(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161943
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】起立姿勢促進用の椅子システム、起立姿勢促進用の椅子、及び起立姿勢促進用の机システム
(51)【国際特許分類】
A47C 9/02 20060101AFI20231031BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20231031BHJP
A47C 3/20 20060101ALI20231031BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A47C9/02
A47C7/02 D
A47C3/20
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072608
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】301041508
【氏名又は名称】株式会社オージーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】大賀 隆之
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
3B095
【Fターム(参考)】
3B084AA00
3B091GA01
3B095CA01
3B095CA06
3B095CA07
(57)【要約】
【課題】使用者に対して起立した姿勢や浅く腰掛けた姿勢を促すと共に、当該姿勢の継続を補助することのできる起立姿勢促進用の椅子システムを提供する。
【解決手段】起立姿勢促進用の椅子システム1は、使用者が起立した姿勢でも浅く腰掛けた姿勢でも使用可能な起立姿勢促進用の椅子システムであって、座面11の傾斜角度及び高さ位置が調節可能な腰掛け部10と、前記使用者が起立した姿勢となった場合に当該使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれ20と、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれが立設される共通の底板70とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が起立した姿勢でも浅く腰掛けた姿勢でも使用可能な起立姿勢促進用の椅子システムであって、
座面の傾斜角度及び高さ位置が調節可能な腰掛け部と、
前記使用者が起立した姿勢となった場合に当該使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれと、
前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれが立設される共通の底板と、
を備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項2】
請求項1に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記腰掛け部の位置と前記起立姿勢用背もたれの位置とを前記底板上で反転させるための回動機構を備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項3】
請求項2に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記回動機構は、前記腰掛け部と前記起立姿勢用背もたれとの位置関係を維持しつつ当該腰掛け部及び当該起立姿勢用背もたれの全体を前記底板上で回動させることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項4】
請求項3に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれの全体が前記底板上で360°回転可能とされていることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項5】
請求項2に記載の起立姿勢促進用の椅子において、
前記腰掛け部とは反対側の前記起立姿勢用背もたれにはクッションが設けられている
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項6】
請求項2に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記底板に立設され、且つ天板の高さが可変な昇降式机を更に備える
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項7】
請求項6に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれから前記昇降式机までの間隔を調節するための間隔調節機構を更に備える
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項8】
請求項7に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記間隔調節機構は、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれと前記底板の間に介設された直動可能な直動ステージを備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項9】
請求項8に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記間隔調節機構は、前記底板上を移動可能に前記直動ステージに取り付けられたキャスターを備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項10】
請求項8に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記回動機構は、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれと前記直動ステージとの間に介設された回転又は回動可能な回動ステージを備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項11】
