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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161948
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20231031BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B62D1/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072613
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野道 大介
【テーマコード(参考)】
3D020
3D030
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD08
3D020BE03
3D030DB16
3D030DD63
(57)【要約】
【課題】ディスプレイを移動させるための専用の駆動源を設けないで、ディスプレイの画像表示面を視認用の配置状態と視認用でない配置状態とに自動的に切替えることが可能なステアリングコラム装置を得る。
【解決手段】切替機構50は、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を退避位置方向(車両前方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12の画像表示面12Aの向きを、乗員側を向く第一の向き12A1から、第一の向き12A1とは異なる第二の向きに変更させ、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を使用位置方向(車両後方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12の画像表示面12Aの向きを第二の向きから第一の向き12A1に変更させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画像表示面を有するディスプレイと、
ステアリングを支持するステアリングコラム部と、
前記ステアリングをその回転軸方向に移動させる駆動機構と、
前記駆動機構の駆動により、前記ディスプレイの前記画像表示面の向きを、乗員側を向く第一の向きと、前記第一の向きとは異なる第二の向きと、の間で変更させる向き変更機構と、
を備えるステアリングコラム装置。
【請求項2】
画像を表示する画像表示面を有するディスプレイと、
ステアリングを支持するステアリングコラム部と、
前記ステアリングをその回転軸方向に移動させる駆動機構と、
前記駆動機構の駆動により、前記ディスプレイを、前記ステアリングコラム部内に格納された格納位置と、前記ステアリングコラム部から突出する使用位置と、の間で移動させる移動機構と、
を備えるステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記ステアリングの使用時における前記回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲と、前記調整移動範囲よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲と、において前記ステアリングをその回転軸方向に移動させ、
前記向き変更機構は、前記駆動機構が前記退避用移動範囲内で前記ステアリングを移動させるのに連動して前記ディスプレイの画像表示面の向きを前記第一の向きと前記第二の向きとの間で変更させる、請求項1記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記ステアリングの使用時における前記回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲と、前記調整移動範囲よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲と、において前記ステアリングをその回転軸方向に移動させ、
前記移動機構は、前記駆動機構が前記退避用移動範囲内で前記ステアリングを移動させるのに連動して前記ディスプレイを前記使用位置と前記格納位置との間で移動させる、請求項2記載のステアリングコラム装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、車両電源スイッチがオフからオンになった場合に前記ステアリングを前記退避用移動範囲内の退避位置から前記調整移動範囲内の所定位置まで移動させ、前記車両電源スイッチがオンからオフになった場合に前記ステアリングを前記調整移動範囲内の位置から前記退避用移動範囲内の前記退避位置まで移動させる、請求項3又は請求項4に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを備えたステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のディスプレイ可動装置では、ディスプレイがステアリングの内部又はステアリング近傍で視認容易な位置に設けられ、車両が自動運転に切替えられた際にステアリングが引込まれる方向へ移動することと連動して、ディスプレイを突出する方向に移動させる。このため、乗員は無理な姿勢をとることなく容易にディスプレイを操作することが可能となる。
