(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161902
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法、プログラム、およびシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20231031BHJP
【FI】
G06Q40/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072539
(22)【出願日】2022-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】500521522
【氏名又は名称】株式会社オプティム
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 俊二
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB61
(57)【要約】
【課題】災害により被った損害額を低コストかつ短時間で推定する。
【解決手段】本開示の一態様のプログラムは、コンピュータを、災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段、過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、被災建物の損害額を推定する手段、として機能させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の視認可能な情報と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定する手段、
として機能させるプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記被災建物を対象とする損害保険の契約情報を特定する手段、
前記被災建物を対象とする損害保険の契約情報と、当該被災建物の損害額とに基づいて、当該被災建物に対する補償額を査定する手段、
としてさらに機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記補償額を査定する手段は、前記被災建物を対象とする損害保険の契約情報によって特定された保険金、および推定された当該被災建物の損害額のいずれも超えないように前記補償額を査定する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記契約情報を特定する手段は、前記視認可能な情報の測量の結果に関連付けられる地理的座標情報に基づいて前記被災建物の所在地を特定し、損害保険の契約情報が登録された契約データベースにおいて当該所在地に対応する契約情報を抽出する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、
前記被災建物を対象とする修理見積総額を示す情報を取得する手段、
前記修理見積総額と前記被災建物について推定された損害額との差の絶対値が第1閾値を超える場合、当該損害額に対する当該修理見積総額の比が第2閾値を超える場合、当該修理見積総額に対する当該損害額の比が第3閾値を超える場合に、通知を行う手段、
としてさらに機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記被災建物の損害額は、当該被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるために必要な費用を含む、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
前記被災建物の損害額は、当該被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるための付随費用をさらに含む、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項9】
被災建物に対する視認可能な情報の測量は、無人飛行機、モバイル端末、または車両の少なくとも1つに搭載されたセンサ、カメラ、またはこれらの組み合わせによって行われる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
前記入力データは、前記被災建物に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づき、かつ前記被災建物に対して災害の発生前に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づかない、請求項1に記載のプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、
災害により損害を被った被災地域に存在する土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物である複数の対象物の各々に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段、
過去に災害により損害を被った複数の土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記被災地域に存在する複数の対象物の各々に対する前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データにそれぞれ適用することで、当該複数の対象物の各々の損害額を推定する手段、
前記複数の対象物の各々について推定された損害額に基づいて、前記被災地域における被害総額を評価する手段、
として機能させる、プログラム。
【請求項12】
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定する手段と、
を具備する、情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータが、
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得するステップと、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定するステップと、
を具備する、情報処理方法。
【請求項14】
クライアント装置と、サーバとを具備し、
前記クライアント装置は、
災害により損害を被った被災建物の損害額の推定に関する要求を、ユーザによる指示に応じて生成する手段と、
前記要求を前記サーバへ送信する手段と
を備え、
前記サーバは、
前記要求を取得する手段と、
前記要求に応じて、前記被災建物に対して前記災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定する手段と、
前記被災建物の損害額の推定結果に関する応答を生成する手段と、