請求項10に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記回動機構は、前記直動ステージ上を回動可能に前記回動ステージに取り付けられたベアリングを備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項12】
請求項7に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記間隔調節機構は、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれから前記昇降式机までの間隔を固定するためのストッパを備える
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項13】
請求項1に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
水平姿勢を基準とした前記座面の傾斜角度は15°より小さくならないように制限されている
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記腰掛け部の前記座面の形状は側面視山型状であり、
前記腰掛け部は、当該座面の頂部の高さ位置が高いほど当該座面の傾斜が急角度になるよう前記頂部の高さ位置と前記頂部の角度とを連動させるリンク機構を備える
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項15】
請求項14に記載の起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、
前記リンク機構は、前記座面の傾斜角度及び高さ位置を固定するためのストッパを備える
ことを特徴とする起立姿勢促進用の椅子システム。
【請求項16】
使用者が浅く腰掛けた姿勢で使用可能な起立姿勢促進用の椅子であって、
側面視山型状の座面を有し、当該座面の傾斜角度及び高さ位置が調節可能な腰掛け部と、
前記座面の頂部に立設された背もたれと、
を備えることを特徴とする起立姿勢促進用の椅子。
【請求項17】
使用者が起立した姿勢で使用可能な起立姿勢促進用の机システムであって、
起立した姿勢の使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれと、
前記起立姿勢用背もたれを支持する底板と、
前記底板に立設された机と、
を備えることを特徴とする起立姿勢促進用の机システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立した姿勢や浅く腰掛けた姿勢を使用者に促すための起立姿勢促進用の椅子システム、起立姿勢促進用の椅子、及び起立姿勢促進用の机システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、年齢を問わず、椅子への座り過ぎが身体に悪影響を与えることが提言され、論文等でも発表されている。椅子へ座る場合には、膝と腰をほぼ直角に曲げた姿勢となるため、体重の大半が腰や脊柱に掛かるという座り方しか出来ず、椅子への座り過ぎによる身体への悪影響は、座ったままの姿勢が維持されることによるものである。一方、家庭、学校、オフィスなどで使用されている椅子は種々のものが提供されており、例えば、高さ調整などの機能が搭載された椅子(特許文献1等を参照)や、起立支援機能が搭載された椅子(特許文献2等を参照)なども提案されている。例えば、特許文献1に開示された椅子は、ロッキング機構や背座の高さ調節機構等の作動機構を備えたものであり、特許文献2に開示された起立着座支援椅子は、使用者が起立するときには、マイクに向かって起立するときの音声を発すると、音声データを解析して電動アクチュエータによって座面部の後部が上昇し、同時に背もたれ部も上方向に上昇する、というものである。
【0003】
一方、本出願人は、デスクワーク中に起立や着座の動作を頻繁に行って着座姿勢の長時間化を避けることができるように、着座する座板の側面視が山形状となる状態と座板の側面視が平面状となる状態との間の適宜の位置で自在に変えることができるリンク機構付きの椅子を提案した(特許文献1~3等を参照)。特に、特許文献4には、リンク機構付きの椅子と天板の高さが可変な昇降式机とを共通の底板に立設し、その椅子から机までの間隔を調整可能とした椅子システムが開示されている(特許文献4の
図1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-105293号公報
【特許文献2】特開2014-140435号公報
【特許文献3】特許第6815681号公報
【特許文献4】特許第6797454号公報
【特許文献5】特許第6797453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献4の椅子システムを実際のデスクワークで使用してみたところ、使用者が椅子に浅く腰掛けた姿勢をとることができ、膝と腰をほぼ直角に曲げた姿勢での座り過ぎを防止する効果があることを確認することができた。これを踏まえ、浅く腰掛けた姿勢や座面から腰を離した起立した姿勢での作業を容易に持続させることができれば、使用者の身体や健康への貢献がさらに高まるものと考えられる。
【0006】
そこで、本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、使用者に対して起立した姿勢や浅く腰掛けた姿勢を促すと共に、当該姿勢の継続を補助することのできる起立姿勢促進用の椅子システム、起立姿勢促進用の椅子、及び起立姿勢促進用の机システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、使用者が起立した姿勢でも浅く腰掛けた姿勢でも使用可能な起立姿勢促進用の椅子システムであって、座面の傾斜角度及び高さ位置が調節可能な腰掛け部と、前記使用者が起立した姿勢となった場合に当該使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれと、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれが立設される共通の底板と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