(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161953
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】解凍装置及び解凍装置を備えた冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/12 20060101AFI20231031BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20231031BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F25D23/12 Q
F25D11/00 101W
A23L3/365 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072620
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 利治
【テーマコード(参考)】
3L045
4B022
【Fターム(参考)】
3L045AA05
3L045BA05
3L045DA04
3L045PA02
3L045PA04
4B022LQ04
4B022LT02
4B022LT07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】食品の品質を保ちながら短時間に解凍が可能なシンプルな構造の解凍装置及びこの解凍装置を備えた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】解凍すべき食品を収容するとともに液体を蓄える蓄液領域10を有する蓄液筐体4と、蓄液領域10内の液体を循環させる循環ポンプと、蓄液領域10内の液体を加熱する加熱部材20と、を備え、加熱部材20により所定の温度となり循環ポンプにより流動した蓄液領域10内の液体により食品Gが解凍される解凍装置2、及びこの解凍装置2を備えた冷蔵庫を提供する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解凍すべき食品を収容するとともに液体を蓄える蓄液領域を有する蓄液筐体と、
前記蓄液領域内の液体を循環させる循環ポンプと、
前記蓄液領域内の液体を加熱する加熱部材と、
を備え、
前記加熱部材により所定の温度となり前記循環ポンプにより流動した前記蓄液領域内の液体により前記食品が解凍されることを特徴とする解凍装置。
【請求項2】
前記循環ポンプの吐出口に接続されたポンプ出側配管の出側端部の給液口は、平面視で前記循環ポンプの吸込口から離間した位置に配置され、
前記食品が、平面視で前記循環ポンプの前記吸込口と前記給液口との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の解凍装置。
【請求項3】
前記蓄液筐体の外面に金属製のシート状の伝熱促進部材が貼り付けられ、前記伝熱促進部材の外面にシート状の前記加熱部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の解凍装置。
【請求項4】
前記蓄液筐体の底面に、平面視で所定の間隔をあけて一定の方向に延びる複数の凸部材が形成され、前前記底面より高い前記凸部材の上面で前記食品を支持し、隣接する前記凸部材の間の前記食品の下面と前記底面との間の領域に液体が流れることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の解凍装置。
【請求項5】
冷蔵庫とは個別の装置であって、
更に、前記蓄液領域内の液体を冷却する機能を有する部材を備え、
解凍後の前記食品が冷蔵温度の液体の中に保存されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の解凍装置。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項に記載の解凍装置を冷蔵室内に備えることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍した食品を解凍する解凍装置及びこの解凍装置を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍保存することにより、生鮮食品を長期間保存することができる。