(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161906
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】表示制御装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20231031BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231031BHJP
B60R 1/23 20220101ALI20231031BHJP
【FI】
H04N7/18 J
G08G1/16 D
B60R1/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072548
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉正
(72)【発明者】
【氏名】道口 将由
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC13
5C054FD03
5C054FD07
5C054FE12
5C054FF03
5C054GB01
5C054HA30
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF27
5H181FF32
5H181FF39
5H181LL01
5H181LL02
(57)【要約】
【課題】車両周辺画像が示す方向を直感的に把握することが可能な表示制御装置を提供する。
【解決手段】表示制御装置は、車両に搭載され、車両の周辺を撮影した撮影画像を受信する画像入力部と、画像入力部が受信した撮影画像に基づいて第1の仮想視点から見た車両の周辺を示す車両周辺画像を生成する車両周辺画像生成部と、車両の周辺を監視する主体である、車両の搭乗者、または車両、または車両と搭乗者の両方、のうち何れかの主体を示す3次元データに基づいて、第1の仮想視点とは異なる第2の仮想視点から見た主体を示す主体画像を出力する主体画像出力部と、主体画像を車両周辺画像に重畳して表示画像を生成する画像重畳部と、を備え、第1の仮想視点から車両の周辺を見る第1の視線の方位は、第2の仮想視点から主体を見る第2の視線の方位と略同一である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の周辺を撮影した撮影画像を受信する画像入力部と、
前記画像入力部が受信した前記撮影画像に基づいて第1の仮想視点から見た前記車両の周辺を示す車両周辺画像を生成する車両周辺画像生成部と、
前記車両の周辺を監視する主体である、前記車両の搭乗者、または前記車両、または前記車両と前記搭乗者の両方、のうち何れかの主体を示す3次元データに基づいて、前記第1の仮想視点とは異なる第2の仮想視点から見た前記主体を示す主体画像を出力する主体画像出力部と、
前記主体画像を前記車両周辺画像に重畳して表示画像を生成する画像重畳部と、
を備え、
前記第1の仮想視点から前記車両の周辺を見る第1の視線の方位は、前記第2の仮想視点から前記主体を見る第2の視線の方位と略同一である、
表示制御装置。
【請求項2】
前記第2の仮想視点に対する前記第1の仮想視点の方位は、前記第2の視線の方位と略同一である、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記第2の仮想視点と前記主体との距離は、前記第1の仮想視点と前記主体との距離よりも大きい、
請求項1または請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記第1の仮想視点の水平位置は、前記車両の水平位置と重なり、
前記第2の仮想視点の水平位置は、前記車両の水平位置と重ならない、
請求項1または請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記第1の仮想視点と前記第2の仮想視点との少なくとも一方を移動させる視点移動部と、
前記第1の仮想視点または前記第2の仮想視点の移動に同期して、前記第1の視線の方位および前記第2の視線の方位の両方を同時に変更する視線変更部と、
を備え、
前記視線変更部は、前記第1の視線の方位が、前記第2の視線の方位と同じになるように、前記第1の視線の方位と前記第2の視線の方位との両方を同時に変更する、
請求項1または請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記第1の仮想視点および前記第2の仮想視点の少なくとも一方が移動する移動経路の形状は、円または弧であり、
前記第1の仮想視点および前記第2の仮想視点の一方が移動する場合、移動する仮想視点の移動経路である円または弧の中心の水平位置は、移動しない仮想視点の水平位置と同じであり、
前記第1の仮想視点および前記第2の仮想視点の両方が移動する場合、一方の仮想視点の移動経路である円または弧の中心の水平位置は、他方の仮想視点の移動経路である円または弧の中心の水平位置と同じである、
請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記画像重畳部は、
前記車両周辺画像において画像が射影されていない死角領域と重なるように前記主体画像を重畳し、
前記車両周辺画像において画像が射影されている有効領域と重なる量が小さくなるように、前記主体画像の大きさまたは形を変えて重畳するか、または、前記主体画像が前記有効領域と重ならないように、前記主体画像の大きさまたは形を変えて重畳する、
請求項1または請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記画像重畳部は、前記死角領域のうち、前記主体画像が重ならない領域において、死角であることを示す表示を行う、
請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記死角であることを示す表示は、矢印の表示、無彩色の表示、またはハッチングを用いる表示の何れかである、
