(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161888
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231031BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072511
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB28
5F004CA04
5F131AA02
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA05
5F131CA09
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB16
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131JA33
(57)【要約】
【課題】ウエハのうち端子穴の直上付近が温度特異点になるのを抑制する。
【解決手段】ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、給電端子54と、給電端子穴36とを備える。セラミック基材20は、上面にウエハ載置面22aを有し、電極26を内蔵する。冷却基材30は、セラミック基材20の下面に接合され、冷媒流路32が形成されている。給電端子54は、電極26に接続されている。給電端子穴36は、冷却基材30を上下方向に貫通し、給電端子54を収納する。給電端子穴36は、冷媒流路32と交差している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面に接合され、冷媒流路が形成された冷却基材と、
前記電極に接続された給電端子と、
前記冷却基材を上下方向に貫通し、前記給電端子を収納する給電端子穴と、
を備え、
前記給電端子穴は、前記冷媒流路と交差している、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記冷媒流路には、電気絶縁性の液体が供給される、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記給電端子穴には、前記給電端子を挿通して支持する絶縁管が配置されている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記絶縁管の上端は、前記セラミック基材に固定され、前記絶縁管の側面は、前記給電端子穴の内壁に当接又は近接する凸部を有する、
請求項3に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記冷却基材は、単層構造である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記冷媒流路は、前記冷却基材の上面又は下面に設けられた冷媒流路溝を有している、
請求項5に記載のウエハ載置台。
【請求項7】
前記冷媒流路は、それぞれ平面視で一端から他端まで一筆書きの要領で設けられた複数のラインを備え、
前記給電端子穴は、前記複数のラインのうちの1つ以上に設けられている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極を内蔵するセラミック基材と内部に冷媒流路が形成された冷却基材とを接合したウエハ載置台が知られている。特許文献1には、こうしたウエハ載置台として、電極への給電のための構成を開示している。具体的には、冷却基材を上下方向に貫通する給電端子穴内に絶縁管を配置し、その絶縁管内に給電端子を挿通し、その給電端子を電極に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、給電端子穴は絶縁管を配置するために比較的大きな径を有しており、しかも冷媒流路を避けるように設ける必要があるため、ウエハのうち端子穴の直上付近は他の部分に比べて熱引きが悪く、温度特異点(高温点)になることがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハのうち給電端子穴の直上付近が温度特異点になるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面に接合され、冷媒流路が形成された冷却基材と、
前記電極に接続された給電端子と、
前記冷却基材を上下方向に貫通し、前記給電端子を収納する給電端子穴と、
を備え、
前記給電端子穴は、前記冷媒流路と交差している、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、給電端子穴は、冷媒流路と交差している。そのため、給電端子穴を避けるように冷媒流路を設ける必要がない。したがって、ウエハのうち給電端子穴の直上付近が温度特異点になるのを抑制することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。また、「冷媒流路」は、冷却基材の内部に設けられた冷媒流路であってもよいし、冷却基材の上面又は下面に設けられた冷媒流路溝であってもよい。
【0009】
[2]本発明のウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記冷媒流路には、電気絶縁性の液体が供給されてもよい。こうすれば、冷却基材が導電性であったとしても、給電端子は電気絶縁性の液体によって冷却基材と絶縁される。
【0010】
[3]本発明のウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記給電端子穴には、前記給電端子を挿通して支持する絶縁管が配置されていてもよい。こうすれば、給電端子は絶縁管に支持されているため、給電端子が冷媒の流れに押されて折損してしまうのを防止することができる。また、冷却基材と給電端子との耐電圧を高めることができる。
