(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161954
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】半導体モジュール及び半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231031BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231031BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072621
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 博可
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瑛基
(72)【発明者】
【氏名】木村 渉
(57)【要約】
【課題】端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体モジュール1は、ソース電極12、ドレイン電極(図示せず。)及びゲート電極16を有する半導体チップ10と、ソース電極12と接合された接合部22、接合部22から突出するソース端子24及びソース端子24とは別に接合部22から突出するケルビンソース端子26,27を有するクリップ20と、半導体チップ10を封止する封止樹脂50とを備え、ケルビンソース端子26,27は、接合部22からソース端子24とは異なる方向に突出する吊りピンでもある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極及び第3電極を有する半導体チップと、
前記第1電極と接合された接合部、前記接合部から突出する第1端子及び前記第1端子とは別に前記接合部から突出する第2端子を有するクリップと、
前記半導体チップを封止する封止樹脂とを備え、
前記第2端子は、前記接合部から前記第1端子とは異なる方向に突出する吊りピンでもあることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
前記第2端子の断面積は、前記第1端子の断面積と同じ又はより小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
平面視したとき、前記第2端子の幅は、前記第1端子の幅と同じ又はより狭いことを特徴とする請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第2端子として、第1の方向に向かって突出する第1の第2端子と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に向かって突出する第2の第2端子とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項5】
平面視したとき、前記第1の第2端子及び前記第2の第2端子は、前記第1端子が最終的に延出する方向に対して垂直な方向に向かって延出することを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
平面視したとき、前記第1の第2端子及び前記第2の第2端子は同一直線上にあることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
平面視したとき、前記第1端子と前記第2端子とは、前記接合部の重心を通過しかつ前記第1端子の突出方向とは垂直な仮想線により区分される前記接合部の別々の側を起点として前記接合部から突出することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項8】
接合部及び前記接合部から突出する第1端子を有し、前記接合部から前記第1端子とは異なる方向に突出する吊りピンにより外枠に固定されているクリップを、第1電極、第2電極及び第3電極を有する半導体チップの前記第1電極側に載置するクリップ載置工程と、
前記接合部と前記第1電極とを接合する接合工程と、
前記半導体チップを封止樹脂により封止する樹脂封止工程と、
前記封止樹脂から突出する部分が残るように前記吊りピンをカットして、前記接合部から前記第1端子とは異なる方向に突出する第2端子を形成する第2端子形成工程とを含むことを特徴とする半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール及び半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールの技術分野においては、大電流化及び高速化が常に求められている。一方、パワー半導体モジュールのうちMOSFETを用いるものはソース端子、ドレイン端子及びゲート端子の3種類の端子を有するが、大電流化及び高速化の進展によりソース端子における寄生インダクタンスの影響が無視できなくなってきている。このため、寄生インダクタンスの影響を低減することを目的として、ソース端子の他にケルビンソース端子を有する半導体モジュールが従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図17は、従来の半導体モジュール900の平面図である。
