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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161922
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B41J29/38 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072574
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】辻村 祐樹
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AS02
2C061AS06
2C061HH13
2C061HJ10
2C061HK07
2C061HK10
(57)【要約】
【課題】画像記録材料やシート状媒体を無駄に消費するのを抑制する。
【解決手段】プリンタの制御部は、記録指令を受け取った後に、温度センサにより検出された検出温度Tcを用いて、検出温度Tcよりも高い推定温度Teを決定する決定処理と、決定処理で決定された推定温度Teが上限温度Ts1以下である場合、記録指令に基づいてロール紙印刷を実行させる処理と、決定処理で決定された推定温度Teが上限温度Ts1を超える場合、ロール紙印刷を実行せず、決定処理で決定された推定温度Teが上限温度Ts1となってからロール紙印刷を実行する処理と、を実行可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
シート状媒体を支持する第1支持部と、
シート状媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送されるシート状媒体に画像を記録する記録部と、
前記筐体内の温度を検出する温度センサと、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、
記録指令を受け取った後に、前記温度センサにより検出された検出温度を用いて、前記検出温度よりも高い推定温度を決定する決定処理と、
前記決定処理で決定された前記推定温度が第1閾値以下である場合、前記記録指令に基づいて前記搬送部にシート状媒体を搬送させ且つ前記記録部に画像を記録させる第1画像記録処理と、を実行可能であり、
前記制御部は、
前記決定処理で決定された前記推定温度が前記第1閾値を超える場合、前記推定温度が前記第1閾値以下の第2閾値以下となるまで前記決定処理の実行を繰り返し、前記推定温度が前記第2閾値以下となってから前記第1画像記録処理を実行する待機処理を、さらに実行可能であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記決定処理において、前記記録指令に基づく前記第1画像記録処理の実行によって上昇することが見込まれる温度変化量を決定し、当該温度変化量を前記検出温度に加算することで前記推定温度を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記筐体内に設けられ、前記搬送部及び前記記録部の少なくともいずれかを駆動する駆動モータを、さらに備えており、
前記制御部は、
前記決定処理において、前記第1画像記録処理において搬送されるシート状媒体の長さが長くなるに連れて、決定される前記温度変化量を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記筐体内に設けられ、前記搬送部及び前記記録部の少なくともいずれかを駆動する駆動モータを、さらに備えており、
前記制御部は、
前記決定処理において、前記第1画像記録処理で記録される画像の解像度が高くなるに連れて、決定される前記温度変化量を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記第1支持部は、シート状媒体がロール状に巻回されたロール体を支持し、
前記制御部は、
前記記録指令が、前記ロール体から巻き解かれたシート状媒体に画像を記録する指令である場合、前記決定処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記ロール状に巻回されたシート状媒体よりも短尺のシート状媒体を複数積層された状態で支持する第2支持部を、さらに備えており、
前記制御部は、
前記記録指令が、前記第2支持部に支持されたシート状媒体に画像を記録する指令である場合、前記温度センサにより検出された前記検出温度に関わらず、前記記録指令に基づいて前記搬送部に前記第2支持部に支持されたシート状媒体を搬送させ且つ前記記録部に画像を記録させる第2画像記録処理と、
