(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161908
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231031BHJP
【FI】
H02M7/48 H
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072550
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】臼木 一浩
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA11
5H770DA23
5H770DA30
5H770DA41
5H770DA44
5H770HA02X
5H770HA03X
5H770HA14X
(57)【要約】
【課題】中継器を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数の変換器を有する主回路部と、複数の変換器と接続された中継器と、中継器を介して複数の変換器と通信を行い、複数の変換器に制御信号を入力することにより、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、複数の変換器から制御に必要な複数の情報を取得し、取得した複数の情報に基づいて複数の変換器の制御信号の生成を行うとともに、複数の情報の更新を行い、重要度の高い情報の更新の頻度を、重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くする電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変換器を有する主回路部と、
前記複数の変換器と接続された中継器と、
前記中継器と接続され、前記中継器を介して前記複数の変換器と通信を行い、前記複数の変換器に制御信号を入力することにより、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記複数の変換器に対し、制御に必要な情報の送信を要求する要求信号の送信を行い、
前記複数の変換器は、前記要求信号の受信に応答して、制御に必要な複数の情報を含む応答信号の前記制御装置への送信を行うとともに、前記要求信号に基づいて前記複数の変換器のそれぞれの前記応答信号を時間的にずらして前記制御装置へ送信し、
前記制御装置は、前記応答信号の受信により、前記複数の変換器から制御に必要な前記複数の情報を取得し、取得した前記複数の情報に基づいて前記複数の変換器の前記制御信号の生成を行うとともに、前記要求信号を定期的に送信し、前記複数の情報を定期的に取得することにより、前記複数の情報の更新を行い、
前記応答信号に含まれる前記複数の情報は、前記複数の変換器の制御に関して設定された複数の段階の重要度によって分けられ、
前記制御装置は、前記複数の情報のうち、前記重要度の高い情報の更新の頻度を、前記重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くする電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の変換器は、前記要求信号に基づいて前記応答信号を時間的にずらして送信するとともに、前記応答信号に高い前記重要度の情報を含む前記変換器ほど前記制御装置への前記応答信号の送信の頻度を高くすることにより、前記制御装置において、前記重要度の高い情報の更新の頻度を、前記重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記応答信号に前記重要度の高い情報を含む前記変換器から前記制御装置への前記応答信号の送信の頻度は、前記重要度の高い情報のサンプリング周期に応じて設定される請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記応答信号に前記重要度の高い情報を含む前記変換器は、前記制御装置に対し、前記複数の情報を含む応答信号の送信、及び前記重要度の高い情報のみを含む応答信号の送信を行うとともに、前記重要度の高い情報のみを含む応答信号の送信の頻度を、前記複数の情報を含む応答信号の送信の頻度よりも高くする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記応答信号に前記重要度の高い情報を含む前記変換器と前記制御装置との間での直接的な通信を可能にする専用信号線をさらに備え、
前記制御装置は、前記中継器を介して前記複数の変換器と通信を行うことにより、前記複数の情報を定期的に取得するとともに、前記応答信号に前記重要度の高い情報を含む前記変換器と前記専用信号線を介して通信を行い、前記応答信号に前記重要度の高い情報を含む前記変換器から前記中継器を介した通信よりも高い頻度で前記重要度の高い情報を取得することにより、前記重要度の高い情報の更新の頻度を、前記重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
複数の変換器を有する主回路部と、
前記複数の変換器と接続された中継器と、
前記中継器と接続され、前記中継器を介して前記複数の変換器と通信を行い、前記複数の変換器に制御信号を入力することにより、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記複数の変換器に対し、制御に必要な情報の送信を要求する要求信号の送信を行い、
前記複数の変換器は、前記要求信号の受信に応答して、制御に必要な複数の情報を含む応答信号の前記制御装置への送信を行うとともに、前記要求信号に基づいて前記複数の変換器のそれぞれの前記応答信号を時間的にずらして前記制御装置へ送信し、
前記制御装置は、前記応答信号の受信により、前記複数の変換器から制御に必要な前記複数の情報を取得し、取得した前記複数の情報に基づいて前記複数の変換器の前記制御信号の生成を行うとともに、前記要求信号を定期的に送信し、前記複数の情報を定期的に取得することにより、前記複数の情報の更新を行い、
前記応答信号に含まれる前記複数の情報は、前記複数の変換器の制御に関して設定された複数の段階の重要度によって分けられ、
前記応答信号のデータ構成は、前記複数の変換器のそれぞれに応じて変更され、
前記複数の変換器は、前記重要度の高い情報を含まない前記応答信号の情報の数を、前記重要度の高い情報を含む前記応答信号の情報の数よりも少なくする電力変換装置。
【請求項7】
前記複数の変換器と前記制御装置との間の通信の少なくとも一部は、光通信である請求項1~6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備えた電力変換装置が知られている。こうした電力変換装置において、複数台の変換器を直列に接続した多段構成の主回路部とすることが行われている。多段構成の主回路部を備えた電力変換装置は、例えば、交流電力を直流電力に変換して送電する直流送電システムなどに用いられている。
