(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161859
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20231031BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H02M3/00 U
H02M3/00 B
H02J7/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072470
(22)【出願日】2022-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】山根 康平
【テーマコード(参考)】
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BB03
5G503CA12
5G503DA04
5G503GB03
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB86
5H730EE57
5H730FD11
5H730FF05
5H730XC02
5H730XC12
(57)【要約】
【課題】キャパシタに電力を蓄える方式において、ヒステリシスの幅を広くする。
【解決手段】電源装置は、入力キャパシタ、降圧DC/DCコンバータ、降圧制御部、電力蓄積キャパシタ、昇圧DC/DCコンバータ、昇圧制御部を備える。降圧DC/DCコンバータは、入力キャパシタの入力電位を降圧させる。降圧制御部は、第1入力基準を満たすときに降圧を開始させ、第2入力基準を満たさないときに降圧を停止させる。電力蓄積キャパシタは、大容量であり、降圧DC/DCコンバータが出力する電荷を蓄積する。昇圧DC/DCコンバータは、蓄積電位から出力電位まで昇圧して電力を出力する。昇圧制御部は、起動基準を満たすときに昇圧を開始させ、維持基準を満たさないときに昇圧を停止させる。起動基準を満たす蓄積電位は、維持基準を満たす蓄積電位よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電荷を蓄積する入力キャパシタと、
前記入力キャパシタの一端の電位である入力電位を降圧させる降圧DC/DCコンバータと、
前記入力電位があらかじめ定めた第1入力基準を満たすときに前記降圧DC/DCコンバータに前記入力電位の降圧を開始させ、前記入力電位があらかじめ定めた第2入力基準を満たさないときに前記降圧DC/DCコンバータに前記入力電位の降圧を停止させる降圧制御部と、
前記入力キャパシタよりも大容量であり、前記降圧DC/DCコンバータが出力する電荷を蓄積する電力蓄積キャパシタと、
前記電力蓄積キャパシタの一端の電位である蓄積電位から、あらかじめ定めた出力電位まで昇圧して電力を出力する昇圧DC/DCコンバータと、
前記蓄積電位があらかじめ定めた起動基準を満たすときに前記昇圧DC/DCコンバータに昇圧を開始させ、前記蓄積電位があらかじめ定めた維持基準を満たさないときに前記昇圧DC/DCコンバータに昇圧を停止させる昇圧制御部と、
を備え、
前記第1入力基準を満たすための入力電位は、前記第2入力基準を満たすための入力電位よりも高く、
前記起動基準を満たすための蓄積電位は、前記維持基準を満たすための蓄積電位よりも高い
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記昇圧制御部は、
前記蓄積電位である前記電力蓄積キャパシタの一端と、前記昇圧DC/DCコンバータとの間に配置された昇圧制御スイッチと、
前記蓄積電位があらかじめ定めた起動基準を満たすときに前記昇圧制御スイッチを接続状態にする起動制御部と、
前記蓄積電位があらかじめ定めた維持基準を満たさないときに前記昇圧制御スイッチを切断状態にする停止制御部と、
を有することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2記載の電源装置であって、
前記起動制御部は、前記入力キャパシタに蓄積された電荷を用いて動作し、
前記停止制御部は、前記出力電位を用いて動作する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1記載の電源装置であって、