請求項8に記載の表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周辺を撮影する複数の車載カメラから出力される画像に基づいて、仮想視点から見た車両画像(主体画像)と、車両の周囲を示す車両周囲画像を生成し、表示する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車室内にある仮想視点から見た車両の周辺と、車両の車体とを示す仮想視点画像を、視点位置および視線方向を車室内で移動させながら、連続的に生成する構成が開示されている。仮想視点画像を視線の方向を変えながら表示することで、車両の周囲を見回すイメージの表示画像を生成することが可能であるが、仮想視点画像の視点位置を運転者が位置する車室内におくと、仮想視点と運転者の視点との差が小さくなり、仮想視点画像が運転者から見た画像に近くなるので、表示画像を見やすくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示画像で見えている方向が、車両に対してどの方向であるかわかるように、車室内から見えている車室の内装を車両周囲画像に重畳する場合、表示画像で見えている方向が車体(周辺を監視する主体)に対して、どの方向なのか直感的に把握し難い。また、車体で隠される部分を表示するために車室の内装を半透過で表示する場合、車外の車両周囲画像および車室の内装の画像の何れも見づらくなる上に、車室の内装の画像が、周辺を監視する主体の画像(主体画像)である事を、直感的に把握し難い。
【0006】
本開示の目的は、車両周辺画像が示す方向を直感的に把握することが可能な表示制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る表示制御装置は、
車両に搭載され、前記車両の周辺を撮影した撮影画像を受信する画像入力部と、
前記画像入力部が受信した前記撮影画像に基づいて第1の仮想視点から見た前記車両の周辺を示す車両周辺画像を生成する車両周辺画像生成部と、
前記車両の周辺を監視する主体である、前記車両の搭乗者、または前記車両、または前記車両と前記搭乗者の両方、のうち何れかの主体を示す3次元データに基づいて、前記第1の仮想視点とは異なる第2の仮想視点から見た前記主体を示す主体画像を出力する主体画像出力部と、
前記主体画像を前記車両周辺画像に重畳して表示画像を生成する画像重畳部と、
を備え、
前記第1の仮想視点から前記車両の周辺を見る第1の視線の方位は、前記第2の仮想視点から前記主体を見る第2の視線の方位と略同一である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両周辺画像が示す方向を直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る表示制御装置が適用された車両を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る表示制御装置が適用された車両を示すブロック図である。
【
図5A】一次射影について説明するための図である。
【
図5B】二次射影について説明するための図である。
【
図6A】仮想視点を車両の後方にずらしたときに、見える部分について説明するための図である。
【
図6B】仮想視点を車両の後方にずらしたときに、見えにくくなる部分について説明するための図である。
【
図7】第1の仮想視点および第2の仮想視点の配置例を示す図である。
【
図9】第2の仮想視点の他の配置例を示す図である。
【
図10A】第1の仮想視点および第2の仮想視点の移動経路の一例を示す図である。
【
図10B】第1の仮想視点および第2の仮想視点の移動経路の一例を示す図である。
【
図11】表示制御装置の表示制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】
図7における主体を運転者としたときの図である。
【
図13A】主体を運転者としたときの仮想視点と運転者との位置関係を示す図である。
【
図13B】主体を運転者としたときの仮想視点と運転者との位置関係を示す図である。
【
図14】射影面を円筒形としたときの射影面の配置例を示す図である。
【
図15A】主体画像を縮小した時の表示画像の一例を示す図である。
【
図15B】主体画像を縮小した時の表示画像の一例を示す図である。
【
図16A】死角であることを示す表示を加えた表示画像の一例を示す図である。
【
図16B】死角であることを示す表示を加えた表示画像の一例を示す図である。
【
図18】仮想視点の移動経路の変形例を示す図である。
【
図19A】仮想視点の移動経路の変形例を示す図である。
【
図19B】仮想視点の移動経路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る表示制御装置100が適用された車両1を示す図である。
図2は、本実施の形態に係る表示制御装置100が適用された車両1を示すブロック図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、車両1は、車両1の周辺を撮影して、撮影した画像を車両1の搭乗者に表示可能な車両周辺表示システムを構成しており、複数の撮像部10と、操作部20と、表示部30と、表示制御装置100とを有する。
【0012】
複数の撮像部10は、車両1の前部、左部、右部、後部の4箇所に1つずつ設けられた車載カメラであり、車両1の前方、左方、右方、後方の4方向の画像を撮影可能である。
【0013】
複数の撮像部10は、主に路面を写すために、斜め下方に俯角を付けて取り付けられている(
図3も参照)。各撮像部10の視野角は、190度以上であり、4つの撮像部10により、車両1の全周囲を視界に収めることが可能である。複数の撮像部10は、撮影した4方向の画像を表示制御装置100に送る。
【0014】
なお、撮像部10の数は、4つに限定されず、また、撮像部10の位置は、
図1に示す位置に限定されない。例えば、視野角が45度程度の側後方監視用の撮像部を加えて、合計6つの撮像部の撮影画像から表示画像を合成してもよい。
【0015】
操作部20は、例えば、ユーザー(搭乗者)が操作可能な車載装置(表示部30等)の操作ボタンや運転操作を行う部分(ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル等)である。操作部20は、ユーザーの操作(操作ボタンの操作や車両1の運転操作)の情報を表示制御装置100に送る。
【0016】
表示部30は、例えばナビゲーション装置等の車載装置と共用するディスプレイであり、表示制御装置100が生成した表示画像を表示する。表示部30は、例えばタッチパネルであっても良く、上記の操作部20の機能を有していても良い。
【0017】
