(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161930
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】支保の解体方法、変形防止枠の横置き補助具及び支保の解体装置
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20231031BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20231031BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20231031BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E03F3/04 Z
E03F7/00
F16L55/18 B
F16L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072590
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】508100055
【氏名又は名称】日本ノーディッグテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠臣
(72)【発明者】
【氏名】山根 歩
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA37
2D063EA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、支保の解体方法、横置き補助具及び支保の解体装置を提供する。
【解決手段】本発明は、支保を構成するリング状の変形防止枠のうち、上流側及び/又は下流側の最も外側に設置された第1の変形防止枠及び次に設置されている第2の変形防止枠に、これらを連結して固定する連結固定部材、並びに、一端で前記第2の変形防止枠の下部フレーム材を把持して固定し他端で前記第1の変形防止枠の下部を回転可能に支持する横置き補助具を取り付ける変形防止枠固定工程と、第1の変形防止枠の上部に吊下具を取り付け、吊下具に吊り索を掛けておく吊下部材設置工程と、前記下部フレーム材を支持する腹起し材以外の腹起し材を撤去する腹起し材撤去工程と、連結固定部材を第1の変形防止枠及び第2の変形防止枠から取り外す連結固定部材解除工程と、第1の変形防止枠の回動を制御しつつ第1の変形防止枠を水平に倒す水平設置工程とを有する支保の解体方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
更生管の形成時に更生管の内部に間隔を空けて複数設置された支保を構成するリング状の変形防止枠のうち、上流側及び/又は下流側の最も外側に設置された第1の変形防止枠及びこの第1の変形防止枠に隣り合って設置されている第2の変形防止枠に、これら第1の変形防止枠及び第2の変形防止枠を連結して固定する連結固定部材、並びに、一端において前記第2の変形防止枠の下部フレーム材を把持して固定し他端で前記第1の変形防止枠の下部を回転可能に支持する横置き補助具を取り付ける変形防止枠固定工程と、
前記第1の変形防止枠の上部に吊り索の一端を固定するとともに、前記第1の変形防止枠の上部との間の長さを伸長自在に前記吊り索を前記第2の変形防止枠の上部に取り付ける吊下部材設置工程と、
前記変形防止枠固定工程及び前記吊下部材設置工程の後に、前記下部フレーム材を支持する腹起し材以外の腹起し材を撤去する腹起し材撤去工程と、
前記腹起し材撤去工程の後に、前記連結固定部材を前記第1の変形防止枠及び前記第2の変形防止枠から取り外す連結固定部材解除工程と、
前記吊り索及び横置き補助具を用いて、前記吊り索の操作により前記第1の変形防止枠を横倒しにする速さを制御しつつ第1の変形防止枠を水平に倒す水平設置工程と、を有する支保の解体方法。
【請求項2】
前記水平設置工程において、前記第1の変形防止枠の下部フレーム材が最も外側を通る部分を円弧状に形成された面に当てて前記第1の変形防止枠を倒す請求項1に記載の支保の解体方法。
【請求項3】
前記腹起し材撤去工程では、上方から下方に向かって腹起し材を順次撤去する請求項1又は2に記載の支保の解体方法。
【請求項4】
前記連結固定部材解除工程において、取り外した前記連結固定部材を前記第2の変形防止枠及びこの第2の変形防止枠に更に隣り合った第3の変形防止枠に固定する請求項1又は2に記載の支保の解体方法。
【請求項5】