前記昇圧制御部は、昇圧制御スイッチと起動制御部と停止制御部を有し、
前記起動制御部は、前記入力キャパシタに蓄積された電荷を用いて動作し、
前記停止制御部は、前記出力電位を用いて動作し、
前記起動制御部は、前記入力電位が当該起動制御部を動作させることができる電位であり、かつ、前記蓄積電位があらかじめ定めた起動基準を満たすときに、所定状態の出力をし、
前記停止制御部は、前記昇圧DC/DCコンバータの出力が当該停止制御部を動作させることができる電位であり、かつ、前記蓄積電位があらかじめ定めた維持基準を満たすときに、前記所定状態と同じ状態の出力をし、
前記昇圧制御スイッチは、前記蓄積電位である前記電力蓄積キャパシタの一端と、前記昇圧DC/DCコンバータとの間に配置されており、前記起動制御部の出力または前記停止制御部の出力が前記所定状態のときに接続状態である
ことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の電源装置であって、
前記降圧DC/DCコンバータ、前記降圧制御部は、前記入力キャパシタに蓄積された電荷を用いて動作する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項3または4記載の電源装置であって、
前記昇圧DC/DCコンバータ、前記昇圧制御スイッチは、前記電力蓄積キャパシタに蓄積された電荷を用いて動作する
ことを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電力を供給する電力源からの電力を入力とし、負荷回路に電力を供給するための電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギを利用した電力源からの電力を入力とし、負荷回路に電力を供給するための電源装置としては、二次電池に電力を蓄える方式とキャパシタに電力を蓄える方式がある。キャパシタに電力を蓄える方式は、二次電池に電力を蓄える方式よりも標高の高い地域または寒冷地での使用を想定した環境発電に適している。キャパシタに電力を蓄える方式では、特許文献1などが知られている。特許文献1の
図1を、
図1に示す。特許文献1の要約には、課題として『自然エネルギを利用して発電した微弱な電力で過大な負荷を駆動できる電源装置を提供する。』と示され、解決手段として『電源装置は、太陽電池等の自然エネルギを利用して発電する発電素子GEを含む電源10の出力端子T1と接続されて、端子T2に電源10から供給される電力を充電する容量SCと、充電電力の放電を制御する電力制御回路12と、所定の電圧を出力するレギュレータ13とを備え、容量に充電された電力で負荷14を駆動する。』と示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では電力供給のヒステリシス機構を、コンパレータおよび基準電圧源を用いて制御し、実現している。二次電池やバックアップ電池に頼らずキャパシタのみから電力を供給する場合、負荷への放電が進むにつれてキャパシタの電圧が下がるため、電力供給停止を判断する制御回路の動作電圧を確保できなくなるため、停止閾値電圧を制御回路の最低動作電圧以下に下げることができなかった。したがって、ヒステリシスの幅(負荷に電力を供給できるキャパシタの電圧の幅)を大きくとることが困難であった。
【0005】
本発明は、キャパシタに電力を蓄える方式において、ヒステリシスの幅を広くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源装置は、入力キャパシタ、降圧DC/DCコンバータ、降圧制御部、電力蓄積キャパシタ、昇圧DC/DCコンバータ、昇圧制御部を備える。入力キャパシタは、入力された電荷を蓄積する。降圧DC/DCコンバータは、入力キャパシタの一端の電位である入力電位を降圧させる。降圧制御部は、入力電位があらかじめ定めた第1入力基準を満たすときに降圧DC/DCコンバータに入力電位の降圧を開始させ、入力電位があらかじめ定めた第2入力基準を満たさないときに降圧DC/DCコンバータに入力電位の降圧を停止させる。第1入力基準を満たすための入力電位は、第2入力基準を満たすための入力電位よりも高い。