従来の半導体モジュール900は、
図17に示すように、ソース電極912、ドレイン電極(図示せず。)及びゲート電極916を有する半導体チップ910(MOSFET)と、クリップ920(ソースコネクタ)と、ドレイン端子934を有するダイパッドフレーム930と、ゲートクリップ(ゲートコネクタ)940と、ソース端子928と、ケルビンソース端子929と、ゲート端子942とを備える。また、半導体モジュール900は、各端子の末端以外は封止樹脂(図示せず。)により封止されている。クリップ920は、ソース電極912と接合されたチップ接合部922、チップ接合部922から突出しソース端子928と接合されているソース端子接合部924及びソース端子接合部924とは別にチップ接合部922から突出しケルビンソース端子929と接合されているケルビンソース端子接合部926を有する。
【0004】
従来の半導体モジュール900によれば、ケルビンソース端子929を備えるため、ソース端子928における寄生インダクタンスの影響を低減し、誤作動やノイズの発生を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の半導体モジュール900には、ケルビンソース端子を有しない半導体モジュール(以下、「一般的な半導体モジュール」という。)と比較して、必須の端子(ケルビンソース端子以外の端子。特にソース端子。)の減少又はパッケージサイズの拡大が必要となるという問題がある。例えば、従来の半導体モジュール900は、一般的な半導体モジュールでは3本であったソース端子928のうち1本をケルビンソース端子929として使用するものであるとも言える。つまり、一般的な半導体モジュールと比較して、従来の半導体モジュール900ではソース端子928が2/3に減少しているため、単純計算でソース端子928全体の電流容量は2/3に減少し、ソース配線抵抗が1.5倍に増加してしまう。これを避けるためにはソース端子の数を維持したままケルビンソース端子を増設することが考えられるが、この場合には端子が増加した分、半導体モジュールのパッケージサイズを拡大せざるを得なくなることが多い。この問題は、パッケージサイズを容易には拡大できない小型大電流のパワー半導体モジュールにおいて特に影響が大きくなる。
【0007】
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュールを提供することを目的とする。また、このような半導体モジュールの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体モジュールは、第1電極、第2電極及び第3電極を有する半導体チップと、前記第1電極と接合された接合部、前記接合部から突出する第1端子及び前記第1端子とは別に前記接合部から突出する第2端子を有するクリップと、前記半導体チップを封止する封止樹脂とを備え、前記第2端子は、前記接合部から前記第1端子とは異なる方向に突出する吊りピンでもあることを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体モジュールの製造方法は、接合部及び前記接合部から突出する第1端子を有し、前記接合部から前記第1端子とは異なる方向に突出する吊りピンによりフレームに固定されているクリップを、第1電極、第2電極及び第3電極を有する半導体チップの前記第1電極側に載置するクリップ載置工程と、前記接合部と前記第1電極とを接合する接合工程と、前記半導体チップを封止樹脂により封止する樹脂封止工程と、前記封止樹脂から突出する部分が残るように前記吊りピンをカットして、前記接合部から前記第1端子とは異なる方向に突出する第2端子を形成する第2端子形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
ところで、クリップを備える半導体モジュールを製造する際には、吊りピンと呼ばれる構造が一般的に用いられる(後述する実施形態1及び