記腰掛け部の位置と前記起立姿勢用背もたれの位置とを前記底板上で反転させるための回動機構を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記回動機構は、前記腰掛け部と前記起立姿勢用背もたれとの位置関係を維持しつつ当該腰掛け部及び当該起立姿勢用背もたれの全体を前記底板上で回動させることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれの全体が前記底板上で360°回転可能とされていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記腰掛け部とは反対側の前記起立姿勢用背もたれにはクッションが設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記底板に立設され、且つ天板の高さが可変な昇降式机を更に備えることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれから前記昇降式机までの間隔を調節するための間隔調節機構を更に備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記間隔調節機構は、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれと前記底板の間に介設された直動可能な直動ステージを備えることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記間隔調節機構は、前記底板上を移動可能に前記直動ステージに取り付けられたキャスターを備えることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記回動機構は、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれと前記直動ステージとの間に介設された回転又は回動可能な回動ステージを備えることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記回動機構は、前記直動ステージ上を回動可能に前記回動ステージに取り付けられたベアリングを備えることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記間隔調節機構は、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれから前記昇降式机までの間隔を固定するためのストッパを備えることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、水平姿勢を基準とした前記座面の傾斜角度は15°より小さくならないように制限されていることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記腰掛け部の前記座面の形状は側面視山型状であり、前記腰掛け部は、当該座面の頂部の高さ位置が高いほど当該座面の傾斜が急角度になるよう前記頂部の高さ位置と前記頂部の角度とを連動させるリンク機構を備えることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、本発明に係る何れかの起立姿勢促進用の椅子システムにおいて、前記リンク機構は、前記座面の傾斜角度及び高さ位置を固定するためのストッパを備えることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子は、使用者が浅く腰掛けた姿勢で使用可能な起立姿勢促進用の椅子であって、側面視山型状の座面を有し、当該座面の傾斜角度及び高さ位置が調節可能な腰掛け部と、前記座面の頂部に立設された背もたれと、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するために本発明に係る一の起立姿勢促進用の机システムは、使用者が起立した姿勢で使用可能な起立姿勢促進用の机システムであって、起立した姿勢の使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれと、前記起立姿勢用背もたれを支持する底板と、前記底板に立設された机と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、座面の傾斜角度及び高さ位置が調節可能な腰掛け部と、前記使用者が起立した姿勢となった場合に当該使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれと、前記腰掛け部及び前記起立姿勢用背もたれが立設される共通の底板とを備えるので、使用者が起立した姿勢での作業を希望する場合には、起立姿勢用背もたれへ背中を預けることにより、起立した姿勢での作業を容易に継続することができると共に、使用者が座面の傾斜角度及び高さ調節を行えば、起立した姿勢に近い姿勢で浅く腰掛けた姿勢を習慣づけることができるという効果がある。更には、底板が使用者の体重を受けて安定するので、底板に立設された起立姿勢用背もたれに使用者が安心して背中を預けられるというメリットもある。したがって、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、起立した姿勢や浅く腰掛けた姿勢の継続を促すことができるという効果がある。
【0025】
本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムは、腰掛け部の位置と起立姿勢用背もたれの位置とを底板上で反転させるための回動機構を備えるので、使用者が起立した姿勢に近い姿勢で浅く腰掛けることができると共に、使用者が起立した姿勢での作業を希望する場合には、腰掛け部の位置と起立姿勢用背もたれの位置とを底板上で容易に反転させることが可能である。しかも、起立姿勢用背もたれへ背中を預け、起立した姿勢での作業が開始されると、使用者が腰掛け部と起立姿勢用背もたれの位置関係を反転させない限り、腰掛け部に腰掛けることができないため、無意識に腰掛けてしまうという事態を確実に回避することができる。したがって、起立した姿勢を途中で断念して無意識に腰掛けるという事態が生じにくいという効果がある。もちろん、使用者が腰掛けたい場合には腰掛け部と起立姿勢用背もたれの位置関係を反転させればよい。
