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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161881
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】外壁用役物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20231031BHJP
   E04F 19/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E04F13/08 101Q
E04F19/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072503
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 智弘
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA14
2E110AA42
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB28
2E110BA12
2E110CA13
2E110CC02
2E110CC14
2E110CC25
2E110DB14
2E110DB22
2E110DC04
2E110DC36
2E110DD01
2E110DD09
2E110EA06
2E110GA33W
2E110GA33Z
2E110GB02W
2E110GB02Z
2E110GB03W
2E110GB03Z
2E110GB05W
2E110GB05Z
2E110GB06W
2E110GB06Z
2E110GB07W
2E110GB07Z
2E110GB43W
2E110GB43Z
2E110GB48W
2E110GB48Z
2E110GB53Z
2E110GB54Z
(57)【要約】
【課題】外壁の入隅に設けられる外壁用役物において、施工性の向上を図る。
【解決手段】外壁基部に固定されるベース材と、外装パネルの入隅側端面相互の間隙を覆うカバー材とを備え、ベース材は、外壁基部の取付面に固定される第1固定片および第2固定片と、それら固定片相互間に設けられる係合溝とを有し、カバー材は、外装パネルの外側面に沿って配される第1カバー部および第2カバー部と、それらカバー部の内側面に設けられる係合片とを有し、係合片は、カバー部の内側面にカバー幅方向に離間して並設され、先端部に行くに従い離反するようにベース材側に向かって突出形成される一対の脚部と、先端部に外向きに折り返して形成される爪部とを有し、係合溝は、脚部を挿入可能な開口部と、開口部の内側縁に突設される係合突起とを有し、係合突起の爪係合面は、係合片の挿入方向に直交して形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁の入隅に設けられる外壁用役物であって、外壁基部に固定されるベース材と、前記入隅を構成する第1外装パネルおよび第2外装パネルの入隅側端面相互の間隙を覆うカバー材と、を備え、
前記ベース材は、前記第1外装パネルに対面する前記外壁基部の第1取付面に固定される第1固定片と、前記第2外装パネルに対面する前記外壁基部の第2取付面に固定される第2固定片と、前記第1固定片および前記第2固定片相互間に設けられ、前記カバー材を係合保持する係合溝と、を有し、
前記カバー材は、前記第1外装パネルの外側面に沿って配される第1カバー部と、前記第2外装パネルの外側面に沿って配される第2カバー部と、前記第1カバー部および前記第2カバー部の内側面に設けられ、前記係合溝に挿入係合される係合片と、を有し、
前記係合片は、前記第1カバー部および前記第2カバー部の内側面に沿ってカバー長さ方向に延設され、且つカバー幅方向に離間して並設され、先端部に行くに従い離反するように前記ベース材側に向かって突出形成される一対の脚部と、前記先端部にカバー幅方向外向きに折り返して形成される爪部と、を有し、
前記係合溝は、前記脚部の両方を挿入可能な開口部と、前記開口部の内側縁に沿って突設され、前記爪部を係合保持する係合突起と、を有し、