前記第2画像記録処理の実行中に前記検出温度が前記第1閾値を超える場合、前記第2画像記録処理を中断し、前記検出温度が前記第1閾値よりも低い第3閾値以下となってから前記第2画像記録処理を再開する中断処理と、を実行可能であることを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記第2閾値が前記第1閾値と同じであることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状媒体に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機内温度(筐体内温度)が予め設定された温度を超えた場合に、印刷を中断して端部温度を予め設定された温度以下に下げる印刷中断処理を実行し、機内温度が予め設定された温度以下になった場合に、印刷を中断することなく継続させる画像形成装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-104006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の画像形成装置においては、機内温度が予め設定された温度を超えた場合に、印刷を中断して端部温度が予め設定された温度以下になるまで待機する。このように印刷を中断する画像形成装置の場合、例えば、ユーザは印刷が終了したと勘違いして、所望画像全体が形成されていない用紙を画像形成装置から誤って引き抜いてしまうことがある。また、例えば、画像形成装置の中断時間が長い場合、印刷を指示したPCなどの外部装置が、印刷が終了したと判定し、印刷自体をキャンセルすることもある。このように印刷途中の用紙が引き抜かれたり、印刷が途中でキャンセルされたりすることで、当該印刷が無駄になる。つまり、画像形成材料や用紙を無駄に消費することとなる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、画像記録材料やシート状媒体を無駄に消費するのを抑制することが可能な画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像記録装置は、筐体と、シート状媒体を支持する第1支持部と、シート状媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送されるシート状媒体に画像を記録する記録部と、前記筐体内の温度を検出する温度センサと、制御部と、を備えている。そして、前記制御部は、記録指令を受け取った後に、前記温度センサにより検出された検出温度を用いて、前記検出温度よりも高い推定温度を決定する決定処理と、前記決定処理で決定された前記推定温度が第1閾値以下である場合、前記記録指令に基づいて前記搬送部にシート状媒体を搬送させ且つ前記記録部に画像を記録させる第1画像記録処理と、を実行可能である。前記制御部は、前記決定処理で決定された前記推定温度が前記第1閾値を超える場合、前記推定温度が前記第1閾値以下の第2閾値以下となるまで前記決定処理の実行を繰り返し、前記推定温度が前記第2閾値以下となってから前記第1画像記録処理を実行する待機処理を、さらに実行可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の画像記録装置によると、記録指令に基づいて行われるシート状媒体への画像記録が中断するのを抑制することが可能となる。このため、画像記録途中のシート状媒体をユーザが引き抜くことや、画像記録が途中でキャンセルされることが生じにくくなる。この結果、画像記録材料及びシート状媒体が無駄に消費されるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかるプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図2図1に示すプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図3図1に示すプリンタで印刷を実行する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】ロール紙印刷における推定温度、検出温度、上限温度及び温度変化量の関係を示すグラフである。
図5】カット紙印刷における検出温度、上限温度及び再開温度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態にかかるプリンタ100について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、プリンタ100が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向及び前後方向が定義され、プリンタ100を前方から見て左右方向(図1の紙面に垂直な方向)が定義される。
