(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161968
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】イソシアヌレート骨格を有する新規ジカルボン酸およびジカルボン酸エステル
(51)【国際特許分類】
C07D 251/34 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C07D251/34 H CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072640
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(57)【要約】
【課題】ジカルボン酸モノマーから重合されるポリエステル、ポリアミド等の樹脂系へのイソシアヌレート骨格の導入は耐熱性、機械強度、耐湿性、電気特性等の特性発現の観点から望まれるところであるが、カルボキシ基を備えたイソシアヌレート化合物の報告例は限定的であった。本発明は、上記実情を踏まえ、イソシアヌレート骨格を有する新規ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルを提供することを課題としている。
【解決手段】下記式(1)に示す化合物により上記課題を解決できる。(ただし、式中、Aは直結しているか、または末端が炭素原子である2価の有機基であり、Rは水素原子または炭化水素基であり、R
1は水素原子または1価の有機基である。)
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される化合物。(ただし、式中、Aは直結しているか、または末端が炭素原子である2価の有機基であり、Rは水素原子または炭化水素基であり、R
1は水素原子または1価の有機基である。)
【化1】
【請求項2】
一般式(1)中のAが直結である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)中のRが水素原子または炭素数5以下の炭化水素基である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(1)中のR1が炭素数60以下の1価の炭化水素基である請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアヌレート骨格を有する新規ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イソシアヌレート化合物は樹脂材料の分野で樹脂改質剤や架橋剤として従来用いられてきた。リジッドでスタッキングが強い中心骨格を有していることから、樹脂材料に組み込むことで、従来にない物性を発現させることができ、例えば、機械強度や耐熱性、耐湿性、耐加水分解性などの向上が可能になる。
【0003】
特許文献1には、ポリフェニレンエーテルにイソシアヌレート系架橋剤を組み合わせることで、優れた電気特性を発揮することが示されている。特許文献2にはグリシジル基を有するイソシアヌレート化合物が開示されており、エポキシ樹脂と組み合わせることで、良好な耐熱性、機械特性を付与できることが記載されている。さらには、架橋剤、樹脂改質剤としてだけではなく、モノマーとして直接樹脂の主骨格にイソシアヌレート骨格を導入する事例も報告されている。
【0004】
特許文献3に記載のイソシアヌレート骨格を有するジアミン化合物はポリイミド樹脂の原料(モノマー)として用いることができ、ポリイミド骨格中に直接イソシアヌレート骨格を導入することで、従来にない物性が発現できることが期待される。また、該ジアミン化合物はエポキシ樹脂の硬化剤としての利用も可能である。
【0005】
特許文献4にも、イソシアヌレート骨格を有するジアミンモノマーが記載されており、当該モノマーを用いてなるポリイミドの液晶配向剤としての利用が示されており、イソシアヌレート骨格含有ポリイミド独自の物性が開示されている。このようにイソシアヌレート骨格を有するジアミンモノマーはポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール等の樹脂への特定構造の導入に欠かすことができず、種々の例が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2020/196718
【特許文献2】特許第6512012号
【特許文献3】特開2014-58452
【特許文献4】特許第4868167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、樹脂への特定構造の導入においては、ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルも重要である。例えば、ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルからはポリエステル、ポリアミド等の樹脂が得られる。これらの樹脂系へのイソシアヌレート骨格の導入は耐熱性、機械強度、耐湿性、電気特性等の特性発現の観点から望まれるところであるが、カルボキシ基を備えたイソシアヌレート化合物は、報告例が限定的であった。
【0008】
本発明は、上記実情を踏まえ、イソシアヌレート骨格を有する新規ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の新規なイソシアヌレート骨格を含有するジカルボン酸およびジカルボン酸エステルにより上記課題を解決しうる。
【0010】
[1].一般式(1)で示される化合物。
ただし、式中、Aは直結しているか、または末端が炭素原子である2価の有機基であり、Rは水素原子または炭化水素基であり、R
1は水素原子または1価の有機基である。
【化1】
【0011】
[2].一般式(1)中のAが直結である[1]に記載の化合物。
【0012】
[3].一般式(1)中のRが水素原子または炭素数5以下の炭化水素基である[1]または[2]に記載の化合物。
【0013】
[4].一般式(1)中のR1が炭素数60以下の1価の炭化水素基である[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイソシアヌレート骨格(イソシアヌル酸骨格)を有するジカルボン酸化合物は、ウレタンやポリエステル、ポリカーボネート等にイソシアヌレート特有の剛直性を付与できる。加えて、炭素-炭素三重結合を有していることから、さらに剛直性を付与できるほか、熱架橋に供することができたり、ヒドロシリル化等の反応点としても機能したりすることができる。また、イソシアヌレート環上の置換基(一般式(1)中のR1)を様々に変えることができ、種々の特性を有する樹脂を合成しようとする際のモノマーの選択肢を従来よりも格段に広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0016】