しかし、冷凍状態の食品を解凍するのには、多くの手間や時間がかかる。これに対処するため、15℃~20℃の温度の水で解凍を行う業務用の解凍装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用 昭和特55-151199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の解凍装置は、非常に大がかりな装置であり、一般の家庭で採用するのは困難である。現況、家庭では、食品を冷蔵庫の冷蔵室に配置して解凍することがあるが、その場合には、解凍が完了するまで長時間を要する。また、食品に水道水を当てて解凍することもあるが、その場合には、多量の水を要し、解凍時のドリップ量が増えて、食品の品質が低下する虞がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、食品の品質を保ちながら短時間に解凍が可能なシンプルな構造の解凍装置及びこの解凍装置を備えた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解凍装置は、
解凍すべき食品を収容するとともに液体を蓄える蓄液領域を有する蓄液筐体と、
前記蓄液領域内の液体を循環させる循環ポンプと、
前記蓄液領域内の液体を加熱する加熱部材と、
を備え、
前記加熱部材により所定の温度となり前記循環ポンプにより流動した前記蓄液領域内の液体により前記食品が解凍されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、蓄液領域内の液体の中に配置された食品が、直接または包装部材を介して、加熱部材により加熱され循環ポンプにより流動した蓄液領域内の液体との間の熱伝達で解凍される。ここで、「食品」とは、冷凍した生鮮食品である冷凍肉、冷凍魚、冷凍野菜、冷凍果物等を例示できる。包装部材として、食品を覆うラップや、食品を入れる樹脂製袋を例示できる。
【0008】
食品を解凍するため、食品の周囲の液体の温度は低下するが、液体は流動しているので、温度が下がった液体が食品の周囲に留まることなく、加熱部材で加熱された液体を食品の周囲に供給できる。循環ポンプにより液体が循環しているので、多量の液体を使うことなく、液体の流れにより食品との間の熱伝達を促進できる。よって、シンプルな構造ながら、短時間に解凍を行うことができる。更に、加熱部材により適切に加熱を行って、液体の温度を常に解凍に適した温度(例えば、5℃~10℃)に保つことができるので、解凍時に食品のドリップの発生を抑制して品質を保つことができる。
【0009】
これにより、食品の品質を保ちながら短時間に解凍が可能なシンプルな構造の解凍装置を提供できる。
【0010】
また、本発明の解凍装置では、
前記循環ポンプの吐出口に接続されたポンプ出側配管の出側端部の給液口は、平面視で前記循環ポンプの吸込口から離間した位置に配置され、
前記食品が、平面視で前記循環ポンプの前記吸込口と前記給液口との間に配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、循環ポンプの吸込口から吸い込まれた液体は、ポンプ出側配管の給液口から、蓄液領域内の液体へ流出し、蓄液領域内を流れて、再び循環ポンプの吸込口に吸い込まれる。これを繰り返すことにより液体が循環する。食品が、循環ポンプの吸込口と給液口との間に配置されているので、循環する液体の流れにより食品を効率的に解凍することができる。
【0012】
また、本発明の解凍装置では、
前記蓄液筐体の外面に金属製のシート状の伝熱促進部材が貼り付けられ、前記伝熱促進部材の外面にシート状の前記加熱部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、蓄液筐体と加熱部材との間に金属製の伝熱促進部材が配置されているので、加熱部材で生じた熱をムラなく効率的に蓄液筐体に伝え、延いては蓄液領域内の液体に伝えることができる。これにより、蓄液領域内の液体を均一に効率的に加熱することができる。
【0014】
また、本発明の解凍装置では、
前記蓄液筐体の底面に、平面視で所定の間隔をあけて一定の方向に延びる複数の凸部材が形成され、前前記底面より高い前記凸部材の上面で前記食品を支持し、隣接する前記凸部材の間の前記食品の下面と前記底面との間の領域に液体が流れることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、食品が、加熱部材が取り付けられた蓄液筐体の底面に接しないので、解凍時の加熱ムラが生じるのを防ぐことができる。更に、隣接する凸部材の間の食品の下面と蓄液筐体の底面との間の領域に液体を流すことができるので、食品の上方や側方に加えて、下方にも液体を流して、食品に全周から熱を加えて効率的に解凍できる。