【0010】
プリンタ100は、図1に示すように、筐体100a、給送カセット1、搬送部3、切断部4、ヘッド(本発明の「記録部」)5、排出トレイ6、移動機構7、制御部8、温度センサ9などを有する。
【0011】
給送カセット1は、筐体100a内においてヘッド5の下方に配置されている。また、給送カセット1は、ロール状に巻回されたロール紙Rp及びカット紙Kpのいずれかの用紙Pを選択的に搬送可能なように、ロール体R及びカット紙Kpのいずれかを選択的に収容するものである。給送カセット1は、図1に示すように、トレイ11と、ロール体Rを収容可能なロール体収容部20と、カット紙Kpを複数積層された状態で収容可能なカット紙収容部13とを有している。
【0012】
ロール体Rは、図1に示すように、円筒状の芯部材Rcの外周面に長尺のロール紙(本発明の「シート状媒体」)Rpがロール状に巻回されたものである。カット紙(本発明の「シート状媒体」)Kpは、カット紙Kp及びロール紙Rpの搬送方向において、ロール体Rを構成する長尺のロール紙Rpよりも短尺の用紙であり、例えばA4サイズやB5サイズの用紙である。以降の説明において、ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpとカット紙Kpとを区別しない場合には、「用紙P」と称する場合がある。
【0013】
トレイ11は、図1に示すように、上方に開口した箱形状を有する。トレイ11は、筐体100aに対して前後方向に沿って挿抜可能である。
【0014】
ロール体収容部(本発明の「第1支持部」)20は、図1に示すように、トレイ11の底壁11aの前方側に配置されており、ロール体Rの下側部分の外周面を支持しつつ当該ロール体Rを回転可能に支持する。ロール体Rは、その回転軸(芯部材Rcの中心軸)が左右方向(ロール紙Rpの幅方向)に沿った状態で、ロール体収容部20に収容される。
【0015】
ロール体収容部20は、図1に示すように、ロール体Rを収容する凹部21を有する。凹部21の底部に、2つのローラ22,23が設けられている。2つのローラ22,23は、それぞれ、左右方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。ロール体Rは、凹部21に収容されたとき、その下側部分の外周面が2つのローラ22,23に支持される。
【0016】
ロール体収容部20は、図1に示すように、凹部21と連通しかつ上下方向に延びる孔25と、孔25と連通しかつ前後方向に延びる溝26とを有する。これら孔25及び溝26は、共に、ロール体収容部20の底面に開口している。また、孔25及び溝26は、左右方向に長尺に延在して形成されている。より詳細には、ロール紙Rpの左右方向の幅よりも長く形成されている。ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpは、孔25及び溝26を通り、ヘッド5に向けて搬送される。
【0017】
カット紙収容部(本発明の「第2支持部」)13は、図1に示すように、ロール体収容部20よりも後方(すなわち、搬送方向に沿った下流側)部分の底壁11aにより構成されており、カット紙Kpを下方から支持しつつ収容する。カット紙収容部13は、カット紙Kpの長手方向が左右方向に一致し、幅方向が前後方向に一致する姿勢でカット紙Kpを収容する。
【0018】
搬送部3は、給送部41、3つの搬送ローラ対42~44及び搬送モータ(本発明の「駆動モータ」)45M(図2参照)を有している。給送部41は、給送カセット1に収容されているロール体R及びカット紙Kpのいずれかの用紙Pを後方に向かって給送カセット1から送り出す。
【0019】
給送部41は、給送カセット1の上方に配置されており、給送ローラ41a、アーム41b及び給送モータ41M(図2参照:本発明の「駆動モータ」)を有する。給送ローラ41aは、アーム41bの先端に軸支されている。アーム41bは、支軸41cに回動自在に支持されている。アーム41bは、バネなどにより給送ローラ41aがトレイ11の底壁11aに接触する方向に付勢されている。また、アーム41bは、給送カセット1を着脱する際に上方へ退避可能に構成されている。給送ローラ41aは、給送モータ41Mからの駆動力が伝達されることで回転する。制御部8の制御により給送モータ41Mが駆動されると給送ローラ41aが回転し、トレイ11内に収容された用紙Pが後方に向かって送り出される。
【0020】