【0003】
ここで、このディスプレイ可動装置では、ディスプレイを前後方向に移動させるための専用のモータが設けられており、また、ディスプレイの画像表示面は常に乗員が視認可能な状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-184024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ディスプレイを移動させるための専用の駆動源を設けないで、ディスプレイの画像表示面を視認用の配置状態と視認用でない配置状態とに自動的に切替えることが可能なステアリングコラム装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のステアリングコラム装置は、画像を表示する画像表示面を有するディスプレイと、ステアリングを支持するステアリングコラム部と、前記ステアリングをその回転軸方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構の駆動により、前記ディスプレイの前記画像表示面の向きを、乗員側を向く第一の向きと、前記第一の向きとは異なる第二の向きと、の間で変更させる向き変更機構と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のステアリングコラム装置は、画像を表示する画像表示面を有するディスプレイと、ステアリングを支持するステアリングコラム部と、前記ステアリングをその回転軸方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構の駆動により、前記ディスプレイを、前記ステアリングコラム部内に格納された格納位置と、前記ステアリングコラム部から突出する使用位置と、の間で移動させる移動機構と、を備える。
【0008】
本発明の第3態様のステアリングコラム装置は、本発明の第1態様のステアリングコラム装置において、前記駆動機構は、前記ステアリングの使用時における前記回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲と、前記調整移動範囲よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲と、において前記ステアリングをその回転軸方向に移動させ、前記向き変更機構は、前記駆動機構が前記退避用移動範囲内で前記ステアリングを移動させるのに連動して前記ディスプレイの画像表示面の向きを前記第一の向きと前記第二の向きとの間で変更させる。
【0009】
本発明の第4態様のステアリングコラム装置は、本発明の第2態様のステアリングコラム装置において、前記駆動機構は、前記ステアリングの使用時における前記回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲と、前記調整移動範囲よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲と、において前記ステアリングをその回転軸方向に移動させ、前記移動機構は、前記駆動機構が前記退避用移動範囲内で前記ステアリングを移動させるのに連動して前記ディスプレイを前記使用位置と前記格納位置との間で移動させる。
【0010】
本発明の第5態様のステアリングコラム装置は、本発明の第3態様又は第4態様のステアリングコラム装置において、前記駆動機構は、車両電源スイッチがオフからオンになった場合に前記ステアリングを前記退避用移動範囲内の退避位置から前記調整移動範囲内の所定位置まで移動させ、前記車両電源スイッチがオンからオフになった場合に前記ステアリングを前記調整移動範囲内の位置から前記退避用移動範囲内の前記退避位置まで移動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様のステアリングコラム装置では、ステアリングコラム部がステアリングを支持する。また、駆動機構がステアリングをその回転軸方向に移動させる。
【0012】
ここで、駆動機構の駆動により、向き変更機構が、ディスプレイの画像表示面の向きを、乗員側を向く第一の向きと、第一の向きとは異なる第二の向きと、の間で変更させる。このため、ディスプレイを移動させるための専用の駆動源を設けないで、ディスプレイの画像表示面を視認用の配置状態と視認用でない配置状態とに自動的に切替えることが可能になる。
【0013】
本発明の第2態様のステアリングコラム装置では、ステアリングコラム部がステアリングを支持する。また、駆動機構がステアリングをその回転軸方向に移動させる。
【0014】
ここで、駆動機構の駆動により、移動機構が、ディスプレイを、ステアリングコラム部内に格納された格納位置と、ステアリングコラム部から突出する使用位置と、の間で移動させる。このため、ディスプレイを移動させるための専用の駆動源を設けないで、ディスプレイの画像表示面を視認用の配置状態と視認用でない配置状態とに自動的に切替えることが可能になる。
【0015】