前記爪部が係合される前記係合突起の爪係合面は、前記係合溝に対する前記係合片の挿入方向に直交して形成されていることを特徴とする、外壁用役物。
【請求項2】
前記係合溝の溝底部は、前記第1取付面に対面して当接可能な第1底面部と、前記第2取付面に対面して当接可能な第2底面部と、を有する、請求項1に記載の外壁用役物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁の入隅に設けられる外壁用役物に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅や商業施設などの建物の外壁に外装パネルを施工する場合に、外壁の入隅に生じる隙間を覆うための外壁用役物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の外壁用役物は、ベース材と、カバー材とからなり、ベース材を入隅の外壁本体に固定し、カバー材をベース材に外装パネルの外側から係合させることによって、入隅に取り付けられる。詳しくは、ベース材は、略Z字状に折曲形成された左右対の固定片と、固定片相互間に凹没形成された凹部と、凹部の開口端部の内側に突設された左右対の突起(爪片)とを有しており、固定片を外壁本体に沿わせて固定させる。一方、カバー材は、V字板状の表面部(カバー部)と、表面部の内側面中央に突出形成された左右対の脚部と、脚部の先端に折曲形成された爪部とを有しており、上記脚部をベース材中央の凹部に挿入し、爪部を凹部内側の突起に嵌合させることによって、ベース材に係合保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-7301号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の外壁用役物では、上記突起が開口端部の内側から凹部の底辺(溝底部)に向かって斜めに突出形成されており、一旦爪部が突起に嵌合されると、それら爪部および突起相互は強固に係合保持される。そのため、例えばカバー材の脚部がベース材の凹部に対して正しい向きで挿入されなかった結果、一方の爪部のみ突起に嵌合固定され、他方の爪部は突起に嵌合していない所謂片掛け状態になった場合に、その状態のままカバー材が固定されてしまい、そこからさらにカバー材を動かして正しい取付状態にするといった作業ができなくなる虞があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、建物の外壁の入隅に設けられる外壁用役物において、施工性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の外壁用役物は、以下の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の外壁用役物は、建物の外壁の入隅に設けられる外壁用役物であって、外壁基部に固定されるベース材と、前記入隅を構成する第1外装パネルおよび第2外装パネルの入隅側端面相互の間隙を覆うカバー材と、を備え、前記ベース材は、前記第1外装パネルに対面する前記外壁基部の第1取付面に固定される第1固定片と、前記第2外装パネルに対面する前記外壁基部の第2取付面に固定される第2固定片と、前記第1固定片および前記第2固定片相互間に設けられ、前記カバー材を係合保持する係合溝と、を有し、前記カバー材は、前記第1外装パネルの外側面に沿って配される第1カバー部と、前記第2外装パネルの外側面に沿って配される第2カバー部と、前記第1カバー部および前記第2カバー部の内側面に設けられ、前記係合溝に挿入係合される係合片と、を有し、前記係合片は、前記第1カバー部および前記第2カバー部の内側面に沿ってカバー長さ方向に延設され、且つカバー幅方向に離間して並設され、先端部に行くに従い離反するように前記ベース材側に向かって突出形成される一対の脚部と、前記先端部にカバー幅方向外向きに折り返して形成される爪部と、を有し、前記係合溝は、前記脚部の両方を挿入可能な開口部と、前記開口部の内側縁に沿って突設され、前記爪部を係合保持する係合突起と、を有し、前記爪部が係合される前記係合突起の爪係合面は、前記係合溝に対する前記係合片の挿入方向に直