本発明のイソシアヌレート骨格を有するジオール化合物は、イソシアヌレート環上の3つの窒素原子の内、2つにフェニル基が結合しており、フェニル基上には末端にカルボキシ基を有する置換基が炭素-炭素三重結合を介して結合している。さらに、イソシアヌレート環上の残り1つの窒素原子には水素原子または置換基が結合しているものであり、一般式(1)に示される、ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルである。ただし、式中、Aは直結しているか、または末端が炭素原子である2価の有機基であり、Rは水素原子または炭化水素基であり、R
1は水素原子または1価の有機基である。ここで、Aが直結しているとは、カルボン酸およびカルボン酸エステルのカルボニル炭素が、炭素-炭素三重結合(アルキン)を構成している炭素に直結していることを意味する。また、Aの末端が炭素原子であるとは、前記カルボニル炭素及びアルキンと炭素原子で結合していること(ヘテロ原子で結合していない)ことを意味する。
【化2】
【0017】
本発明のジカルボン酸化合物を得る合成スキームの例を(合成スキーム)に示す。反応(A)において、溶媒中に分散させたシアン酸塩に、3-ブロモフェニルイソシアネート、4-ブロモフェニルイソシアネート、4-クロロフェニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物(1-1)を溶媒に溶解させた滴下液を滴下する。反応後、溶媒を減圧留去したのち、適当な有機溶媒と水で分液操作を数回行った後、水層を回収してブレンステッド酸を投入することでイソシアヌレート化合物(1-2)を析出させる。生成物を回収した後、さらに洗浄や再結晶など精製操作を行ってもよい。
【化3】
【0018】
本反応の溶媒および滴下液の溶媒としてはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジブチルプロパンアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサンなどが挙げられるが、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドが好ましく用いられる。中でもN,N-ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0019】
シアン酸塩としてはシアン酸カリウム、シアン酸ナトリウム等を用いることができる。反応温度は25℃~150℃で実施し、40℃~120℃が好ましく、60℃~100℃がより好ましい。反応時間は、滴下に10分~120分かける。好ましくは15分~60分である。滴下後、さらに反応を継続するがその時間は10分~6時間であり、15分~3時間が好ましい。分液に用いる有機溶媒としては特に制限はないが、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルムなどを用いることができ、これらを複数組み合わせてもよい。分液後の水層に加える酸としては、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げられ、中でも塩酸が好ましい。取得した固体を再結晶する場合、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類や酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類等を用いることができ、これらに貧溶媒としてヘキサン等の炭化水素類を組み合わせてもよいが、中でも特にエタノールが好ましい。
【0020】
置換基R1を導入する(B)のステップは、R1が水素原子の場合は省略して、(C)のクロスカップリング反応のステップに進んでよい。ここでは、Rが水素原子以外の場合について説明する。置換基R1の導入法は公知のあらゆる有機合成法を用いることができるが、一例を示すと、適当な溶媒にイソシアヌレート化合物(1-2)および塩基を溶解させ、置換基R1の導入源である化合物R-Xをイソシアヌレートに対して1.0~2.0当量、好ましくは1.1~1.5当量添加して反応を行うことによって置換基R1を導入することができる。
【0021】
ここでRは1価の有機基であり、Xは脱離基であって種類は特に問わないが、例えばクロロ基、ブロモ基、ヨード基やトシルオキシ基、メシルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが挙げられる。置換基R1は1価の有機基であり、特に限定はないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、s―ブチル基、t-ブチル基といったアルキル基や、アリル基、ホモアリル基、シンナミル基、プロパルギル基といった炭素-炭素二重結合・三重結合を含んだ炭化水素基などが挙げられる。グリシジル基、オキセタニル基といったヘテロ原子を含んだ置換基でも構わない。
【0022】
置換基R1のバリエーションは幅広く、置換基を様々に変えることで目的の材料物性や樹脂重合性等を実現することが可能である。置換基R1が水素原子の場合(実質的に置換基を導入しない場合)には、イソシアヌレート環のN-H結合は酸として機能する。そのため、積極的に置換基R1を導入せず、イソシアヌレート環のN-H結合を酸基として本発明のジカルボン酸およびジカルボン酸エステル化合物を利用することも可能である。
【0023】
さらには置換基R1を導入せずにモノマーとして樹脂主骨格にイソシアヌレート構造を導入した後に、置換基R1を導入したり、架橋点として利用したりすることも可能である。本発明において、ジカルボン酸およびジカルボン酸エステルの中心骨格としてベンゼン環ではなく、イソシアヌレート環を用いた利点は、イソシアヌレート独自の剛直性、強いスタッキング性のみならず、置換基導入の容易性や酸基としての機能にもある。
【0024】
上記の塩基は特に限定はないが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、3,5-ルチジン、2,6-ルチジン、ピコリンなどの有機塩基や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウムなどの無機塩基を使用することができる。塩基は、基質(1-2)に対して、1.0当量~3.0当量の割合で用いることができ、好ましくは1.1当量~2.0当量である。
