(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161864
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/248 20160101AFI20231031BHJP
【FI】
H01M8/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072475
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】島倉 泰博
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126JJ00
(57)【要約】
【課題】エンドプレートからセルスタックに作用する圧力が高くなることを抑制できる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池は、セルスタック11と、エンドプレート12と、を備える。セルスタック11は、複数の燃料電池セル13を厚さ方向に積層することによって形成されている。エンドプレート12は、セルスタック11における燃料電池セル13の積層方向の両側にそれぞれ配置され、互いに締結されることによってセルスタック11を上記積層方向に押圧する。エンドプレート12は、セルスタック11に接する第1部材15と、その第1部材15の周囲を囲む第2部材16と、を備える。第1部材15は、第2部材16よりも熱膨張係数の小さい材料によって形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルスタックと、エンドプレートと、を備え、
前記セルスタックは、複数の燃料電池セルを厚さ方向に積層することによって形成されており、
前記エンドプレートは、前記セルスタックにおける前記燃料電池セルの積層方向の両側にそれぞれ配置され、互いに締結されることによって前記セルスタックを前記積層方向に押圧するものとされている燃料電池において、
前記エンドプレートは、前記セルスタックに接する第1部材と、その第1部材の周囲を囲む第2部材と、を備え、
前記第1部材は、前記第2部材よりも熱膨張係数の小さい材料によって形成されている燃料電池。
【請求項2】
前記エンドプレートの前記第1部材は、前記セルスタックにおける前記エンドプレートに接する箇所のうち、発熱量が他の箇所よりも大きい箇所に接するように配置されている請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記第1部材は、前記セルスタックにおける前記エンドプレートに接する箇所のうち、発熱量が他の箇所よりも大きい箇所全体と接する形状に形成されている請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第2部材は、前記第1部材よりも熱伝導率の高い材料によって形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第2部材に囲まれつつ前記エンドプレートの外部に露出している請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セルスタックとエンドプレートとを備えた燃料電池が記載されている。この燃料電池のセルスタックは、複数の燃料電池セルを厚さ方向に積層することによって形成されている。燃料電池のエンドプレートは、セルスタックにおける燃料電池セルの積層方向の両側にそれぞれ配置されている。これらエンドプレートは、外縁部同士をボルト等によって互いに締結することにより、セルスタックを上記積層方向に押圧するものとなっている。
【0003】
燃料電池は、セルスタックの各燃料電池セルに対し水素等の燃料ガスと空気等の酸化ガスとを供給することによって発電を行う。上記燃料電池では、セルスタックを上述したように燃料電池セルの積層方向に押圧することにより、次のような効果が得られる。すなわち、燃料電池セル内及び燃料電池セル同士の電気抵抗(接触抵抗)を低減したり、燃料電池セル内及び燃料電池セル同士における燃料ガス及び酸化ガスといった流体のシール性を確保したりすることができる。その結果、燃料電池の性能を十分に発揮できる。
【0004】
特許文献1には、エンドプレートの母材の内部に、その母材よりも熱膨張係数の大きいスチール補強材を埋め込むことが記載されている。この場合、エンドプレートの製造時にスチール補強材が母材よりも大きく熱膨張することにより、湾曲したエンドプレートを形成することができる。そして、湾曲するエンドプレートを、セルスタックに向けて突出した状態となるよう、同セルスタックにおける上記積層方向の両側に配置する。この状態で、エンドプレートにおける外縁同士をボルト等によって互いに締結することにより、セルスタックがエンドプレートによって上記積層方向に押圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料電池の発電に伴ってセルスタックが発熱するときには、セルスタックの熱がエンドプレートにおけるセルスタックと接触している箇所に伝達されやすくなる。このため、エンドプレートにおけるセルスタックと接触している箇所は、熱膨張しやすくなる。一方、エンドプレートにおけるセルスタックと接触している箇所の周囲、すなわちエンドプレートの外縁は、熱膨張しにくくなる。
【0007】
上述したように、エンドプレートにおけるセルスタックに接触する箇所は、その箇所の周囲よりも熱膨張しやすい。このため、上記箇所がその周囲よりも大きく熱膨張することにより、上記箇所によるセルスタックに対する上記積層方向についての押圧が強くなるおそれがある。そして、上記箇所によるセルスタックに対する押圧が強くなると、上記箇所からセルスタックに作用する圧力が、燃料電池の性能を低下させるほど高くなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する燃料電池は、セルスタックと、エンドプレートと、を備える。セルスタックは、複数の燃料電池セルを厚さ方向に積層することによって形成されている。エンドプレートは、セルスタックにおける燃料電池セルの積層方向の両側にそれぞれ配置され、互いに締結されることによってセルスタックを上記積層方向に押圧する。上記エンドプレートは、セルスタックに接する第1部材と、その第1部材の周囲を囲む第2部材と、を備える。上記第1部材は、上記第2部材よりも熱膨張係数の小さい材料によって形成されている。
【0009】