前記応答を前記クライアント装置へ送信する手段と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、方法、プログラム、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地震、火災、土砂災害などの災害は、人間の生活環境に様々な被害をもたらす。災害の発生後には被災した建物、工作物、または土地の復旧作業が必要となる。被災者が1日でも早く被災前の生活を取り戻せるように、復旧作業を効率化することが求められる。
【0003】
特許文献1には、三次元計測の結果を用いて地形モデルを補正し、当該地形モデルに基づく氾濫解析結果を用いた被害総額の算定を行う技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、三次元計測画像を原形施設の図面データとして取り込み、当該図面データと数量・単価データをリンクさせて事業量・工事費の自動積算を行い、かつ災害前後の三次元計測画像を比較して復旧作業量を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-128838号公報
【特許文献2】特開2006-276306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、氾濫以外の災害による被害総額を算定することを想定していない。加えて、本技術では、氾濫の発生前に三次元計測を行う必要がある。
【0007】
特許文献2の技術では、三次元計測画像を原形施設の図面データとして取り込み、当該図面データと数量・単価データをリンクさせる必要がある。また、本技術では、復旧作業量を算出するために災害後に加えて災害前の三次元計測画像が必要となる。
【0008】
本開示の目的は、災害により被った損害額を低コストかつ短時間で推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータを、災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段、過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、被災建物の損害額を推定する手段、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態のクライアント装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態の契約データベースのデータ構造を示す図である。
【
図6】本実施形態の情報処理のフローチャートである。
【
図7】本実施形態の情報処理において表示される画面例を示す図である。
【
図8】本実施形態の情報処理において表示される画面例を示す図である。
【
図9】本実施形態の情報処理において表示される画面例を示す図である。
【
図10】変形例1の情報処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
(1)情報処理システムの構成
情報処理システムの構成について説明する。
図1は、本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、情報処理システム1は、クライアント装置10と、サーバ30とを備える。
クライアント装置10及びサーバ30は、ネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。
【0014】
クライアント装置10は、サーバ30にリクエストを送信する情報処理装置の一例である。クライアント装置10は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。
【0015】
サーバ30は、クライアント装置10から送信されたリクエストに応じたレスポンスをクライアント装置10に提供する情報処理装置の一例である。サーバ30は、例えば、ウェブサーバである。
【0016】
(1-1)クライアント装置の構成
クライアント装置の構成について説明する。
図2は、本実施形態のクライアント装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、クライアント装置10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。クライアント装置10は、ディスプレイ21に接続される。
【0018】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0019】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0020】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0021】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、クライアント装置10の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ12は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU(Central Processing Unit)
・GPU(Graphic Processing Unit)
・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
・FPGA(Field Programmable Array)
【0022】
入出力インタフェース13は、クライアント装置10に接続される入力デバイスからユーザの指示を取得し、かつ、クライアント装置10に接続される出力デバイスに情報を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ21、スピーカ、又は、それらの組合せである。
【0023】
通信インタフェース14は、クライアント装置10とサーバ30との間の通信を制御するように構成される。
【0024】
ディスプレイ21は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ21は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0025】
(1-2)サーバの構成
サーバの構成について説明する。
図3は、本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、入出力インタフェース33と、通信インタフェース34とを備える。
【0027】