図7参照。)。吊りピンは枠状の外枠にクリップを固定するものであり、一般的には金属板から外枠及びクリップとともに形成される。半導体チップとクリップとを接合する工程や半導体チップを樹脂封止する工程を、吊りピンで外枠にクリップを固定した状態で実施することにより、クリップの位置ずれ、傾き、変形等を抑制することができる。一般的な半導体モジュールの製造方法においては、吊りピンは樹脂封止後、封止樹脂から突出している部分全体がカットされる。このため、吊りピンを用いて製造した半導体モジュールの封止樹脂内には吊りピンが残るが、当該吊りピンは電気的には何の役目も果たさない。本発明の発明者らは吊りピンを有効利用できる可能性を見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の半導体モジュールによれば、第2端子は、接合部から第1端子とは異なる方向に突出する吊りピンでもあるため、従来から存在しながら活用されてこなかった吊りピンを第2端子として活用できる。その結果、本発明の半導体モジュールは、端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュールとなる。
【0012】
本発明の半導体モジュールの製造方法は、封止樹脂から突出する部分が残るように吊りピンをカットして、接合部から第1端子とは異なる方向に突出する第2端子を形成する第2端子形成工程を含むため、端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュールを製造することができる半導体モジュールの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係る半導体モジュール1の斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る半導体モジュール1の六面図である。
【
図3】実施形態1に係る半導体モジュール1の内部構造を説明するために示す平面図である。
【
図4】実施形態1におけるクリップ20の六面図である。
【
図5】実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法のフローチャートである。
【
図6】実施形態1における半導体チップ載置工程S10を説明するために示す図である。
【
図7】実施形態1におけるクリップ載置工程S20を説明するために示す図である。
【
図8】実施形態1における接合工程S30の後、外枠F1を外した状態を説明するために示す図である。
【
図9】実施形態1における樹脂封止工程S40を説明するために示す図である。
【
図10】実施形態1におけるケルビンソース端子形成工程S50(第2端子形成工程)を説明するために示す図である。
【
図11】実施形態2に係る半導体モジュール2の斜視図である。
【
図12】実施形態2に係る半導体モジュール2の六面図である。
【
図13】実施形態2に係る半導体モジュール2の内部構造を説明するために示す平面図である。
【
図14】実施形態2におけるクリップ20a,20bの六面図である。
【
図15】変形例1に係る半導体モジュール3の六面図である。
【
図16】変形例2に係る半導体モジュール4の六面図である。
【
図17】従来の半導体モジュール900の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の半導体モジュール及び半導体モジュールの製造方法について、図に示す各実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
[実施形態1]
1.半導体モジュール1
まず、実施形態1に係る半導体モジュール1について説明する。
図1は、実施形態1に係る半導体モジュール1の斜視図である。
図2は、実施形態1に係る半導体モジュール1の六面図である。
図2(a)は半導体モジュール1の正面図であり、
図2(b)は半導体モジュール1の背面図であり、
図2(c)は半導体モジュール1の平面図であり、
図2(d)は半導体モジュール1の底面図であり、
図2(e)は半導体モジュール1の左側面図であり、
図2(f)は半導体モジュール1の右側面図である。
図3は、実施形態1に係る半導体モジュール1の内部構造を説明するために示す平面図である。
図3においては、封止樹脂50の外形形状を破線で図示している。
図4は、実施形態1におけるクリップ20の六面図である。
図4(a)はクリップ20の正面図であり、
図4(b)はクリップ20の背面図であり、
図4(c)はクリップ20の平面図であり、
図4(d)はクリップ20の底面図であり、
図4(e)はクリップ20の左側面図であり、
図4(f)はクリップ20の右側面図である。
【0016】
実施形態1に係る半導体モジュール1は、
図1~
図3に示すように、半導体チップ10と、クリップ20と、ダイパッドフレーム30と、ゲートクリップ40と、封止樹脂50とを備える。なお、一般的な事項であるため都度の説明及び図示は省略するが、各構成要素における電気的な導通が必要な部分は、はんだ等の導電性接合材により接合されている。
【0017】
半導体チップ10は、MOSFETである。半導体チップ10は、
図3に示すように、ソース電極12(第1電極)、ドレイン電極(第2電極)(図示せず。)及びゲート電極16(第3電極)を有する。
【0018】
クリップ20は、
図3及び