【0003】
各変換器は、複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。各変換器は、制御装置から入力される制御信号を基に、各スイッチング素子のスイッチングを制御する。これにより、交流電力から直流電力への変換、あるいは直流電力から交流電力への変換が行われる。
【0004】
制御装置は、各変換器から制御に必要な情報を取得する。また、制御装置は、定期的に各変換器から制御に必要な情報を取得することにより、情報の更新を行う。制御装置は、取得した情報に基づいて各変換器の制御信号の生成を行い、生成した制御信号を各変換器に送信することにより、各変換器の動作を制御する。すなわち、制御装置は、各変換器から取得した情報を基に、各変換器のフィードバック制御を行う。これにより、各変換器の状態に応じたより適切な制御を行うことができる。例えば、主回路部から出力される電力の大きさを指令値に応じたより適切な大きさに制御したり、異常の発生した変換器の動作を停止させたりすることができる。
【0005】
こうした電力変換装置において、制御装置と各変換器との間に中継器を設け、中継器を中心とするスター型の通信方式を採用することが行われている。中継器は、信号線を介して制御装置と接続されるとともに、別の複数の信号線を介して複数の変換器と接続される。中継器は、制御装置から送信された制御信号を複数の変換器に送信し、複数の変換器から送信された信号を制御装置に送信する。このような構成では、制御装置と複数の変換器とを複数の信号線を介して直接的に接続する構成と比べて、信号線の合計の長さを短くすることができる。これにより、例えば、コストの低減を図ることができる。
【0006】
しかしながら、上記のようなスター型の通信方式を採用した場合には、複数の変換器のそれぞれから制御装置に信号を送信する際に、中継器と制御装置との間の信号線において複数の変換器の信号が重複しないように、複数の変換器の信号を時間的にずらして中継器から制御装置に送信する必要がある。このため、制御装置と複数の変換器とを複数の信号線を介して直接的に接続する構成と比べて、通信サイクルが長くなってしまう。従って、制御装置が制御に必要な情報を更新するまでに時間がかかってしまい、制御に遅れが生じてしまう可能性がある。
【0007】
このため、電力変換装置においては、中継器を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実施形態は、中継器を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、複数の変換器を有する主回路部と、前記複数の変換器と接続された中継器と、前記中継器と接続され、前記中継器を介して前記複数の変換器と通信を行い、前記複数の変換器に制御信号を入力することにより、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の変換器に対し、制御に必要な情報の送信を要求する要求信号の送信を行い、前記複数の変換器は、前記要求信号の受信に応答して、制御に必要な複数の情報を含む応答信号の前記制御装置への送信を行うとともに、前記要求信号に基づいて前記複数の変換器のそれぞれの前記応答信号を時間的にずらして前記制御装置へ送信し、前記制御装置は、前記応答信号の受信により、前記複数の変換器から制御に必要な前記複数の情報を取得し、取得した前記複数の情報に基づいて前記複数の変換器の前記制御信号の生成を行うとともに、前記要求信号を定期的に送信し、前記複数の情報を定期的に取得することにより、前記複数の情報の更新を行い、前記応答信号に含まれる前記複数の情報は、前記複数の変換器の制御に関して設定された複数の段階の重要度によって分けられ、前記制御装置は、前記複数の情報のうち、前記重要度の高い情報の更新の頻度を、前記重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くする電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態では、中継器を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る変換器を模式的に表すブロック図である。
【
図3】各変換器から制御装置に送信する信号の一例を模式的に表す説明図である。
【
図4】第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す説明図である。
【
図5】電力変換装置の参考の動作の一例を模式的に表す説明図である。
【
図6】第2の実施形態に係る応答信号の一例を模式的に表す説明図である。
【
図7】第2の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す説明図である。
【
図8】第3の実施形態に係る応答信号の一例を模式的に表す説明図である。
【
図9】第4の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部20と、中継器40と、制御装置50と、を備える。電力変換装置10は、交流端子21a~21cを介して、交流の電力系統1に接続される。電力変換装置10は、例えば、変圧器2を介して電力系統1に接続される。電力系統1は、例えば、三相または単相の50Hz若しくは60Hzの電源、負荷および交流送電線を備える構成とすることができる。電力変換装置10は、直流端子21d、21eを介して、直流回路3に接続される。直流回路3は、例えば、直流送電線等を含む。以下では、電力変換装置10は、三相の電力系統1に連系されるものとする。
【0015】
電力変換装置10は、電力系統1と直流回路3との間に接続されて、交流と直流との双方向の電力変換を行うことができる。但し、電力変換装置10による電力の変換は、交流から直流又は直流から交流の一方向のみでもよい。
【0016】
電力変換装置10では、制御装置50および中継器40は、信号線60を介して接続され、相互にデータを伝送する。中継器40および主回路部20は、信号線42を介して接続され、相互にデータを伝送する。つまり、制御装置50は、信号線60、中継器40および信号線42を介して、主回路部20と相互にデータを伝送することができる。
【0017】
主回路部20は、絶縁架台26上に設置されている。絶縁架台26、中継器40および制御装置50は、例えば、同一の設置面4に載置される。絶縁架台26は、絶縁性の材料によって形成されており、主回路部20は、中継器40および制御装置50から電気的に絶縁されている。絶縁架台26、中継器40および制御装置50が載置される設置面4上は、ほぼ同電位であることを意味し、物理的に異なる面であってもよい。例えば、絶縁架台26および中継器40は、建屋の2階の制御室の床面に載置され、制御装置50は、同一の建屋の1階の床面に載置される等であってもよい。
