0037】
第1電子ブロック層406(図中第1EBL)は、第1正孔輸送層404の上に配置され、第1発光層408を貫通した電子が第1正孔輸送層404に到達することを防止する。
【0038】
第1発光層408は、第1電子ブロック層406の上に配置され、赤、緑、または、青色の光を発する。具体的には、第1発光層408は、第1電子ブロック層406の上に、副画素ごとに個別に形成される。例えば、上記のように画素は、赤色の光を発する第1副画素52と、緑色の光を発する第2副画素54と、青色の光を発する第3副素とを含む。この場合、第1副画素52の第1発光層408R(図中第1R-EML)は、赤い光を発する材料で形成され、第2副画素54の第1発光層408G(図中第1G-EML)は、緑の光を発する材料で形成され、第3副画素56の第1発光層408B(図中第1B-EML)は、青い光を発する材料で形成される。第1発光層408は、下部電極324から供給された正孔と保護用電荷発生層から供給された電子が結合することで発光する。
【0039】
第1正孔ブロック層410(図中第1HBL)は、第1発光層408の上に配置され、第1発光層408を貫通した正孔が第1電子輸送層に到達することを防止する。
【0040】
曝露保護層328は、有機EL層326の上に配置される。具体的には、曝露保護層328は、保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層416を含む。保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層416はそれぞれ副画素ごとに形成される。保護用電荷発生層は、保護用nCGL412(n-type Charge Generation Layer)と、保護用pCGL414(p-type Charge Generation Layer)と、を含む。保護用nCGL412は有機EL層326に接して配置され、保護用pCGL414は該保護用nCGL412の上に接して配置される。保護用nCGL412は、上部電極44と下部電極324に電圧が印加されることにより電子を発生し、該電子を第1正孔ブロック層410を介して第1発光層408に供給する。第1保護用正孔輸送層416は、保護用pCGL414の上に接して配置され、後述するように大気曝露やフォトリソグラフィを行う際に溶剤による有機EL層326の劣化を低減する。
【0041】
上部電極44は、曝露保護層328の上に接して配置される。上記のように上部電極44は各副画素に共通の層として設けられる。
【0042】
続いて、
図5(a)乃至
図7(c)を参照しながら、第1実施形態にかかる有機EL表示装置2の製造方法について説明する。なお、基板300上に形成される下部電極324以下の層の形成方法は公知の技術と同様であるため、
図5(a)乃至
図7(c)では省略している。
【0043】
まず、下部電極324以下の層が形成された基板300の全面に、第1副画素52の有機EL層326及び曝露保護層328に含まれる各層(
図4に示した第1正孔注入層402から第1保護用正孔輸送層416までの8個の層)を連続して形成する(
図5(a))。本工程で形成される有機EL層326に含まれる第1発光層408Rは、赤色の光を発する材料を含む。ここで、連続して形成するとは、各層を形成した後に、大気及び溶剤に曝露せずに次の層を形成することを意味する。
【0044】
次に、第1副画素52の下部電極324の上に、フォトレジスト500を配置する(
図5(b))。当該工程では、例えば、まず
図5(a)で塗布された第1発光層408の材料の全面にフォトレジスト500を塗布する。そして、フォトマスクを用いて第1副画素52の下部電極324の上にのみ紫外線を照射する。その後、溶剤によって紫外線により硬化されていないフォトレジスト500を洗浄することにより、
図5(b)に示すフォトレジスト500を形成する。
【0045】
次に、エッチングを行う(
図5(c))。具体的には、ドライエッチングにより、
図5(b)の工程でフォトレジスト500が配置されていない全て領域において、第1副画素52の有機EL層326及び曝露保護層328を除去する。エッチングにより、
図5(a)の工程で形成された有機EL層326及び曝露保護層328は、
図5(b)の工程で配置されたフォトレジスト500の下の領域のみ残される。
【0046】
次に、全面に、
図4に示した第2副画素54の有機EL層326及び曝露保護層328に含まれる各層(第1正孔注入層402から第1保護用正孔輸送層416までの8個の層)を連続して形成する(