図4に示すように、ソース電極12(第1電極)と接合された接合部22、接合部22から突出するソース端子24(第1端子)及びソース端子24(第1端子)とは別に接合部22から突出するケルビンソース端子26,27(第2端子)を有する。ケルビンソース端子26,27(第2端子)は、接合部22からソース端子24(第1端子)とは異なる方向に突出する吊りピンでもある。
【0019】
クリップ20の接合部22は、ソース電極12に対応する矩形の部分である。ソース端子24及びケルビンソース端子26,27は、同じ側(底面側)に向かって折り曲げられている。半導体モジュール1におけるソース端子24は、3本存在する。3本のソース端子24は、平面視したとき、最終的には(末端は)同じ方向に向かって延出する。
【0020】
ケルビンソース端子26,27(第2端子)の断面積は、ソース端子24(第1端子)の断面積より小さい。また、半導体モジュール1を平面視したとき、ケルビンソース端子26,27(第2端子)の幅は、ソース端子24(第1端子)の幅より狭い。なお、「ケルビンソース端子(第2端子)の断面積」の比較対象は、「1本のソース端子(第1端子)の断面積」であり、「ソース端子(第1端子全体)の断面積」ではない。幅についても同様である。
【0021】
半導体モジュール1は、ケルビンソース端子26,27(第2端子)として、第1の方向に向かって突出する第1のケルビンソース端子26(第2端子)と、第1の方向とは反対の第2の方向に向かって突出する第2のケルビンソース端子27(第2端子)とを有する。半導体モジュール1を平面視したとき、第1のケルビンソース端子26(第2端子)及び第2のケルビンソース端子27(第2端子)は、ソース端子24(第1端子)が最終的に延出する方向に対して垂直な方向に向かって延出する。また、半導体モジュール1を平面視したとき、第1のケルビンソース端子26(第2端子)及び第2のケルビンソース端子27(第2端子)は同一直線上にある。
【0022】
「第1端子が最終的に延出する方向」とは、第1端子の末端が延出する方向のことをいう。なお、半導体モジュール1のように第1端子(ソース端子24)が複数存在する場合には、少なくとも1つの第1端子が最終的に延出する方向に対して第1の第2端子及び第2の第2端子(ケルビンソース端子26,27)が垂直な方向に向かって延出していれば、上記条件を満たすものとする。
【0023】
図3に示すように、半導体モジュール1を平面視したとき、ソース端子24(第1端子)とケルビンソース端子26,27(第2端子)とは、接合部22の重心Cを通過しかつソース端子24(第1端子)の突出方向とは垂直な仮想線Vにより区分される接合部22の別々の側を起点として接合部22から突出する。この場合の「接合部の重心」とは、平面視したときの接合部の形状から導出される仮想的な重心である。
【0024】
ダイパッドフレーム30は、半導体チップ10を載置するための部材である。ダイパッドフレーム30は、半導体チップ10のドレイン電極と接合されたダイパッド(図示せず。)及びドレイン端子34を有する。
【0025】
ゲートクリップ40は、ゲート電極16と接合されたゲート電極接合部42及びゲート電極接合部42から突出するゲート端子44を有する。
【0026】
封止樹脂50は、半導体チップ10を封止する。
図1及び
図2に示すように、封止樹脂50からは、ソース端子24、ケルビンソース端子26,27、ドレイン端子34、ゲート端子44及びダイパッドフレーム30の底面が露出している。なお、ダイパッドフレーム30の底面が封止樹脂50から露出しているのは主に放熱のためであり、放熱に問題がない場合には、ダイパッドフレーム30の底面は必ずしも封止樹脂50から露出していなくてもよい。
【0027】
2.半導体モジュールの製造方法
次に、実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法について説明する。
図5は、実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法のフローチャートである。
図6は、実施形態1における半導体チップ載置工程S10を説明するために示す図である。
図6(a)は、外枠F1にピンFP1を介して固定されているダイパッドフレーム30の様子を示す図であり、
図6(b)はダイパッドフレーム30に半導体チップ10を載置した後の様子を示す図である。なお、符号の表示が煩雑になることを避けるため、
図6においては、半導体モジュール1に関する構成要素について、最も紙面左上の1つにのみ符号を表示する。後述する
図7~
図10においても同様である。
図7は、実施形態1におけるクリップ載置工程S20を説明するために示す図である。
図7(a)は外枠F2に吊りピンFP2を介して固定されているクリップ20の様子を示す図であり、
図7(b)は半導体チップ10にクリップ20を載置した後の様子を示す図である。
図8は、実施形態1における接合工程S30の後、外枠F1を外した状態を説明するために示す図である。
図9は、実施形態1における樹脂封止工程S40を説明するために示す図である。