記憶装置31は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0028】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0029】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0030】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ32は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0031】
入出力インタフェース33は、サーバ30に接続される入力デバイスからユーザの指示を取得し、かつ、サーバ30に接続される出力デバイスに情報を出力するように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0032】
通信インタフェース34は、サーバ30とクライアント装置10との間の通信を制御するように構成される。
【0033】
(2)実施形態の一態様
本実施形態の一態様について説明する。
図4は、本実施形態の一態様の説明図である。
【0034】
図4に示すように、クライアント装置10は、災害により損害を被った建物(以下、「被災建物」という)の損害額の推定に関する要求を、ユーザによる指示に応じて生成し、生成した要求をサーバ30へ送信する。クライアント装置10のユーザは、例えば、被災建物の持ち主、被災建物を対象とする損害保険(例えば、火災保険、または地震保険)の被保険者、または保険会社、公的機関、もしくは建設会社の職員である。
【0035】
サーバ30は、要求に基づいて被災建物を特定する。サーバ30は、特定した被災建物に対応する外観測量結果OM1を取得する。ここで、外観測量結果OM1は、被災建物に対して災害の発生後に行われた外観測量の結果である。外観測量は、例えば、被災建物の壁、屋根等に関する色の測定、被災建物の外観の撮影、被災建物の3次元測量等のいずれか、または、これらの組み合わせを含む。外観測量のうち、色の測定、外観の撮影等のいずれか、または、これらの組み合わせについては、視認可能な情報の測量と換言可能である。視認可能な情報の測量には、色の測定、または外観の撮影以外の測量が含まれていてもよい。外観測量の結果は、例えば、被災建物の壁、屋根等に関する色の測定の結果、被災建物の外観を撮影した撮影データ、被災建物の3次元測量の結果等のいずれか、または、これらの組み合わせを含む。外観測量の結果のうち、色の測定の結果、外観を撮影した撮影データ等のいずれか、または、これらの組み合わせについては、視認可能な情報の測量の結果と換言可能である。被災建物の外観の撮影は、被災建物を複数方向から撮影してもよい。つまり、一つの被災建物に対し、複数の撮影データが存在していてもよい。3次元測量の結果は、例えば、3次元の点群データとして表現される。外観測量結果OM1に関する情報(例えば、外観測量結果OM1そのもの、またはその所在を示す情報)は、クライアント装置10からの要求に含められてもよい。
【0036】
外観測量は、公的機関、保険会社、建設会社、測量会社、損害保険の鑑定人、被災建物の持ち主、または被災建物を対象とする損害保険の被保険者のいずれ(以下、「測量者」という)によって行われてもよい。測量者は、例えば、災害の発生後に当該災害によって損害を被った地域(以下、「被災地域」という)に対して一斉に外観測量を行ってもよいし、被災建物に対する個別の外観測量を必要に応じて行ってもよい。外観測量は、無人飛行機、モバイル端末、または車両の少なくとも1つに搭載されたセンサにより行うことができる。センサは、例えば、カラーセンサ、深度センサを含む。深度センサは、例えばLidar(Light Detection and Ranging)であるが、これに限られない。外観測量は、無人飛行機、モバイル端末、または車両の少なくとも1つに搭載されたカメラにより行ってもよい。
【0037】
サーバ30は、取得した外観測量結果OM1に基づく入力データに、推定モデルEM1を適用することで、被災建物の損害額を推定する。推定モデルEM1は、過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観(例えば、外観測量結果)と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築される。
【0038】
サーバ30は、推定した損害額に関する応答を生成し、当該応答をクライアント装置10へ送信する。
【0039】
このように、情報処理システム1は、例えば人間による工数見積を必要とすることなく、被災建物が災害により被った損害額を推定する。つまり、損害額を低コストかつ短時間で推定し、被災建物の復旧作業を効率化することができる。
【0040】
(3)データベース
本実施形態のデータベースについて説明する。以下のデータベースは、記憶装置31に保存される。
【0041】
(3-1)契約データベース
本実施形態の契約データベースについて説明する。
図5は、本実施形態の契約データベースのデータ構造を示す図である。
【0042】
契約データベースには、契約情報が格納される。契約情報は、保険(特に、火災保険、または地震保険などの損害保険)の契約に関する情報である。
図5に示すように、契約データベースは、「契約ID」フィールドと、「契約者」フィールドと、「被保険者」フィールドと、「保険対象」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0043】
「契約ID」フィールドには、契約IDが格納される。契約IDは、契約情報を識別する情報である。契約IDの値は、契約情報に対応する保険契約の証券番号と同一であってもよいし、異なってもよい。契約IDの値が証券番号と異なる場合に、契約データベースは、証券番号に関する情報を格納するためのフィールドをさらに含んでもよい。
【0044】
「契約者」フィールドには、契約者情報が格納される。契約者情報は、契約IDによって特定される保険契約の契約者に関する情報である。一例として、契約者情報は、例えば契約者の名称(例えば、氏名または商号)、生年月日、住所、または連絡先に関する情報を含むことができる。
【0045】
「被保険者」フィールドには、被保険者情報が格納される。被保険者情報は、契約IDによって特定される保険契約の被保険者に関する情報である。一例として、被保険者情報は、例えば被保険者の名称、生年月日、住所、または連絡先に関する情報を含むことができる。
【0046】
「保険対象」フィールドには、保険対象情報が格納される。保険対象情報は、契約IDによって特定される保険契約の対象(例えば、建物)に関する情報である。
図5の例では、保険対象フィールドは、「所在地」サブフィールドと、「用途」サブフィールドと、「構造」サブフィールドと、「保険金」サブフィールドとを含む。
【0047】
「所在地」サブフィールドには、所在地情報が格納される。所在地情報は、契約IDによって特定される保険契約の対象の所在地に関する情報(例えば、住所情報、または地理的座標情報)である。
【0048】
「用途」サブフィールドには、用途情報が格納される。用途情報は、契約IDによって特定される保険契約の対象の用途に関する情報である。一例として、建物の用途は、「専用住宅」、「共同住宅」、「併用住宅」または「その他の建物」のいずれかに分類される。