交して形成されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記係合溝の溝底部は、前記第1取付面に対面して当接可能な第1底面部と、前記第2取付面に対面して当接可能な第2底面部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外壁用役物によれば、係合片の爪部が係合溝の係合突起に係合されても、爪部と係合突起との相対的な位置を爪係合面に沿って変更可能であるから、係合溝に対する係合片の挿入方向にずれが生じていても、ベース材に対してカバー材を適切に係合させることができる。これにより、施工性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の外壁用役物の施工状態を示す下方視断面図1である。
図2】実施形態の外壁用役物の施工状態を示す下方視断面図2である。
図3】ベース材およびカバー材の下方視図である。
図4】ベース材の後方視図(a)、側方視図(b)、および下方視図(c)である。
図5】カバー材の後方視図(a)、側方視図(b)、および下方視図(c)である。
図6】脚部が近接した状態を示す下方視図(a)、および脚部が離反した状態を示す下方視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る外壁用役物を図面に基づき説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0013】
図1および図2に示すように、本発明の実施形態に係る外壁用役物1は、戸建て住宅や商業施設などの建物の外壁の入隅Cに施工される外装部材であり、ベース材2と、カバー材3とを備えている。ベース材2は、外壁基部4A,4Bに固定される。カバー材3は、ベース材2に外装パネル5A,5Bの外側から固定される。
【0014】
本実施形態では、外壁基部4A,4Bは、外壁の図示しない柱に固定される胴縁であって、上記柱の二側面に対して略直角に配置されている。詳しくは、外壁基部4A,4Bは、その側端面をそれぞれ、上記柱の入隅C側に面する二側面に当接させて略直角に配置されている。
【0015】
なお、本実施形態では、上記のように外壁基部4A,4Bを突き合わせて形成された略直角部の隅頂部(外壁基部4A,4Bの外側面6A,6Bの延長面相互が交差する交差部)Pを入隅Cの中央部として、上記隅頂部Pの凹入方向(図1および図2の上下方向)を前後方向とする。また、上記隅頂部Pを通って前後方向に延長する基準線Xに対して図1および図2上で直交する方向(図1および図2の左右方向)を左右方向とし、それら前後方向および左右方向にそれぞれ直交する方向を上下方向とする。
【0016】
本実施形態では、外装パネル5A,5Bは、表面がアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板
やステンレス板等の金属板により構成され、且つ裏面にポリイソシアヌレートフォームやポリウレタン等の発泡断熱材が着設され、さらにその発泡断熱材を裏面側からアルミニウム箔等で被覆して一体的に形成された金属サイディングである。図示しないが、外装パネル5A,5Bは、一方向に長い略平板状に形成されており、その長手方向を水平方向と一致させた横向きで外壁基部4A,4Bの外側面6A,6Bに上下に複数並べて支持固定されている。即ち、外装パネル5A,5Bは、外壁基部4A,4Bに対して横張りで施工されている。
【0017】
基準線Xの左側に配される第1外装パネル5Aの入隅側端面9と、基準線Xの右側に配される第2外装パネル5Bの入隅側端面9との間には、所定の間隙10が画成されている。即ち、第1外装パネル5Aおよび第2外装パネル5B相互は、所定の間隙10を存して略直角に配される。
【0018】