前記水平設置工程において、駒を有する台車部材を前記第1の変形防止枠の回転方向に設置しておき、前記台車部材に前記第1の変形防止枠を水平に倒して載せる請求項1又は2に記載の支保の解体方法。
【請求項6】
更生管の形成時に更生管の内部に間隔を空けて複数設置された支保を構成するリング状の変形防止枠のうち、上流側及び/又は下流側の最も外側に設置された第1の変形防止枠の下部フレーム材を上下から挟むように配される上壁部及び下壁部を具備し、前記上壁部の内面に円弧形状のアール面が形成され、前記下部フレーム材を回転可能に支持するアール付きクランプと、
前記第1の変形防止枠と間隔を空けて前記第1の変形防止枠に隣り合って設置された第2の変形防止枠の下部フレーム材を把持して固定される固定部と、
前記アール付きクランプと前記固定部とを連結する連結棒部と、を備え、
前記第1の変形防止枠の前記更生管からの固定を解除し、前記第2の変形防止枠と反対側に横置きする際に、円滑な横倒しを補助する変形防止枠の横置き補助具。
【請求項7】
前記連結棒部の長さが伸縮可能に形成されている請求項6に記載の横置き補助具。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の横置き補助具と、
前記第1の変形防止枠の下部フレーム材及び前記第2の変形防止枠の下部フレーム材をそれぞれに固定される固定部を連結棒の両端に備えた連結固定部材と、
前記第1の変形防止枠の上部フレーム材及び前記第2の変形防止枠の上部フレーム材に取り付けられる吊り索とを備えている支保の解体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管に更生管を形成する際に適用される支保の解体方法、変形防止枠の横置き補助具及び支保の解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管を更生する方法として、既設管内に硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の更生管を製管した後、既設管と更生管との間隙に裏込め材を注入して硬化させる方法が広く採用されている。裏込め材の注入においては、裏込め材の荷重や注入圧力によって更生管が座屈変形したり、浮力により更生管の既設管に対する位置が所定の位置からずれたりするのを防止するため、更生管の内部に管軸方向に間隔を空けて支保が設置されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
更生管は、口径が大きくなると物によっては2m以上になることがある。このような大口径の更生管に設置する支保の変形防止枠は、撤去時に変形防止枠が不用意に倒れないようにしっかりと保持した状態で腹起し材を取り外す必要がある。また、1つの変形防止枠のサイズが非常に大きく重量も100kg以上になることがあるため、運搬のために立設した変形防止枠を水平に寝かせる作業を行い難く、相当の注意力と大きな労力及び時間を要していた。
そこで、本発明は、支保の解体を容易にし、作業効率を向上する支保の解体方法及び変形防止枠の横置き補助具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の支保の解体方法は、更生管の形成時に更生管の内部に間隔を空けて複数設置された支保を構成するリング状の変形防止枠のうち、上流側及び/又は下流側の最も外側に設置された第1の変形防止枠及びこの第1の変形防止枠に隣り合って設置されている第2の変形防止枠に、これら第1の変形防止枠及び第2の変形防止枠を連結して固定する連結固定部材、並びに、一端において前記第2の変形防止枠の下部フレーム材を把持して固定し他端で前記第1の変形防止枠の下部を回転可能に支持する横置き補助具を取り付ける変形防止枠固定工程と、前記第1の変形防止枠の上部に吊り索の一端を固定するとともに、前記第1の変形防止枠の上部との間の長さを伸長自在に前記吊り索を前記第2の変形防止枠の上部に取り付ける吊下部材設置工程と、前記変形防止枠固定工程及び前記吊下部材設置工程の後に、前記下部フレーム材を支持する腹起し材以外の腹起し材を撤去する腹起し材撤去工程と、前記腹起し材撤去工程の後に、前記連結固定部材を前記第1の変形防止枠及び前記第2の変形防止枠から取り外す連結固定部材解除工程と、前記吊り索及び横置き補助具を用いて、前記吊り索の操作により前記第1の変形防止枠を横倒しにする速さを制御しつつ第1の変形防止枠を水平に倒す水平設置工程と、を有する。