【0018】
主回路部20は、三相交流の各相に対応した複数のアーム22を含む。アーム22は、直流端子21d、21e間で直列に接続されている。
【0019】
直流端子21d、21e間で直列に接続されるアーム22には、バッファリアクトル24がそれぞれ直列に接続されている。バッファリアクトル24は、上下のアーム22間に瞬時的な短絡電流が流れることを抑制する。バッファリアクトル24のタップは、交流端子21a~21cにそれぞれ接続されている。
【0020】
各アーム22は、直列に接続された複数の変換器30を有する。以下の説明では、変換器30は、1つのアーム22にM個直列接続されているものとする(Mは2以上の整数)。各アーム22において、直列接続される変換器30の台数は、例えば、100台以上である。但し、直列接続される変換器30の台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0021】
各アーム22に設けられる変換器30の台数は、実質的に同じである。例えば、多数の変換器30が接続される場合には、主回路部20の動作に影響のない範囲において、各アーム22に設けられる変換器30の台数が異なってもよい。例えば、1つのアーム22に100台の変換器30を直列に接続する場合、別のアーム22に設ける変換器30の台数は、1~2台異なってもよい。
【0022】
中継器40は、信号線60を介して制御装置50に接続されている。中継器40は、変換器30と信号線42を介して接続されている。中継器40は、制御装置50から送信された制御信号を、変換器30に対応する信号線42によって、複数の変換器30のそれぞれに分配する。また、中継器40は、複数の変換器30のそれぞれから送信された信号を制御装置50に送信する。中継器40は、例えば、複数の変換器30から送信されたそれぞれの信号のデータを1つの信号のデータに合流させることによって、実質的にシリアルデータとし、制御装置50に送信する。電力変換装置10は、中継器40を中心とするスター型の通信方式を採用している。
【0023】
制御装置50と各変換器30との間の通信には、例えば、光通信が用いられる。制御装置50から各変換器30に送信される制御信号、及び各変換器30から制御装置50に送信される信号は、例えば、光信号である。信号線42、60は、例えば、光ファイバケーブルである。中継器40は、例えば、光分配器やスターカプラなどである。
【0024】
但し、制御装置50と各変換器30との間の通信は、必ずしも光通信でなくてもよい。制御装置50と各変換器30との間の通信は、例えば、電気信号による通信などでもよい。中継器40は、光分配器やスターカプラに限ることなく、制御装置50からの制御信号を各変換器30に分配して送信でき、かつ各変換器30からの信号を合流させて制御装置50に送信できる任意の部材でよい。換言すれば、中継器40は、制御装置50と各変換器30との間の通信において、中継器40を中心とするスター型の通信方式の採用を可能とする任意の部材でよい。
【0025】
例えば、中継器40と各変換器30との間の通信のみを光通信とし、中継器40と制御装置50との間の通信は、電気信号による通信としてもよい。反対に、中継器40と制御装置50との間の通信のみを光通信とし、中継器40と各変換器30との間の通信は、電気信号による通信としてもよい。例えば、各変換器30の扱う電力が大きい場合などには、上記のように、複数の変換器30と制御装置50との間の通信の少なくとも一部を光通信とし、複数の変換器30と制御装置50とを電気的に絶縁することが好適である。
【0026】
中継器40は、主回路部20の近傍に設置することができる。そのため、信号線42は、主回路部20内に敷設される程度の長さとすることができる。制御装置50は、主回路部20および中継器40から十分離れた場所に設置することができる。例えば、制御装置50は、中継器40および主回路部20の設置場所とは異なる建屋や階に設置されていてもよい。信号線42の長さは、信号線60の長さよりも十分短くすることができる。これにより、例えば、各変換器30の数に応じた複数の信号線42を直接的に制御装置50に接続する場合と比べて、信号線の合計の長さを短くすることができる。これにより、コストの低減を図ることができる。
【0027】
電力変換装置10は、例えば、複数台の中継器40を備える。例えば、主回路部20の1つのアーム22に設けられる変換器30の台数が96台である場合、電力変換装置10は、1つのアーム22に対して6台の中継器40を備える。この場合、1台の中継器40は、16台の変換器30と信号線42を介して接続され、16台の変換器30と通信を行う。この場合、電力変換装置10は、6つのアーム22のそれぞれに対して6台の中継器40を設け、合計で36台の中継器40を備える。
【0028】
制御装置50は、複数の通信ポート(通信接続部)を有し、複数の信号線60を介して複数台の中継器40のそれぞれと接続される。これにより、複数台の中継器40を備える場合にも、制御装置50と各変換器30との間で通信を行うことができる。
【0029】
但し、中継器40の台数、及び1台の中継器40に対して接続される変換器30の台数は、上記に限ることなく、任意の台数でよい。例えば、1台の中継器40に対し、主回路部20に設けられる全ての変換器30を接続してもよい。中継器40の台数は、例えば、中継器40において分配可能な信号の数などに応じて適宜設定すればよい。
【0030】
制御装置50は、中継器40と接続され、中継器40を介して複数の変換器30と通信を行い、複数の変換器30のそれぞれに制御信号を入力することにより、主回路部20の動作を制御する。また、制御装置50は、信号線42、中継器40、及び信号線60を介して各変換器30と通信を行うことにより、各変換器30から制御に必要な情報を取得する。制御装置50は、定期的に各変換器30から制御に必要な情報を取得することにより、情報の更新を行う。
【0031】
制御装置50は、取得した情報に基づいて各変換器30の制御信号の生成を行い、生成した制御信号を各変換器30に送信することにより、各変換器30の動作を制御する。すなわち、制御装置50は、各変換器30から取得した情報を基に、各変換器30のフィードバック制御を行う。これにより、各変換器30の状態に応じたより適切な制御を行うことができる。例えば、主回路部20から出力される電力の大きさを指令値に応じたより適切な大きさに制御したり、異常の発生した変換器30の動作を停止させたりすることができる。
【0032】
図2は、第1の実施形態に係る変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器30は、一対の端子31a、31bを有する。変換器30は、端子31a、31bによって、他の変換器30等と直列接続される。変換器30は、制御回路32と、駆動回路33と、変換回路35と、主回路給電部36と、を有する。
【0033】
