(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161911
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】建築工事用メッシュシートの補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20231031BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20231031BHJP
D03D 19/00 20060101ALI20231031BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20231031BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20231031BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E04G21/32 B
D03D1/00 Z
D03D19/00
D06M17/00 B
D06M17/00 K
D01F8/14 B
B32B5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072554
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 慧
(72)【発明者】
【氏名】池田 弘平
(72)【発明者】
【氏名】室谷 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】大門 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】上野山 卓也
【テーマコード(参考)】
4F100
4L032
4L041
4L048
【Fターム(参考)】
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK42B
4F100BA03
4F100DG12B
4L032AA05
4L032AA07
4L032AB02
4L032AC01
4L032BB03
4L032BD01
4L032BD03
4L032CA01
4L032DA02
4L032EA06
4L041BA21
4L041BC11
4L041BD03
4L041CA06
4L041CA10
4L041DD05
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA28
4L048AA34
4L048AA44
4L048AB07
4L048AB11
4L048AC18
4L048BA01
4L048BA08
4L048CA15
4L048DA30
4L048EB05
(57)【要約】
【課題】 建築工事用メッシュシートを簡便に補修しうる方法を提供する。
【解決手段】 建築工事用メッシュシートの破損部を覆うようにして、補修シートを積層し、高周波ウェルダーに掛けることにより、補修シートと建築工事用メッシュシートを接着する補修方法である。建築工事用メッシュシートは、緯糸として、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分がポリエチレンテレフタレート系重合体よりも低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸を用いた織物である。補修シートは、ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる糸条を経糸及び緯糸とする織物の表面に塩化ビニル樹脂層が積層一体化されてなる。高周波ウェルダーにより塩化ビニル樹脂が発熱溶融すると共に、鞘成分のみが軟化又は溶融し、建築工事用メッシュシートと補修シートが強固に接着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも緯糸として、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が該ポリエチレンテレフタレート系重合体よりも低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸を用いた織物よりなる建築工事用メッシュシートの破損部を補修する方法であって、
ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる糸条を経糸及び緯糸とする織物の少なくとも表面に塩化ビニル樹脂層が積層一体化されてなる補修シートを準備し、
前記破損部を前記補修シートで被覆した状態で高周波ウェルダーに掛けて、誘電加熱により前記塩化ビニル樹脂層を発熱溶融せしめ、前記塩化ビニル樹脂層の発熱により前記共重合ポリエステルを軟化又は溶融させて、前記建築工事用メッシュシートと前記補修シートとを接着することを特徴とする建築工事用メッシュシートの補修方法。