【0011】
[4]本発明のウエハ載置台(前記[3]に記載のウエハ載置台)において、前記絶縁管の上端は、前記セラミック基材に固定されていてもよく、前記絶縁管の側面は、前記給電端子穴の内壁に当接又は近接する凸部を有していてもよい。こうすれば、給電端子を支持する絶縁管の給電端子穴内での動きを凸部によって規制することができる。
【0012】
[5]本発明のウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記冷却基材は、単層構造であってもよい。こうすれば、冷却基材を貼り合わせて製造する必要がないため、冷却基材の製造コストを低減できる。
【0013】
[6]冷却基材が単層構造の本発明のウエハ載置台(前記[5]に記載のウエハ載置台)において、前記冷媒流路は、前記冷却基材の上面又は下面に設けられた冷媒流路溝を有していてもよい。例えば、冷却基材の上面に冷媒流路溝を有している場合、冷媒流路は冷媒流路溝の上面をセラミック基材(又はセラミック基材と冷却基材とを接合する接合層)で覆うことにより形成される。また、冷却基材の下面に冷媒流路溝を有している場合、冷媒流路は冷媒流路溝の下面を板部材(例えば設置板)で覆うことにより形成される。
【0014】
[7]本発明のウエハ載置台(前記[1]~[6]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記冷媒流路は、それぞれ平面視で一端から他端まで一筆書きの要領で設けられた複数のラインを備えていてもよく、前記給電端子穴は、前記複数のラインのうちの1つ以上に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
【
図5】絶縁管55を省略した給電端子穴36の周辺を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2はウエハ載置台10の平面図、
図3は給電端子穴36の周辺を示す拡大断面図である。
【0017】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0018】
セラミック基材20は、円形のウエハ載置面22aを有する中央部22の外周に、環状のフォーカスリング載置面24aを有する外周部24を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置され、FR載置面24aには、フォーカスリング12が載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面24aは、ウエハ載置面22aに対して一段低くなっている。
【0019】
セラミック基材20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電吸着用電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、冷却基材30及び金属接合層40を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0020】
冷却基材30は、脆性な導電材料製の円板部材である。冷却基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。冷媒流路32は、
図2に示すように、平面視で一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領でセラミック基材20の全面にわたるように設けられている。冷媒流路32の一端及び他端は、それぞれ設置板96に設けられた図示しない冷媒供給路及び冷媒排出路に接続されており、冷媒排出路から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路に戻される。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。脆性な導電材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al
2O
3とTiCとの複合材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。冷却基材30に用いる導電材料としては熱膨張係数がアルミナに近いAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。冷却基材30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。冷却基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。冷却基材30は、下面側にウエハ載置台10を設置板96にクランプするのに用いられるフランジ部34を有する。
【0021】
冷却基材30には、給電端子穴36が設けられている。給電端子穴36は、冷却基材30を上下方向に貫通し、冷媒流路32と交差している。給電端子穴36には、ウエハ吸着用電極26に電圧を印加するための給電端子54が収納される。給電端子54は、上下方向に延びる棒状部材である。給電端子54の上端は、ウエハ吸着用電極26の下面に接合されている。給電端子54の下端は、給電端子穴36の下部開口に達しており、チャンバ94に設けられた給電棒56の円錐形の上端と接触している。給電棒56は、図示しないバネによって下から上に向かって付勢されている。そのため、給電棒56の上端は、給電端子36の下端と弾性接触している。給電端子穴36には、給電端子54を挿通して支持する絶縁管55が配置されている。絶縁管55の上端は、セラミック基材20に接合されて固定されている。絶縁管55の側面には、給電端子穴36の内壁に当接する凸部55aが設けられている。凸部55aは、半径外方向に突き出すように設けられている。凸部55aは、例えば、直径方向に2本設けられていてもよいし、放射状に3本以上設けられていてもよいし、絶縁管55の全周にわたって環状に設けられていてもよい。