この構成によれば、横置き補助具で第1の変形防止枠を第2の変形防止枠に固定し、吊り索を第1の変形防止枠及び第2の変形防止枠に直接取り付けて第1の変形防止枠を取り外すため、第1の変形防止枠をその設置された位置で取り外すことができる。
【0006】
本発明の支保の解体方法の前記水平設置工程において、前記第1の変形防止枠の下部フレーム材が最も外側を通る部分を円弧状に形成された面に当てて前記第1の変形防止枠を倒してもよい。
この構成によれば、第1の変形防止枠の横倒しの動きが安定的で円滑になる。
【0007】
本発明の支保の解体方法の前記腹起し材撤去工程では、上方から下方に向かって腹起し材を順次撤去してもよい。
この構成によれば、変形防止枠の支持の解除をより安定的に行うことができる。
【0008】
本発明の支保の解体方法の前記連結固定部材解除工程において、取り外した前記連結固定部材を前記第2の変形防止枠及びこの第2の変形防止枠に更に隣り合った第3の変形防止枠に固定してもよい。
この構成によれば、作業効率よく支保の解除作業を行うことができる。
【0009】
本発明の支保の解体方法の前記水平設置工程において、駒を有する台車部材を前記第1の変形防止枠の回転方向に設置しておき、前記台車部材に前記第1の変形防止枠を水平に倒して載せてもよい。
この構成によれば、変形防止枠の撤去を効率的に行うことができる。
【0010】
本発明の変形防止枠の横置き補助具は、更生管の形成時に更生管の内部に間隔を空けて複数設置された支保を構成するリング状の変形防止枠のうち、上流側及び/又は下流側の最も外側に設置された第1の変形防止枠の最下部フレーム材を上下から挟むように配される上壁部及び下壁部を具備し、前記上壁部の内面に円弧形状のアール面が形成され、前記下部フレーム材を回転可能に支持するアール付きクランプと、前記第1の変形防止枠と間隔を空けて前記第1の変形防止枠に隣り合って設置された第2の変形防止枠の最下部フレーム材を把持して固定される固定部と、前記アール付きクランプと前記固定部とを連結する連結棒部と、を備え、前記第1の変形防止枠の前記更生管からの固定を解除し、前記第2の変形防止枠と反対側に横置きする際に、円滑な横倒しを補助する。
この構成によれば、第1の変形防止枠の横倒しの動きが安定的で円滑になる。
【0011】
本発明の変形防止枠の横置き補助具の前記連結棒部の長さが伸縮可能に形成されていてもよい。
この構成によれば、横置き補助具を変形防止枠同士の距離の差異に容易に合わせることができる。
【0012】
本発明の支保の解体装置は、前記いずれかの横置き補助具と、前記第1の変形防止枠の下部フレーム材及び前記第2の変形防止枠の下部フレーム材をそれぞれに固定される固定部を連結棒の両端に備えた連結固定部材と、前記第1の変形防止枠の上部フレーム材及び前記第2の変形防止枠の上部フレーム材に取り付けられる吊り索とを備えている。
この構成によれば、作業効率よく支保の解除作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本願の各発明は、支保の解体を容易にし、作業効率を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】更生管内に本発明の一実施形態の支保を設置した状態を示した正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の連結固定部材の一部を示した斜視図である。
【
図3】(a)本発明の一実施形態の横置き補助具のアール付きクランプを示した側面図、(b)前記アール付きクランプの平面図である。
【
図4】(a)本発明の一実施形態の横置き補助具の固定部を示した側面図、(b)前記固定部の平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の支保の解体工程を示した概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態の支保の解体工程を示した概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態の支保の解体工程を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明の支保の解体装置及び支保解体の補助具の一実施形態について説明する。
【0016】
図1に示すように、支保1は、多角形状(本実施形態では8角形)の変形防止枠2と、更生管Xの周方向に複数固定する腹起し材3と、変形防止枠2と腹起し材3との距離を設定する支持部材4と、浮上防止柱5とを有している。必須ではないが、補強のため、取付対象の更生管Xが大径の変形防止枠2は、垂直補強部材6と変形防止枠2の上下間のほぼ中央に設けられた水平補強部材7等とを備えている。支保1としては、上記態様以外にも四角形以上の又は円形の変形防止枠2を用いたものも本発明の適用の対象である。