本発明の第3態様のステアリングコラム装置では、駆動機構が、ステアリングの使用時における回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲と、調整移動範囲よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲と、においてステアリングをその回転軸方向に移動させる。また、向き変更機構は、駆動機構が退避用移動範囲内でステアリングを移動させるのに連動してディスプレイの画像表示面の向きを第一の向きと第二の向きとの間で変更させる。このため、ステアリングを調整移動範囲内に配置する前後にディスプレイの画像表示面の向きを自動で変えることが可能となる。
【0016】
本発明の第4態様のステアリングコラム装置では、駆動機構が、ステアリングの使用時における回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲と、調整移動範囲よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲と、においてステアリングをその回転軸方向に移動させる。また、移動機構は、駆動機構が退避用移動範囲内でステアリングを移動させるのに連動してディスプレイを使用位置と格納位置との間で移動させる。このため、ステアリングを調整移動範囲内に配置する前後にディスプレイの位置を自動で変えることが可能となる。
【0017】
本発明の第5態様のステアリングコラム装置では、駆動機構は、車両電源スイッチがオフからオンになった場合にステアリングを退避用移動範囲内の退避位置から調整移動範囲内の所定位置まで移動させ、車両電源スイッチがオンからオフになった場合にステアリングを調整移動範囲内の位置から退避用移動範囲内の退避位置まで移動させる。このため、車両電源スイッチのオン、オフに合わせてディスプレイを移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るステアリングコラム装置を車両電源スイッチのオン状態時において車両左側から見た状態を一部破断して示す模式的な側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るステアリングコラム装置に支持されるステアリング等を車両電源スイッチのオン状態時に乗員側から見た正面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るステアリングコラム装置を車両電源スイッチのオフ状態時において車両左側から見た状態を一部破断して示す模式的な側面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るステアリングコラム装置を車両電源スイッチのオン状態時において車両左側から見た状態を一部破断して示す模式的な側面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るステアリングコラム装置を車両電源スイッチのオフ状態時において車両左側から見た状態を一部破断して示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1には、ステアリングコラム装置10を車両左側から見た状態が一部破断した状態の模式的な側面図にて示されている。なお、図1では、車両前側を矢印FRで示し、上側を矢印UPで示している。
【0020】
ステアリングコラム部14は、インストルメントパネル(図示省略)を貫通して車両後側に突出されている。ステアリングコラム部14は、軸方向が車両前後方向に沿って配置される筒状のコラムポスト16を備えると共に、コラムポスト16の外周側を覆う略筒状のコラムカバー18を備えている。コラムカバー18は、コラムポスト16に固定されている。コラムカバー18の上部には、開口部18Hが貫通形成されている。
【0021】
コラムポスト16内には、円柱状のステアリングシャフト20が回転可能に嵌合されている。ステアリングシャフト20は、コラムポスト16に支持されると共に、コラムポスト16の車両後側に突出されている。ステアリングシャフト20の車両後側端部には、ステアリング22が固定されている。これらにより、ステアリングコラム部14は、ステアリング22を支持する。
【0022】
ステアリング22は、運転席に着座する乗員(運転者)の車両前側に配置される。図2には、ステアリング22等を乗員側から見た状態の正面図が示されている。図2に示す如く、ステアリング22は、一例として、非円環状に形成され、円環状のステアリングホイールの概ね上半分に相当する部分がなく、左右に把持部22Aを備えている。乗員がステアリング22を回転操作した際には、ステアリング22と一体に図1に示されるステアリングシャフト20が回転されて車両が操舵される。なお、本実施形態においては、ステアリング22とタイヤ(図示省略)とは機械的に繋がれておらず、電気信号でタイヤを操作するシステム(ステアバイワイヤ方式の操舵システム)が採用されている。
【0023】
図1に示す如く、ステアリングコラム装置10は駆動機構としてのテレスコピック機構30を備えている。テレスコピック機構30は、ステアリングコラム部14をその軸方向に移動させることによってステアリング22をその回転軸方向に移動させる。本実施形態では、テレスコピック機構30は、一例として、コラムポスト16に対して車両左側に設けられている。なお、テレスコピック機構30は、コラムポスト16に対して車両右側に設けられてもよい。
【0024】