【0022】
金属接合層40は、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。給電端子穴36は、金属接合層40も上下方向に貫通している。
【0023】
セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の外周及び冷却基材30の側面は、絶縁膜42で被覆されている。絶縁膜42としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0024】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96の上にシールリング76,77を介して取り付けられる。シールリング76,77は、金属製又は樹脂製である。シールリング76は、冷却基材30の外縁のやや内側に配置されている。シールリング77は、給電端子穴36の下部開口縁を取り囲むように配置され、冷媒がシールリング77の外側に漏れ出るのを防止する。
【0025】
ウエハ載置台10の外周領域は、クランプ部材70を用いて設置板96に取り付けられる。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10の冷却基材30のフランジ部34に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。
【0026】
給電棒56は、設置板96のうち給電端子穴36に対向する位置に設けられた貫通穴97に設置板96の下面から挿通されている。貫通穴97は、上部が大径部、下部が小径部となっている。貫通穴97の小径部の内壁には、リング溝が設けられ、リング溝には、Oリング78が嵌め込まれている。Oリング78は、給電棒56によって半径方向に押し潰されており、給電端子穴36内の冷媒が貫通穴97の下方へ漏れ出るのを防止する。冷媒流路32の一端と他端は、図示しないが、それぞれ設置板96に設けられた冷媒供給路と冷媒排出路に、冷却基材30と設置板96との間に配置されたシールリングを介して接続されている。これらのシールリングは、冷媒が外側に漏れ出すのを防止する。
【0027】
次に、ウエハ載置台10の製造例を
図4を用いて説明する。
図4はウエハ載置台10の製造工程図である。まず、セラミック基材20の元となる円板状のセラミック焼結体120を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(
図4A)。セラミック焼結体120は、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。次に、セラミック焼結体120の下面からウエハ吸着用電極26まで穴27をあけ(
図4B)、その穴27に給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(
図4C)。
【0028】
これと並行して、2つの円板部材131,133を作製する(
図4D)。そして、上側の円板部材131の下面に最終的に冷媒流路32となる溝132を形成する。溝132の一部には最終的に給電端子穴36となる貫通穴136aを形成する。また、下側の円板部材133に最終的に給電端子穴36となる貫通穴136bを形成する。セラミック焼結体120がアルミナ製の場合、円板部材131,133はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである。
【0029】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0030】
次に、下側の円板部材133の上面に第1金属接合材を配置する。第1金属接合材のうち貫通穴136bに対向する位置には、上下方向に貫通する穴を設けておく。次に、第1金属接合材の上に上側の円板部材131を配置し、円板部材131の上面に第2金属接合材を配置する。第2金属接合材のうち貫通穴136aに対向する位置に上下方向に貫通する穴を設けておく。次に、セラミック焼結体120の給電端子54を円板部材131,133の貫通穴136a,136bに挿入しつつ、セラミック焼結体120を第2金属接合材の上に載せる。これにより、下から順に、円板部材133、第1金属接合材、円板部材131、第2金属接合材及びセラミック焼結体120が積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(
図4F)。
【0031】
接合体110は、冷却基材30の元となる円形ブロック130の上面に、金属接合層40を介してセラミック焼結体120が接合されたものである。円形ブロック130は、上側の円板部材131と下側の円板部材133とが金属接合層を介して接合された積層構造体である。円形ブロック130は、内部に冷媒流路32と給電端子穴36を有している。また、給電端子収納穴36には給電端子54が収納されている。
【0032】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0033】
続いて、セラミック焼結体120の外周を研削して段差を形成することにより、中央部22と外周部24とを備えたセラミック基材20とする。また、円形ブロック130の外周を研削して段差を形成することにおり、フランジ部34を備えた冷却基材30とする。また、絶縁管55を給電端子穴36の下部開口から差し込む。絶縁管55には、給電端子54が挿入される。そして、絶縁管55の上端をセラミック基材20に接合する。更に、セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の周囲及び冷却基材30の側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜42を形成する(