3つの搬送ローラ対42~44は、給送部41によって給送された用紙Pを、左右方向と直交する搬送方向に沿って筐体100a内で搬送する。3つの搬送ローラ対42~44は、搬送方向の上流側からこの順で配置されている。搬送ローラ対42は、給送部41によって給送カセット1から送り出された用紙Pを経路Wに沿って搬送する。搬送ローラ対43は、搬送ローラ対42によって搬送された用紙Pを受け取ってヘッド5に送る。搬送ローラ対44は、搬送ローラ対43によって搬送された用紙Pを受け取って排出する。搬送ローラ対43,44によって搬送される用紙Pは、前方に向かって送られる。
【0021】
各搬送ローラ対42~44は、駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラと、で構成されている。各搬送ローラ対42~44の駆動ローラは、図示しない伝達機構を介して搬送モータ45Mから駆動力が伝達される。搬送モータ45Mは、図1中二点鎖線で示すように、筐体100a内の上方側に配置されている。より詳細には、ヘッド5近傍であって、搬送ローラ対43と左右方向に沿って並んで配置されている。制御部8の制御により搬送モータ45Mが駆動されると、搬送ローラ対42~44の駆動ローラ及び従動ローラが用紙Pをニップした状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0022】
切断部4は、トレイ11の後方端部と搬送ローラ対42との間に位置している。切断部4は、左右方向に細長い固定刃4aと、固定刃4aと接触しつつ左右方向に移動可能な円板状の回転刃4bとを含んでいる。回転刃4bは、制御部8に制御された切断モータ4M(図2参照)の駆動により、左右方向に沿って往復移動する。回転刃4bは、左右のどちらか一方向に移動するのに伴って、ロール紙Rp及び固定刃4aから回転モーメントを受けて従動回転する。ロール体Rから巻き解かれて搬送されたロール紙Rpは、切断部4により幅方向(左右方向)に切断される。これにより、排出トレイ6に送られるロール紙Rpに後端が形成される。
【0023】
ヘッド5は、下面に形成された複数のノズルと、ドライバIC5a(図2参照)とを含む。制御部8の制御によりドライバIC5aが駆動されると、ノズルからインクが吐出され、搬送ローラ対43によって搬送された用紙Pに対して画像が記録される。
【0024】
移動機構7は、キャリッジ7aと、2つのガイドレール7b,7cと、キャリッジモータ7M(図2参照:本発明の「駆動モータ」)とを有している。ヘッド5は、キャリッジ7aに搭載されている。2つのガイドレール7b,7cは、前後方向に互いに離隔して配置され、各々が左右方向に延設されている。キャリッジ7aは、2つのガイドレール7b,7cを跨ぐように配置されている。キャリッジ7aは、ベルト(不図示)などを介してキャリッジモータ7Mに接続されている。制御部8の制御によりキャリッジモータ7Mが駆動されると、キャリッジ7aがガイドレール7b,7cに沿って走査方向(左右方向)に移動する。
【0025】
なお、ヘッド5は、位置が固定された状態でノズルからインクを吐出するライン式ヘッドであってもよい。この場合、移動機構7を設けなくてもよい。
【0026】
排出トレイ6は、筐体100aの上部の前側の側壁を構成し、筐体100aに対して開閉可能である。ヘッド5により画像が形成された用紙Pは、搬送部3により前方に搬送されて開状態の排出トレイ6に受容される。これにより、用紙Pがプリンタ100(筐体100aの内部)から排出される。
【0027】
次に、図2を参照しつつ、プリンタ100全体の制御を司る制御部8について説明する。制御部8は、バスによって互いに接続された、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82及びRAM(Random Access Memory)83、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)84、フラッシュメモリ85などを含む。そして、これらが協働して、ドライバIC5a、給送モータ41M、搬送モータ45M、キャリッジモータ7M、切断モータ4Mなどの動作を制御する。例えば、制御部8は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)から送信された記録指令に基づいて、ドライバIC5a、給送モータ41M、搬送モータ45M、キャリッジモータ7M、切断モータ4M等を制御して、搬送処理と記録処理とを交互に実行し、用紙Pに画像を記録させる。なお、記録指令は、画像記録に使用する用紙Pの種類、画像のサイズ、画像の解像度等を示すヘッダーデータと、記録すべき画像の内容を示す画像データとを含んでいる。
【0028】