変換回路35は、複数のスイッチング素子35S1、35S2と、ダイオード35D1、35D2と、電荷蓄積素子35Cと、を有する。スイッチング素子35S1、35S2は、直列に接続されている。ダイオード35D1、35D2は、スイッチング素子35S1、35S2にそれぞれ逆並列に接続されている。電荷蓄積素子35Cは、スイッチング素子35S1、35S2の直列回路に並列に接続されている。
【0034】
変換回路35は、複数のスイッチング素子35S1、35S2のスイッチングにより、電荷蓄積素子35Cの電圧を一対の端子31a、31b間に出力する出力状態と、電荷蓄積素子35Cの電圧の一対の端子31a、31b間への出力を停止した停止状態と、一対の端子31a、31b間を導通させたバイパス状態と、を切り替える。
【0035】
この例では、上側のスイッチング素子35S1をオフ状態、下側のスイッチング素子35S2をオン状態とすることにより、変換回路35をバイパス状態とすることができる。停止状態とは、スイッチング素子35S1、35S2をいずれもオフ状態とした状態である。停止状態は、例えば、ゲートブロック状態などと呼ばれる場合もある。
【0036】
スイッチング素子35S1、35S2は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の自己消弧型の半導体スイッチである。スイッチング素子35S1、35S2は、駆動回路33から供給される駆動信号によって駆動され、電荷蓄積素子35Cを充放電する。
【0037】
変換回路35は、上述のようなハーフブリッジ構成の回路に限らず、スイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ構成の回路であってもよい。変換回路35の複数のスイッチング素子の数は、2つに限ることなく、4つ以上などでもよい。
【0038】
制御回路32は、制御装置50から送信された制御信号を信号線60、中継器40、及び信号線42を介して受信し、制御信号を基に、複数のスイッチング素子35S1、35S2のスイッチングを制御するためのスイッチング制御信号を生成し、生成したスイッチング制御信号を駆動回路33に入力する。
【0039】
駆動回路33は、制御回路32から供給されたスイッチング制御信号に対してレベル変換などを行うことにより、スイッチング制御信号を基に、スイッチング素子35S1、35S2を駆動するための駆動信号を生成する。そして、駆動回路33は、生成した駆動信号を変換回路35のスイッチング素子35S1、35S2に入力することにより、スイッチング素子35S1、35S2のオン・オフを切り替える。
【0040】
主回路給電部36は、電荷蓄積素子35Cから電力の給電を受け、適切な電圧に変換し、制御回路32及び駆動回路33などの変換器30の各部に供給する。変換器30の各部は、主回路給電部36からの電力の供給に基づいて動作する。
【0041】
図3は、各変換器から制御装置に送信する信号の一例を模式的に表す説明図である。
制御装置50は、制御に必要な情報を各変換器30から取得する場合に、必要な情報の送信を要求する要求信号を中継器40を介して各変換器30に送信する。各変換器30は、制御装置50からの要求信号の受信に応答して、
図3に表した応答信号SA1~SAnを制御装置50に送信する。
【0042】
図3に表したように、各変換器30から制御装置50に送信される応答信号SA1~SAnは、例えば、複数の情報を含む。また、応答信号SA1~SAnは、所定のデータ構成(フレーム)で構成される。応答信号SA1~SAnのデータ構成は、実質的に同じである。
図3では、応答信号SA1~SAnのそれぞれが、情報A~情報Dの4つの情報を含むデータ構成である場合を例示している。
【0043】
情報Aの項目、情報Bの項目、情報Cの項目、及び情報Dの項目は、応答信号SA1~SAnのそれぞれにおいて同じである。各変換器30は、要求信号の受信に応答して自身の情報A~情報Dを取得し、取得した情報A~情報Dを応答信号SA1~SAnとして制御装置50に送信する。
【0044】
各情報の項目は、例えば、電荷蓄積素子35Cの電圧、一対の端子31a、31b間に流れる電流(アーム電流)、スイッチング素子35S1、35S2の故障の有無などである。但し、応答信号SA1~SAnに含まれる情報の数は、4つに限ることなく、任意の数でよい。また、応答信号SA1~SAnに含まれる情報(情報の項目)は、上記に限ることなく、各変換器30の制御に必要な任意の情報でよい。
【0045】
図3に表したように、応答信号SA1~SAnに含まれる複数の情報は、各変換器30の制御に関して重要度の高い第1情報と、第1情報よりも重要度の低い第2情報と、に分けられる。第1情報は、換言すれば、高速に更新が必要な情報である。第2情報は、換言すれば、更新は高速でなくてもよい情報である。
【0046】
図3では、1台目の変換器30(変換器1)の情報Dのみが第1情報で、その他の各情報が第2情報である場合を例示している。以下では、複数の変換器30を変換器1~変換器Nと称す場合がある。変換器1は、応答信号SA1に第1情報を含み、他の変換器2~変換器Nは、応答信号SA2~SAnに第1情報を含まない。変換器1~変換器Nは、例えば、1台の中継器40に接続される複数の変換器30である。
【0047】
第1情報は、例えば、一対の端子31a、31b間に流れる電流(アーム電流)に関する情報である。第2情報は、例えば、電荷蓄積素子35Cの電圧に関する情報やスイッチング素子35S1、35S2の故障の有無に関する情報などである。但し、第1情報は、上記に限ることなく、重要度が高く、制御装置50において高速に更新が必要な任意の情報でよい。第2情報は、上記に限ることなく、第1情報よりも重要度が低く、制御装置50において更新は高速でなくてもよい任意の情報でよい。
【0048】
図4は、第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図4は、制御装置50から中継器40に送信される要求信号SR1~SRn、中継器40から各変換器30に分配して送信される要求信号SR1~SRn、各変換器30から中継器40に送信される応答信号SA1~SAn、及び制御装置50が中継器40から受信した受信信号SAの一例を模式的に表している。
【0049】
図4に表したように、制御装置50は、各変換器30から制御に必要な情報を取得する場合に、まず、第1情報を含む変換器1に対して必要な情報の送信を要求する要求信号SR1を中継器40に送信する。中継器40は、制御装置50から要求信号SR1を受信すると、受信した要求信号SR1を各変換器30に分配して送信する。
【0050】
各変換器30は、要求信号SR1を受信すると、受信した要求信号SR1が自身に対するものであるか否かを判定する。複数の変換器30のうち、変換器1は、要求信号SR1を自身に対するものであると判定し、要求信号SR1の受信に応答して制御に必要な情報を含む応答信号SA1を中継器40に送信する。他の変換器30は、要求信号SR1を自身に対するものではないと判定し、応答信号SA2~SAnの送信は行わない。中継器40は、変換器1から応答信号SA1を受信すると、受信した応答信号SA1を制御装置50に送信する。