【0026】
また、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、腰掛け部と起立姿勢用背もたれとの位置関係を維持しつつ、当該腰掛け部及び当該起立姿勢用背もたれの全体を底板上で回動させるので、その反転の前後で腰掛け部又は起立姿勢用背もたれの位置を容易に再現することができるという効果がある。
【0027】
また、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、腰掛け部及び起立姿勢用背もたれの全体が底板上で360°回転可能であるので、使用者が任意の向きから腰掛け部へ腰掛けたり腰掛け部から任意の向きへ腰を上げたりすることができるという効果がある。
【0028】
また、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、天板の高さが可変な昇降式机が底板に立設されており、腰掛け部及び起立姿勢用背もたれから昇降式机までの間隔が調節可能であるので、(1)腰掛け部に腰掛けて作業するとき、(2)腰掛け部に浅く腰掛けて(起立した姿勢に近い姿勢で)作業するとき、(3)起立姿勢用背もたれを用いて起立した姿勢で作業するとき、(4)起立姿勢用背もたれを用いずに起立した姿勢で作業するときの全ての場合において、使用者の手元の高さ及び足元の空間サイズを最適化することができるという効果がある。
【0029】
また、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、腰掛け部及び起立姿勢用背もたれから昇降式机までの間隔を固定するためのストッパが設けられているので、腰掛け部又は起立姿勢用背もたれの位置の反転の前後で使用者の足元の空間サイズを容易に再現することができるという効果がある。
【0030】
また、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、水平姿勢を基準とした座面の傾斜角度が15°より小さくならないように当該傾斜角度の調節範囲が制限されるので、使用者が腰掛け部へ深く腰掛けるのを防ぎ、使用者に対して浅く腰掛けた姿勢(起立した姿勢に近い姿勢)を習慣づけることができるという効果がある。
【0031】
また、本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子システムによれば、座面の頂部の高さ位置が大きいほど当該座面の傾斜が急角度となるように頂部の高さ位置と座面の傾斜角度とを連動させているので、座面の傾斜角度と高さを一括して調節することができ、調節操作が容易という効果がある。
【0032】
本発明に係る一の起立姿勢促進用の椅子によれば、側面視山型状の座面の頂部に起立促進用背もたれを立設させているので、使用者が座面の頂部へ腰を下ろすこと(深く腰掛けること)を阻害することができ、使用者が浅く腰掛けた姿勢を習慣づけるのに適している。そして、使用者は、浅く腰掛けつつ起立促進用背もたれに寄りかかることができるので、当該姿勢を維持することが容易である。したがって、使用者による長時間の浅く腰掛けた姿勢を補助できると共に、浅く腰掛けた姿勢を途中で断念して無意識に深く腰掛けるという事態が生じないという効果がある。
【0033】
本発明に係る一の起立姿勢促進用の机システムによれば、起立した姿勢の使用者の背中を支持するための起立姿勢用背もたれと、前記起立姿勢用背もたれを支持する底板と、前記底板に立設された机とを備えるので、使用者が起立姿勢用背もたれへ背中を預けることにより、起立した姿勢での作業を容易に継続することができると共に、底板が使用者の体重を受けて安定するので、底板に立設された起立姿勢用背もたれに使用者が安心して背中を預けられるというメリットがある。したがって、本発明に係る起立姿勢促進用の机システムによれば、使用者に起立した姿勢の継続を促すことができ、起立した姿勢を途中で断念して無意識に腰掛けるという事態が生じにくいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は起立姿勢促進用の椅子システムの一実施形態を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システムの概略平面図である。
【
図3】
図3は本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システムの概略正面図(昇降式机は図示省略)である。
【
図4】
図4は腰掛け部及びその周辺の概略拡大側面図である。
【
図5】
図5は腰掛け部及びその周辺の概略拡大正面図である。
【
図6】
図6(A)~(E)は座面の動きを説明する説明図である。
【
図7】
図7(A)は底板の平面図、
図7(B)は直動ステージの平面図、
図7(C)は回動ステージの平面図である。
【
図8】
図8(A)は回動ステージの動きを説明する説明図、
図8(B)は直動ステージの動きを説明する説明図である。
【
図9】
図9(A),(B)は起立姿勢促進用の椅子システムの動きを説明する図である。
【
図10】
図10(A)~(C)は起立姿勢促進用の椅子システムの使用方法を説明する説明図である。
【
図11】
図11(A)~(D)は起立姿勢促進用の椅子システムの変形例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る起立姿勢促進用の椅子システムの好ましい一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0036】
1.実施形態
1-1.システムの概略構成
以下、
図1~
図3,
図6,
図9,
図10を参照して本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システムの概略構成を説明する。
図1は起立姿勢促進用の椅子システムの一実施形態を示す概略側面図、
図2は本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システムの概略平面図、
図3は本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システムの概略正面図(昇降式机は図示省略)、
図6(A)~(E)は座面の動きを説明する説明図、