図5(d))。本工程で形成される有機EL層326に含まれる第1発光層408Gは、緑色の光を発する材料を含む。
【0047】
次に、第2副画素54の下部電極324の上に、フォトレジスト500を配置する(
図6(a))。
図6(a)の工程は、フォトレジスト500が配置される位置を除き、
図5(b)に示す工程と同様である。
【0048】
次に、エッチングを行う(
図6(b))。具体的には、ドライエッチングにより、
図6(a)の工程でフォトレジスト500が配置されていない全て領域において、第2副画素54の有機EL層326及び曝露保護層328を除去する。エッチングにより、
図5(d)の工程で形成された有機EL層326及び曝露保護層328は、
図6(a)の工程で配置されたフォトレジスト500の下の領域のみ残される。
【0049】
次に、全面に、
図4に示した第3副画素56の有機EL層326及び曝露保護層328に含まれる各層(第1正孔注入層402から第1保護用正孔輸送層416までの8個の層)を連続して形成する(
図6(c))。本工程で形成される有機EL層326に含まれる第1発光層408Bは、青色の光を発する材料を含む。
【0050】
次に、第3副画素56の下部電極324の上に、フォトレジスト500を配置する(
図6(d))。
図6(d)の工程は、フォトレジスト500が配置される位置を除き、
図5(b)に示す工程と同様である。
【0051】
次に、エッチングを行う(
図7(a))。具体的には、ドライエッチングにより、
図6(d)の工程でフォトレジスト500が配置されていない全て領域において、第3副画素56の有機EL層326及び曝露保護層328を除去する。エッチングにより、
図6(c)の工程で形成された有機EL層326及び曝露保護層328は、
図6(d)の工程で配置されたフォトレジスト500の下の領域のみ残される。
【0052】
次に、隣接する副画素を区分するバンク334を隣接する副画素の間に配置する(
図7(b))。具体的には、例えば、メタルマスクを用いて、各副画素の間から
図5(a)乃至
図7(a)で形成した各層の端部にかけてバンク334の材料を堆積することで
図7(b)に示すようなバンク334を形成する。なお、バンク334は、メタルマスクを用いずにフォトリスグラフィによって形成されてもよい。
【0053】
次に、フォトレジスト500の一部を除去する(
図7(c))。具体的には、例えば、各副画素に配置されたフォトレジスト500のうち、バンク334に覆われていない領域をエッチングにより除去する。フォトレジスト500が除去された領域は、各副画素の光を取り出す領域(発光領域)となる。
【0054】
次に、上部電極44を形成する(
図7(d))。具体的には、例えば、上部電極44の材料となるITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜を全面に形成する。上部電極44は、各副画素に共通の層として形成されるため、各副画素の発光領域だけでなくバンク334の上にも形成される。その後、図示しない封止膜330及び保護膜336を上部電極44の上に形成することで、有機EL表示装置2は完成する。
【0055】
なお、
図7(d)に示すように、フォトレジスト500がバンク334の下に残存している。しかしながら、
図7(a)の工程の後で、フォトレジスト500を全て除去する工程を追加することにより、有機EL表示装置2は、フォトレジスト500が残存しない方法で製造されてもよい。
【0056】
上記のように、
図5(b)及び
図5(c)の工程では、フォトレジスト500の配置やエッチングのために、曝露保護層328の最上面は、大気や溶剤に曝露される。本実施形態では、曝露保護層328の最上面は第1保護用正孔輸送層416であり、曝露保護層328と上部電極44の間に発光層を形成しない。一般に正孔輸送層の材料は、電子輸送層や発光層の材料と比較して大気や溶剤に曝露されることによる劣化が少ない。従って、本実施形態によれば、曝露保護層328に含まれる第1保護用正孔輸送層416によって電子輸送層や発光層及を保護することにより、有機EL層326に含まれる電子輸送層や発光層が大気や溶剤に曝露されることで劣化することを防止することができる。また、第1保護用正孔輸送層416の材料を第1正孔注入層402と同一とし、新たな材料を不要とすることで製造コストの増加を抑えることができる。
【0057】
また、
図6(a)、
図6(b)、
図6(d)及び
図7(a)の工程では、
図5(b)及び