【0016】
また、本発明の解凍装置が冷蔵庫とは個別の装置である場合には、
更に、前記蓄液領域内の液体を冷却する機能を有する部材を備え、
解凍後の前記食品が冷蔵温度の液体の中に保存されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、加熱部材で加熱された液体を用いて食品を効率的に解凍できるとともに、液体を冷却する部材で液体を冷蔵温度に冷却して、解凍後の食品を冷蔵温度の液体の中に保存することができる。これにより、食品を解凍するだけでなく、解凍された食品を、品質を保ったまま保存することができる。
【0018】
また、本発明の冷蔵庫は、上記の解凍装置を冷蔵室内に備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、解凍装置が冷蔵庫の冷蔵室内に配置されるので、解凍された食品が配置された蓄液領域内の液体の温度を、引き続き適切な冷蔵温度に保つことができるので、食品の品質を保ったまま保存することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明では、食品の品質を保ちながら短時間に解凍が可能なシンプルな構造の解凍装置及びこの解凍装置を備えた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の1つの実施形態に係る解凍装置を模式的に示す側面断面図であって、蓄液筐体が駆動筐体から外された状態を示す図である。
【
図1B】本発明の1つの実施形態に係る解凍装置を模式的に示す側面断面図であって、蓄液筐体が駆動筐体に取り付けられ解凍を行っている状態を示す図である。
【
図2】循環ポンプのポンプ本体と駆動部とを繋ぐマグネットカップリングの構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図3】
図1Bの断面A-Aを含む模式的な斜視図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る解凍装置が冷蔵室内に配置された冷蔵庫を模式的示す側面断面図である。
【
図5】
図4に示す冷蔵庫の制御システムの一例を示すブロック図である。
【
図6】冷蔵庫とは個別の本発明のその他の実施形態に係る解凍装置を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する冷蔵庫は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。以下の記載及び図面では、冷蔵庫が液体平面に設置された場合を想定して、上下方向を示してある。
【0023】
(本発明の1つの実施形態に係る解凍装置)
図1A及び
図1Bは、本発明の1つの実施形態に係る解凍装置2を模式的に示す側面断面図であって、
図1Aは、蓄液筐体4が駆動筐体6から外された状態を示す図であり、
図1Bは、蓄液筐体4が駆動筐体6に取り付けられ解凍を行っている状態を示す図である。
図2は、循環ポンプ30のポンプ本体32と駆動部34とを繋ぐマグネットカップリング36の構造を模式的に示す側面断面図である。
図3は、
図1Bの断面A-Aを含む模式的な斜視図である。
図4は、本発明の1つの実施形態に係る解凍装置2が冷蔵室102内に配置された冷蔵庫100を模式的示す側面断面図である。
【0024】
はじめに、
図1Aから
図4を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る解凍装置2の概要を説明する。本発明の1つの実施形態に係る解凍装置2は、冷蔵庫100の冷蔵室102内に配置されている。解凍装置2は、互いに着脱可能な蓄液筐体4及び駆動筐体6を備える。駆動筐体6は冷蔵室102に固定され、冷蔵庫100の制御部や電源部と電気的に繋がっている。使用者は、蓄液筐体4を駆動筐体6から取り外して、冷蔵庫100の庫外へ持ち出し、再び、蓄液筐体4を冷蔵室102内の駆動筐体6に取り付けことができる。
【0025】
<蓄液筐体>