なお、本発明に係る外壁用役物1は、上記のように外装パネル5A,5Bが金属サイディングにより構成された外壁にのみ適用されるものではない。即ち、本発明に係る外壁用役物1は、例えば、外装パネル5A,5Bがセメントや繊維質材料等からなる窯業系サイディング、樹脂や繊維質材料等からなる樹脂系サイディング、木質系サイディング等により構成された外壁に適用されてもよい。また、本発明に係る外壁用役物1は、外装パネル5A,5Bが横張りで施工された外壁にのみ適用されるものでもない。即ち、本発明に係る外壁用役物1は、例えば、外装パネル5A,5Bが外壁基部4A,4Bに縦張り(縦向き)で施工された外壁に適用されてもよい。また、外装パネル5A、5Bは、長手方向の寸法が通常1000mm~5000mm程度に形成されている。また、外装パネル5A、5Bの多くは、外側面7に波型、山型、段差等の凹凸柄8が形成されており、その凹凸柄8の柄深さH1は、0.2mm~7.0mm程度に形成されている。
【0019】
ベース材2は、一方向に長い金属製薄板を折り曲げ加工等によって異形断面に形成された板材であり、長手方向の寸法が通常1000mm~5000mm程度に形成されている。ベース材2は、その長手方向を隅頂部Pの延在方向(上下方向)と一致させた縦向きで外壁基部4A,4Bに支持固定される。なお、ベース材2は、外壁基部4A,4Bの隅頂部Pの長さに応じて複数縦並びで施工される。またその際、一のベース材2を上記隅頂部Pの長さに合わせて短手方向に切断して用いてもよい。
【0020】
ベース材2は、好ましくは金属板により形成される。また、その金属板には、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板等の一種が用いられる。また、ベース材2は、折り曲げ加工に限らず、ロール成形やプレス成形、押出成形、切り欠き加工等によって形成されてもよい。さらに、ベース材2は、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等の合成樹脂材料により形成されたものであってもよい。
【0021】
図1図4に示すように、ベース材2は、基準線Xを中心に左右対称形状に形成されている。また、ベース材2は、第1固定片21Aと、第2固定片21Bと、溝枠部22とを有しており、第1固定片21Aおよび第2固定片21Bをそれぞれ外壁基部4A,4Bの外側面6A,6Bに重ねて固定させることにより、隅頂部Pに沿って配設される。なお、第1固定片21Aおよび第2固定片21Bは、後述するように固定釘Nによって外壁基部4A,4Bに固定されてもよいし、タッピングネジやタッカー針等によって外壁基部4A,4Bに固定されてもよい。或いはその他一般的な固定方法によって外壁基部4A,4Bに固定されてもよい。
【0022】
図4に示すように、ベース材2の短手側の一方端部(上端部)には、差込片23が設けられており、カバー材3を複数縦並びで施工する際、下側に配されるカバー材3の差込片23を上側に配されるカバー材3の下端部と外壁基部4A,4Bとの隙間に嵌挿させる。
これにより、上下のカバー材3を連結させた状態で施工することができる。
【0023】
図1図4に示すように、第1固定片21Aは、略Z字状に形成されており、溝枠部22の前縁部から左後方に向かって斜めに折曲形成されている。具体的には、図3に示すように、第1固定片21Aは、溝枠部22の後縁部から基準線Xに対して左後方に延在する内枠部24aと、内枠部24aの左後縁部から基準線Xに対して左前方へ内枠部24aと略直角に延在する起立部24bと、起立部24bの左前縁部から基準線Xに対して左後方へ内枠部24aと略平行に延在する外枠部24cとを有している。また、外枠部24cの先端縁部(左後縁部)には、折り返し部24dが形成されている。
【0024】
第2固定片21Bは、基準線Xを中心に第1固定片21Aと対称に構成されている。即ち、第2固定片21Bは、2箇所を略直角に折り曲げて略Z字状に形成されており、第1固定片21Aと同様に、内枠部24aと、起立部24bと、外枠部24cとを有している。また、外枠部24cの先端縁部(右後縁部)には、折り返し部24dが形成されている。
【0025】