搬送処理は、搬送ローラ対42~44に所定改行量だけ用紙Pを搬送させる処理である。制御部8は、搬送モータ45Mを制御することによって、搬送ローラ対42~44に搬送処理を実行させる。記録処理は、キャリッジ7aを左右方向に沿って移動させながら、ドライバIC5aを制御して、ノズルからインク滴を吐出させる処理である。そして、制御部8は、今回の搬送処理と次回の搬送処理との間、用紙Pの搬送を一時的に停止させ、用紙Pの搬送が停止している間に記録処理を実行する。つまり、制御部8は、記録処理において、キャリッジ7aを右向きまたは左向きに移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。これにより、用紙Pに対して1パス分の画像記録が実行される。制御部8は、搬送処理と記録処理とを交互に繰り返し実行することによって、用紙Pの画像記録可能な全領域に、画像記録することが可能である。つまり、制御部8は、複数回のパスで用紙Pに画像記録させる。
【0029】
また、制御部8には、温度センサ9からの信号が入力される。温度センサ9は、制御部8近傍に配置されており、筐体100a内の温度であって、特に制御部8の制御基板(不図示)近傍の温度を検出する。
【0030】
なお、制御部8は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC84のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC84とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部8は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部8は、1つのASIC84が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC84が処理を分担して行うものであってもよい。
【0031】
<印刷時の制御>
続いて、プリンタ100の印刷時の制御について説明する。プリンタ100では、印刷を実行するための記録指令を受け取ったときに、制御部8が、図3のフローに沿って処理を行う。
【0032】
図3のフローについてより詳細に説明すると、制御部8は、まず、記録指令を受け取ったか否かを判定する(S1)。記録指令を受け取っていない場合(S1:NO)、S1を繰り返す。記録指令を受け取った場合(S1:YES)、制御部8は記録指令に基づいて今回の印刷がロール紙印刷であるか否かを判定する(S2)。なお、ロール紙印刷又はカット紙印刷であるか否かは、記録指令に含まれるヘッダーデータの画像のサイズに基づいて用紙Pの使用長(搬送方向に沿った用紙Pの長さ)を導出し判定される。なお、ヘッダーデータに用紙Pの使用長のデータが有る場合は当該データに基づいて判定してもよい。また、プリンタ100には、印刷時に使用するロール紙Rp(ロール体R)又はカット紙Kpが予めユーザによって収容されているものとする。
【0033】
ロール紙印刷であると判定された場合(S2:YES)、制御部8は推定温度Teを決定する決定処理を実行する(S3:本発明の「決定処理」)。本実施形態におけるフラッシュメモリ85には、図4に示すような、上限温度(本発明の「第1閾値及び第2閾値」)Ts1と、再開温度(本発明の「第3閾値」)Ts2とが記憶されている。再開温度Ts2は、上限温度Ts1よりも低い温度である。S3の決定処理では、温度センサ9によって検出された検出温度Tcに温度変化量Taを加算して推定温度Teを導出し決定する。
【0034】
温度変化量Taは、記録指令に基づくロール紙印刷を実行することによって上昇することが見込まれる筐体100a内の温度変化量である。筐体100a内の温度は、印刷時の用紙Pの搬送で搬送モータ45Mが発熱することで大きく変化する。つまり、印刷時間が長くなるほど、搬送モータ45Mに通電する時間が長くなり、搬送モータ45Mの発熱量が大きくなる。したがって、本実施形態における温度変化量Taは、印刷時間×係数Kにより算出される。印刷時間は、記録処理及び搬送処理が行われる時間であって、制御部8がヘッダーデータの画像のサイズ(用紙Pの使用長)及び画像の解像度に基づいて導出される時間である。例えば、画像のサイズに基づいて導出された用紙Pの使用長(ロール紙長)が長ければ長いほど、当該用紙Pを搬送する時間が長くなり、印刷時間が長くなる。つまり、温度変化量Taも用紙Pの使用長が長ければ長いほど大きくなる。また、用紙Pの使用長(画像のサイズ)が同じであっても、例えば、解像度が600dpiの場合、解像度が300dpiのときと比べて、搬送処理における搬送距離が半分となり、その分だけ記録処理の回数も多くなって印刷時間が長くなる。このように解像度が高くなるに連れて印刷時間が長くなり、温度変化量Taも大きくなる。
【0035】