【0017】
変形防止枠2は、後述する腹起し材3で更生管Xを押圧する等して更生管Xの形状出しをする際に、押圧のベースとなる剛性の高い部材である。
変形防止枠2は、断面視略矩形の角形の長尺な鋼管材を更生管Xの内壁にほぼ沿って、管軸方向を略水平又は略鉛直方向に向けて配されるフレーム材8と、フレーム材8の端部間をつなぐコーナー部材9とを備えている。
【0018】
例えば、2m以上の大径の更生管Xに用いられる変形防止枠2のフレーム材8は、その更生管Xの荷重等に耐え得る剛性を担保するべく、フレーム材8の管軸方向(長手方向)の寸法が1.5m程度、断面の縦横寸法が100mm×100mm前後、3~4mm厚で、重量が30kg以上もある角形鋼管が多く用いられている。
コーナー部材9は、フレーム材8の管軸方向の長さを適宜設定し、両端にフレーム材8の端部を嵌合させボルトで固定する不図示の連結部とを有した構成となっている。
【0019】
変形防止枠2の形状は限定されないが、本実施形態では、フレーム材8及びコーナー部材9に加え、垂直補強部材6及び水平補強部材7によって、概略八角形に組まれている。
かかる構成を有する変形防止枠2は、更生管Xの軸線L方向(
図1の紙面奥行き方向)に略一定の間隔を空けて更生管Xの上流側の端部と下流側の端部との間に複数設置されている。変形防止枠2の設置間隔は、更生管Xの形状出し及び保持をするのに適切な間隔であれば特に限定されない。2m以上の大径の更生管Xに用いられる変形防止枠2は、例えば2m間隔で設置されることがある。
【0020】
腹起し材3は、断面が矩形形状の角パイプを用いて形成されている。腹起し材3の管軸方向の長さ寸法は、更生管Xの軸線L方向における変形防止枠2の設置間隔に合わせて形成されている。
腹起し材3は、その管軸方向を更生管Xの軸線Lに平行に向けて、更生管Xの内壁面に周方向に間隔を空けて複数設置されている。
【0021】
支持部材4は、概略棒状の部材であり、変形防止枠2に一端を固定し、他端で腹起し材3を固定して、変形防止枠2と腹起し材3との間で張り出し更生管Xの形状出しをする部材である。支持部材4は、本実施形態では、ジャッキボルトと、ジャッキボルトの他端側に腹起し材3を把持して固定する鋼板で断面視コ字状に形成された皿部材とを主構成として形成できる。
具体的に支持部材4は、各フレーム材8の管軸方向に間隔を空けて複数本配置されている。支持部材4の他端側の先端には腹起し材3が配されている。
【0022】
浮上防止柱5は、ジャッキボルトの一端を更生管Xに貫通させて既設管Yの頂面に当て、他端を更生管Xの頂面に沿って設置されたフレーム材8に貫通するように配されている。
【0023】
以上のようにして、支保1が更生管Xの上流側端部及び下流側端部の間に複数設置されている。
次に、上記のように設置された支保1を解体する際に用いられる本願発明の支保の解体装置の一実施形態について説明する。
【0024】
支保の解体装置は、
図2~
図4又は
図5に示すように、
図1に示す変形防止枠2の周囲に設置された腹起し材3の撤去に用いられる連結固定部材11(
図2参照)と、変形防止枠2を寝かせて横倒しする際に用いられる横置き補助具12(
図3,
図4参照)と、吊下部材を構成する吊り索25(
図6参照)とを備えている。
【0025】
図5及び
図6は、支保の解体工程を示す概略図である。
図3に示す横置き補助具12のアール付きクランプ21及び固定部22並びに
図4に示す連結部材11の固定部15は、簡略化して示している。
連結固定部材11は、
図5(a)に示すように、更生管Xの上流側及び/又は下流側の最も外側に立設している第1の変形防止枠2Aをその隣に立設している第2の変形防止枠2Bに固定して、第1の変形防止枠2Aの立設状態を安定的に保持する部材である。
図2に示すように、連結固定部材11は、第1及び第2の変形防止枠2A,2Bにそれぞれ動かないように固定される固定部15及び連結棒16を有している。
【0026】
固定部15は、本実施形態では、フレーム材8の3つの面上にそれぞれ配される3つの取付板部17、取付板部17をフレーム材8に緊締する留め部材18(本実施形態ではボルト及びナット)及び、連結棒16との固定部19を有したクランプの形態を採用している。3つの取付板部17は回転軸17aを中心としてそれぞれ連設する取付板部17,17に対して回動自在に連結している。3つの取付板部17の両端の取付板部17,17には、これらを平行に対向させた際に両取付板部17,17間に亘ってボルトを挿通可能に形成されている。