図1および図2に示すように、第1固定片21Aの外枠部24cは、入隅Cの左側に配される第1外壁基部4Aの外側面(第1取付面)6Aに対面して配置され、第1外壁基部4Aに対して固定釘Nにより固定される。一方、第2固定片21Bの外枠部24cは、入隅Cの右側に配される第2外壁基部4Bの外側面(第2取付面)6Bに対面して配され、第2外壁基部4Bに対して固定釘Nにより固定される。なお、第1外装パネル5Aは、第1固定片21Aの外枠部24cにその外側面25側から対面して配置され、第2外装パネル5Bは、第2固定片21Bの外枠部24cにその外側面25側から対面して配置される。従って、第1固定片21Aの外枠部24cは、第1外壁基部4Aと第1外装パネル5Aとの間にて固定され、第2固定片21Bの外枠部24cは、第2外壁基部4Bと第2外装パネル5Bとの間にて固定される。またその際、第1外装パネル5Aおよび第2外装パネル5Bはそれぞれ、入隅側端面9が第1固定片21Aおよび第2固定片21Bのそれぞれの起立部24bに当接することにより位置決め保持される。
【0026】
図1図4に示すように、折り返し部24dは、外枠部24cの先端縁部から外側面25側へ右前方に向かって(内向きに)折曲形成されている。第1固定片21Aおよび第2固定片21Bは、この折り返し部24dおよび起立部24bによって所定の曲げ強度が確保される。
【0027】
溝枠部22は、略V字状に折曲形成されている。詳しくは、溝枠部22は、基準線Xを中心に左右対称な断面略V字状に形成されており、その左面部を構成する第1底面部22aと、右面部を構成する第2底面部22bとを有している。また、第1底面部22aの左後縁部、および第2底面部22bの右後縁部にはそれぞれ、爪係合面となる係合面部22cが形成されている。また、第1底面部22aおよび第2底面部22b相互間の角頂部(折曲端部)22Rは、基準線X上に位置している。
【0028】
第1底面部22aは、基準線Xの左側において第1固定片21Aの外枠部24cと同一平面上に、基準線Xの左後方に延設されている。即ち、第1底面部22aは、第1固定片21Aの外枠部24cと共にベース材2の左側面部を構成している。一方、第2底面部22bは、基準線Xの右側において第2固定片21Bの外枠部24cと同一平面上に、基準線Xの右後方に延設されている。即ち、第2底面部22bは、第2固定片21Bの外枠部24cと共にベース材2の右側面部を構成している。従って、上記のようにベース材2が外壁基部4A,4Bに固定されたとき、第1底面部22aは、第1固定片21Aの外枠部24cと共に第1外壁基部4Aの外側面6Aに面接触した状態で保持され、第2底面部22bは、第2固定片21Bの外枠部24cと共に第2外壁基部4Bの外側面6Bに面接触した状態で保持される。またこのとき、ベース材2は、第1底面部22aおよび第2底面部22b相互間の角頂部(折曲端部)22Rが外壁基部4A,4Bの隅頂部Pと略一致した状態で外壁基部4A,4Bに固定される。なお、外壁基部4A,4Bに対してベース材2をガタツキなく安定して固定可能であれば、溝枠部22は、角頂部22Rが円弧曲凸面や平面(所謂C面)に形成されてもよい。
【0029】
係合面部22cは、第1底面部22aの左後縁部、および第2底面部22bの右後縁部からそれぞれ基準線Xに向かって、基準線Xに直交する角度で延設されている。このように、ベース材2の左右間中央部には、第1底面部22a、第2底面部22b、および左右の係合面部22cによって略直角二等辺三角形状の凹没部が画成されており、この凹没部がカバー材3を係合保持可能な係合溝26となる。即ち、溝枠部22が係合溝26の外郭を構成している。
【0030】
係合面部22cの基準線X側の端部相互間には、所定の間隙が画成されている。即ち、係合溝26は、後方に開口部27を有している。第1固定片21Aの内枠部24aは、溝枠部22の左側(第1底面部22a側)の係合面部22cに連設されており、溝枠部22の左後縁部に係合突起30を形成している。第2固定片21Bの内枠部24aは、溝枠部22の左側(第2底面部22b側)の係合面部22c連設されており、溝枠部22の右後縁部に係合突起30を形成している。このように、溝枠部22の左右の後縁部(開口部27の内側縁)にはそれぞれ、基準線X側へ斜め前方に向かって突出する係合突起30が設けられており、これら係合突起30相互の間隙が係合溝26の開口部27となる。
【0031】
上記のように、溝枠部22の底面部22a,22bはそれぞれ、係合面部22cを介して固定片21A,21Bの内枠部24aに連設され、これら係合面部22cおよび内枠部24aによって係合突起30が形成されている。即ち、溝枠部22、係合突起30、第1固定片21A、および第2固定片21Bは、一の板材によって一体的に形成されている。