表示制御装置100は、例えば、車両1に搭載されるECU(Electronic Control Unit)であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。表示制御装置100は、予め設定されたプログラムに基づいて、4つの撮像部10から取得した車両1の周囲の画像に基づいて生成された表示画像を表示部30に表示する。具体的には、表示制御装置100は、車両1の搭乗者が車両1の周囲を見回しているように連続的に変化する表示画像を表示部30に出力する。
【0018】
図2に示すように、表示制御装置100は、画像入力部110と、モード制御部120と、車両周辺画像生成部130と、主体画像出力部140と、画像重畳部150と、視点移動部160と、視線変更部170とを有する。なお、
図2は表示制御装置の物理的構成やパーツの個数、あるいは、機能的な包含関係を限定するものではない。例えば、操作部20は複数個あってもよいし、視点移動部160は視線変更部170の一機能として取り込まれていてもよい
【0019】
モード制御部120は、ユーザーの操作の情報に基づいて、表示画像の形式(表示モード)を設定する。例えば、車両1を起動させるための操作をユーザーが行った場合、モード制御部120は、後述する車両周辺画像生成部130と、主体画像出力部140および画像重畳部150によって生成された表示画像を表示部30に表示するように設定する。また、車両1の運転を開始するための操作や、イグニションキーをオフにする等、車両1を停止するための操作をユーザーが行った場合、モード制御部120は、上記の表示画像を表示部30に表示しないように設定する。
【0020】
画像入力部110は、4つの撮像部10から、車両1の周辺を撮影した画像を受信し、レンズ歪み補正等の歪曲補正を施した撮影画像を出力する。例えば、
図3に示すように、車両1の左部に設けられた撮像部10を前方から見た場合の、撮像部10の左右方向の視野範囲は、撮像部10の位置Cを中心とした円弧の範囲である。
図3では、一例として車両1の左部に設けられた撮像部10を例示しているが、前部、右部、後部の撮像部10についても同様である。なお、撮像部10を側方から見た場合についても、撮像部10の前後方向の視野範囲は、撮像部10の位置Cを中心とした円弧の範囲を有している。
【0021】
画像入力部110では、視野範囲をおおう矩形領域上の画素に対応付けられるように、歪曲補正を施した撮影画像が取得される。矩形領域は、例えば、
図3に示す左右方向の視野範囲の円弧の両端を結ぶ線Lと、前後方向の視野範囲の円弧の両端を結ぶ線(不図示)とで囲まれる領域である。歪曲補正は、表示制御装置100で行われても良いし、撮像部10や、他の補正装置で行われても良い。
【0022】
車両周辺画像生成部130は、画像入力部110が受信した画像に基づいて、第1の仮想視点から車両1の周辺を見た車両周辺画像を生成する。具体的には、車両周辺画像生成部130は、4つの撮像部10の各撮影画像を射影面(例えば、路面に相当する平面)に射影して、1枚の俯瞰画像に合成する。
【0023】
具体的には、車両周辺画像生成部130は、画像入力部110が受信した撮影画像上の画素を、例えば路面Rの平面上の画素に読み替える(対応付ける)射影変換を行う(一次射影)。例えば、撮像部10の位置Cと、撮影画像上の画素Aを結ぶ線の延長線が、路面Rと交差する点が、射影点Bである。
【0024】
このような射影変換を、撮影画像上の全ての画素について行うことで、路面R上に射影された画素の集合である、射影画像が得られる。路面Rにおける射影画像の範囲は、左右方向では、撮影画像の範囲である線Lの両端部の画素と、撮像部10の位置Cとを結ぶ線の延長線のそれぞれが、路面Rと交差する点B1,B2の範囲である。前後方向においても、図示しないが、撮影画像の範囲の両端部の画素と、撮像部10の位置Cとを結ぶ線の延長線のそれぞれが、路面Rと交差する点の範囲である。これらの範囲に囲まれた領域が射影面となっている。
【0025】
各撮像部10の撮影画像に基づいて、それぞれ射影画像を生成可能であるので、例えば、4つの撮像部10により、
図4に示すように、車両1の全周囲の射影画像が得られることになる。
図4におけるP1は、車両1の右部の撮像部10による射影面である。
図4におけるP2は、車両1の前部の撮像部10による射影面である。
図4におけるP3は、車両1の左部の撮像部10による射影面である。
図4におけるP4は、車両1の後部の撮像部10による射影面である。
【0026】
この射影画像を、車両1の上方に位置する仮想視点から見た画像が俯瞰画像である。つまり、車両周辺画像生成部130は、第1の仮想視点から射影画像を見た俯瞰画像を生成する。俯瞰画像は路面Rに射影(一次射影)された画像を、視点を変えて再び射影(二次射影)したものである、と言って良い。
【0027】
車両1の前後左右のそれぞれに設けられた撮像部10の各撮影画像に基づく4つの俯瞰画像を1枚に合成したものが全周囲画像である。つまり、車両周辺画像生成部130は、全周囲画像を、車両周辺画像として生成する。画像を見る視点位置を実際の視点(撮像部10の位置)から仮想視点に変えることを視点変換とも呼ぶ。
【0028】
ところで、遠方の風景や立体物を路面Rに射影すると、遠ざかる方向に長く伸びた不自然な画像になる。そこで、本実施の形態では、
図5Aに示すように、路面Rではなく、路面Rから車両1の遠方で立ち上げた面を射影面PPとする。より詳細に、射影面PPは、例えば、路面Rにおける車両1から所定距離延びた第1面PP1と、第1面PP1の端から車両1から離れるにつれ上に位置するように傾斜した第2面PP2とで構成される。所定距離は、例えば、車両1より高くない範囲に対応する距離である。このような射影面の範囲が、一次射影の範囲となる。
【0029】
また、車両1を真上から見下ろした俯瞰画像は、運転者が見る画像とは乖離しているため、例えば、
図5Bに示すように、車両1の斜め上の視点位置(第1の仮想視点V1)から見た画像に変換(二次射影)すると、運転者から見た目に近い画像になる。
【0030】
例えば、車両1の尾部の少し上方の位置を第1の仮想視点V1として、この仮想視点V1から、射影面を見たとする。第1の仮想視点V1を視点位置とした視野範囲の中央となる方向が、仮想の視線方向D1となる。この視線方向D1は、運転者の目の位置を通らないが、真上から見下ろす視線方向よりは、運転者の視線に近いものとなる。第1の仮想視点V1から、視線方向D1を中心として、上下左右の視野範囲に含まれる射影面PP(路面Rにある第1面PP1と傾斜した第2面PP2)が二次射影の範囲となる。