テレスコピック機構30はケース32を有している。ケース32は車体側に固定されている。ケース32の下部には、モータ34が固定されている。モータ34の出力軸34Aは、車両上方側に延出されてケース32内に挿入されている。モータ34の出力軸34Aには、ウォームギヤ36が同軸上に固定されている。ウォームギヤ36は、ケース32内の上下方向中間部に配置されている。
【0025】
ウォームギヤ36には、ヘリカルギヤ38が噛合されている。ヘリカルギヤ38の軸心方向は、コラムポスト16の延在方向に沿う方向とされている。また、ヘリカルギヤ38の径は、ウォームギヤ36の径に比して大きくされている。ヘリカルギヤ38の軸心部には送りネジ40が固定されている。送りネジ40は、棒軸状に形成されてコラムポスト16の延在方向に沿う方向を軸方向として配置され、その車両前側の部分がケース32内の軸受41に回転可能に支持されている。送りネジ40の車両後側の部分は、ケース32から突出しており、その外周には雄ネジ40Aが形成されている。
【0026】
送りネジ40の車両後側の部分はナット42の軸心を貫通している。ナット42の内周面には、雌ネジ(図示省略)が形成されており、この雌ネジに送りネジ40の雄ネジ40Aが螺合されている。ナット42の外形は略直方体状とされている。ナット42は、図示しない周辺部材によって、自身の軸心周りに回転不能でかつ送りネジ40の軸線方向に移動可能に支持されると共に、連結部材(図示省略)を介してコラムポスト16が固定されている。以上により、テレスコピック機構30は、コラムポスト16を支持している。
【0027】
また、テレスコピック機構30のモータ34は、制御装置44に電気的に接続されている。制御装置44には、テレスコスイッチ46及び車両電源スイッチ48が電気的に接続されている。テレスコスイッチ46及び車両電源スイッチ48は、乗員が操作可能にされている。テレスコスイッチ46及び車両電源スイッチ48が操作されることで、制御装置44の制御により、モータ34が駆動される。図1及び図2は、車両電源スイッチ48のオン状態時を図示している。
【0028】
図1に示すテレスコピック機構30は、ステアリング22の使用時における回転軸方向の位置の調整範囲である調整移動範囲A1と、調整移動範囲A1よりも車両前方側の退避用の移動の範囲である退避用移動範囲A2と、においてステアリング22をその回転軸方向に移動させる。なお、図1では、ステアリング22を調整移動範囲A1内で移動させる場合のコラムポスト16の後端の移動範囲を符号a1で示し、ステアリング22を退避用移動範囲A2内で移動させる場合のコラムポスト16の後端の移動範囲を符号a2で示す。
【0029】
図3には、車両電源スイッチ48のオフ状態時においてステアリングコラム装置10を車両左側から見た状態が図1と同様に一部破断された状態で模式的な側面図にて示されている。テレスコピック機構30は、車両電源スイッチ48がオフからオンになった場合にステアリング22を退避用移動範囲A2内の退避位置22Xから調整移動範囲A1内の所定位置まで移動させ、車両電源スイッチ48がオンからオフになった場合にステアリング22を調整移動範囲A1内の位置から退避用移動範囲A2内の退避位置22Xまで移動させるようになっている。また、テレスコピック機構30は、図1に示される車両電源スイッチ48がオンの状態でテレスコスイッチ46が後退操作された場合にステアリング22を調整移動範囲A1内で後退させ、車両電源スイッチ48がオンの状態でテレスコスイッチ46が前進操作された場合にステアリング22を調整移動範囲A1内で前進させるようになっている。
【0030】
一方、図1及び図3に示す如く、ステアリングコラム装置10は、コラムカバー18の上部の開口部18Hを出没可能なディスプレイ12を備えている。図2に示す如く、ディスプレイ12は、画像を表示する画像表示面12Aを有する。なお、ディスプレイ12には、例えばスピードメータを含むメータディスプレイ、ナビゲーション表示用のディスプレイ等が適用される。
【0031】
また、図1に示すステアリングコラム装置10には、ディスプレイ12の配置状態を図1に示される状態と図3に示される状態との間で切替えるための機構として、向き変更機構としてのかつ移動機構としての切替機構50が設けられている。
【0032】
図1及び図3に示される如く、切替機構50は、ディスプレイ12の下部に固定されたセクタギヤ52を備えている。セクタギヤ52は、車両側面視で全体として略扇形状とされており、セクタギヤ52の形状を扇形状と見做した場合の扇の要の位置には、車両幅方向を軸線方向とする軸53が貫通して配置されている。軸53は、図示しない部材を介して車体側に固定されている。セクタギヤ52は、軸53によってその軸53周りに回動自在に支持されている。セクタギヤ52は、略円弧状に形成された円弧状部52Aが下側となるように配置されている。円弧状部52Aには外歯52Bが形成されている。
【0033】
また、切替機構50は、コラムポスト16の上面側に固定されたラック54を備えている。ラック54における複数の歯54Aは、コラムポスト16の延在方向に並んでいる。セクタギヤ52の外歯52Bとラック54の歯54Aとは、ステアリング22が調整移動範囲A1内で移動している状態では噛合わず、ステアリング22が退避用移動範囲A2内で移動する場合に噛合うように設定されている。
【0034】