【0049】
「構造」サブフィールドには、構造情報が格納される。構造情報は、契約IDによって特定される保険契約の対象の構造級別に関する情報である。一例として、保険対象が住宅物件である場合に、構造級別は、M構造(マンション構造)、T構造(耐火構造)、またはH構造(非耐火構造)のいずれかに分類される。
【0050】
「保険金」サブフィールドには、保険金情報が格納される。保険金情報は、契約IDによって特定される保険契約の対象に設定された保険金に関する情報である。
【0051】
保険情報は、
図5には示していない情報、例えば保険契約の条件に関する情報をさらに含むことができる。
第1例として、保険情報は、評価法情報を含むことができる。評価法情報は、契約IDによって特定される保険契約の対象の評価額の算出法に関する情報である。例えば、評価法情報の値が「再調達価額」に対応する場合に、保険対象の評価額は、損害発生時に発生場所において保険対象と同一の構造、質、用途、規模、型、能力のものを再築、または再取得するのに必要な金額によって決まる。評価法情報の値が「時価額」である場合に、保険対象の評価額は、再調達価額から使用による消耗分を差し引いた額によって決まる。
第2例として、保険情報は、契約期間情報を含むことができる。契約期間情報は、契約IDによって特定される保険契約の有効期限に関する情報である。
第3例として、保険情報は、保険料情報を含むことができる。保険料情報は、契約IDによって特定される保険契約の保険料に関する情報である。例えば、保険料情報は、保険料の金額、または保険料の払込方法に関する情報を含むことができる。
【0052】
(4)情報処理
本実施形態の情報処理について説明する。
図6は、本実施形態の情報処理のフローチャートである。
図7は、本実施形態の情報処理において表示される画面例を示す図である。
図8は、本実施形態の情報処理において表示される画面例を示す図である。
図9は、本実施形態の情報処理において表示される画面例を示す図である。
【0053】
図6の情報処理は、例えば、クライアント装置10が所定のアプリケーションを実行している状態、またはクライアント装置10がWebブラウザを実行して所定のSaaSのWebページをディスプレイ21に表示している状態から開始する。
【0054】
図6に示すように、クライアント装置10は、ユーザ指示の受付(S110)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、
図7の画面P10をディスプレイ21に表示する。画面P10は、被災建物を対象とする損害保険の自動審査のための要求に関する種々のユーザ指示を受け付けるUI(User Interface)に相当する。画面P10は、フィールドオブジェクトF10a~F10bと、操作オブジェクトB10a~B10cとを含む。
【0055】
フィールドオブジェクトF10aは、被災建物を対象とする損害保険の証券番号の入力を受け付ける。
フィールドオブジェクトF10bは、被災建物の所在地の入力を受け付ける。
ユーザは、フィールドオブジェクトF10a~F10bのいずれかを選択して情報を入力する。この情報を元に、サーバ30は、被災建物を特定する。
【0056】
操作オブジェクトB10aは、被災建物の修理見積書に対応するファイル(以下、「修理見積書ファイル」という)を、記憶装置11から探索して当該ファイルのアップロードを準備するための操作を受け付ける。
操作オブジェクトB10bは、被災建物の修理見積書を、クライアント装置10に備え付けられたカメラ(図示せず)によって撮影することで修理見積書ファイルを生成し、当該ファイルのアップロードを準備するための操作を受け付ける。
ユーザは、操作オブジェクトB10a~B10bのいずれかを選択して修理見積書ファイルのアップロードを準備する。準備が完了すると、表示オブジェクトA10が画面P10に配置される。表示オブジェクトA10は、修理見積書ファイルのアイコンを表示する。
操作オブジェクトB10cは、要求を発行するための操作を受け付ける。
【0057】
画面P10は、要求に関する種々のユーザ指示を受け付けるUIの一例に過ぎず、様々な変形が可能である。画面P10は、損害保険の契約者情報もしくは被保険者情報、災害の概要に関する情報、または損害の概要に関する情報の少なくとも1つの入力をさらに受け付けるように構成されてもよい。画面P10は、修理見積書の他に損害保険の申請に必要な書類(例えば、保険金請求書、罹災証明書、など)のファイル、または当該書類の記載事項の情報を受け付けるように構成されてもよい。画面P10は、修理見積書ファイルに加えて、または修理見積書ファイルの代わりに、被災建物を対象とする修理見積総額を示す情報(例えば数値)を受け付けるように構成されてもよい。
【0058】
ステップS110の後に、クライアント装置10は、要求(S111)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、ステップS110において受け付けたユーザ指示に基づいて要求を生成し、当該要求をサーバ30へ送信する。一例として、画面P10において操作オブジェクトB10cが選択されると、クライアント装置10は、フィールドオブジェクトF10a~F10bの入力内容(被災建物を特定可能な情報)と、操作オブジェクトB10a~B10bに対する操作の結果(修理見積書ファイル)とを含む要求を生成する。
【0059】
ステップS111の後に、サーバ30は、契約情報の特定(S130)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS111において送信された要求を受信する。サーバ30は、契約データベース(
図5)を参照し、被災建物を対象とする契約情報を特定する。第1例として、サーバ30は、要求に含まれる証券番号に基づいて契約情報を特定する。第2例として、サーバ30は、要求に含まれる所在地情報に基づいて契約情報を特定する。
【0060】
ステップS130の後に、サーバ30は、外観測量結果の取得(S131)を実行する。
具体的には、サーバ30は、要求に含まれる情報を用いて、被災建物の外観測量結果を取得する。第1例として、サーバ30は、記憶装置31または外部装置に構築されたデータベースから被災建物の外観測量結果を取得する。第2例として、サーバ30は、記憶装置31または外部装置に構築されたデータベースから被災地域の外観測量結果を取得し、当該外観測量結果の一部を被災建物の所在地情報に基づいて抽出することで、被災建物の外観測量結果を取得する。第3例として、サーバ30は、要求に含まれる外観測量結果を取り出す。
【0061】