図9(A),(B)は起立姿勢促進用の椅子システムの動きを説明する図、
図10(A)~(C)は起立姿勢促進用の椅子システムの使用方法を説明する説明図である。
【0037】
先ず、
図1~
図3に示すとおり、本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システム1は、底板70上に腰掛け部10、起立姿勢用背もたれ20及び昇降式机100を配置すると共に、腰掛け部10及び起立姿勢用背もたれ20と底板70との間に回動機構24及び間隔調節機構23を介設したものである。
【0038】
腰掛け部10は、使用者が深く腰掛けるのを防ぐために傾斜した座面11を有し、且つ当該使用者が浅く腰掛けた姿勢(
図10(B)))で使用できるように当該座面11の傾斜角度及び高さ位置が調節可能となっている。図示された腰掛け部10は、側面視山型状の座面11と、座面11を下側から支持するリンク機構12とを備えている。
【0039】
側面視山型状の座面11は、リンク機構12の最上部(後述する上部リンク部UL)に剛性のある金属製や樹脂製、木製などの座板を固定したものである。なお、座面11は、リンク機構12の最上部(後述する上部リンク部UL)又は当該座板に取り付けられたクッションである。この座面11の左右端には、使用者が左右の手で腰掛け部10を把持するためのハンドル30,30が取り付けられている。このハンドル30,30は、使用者が座面1の傾斜角度及び高さを調節する際や、足元の空間サイズ(後述する間隔)を調節する際などに用いられる。
【0040】
リンク機構12は、座面11の頂部の高さ位置が大きいほど当該座面11の傾斜が急角度(急峻)になるよう座面11の高さと座面11の傾斜角度とを連動させる機構である。よって、使用者は、座面11の傾斜角度と高さを一括して調節することができ、調節操作が容易となる。特に、本実施形態のリンク機構12は、水平姿勢を基準とした当該座面11の傾斜角度が15°より小さくならないよう(例えば15°~55°に収まるよう)に座面11の傾斜角度の調節範囲を制限している(
図6(A)~(E))。よって、使用者が深く腰掛けるのを防ぎ、浅く腰掛けた姿勢(起立した姿勢に近い姿勢)を使用者に習慣づけることができる(
図10(B))。なお、リンク機構12の構成の詳細については後述する。
【0041】
起立姿勢用背もたれ20は、使用者が腰掛け部10から腰を離し、起立した姿勢となった場合に当該使用者の背中を支持するために用いられる背もたれである。この起立姿勢用背もたれ20の高さは一般的な椅子の背もたれの高さよりも高く、例えば起立した姿勢の使用者の背中の高さ、肩甲骨の高さ、又は肩の高さと同程度に設定されている(
図10(C))。このような起立姿勢用背もたれ20は、使用者が背中を預けることができるよう十分に剛性の高い例えば金属製の板状部材で構成されており、その下端側は、例えば
図1に示すように、緩やかな断面L字状に湾曲しており、腰掛け部10と共通のベース(後述する回動ステージ24S)にボルトなどで固定されている。この起立姿勢用背もたれ20が使用される際には、起立姿勢用背もたれ20の向きを反転させるので(
図9(A)→(B))、使用者の背中を保護するためのクッション21は、起立姿勢用背もたれ20の腰掛け部10とは反対の側に取り付けられている(
図10(C))。
【0042】
昇降式机100は、天板100TBの高さが可変な昇降式机であって、例えば天板100TBの他、天板100TBを支持する伸縮可能なシャフト100Sと、シャフト100Sの長さを調整するための、例えば、ネジ式の高さ調節機構100SAとを備える。よって、使用者が(1)腰掛け部10に腰掛けて作業するとき(
図10(A))、(2)膝を伸ばして腰掛け部10に浅く腰掛けて作業するとき(
図10(B))、(3)起立姿勢用背もたれを用いて起立した姿勢で作業するとき(
図10(C))、及び(4)起立姿勢用背もたれを用いずに起立した姿勢で作業するときの全ての場合において、使用者の手元の高さを最適化することができる。
【0043】
回動機構24は、使用者が腰掛け部10に腰掛けた姿勢(
図10(A),(B))と起立した姿勢(
図10(C))との間で移行する際に、腰掛け部10の位置と起立姿勢用背もたれ20の位置とを底板70上で反転(
図9(A),(B))させるための機構である。そのために、例えば、回動機構24は、腰掛け部10と起立姿勢用背もたれ20との位置関係を維持しつつ当該腰掛け部10及び当該起立姿勢用背もたれ20の全体を底板70上で回動させる。よって、反転の前後で腰掛け部10又は起立姿勢用背もたれ20の位置を容易に再現することができる。更に、本実施形態の回動機構24は、腰掛け部10及び起立姿勢用背もたれ20の全体を底板70上で360°回転させることができるので、使用者が任意の向きから腰掛け部10へ腰掛けたり腰掛け部10から任意の向きへ腰を上げたりすることも可能である。なお、回動機構24の詳細については後述する。
【0044】
間隔調節機構23は、腰掛け部10及び起立姿勢用背もたれ20から昇降式机100までの間隔を調節するための機構である。よって、使用者が(1)腰掛け部10に腰掛けて作業するとき(
図10(A))、(2)腰掛け部10に浅く腰掛けて作業するとき(
図10(B))、(3)起立姿勢用背もたれを用いて起立した姿勢で作業するとき(
図10(C))、及び(4)起立姿勢用背もたれを用いずに起立した姿勢で作業するときの全ての場合において、使用者の足元の空間サイズを最適化することができる。さらに、間隔調節機構23には、使用者が足元の空間サイズを固定するためのストッパ23Hも備えられている。なお、間隔調節機構23の詳細については後述する。
【0045】
1-2.リンク機構
以下、
図4,
図5,
図6を参照してリンク機構を説明する。
図4は腰掛け部及びその周辺の概略拡大側面図、
図5は腰掛け部及びその周辺の概略拡大正面図、
図6(A)~(E)は座面の動きを説明する説明図である。これらの図に示すとおり、本実施形態のリンク機構は、回動ステージ24S(後述)に立設された左右の支柱13,13と、左右の支柱13,13に個別に取り付けられた左右のリンク機構12,12と、左右のリンク機構12,12の間に架け渡される共通の梁部材63と、梁部材63の中央に取り付けられ、座面11の頂部の裏側に取り付けられた伸縮自在なシャフト131と、シャフト131の内部の下端寄りに配置され、且つシャフト131が伸張する方向に付勢されたコイルバネなどの弾性部材(不図示)と、リンク機構12,12の関節J1~J5の角度を固定するためのストッパ12Hとを備える。