【請求項2】
補修シート上に、さらに請求項1記載の建築工事用シートの一片を被覆して、建築工事用シート、補修シート及び該一片を接着する請求項1記載の建築工事用メッシュシートの補修方法。
【請求項3】
補修シートを構成する織物が平織物である請求項1記載の建築工事用メッシュシートの補修方法。
【請求項4】
補修シートが、平織物の両面に塩化ビニル樹脂層が積層一体化されてなる請求項3記載の建築工事用メッシュシートの補修方法。
【請求項5】
建築工事用メッシュシートを構成する織物が絽組織である請求項1記載の建築工事用メッシュシートの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事用メッシュシートの破損部を簡便に補修する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築工事用メッシュシートに破れや引裂等の破損部を生じた場合、ミシン縫製で補修している。しかしながら、建築工事用メッシュシートの大きさは、一般的に、縦横数メートル以上あり、ミシン縫製することが困難であった。たとえば、建築工事用メッシュシートの中央に破損部が生じた場合、その箇所にミシン針を持っていくことができず、縫製は困難であった。このため、特許文献1には、建築工事用メッシュシートの補修方法として、以下のような方法が提案されている。すなわち、建築工事用メッシュシートの破損部に、メッシュ状物又は不織布状物の低融点ポリエステル樹脂シートを介して、当該建築工事用メッシュシートと同種のメッシュシートを積層し、当該低融点ポリエステル樹脂を溶融させて、建築工事用メッシュシートと同種のメッシュシートを融着接合する方法が提案されている。
【0003】
この補修方法で用いる低融点ポリエステル樹脂シートは、補修時において全溶融し、建築工事用メッシュシートの経糸又は緯糸に沿って流動するものである。したがって、当該建築工事用メッシュシートの目を塞がず、当初の通気性を維持しうるとされている(特許文献1、段落0018)。しかしながら、低融点ポリエステル樹脂シートが全溶融するため、必ず、当該建築工事用メッシュシートと同種のメッシュシートが必要となる。したがって、同種のメッシュシートを調達しにくい、建築現場での応急的な補修は行えないということがあった。
【0004】
そこで、本件出願人は、建築工事用メッシュシートを簡便に補修しうる方法として特許文献2記載の方法を提案した。すなわち、少なくとも緯糸として、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸を用いた織物よりなる建築工事用メッシュシートの破損部を、同種の感熱性接着性織物、つまり、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントが集束されてなる感熱接着性マルチフィラメント糸で織成されてなる感熱接着性織物で被覆し、加熱及び加圧することにより、建築工事用メッシュシートと感熱接着性織物を接着して補修する方法を提案した。
【0005】
【特許文献1】特開平5-141100号公報
【特許文献2】特願2021-136748号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特許文献2と同様に、建築工事用メッシュシートを簡便に補修しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特許文献2記載の感熱接着性織物に代えて、いわゆるターポリンの一種を用いることにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、少なくとも緯糸として、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が該ポリエチレンテレフタレート系重合体よりも低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸を用いた織物よりなる建築工事用メッシュシートの破損部を補修する方法であって、ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる糸条を経糸及び緯糸とする織物の少なくとも表面に塩化ビニル樹脂層が積層一体化されてなる補修シートを準備し、前記破損部を前記補修シートで被覆した状態で高周波ウェルダーに掛けて、誘電加熱により前記塩化ビニル樹脂層を発熱溶融せしめ、前記塩化ビニル樹脂層の発熱により前記共重合ポリエステルを軟化又は溶融させて、前記建築工事用メッシュシートと前記補修シートとを接着することを特徴とする建築工事用メッシュシートの補修方法に関するものである。
【0008】