ステップS131の後に、サーバ30は、損害額の推定(S132)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS131において取得した外観測量結果に基づく入力データに、推定モデルを適用することで、被災建物の損害額を推定する。ここで、入力データは、被災建物に対して災害の発生後に行われた外観測量の結果に加えて、災害の発生前に行われた外観測量の結果に基づくように構成されてもよい。或いは、入力データは、被災建物に対して災害の発生後に行われた外観測量の結果に基づくが、災害の発生前に行われた外観測量の結果に基づかないように構成されてもよい。
【0062】
推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた外観測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する。また、推定モデルは、例えば、建物の用途または構造別に構築され、使い分けられてもよい。
【0063】
ここで、損害額は、被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるために必要な費用(以下、「復旧費用」)を含む。損害額は、復旧費用のみであってもよいし、復旧費用と付随費用との合算であってもよい。付随費用は、復旧に付随する費用であって、例えば、応急処置費用、原因調査費用、などを含むことができる。或いは、損害額は、復旧費用と付随費用との項目別に推定されてもよい。
【0064】
ステップS132の後に、サーバ30は、妥当性チェック(S133)を実行する。
具体的には、サーバ30は、要求に含まれる情報に基づいて、被災建物を対象とする修理見積総額を示す情報を取得する。第1例として、サーバ30は、要求に含まれる修理見積書ファイルから修理見積総額を示す情報を抽出する。第2例として、サーバ30は、要求に含まれる修理見積総額を示す情報を取り出す。
【0065】
サーバ30は、修理見積総額と、ステップS132において推定した損害額とに基づいて、見積エラー条件が成立するか否かを判定する。見積エラー条件は、例えば以下の少なくとも1つを含むことができる。
・修理見積総額と損害額との差の絶対値が第1閾値(≧0)を超える
・損害額に対する修理見積総額の比が第2閾値(≧1)を超える
・修理見積総額に対する損害額の比が第3閾値(≧1)を超える
【0066】
サーバ30は、少なくとも1つの見積エラー条件が成立する場合に、推定された損害額または修理見積が妥当でない可能性があるとして通知を行い、
図6の情報処理を終了する。推定された損害額が修理見積総額に対して過度に大きい場合に、損害額の推定が妥当でない(損害を過大評価している)可能性がある。推定された損害額が修理見積総額に対して過度に小さい場合に、損害額の推定が妥当でない(損害を過小評価している)、または修理見積が過剰請求である可能性がある。通知先は、例えば、ユーザ、保険会社、建設会社、または公的機関の少なくとも1つを含むことができる。
【0067】
一例として、サーバ30からの通知に応じて、クライアント装置10は、ディスプレイ21に
図8の画面P11を表示する。画面P11は、表示オブジェクトA11を含む。表示オブジェクトA11は、エラーメッセージを表示する。エラーメッセージは、自動審査が正常に終了しなかったことを伝える文章、鑑定人による現場調査が必要となったことを伝える文章、および現場調査の予約を促す情報(例えば、電話番号、および予約ページのリンク)を含む。
【0068】
ステップS133の後に、サーバ30は、補償額の査定(S134)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS130において特定した契約情報と、ステップS132において推定した損害額とに基づいて、被災建物に対する補償額を査定する。一例として、サーバ30は、契約情報によって特定された保険金、および損害額のいずれも超えないように補償額を査定する。サーバ30は、補償額を例えば、修理見積総額の全額、または修理見積総額に1未満の所定割合を乗じた額として査定し得る。
【0069】
ステップS134の後に、サーバ30は、応答(S135)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS134において査定した補償額に関する情報を含む応答を生成し、当該応答をクライアント装置10へ送信する。
【0070】
ステップS135の後に、クライアント装置10は、画面表示(S112)を実行する。
具体的には、クライアント装置10は、ステップS135において送信された応答を受信する。クライアント装置10は、応答に基づく画面をディスプレイ21に表示する。一例として、クライアント装置10は、ディスプレイ21に
図9の画面P12を表示する。画面P12は、表示オブジェクトA12を含む。表示オブジェクトA12は、自動審査の結果を表示する。自動審査の結果は、自動審査が正常に終了したことを伝える文章、査定額(つまり補償額)に関する情報、および支払時期を示す情報を含む。
【0071】
(5)小括
以上説明したように、本実施形態のサーバ30は、被災建物に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得し、当該視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに推定モデルを適用することで、当該被災建物の損害額を推定する。これにより、被災建物の損害額を低コストかつ短時間で推定し、被災建物の復旧作業を効率化することができる。
【0072】
サーバ30は、被災建物を対象とする損害保険の契約情報を特定し、当該契約情報と推定した損害額とに基づいて、当該被災建物に対する補償額を査定してもよい。一例として、サーバ30は、この契約情報によって特定された保険金、および推定された損害額のいずれも超えないように補償額を査定してもよい。これにより、損害保険の自動審査サービスをユーザに提供することが可能となる。
【0073】
サーバ30は、被災建物を対象とする修理見積総額を示す情報を取得し、推定された損害額と当該修理見積総額との差の絶対値が第1閾値を超える場合、当該損害額に対する当該修理見積総額の比が第2閾値を超える場合、当該修理見積総額に対する当該損害額の比が第3閾値を超える場合に、通知を行ってもよい。これにより、損害額の推定が妥当でない(損害を過小または過大に評価している)可能性がある、または修理見積が過剰請求されている可能性があることを関係者に知らせることができる。
【0074】
推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当してもよい。これにより、被災建物の損害の実損額を統計的に推定することができる。
【0075】
損害額は、復旧費用を含むように定義されてよい。また、損害額は、復旧費用に加えて付随費用を含むように定義されてもよい。これにより、損害保険の自動審査に適した損害額を推定することができる。
【0076】
視認可能な情報の測量は、無人飛行機、モバイル端末、または車両の少なくとも1つに搭載されたセンサ(カラーセンサ)、カメラ、又はこれらの組み合わせによって行われてよい。これにより、測量者に専門知識または技能がない場合であっても、損害額の推定に利用可能な視認可能な情報の測量結果を得ることができる。