図5(c)の工程と同様、フォトレジスト500の配置やエッチングのために、曝露保護層328の最上面は、大気または溶剤に曝露される。従って、第1副画素52だけでなく第2副画素54及び第3副画素56の電子輸送層や発光層も大気や溶剤に曝露されることによる劣化を防止することができる。
【0058】
図8は、第1実施形態の変形例に係る有機EL層326及び曝露保護層328の層構成について説明するための図であって、下部電極324から上部電極44までの層構成を模式的に示す図である。変形例では、曝露保護層328の構成が異なる。変形例では、曝露保護層328は、副画素ごとに設けられた第1保護用正孔輸送層416の上側に接し、かつ、各副画素に共通に設けられた第2保護用正孔輸送層802がさらに積層された構成を有する。有機EL層326の構成は、上記実施形態と同じである。
【0059】
具体的には、変形例に係る第2保護用正孔輸送層802は、第1保護用正孔輸送層416と同じ材料を用いて、第1保護用正孔輸送層416の上に各副画素に共通の層として全体に形成される。また、第2保護用正孔輸送層802と上部電極44の間に発光層は形成されず、第2保護用正孔輸送層802は上部電極44と接している。上記のように、正孔輸送層の材料は、電子輸送層や発光層の材料と比較して大気や溶剤に曝露されることによる劣化が少ないものの、上記実施形態では、第1保護用正孔輸送層416は大気や溶剤に曝露されている。本変形例によれば、第1保護用正孔輸送層416が大気や溶剤に曝露されて特性に変化が生じたとしても、第1保護用正孔輸送層416を大気や溶剤に曝露されない第2保護用正孔輸送層802で覆うことにより、有機EL表示装置2全体としての特性変化を軽減することができる。変形例に係る第2保護用正孔輸送層802は、例えば、
図7(c)と
図7(d)の工程の間で形成される。
【0060】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態に係る有機EL層326及び曝露保護層328の層構成について説明するための図であって、下部電極324から上部電極44までの層構成を模式的に示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0061】
図9に示すように、第2実施形態では、有機EL層326が副画素毎に少なくとも発光層を2層以上含み、有機EL表示装置2はタンデム構造を有する。具体的には、有機EL層326は、第1正孔注入層402と、第1正孔輸送層404と、第1電子ブロック層406と、第1発光層408と、第1正孔ブロック層410と、電荷発生層と、第2正孔輸送層906と、第2電子ブロック層908と、第2発光層910と、第2正孔ブロック層912と、を有する。第1正孔注入層402から第1正孔ブロック層410までの構成は、第1実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0062】
電荷発生層は、第1正孔ブロック層410の上に配置される。具体的には、電荷発生層は、副画素ごとに、第1正孔ブロック層410の上に配置され、nCGL902(n-type Charge Generation Layer)と、pCGL904(p-type Charge Generation Layer)と、を含む。上部電極44と下部電極324に電圧が印加されることにより、nCGL902は電子を発生し、pCGL904は正孔を発生する。発生した電子は、第1発光層408に供給され、発生した正孔は、第2発光層910に供給される。
【0063】
第2正孔輸送層906は、電荷発生層の上に配置される。具体的には、例えば、第2正孔輸送層906は、副画素毎にpCGL904の上に設けられる。第2副画素54には赤色の光を発する副画素用の第2正孔輸送層906R(図中第2R-HTL)が配置される。第2副画素54には緑色の光を発する副画素用の第2正孔輸送層906G(図中第2G-HTL)が配置される。第3副画素56には青色の光を発する副画素用の第2正孔輸送層906B(図中第1B-HTL)が配置される。各第2正孔輸送層906は、各副画素が発する光の色に応じて適宜設定された膜厚及び材料で形成される。
【0064】
第2電子ブロック層908(図中第2EBL)は、第2正孔輸送層906の上に配置され、第2発光層910を貫通した電子が第2正孔輸送層906に到達することを防止する。
【0065】