蓄液筐体4は、略直方体の形状を有し、上面が開口している。蓄液筐体4の内部が見えるように、透光性を有する樹脂材料で蓄液筐体4を形成するのが好ましい。上面の開口は、蓋4Aで覆われている。蓄液筐体4の内部の下方には、液体を蓄える蓄液領域10が配置されている。蓄液領域10内に蓄えられた液体の中に解凍を行う食品Gが配置される。解凍を行う食品Gとして、冷凍肉、冷凍、冷凍野菜、冷凍果物等の冷凍生鮮食品を例示できる。冷凍生鮮食品が何も覆われずに、液蓄液領域10内の液体中に配置される場合もあり得るし、冷凍生鮮食品がラップで覆われた状態や、冷凍生鮮食品が樹脂製袋に収納されている状態で、液体中に配置される場合もあり得る。つまり、包装のないまたは包装部材で覆われた冷凍された食品Gが蓄液領域10内の液体の中に配置されている。
【0026】
蓄液領域10に蓄える液体は、食品Gを解凍するために用いるものであり、水道水を例示することができる。使用者は、蓄液筐体4を駆動筐体6から取り外して、冷蔵庫100の庫外へ持ち出し、蓄液筐体4の蓄液領域10に水道水を充填することができる。蓄液領域10に水道水を充填した後、蓄えた水道水の中に食品Gを浸して、再び、蓄液筐体4を冷蔵室102内の駆動筐体6に取り付ける。蓄液領域10に充填する液体は、冷凍された食品を解凍するのに適した液体であれば、水道水以外の任意の液体を用いることができる。
【0027】
蓄液筐体4の内部には、更に、蓄液領域10に蓄えられた液体を循環させる循環ポンプ30のポンプ本体32が配置されている。ポンプ本体32のインペラ32Aの回転軸に、マグネットカップリング36の円板状のポンプ本体側部分36Aが取り付けられている。後述するように、ポンプ本体32のインペラ32Aが、マグネットカップリング36を介して駆動筐体6に配置された駆動部34により駆動される。循環ポンプ30として、低コストでメンテナンス性に優れた非容積式ポンプを用いるのが好ましい。更に詳細には、渦巻ポンプをはじめとする遠心ポンプや、軸流ポンプをはじめとするプロペラポンプを採用することができる。
【0028】
ポンプ本体32は蓄液領域10内に位置し、吸込口32Bが蓄液領域10に蓄えられた液体の中に開口している。ポンプ本体32の吐出口には、ポンプ出側配管38が接続されている。ポンプ出側配管38は、ポンプ本体32の吐出口から蓄液領域10に蓄えられた液体の液面より上方まで延び、その後水平方向に延び、少し下方に曲がって終端している。少し下方に曲がって終端したポンプ出側配管38の出側端部に、給液口38Aが設けられている。
【0029】
給液口38Aは、平面視で、蓄液領域10の循環ポンプ30が配置された側の端部と反対側の端部近傍に配置されている。つまり、ポンプ出側配管38の給液口38Aは、循環ポンプ30の吸込口30Bから離間した位置に配置されている。後述するように、解凍を行う食品Gは、平面視で循環ポンプ30の吸込口32Bと給液口38Aとの間に配置される。
【0030】
吸込口32Bからポンプ本体32に吸い込まれた液体は、ポンプ出側配管38内を流れて、給液口38Aから蓄液領域10内の液体の液面に向けて流下する。蓄液領域10内に流下した液体は、ポンプ本体32の吸込口32B側に流れて、再び吸込口32Bからポンプ本体32に吸い込まれる。これにより、蓄液領域10内の液体が循環する。
【0031】
食品Gを、循環ポンプ30(ポンプ本体32)の吸込口32Bとポンプ出側配管38給液口38Aとの間に配置することにより、循環する液体の流れの中に食品Gを配置できる。食品Gを液体で解凍する場合、液体が流動する場合には、停止している場合に比べて、液体と食品Gとの間の熱伝達率を向上させることができる。特に、液面より上方の給液口38Aから液面に向けて液体が流下するので、液体の流動を促進させて、熱伝達率の向上を図ることができる。
【0032】
本実施形態では、蓄液領域10に蓄えられた液体の液面より上方に位置するポンプ出側配管38の給液口38Aから、液体が液面に向かって流下するようになっているが、これに限られるものではない。ポンプ出側配管38の給液口38Aが、蓄液領域10内の液体の中に開口している場合もあり得る。この場合でも、食品Gを、循環ポンプ30(ポンプ本体32)の吸込口32Bとポンプ出側配管38給液口38Aとの間に配置することにより、循環する液体の流れの中に食品Gを配置できる。
【0033】
<駆動筐体>
駆動筐体6の内部には、電動モータである循環ポンプ30の駆動部34が配置されている。駆動部34の駆動軸には、マグネットカップリング36の駆動部側部分36Bが取り付けられている。蓄液筐体4が駆動筐体6に取り付けられたとき、駆動部34の駆動軸と、ポンプ本体32のインペラ32Aの回転軸とが同軸上に並ぶように配置されている。駆動部34は、冷蔵庫100の電源部から電力が供給される。