図10は、実施形態1におけるケルビンソース端子形成工程S50(第2端子形成工程)を説明するために示す図である。
図10(a)は吊りピンFP2をカットした直後の様子を示す図であり、
図10(b)は吊りピンFP2をケルビンソース端子26,27とした状態を示す図である。
【0028】
実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法は、
図5に示すように、半導体チップ載置工程S10と、クリップ載置工程S20と、接合工程S30と、樹脂封止工程S40と、ケルビンソース端子形成工程S50(第2端子形成工程)とを含む。以下、各工程について説明する。
【0029】
半導体チップ載置工程S10は、ダイパッドフレーム30に半導体チップ10を載置する工程である。半導体チップ載置工程S10においては、まず、外枠F1にピンFP1を介して固定されているダイパッドフレーム30を準備する(
図6(a)参照。)。なお、
図6においては、1つの外枠F1に9個のダイパッドフレーム30が固定されているが、これはあくまで例示である。外枠F1に固定されているダイパッドフレーム30の数、つまり、同時に製造する半導体モジュール1の数は、8個以下であってもよく、10個以上であってもよい。また、
図6においては、1つのダイパッドフレーム30につき4本のピンFP1が接続されているが、これも例示である。ダイパッドフレーム30に接続されているピンFP1の数は3本以下であってもよく、5本以上であってもよい。
【0030】
次に、ダイパッドフレーム30に、導電性接合材又はその前駆体(例えば、はんだペースト。図示せず。)を介して、ソース電極12(第1電極)、ドレイン電極(第2電極)(図示せず。)及びゲート電極16(第3電極)を有する半導体チップ10を載置する(
図6(b)参照。)。当該載置は、ダイパッドフレーム30のダイパッドと半導体チップ10のドレイン電極との位置を合わせるように行う。
【0031】
クリップ載置工程S20は、接合部22及び接合部22から突出するソース端子24(第1端子)を有し、接合部22からソース端子24(第1端子)とは異なる方向に突出する吊りピンFP2により外枠に固定されているクリップ20を、半導体チップ10のソース電極12(第1電極)側に載置する工程である。
【0032】
クリップ載置工程S20においては、まず、外枠F2に吊りピンFP2を介して固定されているクリップ20を準備する(
図7(a)参照。)。クリップ20の数及び位置は、半導体チップ10の数及び位置に対応する。なお、クリップ載置工程S20で準備するクリップ20は、半導体モジュール1におけるクリップ20の最終的な形状と同じ形状である必要は無く、特に、ソース端子24の形状が整えられていなくてもよい。この場合、クリップ20の形状の整形は、接合工程S30や樹脂封止工程S40の後に実施することができる。次に、半導体チップ10に、導電性接合材又はその前駆体(例えば、はんだペースト。図示せず。)を介してクリップ20を載置する(
図7(b)参照。)。当該載置は、半導体チップ10のソース電極12とクリップ20の接合部22との位置を合わせるように行う。この時、外枠F1と外枠F2とを重ねるようにすることで、各構成要素の位置ずれや傾きを抑制できる。
【0033】
また、クリップ載置工程S20においては、ゲートクリップ40も半導体チップ10に載置する。つまり、半導体チップ10に、導電性接合材又はその前駆体(例えば、はんだペースト。図示せず。)を介してゲートクリップ40を載置する。当該載置は、半導体チップ10のゲート電極16とゲートクリップ40のゲート電極接合部42との位置を合わせるように行う。なお、ゲートクリップ40は、吊りピンを介して外枠F2と接続されていてもよい。この場合、クリップ20の載置とゲートクリップ40の載置とを同時に実施することができ、ゲートクリップ40の位置ずれや傾きも抑制できる。
【0034】
接合工程S30は、接合部22とソース電極12(第1電極)とを接合する工程である。加熱により溶融する導電性接合材又はその前駆体(例えば、はんだペースト)を用いる場合には、本工程は加熱及び冷却(リフロー)により実施することができる。接合工程S30においては、半導体モジュール1となる構成要素全体を加熱及び冷却することにより、半導体チップ10とダイパッドフレーム30との接合(ドレイン電極とダイパッドとの接合)及び半導体チップ10とゲートクリップ40との接合(ゲート電極16とゲート電極接合部42との接合)も同時に行う。その後、ピンFP1をダイパッドフレーム30側の根本から切断し、外枠F1を除去する(
図8参照。)。
【0035】
樹脂封止工程S40は、半導体チップ10を封止樹脂50により封止する工程である。樹脂封止工程S40においては、封止樹脂50からソース端子24、ケルビンソース端子26,27、ドレイン端子34、ゲート端子44及びダイパッドフレーム30の底面が露出するように樹脂封止を行う(