第2発光層910は、第2電子ブロック層908の上に配置され、赤、緑、または、青色の光を発する。具体的には、第2発光層910は、第2電子ブロック層908の上に、副画素ごとに個別に形成される。例えば、上記のように画素は、赤色の光を発する第1副画素52と、緑色の光を発する第2副画素54と、青色の光を発する第3副素とを含む。この場合、第1副画素52の第2発光層910R(図中第2R-EML)は、赤い光を発する材料で形成され、第2副画素54の第2発光層910G(図中第2G-EML)は、緑の光を発する材料で形成され、第3副画素56の第2発光層910B(図中第2B-EML)は、青い光を発する材料で形成される。第2発光層910は、電荷発生層から供給された正孔と保護用nCGL412から供給された電子が結合することで発光する。
【0066】
第2正孔ブロック層912(図中第2HBL)は、第2発光層910の上に配置され、第2発光層910を貫通した正孔が第2電子輸送層に到達することを防止する。
【0067】
曝露保護層328は、有機EL層326の上に配置され、保護用電荷発生層と第1保護用正孔輸送層416を含む。曝露保護層328の構成は、第1実施形態と同様である。
【0068】
第2実施形態によれば、各副画素は2層の発光層を含み、2層の発光層がそれぞれ発光する。従って、第1実施形態と比較して輝度を向上することができる。
【0069】
また、第2実施形態では、
図5(a)に示す工程において、第1副画素52の第1正孔注入層402から第1保護用正孔輸送層416までの各層が形成される。
図5(d)に示す工程において、第2副画素54の第1正孔注入層402から第1保護用正孔輸送層416までの各層が形成される。
図6(c)に示す工程において、第3副画素56の第1正孔注入層402から第1保護用正孔輸送層416までの各層が形成される。第2実施形態においても、曝露保護層328の最上面は第1保護用正孔輸送層416であり、曝露保護層328と上部電極44の間に発光層を有しない。従って、第2実施形態においても、曝露保護層328に含まれる第1保護用正孔輸送層416によって電子輸送層や発光層及を保護することにより、有機EL層326に含まれる電子輸送層や発光層が大気や溶剤に曝露されることで劣化することを防止することができる。
【0070】
図10は、第2実施形態の変形例に係る有機EL層326及び曝露保護層328の層構成について説明するための図であって、下部電極324から上部電極44までの層構成を模式的に示す図である。本変形例は、第1実施形態の変形例と同様、有機EL層326の構成は、上記実施形態と同じである。曝露保護層328は、副画素ごとに設けられた第1保護用正孔輸送層416の上側に接し、かつ、各副画素に共通に設けられた第2保護用正孔輸送層802がさらに積層された構成を有する。
【0071】
本変形例においても、第1保護用正孔輸送層416の上に接して同じ材料で第2保護用正孔輸送層802を形成することにより、有機EL表示装置2全体としての特性変化を軽減することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成、または同一の目的を達成することができる構成により置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0073】
2 有機EL表示装置、4 画素アレイ部、6 OLED、8 画素回路、10 点灯TFT、12 駆動TFT、14 キャパシタ、20 走査線駆動回路、22 映像線駆動回路、24 駆動電源回路、26 制御装置、28 走査信号線、30 映像信号線、32 駆動電源線、42 表示領域、44 上部電極、46 部品実装領域、48 ドライバIC、50 FPC、52 第1副画素、54 第2副画素、56 第3副画素、300 基板、304 アンダーコート層、306 半導体層、308 ゲート絶縁膜、310 ゲート電極、312 パシベーション膜、314 ドレイン電極、316 ソース電極、318 層間絶縁膜、320 接続電極、322 平坦化膜、324 下部電極、326 有機EL層、328 曝露保護層、330 封止膜、334 バンク、336 保護膜、402 第1正孔注入層、404R, 404G, 404B 第1正孔輸送層、406 第1電子ブロック層、408R, 408G, 408B 第1発光層、410 第1正孔ブロック層、412 保護用nCGL、414 保護用pCGL、416 第1保護用正孔輸送層、500 フォトレジスト、802 第2保護用正孔輸送層、902 nCGL、904 pCGL、906R, 906G, 906B 第2正孔輸送層、908 第2電子ブロック層、910R, 910G, 910B 第2発光層、912 第2正孔ブロック層。