【0031】
撮像部10の撮影画像のみを視点変換して表示部30に表示すると、どの方向が表示されているのか把握できなくなることがある。それに対し、本実施の形態では、視点位置をやや後方に下げて車両1の上方に配置することで、車両1の像が視界内に入るようにしているので、車両1の像を基準としてどの方向が表示されているのかが把握できるようになる。
【0032】
ただし、撮像部10には、車両1が映らないため、車両1の像を補う必要がある。また、二次射影の範囲の内、少なくとも車両1の下側に位置する範囲は撮像部10に映らない死角領域であり、車両周辺画像において空白領域となる。そこで、主体画像出力部140および画像重畳部150によって、車両1の3D(3次元)モデルを仮想視点(第2の仮想視点V2)から見た主体画像を、車両周辺画像の死角領域に重畳した表示画像を生成する。
【0033】
主体画像出力部140は、例えば車両1を模した3Dモデル(3次元データ)に基づいて、第1の仮想視点とは異なる第2の仮想視点から車両1を見た像に相当する主体画像を出力する。ここで、車両1を、車両周辺画像を監視する主体という意味で、主体と呼び、主体の3Dモデル(3次元データ)に基づいて出力された画像を主体画像と呼ぶこととする。車両を含む主体画像を車両画像と呼んでも良いし、車両画像を主体画像と読み替えても良い。
【0034】
画像重畳部150は、主体画像を車両周辺画像に重畳して表示画像を生成する。
【0035】
車両1の搭乗者が、車両1の周囲におけるどの方向であるかわかるような表示画像とするためには、第2の仮想視点を車両1から遠ざけて車体全体を表示画像に写し、車両1の向きを基準として、車両周辺画像がどの方向の画像であるかが判るようにすれば良い。例えば、
図6Aに示すように、車両1から離れた視点位置VVから、視線を車両1に向けた状態で、車両1からの距離を保って視点位置VVを周回させ、それに合わせて車両1の3Dモデルが回転するような主体画像を、車両周辺画像に重畳して表示すると、車両1の周囲を見回しているように変化する表示画像となる。
【0036】
しかし、視点位置VVを車両1の後方に下げると、車両1の後方(手前側)の路面の方が、車両1の前方(向こう側)の路面よりも視点位置VVに近いので、視線を向けていた車両1の向こう側よりも、車両1が表示部30に大きく表示される。その結果、車両1の向こう側は表示画像上で小さく表示される。
【0037】
また、
図6Bに示すように、視点位置VVを車両1の後方に下げるほど、浅い角度で二次射影されることになるので、射影面PPの像のうち、車両1よりも手前側(視点位置VV側)の破線部分に射影された像は、表示部30の表示画面上で上下方向に圧縮されて(潰されて)表示される。そのため、表示部30において何が表示されているかわからなくなる。
【0038】
また、車両1の像が、視線を向けていた車両1の向こう側の車両周辺画像の上に重畳されるので、車体の像の影になる部分(車両1に対して視点位置VV側とは反対側の破線部分)、つまり、表示画像の中央の部分は、車両周辺画像が視認できなくなる。
【0039】
このように、車両1の全体の像を表示する目的で、視点位置(仮想視点の位置)を車両1の後方にすると、視線方向の車両周辺画像が見えにくくなるので、車両1の周辺の安全確認の目的に適さない。
【0040】
それに対して、本実施の形態では、車両周辺画像の視点位置(第1の仮想視点V1)と主体画像の視点位置(第2の仮想視点V2)とを分離し、
図7に示すように、車両周辺画像の視点位置(第1の仮想視点V1)を車両1の上から離れない位置とする。つまり、第1の仮想視点V1の位置は、上から見て車両1と重なる位置である。言い換えると、第1の仮想視点V1の水平位置は、車両1の水平位置と重なる。
図7には、車両1を側方から見た図を上側に示し、車両1を上方から見た図を下側に示している。
【0041】
そして、車両1の画像である主体画像の視点位置(第2の仮想視点V2)を第1の仮想視点V1よりも後方の位置とする。つまり、第2の仮想視点V2の位置は、上から見て車両1と重ならない位置である。言い換えると、第2の仮想視点V2の水平位置は、車両1の水平位置と重ならない。
【0042】
さらに、第2の仮想視点V2は、第1の仮想視点V1よりも車両1から離れている。言い換えると、第2の仮想視点V2と主体(車両1)との距離は、第1の仮想視点V1と主体(車両1)との距離よりも大きい。さらに言い換えると、第2の仮想視点V2と、表示部30の表示対象となる射影面PPとの距離は、第1の仮想視点V1と、表示部30の表示対象となる射影面PPとの距離よりも大きい。
【0043】
また、第2の仮想視点V2は、車両1全体が映るように、第1の仮想視点V1を基準とした視線方向を、射影面PPとは逆側に延長した位置に位置する。つまり、第1の仮想視点V1から車両1の周辺を見る第1の視線S1の方位は、第2の仮想視点V2から車両1を見る第2の視線S2の方位と略同一であり、かつ、第2の仮想視点V2に対する第1の仮想視点V1の方位は、第2の視線S2の方位と略同一である。略同一としたのは、視線S1の方位と視線S2の方位とが常に同一である事は必要ないからである。例えば、車両周辺画像の生成に要する処理時間の関係で、同じ表示画像上に表示された車両周辺画像と車両画像との視線の方位が5度程度ずれていたとしても、どの方向の車両周辺画像が表示されているか、運転手が把握する上で何ら問題は無い。特に、車両1が走行しておらず、直ちに走行可能な状態でもない時には、表示画像における角度の正確さは重要ではない。
【0044】
一方、主体画像出力部140は、第2の仮想視点V2から車両1を見下ろした車両画像(主体画像)を出力する。正確には、車両1の3次元データ(例えば3Dモデル)に基づいて、車両1を第2の仮想視点V2から見た像に相当する主体画像を出力する。
【0045】
3次元データは、例えば、車両1の3Dモデル(例えば、ポリゴンモデル)のデータであり、例えばポリゴンモデルの場合、面を成す三角形の頂点の座標の組(集合体)で構成される。この各々の頂点の座標を視線の方向に応じて回転させ、視点から各々の頂点を通って射影面と交わる点を求める事により、3Dモデルを射影した主体画像を生成することが出来る。主体画像出力部140は、記憶した3Dモデルに基づく主体画像を生成して出力しても良いし、予め視点位置を変えて生成した主体画像を記憶しておいて、指定された視点位置に応じて、記憶していた主体画像の一つを選択して出力してもよい。ここで、仮想視点を変えて生成した仮想の画像の代わりに、車体を多方向から撮影した実写画像を用いても良く。この場合、主体を示す3次元データは車体を多方向から撮影した実写画像である。なお、実際には3Dモデルを用いる例が一般的であるので、実施例では3Dモデルを用いるものとして説明する。