電力蓄積キャパシタは、入力キャパシタよりも大容量であり、降圧DC/DCコンバータが出力する電荷を蓄積する。昇圧DC/DCコンバータは、電力蓄積キャパシタの一端の電位である蓄積電位から、あらかじめ定めた出力電位まで昇圧して電力を出力する。昇圧制御部は、蓄積電位があらかじめ定めた起動基準を満たすときに昇圧DC/DCコンバータに昇圧を開始させ、蓄積電位があらかじめ定めた維持基準を満たさないときに昇圧DC/DCコンバータに昇圧を停止させる。起動基準を満たすための蓄積電位は、維持基準を満たすための蓄積電位よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電源装置によれば、昇圧を開始させる起動基準を満たす蓄電電位と、昇圧を維持させる維持基準を満たす蓄電電位との幅を広く設定しやすい。したがって、キャパシタに電力を蓄える方式において、ヒステリシスの幅を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の電源装置の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0010】
図2に本発明の電源装置に機能構成例を示す。
図3は、本発明の電源装置の動作を説明するための図である。本発明の電源装置200は、入力キャパシタ210、降圧DC/DCコンバータ230、降圧制御部220、電力蓄積キャパシタ240、昇圧DC/DCコンバータ290、昇圧制御部280を備える。
【0011】
入力キャパシタ210は、電力源910から入力された電荷を蓄積する。電力源910とは、例えば、振動発電素子、圧電素子、太陽電池などの環境発電用の電源であり、微小電力を供給する。入力キャパシタの一端の電位は入力電位Vcinであり、他端は直接もしくは抵抗などを介して接地すればよい。入力キャパシタ210は、少ない電荷でも入力電位Vcinが高くなるように小さい容量のコンデンサを用いればよい。例えば、入力キャパシタ210には、容量が数10μF程度のセラミックコンデンサを利用すればよい。例えば、入力電位Vcinの最大値が12Vとなるように容量を選択してもよいし、最大値が35Vとなるように容量を選択してもよい。
【0012】
降圧DC/DCコンバータ230は、入力電位V
cinを降圧させる。例えば、降圧DC/DCコンバータ230は、電位を3.3V以下まで降圧し、電荷を電力蓄積キャパシタ240に蓄積する。降圧DC/DCコンバータ230は、入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて動作すればよい。なお、
図2の構成では、電源レール310内の構成部は、入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて動作する。「入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて動作する」とは、入力電位V
cinが降圧DC/DCコンバータ230、降圧制御部220などを動作させるために必要な電位V
cinEよりも高いときに、入力キャパシタ210から供給される電力で動作することを意味している。
【0013】
降圧制御部220は、入力電位Vcinがあらかじめ定めた第1入力基準を満たすときに降圧DC/DCコンバータ230に入力電位の降圧を開始させ、入力電位があらかじめ定めた第2入力基準を満たさないときに降圧DC/DCコンバータに入力電位の降圧を停止させる。第1入力基準を満たすための入力電位(第1基準電位VinH)は、第2入力基準を満たすための入力電位(第2基準電位VinL)よりも高い。降圧制御部220は、入力キャパシタに蓄積された電荷を用いて動作すればよい。入力キャパシタ210は容量が小さいため入力電位Vcinを高くしやすい。よって、降圧DC/DCコンバータ230、降圧制御部220などを動作させるために必要な電位VcinEは、第2入力基準を満たすための入力電位(第2基準電位VinL)よりも十分低くできる。
【0014】