【0077】
推定モデルに対する入力データは、被災建物に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づき、かつ災害の発生前に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づかないように構成されてもよい。これにより、災害の発生前に視認可能な情報の測量が行われていない被災建物に対しても損害額を推定することができる。
【0078】
(6)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0079】
(6-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、被災地域における被害総額を評価する例である。
図10は、変形例1の情報処理のフローチャートである。
【0080】
図10の情報処理は、サーバ30が、例えば、クライアント装置10から要求を受信したことに応じて開始する。
【0081】
図10に示すように、サーバ30は、外観測量結果の取得(S230)を実行する。
具体的には、サーバ30は、被災地域の外観測量結果を取得する。一例として、サーバ30は、記憶装置31または外部装置に構築されたデータベースから被災地域の外観測量結果を取得する。
【0082】
ステップS230の後に、サーバ30は、対象物と測量結果との関連付け(S231)を実行する。
具体的には、サーバ30は、被災地域に存在する複数の対象物の各々に、ステップS230において取得した外観測量結果のサブセットを関連付ける。ここで、対象物は、被災地域に存在する土地、または土地に付随する建物もしくは工作物である。土地は、例えば、宅地、田、畑、山林、河川、などの任意の種類の土地を含み得る。サーバ30は、外観測量結果を例えば土地、建物、または工作物に分類する画像処理を行うことで、各対象物に対する外観測量結果を取得する。或いは、サーバ30は、被災地域に存在する複数の対象物の所在地情報に基づいて、被災地域の外観測量結果を分割することで、各対象物に対する外観測量結果を取得してもよい。
【0083】
ステップS230の後に、サーバ30は、各対象物の損害額の推定(S232)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS230において取得した各対象物に対する外観測量結果に基づく入力データに、推定モデルを適用することで、当該対象物の損害額を推定する。ここで、入力データは、各対象物に対して災害の発生後に行われた外観測量の結果に加えて、災害の発生前に行われた外観測量の結果に基づくように構成されてもよい。或いは、入力データは、対象物に対して災害の発生後に行われた外観測量の結果に基づくが、災害の発生前に行われた外観測量の結果に基づかないように構成されてもよい。
【0084】
推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の対象物について、各対象物に対して当該災害の発生後に行われた外観測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各対象物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する。推定モデルは、対象物の種別毎に構築され、使い分けられてよい。
【0085】
ここで、損害額は、対象物の復旧費用を含む。損害額は、復旧費用のみであってもよいし、復旧費用と付随費用との合算であってもよい。或いは、損害額は、復旧費用と付随費用との項目別に推定されてもよい。
【0086】
ステップS232の後に、サーバ30は、被害総額の評価(S233)を実行する。
具体的には、サーバ30は、複数の対象物の各々についてステップS232において推定した損害額に基づいて、被災地域における被災総額を評価する。一例として、サーバ30は、複数の対象物に亘って損害額を合算することで、被害総額を算出する。サーバ30は、被害総額に関する情報を含む応答をクライアント装置10へ送信してもよい。
【0087】
以上説明したように、変形例1のサーバ30は、被災地域に存在する複数の対象物の各々に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得し、当該視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに推定モデルを適用することで、当該対象物の各々の損害額を推定する。さらに、サーバ30は、各対象物について推定された損害額に基づいて、被災地域における被害総額を評価する。これにより、被災地域における被害総額を低コストかつ短時間で推定し、例えば公的補助制度の立案に有用な情報を提供することができる。
【0088】
(7)その他の変形例
記憶装置11は、ネットワークNWを介して、クライアント装置10と接続されてもよい。ディスプレイ21は、クライアント装置10に備え付けられてもよいし、外付けされてもよい。記憶装置31は、ネットワークNWを介して、サーバ30と接続されてもよい。
【0089】
上記の情報処理の各ステップは、クライアント装置10及びサーバ30の何れでも実行可能である。また、上記説明では、各処理において各ステップを特定の順序で実行する例を示したが、各ステップの実行順序は、依存関係がない限りは説明した例に制限されない。さらに、上記説明では、実施形態の情報処理システムを、クライアント/サーバ型のシステムによって実装する例を示した。しかしながら、実施形態の情報処理システムは、スタンドアロン型のコンピュータによって実装することもできる。
【0090】
本実施形態では、サーバ30は、クライアント装置10からの要求に基づいて被災建物を対象とする契約情報を特定した。しかしながら、サーバ30は、クライアント装置10からの要求によらずに、被災建物の外観測量結果を取得し、当該外観測量結果に関連付けられる地理的座標に基づいて当該被災建物の所在地を特定してもよい。サーバ30は、特定した所在地に対応する契約情報を契約データベースから抽出することで、被災建物の契約情報を特定してもよい。これにより、ユーザからの申請を待たずに、被災建物を対象とする損害保険の自動審査を行うことができる。例えば、保険会社が、被災地域における個々のユーザから申請を受け付ける前に、当該被災地域においてどの程度の支払いが必要となるかを概算することが可能となる。
【0091】
本実施形態では、被災建物を対象とする損害保険の自動審査を提供する例を示した。しかしながら、かかる自動審査の代わりに、被災建物の損害額を推定するサービスを提供することも可能である。この場合に、
図6のステップS130、S133~S134は省略可能である。
【0092】
(8)付記
実施形態および変形例で説明した事項を、以下に付記する。
【0093】
(付記1)
コンピュータ(30)を、