【0034】
駆動筐体6の上部には、挿入部6Aが形成されている。蓄液筐体4を駆動筐体6に取り付けるとき、装入部6Aが蓄液筐体4に設けられたガイド孔に挿入される。これにより、蓄液筐体4を駆動筐体6側に押し込むとき、同時に位置決めを行うことができる。蓄液筐体4の当接面4Bと駆動筐体6の当接面4Bとが当接したとき、スナップ係合機構により、蓄液筐体4及び駆動筐体6が固定される。スナップ係合機構の係合部を押圧操作することにより、蓄液筐体4及び駆動筐体6の係合を解除し、蓄液筐体4を駆動筐体6から容易に取り外すことができる。
【0035】
<マグネットカップリング>
図2は、蓄液筐体4が駆動筐体6に取り付けられて、マグネットカップリング36のポンプ本体側部分36A及び駆動部側部分36Bが駆動伝達状態になっていることころを示す。ポンプ本体32のインペラ32Aの回転軸に取り付けられたマネットカップリング36のポンプ本体側部分36Aは磁性を有する。駆動部34の駆動軸に取り付けられたマグネットカップリング36の駆動部側部分36Bは、ポンプ本体側部分36AとSN逆の極性の磁性を有する。これにより、ポンプ本体32のインペラ32Aの回転軸には、ポンプ本体側部分36A及び駆動部側部分36Bの間の磁力により、駆動部34の駆動力が非接触な状態で伝達される。
【0036】
図2に示す状態から、蓄液筐体4を、略水平に駆動筐体6から離間する方向(図面で左側)に移動させることにより、蓄液筐体4を駆動筐体6から取り外すとともに、マグネットカップリング36を構成するポンプ本体側部分36Aと駆動部側部分36Bとを離間させることができる。一方、取り外された蓄液筐体4を、略水平に駆動筐体6に近接する方向(図面で右側)に移動させることにより、蓄液筐体4を駆動筐体6に取り付けるとともに、マグネットカップリング36を駆動伝達状態に配置することができる。
【0037】
<加熱部材>
蓄液領域10内の液体は食品Gに接触したとき、食品Gに融解熱を与えるので温度が低下する。そのまま液体の循環を継続すると、液体の温度が低下していき、解凍の効率が低下する。本実施形態の解凍装置2では、蓄液領域10内の液体を加熱する加熱部材20を備える。加熱部材20の発熱部材としては、コードヒータ、ペルチェ素子、PCT(Positive Temperature Coefficient)ヒータを例示できる。本実施形態に係る加熱部材20は、シート状に形成されている。
【0038】
特に、本実施形態では、蓄液筐体4の外面(下面)にシート状の金属製の伝熱促進部材22が取り付けられ、伝熱促進部材22の外面にシート状の加熱部材20が取り付けられている。伝熱促進部材22は、アルミニウム、アルミ合金をはじめとする熱伝導率の高い金属で形成するのが好ましい。
【0039】
蓄液筐体4の外面に加熱部材20を直接取り付けた場合には、高い密着性が得られず、伝熱におけるムラを生じる。よって、加熱部材20の熱を効率的に蓄液筐体4に伝えることができず、均一な加熱が困難となる。本実施形態では、蓄液筐体4及び加熱部材20の間に伝熱促進部材22を配置することにより、各部材の密着性を高めて、境界での熱抵抗を低下できる。これにより、加熱部材20の熱を効率的に蓄液筐体4に伝えることができ、均一な加熱が実現できる。より密着性を高めるため、締結部材等を用いて、加熱部材20を蓄液筐体4側に押しつけるように固定することが好ましい。
【0040】
このように、本実施形態によれば、蓄液筐体4と加熱部材20との間に金属製の伝熱促進部材22が配置されているので、加熱部材20で生じた熱をムラなく効率的に蓄液筐体4に伝え、延いては蓄液領域10内の液体に伝えることができる。これにより、蓄液領域内の液体を均一に効率的に加熱することができる。
【0041】
蓄液筐体4の蓄液領域10には、温度センサ40が配置されている。温度センサ40で測定した蓄液領域10内の液体の温度に基づいて、加熱部材20のオンオフ、加熱の強さを制御するようになっている。加熱部材20に電力を供給する電力線及び温度センサ40からの信号を送信する信号線等の端子C1が、蓄液筐体4の当接面4Bに配置されている。蓄液筐体4を駆動筐体6に取り付けると、蓄液筐体4の当接面4Bに配置された端子C1が、冷蔵庫100と電気的に繋がった駆動筐体6の当接面6Bに配置された端子C2と接続される。これにより、温度センサ40が測定した温度データが冷蔵庫100の制御部に送信され、制御部は、液体の温度に基づいて、加熱部材20に供給する電力を制御することができる。