係数Kは、フラッシュメモリ85に記憶されており、印刷時間に乗じることで搬送モータ45Mの発熱による筐体100a内の温度変化量を導出するための係数である。また、係数Kは、用紙種(例えば、普通紙、光沢紙、布など)に応じた搬送抵抗も加味している。例えば、用紙種によって腰の強さが異なる。腰の強い用紙は、経路Wが湾曲している場合、腰の弱い用紙よりも搬送抵抗が大きくなる傾向がある。このため、腰の強い用紙種ほど係数Kの値が大きい。また、用紙種によって用紙Pの表面荒さも異なる。表面荒さが大きいものは表面荒さが小さいものよりも搬送抵抗が大きいため、表面荒さの大きいものほど係数Kの値が大きい。このような搬送抵抗に関する傾向を加味した係数Kを、ヘッダーデータに基づいて導出された印刷時間に乗じて温度変化量Taを導出する。この後、検出温度Tcに温度変化量Taを加算することで推定温度Teが決定される。
【0036】
次に、制御部8は、推定温度Teが上限温度Ts1を超えているか否かを判定する(S4)。推定温度Teが、図4中破線で示すように、上限温度Ts1以下の場合(S4:NO)、S5に進む。なお、本実施形態におけるS3の決定処理では、検出温度Tcに温度変化量Taを加算して推定温度Teを決定しているが、上限温度Ts1から温度変化量Taを減算した閾値を決定してもよい。つまり、当該閾値に対して検出温度Tcが超えているか否かを判定することと、S4の判定処理は同義である。
【0037】
一方、図4中実線で示すように、推定温度Teが上限温度Ts1を超えている場合(S4:YES)、制御部8は、検出温度Tcに温度変化量Taを加算して導出した推定温度Teが上限温度Ts1以下であるかを判定する(S6)。推定温度Teが上限温度Ts1を超えている場合(S6:NO)、制御部8は上述のS3と同様なS7の決定処理を実行し、S6に戻る。つまり、制御部8は、推定温度Teが上限温度Ts1以下となるまで所定期間ごとに温度センサ9での温度検出を行ってS7の決定処理の実行を繰り返し、ロール紙印刷を実行せずに待機する(本発明の「待機処理」)。通常、印刷が実行されずに時間が経過すると、搬送モータ45Mは通電されていないため、搬送モータ45Mの温度が低下し、筐体100a内の温度も低下する。つまり、S6及びS7で温度センサ9により検出される検出温度Tc(図4中破線で示す)が、S3で温度センサ9により検出された検出温度Tc(図4中実線で示す)よりも下がる。そして、図4中破線で示すように推定温度Teが上限温度Ts1以下に下がると(S6:YES)、S5に進む。
【0038】
次に、制御部8は、S5において、ロール紙Rpの給送を開始する(本発明の「第1画像記録処理」)。つまり、制御部8は、給送モータ41M及び搬送モータ45Mを駆動させ、ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpをトレイ11からヘッド5に向けて搬送する。そして、ロール紙Rpの先端が搬送ローラ対43へ到達したときに、当該ロール紙Rpの頭出しを実行する。頭出しにおいて、制御部8は、用紙Pを画像記録開始位置で停止させる。画像記録開始位置とは、用紙Pにおける画像記録領域の搬送方向の先端(下流端)が、複数のノズルのうち搬送方向の最下流に配置されたノズルと対向する位置である。
【0039】
また、S5において、制御部8は、キャリッジモータ7Mを駆動させて、キャリッジ7a(ヘッド5)を開始位置へ移動させる。開始位置は、記録処理(S8)が実行されるときのキャリッジ7aの移動開始位置であり、記録指令に基づいて決定される。なお、S5において、用紙Pの給送から頭出しまでの動作と、キャリッジ7aの移動動作とは、並行して実行される。
【0040】
次に、制御部8は、S8において、記録処理を実行する(本発明の「第1画像記録処理」)。つまり、制御部8は、キャリッジ7aを開始位置から移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。
【0041】
次に、制御部8は、S9において、ロール紙Rpが切断されているか否かを判定する。ロール紙Rpの切断の有無の判定は、切断フラグがフラッシュメモリ85に記憶されているか否かで判定される。制御部8は、ロール紙Rpを切断したときに切断フラグをフラッシュメモリ85に記憶させる。なお、切断フラグは今回の印刷が終了すると、フラッシュメモリ85から消去される。ロール紙Rpが切断されている場合(S9:YES)、S12に進む。
【0042】
一方、切断されていない場合(S9:NO)、制御部8は、記録指令に基づいて、ロール紙Rpの後端となる位置が切断部4に到達したか否かを判定する(S10)。ロール紙Rpの後端となる位置が切断部4に到達していない場合(S10:NO)、S12に進む。
【0043】
ロール紙Rpの後端となる位置が切断部4に到達した場合(S10:YES)、制御部8が切断モータ4Mを駆動させ、ロール紙Rpを切断する切断処理を実行する。このとき、上述したように切断フラグをフラッシュメモリ85に記憶させる。