【0032】
図1図3、および図5に示すように、カバー材3は、一方向に長い金属製薄板を折り曲げ加工等によって異形断面に形成された板材であり、その長手方向を外壁基部4A,4Bの隅頂部Pの延在方向と一致させた縦向きでベース材2に係合固定される。なお、カバー材3は、外装パネル5A,5Bの入隅側端面9相互の間隙10の上下長さに応じて複数縦並びで施工される。またその際、一のカバー材3を上記間隙10の上下長さに合わせて短手方向に切断して用いてもよい。
【0033】
カバー材3は、好ましくは金属板により形成される。また、その金属板には、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板等の一種が用いられる。さらに好適には、カバー材3は、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板にマグネシウムによる防錆効果を付与した鋼板が用いられる。なお、カバー材3は、外壁の外観を考慮して、外装パネル5A,5Bの表面の金属板と同一素材で構成されるのが好ましい。また、カバー材3は、折り曲げ加工に限らず、ロール成形やプレス成形、押出成形、切り欠き加工等によって形成されてもよい。さらに、カバー材3は、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等の合成樹脂材料により形成されたものであってもよい。
【0034】
図1図3、および図5示すように、カバー材3は、基準線Xを中心に左右対称形状に形成されている。また、カバー材3は、第1カバー部31Aと、第2カバー部31Bと、係合片32とを有しており、係合片32をベース材2の溝枠部22に係合させることにより、上記間隙10を後方(外壁外側)から覆うように配設される。
【0035】
図5に示すように、カバー材3の短手側の端部のうち、上端部には差込片33が設けら
れ、下端部には切欠部34が設けられている。カバー材3を複数縦並びで施工する際、下側に配されるカバー材3は、差込片33を上側に配されるカバー材3の切欠部34に嵌挿させる。これにより、上下のカバー材3は、連結させた状態で施工される。
【0036】
第1カバー部31Aおよび第2カバー部31Bの内側面(前側の面)35にはそれぞれ、水密材36が貼設されている。水密材36は、エチレンプロピレンゴム発泡体、発泡ウレタン樹脂、シリコン系樹脂等の弾性および防水性の高い材料によって形成された帯体であり、カバー材3をベース材2に取り付けたとき、水密材36が外装パネル5A,5Bの外側面7に沿って密接される。これにより、上記間隙10から外壁内部への雨水の浸入が抑制される。
【0037】
図1および図3に示すように、第1カバー部31Aは、基準線Xから左後方に向かって斜めに延設されている。一方、第2カバー部31Bは、基準線Xを中心に第1カバー部31Aと対称に基準線Xから右後方に向かって延在している。即ち、これら第1カバー部31Aおよび第2カバー部31B相互は、それぞれ外装パネル5A、5Bの外側面7に対面して当接させることができるよう略直角に配置されている。
【0038】
また、第1カバー部31Aおよび第2カバー部31Bは、カバー材3がベース材2に係合固定された状態において、第1外装パネル5Aおよび第2外装パネル5Bのそれぞれの外側面7に対面して配置される。従って、カバー材3をベース材2に係合固定させたとき、カバー部31A,31Bの内側面35に貼設された水密材36はそれぞれ、外装パネル5A,5Bの外側面7に密接される。
【0039】
さらに、第1カバー部31Aは、基準線Xから左後方に向かって延設される外側表面部41と、外側表面部41の左後縁部で折り返され、外側表面部41の内側(前側)に対面して配される内側表面部42とを有している。また、第2カバー部31Bは、基準線Xから右後方に向かって延設される外側表面部41と、外側表面部41の右後縁部で折り返され、外側表面部41の内側(前側)に対面して配される内側表面部42とを有している。即ち、第1カバー部31Aおよび第2カバー部31Bは、板体を内側に折り返して二重板状に形成されている。
【0040】