【0046】
画像重畳部150は、出力された主体画像を、第1の仮想視点V1に基づいて生成された車両周辺画像の死角領域となる部分に重畳する。言い換えると、画像重畳部150は、車両周辺画像において画像が射影されていない死角領域と重なるように主体画像を重畳する。死角領域は、撮影画像に映らない車両1の下の領域である。例えば、
図8に示すように、車両1の前方を示す表示画像Gは、前方の撮像部10による俯瞰画像G1、右方の撮像部10による俯瞰画像G2、左方の撮像部10による俯瞰画像G3を組み合わせた車両周辺画像に、車両1の3Dモデルである主体画像G4を重畳した画像となる。主体画像G4は、俯瞰画像G1,G2,G3に含まれない、死角領域G5を覆い隠す様に位置する。
【0047】
なお、表示画像として示される車両周辺画像は、運転者が車両1の内部から一方向に視線を向けて見た画像をイメージしているため、例えば、全方位360度の領域ではなく、視線方向から左右90度の範囲、つまり、約半分程度の領域となる。
図8における車両周辺画像は、運転者が前方を見ていることを想定している例であるので、前半分の領域のみとなっている。
【0048】
また、車両周辺画像は第1の仮想視点V1から見ているものなので、搭乗者の視野に基づく車両周辺画像の表示範囲に対して、第2の仮想視点V2から見た主体画像の一部(搭乗者の視点より後の部分等)が外れることになる。そのため、表示画像G上で車両周辺画像に主体画像G4を重畳させる際に、車両周辺画像の表示範囲から主体画像G4の一部が外れるようにしても良い。
【0049】
また、主体画像G4は、第2の仮想視点V2から見た、3Dモデルに基づくものであるため、車両周辺画像に重畳させると、死角領域G5からはみ出る。主体画像G4が、車両周辺画像の死角領域からはみ出た部分は、車両周辺画像を隠す事になるので、主体画像G4を半透過、または、ワイヤフレームにして、主体画像G4越しに車両周辺画像が見えるようにしても良い。
【0050】
また、主体画像は、車両周辺画像の視線の方位を示す目的で表示されるので、車両周辺画像に基づく視線(第1の仮想視点の方位)と、主体画像の方位とが同じであれば良く、主体画像の視点(第2の仮想視点)は、必ずしも車両周辺画像の視線の延長線上にある必要はない。例えば、
図9に示すように、車両周辺画像の視点(第1の仮想視点V1)から、車両周辺画像の視線の方位と反対方向に水平に移動した位置に、主体画像の視点(第2の仮想視点V2)があっても良い。また、主体は搭乗者や搭乗者と車両の組合せであっても良いので、実施例の表示制御装置は、車両に搭載され、車両の周辺を撮影した撮影画像を受信する画像入力部と、画像入力部が受信した撮影画像に基づいて第1の仮想視点から見た車両の周辺を示す車両周辺画像を生成する車両周辺画像生成部と、車両の周辺を監視する主体である、車両の搭乗者、または車両、または車両と搭乗者の両方、のうち何れかの主体を示す3次元データに基づいて、第1の仮想視点とは異なる第2の仮想視点から見た主体を示す主体画像を出力する主体画像出力部と、主体画像を車両周辺画像に重畳して表示画像を生成する画像重畳部と、を備え、第1の仮想視点から車両の周辺を見る第1の視線の方位は、第2の仮想視点から主体を見る第2の視線の方位と略同一であり、かつ、第2の仮想視点に対する第1の仮想視点の方位は、第2の視線の方位と略同一である表示制御装置、と言っても良い。
【0051】
上記のように、車両周辺画像に主体画像が重畳された表示画像は、一つの方向の車外映像を表示し続けても良いし、視点移動部160および視線変更部170によって、車両1の搭乗者が車両1の周囲を見回しているように連続的に変化してもよい。
【0052】
視点移動部160は、車両1に対して第1の仮想視点V1および第2の仮想視点V2を移動させる。視線変更部170は、第1の仮想視点V1または第2の仮想視点V2の移動に同期して第1の視線の方位S1および第2の視線の方位S2の両方を同時に変更する。より詳細には、視線変更部170は、第1の視線の方位S1が、第2の視線の方位S2と同じであり、かつ、第2の仮想視点V2に対する第1の仮想視点V1の方位が、第2の視線S2の方位と同じであるように、第1の視線の方位S1と第2の視線の方位S2との両方を同時に変更する。なお、前述の通り、車両が走行しない時は方位S1と方位S2が多少ずれてもよいが、方位S1と方位S2を同じにした方が、表示として品位が良くなる。
【0053】
図10Aおよび
図10Bに示すように、第1の仮想視点V1および第2の仮想視点V2が移動する移動経路Mの形状は、円であり、第1の仮想視点V1および第2の仮想視点V2の両方が移動する場合、一方の仮想視点の移動経路M1である円の中心の水平位置は、他方の仮想視点の移動経路M2である円の中心の水平位置と同じである。
【0054】
例えば、
図10Aに示すように、円の中心、または車両の中心から見て車両周辺画像の仮想視点V1と、主体画像の仮想視点V2とが同じ側にあるように、2つの仮想視点が配置されている。仮想視点V1は、移動経路M1上を周回し、仮想視点V2は、移動経路M2上を周回する。
【0055】
このように、視線方向(第1の仮想視点と第2の仮想視点とが同一線上にある方向)を、車両1に対して回転させることにより、
図10Bに示すように、自動的に車両1の全方位を見回せるようにする。
【0056】
例えば、
図10Bの(1)は、視線の方位S1,S2が、車両1の前方を向く例であり、(2)は、視線の方位S1,S2が、車両1の左斜め前方を向く例であり、(3)は、視線の方位S1,S2が、車両1の左方を向く例であり、(4)は、視線の方位S1,S2が、車両1の左斜め後方を向く例である。
【0057】
表示画像では、
図10Bの(1)の場合、(1)の主体画像が、(1)における視線の方位S1,S2に対応する車両周辺画像に重畳され、
図10Bの(2)の場合、(2)の主体画像が、(2)における視線の方位S1,S2に対応する車両周辺画像に重畳される。また、
図10Bの(3)の場合、(3)の主体画像が、(3)における視線の方位S1,S2に対応する車両周辺画像に重畳され、
図10Bの(4)の場合、(4)の主体画像が、(4)における視線の方位S1,S2に対応する車両周辺画像に重畳される。
【0058】