【0042】
本実施形態では、蓄液筐体4の下面に加熱部材20を取り付けられているが、これに限られるものではない。蓄液筐体4の側面を含むその他の任意の面に加熱部材20を取り付けることができるし、複数の面に加熱部材20を取り付けることもできる。更に、蓄液筐体4の外面にシート状の加熱部材20を取り付けるのではなく、例えば、棒状のヒータを蓄液領域10内の液体の中に配置して、直接、液体を加熱することもできる。その他の任意の方法で液体を加熱することができる。
【0043】
<複数の凸部材>
食品Gを蓄液領域10内の液体の中に入れたとき、食品Gは、重力で蓄液筐体4の底面4Cに接するように沈下する。その場合、特に、加熱部材20に接触する領域では温度が上がるので、食品Gの解凍ムラが生じる虞がある。そこで、本実施形態に係る解凍装置2では、食品Gが蓄液筐体4の底面4Cに直接当たらないようにするための支え形状を設けている。
【0044】
支え形状の具体例として、本実施形態に係る解凍装置2では、
図3に示すように、平面視で、蓄液筐体4の底面4Cに所定の間隔をあけて一定の方向に延びる複数の凸部材12が形成されている。蓄液筐体4の底面4Cより高い凸部材12の上面で、食品Gを支持することができる。
【0045】
凸部材12が延びる方向は、ポンプ出側配管38の給液口38Aから循環ポンプ30の吸込口32B側に流れる液体の流れに沿った方向が好ましい。
図3の点線の矢印で模式的に示すように、隣接する凸部材12の間の食品Gの下面と底面4Cとの間の領域に液体が流れるようになっている。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、食品Gが、加熱部材20が取り付けられた蓄液筐体4の底面4Cに接しないので、解凍時の加熱ムラが生じるのを防ぐことができる。更に、隣接する凸部材12の間の食品Gの下面と蓄液筐体4の底面4Cとの間の領域に液体を流すことができるので、食品Gの上方や側方に加えて、下方にも液体を流して、食品Gに全周から熱を加えて効率的に解凍できる。
【0047】
(本発明の1つの実施形態に係る解凍装置を備えた冷蔵庫)
冷蔵庫100では、冷蔵室102及び冷凍室104を備え、冷蔵室102及び冷凍室104の後ろ側の冷却流路に、蒸発器106やファン108が配置されている。蒸発器106は、圧縮機110により冷媒が循環する冷却サイクルによって冷却される。本実施形態に係る解凍装置2は、冷蔵庫100の冷蔵室102内に配置されている。
【0048】
ファン108により庫内の気体が流動し、冷蔵室ダンパを開にすることにより、蒸発器106を通過して冷却された気体が冷蔵室102に流入する。冷蔵室102内に配置された解凍装置2は、冷蔵温度(例えば、2℃~6℃)の環境下に置かれている。
【0049】
(冷蔵庫の制御システム)
図5は、
図4に示す冷蔵庫100の制御システムの一例を示すブロック図である。図示した制御部60は、冷蔵庫100の制御装置の一部を構成し、冷蔵室102や冷凍室104の冷却を行うため、圧縮機110、ファン108等を制御する。更に、蓄液筐体4側の端子C1と駆動筐体6側の端子C2とが電気的に接続されている場合には、解凍装置2の循環ポンプ30の制御を行って、蓄液領域10内の液体の循環のオンオフ切替や、液体の循環速度の変更を行うことができる。また、温度センサ40からの測定温度に基づいて、加熱部材20の制御を行って、加熱部材20の稼働のオンオフ切替や、液加熱部材20による加熱量の変更を行うことができる。
【0050】
制御部60は、蓄液筐体4側の端子C1と駆動筐体6側の端子C2が電気的に接続されているか否か判別できる。蓄液筐体4側の端子及び駆動筐体6側の端子の接続の可否かの判別は、検出端子から検出信号を発信する方法、端子間抵抗の変化を検出する方法をはじめとする任意の方法を採用できる。制御部60は、蓄液筐体4側の端子及び駆動筐体6側の端子の接続が確認されとき、操作パネルからの操作信号に基づいて、解凍装置2の稼働制御を行う。
【0051】
(解凍装置を用いた食品の解凍方法)
次に、本実施形態に係る解凍装置2を用いて食品Gを解凍する方法を説明する。