図9参照。)。樹脂封止工程S40は、例えば、所定の形状の金型(図示せず。)に吊りピンFP2ごと各構成要素をセットし、金型内に封止樹脂50を流し込んで硬化させることで実施できる。
【0036】
ケルビンソース端子形成工程S50(第2端子形成工程)は、封止樹脂50から突出する部分が残るように吊りピンFP2をカットして、接合部22からソース端子24(第1端子)とは異なる方向に突出するケルビンソース端子26,27(第2端子)を形成する工程である。外枠F2は、吊りピンFP2をカットした後に除去する(
図10(a)参照。)。カット後の吊りピンFP2は、適切な折り曲げ加工等を実施することにより、ケルビンソース端子26,27となる(
図10(b)参照。)。実施形態1においては、ケルビンソース端子形成工程S50を実施することにより、半導体モジュール1が完成する。
【0037】
3.実施形態1に係る半導体モジュール1及び半導体モジュールの製造方法の効果
実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、ケルビンソース端子26,27(第2端子)は、接合部22からソース端子24(第1端子)とは異なる方向に突出する吊りピンでもあるため、従来から存在しながら活用されてこなかった吊りピンをケルビンソース端子26,27(第2端子)として活用できる。その結果、実施形態1に係る半導体モジュール1は、端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュールとなる。
【0038】
また、実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、ケルビンソース端子26,27(第2端子)の断面積は、ソース端子24(第1端子)の断面積より小さいため、ソース端子24ほどの電流容量を必要としないケルビンソース端子26,27の断面積を適切なものとすることが可能となる。
【0039】
また、実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、平面視したとき、ケルビンソース端子26,27(第2端子)の幅は、ソース端子24(第1端子)の幅より狭いため、ソース端子24ほどの電流容量を必要としないケルビンソース端子26,27の幅を適切なものとすることが可能となる。
【0040】
また、実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、第1の方向に向かって突出する第1のケルビンソース端子26(第2端子)と、第1の方向とは反対の第2の方向に向かって突出する第2のケルビンソース端子27(第2端子)とを有するため、吊りピンとして好ましい突出方向をそのまま活用したケルビンソース端子26,27とすることが可能となる。
【0041】
また、実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、平面視したとき、第1のケルビンソース端子26(第2端子)及び第2のケルビンソース端子27(第2端子)は、ソース端子24(第1端子)が最終的に延出する方向に対して垂直な方向に向かって延出するため、バランス上好ましい吊りピンの延出方向をそのまま活用したケルビンソース端子26,27とすることが可能となる。
【0042】
また、実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、平面視したとき、第1のケルビンソース端子26(第2端子)及び第2のケルビンソース端子27(第2端子)は同一直線上にあるため、バランス上一層好ましい吊りピンの突出方向をそのまま活用したケルビンソース端子26,27とすることが可能となる。
【0043】
また、実施形態1に係る半導体モジュール1によれば、平面視したとき、ソース端子24(第1端子)とケルビンソース端子26,27(第2端子)とは、接合部22の重心Cを通過しかつソース端子24(第1端子)の突出方向とは垂直な仮想線Vにより区分される接合部22の別々の側を起点として接合部22から突出するため、ソース端子24の起点とケルビンソース端子26,27の起点との間の距離を十分に取ることが可能となる。
【0044】
実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法は、封止樹脂50から突出する部分が残るように吊りピンFP2をカットして、接合部からソース端子24(第1端子)とは異なる方向に突出するケルビンソース端子26,27(第2端子)を形成するケルビンソース端子形成工程S50(第2端子形成工程)を含むため、端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュールを製造することができる半導体モジュールの製造方法となる。
【0045】
[実施形態2]
図11は、実施形態2に係る半導体モジュール2の斜視図である。
図12は、実施形態2に係る半導体モジュール2の六面図である。