電力蓄積キャパシタ240は、入力キャパシタ210よりも大容量であり、降圧DC/DCコンバータ230が出力する電荷を蓄積する。言い換えると、降圧DC/DCコンバータ230は、電位を降圧させながら、電荷を入力キャパシタ210から電力蓄積キャパシタ240に移動させる。電力蓄積キャパシタ240の一端の電位は蓄積電位Vcであり、他端は直接もしくは抵抗などを介して接地すればよい。電力蓄積キャパシタ240の容量は、例えば、蓄積電位Vcの最大値が3.3Vもしくは5Vとなるように設定すればよい。電力蓄積キャパシタ240には、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electrical Double Layer Capacitor)、リチウムイオンキャパシタなどの大容量を特徴とするコンデンサを用いればよい。電気二重層キャパシタなどの大容量を特徴とするキャパシタは、二次電池と比べると充放電の繰り返しや低温環境に対して強いため、標高の高い地域、寒冷地などでの使用に適している。
【0015】
図2では、降圧制御部220は、ヒステリシスコンパレータ221、直流電源222、降圧制御スイッチ223を有する。直流電源222が供給する電位V
inも、入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて生成すればよい(入力電位V
cinを用いて生成すればよい)。ヒステリシスコンパレータ221は電位V
inに基づいて第1基準電位V
inHと第2基準電位V
inLを設定する。そして、ヒステリシスコンパレータ221は、入力電位V
cinが第1基準電位V
inH以上になったときに降圧制御スイッチ223が接続状態(降圧DC/DCコンバータ230が入力電位V
cinを降圧させる状態)となるよう制御し、その後、入力電位V
cinが第2基準電位V
inL未満になったときに降圧制御スイッチ223が切断状態(降圧DC/DCコンバータ230が入力電位V
cinの降圧を停止する状態)となるよう制御する。例えば、ヒステリシスコンパレータ221の出力がHigh状態のときに降圧制御スイッチ223が接続状態、ヒステリシスコンパレータ221の出力がLow状態のときに降圧制御スイッチ223が切断状態となるように設定すればよい。
【0016】
昇圧DC/DCコンバータ290は、電力蓄積キャパシタ240の一端の電位である蓄積電位V
cから、あらかじめ定めた出力電位V
outまで昇圧して電力を出力する。例えば、昇圧DC/DCコンバータ290は、蓄積電位V
cが1.0~3.3Vのときに3.3Vを出力するような機能、もしくは、2.0~5.0Vのときに5.0Vを出力するような機能を有する。このように、昇圧DC/DCコンバータ290は、あらかじめ定めた電位(電位の範囲)で電力を負荷920に供給する。昇圧DC/DCコンバータ290は、電力蓄積キャパシタ240に蓄積された電荷を用いて動作する。なお、
図2の構成では、電源レール320内の構成部は、電力蓄積キャパシタ240に蓄積された電荷を用いて動作する。なお、電源レール320内の構成部は、後述する停止基準電位V
Lよりも低い電位V
cEで動作できるようにしておく。「電力蓄積キャパシタ240に蓄積された電荷を用いて動作する」とは、蓄積電位V
cが構成部を動作させるために必要な電位V
cEよりも高いときに、電力蓄積キャパシタ240ら供給される電力で動作することを意味している。
【0017】
昇圧制御部280は、蓄積電位Vcがあらかじめ定めた起動基準を満たすときに昇圧DC/DCコンバータ290に昇圧を開始させ、蓄積電位があらかじめ定めた維持基準を満たさないときに昇圧DC/DCコンバータ290に昇圧を停止させる。起動基準を満たすための蓄積電位(起動基準電位VH)は、維持基準を満たすための蓄積電位(言い換えると、維持基準を満たさないときに停止させる基準電位である停止基準電位VL)よりも高い。例えば、昇圧DC/DCコンバータ290が、蓄積電位Vcが1.0~3.3Vのときに3.3Vを出力する機能を有する場合、起動基準電位VHを3.3Vとし、停止基準電位VLを1.0Vのように設定すればよい。
【0018】
昇圧制御部280は、昇圧制御スイッチ283、起動制御部250、停止制御部260、OR回路270を有する。昇圧制御スイッチ283は、蓄積電位V
cである電力蓄積キャパシタ240の一端と、昇圧DC/DCコンバータ290との間に配置される。起動制御部250は、蓄積電位V
cがあらかじめ定めた起動基準を満たすときに昇圧制御スイッチ283を接続状態にする。停止制御部260は、蓄積電位V