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段(S131)、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、被災建物の損害額を推定する手段(S132)、
として機能させるプログラム。
【0094】
(付記2)
コンピュータを、
被災建物を対象とする損害保険の契約情報を特定する手段(S130)、
被災建物を対象とする損害保険の契約情報と、当該被災建物の損害額とに基づいて、当該被災建物に対する補償額を査定する手段(S134)、
としてさらに機能させる、付記1に記載のプログラム。
【0095】
(付記3)
補償額を査定する手段は、被災建物を対象とする損害保険の契約情報によって特定された保険金、および推定された当該被災建物の損害額のいずれも超えないように補償額を査定する、
付記2に記載のプログラム。
【0096】
(付記4)
契約情報を特定する手段は、視認可能な情報の測量の結果に関連付けられる地理的座標情報に基づいて被災建物の所在地を特定し、損害保険の契約情報が登録された契約データベースにおいて当該所在地に対応する契約情報を抽出する、
付記2または付記3に記載のプログラム。
【0097】
(付記5)
コンピュータを、
被災建物を対象とする修理見積総額を示す情報を取得する手段(S130)、
修理見積総額と被災建物について推定された損害額との差の絶対値が第1閾値を超える場合、当該損害額に対する当該修理見積総額の比が第2閾値を超える場合、当該修理見積総額に対する当該損害額の比が第3閾値を超える場合に、通知を行う手段(S133)、
としてさらに機能させる、付記1乃至付記4のいずれかに記載のプログラム。
【0098】
(付記6)
推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する、
付記1乃至付記5のいずれかに記載のプログラム。
【0099】
(付記7)
被災建物の損害額は、当該被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるために必要な費用を含む、
付記1乃至付記6のいずれかに記載のプログラム。
【0100】
(付記8)
被災建物の損害額は、当該被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるための付随費用をさらに含む、
付記1乃至付記7のいずれかに記載のプログラム。
【0101】
(付記9)
被災建物に対する視認可能な情報の測量は、無人飛行機、モバイル端末、または車両の少なくとも1つに搭載されたセンサ、カメラ、またはこれらの組み合わせによって行われる、
付記1乃至付記8のいずれかに記載のプログラム。
【0102】
(付記10)
入力データは、被災建物に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づき、かつ被災建物に対して災害の発生前に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づかない、付記1乃至付記9のいずれかに記載のプログラム。
【0103】
(付記11)
コンピュータを、
災害により損害を被った被災地域に存在する土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物である複数の対象物の各々に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段(S230)、
過去に災害により損害を被った複数の土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、被災地域に存在する複数の対象物の各々に対する視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データにそれぞれ適用することで、当該複数の対象物の各々の損害額を推定する手段(S232)、
複数の対象物の各々について推定された損害額に基づいて、被災地域における被害総額を評価する手段(S233)、
として機能させる、プログラム。
【0104】
(付記12)
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段(S131)と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、被災建物の損害額を推定する手段(S132)と、
を具備する、情報処理装置(30)。
【0105】
(付記13)
コンピュータ(30)が、
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得するステップ(S131)と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、被災建物の損害額を推定するステップ(S132)と、
を具備する方法。
【0106】
(付記14)
クライアント装置(10)と、サーバ(30)とを具備し、
クライアント装置は、
災害により損害を被った被災建物の損害額の推定に関する要求を、ユーザによる指示に応じて生成する手段(S111)と、
要求をサーバへ送信する手段(S111)と
を備え、
サーバは、
要求を取得する手段(S130)と、
要求に応じて、被災建物に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段(S131)と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の外観と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、被災建物の損害額を推定する手段(S132)と、
被災建物の損害額の推定結果に関する応答を生成する手段(S135)と、
応答をクライアント装置へ送信する手段(S135)と
を備える、システム。
【0107】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 :情報処理システム
10 :クライアント装置
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
21 :ディスプレイ
30 :サーバ
31 :記憶装置
32 :プロセッサ
33 :入出力インタフェース
34 :通信インタフェース
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の視認可能な情報と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定する手段、
として機能させ、
前記推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当するプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記被災建物を対象とする損害保険の契約情報を特定する手段、