【0051】
制御装置50は、変換器1からの応答信号SA1を受信すると、応答信号SA1の受信に応答して、次に、変換器2に対して必要な情報の送信を要求する要求信号SR2を中継器40に送信する。変換器2は、要求信号SR2の受信に応答して制御に必要な情報を含む応答信号SA2を中継器40に送信する。
【0052】
制御装置50は、以下、同様の処理を繰り返し、
図4に表したように、変換器1→変換器2→変換器1→変換器3→変換器1→変換器4→・・・変換器1→変換器Nの順に、各変換器30の情報を順次取得する。
【0053】
中継器40を中心とするスター型の通信方式では、複数の変換器30のそれぞれから制御装置50に応答信号SA1~SAnを送信する際に、中継器40と制御装置50との間の信号線60において複数の変換器30の応答信号SA1~SAnが重複しないように、複数の変換器30の応答信号SA1~SAnを時間的にずらして中継器40から制御装置50に送信する必要がある。
【0054】
この例では、制御装置50が、各変換器30のそれぞれに対応する複数の要求信号SR1~SRnを生成し、複数の要求信号SR1~SRnを時間的にずらして各変換器30に送信することにより、各変換器30が、要求信号SR1~SRnに基づいて応答信号SA1~SAnを時間的にずらして送信している。これにより、中継器40と制御装置50との間の信号線60において複数の変換器30の応答信号SA1~SAnが重複してしまうことを抑制することができる。
【0055】
このように、複数の変換器30は、要求信号SR1~SRnの受信に応答して、制御に必要な複数の情報を含む応答信号SA1~SAnの制御装置50への送信を行うとともに、要求信号SR1~SRnに基づいて複数の変換器30のそれぞれの応答信号SA1~SAnを時間的にずらして制御装置50へ送信する。
【0056】
制御装置50は、応答信号SA1~SAnの受信により、複数の変換器30から制御に必要な複数の情報を取得し、取得した複数の情報に基づいて複数の変換器30の制御信号の生成を行うとともに、要求信号SR1~SRnを定期的に送信し、複数の情報を定期的に取得することにより、複数の情報の更新を行う。
【0057】
そして、複数の変換器30は、要求信号SR1~SRnに基づいて応答信号SA1~SAnを時間的にずらして送信するとともに、応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度を、応答信号に第1情報を含まない変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度よりも高くする。これにより、制御装置50は、重要度の高い第1情報の更新の頻度を、重要度の低い第2情報の更新の頻度よりも高くする。
【0058】
図5は、電力変換装置の参考の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図5は、制御装置50から中継器40に送信される要求信号SR、中継器40から各変換器30に分配して送信される要求信号SR、各変換器30から中継器40に送信される応答信号SA1~SAn、及び制御装置50が中継器40から受信した受信信号SAの一例を模式的に表している。なお、
図3は、中継器40を中心とするスター型の通信方式を採用した場合の制御装置50の参考の動作を例示したものであり、本実施形態に係る制御装置50の動作を表すものではない。
【0059】
図5に表したように、参考の動作においては、制御装置50は、各変換器30から制御に必要な情報を取得する場合に、各変換器30に対して必要な情報の送信を要求する要求信号SRを中継器40に送信する。中継器40は、制御装置50から要求信号SRを受信すると、受信した要求信号SRを各変換器30に分配して送信する。
【0060】
各変換器30は、要求信号SRの受信に応答して、制御に必要な情報を含む応答信号SA1~SAnを中継器40に送信する。この際、上記のように、中継器40を中心とするスター型の通信方式では、複数の変換器30の応答信号SA1~SAnを時間的にずらして中継器40から制御装置50に送信する必要がある。
図5では、一定の間隔Tずつずらして応答信号SA1~SAnを中継器40から制御装置50に送信する例を示している。
【0061】
例えば、複数の変換器30が、応答信号SA1~SAnを時間的にずらして送信するための伝送遅延調整機能を有する。例えば、1台目の変換器30は、要求信号SRの受信に応答してすぐに応答信号SA1を中継器40に送信し、2台目の変換器30は、要求信号SRの受信からT秒後に応答信号SA2を中継器40に送信し、3台目の変換器30は、要求信号SRの受信から2T秒後に応答信号SA3を中継器40に送信し、以下、同様の処理を繰り返し、N台目の変換器30は、要求信号SRの受信から(N-1)T秒後に応答信号SAnを中継器40に送信する。これにより、中継器40と制御装置50との間の信号線60における応答信号SA1~SAnの重複を抑制し、応答信号SA1~SAnの情報を受信信号SAとして適切に制御装置50に受信させることができる。
【0062】
なお、伝送遅延調整機能は、例えば、中継器40に設けてもよい。例えば、各変換器30は、要求信号SRの受信に応答してすぐに応答信号SA1~SAnを中継器40に送信する。中継器40は、各変換器30から実質的に同時に応答信号SA1~SAnを受信した後、受信した応答信号SA1~SAnを時間的にずらして制御装置50に送信する。この場合にも、上記と同様に、信号線60における応答信号SA1~SAnの重複を抑制することができる。
【0063】
また、伝送遅延調整機能は、例えば、制御装置50に設けてもよい。例えば、
図4に表したように、各変換器30のそれぞれに対応する複数の要求信号SR1~SRnを生成し、複数の要求信号SR1~SRnを時間的にずらしながら各変換器30に順次送信する。各変換器30は、自身に対応する要求信号SR1~SRnの受信に応答して応答信号SA1~SAnを中継器40に送信する。この場合にも、上記と同様に、信号線60における応答信号SA1~SAnの重複を抑制することができる。
【0064】
このように、伝送遅延調整機能は、各変換器30に設けてもよいし、中継器40に設けてもよいし、制御装置50に設けてもよい。複数の変換器30の応答信号SA1~SAnを時間的にずらして中継器40から制御装置50に送信する構成は、信号線60における応答信号SA1~SAnの重複を適切に抑制することが可能な任意の構成とすることができる。
【0065】
しかしながら、
図5に表した例のように、複数の変換器30の応答信号SA1~SAnを時間的にずらして中継器40から制御装置50に送信する構成では、制御装置50と複数の変換器30とを複数の信号線を介して直接的に接続する構成などと比べて、通信サイクルが長くなってしまう。