本発明で使用する建築工事用メッシュシートとしては、経糸及び緯糸を用いて織成した織物が用いられる。この織物の少なくとも緯糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸となっている。具体的には、芯鞘型複合フィラメントを複数本集束してなるマルチフィラメント糸を用いるのが好ましい。この芯鞘型複合フィラメントの繊度は5~15デシテックス程度であり、集束本数は100~500本程度である。また、マルチフィラメント糸は撚りを掛けていても掛けていなくてもよく、撚りを掛ける場合の撚数は、50~200回/m程度である。マルチフィラメント糸の総繊度は500~10000デシテックス程度である。
【0009】
芯鞘型複合フィラメントは、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分がポリエチレンテレフタレート系重合体よりも低融点の共重合ポリエステルである。ポリエチレンテレフタレート系重合体の融点は約255℃程度であり、共重合ポリエステルの融点は約120~190℃程度である。
【0010】
一方、経糸としては、従来公知のものを用いうる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる単相型フィラメントを複数本集束してなるマルチフィラメント糸が用いるのが好ましい。ポリエチレンテレフタレート系重合体は耐候性に優れており、建築工事用シートに用いるのに適している。単相型フィラメントの繊度は、5~15デシテックス程度であり、集束本数は100~500本程度である。また、マルチフィラメント糸は撚りを掛けていても掛けていなくてもよく、撚りを掛ける場合の撚数は、50~200回/m程度である。マルチフィラメント糸の総繊度は500~5000デシテックス程度である。また、経糸として、上記した緯糸に用いたものと同一のマルチフィラメント糸を使用してもよい。
【0011】
織物の織組織としては従来公知のものを採用しうる。本発明においては、特に、通風性に優れ、目づれの生じにくい絽組織の織物を用いるのが好ましい。ここで、絽組織の織物とは、その織構造単位が、3本以上の緯糸と2本の経糸とよりなり、緯糸と経糸の交差点では平織組織となっており、2本の経糸は3本以上の緯糸の出口で綟られているものである。具体的に、緯糸を3本とした絽組織の織物を図示すれば、
図1に示したとおりである。また、
図1の楕円で囲った構造が織構造単位1である。この織構造単位1を用いて説明すると、緯糸2a,2b,2cと経糸3a,3bの交差点では平織組織となっており、経糸3a,3bが緯糸2a,2b,2cと交差しない出口(平織組織に織成された方向の出口)において、経糸3a,3bが綟られているものである。そして、この織構造単位1が左右及び上下に連続したものが、絽組織の織物である。
図1から分かるように、綟られている経糸3a,3bが左右に連続する際に隙間4が生じ、通風性の良好な建築工事用メッシュシートとなるのである。なお、絽組織の織物としては、緯糸が3本のものの他、5本又は7本のものが一般的である。
【0012】
本発明においては、織物の緯糸として、芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸が用いられているので、目づれをより生じにくくするため又は緯方向に剛直性を与えるため、以下の方法で織物に熱処理を施してもよい。すなわち、芯鞘型複合フィラメントの鞘成分のみが軟化又は溶融する温度で織物を熱処理し、鞘成分を溶融固化させて、芯鞘型複合フィラメント相互間を融着させると共に、緯糸及び経糸の交差点を融着させるのである。これにより、緯糸に剛直性が付与されて緯方向に剛直になると共に、緯糸と経糸が融着しているので目づれが生じにくくなるのである。
【0013】
建築工事用メッシュシートは、建築現場での火災の危険を防止するため、難燃性であるのが好ましい。建築工事用メッシュシートを難燃性にするには、難燃性樹脂を原料に用いればよい。たとえば、ポリエチレンテレフタレート系重合体及び/又は共重合ポリエステルを難燃性にすればよく、具体的には、重合体中に難燃剤を混合しておいてもよいし、重合体分子中にリン化合物等の難燃化合物を共重合しておいてもよい。
【0014】
次に、本発明で準備する補修シートについて説明する。この補修シートは、織物の少なくとも表面に塩化ビニル樹脂層が積層一体化されてなるものである。この織物は、ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる糸条を経糸及び緯糸として、従来公知の織組織で織成されてなるものである。ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる糸条は耐候性に優れており、屋外で用いる建築工事用メッシュシートの補修シートとして用いるのに適している。また、この糸条は強伸度等の物理的特性に優れたマルチフィラメント糸であるのが、好ましい。糸条の繊度は任意であるが、一般的に500~700デシテックス程度である。織物の織組織としては、最も単純な平織物であるのが好ましく、特に通風性を阻害しにくい粗目の平織物であるのが好ましい。具体的には、経糸密度及び緯糸密度共に、20~30本/インチであるのが好ましい。