図4G)。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0034】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10の外周領域がクランプ部材70によって固定さる。給電端子54の下面には、給電棒56の上端が弾性接触している。設置板96とウエハ載置台10との間にはシールリング76,77が配置されている。冷媒流路32には、冷媒として電気絶縁性の液体が供給される。冷媒は、冷媒流路32を通過するが、途中で給電端子穴36も通過する。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド95が配置されている。設置板96は、例えばアルミナなどの絶縁材料で形成されている。
【0035】
ウエハ載置台10のFR載置面24aには、フォーカスリング12が載置され、ウエハ載置面22aには、円盤状のウエハWが載置される。フォーカスリング12は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド95からプロセスガスを供給しながら、冷却基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド95との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング12も消耗するが、フォーカスリング12はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング12の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0036】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミック基材20と冷却基材30との接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層40を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミック基材20と冷却基材30との熱膨張差は小さいため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0037】
以上説明したウエハ載置台10では、給電端子穴36は、冷媒流路32と交差している。そのため、給電端子穴36を避けるように冷媒流路32を設ける必要がない。したがって、ウエハWのうち給電端子穴36の直上付近が温度特異点になるのを抑制することができる。
【0038】
また、冷媒流路32には、冷媒として電気絶縁性の液体が供給される。そのため、給電端子54と導電性を有する冷却基材30とは、電気絶縁性の液体によって絶縁される。
【0039】
更に、給電端子穴36には、給電端子54を挿通して支持する絶縁管55が配置されている。給電端子54は絶縁管55に支持されているため、給電端子54が冷媒の流れに押されて折損してしまうのを防止することができる。また、冷却基材30と給電端子54との耐電圧を高めることができる。
【0040】
更にまた、絶縁管55の上端は、セラミック基材20に固定され、絶縁管55の側面には、給電端子穴36の内壁に当接する凸部55aが設けられている。そのため、給電端子54を支持する絶縁管55の給電端子穴36内での動きを凸部55aによって規制することができる。これにより、給電端子54が冷媒の流れに押されて折損してしまうのを確実に防止することができる。なお、凸部55aは、給電端子穴36の内壁に当接せず近接していてもよい。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
上述した実施形態では、給電端子穴36に給電端子54を挿通して支持する絶縁管55を配置したが、
図5に示すように、絶縁管55を省略してもよい。このようにしても、給電端子54と導電性を有する冷却基材30とは、電気絶縁性の液体によって絶縁される。
【0043】
上述した実施形態では、側面に凸部55aを有する絶縁管55を採用したが、側面に凸部55aを有さない絶縁管55を採用してもよい。このようにしても、給電端子54は絶縁管55に支持されているため、給電端子54が冷媒の流れに押されて折損してしまうのを防止することができる。
【0044】
上述した実施形態では、冷却基材30は、
図4に示すように2枚の円板部材131,133を接合した積層構造としたが、特にこれに限定されない。例えば、
図6に示すウエハ載置台210のように、単層構造の冷却基材230を採用してもよい。
図6では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷却基材230は、上面に開口する冷媒流路溝282を有する。冷媒流路232は、冷媒流路溝282の上部開口が金属接合層40で覆われることにより形成される。冷媒流路232(冷媒流路溝282)の内部には、給電端子穴236が設けられている。ウエハ載置台210を製造するにあたっては、1枚の円板部材に、冷媒流路溝282や給電端子穴236を形成し、その後、金属接合材を用いてセラミック基材20とTCBにより接合すればよい。冷却基材230は単層構造であるため、積層構造に比べて冷却基材230の製造コスト(材料費や製造コスト)を低減できる。
【0045】
あるいは、
図7に示すウエハ載置台310のように、単層構造の冷却基材330を採用してもよい。