第1カバー部31Aの外側表面部41の右前縁部(基準線X側の端部)は、第2カバー部31Bの外側表面部41の左前縁部(基準線X側の端部)に連結されている。即ち、カバー部31A,31Bの外側表面部41相互は、基準線X上にて略直角に折曲形成されている。
【0041】
内側表面部42は、外側表面部41の左右の後縁部から基準線Xの近傍位置、即ち、外側表面部41相互間の折曲部近傍まで延設されている。係合片32は、内側表面部42の基準線X側の端部に折曲形成されている。係合片32は、左右に対向して配される一対の略J字状の板片であり、内側表面部42の基準線X側の端部に基準線Xを挟んで左右に設けられる一対の脚部51と、脚部51の先端部に折り返して形成される爪部52とを有している。
【0042】
脚部51は、内側表面部42の前縁部に沿って長手方向(カバー長さ方向)に延設されている。また、脚部51は、内側表面部42の前縁部から前方へ基準線Xから離れるように斜めに延設されている。本実施形態では、脚部51は、基準線Xの延長方向よりも8度傾斜した角度で前方外向きに折曲形成されている。このように、左右の脚部51はそれぞれ、先端部(前端部)に行くに従い互いに離反するように前方(ベース材2側)に向かって突出形成されている。
【0043】
上記のように、脚部51は、V字状に折曲形成されたカバー部31A,31Bの前縁部(内側表面部42の前縁部)からその前方(折曲部の突出方向)に延設されている。そのため、カバー部31A,31Bの左右の側縁部に対して後方内側へ折り曲げる方向へ応力が加われば、脚部51は、それに連動して互いに離反する方向へ傾倒する。一方、カバー部31A,31Bの左右の側縁部に対して前方外側へ折り曲げる方向へ応力が加われば、脚部51は、それに連動して互いに近接する方向へ傾倒する。
【0044】
爪部52は、脚部51の先端部(前端部)に左右方向(カバー幅方向)外向きに折り返して形成されている。本実施形態では、爪部52は、脚部51の先端部から左右外向きに脚部51の延在方向よりも22度傾斜した角度、即ち、脚部51に対してV字状に突出形成されている。
【0045】
上記のように、左右の爪部52は、脚部51を介してカバー部31A,31Bの内側表面部42に連設されている。また、内側表面部42は、外側表面部41に連設されている。即ち、係合片32は、カバー部31A,31Bの内側表面部42を介して外側表面部41の前縁部に連設支持されている。従って、係合片32は、カバー部の内側面に直接的に連設されているものに比べて可動の自由度が高い。また、係合片32、内側表面部42、および外側表面部41は、一の板材によって一体的に形成されている。
【0046】
なお、上記のとおり脚部51相互が最も基準線X側に近接された状態のときの、爪部52の先端相互間の寸法(爪幅寸法)は、ベース材2の溝枠部22に設けられた係合突起30の先端相互間の寸法、即ち、開口部27の幅寸法(開口幅寸法)よりも小さく形成されている。一方、通常状態のとき、爪部52の先端相互間の寸法(爪幅寸法)は、開口部27の幅寸法(開口幅寸法)よりも大きく形成されている。従って、カバー材3をベース材2に係合させるべく、係合片32が溝枠部22の開口部27に差し込まれたとき、左右の爪部52はそれぞれ、開口部27の内側の係合突起30に当接する。そしてさらに、係合片32が開口部27よりも係合溝26の奥側(前方)へ押し込まれることで、脚部51が互いに近接するように内向き(基準線X側)に傾倒され、さらに爪部52の先端が係合突起30の先端を過ぎた時点で、脚部51が互いに離反するよう元の位置へ外向き(基準線Xと反対側)に傾倒される(元の位置に戻る)。その結果、爪部52の先端が係合突起30の係合面部22cに嵌合する。またその際、水密材36の弾性力がカバー材3に対して後方へ押しやる方向に加わることで、爪部52の先端は、係合突起30の係合面部22cに対してより強固に嵌合される。これにより、カバー材3は、ベース材2に安定して係合保持される。
【0047】