画像処理としては、車両周辺画像の視点位置(第1の仮想視点)と主体画像の視点位置(第2の仮想視点)とを固定し、一次射影した射影面上の画像と車両1の3Dモデルとを回転させても良い。
【0059】
また、射影面上の画像と車両1の3Dモデルとを固定して、第1の仮想視点と、第2の仮想視点との視線方向が同じになるように、第1の仮想視点と、第2の仮想視点とを回転させても良い。この場合、第1の仮想視点および第2の仮想視点は、回転中心が同じである、異なる円軌道を、それぞれ回転角を同じにするように移動する。そして、視線方向が、その移動に同期して、常に円の中心を向くように回転する。
【0060】
また、視線変更部170は、視線方向を、連続的に回転させても良いし、離散的に(例えば、1秒経過する毎に45度ずつ)回転させても良い。
【0061】
また、視線方向を連続的に回転させる場合、表示部30の画面上で表示画像が横方向に流れる表示となるので、何が映っているのか確認しにくい事がある。そこで、視線変更部170は、例えば、ユーザーの操作に応じて、視線方向の回転速度を低下させたり、または回転を停止させたりしても良い。
【0062】
例えば、操作部20および表示部30としてタッチパネル形式のものが適用された構成であるとする。この構成において、ユーザーが、タッチパネルにおいてタッチまたはスワイプ等の操作を行った場合、視線変更部170は、当該操作に応じて視点位置や回転方向を変更しても良い。例えば、初期状態では、視線方向が連続的に回転するが、ユーザーのタッチにより、視線方向の回転が停止し、スワイプにより視点位置の回転方向を変更したり、スワイプの速度で回転読度を決めたりするようにしても良い。
【0063】
次に、表示制御装置100の動作例について説明する。
図11は、表示制御装置100の表示制御の動作例を示すフローチャートである。車両1の周辺の確認は、先ず車両が起動して走行を開始する前に行うべきなので、
図11における処理は、例えば運転者がイグニションキーをオンにして、車両1を起動させた際に適宜実行される。
【0064】
図11に示すように、表示制御装置100は、起動した後、仮想視点の周回条件を決定して(ステップS101)、表示画像が車両1の周囲を見回すように変化する周回画像を表示する(ステップS102)。
【0065】
周回条件は、例えば視線方向の初期値と回転方向であり、回転パターンや回転速度を加えても良い。また、周回条件は履歴情報や、ユーザーの設定に応じて決めても良い。例えば、最後に周回表示したときと同じ方向で回転させても良いし、ユーザーが設定した速度で回転させても良い。また、車両の最後の動作に応じて周回条件を決定しても良い。例えば、道路の左端に駐車したときは、視線方向の初期値を車両の後方とし、視線方向を反時計回りで回すことにより、スムーズな後方確認を支援しても良い。
【0066】
次に、表示制御装置100は、ユーザーの操作があるか否かについて判定する(ステップS103)。判定の結果、ユーザーの操作がない場合(ステップS103、NO)、処理はステップS102に戻って、周回画像の表示が続けられる。
【0067】
一方、ユーザーの操作があった場合(ステップS103、YES)、表示制御装置100は、ユーザーの操作が終了条件であるか否かについて判定する(ステップS104)。判定の結果、ユーザーの操作が終了条件ではない場合(ステップS104、NO)、表示制御装置100は、ユーザーの操作に応じて、周回条件を変更しても良い(ステップS105)。
【0068】
例えば、ユーザーにより、右ウインカーが操作された場合、表示制御装置100は、視線方向を前方に設定して、時計回りで視線方向を回転させても良い。また、ギヤポジションが後退になった場合、表示制御装置100は、例えば1秒間隔で視線方向を真後ろ、右後方、真後ろ、左後方、真後ろのように、後方と左右を順に見回すように、視点と視線方向を移動させても良い。つまり、視線方向を一定方向に回転させるのではなく、一定範囲を往復する反復動作をさせても良い。
【0069】
一方、ユーザーの操作が終了条件である場合(ステップS104、YES)、表示制御装置100は、周回画像の表示を終了する。終了条件とは、例えば、アクセル操作等、車両1を走行させる操作である。周回画像は、常に表示部30の画面が変わり続けるので、強い視線誘導効果があり、走行中に表示していると、運転者の前方注視を妨げるので、少なくとも車両1が走行を開始するときには、周回表示は終了する必要がある。
【0070】
以上のように構成された本実施の形態によれば、視線方向を確認しやすい車両周辺画像が得られ、車両周辺画像と組み合わせて同じ方向から見た主体画像が表示される。その結果、車両周辺画像が示す方向をユーザーが直感的に把握することができる。
【0071】
また、第2の仮想視点と主体との距離が、第1の仮想視点と主体との距離よりも大きいので、表示画像において主体画像の占める面積が小さくなる。その結果、車両周辺画像が主体画像で遮られる範囲を小さくすることができる。
【0072】
第1の仮想視点の水平位置が車両の水平位置と重なるので、仮想視点からの視線を、ユーザーの視線に近づけやすくすることができる。また、第2の仮想視点の水平位置が車両の水平位置と重ならないので、車両周辺画像に重畳する主体画像の向きを、ユーザーに把握させやすくすることができる。
【0073】
また、第1の視線の方位が第2の視線の方位と同じであるように、第1の視線の方位と第2の視線の方位との両方を同時に変更するので、車両周辺画像の向きと主体画像野向とがずれることを抑制することができる。その結果、車両周辺画像が示す方向をユーザーが直感的に把握しやすくすることができる。この様な表示制御装置は、第1の仮想視点と第2の仮想視点との少なくとも一方を移動させる視点移動部と、第1の仮想視点または第2の仮想視点の移動に同期して、第1の視線の方位および第2の視線の方位の両方を同時に変更する視線変更部と、を備え、視線変更部は、第1の視線の方位が、第2の視線の方位と同じになるように、第1の視線の方位と前記第2の視線の方位との両方を同時に変更する、と言い換えても良い。
【0074】
また、仮想視点の移動経路の円の中心から見て車両周辺画像の仮想視点V1と、主体画像の仮想視点V2とが同じ側にあるように、2つの仮想視点が配置されるので、2つの仮想視点をより近い位置に配置させることができる。その結果、表示画像の動きを自然なものとすることができる。
【0075】