【0015】
織物の少なくとも表面、好ましくは両面に、塩化ビニル樹脂層が積層一体化されている。塩化ビニル樹脂は、高周波ウェルダーにより誘電加熱して発熱し、溶融しやすいものである。そして、溶融したときの温度が約170℃となって、建築工事用メッシュシートに用いているマルチフィラメント糸の鞘成分のみを軟化又は溶融せしめ、建築工事用メッシュシートと補修シートを接着するものである。したがって、塩化ビニル樹脂は、本発明で用いるのに適している。
【0016】
塩化ビニル樹脂層は、織物の経糸及び緯糸を被覆する状態で、織物に積層一体化されている。塩化ビニル樹脂層の量は、300~500g/m2程度である。この程度の量で、建築工事用メッシュシートと補修シートとが強固に接着する。
【0017】
本発明に係る建築工事用メッシュシートの補修方法は、補修シートだけで補修しうるものである。具体的には、建築工事用メッシュシートの破損部を補修シートで被覆し、この状態で高周波ウェルダーに掛ければ、補修シートの塩化ビニル樹脂層が発熱溶融すると共に建築工事用メッシュシートを構成しているマルチフィラメント糸中の鞘成分が軟化又は溶融し、補修シートと建築工事用メッシュシートが接着する。したがって、破損部は補修シートによって補修されたことになる。また、破損した建築工事用メッシュシートと同種のメッシュシートが調達できた場合には、これを用いて補修することもできる。すなわち、建築工事用メッシュシートの破損部を補修シートで被覆し、さらに補修シート上に同種のメッシュシートを適宜裁断した一片を積層した状態で高周波ウェルダーに掛ける。これにより、補修シートの塩化ビニル樹脂層が発熱溶融し、建築工事用メッシュシート、補修シート及び同種のメッシュシートの一片が接着する。したがって、破損部は補修シート及び同種のメッシュシートによって補修されたことになる。
【0018】
本発明に係る建築工事用メッシュシートの補修方法は、高周波ウェルダーの設備があれば、いつでもどこでも、簡便に行えるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明で用いる建築工事用メッシュシートは、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含むマルチフィラメント糸を、緯糸として用いたものである。また、本発明で用いる補修シートは、ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる糸条を経糸及び緯糸に用いた織物に塩化ビニル樹脂層が積層一体化されてなるものである。本発明に係る補修方法は、建築工事用メッシュシートの破損部を補修シートで被覆し、高周波ウェルダーに掛けるものであるため、塩化ビニル樹脂が発熱溶融すると共に、建築工事用メッシュシートを構成しているマルチフィラメント糸の鞘成分のみを軟化又は溶融させるものである。したがって、建築工事用メッシュシートと補修シートとが強固に接着するという効果を奏するものである。
【実施例0020】
[建築工事用メッシュシート1]
(緯糸の準備)
芯成分が難燃性ポリエチレンテレフタレート系重合体(融点255℃)で、鞘成分が結晶性共重合ポリエステル(融点160℃)である、繊度8.7デシテックスの芯鞘型複合フィラメント(芯鞘質量比が芯成分=2.7/鞘成分=1.0)を192本集束した集束体2本を、撚回数80回/mで撚り合わせて、撚糸とした。この撚糸を緯糸として準備した。なお、難燃性ポリエチレンテレフタレート系重合体は、ポリエチレンテレフタレートにリン化合物を1質量%以下の量で共重合したものである。
【0021】
(経糸の準備)
難燃性ポリエチレンテレフタレート系重合体(融点255℃)よりなる、繊度13デシテックスの単相型フィラメントを140本集束すると共に撚回数80回/mで撚ったものを経糸として準備した。なお、難燃性ポリエチレンテレフタレート系重合体は、ポリエチレンテレフタレートにリン化合物を1質量%以下の量で共重合したものである。
【0022】
準備した緯糸及び経糸を用いて、
図1に示した織構造で織成して3本絽の織物を得た。この織物を、170℃で43秒間熱処理して建築工事用メッシュシート1を得た。この建築工事用メッシュシート1は、経糸密度が25. 4本/インチで緯糸密度12. 7本/インチであった。また、緯糸は鞘成分のみが溶融固化して、芯鞘型複合フィラメント相互間が一体化した熱融着マルチフィラメント糸になると共に、経糸との交差点において融着してなるものであった。
【0023】
[建築工事用メッシュシート2]