図7では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷却基材330は、下面に開口する冷媒流路溝382を有する。冷媒流路332は、冷媒流路溝382の下部開口が設置板96及びシールリング76で覆われることにより形成されている。なお、シールリング77は省略してもよい。冷媒流路332(冷媒流路溝382)の内部には、給電端子穴336が設けられている。ウエハ載置台310を製造するにあたっては、1枚の円板部材に、冷媒流路溝382や給電端子穴336を形成し、その後、金属接合材を用いてセラミック基材20とTCBにより接合すればよい。冷却基材330は単層構造であるため、積層構造に比べて冷却基材330の製造コスト(材料費や製造コスト)を低減できる。なお、冷却基材330の下面と設置板96の上面との間には、隣合う冷媒流路溝382同士を仕切るシール部材を配置してもよい。
【0046】
上述した実施形態では、
図2に示すように冷媒流路32の一端(入口)と他端(出口)との間に給電端子穴36を設けたが、冷媒流路32の一端又は他端に給電端子穴36を設けてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、冷却基材30に設けた冷媒流路32は1ライン(1系統)としたが、特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路32を2ライン以上とし、1つのラインに給電端子穴36を交差するように設け、それ以外のラインには給電端子穴36を設けないようにしてもよい。
図8にその一例を示す。
図8はウエハ載置台10の別例の平面図であり、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。冷媒流路432は、第1ライン432aと第2ライン432bとを有している。第1ライン432aと第2ライン432bは、互いに交差することなく、それぞれ平面視で一筆書きの要領で一端(入口)から他端(出口)まで設けられている。なお、一端(入口)と他端(出口)は、平面視で異なる位置に設けられている。第1ライン432aと第2ライン432bには、個別に冷媒の給排が行われる。第2ライン432bには給電端子穴36が設けられているが、第1ライン432aには給電端子穴36は設けられていない。なお、第2ライン432bに給電端子穴36を設けるにあたっては、
図8に示すように第2ライン432bの一端(又は他端)に設けてもよいし、第2ライン432bの一端と他端との間に設けてもよい。また、第2ライン432bに給電端子穴36を設けず、第1ライン432aに給電端子穴36を設けてもよい。また、給電端子が複数存在し、複数の給電端子がそれぞれ個別の給電端子穴に収納されている場合、複数の給電端子穴の一部を第1ライン432aに設け、残りを第2ライン432bに設けてもよい。あるいは、給電端子穴36ごとにラインを設け、ラインごとに個別に冷媒の給排を行ってもよい。
【0048】
上述した実施形態において、冷却基材30の下面からウエハ載置面22aに至るようにウエハ載置台10を貫通する穴を設けてもよい。こうした穴としては、ウエハWの裏面に熱伝導ガス(例えばHeガス)を供給するためのガス供給穴や、ウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴などが挙げられる。熱伝導ガスは、ウエハ載置面22aに設けれられた図示しない多数の小突起(ウエハWを支持する)とウエハWとによって形成される空間に供給される。リフトピン穴は、ウエハWを例えば3本のリフトピンで支持する場合には3箇所に設けられる。
【0049】
上述した実施形態では、冷却基材30を脆性な導電材料で作製したが、冷却基材30を他の脆性材料(例えばアルミナ材料)で作製してもよい。あるいは、冷却基材30をアルミニウムやアルミ合金などの金属で作製してもよい。
【0050】
上述した実施形態では、セラミック基材20の中央部22にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよいし、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。また、ウエハ吸着用電極26をRF電極と兼用してもよい。また、セラミック基材20の外周部24にフォーカスリング(FR)吸着用電極を内蔵してもよいし、RF電極やヒータ電極を内蔵してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、
図4Aのセラミック焼結体120はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【0052】
上述した実施形態では、セラミック基材20と冷却基材30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接合層を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 ウエハ載置台、12 フォーカスリング、20 セラミック基材、22 中央部、22a ウエハ載置面、24 外周部、24a フォーカスリング載置面、26 ウエハ吸着用電極、27 穴、30 冷却基材、32 冷媒流路、34 フランジ部、36 給電端子穴、40 金属接合層、42 絶縁膜、52 ウエハ吸着用直流電源、54 給電端子、55 絶縁管、55a 凸部、56 給電棒、62 RF電源、64 給電端子、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、76,77 シールリング、78 Oリング、94 チャンバ、95 シャワーヘッド、96 設置板、97 貫通穴、110 接合体、120 セラミック焼結体、130 円形ブロック、131,133 円板部材、132 溝、136a,136b 貫通穴、210 ウエハ載置台、230 冷却基材、232 冷媒流路、236 給電端子穴、282 冷媒流路溝、310 ウエハ載置台、330 冷却基材、332 冷媒流路、336 給電端子穴、382 冷媒流路溝、432 冷媒流路、432a 第1ライン、432b 第2ライン。