なお、上記実施の形態では、車両周辺画像に、車両に基づく主体画像を重畳させることによって、表示画像の視線方向を示す例を示してきたが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図12に示すように、車両周辺監視の主体である運転者(搭乗者)2の画像を、車両1の画像に変えて表示しても良い。この場合、運転者、または、運転者および車両の両方を、主体と呼んでも良い。また、運転者および車両の両方を含む画像を車両画像と呼んでも良い。なお、
図12では、運転者2を実線、車両1を破線で示した例を示している。
【0076】
主体画像を運転者の画像にすると、表示画像上での主体の大きさが小さくなり、主体で隠される車両周辺画像の範囲が狭くなるので、車両の周辺監視に好適である。すなわち、車両周辺画像に重ねる主体画像を運転者の画像に変えることで、車両周辺画像をもれなく確認することができる。
【0077】
また、
図13Aに示すように、運転者2および車両1の両方を主体として表示する場合、車両内での運転者2の位置を、そのまま表示画像に反映すると、車両周辺画像の視線方向が車両1の真正面であるときに、表示画像の中央から左右にずれた位置に運転者2が表示されることになる。この時、表示された運転者2の正面が車両周辺画像の中央(視線方向)であると認識される事があり、特に、車両1の像を半透過で表示した時や、運転者2だけを表示して車両1の像を表示しなかった時に、車両周辺画像の視線方向がずれて認識されるおそれがある。
【0078】
そこで、
図13Bに示すように、運転者を車両の正中線上に位置させて主体画像を出力し、表示画像の中央に運転者が映るようにしても良い。運転者の頭部が、常に主体画像の視線の方位にあるように、運転者の位置を調整すると、運転者の頭部が常に表示画像の中央に映るようになる。なお、主体画像は、表示している車両周辺画像の向きを示す目的で表示しているので、主体は車両周辺画像の視線方向V1の方向になくてもよく、例えば、
図13Bの様に車両内の運転者2の位置のままでも良い。これを、第1の仮想視点V1から車両の周辺を見る第1の視線S1の方位は、第2の仮想視点V2から主体を見る第2の視線S2の方位と略同一であり、かつ、第2の仮想視点V2に対する第1の仮想視点V1の方位が、第2の視線S2の方位と同じである、と言い換えても良い。つまり、視線方向は完全に同一である必要は無く、概ね同じであれば良いので、例えば、第2の視線の方位は(第1の視線の方位から少し偏向するが)第2の仮想視点から運転者2を見る方位でも良いし、あるいは、第2の仮想視点を(第2の仮想視点V2の真後ろから少しずれるが)運転者2の真後ろに位置させても良い。
【0079】
また、上記実施の形態では、撮影画像を一次射影する射影面は、平面(第1面)と、遠方で立ち上がる斜面(第2面)との組み合わせで構成されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、射影面を連続した曲面だけで構成しても良いし。球面を射影面が含んでいても良い。
【0080】
また、
図14に示すように、射影面PPを円筒形にして、路面に相当する射影面を設けなくてもよい。また、視点位置V1,V2は、車両の上方ではなく、車両の下方に設けても良い。また、別例として、車両周辺画像の視点位置V1を車両1の内部に設けても良く、特に、車両周辺画像の視点位置V1を運転者の視点位置と一致させてもよい。これは、車両周辺画像の視点位置では車両画像を生成しないので、車両周辺画像の視点位置が車両の内部にあっても、車両画像は車室の内装の画像にはならないからである。
【0081】
また、車両周辺画像の視点位置を地下(車両の下方)に相当する位置に置く場合、表示画像上では、主体画像を車両周辺画像の中央上部に重畳することになる。この場合、車両の3Dモデルの底面に車軸を想起させる3Dオブジェクトを付加して、車両の底面であることがわかるようにしても良い。また、車両の3Dモデルに、運転者を想起させるオブジェクトを付加して、車両の3Dモデルを半透過で表示させることにより、表示している車両周辺画像が、運転者に対して、どの方向であるかを示しても良い。また、下から覗き込んだ車両画像を表示する際、車両の先端方向を示す矢印を車両1の像の底面に表示させても良い。
【0082】
また、上記実施の形態では、主体画像が、車両周辺画像の死角領域からはみ出して重畳されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、車両周辺画像において画像が射影されていない死角領域と重なるように主体画像を重畳し、車両周辺画像において画像が射影されている有効領域と主体画像が重なる量が小さくなるように、主体画像の大きさまたは形を変えて重畳しても良いし、主体画像が有効領域と重ならないように、主体画像の大きさまたは形を変えて重畳しても良い。この主体画像の大きさや形の調整は、画像重畳部150が行っても良いし、主体画像出力部140が、予め調整済みの主体画像を出力する様にしても良い。
【0083】
一次射影で射影面に射影された撮影画像は、車両の下は撮像部10の死角であるため、空白になっている。そこで、
図15Aに示すように、主体画像を車両の視点位置で見た像の大きさより縮小したり、車両合成画像を表示する位置を調整したりして、死角部分に嵌まるように表示すると、撮影画像に映っている部分が主体画像で隠されないので、車両周辺画像を隈無く視認することができる。
【0084】
また、表示画像上で、車両周辺画像と重畳する際に、車両周辺画像の表示領域から主体画像の一部が外れるようにすると、画面デザイン上、不都合である場合、
図15Bに示すように、主体画像を変形させて、死角部分に収まるようにしても良い。
【0085】
このように、主体画像の位置や大きさを調整して、車両周辺画像を主体画像で隠さないようにすることで、車両周辺画像をもれなく確認することができる。
【0086】
また、主体画像を変形させると、車両であると視認しにくくなる場合、死角部分に収まる大きさに主体画像を縮小して、主体画像に覆われない死角部分には、死角部分であることがわかる表示をしても良い。言い換えると、画像重畳部150は、死角領域のうち、主体画像が重ならない領域において、死角であることを示す表示を行う。
【0087】
死角であることを示す表示は、例えば、
図16Aに示すように、車両から延びる矢印を表示であっても良い。また、死角であることを示す表示は、矢印の他、死角領域を黒、白、灰色等の無彩色の表示、またはハッチングを用いる表示であっても良い。
【0088】
また、