また、図6に示すように、係合片32の脚部51は、上記のように係合溝26に挿入される際、カバー部31A,31B相互間の中央部(外側表面部41相互間の折曲部)近傍を中心として左右方向(内外)に傾倒する。またそれに伴い、係合片32の爪部52の先端位置は、前後方向(基準線Xの延長方向)へ変位する。これに対し、係合突起30の係合面部22cは、左右方向(基準線Xに直交する方向)に延在している。そのため、係合片32の脚部51相互が内向きに傾倒(近接)した状態(図6(a))から外向きに傾倒(離反)した状態(図6(b))に戻る際、係合面部22cは、後方へ変位しようとする各爪部52の先端によって前方から押圧され、その反力によってカバー材3をベース材2側へ引き寄せる。即ち、図6(a)と図6(b)において、一点鎖線間の距離dに相当する分だけ、外壁基部4A,4Bに固定されているベース材2側へカバー材3が引き寄せられる。これにより、カバー材3は、ベース材2に安定して係合保持される。特に、弾性を有する水密材36との組み合わせの場合は、水密材36の弾性力と上記爪部52の反力とにより、カバー材3は、ベース材2に対してより強固且つ安定して係合保持される。
【0048】
以上のように、上記実施形態の外壁用役物1は、建物の外壁の入隅Cに設けられる外壁
用役物1であって、外壁基部4A,4Bに固定されるベース材2と、入隅Cを構成する第1外装パネル5Aおよび第2外装パネル5Bの入隅側端面9相互の間隙10を覆うカバー材3とを備え、ベース材2は、第1外装パネル5Aに対面する外壁基部4Aの第1取付面6Aに固定される第1固定片21Aと、第2外装パネル5Bに対面する外壁基部4Bの第2取付面6Bに固定される第2固定片21Bと、第1固定片21Aおよび第2固定片21B相互間に設けられ、カバー材3を係合保持する係合溝26とを有し、カバー材3は、第1外装パネル5Aの外側面7に沿って配される第1カバー部31Aと、第2外装パネル5Bの外側面7に沿って配される第2カバー部31Bと、第1カバー部31Aおよび第2カバー部31Bの内側面35に設けられ、係合溝26に挿入係合される係合片32とを有し、係合片32は、第1カバー部31Aおよび第2カバー部31Bの内側面35に沿ってカバー長さ方向に延設され、且つカバー幅方向に離間して並設され、先端部に行くに従い離反するようにベース材2側に向かって突出形成される一対の脚部51と、上記先端部にカバー幅方向外向きに折り返して形成される爪部52とを有し、係合溝26は、脚部51の両方を挿入可能な開口部27と、開口部27の内側縁に沿って突設され、爪部52を係合保持する係合突起30とを有し、爪部52が係合される係合突起30の爪係合面22cは、係合溝26に対する係合片32の挿入方向に直交して形成されている。
【0049】
このものでは、係合片32の爪部52が係合溝26の係合突起30に係合されても、爪部52と係合突起30との相対的な位置を爪係合面22cに沿ってその延在方向、即ち、係合片32の挿入方向と直交する方向へ変更可能であるから、たとえ係合溝26に対する係合片32の挿入方向にずれが生じていても、ベース材2に対してカバー材3を適切に係合させることができる。よって、施工性が格段に向上する。
【0050】
また、上記実施形態では、係合溝26の溝底部は、第1取付面6Aに対面して当接可能な第1底面部22aと、第2取付面6Bに対面して当接可能な第2底面部22bとを有している。
【0051】
このものでは、係合溝26の外郭を構成する溝底部(第1底部22aおよび第2底部22b)を固定片21A、21Bと共に外壁基部4A,4Bの外側面6A,6Bに面合わせの状態で当接保持させることができるから、外壁基部4A,4Bに対してベース材2を安定して固定できる。これにより、ベース材2に対してカバー材3をより適切且つ円滑に係合させることが可能となる。よって、施工性が一層向上する。
【符号の説明】
【0052】
1 外壁用役物
2 ベース材
3 カバー材
4A 第1外壁基部(外壁基部)
4B 第2外壁基部(外壁基部)
5A 第1外装パネル
5B 第2外装パネル
6A 第1外壁基部の外側面(第1取付面)
6B 第2外壁基部の外側面(第2取付面)
7 外装パネルの外側面
9 入隅側端面
10 間隙
21A 第1固定片
21B 第2固定片
22c 係合面部(爪係合面)
26 係合溝
27 開口部
29 開口部の内側縁
30 係合突起
31A 第1カバー部
31B 第2カバー部
32 係合片
35 内側面
44 中央カバー部の内側面
51 脚部
52 爪部
C 入隅
図1
図2
図3
図4
図5
図6