【0066】
例えば、変換器1の応答信号SA1に重要度の高い第1情報が含まれ、
図5に表しように、一定の間隔T秒ずつずらして応答信号SA1~SAnを中継器40から制御装置50に送信する場合、変換器1の重要度の高い第1情報の更新頻度が、n×T秒毎になってしまい、制御に遅れが生じてしまう可能性がある。
【0067】
これに対し、本実施形態に係る電力変換装置10では、
図4に表したように、複数の変換器30が、要求信号SR1~SRnに基づいて応答信号SA1~SAnを時間的にずらして送信するとともに、応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度を、応答信号に第1情報を含まない変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度よりも高くすることにより、制御装置50において、重要度の高い第1情報の更新の頻度を、重要度の低い第2情報の更新の頻度よりも高くする。これにより、中継器40を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制することができる。
【0068】
例えば、第1情報を基に主回路部20の保護を行う場合には、第1情報の更新に応じて電力変換装置10を高速に停止させることができ、電力変換装置10の安全性を向上させることができる。また、制御指令やフィードバック信号などを第1情報として高速に伝達することができ、電力変換装置10の運用性を向上させることもできる。
【0069】
なお、
図4に表した例では、変換器1→変換器2→変換器1→変換器3→変換器1→変換器4→・・・変換器1→変換器Nのように、2回に1回の頻度で応答信号に第1情報を含まない変換器30から制御装置50への応答信号の送信を行っている。
【0070】
これに限ることなく、例えば、変換器1→変換器1→変換器2→変換器1→変換器1→変換器3→変換器1→変換器1→変換器4→・・・変換器1→変換器1→変換器Nのように、3回に1回の頻度で応答信号に第1情報を含まない変換器30から制御装置50への応答信号の送信を行ってもよい。これにより、重要度の高い第1情報の更新の頻度をより高くすることができる。
【0071】
また、反対に、例えば、変換器1→変換器2→変換器3→変換器1→変換器4→変換器5→・・・変換器1→変換器(N-1)→変換器Nのように、3回に1回の頻度で応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信を行ってもよい。この場合には、重要度の高い第1情報の更新の頻度を高めつつ、第2情報の更新の頻度が低くなり過ぎてしまうことを抑制することができる。重要度の高い第1情報の更新の頻度は、上記に限ることなく、任意の頻度でよい。
【0072】
応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度は、例えば、中継器40に接続される複数の変換器30の台数に応じて決定してもよい。例えば、中継器40に接続される複数の変換器30の各応答信号を送った後、応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信を行う。この場合には、重要度の高い第1情報の更新の頻度を高めつつ、第2情報の更新の頻度が低くなり過ぎてしまうことをより抑制することができる。
【0073】
応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度は、例えば、第1情報のサンプリング周期に応じて設定してもよい。例えば、第1情報が計測装置などによって新たに取得される毎に、その第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信を行う。換言すれば、応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度は、その第1情報のサンプリング周期以上に設定する。これにより、同じ内容の第1情報を繰り返し制御装置50に送信し、更新の頻度を不要に高めてしまうことを抑制することができる。
【0074】
また、
図4に表した例では、制御装置50から各変換器30に対して個別に設定した要求信号SR1~SRnを送信することにより、応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度が、応答信号に第1情報を含まない変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度よりも高くなるようにしている。
【0075】
これに限ることなく、例えば、各変換器30に応答信号の送信タイミングを予め設定しておき、制御装置50から各変換器30に対して共通の要求信号SR(
図5参照)を送信し、各変換器30が、要求信号SRの受信に応じて予め設定された送信タイミングで応答信号を送信することにより、応答信号に第1情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度が、応答信号に第1情報を含まない変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度よりも高くなるようにしてもよい。
【0076】
上記実施形態では、複数の情報を第1情報及び第2情報の重要度の異なる2つの情報に分けている。換言すれば、複数の情報に対し、2段階の重要度を設定している。これに限ることなく、重要度は、3段階以上に設定し、複数の情報は、3つ以上の情報に分けてもよい。応答信号に含まれる複数の情報は、複数の変換器30の制御に関して設定された複数の段階の重要度によって分けてもよい。制御装置50は、複数の情報のうち、重要度の高い情報の更新の頻度を、重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くするものでよい。
【0077】
例えば、複数の変換器30は、要求信号に基づいて応答信号を時間的にずらして送信するとともに、応答信号に高い重要度の情報を含む変換器30ほど制御装置50への応答信号の送信の頻度を高くすることにより、制御装置50において、重要度の高い情報の更新の頻度を、重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くしてもよい。
【0078】
例えば、複数の情報を第1情報~第3情報の3つの情報に分けた場合には、最も重要度の高い第1情報を含む変換器30の応答信号の送信の頻度を最も高くし、第3情報よりも重要度の高い第2情報を含む変換器30の応答信号の送信の頻度を、第3情報を含む変換器30の応答信号の送信の頻度よりも高くし、第3情報のみを含む変換器30の応答信号の送信の頻度を最も低くする。これにより、複数の情報を3つに分けた場合にも、制御装置50において、重要度の高い情報の更新の頻度を、重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くすることができる。