図16Bに示すように、主体画像を車両から運転者の画像に変えると、主体画像が小さくなるので、主体画像が死角部分に収まり易くなる。運転者の像を、そのままの大きさで表示すると、表示画像上で運転者の向きが認識しにくい場合、主体画像を拡大して表示しても良いし、主体画像に覆われない死角部分に、死角部分であることがわかる表示をしても良い。
【0089】
また、主体画像を縮小する方法は、実際の車体の大きさに対応する3Dモデルを見た像を縮小しても良いし、
図17に示すように、3Dモデルを実際の車体の大きさより小さくして、3Dモデルを見た像が車体の下の死角領域から外に出ないようにしても良い。
【0090】
また、死角領域から外に出ないように3Dモデルの位置を調整したり、車両周辺画像の視野からはみ出ないように3Dモデルの位置を調整したりしても良い。また、車両画像の大きさは、車両画像の主体を車両から運転者に変えた場合、視点位置と主体の3Dモデルの間の距離を、主体が車両である場合よりも短くして、主体が、より大きく映るようにしても良い。
【0091】
また、上記実施の形態では、視点位置(仮想視点)が、円形の軌道上を周回させていたが、本開示はこれに限定されず、円周の一部である弧の上で移動させ、軌道上を往復運動させても良い。言い換えると、仮想視点が移動する移動経路の形状が弧であっても良い。
【0092】
また、上記実施の形態では、車両周辺画像の仮想視点V1と、主体画像の仮想視点V2とが車両の中心(または、軌道の円弧の中心)から見て同じ側にあるように、2つの仮想視点が配置されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図18に示すように、車両周辺画像の仮想視点V1と、主体画像の仮想視点V2とが車両の中心を挟んで反対側にあるように、2つの仮想視点を配置しても良い。
【0093】
このようにすることで、第1の仮想視点V1を射影面に近づけることできるので、表示画像において、視線方向の真ん中部分を大きく表示させることができる
【0094】
また、上記実施の形態では、第1の仮想視点および第2の仮想視点の両方が移動していたが、本開示はこれに限定されず、第1の仮想視点および第2の仮想視点のいずれか一方が移動するようにしても良い。
【0095】
この場合、例えば、
図19Aに示すように、車両周辺画像の仮想視点V1を固定して、主体画像の仮想視点V2の移動に合わせて車両周辺画像の視線方向を変化させても良い。
【0096】
このようにすることで、車両周辺画像の視点が動かないので、表示画像における車両周辺画像の部分を安定させることができる。
【0097】
また、
図19Bに示すように、主体画像の仮想視点V2を固定して、車両周辺画像の仮想視点V1の移動に合わせて主体画像の視線方向を変化させても良い。
【0098】
このようにすることで、例えば、車両の斜め右側方向、斜め左側方向の車両周辺画像が表示される際に、第1の仮想視点が車両の右側、車両の左側に移動する。その結果、右側、左側に対応する車両周辺画像を見やすくすることができる。
【0099】
また、
図19Aに示すように、一方の仮想視点V1を固定する場合、他方の視点が移動する円または弧の中心に仮想視点を固定しても良い。
図19Bに示すように、一方の仮想視点V2を固定する場合、他方の視点が移動する円または弧の中心とは異なる位置に仮想視点を固定しても良い。両方の視点を移動する場合を含めると、第1の仮想視点および第2の仮想視点の少なくとも一方が移動する移動経路の形状は、円または弧であり、第1の仮想視点および第2の仮想視点の一方が移動する場合、移動する仮想視点の移動経路である円または弧の中心の水平位置は、移動しない仮想視点の水平位置と同じであり、第1の仮想視点および第2の仮想視点の両方が移動する場合、一方の仮想視点の移動経路である円または弧の中心の水平位置は、他方の仮想視点の移動経路である円または弧の中心の水平位置と同じである、と言い換えても良い。
【0100】
また、
図19Aに示すように、主体画像を車両から運転者の画像に変えても良い。その際に、運転者の画像を実際よりも大きく表示しても良いし、運転者が持つハンドルを大きく表示して、運転者の正面方向を視認し易くしても良い。また、運転者の頭部が車両の中心に位置するように運転者の3Dモデルを配置し、運転者の頭部の位置に、視点位置や視点が回転する軌道の中心点を一致させると、視点位置や視線方向が回転したときに、表示画像上で運転者の頭部の位置が動かないので、運転者は車両周辺画像を注視し易くなる。
【0101】
何れの例においても、車両周辺画像の視線方向と、主体画像の視線方向との制御においては、車両周辺画像の視線の方位と主体画像の視線の方位は同一であり、かつ、主体画像の仮想視点に対する車両周辺画像の視点の方位は、主体画像の視線の方位と同一になるように制御する。
【0102】
また、上記実施の形態では、第1の視線の方位は、第2の視線の方位と同一であり、かつ、第2の仮想視点に対する第1の仮想視点の方位は、第2の視線の方位と同一であったが、本開示はこれに限定されない。例えば、略同一とみなせる程度に、各方位がずれていても良い。また、主体画像の基となる3Dモデルを置く空間を、車両周辺画像を生成する射影面を置く空間と、別の空間にしても良い。別の空間にすると、主体画像の視点と車両周辺画像の視点の位置関係が無くなるが、車両周辺画像の視線の方位と主体画像の視線の方位が略同一であれば、車両周辺画像に主体画像を重畳した表示画像から、車両周辺画像が示す方向を正しく把握できる。あるいは、射影面と3Dモデルがある空間を特定しない場合は、第1の仮想視点から車両の周辺を見る第1の視線の方位を、第2の仮想視点から主体を見る第2の視線の方位と略同一にし、射影面と3Dモデルが同じ空間にある場合は、第1の仮想視点から車両の周辺を見る第1の視線の方位は、第2の仮想視点から主体を見る第2の視線の方位と略同一にし、かつ、第2の仮想視点に対する第1の仮想視点の方位は、第2の視線の方位と略同一にする、と言い換えても良い。
【0103】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示の表示制御装置は、車両周辺画像が示す方向を直感的に把握することが可能な表示制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 車両
2 運転者
10 撮像部
20 操作部
30 表示部
100 表示制御装置
110 画像入力部
120 モード制御部
130 車両周辺画像生成部
140 主体画像出力部
150 画像重畳部
160 視点移動部
170 視線変更部
V1 第1の仮想視点
V2 第2の仮想視点