【0027】
連結棒16は、変形防止枠2,2間に架けられる剛性の高い管部材を備えている。連結棒16の両端部には、固定部15がボルト及びナットなどの緊締により取り付けられている。管部材は、変形防止枠2を保持し得る剛性を有していれば特に限定されないが、本実施形態では鋼製の単管により形成されている。
【0028】
図3及び
図4に示すように、横置き補助具12は、連結棒23の一端に、アール部20を有する上壁板を備えたアール付きクランプ21を備え、連結棒部23の他端に固定部22を備えた部材である。
【0029】
図3に示すように、アール付きクランプ21は、底面視矩形に形成された下壁板21cと、下壁板21cの一端辺から略垂直に立ち上がった奥壁板21bと、奥壁板21bの上端辺からアール部20を形成した後、下壁板21cに平行に延びた上壁板21aとを主として有している。アール付きクランプ21は、更に奥壁板21bの外表面21pから略垂直に突出する螺子棒部21jを有している。
【0030】
下壁板21cの上面は、フレーム材8の下部を安定的に支持し得る所定の幅寸法(即ちフレーム材8の管軸方向に沿わせる方向の寸法)と、更生管X内への設置時のフレーム材8の奥行き寸法の2倍未満程度の奥行き寸法(即ち幅寸法に直交する方向の寸法)を有している。
【0031】
奥壁板21bは、下壁板21cと同等の幅寸法と、更生管X内に水平に設置された下側のフレーム材8の高さ寸法よりもわずかに大きい高さ寸法を有している。
上壁板21aのアール部20の内面は、奥壁板21bの上端にフレーム材8の上角部が突き当たるようにフレーム材8を持ち上げた状態でフレーム材8のフレーム材8を40~45°程度まで回転させる際に上角部が描く円弧形状で湾曲しつつ上方に延びている。
【0032】
上壁板21aは、下壁板21cと同じ幅寸法で、平面視で下壁板21cと同じ奥行き寸法となるように形成されている。上壁板21a(すなわち奥壁板21b及び下壁板21cも)は、下側のフレーム材8をガタつきなく押さえられる幅寸法を有している。
上壁板21a及び下壁板21cには、ボルト21dを上下方向に貫通させるボルト挿通孔21hが形成されている。
【0033】
ボルト挿通孔21hは、アール付きクランプ21内部に載置したフレーム材8が回転しやすいようフレーム材8から離れた位置に設けられている。ボルト21dは、変形防止枠2が倒された際にアール付きクランプ21から飛び出すことを防げるようになっている。
下壁板21c、奥壁板21b及び上壁板21aは、剛性の高い鋼板により一体的に形成されている。上壁板21a及び奥壁板21bは剛性強化のために下壁板21cよりも厚さ寸法が大きく設定されている。
【0034】
図4に示すように、固定部22は、偏平面が矩形に形成された下壁板22cと、下壁板22cの端縁から略垂直に立ち上がった奥壁板22bと、奥壁板22bの上端から下壁板22cに対向して平行に延びる上壁板22aとを主として有したクランプ部材である。固定部22は、更に奥壁板22bの外表面22pから略垂直に突出する螺子棒部22jを有している。
固定部22の下壁板22c、奥壁板22b及び上壁板22aは、フレーム材8をガタつきなく保持し得る幅寸法で形成されている。
奥壁板22bの高さ寸法は、固定部22をフレーム材8に円滑に嵌合させて上下方向のガタつきなくフレーム材8を保持し得るように、フレーム材8よりもわずかに大きい高さに設定されている。
【0035】
固定部22の上壁板22a及び下壁板22cには、その下壁板22c、奥壁板22b及び上壁板22aの内壁面にフレーム材8を略フィットさせた状態で、クランプがフレーム材8に対し動かないようにクランプ部を緊締する留め具(本実施形態ではボルト及びナット)22dの挿通孔22hが形成されている。
【0036】
連結棒部23は、鋼製の管部材24aと、ハンドルナット24bとを備えている。管部材24aは、その両端にハンドルナット24bを有しており、両端にアール付きクランプ21及び固定部22の螺子棒部21j、22jを所定寸法挿入した寸法設定した状態で、ハンドルナット24bを締めることにより、横置き補助具21全体の長さを調節し固定できるようになっている。
【0037】
図6(a)に示すように、吊り索25は、変形防止枠2の吊り下げに十分な耐久性を有しているものであれば特に限定されず、ワイヤーロープ等の耐久性の高い紐状の部材を用いることができる。
【0038】