【0079】
また、例えば、応答信号に重要度の高い情報を含む変換器30から制御装置50への応答信号の送信の頻度は、重要度の高い情報のサンプリング周期に応じて設定してもよい。
【0080】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る応答信号の一例を模式的に表す説明図である。
図6に表したように、この例では、応答信号SA1~SAnのデータ構成が、複数の変換器30のそれぞれに応じて変更されている。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0081】
各変換器30は、例えば、第1情報を含まない応答信号の情報の数を、第1情報を含む応答信号の情報の数よりも少なくする。換言すれば、各変換器30は、例えば、第1情報を含まない応答信号のフレーム長を、第1情報を含む応答信号のフレーム長よりも短くする。
【0082】
例えば、同じアーム22に直列に接続された複数の変換器30においては、一対の端子31a、31b間に流れる電流(アーム電流)に関する情報は、実質的に同じである。このため、第1情報を含む応答信号にのみアーム電流に関する情報を含め、第1情報を含まない応答信号にはアーム電流に関する情報を含めない。例えば、
図6に表した例では、応答信号SA1のみにアーム電流に関する情報を含め、応答信号SA2~応答信号SAnにはアーム電流に関する情報を含めない。これにより、第1情報を含まない応答信号のフレーム長を、第1情報を含む応答信号のフレーム長よりも短くすることができる。
【0083】
この場合、情報Aの項目、情報Bの項目、及び情報Cの項目は、応答信号SA1~SAnのそれぞれにおいて必ずしも同じでなくてもよい。応答信号に含まれる複数の情報は、各変換器30のそれぞれに対応させて任意に設定してもよい。
【0084】
図7は、第2の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図7は、制御装置50から中継器40に送信される要求信号SR、中継器40から各変換器30に分配して送信される要求信号SR、各変換器30から中継器40に送信される応答信号SA1~SAn、及び制御装置50が中継器40から受信した受信信号SAの一例を模式的に表している。
【0085】
図7に表したように、制御装置50は、各変換器30から制御に必要な情報を取得する場合に、各変換器30に対して必要な情報の送信を要求する要求信号SRを中継器40に送信する。中継器40は、制御装置50から要求信号SRを受信すると、受信した要求信号SRを各変換器30に分配して送信する。
【0086】
各変換器30は、要求信号SRの受信に応答して、制御に必要な情報を含む応答信号SA1~SAnを中継器40に送信する。この際、各変換器30は、一定の間隔ではなく、応答信号SA1~SAnのデータ構成(フレーム長)に応じた時間間隔で制御装置50に応答信号SA1~SAnを送信することにより、応答信号SA1~SAnを時間的にずらして中継器40から制御装置50に送信する。
【0087】
例えば、第1情報を含む変換器1の応答信号SA1に対しては、間隔T1を設定し、第1情報を含まない変換器2~変換器Nの応答信号SA2~SAnに対しては、間隔T1よりも短い間隔T2を設定する。
【0088】
図7に表したように、変換器1は、要求信号SRの受信に応答してすぐに応答信号SA1を中継器40に送信する。変換器2は、要求信号SRの受信からT1秒後に応答信号SA2を中継器40に送信する。変換器3は、要求信号SRの受信からT1+T2秒後に応答信号SA3を中継器40に送信する。変換器4は、要求信号SRの受信からT1+2×T2秒後に応答信号SA4を中継器40に送信する。以下、同様の処理を繰り返し、変換器Nは、要求信号SRの受信からT1+(N-2)T2秒後に応答信号SAnを中継器40に送信する。
【0089】
これにより、応答信号SA1~SAnのデータ構成に応じた時間間隔とした際にも、中継器40と制御装置50との間の信号線60における応答信号SA1~SAnの重複を抑制し、応答信号SA1~SAnの情報を受信信号SAとして適切に制御装置50に受信させることができる。
【0090】
このように、応答信号SA1~SAnのデータ構成を、複数の変換器30のそれぞれに応じて変更し、第1情報を含まない応答信号の情報の数を、第1情報を含む応答信号の情報の数よりも少なくする。この場合には、応答信号SA1~SAnのデータ構成を同じとした場合と比べて、通信サイクルを短くすることができる。これにより、応答信号SA1~SAnのデータ構成を同じとした場合と比べて、重要度の高い第1情報の更新の頻度を高くすることができる。従って、本実施形態においても、上記実施形態と同様に、中継器40を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制することができる。
【0091】
また、通信サイクルを短くすることができるため、例えば、中継器40に接続される変換器30の台数を増やすことができる。これにより、例えば、中継器40の台数、中継器40と制御装置50との間の信号線60の本数、及び制御装置50の通信ポートの数を削減することができる。
【0092】
例えば、主回路部20の1つのアーム22に設けられる変換器30の台数が96台である際に、1台の中継器40に接続可能な変換器30の台数が16台から32台に増えた場合には、1つのアーム22に対する中継器40の台数を6台から3台に削減することができる。そして、これに応じて信号線60の本数、及び制御装置50の通信ポートの数も削減することができる。さらには、中継器40の設置場所の低減を図ることもできる。従って、例えば、電力変換装置10の小型化や製造コストの低減を図ることができる。
【0093】
なお、
図7に表した例では、制御装置50から各変換器30に対して共通の要求信号SRを送信し、各変換器30が、要求信号SRの受信に応じて予め設定された送信タイミングで応答信号を送信することにより、データ構成に応じた時間間隔で制御装置50に応答信号SA1~SAnが送信されるようにしている。これに限ることなく、例えば、制御装置50から各変換器30に対して個別に設定した要求信号SR1~SRnを送信し、対応する要求信号SR1~SRnの受信に応答して応答信号SA1~SAnを送信することにより、データ構成に応じた時間間隔で制御装置50に応答信号SA1~SAnが送信されるようにしてもよい。
【0094】
また、この例においても、重要度は、3段階以上に設定し、複数の情報は、3つ以上の情報に分けてもよい。複数の変換器30は、重要度の高い情報を含まない応答信号の情報の数を、重要度の高い情報を含む応答信号の情報の数よりも少なくしてもよい。
【0095】