(緯糸の準備)
芯成分が難燃性ポリエチレンテレフタレート系重合体(融点255℃)で、鞘成分が結晶性共重合ポリエステル(融点160℃)である、繊度8.7デシテックスの芯鞘型複合フィラメント(芯鞘質量比が芯成分=2.7/鞘成分=1.0)を192本集束した集束体と、繊度7.1デシテックスのポリエチレンテレフタレートフィラメントを140本集束した集束体とを、撚回数80回/mで撚り合わせて、撚糸とした。この撚糸を緯糸として準備した。なお、難燃性ポリエチレンテレフタレート系重合体は、建築工事用メッシュシート1を得るのに用いたものと同一である。
(経糸の準備)
建築工事用メッシュシート1を得るのに用いた経糸と同一のものを準備した。
【0024】
準備した緯糸及び経糸を用いて、
図1に示した織構造で織成して3本絽の織物を得た。この織物を、170℃で43秒間熱処理して建築工事用メッシュシート2を得た。この建築工事用メッシュシート2は、経糸密度が25. 4本/インチで緯糸密度14.4本/インチであった。また、緯糸は鞘成分が溶融固化して、芯鞘型複合フィラメント相互間及び芯鞘型複合フィラメントとポリエチレンテレフタレートフィラメント間が一体化した熱融着マルチフィラメント糸になると共に、経糸との交差点において融着してなるものであった。
【0025】
[建築工事用メッシュシート3]
(緯糸の準備)
建築工事用メッシュシート2を得るのに用いた緯糸を第一撚糸とした。また、繊度13デシテックスのポリエチレンテレフタレートフィラメントを140本集束した集束体を、撚回数80回/mで撚り合わせて、第二撚糸とした。この第一撚糸と第二撚糸とを緯糸として準備した。
(経糸の準備)
建築工事用メッシュシート1を得るのに用いた経糸と同一のものを準備した。
【0026】
準備した緯糸及び経糸を用いて、
図1に示した織構造で織成して3本絽の織物を得た。この際、緯糸2a及び2cとして第二撚糸を用い、緯糸2bとして第一撚糸を用いた。この織物を、190℃で43秒間熱処理して建築工事用メッシュシート3を得た。この建築工事用メッシュシート3は、経糸密度が25. 4本/インチで緯糸密度17.8本/インチであった。また、緯糸2bは鞘成分が溶融固化して、芯鞘型複合フィラメント相互間が一体化した熱融着マルチフィラメント糸になると共に、緯糸2a及び2cと融着し、さらに経糸との交差点において融着してなるものであった。
【0027】
[建築工事用メッシュシート4]
(緯糸の準備)
繊度13デシテックスのポリエチレンテレフタレートフィラメントを140本集束した集束体を、撚回数80回/mで撚り合わせた撚糸を緯糸とした。
(経糸の準備)
建築工事用メッシュシート1を得るのに用いた経糸と同一のものを準備した。
【0028】
準備した緯糸及び経糸を用いて、
図1に示した織構造で織成して3本絽の織物を得た。この織物を、190℃で43秒間熱処理して建築工事用メッシュシート4を得た。この建築工事用メッシュシート4は、経糸密度が25. 4本/インチで緯糸密度17.8本/インチであった。なお、経糸及び緯糸は、いずれも、ポリエチレンテレフタレート系重合体よりなる単相型フィラメントのマルチフィラメント糸であり、フィラメント間や経糸及び緯糸間での融着は生じていないものである。
【0029】
実施例1
[補修シートの準備]
繊度12.7デシテックスのポリエチレンテレフタレートフィラメントを48本集束した無撚マルチフィラメント糸を、経糸として準備した。一方、繊度12.7デシテックスのポリエチレンテレフタレートフィラメントを48本集束した集束体を、撚回数100回/mで撚り合わせた撚糸を緯糸とした。そして、経糸密度24本/インチで緯糸密度22本/インチで織成して目付122g/m2の平織物を織成した。この平織物に、塩化ビニル樹脂を塗布して、目付545g/m2の補修シートを得た。
【0030】
建築工事用メッシュシート1から幅30mmで長さ350mmの試験片を採取した。なお、建築工事用メッシュシート1については、経糸が長手方向に走行している試験片Aと、緯糸が長手方向に走行している試験片Bの二種を採取した。一方、補修シートから幅30mmで長さ350mmの試験片を採取した。試験片Aと補修シートの試験片を重ね合わせ、長手方向に150mmの未接着部分を残して、高周波ウェルダー(クインライト電子精工株式会社製)に掛けて、30mm幅×200mmの接着部を持つ試験体Aを15個作成した。試験片Bを用いて、前記と同様にして試験体Bを15個作成した。なお、高周波ウェルダーは、出力4kW、発信時間10秒及び冷却時間3秒の条件で行った。
【0031】
試験体A15個及び試験体B15個につき、建築工事用メッシュシート1の未接着部分と補修シートの未接着部分とを把持して、T字型剥離強力(N/30mm幅)を測定した。T字型剥離強力の測定は、株式会社島津製作所製のオートグラフAG-1を用い、掴み間隔30mmで引張速度100mm/分の条件で行った。得られたT字型剥離強力のうち、極大値の大きい3点の数値を読み取り、その平均値をT字型剥離強力(N/30mm幅)とした。