【0046】
ここで、左右のリンク機構12,12は左右対称な構成であるので、ここでは左のリンク機構12に着目して説明する。また、図示された例では一対のリンク機構12,12を用いているが(ダブルタイプ)、何れか一方のリンク機構12を省略すると共に、残りのリンク機構12を座面11の頂部の下方へ配置してもよい(シングルタイプ)。
【0047】
図4に示すとおり、リンク機構12は、側面視略ハ字状の上部リンク部ULと、側面視W字状の中部リンク部MLと、側面視V字状の下部リンク部LLとを備える。
【0048】
上部リンク部JLは、奥側(
図4左方)に配置された側面視略I字状の第一上部リンク部材1Uと、手前側(
図4右方)に配置された側面視I字状の第二上部リンク部材2Uとを備える。
【0049】
中部リンク部MLは、奥側(
図4左方)に配置された側面視略L字状の第一中部リンク部材1Mと、手前側(
図4右方)に配置された側面視略L字状の第二中部リンク部材2Mとを備える。
【0050】
下部リンク部LLは、奥側(
図4左方)に配置された略I字状の第一下部リンク部材1Lと、手前側(
図4右方)に配置された側面視略I字状の第二下部リンク部材2Lとを備える。
【0051】
ここで、以上のリンク機構12の奥側(
図4左方)の構造と手前側(
図4右方)の構造は対称な関係になるので、ここでは奥側(
図4の左側)の構成に着目して説明する。
【0052】
第一上部リンク部材1Uの一端は、シャフト131の上端側に関節(ジョイント)J1を介して連結されており、第一上部リンク部材1Uの他端は、関節(ジョイント)J2を介して第一中部リンク部材1Mの一端に連結されている。
【0053】
第一中部リンク部材1Mの他端は、関節(ジョイント)J5を介して梁部材63に連結されており、第一中部リンク部材1Mの途中(L字の屈曲部)は、関節(ジョイント)J3を介して第一下部リンク部材1Lの上端に連結されている。
【0054】
第一下部リンク部材1Lの下端は、関節(ジョイント)J4を介して、支柱13の周囲に設けられた上下動プレート64に連結されている。
【0055】
したがって、座面11の頂部に何も荷重(使用者の体重)をかけない状態では、不図示のコイルバネなどの弾性部材によってシャフト131が上方に付勢されているので関節J1~J5の位置関係が
図6(A)に示すような位置関係となり、座面11の傾斜角度が最も急角度となり、座面11の高さが最も大きくなる。
【0056】
一方、座面11の頂部へ荷重(使用者の体重など)をかけると、不図示の弾性部材の付勢力に抗して関節J1~J5の位置関係が徐々に
図6(A)~(E)に示す位置関係へと変化し、座面11の傾斜角度が徐々に緩やかになり、また座面11の高さが徐々に小さくなる。
【0057】
リンク機構12のストッパ12Hは、リンク機構12の少なくとも1つの関節を固定するブレーキ機構に連結されている。このブレーキ機構は、例えば、ストッパ12Hの下端に設けられた偏心カムであって、ストッパ12Hの引き下げに応じて回動し、梁部材63とシャフト131の隙間へ押し込まれることにより、シャフト131の伸縮を阻害する偏心カムなどを備えている。
【0058】
これにより、使用者がストッパ12Hを押し込む(引き下げる)と、前述したブレーキ機構がシャフト131の伸縮を阻害するので、リンク機構12の全ての関節J1~J5が固定され、その結果として座面11の高さ及び傾斜角度が固定される。
【0059】
一方、使用者がストッパ12Hを解除する(引き上げる)と、前述したブレーキ機構が解除されてシャフト131の伸縮を許容するので、リンク機構12の全ての関節J1~J5が可動になり(
図6(A)~(E))、その結果として座面11の高さ及び傾斜角度が可変となる。
【0060】
なお、本実施形態では、リンク機構12の奥側の構造(
図4左方)と手前側(
図4右方)の構造とを対称としたが、奥側の構造(
図4左方)を省略して手前側の構造(
図4右方)のみとしてもよい。
【0061】
1-3.回動機構
以下、
図4,
図5,
図7,
図8を参照して回動機構24を説明する。
図7(B)は直動ステージの平面図、
図7(C)は回動ステージの平面図、
図8(A)は回動ステージの動きを説明する説明図、
図8(B)は直動ステージの動きを説明する説明図である。これらの図に示すとおり、回動機構24は、円盤状の回動ステージ24Sと、当該回動ステージ24Sの中央に設けられたシャフト孔24a(
図7(C))と、後述する直動ステージ23Sに立設されたシャフト24AXと、回動ステージ24Sの下側の周縁寄りに設けられたベアリング24B,24B,24B,24Bとを備える。
【0062】
回動ステージ24Sの中央のシャフト孔24aには、直動ステージ23Sの中央に立設されたシャフト24AXが挿通されており、このシャフト24AXを中心として当該回動ステージ24Sが回転可能とされている(
図8(A)の符号D24)。上述した腰掛け部10の支柱13,13及び起立姿勢用背もたれ20の下端は、この回転ステージ24Sの上面にボルトなどで固定されている。なお、回動ステージ24Sにおける腰掛け部10の支柱13,13の固定先は、腰掛け部10の重心が回転ステージ24Sの回転中心におおむね一致するように設定されていることが望ましい。
【0063】
回動ステージ24Sの下側(回動ステージ24Sと直動ステージ23Sとの間)には、回動ステージ24Sを直動ステージ23S上で回転(又は回動)させるためのベアリング24B,24B,24B,24Bが取り付けられている。ベアリング24B,24B,24B,24Bは、それぞれコロ(ローラ)24Rを備えている。なお、これらのベアリング24B,24B,24B,24Bの取り付け先は、回動ステージ24Sの周縁寄りであって、これらのベアリング24B,24B,24B,24Bの配置間隔は等間隔である(
図8(A))。よって、例えば、使用者が腰掛け10に腰掛けた状態(回動ステージ24Sに荷重をかけた状態)であったとしても、回動ステージ24Sの回転はスムーズに行われる。
【0064】
本実施形態ではベアリング24B,24B,24B,24Bの取り付け先を回転ステージ24Sの側としたが、直動ステージ23Sの側としてもよい。また、ここでは起立姿勢用背もたれ20と回転ステージ24Sとを別体で構成したが、起立姿勢用背もたれ20と回転ステージ24Sとを同一の部材(例えば側面視略L字状の部材)で構成してもよい。