【0044】
次に、制御部8は、S12において、記録指令に基づいたロール紙Rpへの画像記録が終了したか否かを判定する。ロール紙Rpへの画像記録が終了していない場合(S12:NO)、S13に進み、搬送処理が実行される。
【0045】
次に、制御部8は、S13において、搬送モータ45Mを駆動させて、3つの搬送ローラ対42~44にロール紙Rpを所定改行量だけ搬送させる(本発明の「第1画像記録処理」)。この後、S8に戻り、制御部8は、S8~S12の処理を再び実行する。一方、ロール紙Rpへの画像記録が終了した場合(S12:YES)、画像が記録されたロール紙Rpを排出し、フローを終了する。このとき、フラッシュメモリ85に切断フラグが記憶されている場合、制御部8は切断フラグをフラッシュメモリ85から消去する。
【0046】
S2に戻って、ロール紙印刷でないと判定された場合(S2:NO)、制御部8はカット紙Kpの給送を開始する(S14)。つまり、制御部8は、給送モータ41M及び搬送モータ45Mを駆動させ、カット紙Kpをトレイ11からヘッド5に向けて搬送する。そして、カット紙Kpの先端が搬送ローラ対43へ到達したときに、ロール紙Rpのときと同様にカット紙Kpの頭出しを実行する。このとき、制御部8は、キャリッジ7aをS5のときと同様に開始位置へ移動させる。
【0047】
次に、制御部8は、温度センサ9によって検出された検出温度Tcが上限温度Ts1を超えているか否かを判定する(S15)。検出温度Tcが、図5で示す上限温度Ts1以下の場合(S15:NO)、S16に進む。
【0048】
一方、図5中実線で示すように、検出温度Tcが上限温度Ts1を超えている場合(S15:YES)、制御部8は給送モータ41M及び搬送モータ45Mへの通電を停止し、カット紙印刷を中断する(S17:本発明の「中断処理」)。そして、制御部8は、図5中破線で示す検出温度Tcが再開温度Ts2以下であるかを判定する(S18)。S18において温度センサ9によって検出された検出温度Tcが再開温度Ts2を超えている場合(S18:NO)、S18が繰り返される。つまり、カット紙印刷を実行せずに待機する(本発明の「中断処理」)。そして、検出温度Tc(図5中破線で示す)が再開温度Ts2以下になると(S18:YES)、制御部8が給送モータ41M及び搬送モータ45Mを駆動させ、カット紙印刷を再開する(S19:本発明の「中断処理」)。
【0049】
次に、制御部8は、S16において、記録処理を実行する(本発明の「第2画像記録処理」)。つまり、制御部8は、キャリッジ7aを開始位置から移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。
【0050】
次に、制御部8は、S20において、記録指令に基づいたカット紙Kpへの画像記録が終了したか否かを判定する。カット紙Kpへの画像記録が終了していない場合(S20:NO)、S21に進み、搬送処理が実行される。
【0051】
次に、制御部8は、S21において、搬送モータ45Mを駆動させて、3つの搬送ローラ対42~44にカット紙Kpを所定改行量だけ搬送させる(本発明の「第2画像記録処理」)。この後、S15に戻り、制御部8は、S15~S20の処理を再び実行する。一方、カット紙Kpへの画像記録が終了した場合(S20:YES)、画像が記録されたカット紙Kpを排出し、フローを終了する。
【0052】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ100によると、S3及びS7で決定された推定温度Teが上限温度Ts1を超える場合、ロール紙印刷を実行せず、推定温度Teが上限温度Ts1以下となってからロール紙印刷を実行する。これにより、記録指令に基づいて行われるロール紙印刷において、ロール紙Rpへの画像記録が中断するのを抑制することが可能となる。このため、画像記録途中のロール紙Rpをユーザが引き抜くことや、例えば、外部装置などに予め設定されている印刷に要する上限時間を超えた場合に印刷自体がキャンセルされることが生じにくくなる。この結果、画像記録材料及びロール紙Rpが無駄に消費されるのを抑制することが可能となる。
【0053】
また、制御部8は、S3及びS7において、温度変化量Taを検出温度Tcに加算することで推定温度Teを決定する。これにより、ロール紙印刷の実行によって上昇することが見込まれる温度変化量Taと検出温度Tcとにより推定温度Teを決定することが可能となる。
【0054】
また、S3及びS7の決定処理では、用紙Pの使用長(ロール紙長)が長ければ長いほど、決定される温度変化量Taが大きくなる。これにより、ロール紙Rpの長さが長くなると印刷時間(すなわち、搬送処理及び記録処理に要する時間)が長くなる。印刷時間が長くなることで、搬送モータ45Mへの通電も長くなり、搬送モータ45Mの発熱量が大きくなる。つまり、ロール紙印刷の実行によって上昇することが見込まれる温度変化量Taがロール紙Rpの長さに応じて決定されることで、推定温度Teの決定精度が向上する。