上記構成によれば、エンドプレートにおけるセルスタックに接する第1部材の熱膨張係数が、その第1部材の周囲を囲む第2部材の熱膨張係数よりも小さくされる。その結果、発電時におけるセルスタックの発熱に伴ってエンドプレートが熱膨張するとき、エンドプレートの第1部材が、その第1部材の周囲に位置する第2部材よりも、熱膨張しにくくなる。このため、セルスタックの発熱に伴ってエンドプレートが熱膨張するとき、エンドプレートの第1部材が第2部材よりも大きく熱膨張することは抑制される。そして、第1部材が第2部材よりも大きく熱膨張することを抑制することにより、第1部材によるセルスタックに対する上記積層方向についての押圧が強くなることを抑制できる。従って、第1部材によるセルスタックに対する上記積層方向についての押圧が強くなることに伴い、第1部材からセルスタックに作用する圧力が、燃料電池の性能を低下させるほど高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】上記燃料電池のエンドプレートを
図1のセルスタック側から見た状態を示す底面図。
【
図3】エンドプレートにおける第1部材の他の例を示す底面図。
【
図4】エンドプレートにおける第1部材の他の例を示す底面図。
【
図5】燃料電池におけるエンドプレートの他の例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、燃料電池の一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示すように、燃料電池は、セルスタック11とエンドプレート12とを備えている。セルスタック11は、複数の燃料電池セル13を厚さ方向に積層することによって形成されている。燃料電池は、セルスタック11の各燃料電池セル13に対し、水素等の燃料ガスと空気等の酸化ガスとを供給することによって発電を行う。また、セルスタック11の各燃料電池セル13には、冷却水等の冷媒も流される。燃料ガス、酸化ガス、及び冷媒といった流体は、セルスタック11における各燃料電池セル13を通過した後、セルスタック11の外部に排出される。
【0012】
エンドプレート12は、セルスタック11を燃料電池セル13の積層方向の両側にそれぞれ配置されている。これらエンドプレート12は、外縁部同士をボルト14によって互いに締結することにより、セルスタック11を上記積層方向に押圧している。燃料電池では、セルスタック11を上述したように燃料電池セル13の層方向に押圧することにより、次のような効果が得られる。すなわち、燃料電池セル13内及び燃料電池セル13同士の電気抵抗(接触抵抗)を低減したり、燃料電池セル13内及び燃料電池セル13同士における燃料ガス、酸化ガス、及び冷媒といった流体のシール性を確保したりすることができる。その結果、燃料電池の性能を十分に発揮できる。
【0013】
<エンドプレート12>
図2は、
図1のエンドプレート12をセルスタック11側から見た状態を示している。
図1及び
図2に示すように、エンドプレート12は、セルスタック11に接する第1部材15と、その第1部材15周囲を囲む第2部材16と、を備えている。第1部材15は、第2部材16に対し固定されている。第1部材15は、第2部材16よりも熱膨張係数の小さい材料によって形成されている。第2部材16は、第1部材15よりも熱伝導率の高い材料によって形成されている。
【0014】
次に、本実施形態の燃料電池の作用効果について説明する。
(1)エンドプレート12におけるセルスタック11に接する第1部材15の熱膨張係数が、その第1部材15の周囲を囲む第2部材16の熱膨張係数よりも小さくされる。その結果、発電時におけるセルスタック11の発熱に伴ってエンドプレート12が熱膨張するとき、エンドプレート12の第1部材15が、その第1部材15の周囲に位置する第2部材16よりも、熱膨張しにくくなる。
【0015】
このため、セルスタック11の発熱に伴ってエンドプレート12が熱膨張するとき、エンドプレート12の第1部材15が第2部材16よりも大きく熱膨張することは抑制される。そして、第1部材15が第2部材16よりも大きく熱膨張することを抑制することにより、第1部材15によるセルスタック11に対する上記積層方向についての押圧が強くなることを抑制できる。従って、第1部材15によるセルスタック11に対する上記積層方向についての押圧が強くなることに伴い、第1部材15からセルスタック11に作用する圧力が、燃料電池の性能を低下させるほど高くなることを抑制できる。
【0016】
(2)第1部材15の周囲に配置されている第2部材16は、第1部材15よりも熱伝導率の高い材料によって形成されている。このため、セルスタック11の熱がエンドプレート12の第1部材15に伝達されたとき、その熱を第2部材16からエンドプレート12の外部に効率よく放出することができる。
【0017】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・エンドプレート12の第1部材15は、セルスタック11におけるエンドプレート12に接する箇所のうち、発熱量が他の箇所よりも大きい箇所に接するように配置されていてもよい。この場合、第1部材15は、セルスタック11におけるエンドプレート12に接する箇所のうち、発熱量が他の箇所よりも大きい箇所全体と接する形状に形成されていることが好ましい。こうした第1部材15の例を
図3及び
図4に示す。
【0018】
上記構成によれば、セルスタック11の熱がエンドプレート12に伝達されたとき、第1部材15は第2部材16よりも高温になりやすい。しかし、第1部材15の熱膨張係数が第2部材16の熱膨張係数よりも小さいため、第1部材15は第2部材16よりも熱膨張しにくい。従って、第1部材15が第2部材16よりも大きく熱膨張することを抑制でき、第1部材15によるセルスタック11に対する上記積層方向についての押圧が強くなることを抑制できる。
【0019】
・エンドプレート12の第2部材16に放熱のための加工を施してもよい。
・
図5に示すように、第1部材15は、第2部材16に囲まれつつエンドプレート12の外部に露出するものとしてもよい。この場合、セルスタック11の熱がエンドプレート12の第1部材15に伝達されたとき、その熱を第1部材15からエンドプレート12の外部に効率よく放出することができる。また、第1部材15に放熱のための加工を施してもよい。
【符号の説明】
【0020】
11…セルスタック
12…エンドプレート
13…燃料電池セル
14…ボルト
15…第1部材
16…第2部材