【0065】
1-4.間隔調節機構
以下、
図4,
図5,
図7,
図8を参照して間隔調節機構23を説明する。これらの図に示すとおり、間隔調節機構23は、回動ステージ24Sをシャフト24AXによって軸支する直動ステージ23Sと、直動ステージ23Sの下側の四隅に取り付けられたキャスター23C,23C,23C,23Cと、直動ステージ23Sの右端寄りに突設されたストッパ23Hと、直動ステージ23Sの右端寄りに設けられたストッパ孔23Dと、底板70の上面の右端寄りに設けられた複数のストッパ孔23E,23E,…と、直動ステージ23Sの左右端に設けられたガイド部材23G,23Gとで構成される。
【0066】
直動ステージ23Sは、腰掛け部10及び起立姿勢用背もたれ20と底板70の間(回動ステージ24Sと底板70の間)に介設された板状の直動可能なステージである。このステージ23Sの中央には、回動ステージ24Sの回転軸となるシャフト24AXが立設されている。
【0067】
直動ステージ23Sの下側の四隅に取り付けられたキャスター23C,23C,23C,23Cによって底板70上を直動ステージ23Sが移動する。よって、例えば使用者が腰掛け10に腰掛けた状態(荷重をかけた状態)であったとしても、直動ステージ23Sの移動(間隔調節)はスムーズに行われる。なお、ここではキャスター23Cの設け先を直動ステージ23Sの側としたが、底板70の側としてもよい。
【0068】
直動ステージ23Sの上面の右端寄りに設けられたストッパ孔23Dは、ストッパ23Hの下端を下方の底板70の側へと貫通させるための孔である。
【0069】
底板70の上面の右側端寄りに設けられた複数のストッパ孔23E,23E,…は、底板70の長手方向(間隔調整方向)に沿うようにして等間隔で配置されている。これらの23E,23E,…は、後述するストッパ23Hの下端を係止するための孔である。
【0070】
ストッパ23Hは、直動ステージ23の上面の右端寄りから突出するようにして上下動可能に取り付けられた棒状の部材であって、底板70における直動ステージ23Sの位置を固定するための操作レバーである。
【0071】
このストッパ23Hを使用者が下方へ押し込むと、ストッパ23Hの先端が直動ステージ23Sのストッパ孔23Dを貫通し、底板70上の何れかのストッパ孔23Eへ係止される。これによって、底板70における直動ステージ23の位置が固定され、腰掛け10及び起立姿勢用背もたれ20から昇降式机100までの間隔が固定される。
【0072】
一方、このストッパ23Hを使用者が上方へ引き上げると、底板70上の何れかのストッパ孔23Eとストッパ23Hの下端との係止が解除されるので、底板70上を直動ステージ23が進退可能になる。
【0073】
そして、直動ステージ23Sの左右端に設けられたガイド部材23G,23Gは、底板70の左右端に嵌合し、且つ、直動ステージ23Sの移動方向を腰掛け10及び起立姿勢用背もたれ20から昇降式机100までの間隔が拡縮する方向(
図8(B)符号D23)に規制する。なお、ここではガイド部材23G,23Gの設け先を直動ステージ23Sの側としたが、底板70の側としてもよい。
【0074】
したがって、本実施形態の間隔調節機構23によれば、腰掛け部10又は起立姿勢用背もたれ20から昇降式机100までの空間サイズを使用者が任意に調節することができる。しかも、間隔調節機構23のストッパ23Hによると、使用者が回動ステージ23Sを回動させ、腰掛け部10又は起立姿勢用背もたれ20の位置を反転させた前後において、使用者の足元の空間サイズを容易に再現することができる。
【0075】
1-5.起立姿勢促進用の椅子システムの使用方法
以下、
図9,
図10を参照して本実施形態の起立姿勢促進用の椅子システムの使用方法及び効果を説明する。
図9(A),(B)は起立姿勢促進用の椅子システムの動きを説明する図、
図10(A)~(C)は起立姿勢促進用の椅子システムの使用方法を説明する説明図である。
【0076】
(1)使用者は、必要に応じて回動機構24(回動ステージ24Sなど)を操作することにより、昇降式机100の側に腰掛け部10を配置し、昇降式机100から離れた側に起立姿勢用背もたれ20を配置する(
図9(A))。この状態で使用者は、腰掛け部10に腰を掛けた状態で昇降式机100に向かって作業することが可能となる(
図10(A),(B))。
【0077】
(2)使用者は、腰掛け部10に腰掛けた状態で、必要に応じてリンク機構12(ストッパ12Hなど)を操作することにより、所望の姿勢で腰掛けられるように座面11の傾斜角度及び高さ調節を行う。座面11の傾斜角度を緩やかにし、座面11の高さを小さめに設定した状態が
図10(A)に示す状態であり、座面11の傾斜角度を急角度にすると共に座面11の高さを高く設定した状態が
図10(B)に示す状態である。
【0078】
(3)使用者は、必要に応じて間隔調節機構23(直動ステージ23S,ストッパ23Hなど)を操作することにより、足元の空間サイズ(自分から昇降式机100までの間隔)を、自分の身体サイズや自分の姿勢に適したサイズに調節する。
【0079】
(4)そして、使用者は、必要に応じて高さ調節機構100SAを操作することにより、手元の高さ(昇降式机100の高さ)を、自分の身体のサイズや姿勢に適した間隔に調節する。この状態で使用者は、腰掛け部10に(浅く)腰を掛けて昇降式机100に向かって快適に作業することができる(
図10(A),(B))。
【0080】
(5)その後、使用者が起立した姿勢での作業を希望した場合には、回動機構24(回動ステージ24Sなど)を操作することにより、起立姿勢用背もたれ20の位置を反転させる(
図9(A)→(B))。この状態で使用者は、起立した姿勢で起立姿勢用背もたれ20に寄りかかって昇降式机100に向かって作業することが可能となる(
図10(C))。
【0081】
(6)そして、使用者は、起立した姿勢で起立姿勢用背もたれ20に寄りかかった状態で、必要に応じて(3),(4)のステップを実行し、自分から昇降式机10までの間隔及び昇降式机100の高さを自分の身体のサイズや姿勢に適した値に調節する。
【0082】
(7)使用者は、起立した姿勢のまま作業を継続し、その後、疲れた場合には、その時点で回動機構24(回動ステージ24Sなど)を操作することにより、起立姿勢用背もたれ20を反転させる(