図12(a)は半導体モジュール2の正面図であり、
図12(b)は半導体モジュール2の背面図であり、
図12(c)は半導体モジュール2の平面図であり、
図12(d)は半導体モジュール2の底面図であり、
図12(e)は半導体モジュール2の左側面図であり、
図12(f)は半導体モジュール2の右側面図である。
図13は、実施形態2に係る半導体モジュール2の内部構造を説明するために示す平面図である。
図13においては、封止樹脂50の外形形状を破線で図示している。
図14は、実施形態2におけるクリップ20a,20bの六面図である。
図14(a)はクリップ20a,20bの正面図であり、
図14(b)はクリップ20a,20bの背面図であり、
図14(c)はクリップ20a,20bの平面図であり、
図14(d)はクリップ20a,20bの底面図であり、
図14(e)はクリップ20aの左側面図であり、
図14(f)はクリップ20aの右側面図であり、
図14(g)はクリップ20bの左側面図であり、
図14(h)はクリップ20bの右側面図である。
【0046】
実施形態2に係る半導体モジュール2は、基本的に実施形態1に係る半導体モジュール2と同様の構成を有するが、封止樹脂以外の構成要素をそれぞれ2つ備える点で実施形態1に係る半導体モジュール1の場合とは異なる。以下、半導体モジュール2における半導体モジュール1との相違点について説明する。
【0047】
実施形態2に係る半導体モジュール2は、
図11~
図13に示すように、半導体チップ10a,10bと、クリップ20a,20bと、ダイパッドフレーム30a,30bと、ゲートクリップ40a,40bと、封止樹脂50とを備える。封止樹脂50は実施形態1における封止樹脂50と同様のものであるため、説明を省略する。
【0048】
半導体チップ10aは、
図13に示すように、ソース電極12a(第1電極)、ドレイン電極(第2電極)(図示せず。)及びゲート電極16a(第3電極)を有する。半導体チップ10bは、ソース電極12b(第1電極)、ドレイン電極(第2電極)(図示せず。)及びゲート電極16b(第3電極)を有する。
【0049】
クリップ20aは、
図13及び
図14に示すように、接合部22a、ソース端子24a(第1端子)及びケルビンソース端子26a(第2端子)を有する。クリップ20bは、接合部22b、ソース端子24b(第1端子)及びケルビンソース端子26b(第2端子)を有する。ケルビンソース端子26a,26b(第2端子)は、接合部22a,22bからソース端子24a,24b(第1端子)とは異なる方向にそれぞれ突出する吊りピンでもある。
【0050】
ダイパッドフレーム30a,30bは、それぞれ半導体チップ10a,10bを載置するための部材である。ダイパッドフレーム30a,30bは、半導体チップ10a,10bのドレイン電極と接合されたダイパッド(図示せず。)及びドレイン端子34a,34bをそれぞれ有する。
【0051】
ゲートクリップ40a,40bは、ゲート電極16a,16bと接合されたゲート電極接合部42a,42b及びゲート電極接合部42a,42bから突出するゲート端子44a,44bをそれぞれ有する。
【0052】
図示及び詳しい説明は省略するが、実施形態2に係る半導体モジュール2は、実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法と基本的に同様の方法(つまり、吊りピンにより外枠に固定されているクリップを用いた製造方法)により製造することができる。
【0053】
実施形態2に係る半導体モジュール2は、封止樹脂以外の構成要素をそれぞれ2つ備える点で実施形態1に係る半導体モジュール1の場合とは異なるが、実施形態2に係る半導体モジュール2によれば、ケルビンソース端子26a,26b(第2端子)は、接合部22a,22bからソース端子24a,24b(第1端子)とは異なる方向に突出する吊りピンでもあるため、従来から存在しながら活用されてこなかった吊りピンをケルビンソース端子26a,26b(第2端子)として活用できる。その結果、実施形態2に係る半導体モジュール2は、実施形態1に係る半導体モジュール1と同様に、端子における寄生インダクタンスの影響を低減することが可能であり、かつ、寄生インダクタンスの影響の低減のために一般的な半導体モジュールと比較して必須の端子の減少及びパッケージサイズの拡大の必要がない半導体モジュールとなる。
【0054】
なお、実施形態2に係る半導体モジュール2は、実施形態1に係る半導体モジュール1が有する上記以外の効果のうち該当する効果も有する。
【0055】
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0056】
(1)上記各実施形態(後述する各変形例も含む。)において記載した形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0057】