まず、冷蔵室102の扉をあけて、蓄液筐体4及び駆動筐体6を固定していたスナップ係合を外して、蓄液筐体4を引き出す。これにより、蓄液筐体4を容易に庫外へ取り出すことができる。取り出した蓄液筐体4の上部の蓋4Aを取り外して、上部の開口から蓄液筐体4の蓄液領域10へ液体として水道水を注ぎ入れる。
【0052】
蓄液領域10へ所定量の液体が蓄えられた後、包装部材で覆われた冷凍された食品Gを、蓄液領域10に蓄えられた液体の中に入れ、蓋4Aを閉じる。そして、冷蔵室102の扉を開けて、蓄液筐体4を押し込んで解凍装置2の駆動筐体6に取り付ける。蓄液筐体4を押し込んでいくと、蓄液筐体4に設けられたガイド孔に駆動筐体6の挿入部6Aが挿入され、位置決めが行なわれながら、蓄液筐体4の当接面4Bが駆動筐体6の当接面4Bに当接する。このとき、スナップ係合機構により、蓄液筐体4及び駆動筐体6が固定される。この状態で、マグネットカップリング36が駆動伝達状態となり、蓄液筐体4側の端子C1と駆動筐体6側の端子C2が電気的に接続された状態となる。冷蔵庫100の制御部60は、蓄液筐体4側の端子C1と駆動筐体6側の端子C2が電気的に接続されていることを確認する。
【0053】
使用者が冷蔵庫100の操作パネルを操作して、解凍開始の信号を送信すると、冷蔵庫100の制御部60は、循環ポンプ30の駆動部34に電力を供給して駆動を開始する。これにより、蓄液領域10に内の液体が循環する。そして、温度センサ40による測定温度に基づいて、液体の温度が5℃以上10℃以下の範囲となるように加熱部材20の給電を制御する。
【0054】
液体の温度が5℃未満となると、解凍速度が低下する。一方、液体の温度が20℃以上となると、解凍した食品のドリップ量が増え品質低下の問題が生じる。本実施形態に係る解凍装置2では、常に5℃以上10℃以下の温度範囲の液体を循環させることにより、解凍する食品Gの品質を保持しながら、短時間に効率的に解凍を行うことができる。
【0055】
短時間に解凍を行う場合には、液体の温度を10℃近傍、例えば、8℃以上10℃以下の範囲内に制御するのが好ましい。一方、食品Gの鮮度を重視する場合には、液体の温度を5℃近傍、例えば、5℃以上7℃以下の範囲内に制御するのが好ましい。これに合わせて、循環ポンプ30の吐出量も調整することもできる。
【0056】
加熱部材20や循環ポンプ30の制御で、蓄液領域10内の液体の温度や液体の流れる速度を調整することにより、所望の解凍速度に調整することができる。例えば、操作パネルを用いて、「急速解凍15分」、「通常1時間」、「よりおいしく解凍4時間」といった複数の解凍パターンの中から、所望の解凍パターンを選択できるようにすることもできる。また、解凍が終了すると、解凍完了をブザーやランプ、音声等で報知したり、使用者の携帯端末に報知することもできる。
【0057】
制御部60は、設定の時間が経過すると、循環ポンプ30及び加熱部材20への給電を停止して、解凍処理を終了し、所定の報知処理を行う。解凍装置2は、冷蔵庫100の冷蔵室102内に配置されている。冷蔵室102の温度は2℃~6℃程度なので、蓄液領域10内の液体の温度(例えば、5℃~10℃)も同様に維持される、よって、解凍された食品Gを、品質を保ったまま保存することができる。
【0058】
解凍処理の制御は、時間で管理する場合に限られず、例えば、温度センサ40による測定温度に基づいて制御することもできる。食品Gの解凍が終わると、液体が奪われる融解熱量が減少するので、液体の温度が上昇する傾向を示す。よって、液体の温度上昇の勾配が所定の閾値を越えたとき、解凍処理を終了するように制御することもできる。更に、食品Gの表面温度を直接計測する赤外線センサを備えて、食品Gの表面温度に基づいて、解凍処理を終了する制御を行うこともできる。
【0059】
一方、様々な試験や経験で、食品Gの品質を保ちながら解凍可能な液体の温度や液体の流れる速度が把握できている場合には、よりシンプルな制御もあり得る。蓄液領域10内の液体の温度を測定する温度センサ40を備えず、解凍開始時に加熱部材20及び循環ポンプ30をオンにし、所定の時間が経過したときに、加熱部材20及び循環ポンプ30をオフにして解凍を終了する制御もあり得る。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る解凍装置2は、解凍すべき食品Gを収容するとともに液体を蓄える蓄液領域10を有する蓄液筐体4と、蓄液領域10内の液体を循環させる循環ポンプ30と、蓄液領域10内の液体を加熱する加熱部材20と、を備え、加熱部材20により所定の温度となり循環ポンプ30により流動した蓄液領域10内の液体により食品Gが解凍される。