以上の連結固定部材11、横置き補助具12、吊り策25を備えた支保の解体装置によって、支保1は以下のようにして更生管Xから取り外され、撤去される。
【0039】
<変形防止枠固定工程>
図5(a)に示すように、支保を撤去するにあたっては、まず更生管Xの最も外側すなわち最も上流側又は下流側に設置されている第1の変形防止枠2Aと、その次に設置されている第2の変形防止枠2Bとに、連結固定部材11及び横置き補助具12を取り付ける。
【0040】
連結固定部材11は、主として変形防止枠2の下部側に少なくとも3箇所以上で固定し、4箇所で左右対称に固定されていることが好ましい。連結固定部材11を変形防止枠の3箇所以上で固定することで安定性が良くなり、4箇以上で略左右対称に固定することでより一層安定性が増し、2m以上の更生管Xに設置された変形防止枠であってもぐらつきを可及的に無くすことができるからである。しかし、連結固定部材11は、これから取り外そうとする第1の変形防止枠2Aを立設が堅持されている第2の変形防止枠2Bにしっかりと固定し得るのであれば固定する場所は特に限定されない。
【0041】
より具体的には、例えば
図1に示すように、連結固定部材11の固定部15を第1の変形防止枠2A及び第2の変形防止枠2Bの垂直補強部材6及び水平補強部材7の交差部分のすぐ外側と、変形防止枠2の左右両側においてほぼ鉛直方向に延びるフレーム材8の下部側とに固定する。連結固定部材11の固定は、第1の変形防止枠2Aと第2の変形防止枠2Bとが互いに対向する位置で、連結固定部材11の連結棒16が垂直補強部材6及び水平補強部材7に対して直交する方向に延びるように固定する。
【0042】
横置き補助具12は、更生管Xの底部に略水平に設置された変形防止枠2の下部フレーム材8に間隔を空けて2箇所、より具体的には垂直補強部材6のすぐ内側に設置する。
横置き補助具12の固定部22は、第2の変形防止枠2Bの下部フレーム材8に堅固に固定する。具体的には、固定部22は、ボルトを外した状態で、第2の変形防止枠2Bの下部フレーム材8に奥壁板22bがしっかりと当たるまで押し込み、ボルトをボルト挿通孔22hに挿入し、ナットで締めてボルトを固定する。
【0043】
横置き補助具12のアール付きクランプ21は、第1の変形防止枠2Aの最下部のフレーム材8を保持するように設置する。具体的には、アール付きクランプ21の奥壁板22bが第1の変形防止枠2Aの最下部のフレーム材8にしっかりと当たるまでクランプを押し込みボルト挿通孔21hにボルトを貫通させてナットで留める。
【0044】
<吊下部材設置工程>
吊り索25は、
図5(b)に示すように、第1の変形防止枠2A及び第2の変形防止枠2Bの最上部に水平に設けられた上部フレーム材8に取り付けておく。取付位置としては、上部フレーム材8の長手方向中央とすることが好ましい。吊り索25を上部フレーム材8の中央に取り付けることで、変形防止枠を左右に偏りなく下部フレーム材8を中心軸とする回転方向に傾けることができる。
吊り索25の一端部は、第1の変形防止枠2Aの上部フレーム材8に取り付けて固定する。その上で、吊り索25を第2の変形防止枠2Bの上部フレーム材8に1周巻き付け、吊り索25の他端を作業者が把持できるように下方に伸ばしておく。
なお、変形防止枠固定工程及び吊下部材設置工程は、どちらを先に行っても構わない。
【0045】
<腹起し材撤去工程>
変形防止枠固定工程及び吊下部材設置工程が完了すると、第1の変形防止枠2Aが第2の変形防止枠2Bによってブレないように固定された状態となる。そこで、更生管Xと第1の変形防止枠2Aとの間で突っ張らせている浮上防止柱5及び腹起し材3の支持部材4の突っ張りを緩めて、腹起し材3を上方から下方に順次撤去していく。この際、第1の変形防止枠2A及び第2の変形防止枠2Bの上部フレーム部材8,8同士をレバーブロック(登録商標)などによって仮固定しておくとよい。
下部フレーム材8、及びその両端のコーナー部材9と更生管Xとの間の支持部材4は、突っ張りと維持しておき、腹起し材3の配置をそのまま保持持させておく。
【0046】
<連結固定部材解除工程>
腹起し材3の撤去工程の完了後、
図6(a)に示すように、吊り索25を第1の変形防止枠2Aと第2の変形防止枠2Bとの間でテンションを張った状態とする。その上で、第1の変形防止枠2A及び第2の変形防止枠2Bを連結し固定している連結固定部材11を全て取り外す。
これによって、第1の変形防止枠2Aは、アール付きクランプ21、下部の支持部材4、腹起し材3及び吊り索25のみによって保持された状態となる。
取り外した連結固定部材11は、第2の変形防止枠2Bと、その次に設置されている変形防止枠2(第3の変形防止枠)とを連結させておくとよい。