【0032】
実施例2
建築工事用メッシュシート1に代えて、建築工事用メッシュシート2を用いる他は、実施例1と同一の方法により、T字型剥離強力(N/30mm幅)を得た。
【0033】
実施例3
建築工事用メッシュシート1に代えて、建築工事用メッシュシート3を用いる他は、実施例1と同一の方法により、T字型剥離強力(N/30mm幅)を得た。
【0034】
比較例1
建築工事用メッシュシート1に代えて、建築工事用メッシュシート4を用いる他は、実施例1と同一の方法により、T字型剥離強力(N/30mm幅)を得た。
【0035】
実施例1~3及び比較例1で得られたT字型剥離強力(N/30mm幅)は、表1に示したとおりであった。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試験体AのT字型剥離強力 試験体BのT字型剥離強力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 48.2 40.5
実施例2 42.6 34.7
実施例3 42.1 33.0
比較例1 31.3 23.8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0036】
表1の結果から分かるように、建築工事用メッシュシートを構成するマルチフィラメント糸として、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含んでいるものを用いた実施例1~3のT字型剥離強力は、この芯鞘型複合フィラメントを含んでいないものを用いた比較例1に比べて、T字型剥離強力が向上していることが分かる。したがって、補修シートの塩化ビニル樹脂の誘電加熱による発熱溶融により、鞘成分のみが軟化又は溶融することにより、補修シートと建築工事用メッシュシートとが強固に接着していることが分かる。
【0037】
実施例4
実施例1と同様の方法により、試験片A及び試験片Bを得た。また、実施例1で用いた補修シートから30mm×30mmの大きさの一片を採取し、これを補修片とした。試験片Aの右端上に補修片を重ね合わせ、この補修片の上に他の試験片Aの左端を重ね合わせ、実施例1と同一の条件で高周波ウェルダーに掛け、試験体Aを15個作成した。試験体Aの左端(試験片Aの左端)と右端(他の試験片Aの右端)を把持して、せん断剥離強力(N/30mm幅)を測定した。せん断剥離強力の測定は、株式会社島津製作所製のオートグラフAG-1を用い、掴み間隔30mmで引張速度200mm/分の条件で行った。得られたせん断剥離強力のうち、極大値の大きい3点の数値を読み取り、その平均値をせん断剥離強力(N/30mm幅)とした。
また、試験片Bについても、試験片Aと同様にして試験体Bを15個作成し、せん断剥離強力(N/30mm幅)を測定した。
【0038】
実施例5
建築工事用メッシュシート1に代えて、建築工事用メッシュシート2を用いる他は、実施例4と同一の方法により、せん断剥離強力(N/30mm幅)を得た。
【0039】
実施例6
建築工事用メッシュシート1に代えて、建築工事用メッシュシート3を用いる他は、実施例4と同一の方法により、せん断剥離強力(N/30mm幅)を得た。
【0040】
比較例2
建築工事用メッシュシート1に代えて、建築工事用メッシュシート4を用いる他は、実施例4と同一の方法により、せん断剥離強力(N/30mm幅)を得た。
【0041】
実施例4~6及び比較例2で得られたせん断剥離強力(N/30mm幅)は、表2に示したとおりであった。
[表2]
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試験体Aのせん断剥離強力 試験体Bのせん断剥離強力
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実施例4 982 1017
実施例5 498 567
実施例6 256 309
比較例2 184 267
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【0042】
表2の結果から分かるように、建築工事用メッシュシートを構成するマルチフィラメント糸として、芯成分がポリエチレンテレフタレート系重合体であり、鞘成分が低融点の共重合ポリエステルである芯鞘型複合フィラメントを含んでいるものを用いた実施例4~6のせん断剥離強力は、この芯鞘型複合フィラメントを含んでいないものを用いた比較例2に比べて、せん断剥離強力が向上していることが分かる。したがって、補修シートの塩化ビニル樹脂の誘電加熱による発熱溶融により、鞘成分のみが軟化又は溶融することにより、補修シートと建築工事用メッシュシートとが強固に接着していることが分かる。