(2)上記各実施形態におけるケルビンソース端子26,27,26a,26b(第2端子)の断面積は、ソース端子24,24a,24b(第1端子)の断面積より小さいものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。ケルビンソース端子(第2端子)の断面積は、ソース端子(第1端子)の断面積と同じとしてもよい。
【0058】
(3)上記各実施形態におけるケルビンソース端子26,27,26a,26b(第2端子)の幅は、ソース端子24,24a,24b(第1端子)の幅より狭いものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。ケルビンソース端子(第2端子)の幅は、ソース端子(第1端子)の幅と同じとしてもよい。
【0059】
(4)上記各実施形態における吊りピン(ケルビンソース端子26,27,26a,26b)の数は、1つの半導体モジュールにつき2本であったが、本発明はこれに限定されるものではない。吊りピン(ケルビンソース端子)は1つのクリップにつき最低1本あればよく、製造方法の都合等に合わせて任意の本数とすることができる。なお、1つのクリップに2本以上の吊りピンが存在する場合には、必ずしも全ての吊りピンを第2端子とする必要は無い。第2端子として使用しない吊りピンは端子化せずに除去してもよい。
【0060】
(5)上記各実施形態におけるケルビンソース端子26,27,26a,26bは、ソース端子24,24a,24bと同じ側に折り曲げられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図15は、変形例1に係る半導体モジュール3の六面図である。
図15(a)は正面図であり、
図15(b)は背面図であり、
図15(c)は平面図であり、
図15(d)は底面図であり、
図15(e)は左側面図であり、
図15(f)は右側面図である。第2端子(ケルビンソース端子)を折り曲げる向きはチップの用途等に応じて任意の向きとすることができ、例えば
図15に示すように、第2端子(ケルビンソース端子26c,27c)は第1端子(ソース端子24)とは反対の側に折り曲げられていてもよい。
【0061】
(6)上記各実施形態に係る半導体モジュール1,2においては、封止樹脂50からは、ソース端子24,24a,24b、ケルビンソース端子26,27,26a,26b、ドレイン端子34,34a,34b、ゲート端子44,44a,44b及びダイパッドフレーム30,30a,30bの底面が露出しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図16は、変形例2に係る半導体モジュール4の六面図である。
図16(a)は正面図であり、
図16(b)は背面図であり、
図16(c)は平面図であり、
図16(d)は底面図であり、
図16(e)は左側面図であり、
図16(f)は右側面図である。変形例2に係る半導体モジュール4においては、さらなる放熱を目的としてクリップ20cにおける接合部22cの上面(半導体チップ側とは反対側の面)も封止樹脂50から露出している。半導体モジュール4における接合部22cは実施形態1における接合部22よりも厚みがあるため、封止樹脂50から露出するようになる。本発明は、このような半導体モジュールにも適用可能である。
【0062】
(7)上記各実施形態における半導体チップ10,10a,10bはMOSFETであったが、本発明はこれに限定されるものではない。MOSFET以外の3端子系の半導体チップ(例えば、IGBT)を備える半導体モジュールにも本発明を適用することが可能である。
【0063】
(8)上記実施形態1に係る半導体モジュールの製造方法は、上記した半導体チップ載置工程S10を含むが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、外枠F1にピンFP1を介して固定されているダイパッドフレーム30を準備するとしたのは例示であり、外枠に固定されていないダイパッドフレームを準備してもよい。また、製造すべき半導体モジュールの構成によっては、上記したような半導体チップ載置工程を実施する必要がない場合も有りうる。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3,4…半導体モジュール、10,10a,10b…半導体チップ、12,12a,12b…ソース電極、16,16a,16b…ゲート電極、20,20a,20b…クリップ、22,22a,22b…接合部、24,24a,24b…ソース端子、26,26a,26b,26c,27,27c…ケルビンソース端子、30,30a,30b…ダイパッドフレーム、34,34a,34b…ドレイン端子、40,40a,40b…ゲートクリップ、42,42a,42b…ゲート電極接合部、44,44a,44b…ゲート端子、50,50a…封止樹脂、C…接合部の重心、F1,F2…外枠、FP1…ピン、FP2…吊りピン、V…仮想線