例えば、複数の情報を第1情報~第3情報の3つの情報に分けた場合には、最も重要度の高い第1情報を含む変換器30の応答信号に含まれる情報の数を最も多くし、第3情報よりも重要度の高い第2情報を含む変換器30の応答信号に含まれる情報の数を、第3情報を含む変換器30の応答信号に含まれる情報の数よりも多くし、第3情報のみを含む変換器30の応答信号に含まれる情報の数を最も少なくしてもよい。
【0096】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る応答信号の一例を模式的に表す説明図である。
図8に表したように、この例では、応答信号に第1情報を含む変換器1が、制御装置50に対し、複数の情報A~Dを含む応答信号SA1aの送信、及び第1情報である情報Dのみを含む応答信号SA1bの送信を行う。
【0097】
制御装置50は、変換器1に対して複数の情報A~Dの全ての送信を要求する要求信号SR1aの送信、及び変換器1に対して第1情報である情報Dのみの送信を要求する要求信号SR1bの送信を行う。変換器1は、要求信号SR1aの受信に応答して応答信号SA1aを送信し、要求信号SR1bの受信に応答して応答信号SA1bを送信する。
【0098】
制御装置50は、例えば、
図4に表したように、2回に1回の頻度で応答信号に第1情報を含む変換器1から制御装置50への応答信号の送信を行う場合に、最初の要求信号の送信において要求信号SR1aを送信し、2回目以降の要求信号の送信において要求信号SR1bを送信する。
【0099】
この例では、各変換器30が、例えば、変換器1(情報A~D)→変換器2→変換器1(情報Dのみ)→変換器3→変換器1(情報Dのみ)→変換器4→・・・変換器1(情報Dのみ)→変換器Nの順に、応答信号SA1a、SA1b、SA2~SAnの送信を行う。
【0100】
このように、この例では、応答信号に第1情報を含む変換器1が、制御装置50に対し、複数の情報A~Dを含む応答信号SA1aの送信、及び第1情報である情報Dのみを含む応答信号SA1bの送信を行うとともに、第1情報のみを含む応答信号SA1bの送信の頻度を、複数の情報A~Dを含む応答信号SA1aの送信の頻度よりも高くする。これにより、この例では、制御装置50において、重要度の高い第1情報の更新の頻度を、重要度の低い第2情報の更新の頻度よりもより高くすることができる。これにより、中継器40を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れをより抑制することができる。
【0101】
なお、第1情報のみを含む応答信号SA1bの送信の頻度は、上記に限ることなく、上記第1の実施形態において説明したように、任意の頻度でよい。また、第1情報のみを含む応答信号SA1bの送信は、制御装置50からの要求信号SR1bの受信に応答して送信する構成に限ることなく、予め決められた送信タイミングで送信する構成としてもよい。
【0102】
また、この例においても、重要度は、3段階以上に設定し、複数の情報は、3つ以上の情報に分けてもよい。応答信号に重要度の高い情報を含む変換器30は、制御装置50に対し、複数の情報を含む応答信号の送信、及び重要度の高い情報のみを含む応答信号の送信を行うとともに、重要度の高い情報のみを含む応答信号の送信の頻度を、複数の情報を含む応答信号の送信の頻度よりも高くしてもよい。
【0103】
例えば、複数の情報を第1情報~第3情報の3つの情報に分けた場合には、最も重要度の高い第1情報のみを含む応答信号の送信の頻度を最も高くし、第2情報のみを含む応答信号の送信の頻度を、複数の情報を含む応答信号の送信の頻度よりも高くしてもよい。
【0104】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図9に表したように、電力変換装置10aは、信号線42、中継器40、及び信号線60の通信経路とは別に、応答信号に第1情報を含む変換器30と制御装置50との間での直接的な通信を可能にする専用信号線62をさらに備える。
【0105】
制御装置50は、例えば、
図5に表した動作により、中継器40を中心とするスター型の通信方式によって制御に必要な情報を各変換器30から取得するとともに、応答信号に第1情報を含む変換器30と専用信号線62を介して通信を行うことにより、応答信号に第1情報を含む変換器30から中継器40を介した通信よりも高い頻度で第1情報を取得する。
【0106】
これにより、本実施形態に係る電力変換装置10aにおいても、重要度の高い第1情報の更新の頻度を、重要度の低い第2情報の更新の頻度よりも高くし、中継器40を中心とするスター型の通信方式を採用した際にも、制御の遅れを抑制することができる。なお、応答信号に第1情報を含む変換器30から専用信号線62を介して第1情報を取得する頻度は、中継器40を介した通信よりも高い任意の頻度でよい。
【0107】
なお、この例においては、伝送遅延調整機能を中継器40に設ける構成としてもよい。複数の変換器30が、要求信号に基づいて複数の変換器30のそれぞれの応答信号を時間的にずらして制御装置50へ送信する構成は、複数の変換器30のそれぞれの応答信号を中継器40において時間的にずらす構成でもよい。
【0108】
また、この例においても、重要度は、3段階以上に設定し、複数の情報は、3つ以上の情報に分けてもよい。制御装置50は、中継器40を介して複数の変換器30と通信を行うことにより、複数の情報を定期的に取得するとともに、応答信号に重要度の高い情報を含む変換器30と専用信号線62を介して通信を行い、応答信号に重要度の高い情報を含む変換器30から中継器40を介した通信よりも高い頻度で重要度の高い情報を取得することにより、重要度の高い情報の更新の頻度を、重要度の低い情報の更新の頻度よりも高くしてもよい。
【0109】
例えば、複数の情報を第1情報~第3情報の3つの情報に分けた場合には、専用信号線62を介した通信により、最も重要度の高い第1情報の更新の頻度を最も高くし、第2情報の更新の頻度を第3情報の更新の頻度よりも高くしてもよい。
【0110】
上記各実施形態では、直列に接続された複数の変換器30を有する主回路部20を示している。上記各実施形態は、これに限ることなく、並列に接続された複数の変換器30を有する主回路部において、各変換器30と制御装置50とが中継器40を中心とするスター型の通信を行う場合に適用してもよい。
【0111】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 電力系統、 2 変圧器、 3 直流回路、 4 設置面、 10、10a 電力変換装置、 20 主回路部、 22 アーム、 24 バッファリアクトル、 26 絶縁架台、 30 変換器、 32 制御回路、 33 駆動回路、 35 変換回路、 35C 電荷蓄積素子、 35D ダイオード、 35S1、35S2 スイッチング素子、 36 主回路給電部、 40 中継器、 42 信号線、 50 制御装置、 60 信号線、 62 専用信号線