cがあらかじめ定めた維持基準を満たさないときに昇圧制御スイッチ283を切断状態にする。昇圧制御スイッチ283は、電力蓄積キャパシタ240に蓄積された電荷を用いて動作する。起動制御部250は、入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて動作し、停止制御部260は、出力電位V
outを用いて動作すればよい。
図2の構成では、電源レール330内の構成部である停止制御部260は、出力電位V
outを用いて動作する(昇圧DC/DCコンバータ290から供給される電力で動作する)。
【0019】
起動制御部250は、コンパレータ251と直流電源252を有する。直流電源252が供給する電位VHも、入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて生成すればよい(入力電位Vcinを用いて生成すればよい)。コンパレータ251は、蓄積電位Vcが起動基準電位VH以上になったときに昇圧制御スイッチ283が接続状態(昇圧DC/DCコンバータ290が蓄積電位Vcを昇圧させる状態)となるよう制御する。例えば、コンパレータ251の出力がHigh状態のときに昇圧制御スイッチ283が接続状態となるようにすればよい。言い換えると、起動制御部250は、入力電位Vcinが起動制御部250を動作させることができる電位であり、かつ、蓄積電位Vcがあらかじめ定めた起動基準を満たすときに、所定状態(例えば、High状態)を出力すればよい。
【0020】
停止制御部260は、コンパレータ261と直流電源262を有する。直流電源262が供給する電位VLは、出力電位Voutを用いて生成すればよい。コンパレータ261は、蓄積電位Vcが停止基準電位VL未満になったときに昇圧制御スイッチ283が切断状態(昇圧DC/DCコンバータ290が蓄積電位Vcの昇圧を停止する状態)となるよう制御する。例えば、コンパレータ261の出力がLow状態のとき(維持基準を満たさないとき)に昇圧制御スイッチ283が切断状態となるようにすればよい。言い換えると、停止制御部260は、昇圧DC/DCコンバータの出力電位Voutが停止制御部260を動作させることができる電位であり、かつ、蓄積電位Vcがあらかじめ定めた維持基準を満たすときに、上述の所定状態(例えば、High状態)と同じ状態を出力すればよい。
【0021】
昇圧制御スイッチ283は、蓄積電位Vcである電力蓄積キャパシタ240の一端と、昇圧DC/DCコンバータ290との間に配置されている。OR回路270は、2つのダイオード271,272を有し、起動制御部250の出力または停止制御部260の出力が上述の所定状態(例えば、High状態)のときに、昇圧制御スイッチ283を接続状態にする。
【0022】
本発明の昇圧制御部280によれば、昇圧DC/DCコンバータ290に昇圧を開始させる起動基準電位VHと昇圧DC/DCコンバータ290の昇圧を停止させる停止基準電位VLとの差を大きくできる。したがって、キャパシタに電力を蓄える方式において、ヒステリシスの幅を広くすることができる。
【0023】
次に、
図3を用いて、電源装置の動作を説明する。(A)の縦軸は入力電位V
cinを、(B)の縦軸は蓄積電位V
cを、(C)の縦軸は出力電位V
Oを示している。いずれの図も横軸は時間である。初期状態として入力キャパシタ210にも電力蓄積キャパシタ240にも電荷は蓄えられていないとする。つまり、入力電位V
cin=0、蓄積電位V
c=0、出力電位V
O=0である。時刻T
in-on1から電力源910が電荷を供給し始めたとする。入力電位V
cinは次第に上昇し、電源レール310内の構成部を動作させることができる電位V
cinEを超えると、降圧DC/DCコンバータ230、降圧制御部220、起動制御部250が動作できる状態になる。
【0024】
時刻T221-highに、入力電位Vcinが第1基準電位VinHに達すると、降圧制御部220が降圧DC/DCコンバータ230に入力電位の降圧を開始させ、電荷が入力キャパシタ210から電力蓄積キャパシタ240に移動する。よって、入力電位Vcinは低下し、蓄積電位Vcは上昇する。時刻T221-lowに、入力電位Vcinが第2基準電位VinLに達すると、降圧制御部220が降圧DC/DCコンバータ230に入力電位の降圧を停止させる。したがって、入力キャパシタ210から電力蓄積キャパシタ240への電荷の移動は止まる。よって、入力電位Vcinは上昇し、蓄積電位Vcは一定となる。この処理を繰り返しながら、電力蓄積キャパシタ240には次第に電荷が蓄積される。