【0061】
本実施形態によれば、蓄液領域10内の液体の中に配置された食品Gが、直接または包装部材を介して、加熱部材20により加熱され循環ポンプ30により流動した蓄液領域10内の液体との間の熱伝達で解凍される。食品Gを解凍するため、食品Gの周囲の液体の温度は低下するが、液体は流動しているので、温度が下がった液体が食品Gの周囲に留まることなく、加熱部材20で加熱された液体を食品Gの周囲に供給できる。循環ポンプ30により液体が循環しているので、多量の液体を使うことなく、液体の流れにより食品Gとの間の熱伝達を促進できる。
【0062】
よって、シンプルな構造ながら、短時間に解凍を行うことができる。更に、加熱部材20により適切に加熱を行って、液体の温度を常に解凍に適した温度(例えば、5℃~10℃)に保つことができるので、解凍時に食品Gのドリップの発生を抑制して品質を保つことができる。これにより、食品Gの品質を保ちながら短時間に解凍が可能なシンプルな構造の解凍装置を提供できる。
【0063】
特に、食品Gが、循環ポンプ30(ポンプ本体32)の吸込口32Bと給液口38Aとの間に配置されているので、循環する液体の流れにより食品Gを効率的に解凍することができる。
【0064】
本実施形態に係る解凍装置2を備えた冷蔵庫100では、解凍装置2が冷蔵室102内に配置されるので、解凍された食品Gが配置された蓄液領域10内の液体の温度を、引き続き適切な冷蔵温度に保つことができるので、食品Gの品質を保ったまま保存することができる。
【0065】
(本発明のその他の実施形態に係る解凍装置)
図6は、冷蔵庫100とは個別の装置の本発明のその他の実施形態に係る解凍装置2’を模式的に示す側面断面図である。
図6に示す解凍装置2’は、単独な解凍装置として存在する。このため、解凍後に解凍された食品Gを冷蔵温度で保管できるようにするため、蓄液領域10内の液体を冷却する機能を有する部材24を備えている。本実施形態では、ペルチェ素子による加熱・冷却部材24を備える。加熱・冷却部材24により、蓄液領域10に蓄えられた液体を加熱及び冷却することができる。
【0066】
本実施形態では、蓄液筐体4の下面と側面にシート状の加熱・冷却部材24が取り付けられている。蓄液筐体4と加熱・冷却部材24との間には、上記と同様に、シート状の伝熱促進部材22が配置されている。これにより、解凍が終了した後、例えば、蓄液領域10内の液体を5℃前後の温度に冷却して、液体の中の食品Gを、品質を保ちながら保管することができる。上記においては、加熱・冷却部材24を備えている例を示したが、これに限られるものではない。蓄液領域10内の液体を加熱する部材と、冷却する部材とを個別に備える場合あり得る。例えば、圧縮機電動機により冷却する場合もあり得る。
【0067】
解凍装置2’は、循環ポンプ30を制御し、温度センサ40による測定温度に基づいて加熱・冷却部材24を制御する制御部を備える。解凍処理、報知をはじめとするその他の処理のための構造や制御については、上記と同様であり、更なる説明は省略する。
【0068】
以上のように、本実子形態に係る解凍装置2’は、冷蔵庫100とは個別の装置であって、上記の解凍装置2の構成に加えて、蓄液領域10内の液体を冷却する機能を有する部材24を備え、解凍後の食品Gが冷蔵温度の液体の中に保存されるようになっている。
【0069】
本実施形態によれば、加熱部材24で加熱された液体を用いて食品Gを効率的に解凍できるとともに、液体を冷却する部材24で液体を冷蔵温度に冷却して、解凍後の食品Gを冷蔵温度の液体の中に保存することができる。これにより、食品Gを解凍するだけでなく、解凍された食品Gを、品質を保ったまま保存することができる。
【0070】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0071】
2 解凍装置
4 蓄液筐体
4A 蓋
4B 当接面
4C 底面
6 駆動筐体
6A 装入部
6B 当接面
10 蓄液領域
12 凸部材
20 加熱部材
22 伝熱促進部材
24 加熱・冷却部材
30 循環ポンプ
32 ポンプ本体
32A インペラ
32B 吸込口
34 駆動部
36 マグネットカップリング
36A ポンプ本体側部分
36B 駆動部側部分
38 ポンプ出側配管
38A 給液口
40 温度センサ
100 冷蔵庫
102 冷蔵室
104 冷凍室
106 蒸発器
108 ファン
110 圧縮機
G 食品
C1,C2 端子