また、セクタギヤ52は、ステアリング22が退避用移動範囲A2内で退避位置方向(車両前方側)へ移動する場合にはディスプレイ12の画像表示面12Aを下方側へ向ける方向に回動し、ステアリング22が退避用移動範囲A2内で使用位置方向(車両後方側)へ移動する場合にはディスプレイ12の画像表示面12Aを乗員側へ向ける方向に回動するように設定されている。
【0035】
以上により、切替機構50は、テレスコピック機構30の駆動により、ディスプレイ12の画像表示面12Aの向きを、乗員側を向く第一の向き12A1(図1参照)と、第一の向き12A1(図1参照)とは異なる第二の向き12A2(図3参照)と、の間で変更させる向き変更機構として機能する。より具体的には、切替機構50は、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を退避位置方向(車両前方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12の画像表示面12Aの向きを第一の向き12A1(図1参照)から第二の向き12A2(図3参照)に変更させ、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を使用位置方向(車両後方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12の画像表示面12Aの向きを第二の向き12A2(図3参照)から第一の向き12A1(図1参照)に変更させるようになっている。なお、「乗員側を向く第一の向き」は、好ましくはドライバー側を向く方向であり、より好ましくはドライバーの顔側を向く方向である。また、第二の向き12A2(図3参照)は、本実施形態では、乗員側とは異なる側を向く方向とされている。
【0036】
また、切替機構50は、テレスコピック機構30の駆動により、ディスプレイ12を、ステアリングコラム部14のコラムカバー18内に格納された格納位置12C(図3参照)と、ステアリングコラム部14のコラムカバー18から突出する使用位置12D(図1参照)と、の間で移動させる移動機構として機能する。より具体的には、切替機構50は、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を退避位置方向(車両前方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12を使用位置12D(図1参照)から格納位置12C(図3参照)に移動させ、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を使用位置方向(車両後方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12を格納位置12C(図3参照)から使用位置12D(図1参照)に移動させるようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0038】
以上の構成のステアリングコラム装置10では、図3に示される車両電源スイッチ48がオンされると、テレスコピック機構30において、モータ34が駆動されて、ウォームギヤ36、ヘリカルギヤ38及び送りネジ40が回転されることで、ナット42が送りネジ40に沿って車両後方側に移動され、ナット42と共にコラムポスト16が車両後方側に移動される。これによって、ステアリング22は、退避用移動範囲A2内の退避位置22Xから調整移動範囲A1内の所定位置まで移動される。
【0039】
また、このとき、コラムポスト16の車両後方側への移動によってラック54が車両後方側へ移動されてセクタギヤ52が回転されることで、ディスプレイ12が回動される。これによって、ディスプレイ12は図3に示す格納位置12Cから図1に示す使用位置12Dに移動され、ディスプレイ12の画像表示面12Aの向きは図3に示す第二の向き12A2から図1に示す第一の向き12A1に変更される。
【0040】
また、図1に示される状態でテレスコスイッチ46が操作されると、テレスコピック機構30において、モータ34が駆動されて、ウォームギヤ36、ヘリカルギヤ38及び送りネジ40が回転されることで、ナット42が送りネジ40に沿って車両前後方向に移動され、ナット42と共にコラムポスト16が車両前後方向に移動される。これによって、ステアリング22は、調整移動範囲A1内で移動される。このとき、ラック54の歯54Aとセクタギヤ52の外歯52Bとは噛合わないので、ディスプレイ12は図1に示される姿勢が維持される。
【0041】
また、車両電源スイッチ48がオフされると、テレスコピック機構30において、モータ34が駆動されて、ウォームギヤ36、ヘリカルギヤ38及び送りネジ40が回転されることで、ナット42が送りネジ40に沿って車両前方側に移動され、ナット42と共にコラムポスト16が車両前方側に移動される。これによって、ステアリング22は、調整移動範囲A1内の位置から退避用移動範囲A2内の退避位置22X(図3参照)まで移動される。
【0042】