【0047】
<水平設置工程>
その後、
図7に示すように、第1の変形防止枠2Aの下部フレーム材8を支持する支持部材4及びその両端のコーナー部材9の支持部材4を用いて第1の変形防止枠2Aをアール付きクランプ21に対して上方に少し持ち上げる。下部フレーム材8の奥側上角部がアール付きクランプ21の奥壁板21bの上端に当ったら、作業者が吊り索25を伸ばして順次送り出し、
図6(a)に示すように、第1の変形防止枠2Aを第2の変形防止枠2Bの反対にゆっくりと倒していく。
【0048】
この際、第1の変形防止枠2Aの下部フレーム材8は、開口部側の下側角部を中心軸として回転するのではなく、
図7に示すように、フレーム材8が持ち上げられた位置で、奥壁板21b側の下側角部が奥壁板21bに沿って、且つ奥壁板21b側の上側角部がアール部20の内壁面に沿って摩擦しつつ回転する。この動作において、第1の変形防止枠2Aの下部フレーム材8を保持するクランプにアール部20がなく、奥上側角部が沿う内面がない場合、第1の変形防止枠2Aを支持するものほとんどない状態で第1の変形防止枠2Aを傾けることになる。したがって、クランプ内で第1の変形防止枠2Aが揺動しやすくなり、第1の変形防止枠2Aの動きがぎこちなくなる。その結果、第1の変形防止枠2Aが不測の転倒を起こし、回動軸がぶれて、倒す際に第1の変形防止枠2Aが更生管Xに接触し損傷させてしまう可能性がある。
【0049】
しかし、本実施形態の横置き補助具12は、第1の変形防止枠2Aの回動時に、フレーム材8の奥下側角部を奥壁板21bに沿わせるとともに、奥上側角部をアール付きクランプ21のアール部20の円弧形状の内面に当てて回転させることができる。そのため、第1の変形防止枠2Aを安定的に、かつ、下部フレーム材8の管軸を中心として軸線を大きくぶれさせることなく回転させることができる。つまり、変形防止枠2の下部フレーム部材8と上部フレーム部材8をそれぞれ支持しつつ横倒しすることができる。その結果、第1の変形防止枠2Aを倒したい方向に正しくかつ安定的に横倒しさせることができ、また更生管Xを傷つけることなくかつ作業効率よく第1の変形防止枠2Aを寝かすことができる。
【0050】
第1の変形防止枠2Aを寝かす際には、
図6(b)に示すように、第1の変形防止枠2Aが横置きされる位置に台車30を設置しておき、第1の変形防止枠2Aを水平に設置した後そのまま運搬して撤去することができる。
第1の変形防止枠2Aを撤去した後、第2の変形防止枠2Bと第3の変形防止枠2Cを、新たな第1の変形防止枠2A及び第2の変形防止枠2Bとして、上記手順で繰り返し変形防止枠2を取り外し、支保1を撤去していく。
【0051】
このように、本実施形態の支保解体補助具及び変形防止枠2の横置き補助具12によれば、第1の変形防止枠2Aを安定的かつ作業効率よく取り外して運搬可能にすることができる。
【0052】
また、本発明の支保の解体方法によれば、天井アンカーホイストなどで変形防止枠2を更生管X外の天井面に吊り下げる方法を採らず、吊り索25を変形防止枠2の上部フレーム材8に直接取り付けて作業を行う。したがって、複数の変形防止枠2を連結固定部材11で一旦固定して、これを更生管Xの外に運び出し、天井アンカーホイストに吊り下げるという作業を省いて、更生管X内で一つずつ支保を解体し運搬していくことができる。したがって、本発明の支保を解体方法は、作業工程を少なくして効率よく進めることができるという効果を奏する。
【0053】
また、腹起し材撤去工程では、連結固定部材11の固定後に、上方の腹起し材3から順次取り外すので、安定的に作業を行うことができる。
また、連結固定部材解除工程では、取り外した連結固定部材11を、次に作業を行う変形防止枠2,2に固定するので、作業を効率的かつ安定的に行うことができる。
【0054】
なお、横置き補助具12のみならず連結固定部材11の連結棒16も伸縮自在に構成されていてもよい。この構成によって、変形防止枠2,2同士の距離に横置き補助具12及び連結固定部材11のクランプ及び固定部間の長さを好適に調整することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 支保
2 変形防止枠
2A 第1の変形防止枠
2B 第2の変形防止枠
3 腹起し材
4 支持部材
5 浮上防止柱
11 連結固定部材
12 横置き補助具
15 固定部
16 連結棒
20 アール部
21 アール付きクランプ
22 固定部
23 連結棒部
25 吊り索
30 連結台車
X 更生管
Y 既設管