【0055】
また、S3及びS7の決定処理では、画像の解像度が高くなるに連れて、決定される温度変化量Taが大きくなる。これにより、画像の解像度が高くなるに連れて印刷時間が長くなる。印刷時間が長くなることで、搬送モータ45Mへの通電も長くなり、搬送モータ45Mの発熱量が大きくなる。つまり、ロール紙印刷の実行によって上昇することが見込まれる温度変化量Taが画像の解像度の高さに応じて決定されることで、推定温度Teの決定精度が向上する。
【0056】
また、制御部8は、S2において、記録指令に基づいた印刷がロール紙印刷であると判定した場合、S3の決定処理を実行する。ロール紙印刷が行われる場合、用紙Pの長さが長くなる傾向があり、筐体100a内の温度が上限温度Ts1を超えやすい。このため、ロール紙印刷のときに、決定処理を実行し、S4の判定を行うことが可能となる。
【0057】
また、制御部8は、S2において、記録指令に基づいた印刷がロール紙印刷でない(カット紙印刷)と判定した場合、温度センサ9により検出された検出温度Tcに係わらず、S14でカット紙印刷を開始する。そして、制御部8は、S15で検出温度Tcが上限温度Ts1を超える場合、S17でカット紙印刷を中断する。この後、制御部8は、S18において検出温度Tcが再開温度Ts2以下となるまで中断を継続する。制御部8は、S18において検出温度Tcが再開温度Ts2以下となると、S19でカット紙印刷を再開する。カット紙印刷の場合、印刷時間が比較的短いため、カット紙印刷の中断中であってもカット紙Kpが引き抜かれたり、カット紙印刷が途中でキャンセルされたりする可能性が比較的低い。このようなカット紙印刷においては、S15、S17~S19と順に進むことで、速やかにカット紙印刷を再開させることが可能となる。
【0058】
本実施形態におけるS4及びS6では、推定温度Teと比較される温度が共に上限温度Ts1と同じである。なお、S6の推定温度Teと比較される温度が上限温度Ts1よりも低い別の判定温度(本発明の「第2閾値」)と比較してもよい。この場合、当該判定温度以下であるときにロール紙印刷を開始すればよい。これにおいても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態におけるS3及びS7の決定処理では、温度変化量Taを検出温度Tcに加算することで推定温度Teを決定しているが、検出温度Tcから予め推定される温度をフラッシュメモリ85などに記憶しておき、記憶された複数の温度から推定温度Teを決定してもよい。また、上述の実施形態においては、再開温度Ts2が上限温度Ts1よりも低いが同じ温度であってもよい。
【0060】
また、温度変化量Taは、印刷時間だけから導出してもよい。つまり、係数Kを印刷時間に乗じなくてもよい。この場合、印刷時間に基づいて、上昇する見込み温度変化量Taを算出する計算式をROMなどに記憶させておき、ロール紙印刷の記録指令毎に、温度変化量Taを導出し、当該温度変化量Taを検出温度Tcに加算して推定温度Teを決定すればよい。また、印刷時間は、ロール紙Rpの使用長さ及び画像の解像度のいずれかに応じて導出してもよい。また、温度変化量Taを導出するために印刷時間に乗じる係数Kに、用紙種の搬送抵抗が加味されていなくてもよい。また、係数Kは、キャリッジモータ7M及び給送モータ41Mの少なくともいずれかの発熱による筐体100a内の温度変化量を導出するための係数であってもよい。また、係数Kは、キャリッジモータ7M、給送モータ41M及び搬送モータ45Mのすべての発熱による筐体100a内の温度変化量を導出するための係数であってもよい。
【0061】
本発明は、インク吐出式の記録部を備えるインクジェットプリンタとしての画像記録装置だけでなく、レーザで感光体を露光することにより静電潜像が形成されるレーザ式の記録部や、LEDで感光体を露光することにより静電潜像が形成されるLED式の記録部を備える電子写真プリンタに適用することもできる。また、シート状媒体は用紙に限定されず、シート状であれば布やプラスチックフィルムなどであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
3 搬送部
5 ヘッド(記録部)
7M キャリッジモータ(駆動モータ)
8 制御部
9 温度センサ
13 カット紙収容部(第2支持部)
20 ロール体収容部(第1支持部)
41M 給送モータ(駆動モータ)
45M 搬送モータ(駆動モータ)
100 プリンタ(画像記録装置)
図1
図2
図3
図4
図5