また、このとき、図3に示される如く、コラムポスト16の車両前方側への移動によってラック54も車両前方側へ移動されてセクタギヤ52が回転されることで、ディスプレイ12が回動される。これによって、ディスプレイ12は図1に示す使用位置12Dから図3に示す格納位置12Cに移動され、ディスプレイ12の画像表示面12Aの向きは図1に示す第一の向き12A1から図3に示す第二の向き12A2に変更される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、ディスプレイ12を移動させるための専用の駆動源を設けないで、ディスプレイ12の画像表示面12Aを視認用の配置状態と視認用でない配置状態とに自動的に切替えることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態では、ディスプレイ12を移動させるための専用の駆動源が不要であるので、部品点数、コスト及びステアリングコラム装置10の体格を抑えることが可能となる。なお、仮にステアリングコラム装置のディスプレイを移動させるための専用のモータをディスプレイ近辺に設置すると、モータと乗員との距離が近いため乗員がモータ音を耳障りに感じる可能性があるが、本実施形態のモータ34は乗員から比較的離れた位置にあるので、乗員がモータ音を耳障りに感じる可能性は低い。
【0045】
なお、図1図3に示す本実施形態では、運転時にディスプレイ12がステアリングコラム部14の直上に配置されるので、運転者がディスプレイ12を容易に視認することができる。
【0046】
また、本実施形態では、非使用時にディスプレイ12がステアリングコラム部14のコラムカバー18内に格納されるので、ディスプレイ12が埃等で汚れるのが抑えられると共に例えばステアリングコラム部14の周辺で部材の付け替え等が行われる場合にディスプレイ12に物が当たるのを防ぐこともでき、更には高級感を演出することもできる。
【0047】
また、本実施形態では、車両電源スイッチ48をオフにした際には、ステアリング22が調整移動範囲A1よりも更に車両前方側に自動で移動するので、運転者の乗降性が良い。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るステアリングコラム装置について、図4及び図5を用いて説明する。図4には、第2実施形態に係るステアリングコラム装置60を車両電源スイッチ48のオン状態時において車両左側から見た状態が一部破断された状態の模式的な側面図で示されている。図5には、ステアリングコラム装置60を車両電源スイッチ48のオフ状態時において車両左側から見た状態が一部破断された状態の模式的な側面図で示されている。
【0049】
図4及び図5に示す第2実施形態のステアリングコラム装置60は、第1実施形態の切替機構50(図1及び図3参照)に代えて、移動機構62を備える点で、第1実施形態に係るステアリングコラム装置10(図1及び図3参照)とは異なる。他の構成は、第1実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
図4及び図5に示される如く、第2実施形態では、テレスコピック機構30は、コラムポスト16に対して車両右側(図4及び図5の紙面奥側)に設けられている。これに対して、移動機構62は、コラムポスト16に対して車両左側(図4及び図5の紙面手前側)に設けられている。コラムポスト16の後部側かつ車両左側には、車体側に固定されたサポート部材61が設けられている。
【0051】
移動機構62は、サポート部材61の後端部の下部からコラムポスト16の延在方向に沿って延出された第1ラック64を備えている。第1ラック64は、サポート部材61に固定されている。第1ラック64の上面側に形成された複数の歯64Aは、コラムポスト16の延在方向に並んでいる。
【0052】
また、移動機構62は、コラムポスト16の側面側に配置されたピニオン66を備えている。ピニオン66の軸心には、車両幅方向を軸線方向とする軸67が貫通されており、この軸67は、コラムポスト16の側部に固定されている。ピニオン66は、軸67に対して回転自在にされている。ピニオン66の外周部には、その周方向に並ぶ複数の歯66Aが形成されている。第1ラック64の歯64Aとピニオン66の歯66Aとは、ステアリング22が調整移動範囲A1内で移動している状態では噛合わず、ステアリング22が退避用移動範囲A2内で移動する場合に噛合うように設定されている。
【0053】
また、移動機構62は、ディスプレイ12の下部に固定された第2ラック68を備えている。第2ラック68は、ディスプレイ12の下部から垂下されるように延出され、図示しないガイド部材によって、上下方向(車両側面視でコラムポスト16の延在方向と直交する方向)に沿って移動可能とされている。第2ラック68の後面側に形成された複数の歯68Aは、上下方向に並んでいる。第2ラック68は、ピニオン66と噛合されており、ピニオン66の回転に応じて上下に移動されるようになっている。
【0054】
以上により、移動機構62は、テレスコピック機構30の駆動により、ディスプレイ12を、ステアリングコラム部14のコラムカバー18内に格納された格納位置12E(図5参照)と、ステアリングコラム部14のコラムカバー18から突出する使用位置12F(図4参照)と、の間で移動させる。より具体的には、移動機構62は、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を退避位置方向(車両前方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12を使用位置12F(図4参照)から格納位置12E(図5参照)に移動させ、テレスコピック機構30が退避用移動範囲A2内でステアリング22を使用位置方向(車両後方側)に移動させるのに連動してディスプレイ12を格納位置12E(図5参照)から使用位置12F(図4参照)に移動させるようになっている。