前記被災建物を対象とする損害保険の契約情報と、当該被災建物の損害額とに基づいて、当該被災建物に対する補償額を査定する手段、
としてさらに機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記補償額を査定する手段は、前記被災建物を対象とする損害保険の契約情報によって特定された保険金、および推定された当該被災建物の損害額のいずれも超えないように前記補償額を査定する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記契約情報を特定する手段は、前記視認可能な情報の測量の結果に関連付けられる地理的座標情報に基づいて前記被災建物の所在地を特定し、損害保険の契約情報が登録された契約データベースにおいて当該所在地に対応する契約情報を抽出する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、
前記被災建物を対象とする修理見積総額を示す情報を取得する手段、
前記修理見積総額と前記被災建物について推定された損害額との差の絶対値が第1閾値を超える場合、当該損害額に対する当該修理見積総額の比が第2閾値を超える場合、当該修理見積総額に対する当該損害額の比が第3閾値を超える場合に、通知を行う手段、
としてさらに機能させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記被災建物の損害額は、当該被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるために必要な費用を含む、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記被災建物の損害額は、当該被災建物を災害の発生前の状態に復旧させるための付随費用をさらに含む、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
被災建物に対する視認可能な情報の測量は、無人飛行機、モバイル端末、または車両の少なくとも1つに搭載されたセンサ、カメラ、またはこれらの組み合わせによって行われる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項9】
前記入力データは、前記被災建物に対して災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づき、かつ前記被災建物に対して災害の発生前に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づかない、請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
災害により損害を被った被災地域に存在する土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物である複数の対象物の各々に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段、
過去に災害により損害を被った複数の土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物の当該災害の発生後の視認可能な情報と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記被災地域に存在する複数の対象物の各々に対する前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データにそれぞれ適用することで、当該複数の対象物の各々の損害額を推定する手段、
前記複数の対象物の各々について推定された損害額に基づいて、前記被災地域における被害総額を評価する手段、
として機能させ、
前記推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の土地、または当該土地に付随する建物もしくは工作物について、各土地、建物、工作物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各土地、建物、工作物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する、プログラム。
【請求項11】
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の視認可能な情報と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定する手段と、
を具備し、
前記推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する、情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータが、
災害により損害を被った被災建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得するステップと、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の視認可能な情報と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定するステップと、
を具備し、
前記推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する、情報処理方法。
【請求項13】
クライアント装置と、サーバとを具備し、
前記クライアント装置は、
災害により損害を被った被災建物の損害額の推定に関する要求を、ユーザによる指示に応じて生成する手段と、
前記要求を前記サーバへ送信する手段と
を備え、
前記サーバは、
前記要求を取得する手段と、
前記要求に応じて、前記被災建物に対して前記災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果を取得する手段と、
過去に災害により損害を被った複数の建物の当該災害の発生後の視認可能な情報と当該損害の実績額との関係についての機械学習を利用して構築された推定モデルを、前記視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データに適用することで、前記被災建物の損害額を推定する手段と、
前記被災建物の損害額の推定結果に関する応答を生成する手段と、
前記応答を前記クライアント装置へ送信する手段と
を備え、
前記推定モデルは、過去に災害により損害を被った複数の建物について、各建物に対して当該災害の発生後に行われた視認可能な情報の測量の結果に基づく入力データと、当該入力データにそれぞれ関連付けられ、かつ各建物が当該災害により被った損害の実績額を特定可能な正解データとを含む学習用データセットを用いた教師あり学習により作成された学習済みモデル、または当該学習済みモデルの派生モデルもしくは蒸留モデルに相当する、システム。