【0025】
時刻T320-onに、蓄積電位Vcが電位VcEに達すると、昇圧DC/DCコンバータ290と昇圧制御スイッチ283が動作できる状態になる。その後も、電力源910が電荷を供給し続ければ、電力蓄積キャパシタ240には次第に電荷が蓄積される。
【0026】
時刻T
250-highに、蓄積電位V
cが起動基準電位V
Hに達すると、起動制御部250からの出力がHigh状態となる。
図2の例では、ダイオード271側がHigh状態なので、OR回路270からの出力もHigh状態となる。そして、昇圧制御スイッチ283が接続状態となるので、昇圧DC/DCコンバータ290が、蓄積電位V
cをあらかじめ定めた出力電位V
outまで昇圧して電力を出力する(V
O=V
out)。蓄積電位V
cが起動基準電位V
Hに達してから出力電位V
outが提供されるまでには、一般的には、少しだが時間の差がある。よって、時刻T
250-highから少し遅れて、停止制御部260が動作可能になり(時刻T
330-on)、停止制御部260からの出力がHigh状態となる(時刻T
260-high)。このときは、ダイオード271側もダイオード272側もHigh状態であり、OR回路270からの出力もHigh状態である。
【0027】
電力蓄積キャパシタ240の電荷を用いて負荷920に電力を供給するので、電力源910からの電荷の供給よりも、出力する電荷が多いと蓄積電位Vcは下がる。蓄積電位Vcが起動基準電位VHよりも低くなると、起動制御部250からの出力がLow状態となる(時刻T250-low)。このときは、ダイオード271側はLow状態になるが、ダイオード272側がHigh状態なので、OR回路270からの出力はHigh状態を維持する。したがって、出力電位VOはVoutを維持する。その後は、電力源910からの電荷の供給と出力する電荷の程度によって、蓄積電位Vcは変動する。
【0028】
例えば、
図3に示すように、時刻T
in-offに電力源910からの電荷の供給が止まった場合、次第に蓄積電位V
cは下がる。蓄積電位V
cが停止基準電位V
Lよりも低くなると、停止制御部260からの出力がLow状態となり(時刻T
260-low)、ダイオード271側もダイオード272側もLow状態となるので、OR回路270からの出力もLow状態となる。そして、昇圧DC/DCコンバータ290からの出力電位V
Oは、0Vとなる(時刻T
330-off)。なお、電力源910からの電荷の供給が止まらなくても、負荷920での電力消費が大きいことが原因で蓄積電位V
cが停止基準電位V
Lよりも低くなった場合も、同様に動作する。
【0029】
再び、時刻Tin-on2から、電力源910が電荷を供給し始めると、電力蓄積キャパシタ240への電荷の蓄積が始まり、蓄積電位Vcが上昇する。
【0030】
電源装置200によれば、昇圧を開始させる起動基準を満たす蓄電電位(起動基準電位VH)と、昇圧を維持させる維持基準を満たす蓄電電位(停止基準電位VL)との幅を広く設定しやすい。したがって、キャパシタに電力を蓄える方式において、ヒステリシスの幅を広くすることができ、安定的に電力を供給しやすい。また、キャパシタに電力を蓄える方式なので、二次電池を用いる方式と比べると充放電の繰り返しや低温環境に対して強いため、標高の高い地域、寒冷地などでの使用に適している。
【0031】
起動制御部250を入力キャパシタ210に蓄積された電荷を用いて動作させ、停止制御部260を出力電位で動作させることで、
図3を用いて説明したように動作させることができる。このときは、昇圧DC/DCコンバータ290があらかじめ定めた電位を出力できる入力電位の範囲に蓄電電位V
cがあれば、出力電位V
outを出力できる。つまり、起動基準電位V
Hと停止基準電位V
Lを、昇圧DC/DCコンバータ290への入力電位の許容範囲の最高値と最低値に設定することも可能である。よって、さらにヒステリシスの幅を広く設定しやすい。