【0055】
以上説明した第2実施形態によっても、ディスプレイ12を移動させるための専用の駆動源を設けないで、ディスプレイ12の画像表示面12Aを視認用の配置状態と視認用でない配置状態とに自動的に切替えることが可能になる。
【0056】
[変形例]
なお、第2実施形態の変形例として、テレスコピック機構(30)がコラムポスト(16)に対して車両左側に設けられると共に、移動機構(62)がコラムポスト(16)に対して車両右側に設けられてもよい。また、第2実施形態の他の変形例として、ディスプレイ(12)を上下移動させるために、送りネジを用いてもよい。
【0057】
また、第1実施形態では、図1及び図3に示すコラムポスト16に向き変更機構としてのかつ移動機構としての切替機構50の構成部の一部を取り付け、第2実施形態では、図4及び図5に示すコラムポスト16に移動機構62の構成部の一部を取り付けているが、変形例として、向き変更機構及び移動機構は、その構成部の一部をコラムポスト(16)ではなくナット(42)に取り付けてもよい。また、向き変更機構及び移動機構は、プーリーを含んで構成されてもよい。
【0058】
また、第1実施形態においては、図1に示す使用位置12Dにおけるディスプレイ12は、側面視で画像表示面12Aが車両上下方向に沿って配置されるように設定されているが、変形例として、使用位置におけるディスプレイ(12)は、側面視で画像表示面(12A)が車両上下方向に対して角度を付けて配置されるように設定されてもよい。
【0059】
また、第2実施形態においては、図4に示す使用位置12Fにおけるディスプレイ12は、側面視で画像表示面12Aが車両上下方向に沿って配置されるように設定されているが、変形例として、使用位置におけるディスプレイ(12)は、側面視で画像表示面(12A)が車両上下方向に対して角度を付けて配置されるように設定されてもよく、そのような姿勢でディスプレイ(12)が車両上下方向にスライド移動するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態の変形例として、ディスプレイ(12)が車両上下方向の軸線周りに回動可能とされ、向き変更機構が、テレスコピック機構(30)の駆動により、ディスプレイ(12)の画像表示面(12A)の向きを、乗員側を向く第一の向きと、乗員側とは反対側を向く第二の向きと、の間で変更させる、というものでもよい。
【0061】
なお、「第一の向き」を、ドライバー側を向く方向とし、「第一の向きとは異なる第二の向き」をドライバー側ではない方向(例えば乗員側ではあるがドライバー側ではない方向である助手席側を向く方向)としてもよい。また「第一の向き」をドライバーの顔側を向く方向とし、「第一の向きとは異なる第二の向き」をドライバー側ではあるがドライバーの顔側を向かない方向(例えばドライバーの足元側を向く方向)としてもよい。
【0062】
また、上記第1実施形態の変形例として、セクタギヤ(52)の外歯(52B)とラック(54)の歯(54A)とは、ステアリング(22)が調整移動範囲(A1)内のうち退避用移動範囲(A2)に近い側のごく短い範囲及び退避用移動範囲(A2)内で移動する場合にのみ噛合うように設定されている、という構成も採り得る。
【0063】
同様に、上記第2実施形態の変形例として、第1ラック(64)の歯(64A)とピニオン(66)の歯(66A)とは、ステアリング(22)が調整移動範囲(A1)内のうち退避用移動範囲(A2)に近い側のごく短い範囲及び退避用移動範囲(A2)内で移動する場合にのみ噛合うように設定されている、という構成も採り得る。
【0064】
また、上記第1、第2実施形態の変形例として、駆動機構としてのテレスコピック機構は、車両電源スイッチ(48)とは別の所定のスイッチがオフからオンになった場合にステアリング(22)を退避用移動範囲(A2)内の退避位置(22X)から調整移動範囲(A1)内の所定位置まで移動させ、車両電源スイッチ(48)とは別の所定のスイッチがオンからオフになった場合にステアリング(22)を調整移動範囲(A1)内の位置から退避用移動範囲(A2)内の退避位置(22X)まで移動させる、という構成も採り得る。
【0065】
なお、上記第1、第2実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0066】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10・・・ステアリングコラム装置、12・・・ディスプレイ、12A・・・画像表示面、12A1・・・第一の向き、12A2・・・第二の向き、12C・・・格納位置、12D・・・使用位置、12E・・・格納位置、12F・・・使用位置、14・・・ステアリングコラム部、22・・・ステアリング、30・・・テレスコピック機構(駆動機構)、48・・・車両電源スイッチ、50・・・切替機構(向き変更機構、移動機構)、60・・・ステアリングコラム装置、62・・・移動機構、A1・・・調整移動範囲、A2・・・退避用移動範囲
図1
図2
図3
図4
図5