図9(B)→(A))。この状態では、使用者は、腰掛け部10に浅く腰を掛けた状態で昇降式机100に向かって作業することが可能となる(
図10(B))。その後、(5)のステップに戻る。
【0083】
1-6.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態に係る起立姿勢促進用の椅子システム1は、腰掛け部10の位置と起立姿勢用背もたれ20の位置とを底板70上で反転させるための回動機構24を備えるので、使用者が腰掛け部10を自分の側へ配置させて(図(A),(B))座面11の傾斜角度及び高さ調節を行えば、起立した姿勢に近い姿勢で浅く腰掛けることができる(
図10(B))。一方、使用者が起立した姿勢での作業を希望する場合には、腰掛け部10の位置と起立姿勢用背もたれ20の位置とを底板70上で反転させてから当該起立姿勢用背もたれ20に背中を預けることにより(
図10(C))、起立した姿勢での作業を容易に継続することができる。しかも、この状態(
図10(C))では、使用者が腰掛け部10と起立姿勢用背もたれ20の位置関係を反転させない限りは腰掛け部10に腰掛けることができないため、無意識に腰を掛けてしまうという事態を確実に回避することができる。更には、底板70が使用者の体重を受けて安定するので、底板70に立設された起立姿勢用背もたれ20に使用者が安心して背中を預けられるというメリットもある。したがって、本実施形態に係る起立姿勢促進用の椅子システム1によれば、使用者による長時間の起立した姿勢を補助できると共に、起立した姿勢を途中で断念して無意識に腰掛けるという事態が生じにくいという効果がある。
【0084】
2.変形例
以下、上述した実施形態の起立姿勢促進用の椅子システム1についてのいくつかの変形例について説明する。
2-1.腰掛け部を固定した変形例
例えば、上述した起立姿勢促進用の椅子システム1では、腰掛け部10と起立姿勢用背もたれ20とを一緒に回転させたが、側面視山形状の座面11は前後どちらからでも腰掛けることが可能であるので、腰掛け部10を底板70上に固定しておき、当該腰掛け部10の周囲を起立姿勢用背もたれ20が回動又は回転可能となるように構成してもよい。この場合、起立姿勢用背もたれ20が回動又は回転させることにより、腰掛け部10の位置と起立姿勢用背もたれの位置とを反転させることができるからである。また、この変形例においては、腰掛け部10と起立姿勢用背もたれ20の双方を支持する円盤状の回動ステージ24Sの代わりに、腰掛け部10を支持せず起立姿勢用背もたれ20を支持する例えばドーナツ状のステージを用いてもよい。
【0085】
2-2.背もたれの変形例
また、他の変形例としては、底板70に立設された起立姿勢用背もたれ20の代わりに、
図11(A)~(D)に示すような座面11の頂部に立設された起立促進用背もたれ20’を設けてもよい。そして、この起立促進用背もたれ20’の両側にクッション21,21をそれぞれ取り付ける。この変形例によると、使用者が座面11の頂部へ腰を下ろすこと(深く腰掛けること)を阻害することができるので、
図11(C),(D)に示すとおり、使用者に対して浅く腰掛けた姿勢を習慣づけるのに適している。特に、
図11(C)に示すように、座面11の傾斜角度を急峻にして座面11の高さを高くすれば、使用者が浅く腰掛けつつ起立促進用背もたれ20’に寄りかかることができるので、当該姿勢を維持することが容易となる。したがって、
図11に示す変形例によれば、使用者による長時間の浅く腰掛けた姿勢を補助できると共に、無意識に深く腰掛けるという事態を回避できるという効果がある。なお、
図11に示す変形例では、腰掛け部10の位置と起立促進用背もたれ20’の位置を反転させる必要がないので、上述した回動ステージ24Sを省略することも可能である。但し、使用者が所望の方向から腰掛け部10に腰掛けたり、所望の方向へ腰を上げたりするために回動ステージ24Sを使用してもよい。
【0086】
2-3.机システムの変形例
また、上述した起立姿勢促進用の椅子システム1において、腰掛け部10を省略することにより、起立姿勢促進用の机システムを構成することもできる。この起立姿勢促進用の机システムによると、使用者が起立姿勢用背もたれ20へ背中を預けることにより、起立した姿勢での作業を容易に継続することができると共に、底板70が使用者の体重を受けて安定するので、底板70に立設された起立姿勢用背もたれ20に使用者が安心して背中を預けられるというメリットがある。したがって、この起立姿勢促進用の机システムによれば、起立した姿勢の継続を促すことができると共に、起立した姿勢を途中で断念して無意識に腰掛けるという事態が生じにくいという効果がある。なお、この起立姿勢促進用の机システムには腰掛け部10が備えられないので、上述した回動ステージ24Sを省略することも可能である。
【0087】
2-4.リンク機構の変形例
上述した何れかの実施形態又は何れかの変形例におけるリンク機構は、上述したものに限定されることはなく、他のリンク機構、例えば、特許第6815681号公報、特許第6797454号公報、特許第6797453号公報の何れかに開示されているようなリンク機構を用いることもできる。
【0088】
2-5.その他
その他、上述した何れかの実施形態又は何れかの変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 腰掛け部
100 昇降式机
100S シャフト
100SA 高さ調節機構
100TB 天板
11 座面(座板又はクッション)
12 リンク機構
12H ストッパ
13 支持部材
131 シャフト
1L 第一下部リンク部材
1M 第一中部リンク部材
1U 第一上部リンク部材
20 起立姿勢用背もたれ
20’ 起立促進用背もたれ
21 クッション
23 間隔調節機構
23C キャスター
23D ストッパ孔
23E ストッパ孔
23G ガイド部材
23H ストッパ
23S 直動ステージ
24 回動機構
24AX シャフト
24B ベアリング
24R コロ(ローラ)
24S 回動ステージ
2L 第二下部リンク部材
2M 第二中部リンク部材
2U 第二上部リンク部材
30 ハンドル
63 梁部材
64 上下動プレート
70 底板
D23 直動ステージの移動方向
D24 回動ステージの回動方向
J1 関節
J2 関節
J3 関節
J4 関節
J5 関節