【0025】
本反応における溶媒は特に限定はないが、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジブチルプロパンアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。反応温度は20℃~120℃で実施することができ、40℃~100℃が好ましく、50℃~90℃がより好ましい。反応時間は1時間~12時間とすることができ、1時間~6時間が好ましい。
【0026】
反応後は、溶媒を減圧留去して、適当な精製操作を実施してもよい。例えば、分液操作や再結晶、カラムクロマトグラフィーによる精製が挙げられ、これらを単独または組み合わせて実施してもよい。また、精製することなく次の反応へと移ってもよい。その場合は、溶媒の減圧留去によって粗生成物を取得し、クロスカップリング反応を仕込んでもよいし、溶媒を減圧留去することなく、同じ反応容器にクロスカップリング反応に必要な基質や触媒を新たに仕込んでもよい。
【0027】
(C)のステップは薗頭クロスカップリング反応によって実施することができる。基質(1-3)および、炭素―炭素三重結合を有するカルボン酸またはエステルを溶媒に溶解させ、パラジウム触媒、銅触媒、アミン化合物を添加して反応させることでクロスカップリング反応が進行する。
【0028】
アミン化合物としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミンなどを好ましく用いることができ、添加量は一般に基質に対して大過剰量添加する。具体的には基質に対して10当量以上である。
【0029】
パラジウム触媒はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムやビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドなどを好適に用いることができる。銅触媒はハロゲン化銅(I)を用いることができ、特にヨウ化銅(I)を用いることが好ましい。溶媒は特に制限はないが、上記のアミン化合物を溶媒として用いてもよいし、その場合に基質の溶解性が足りない場合は補助溶媒として、基質を溶解させ、かつ反応を阻害しない溶媒を追加してもよい。
【0030】
具体的にはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジブチルプロパンアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。反応温度は20℃~150℃で実施することができ、反応時間は1時間~48時間であり、好ましくは1時間~12時間である。反応後は溶媒を減圧留去したのち、分液操作を実施して残存した金属触媒やアミン成分を除去し、再結晶および/またはカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0031】
一般式(1)におけるAの構造は、本ステップで選択される基質のカルボン酸の構造に由来して決定する。選択される基質のカルボン酸としては、末端アルキンを有するカルボン酸であればよく、例えばプロピオル酸、3-ブチン酸、2-ヒドロキシ-3-ブチン酸、2-ヒドロキシ-3-ブチン酸エチル等を挙げることができる。さらに上記のカルボン酸群のエステル化体(R≠H)も基質となりうる。Rとしてはメチル基、エチル基、n―プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基、アリル基等の炭化水素基が挙げられるが、炭素数5以下の炭化水素基が好ましい。
【0032】
(用途)
本発明のジカルボン酸化合物は、あらゆる樹脂材料、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、カチオン硬化性樹脂、アニオン硬化性樹脂、ラジカル硬化性樹脂などに、従来にない特性を発現させるために、重合用モノマーとして使用することができる。イソシアヌレートおよびアルキンの剛直構造が樹脂の主鎖骨格に導入されることで、機械強度や耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性などを向上させることができる。
【0033】
本発明のジオール化合物を樹脂の重合用モノマーとして使用する場合、樹脂の種類は特に限定されないが、中でも、一般にジカルボン酸化合物をモノマーとして重合されうる樹脂には好適に利用できる。このような樹脂として例えば、ポリエステル、ポリアミド、およびこれらを繰り返し単位の一部に含む樹脂が挙げられる。ポリエステルは、ジカルボン酸エステル化合物とジオール化合物のエステル交換反応によっても重合されることから、本発明の範疇にジカルボン酸エステル化合物も含んでいる。また、本発明のジカルボン酸およびジカルボン酸エステルは炭素-炭素三重結合を有していることから、ヒドロシリル化反応によって、シロキサン樹脂に組み込むこともできる。
【0034】
本発明のジカルボン酸化合物または該化合物を用いてなる樹脂は、種々の用途に用いることができる。例えば、接着剤、粘着剤、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コートおよび光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルムおよびFRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質等が挙げられる。また、上記イソシアヌル酸骨格含有重合体は他樹脂等への添加剤として用いられてもよい。なお、用途は下記に限定されないことは言うまでもない。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する)1Lおよびシアン酸カリウム48gを仕込み、75℃に加温した。滴下ロートで4-ブロモフェニルイソシアネート198gをDMF500mLに溶解させた滴下液を30分かけて滴下し、滴下終了後1時間撹拌して反応を完了させた。DMFを減圧除去し、酢酸エチル1Lおよび水3Lを加えた後、水層に濃塩酸を加え、析出した沈殿物を回収し、エタノールで再結晶を行うことにより白色結晶(2)178gを得た。
【0037】
フラスコに、上記の白色結晶(2)21.9g、プロピオル酸8.41g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド3.51g、ヨウ化銅(I)1.9g、およびDMF100mL、トリエチルアミン500mLを仕込み、窒素雰囲気下80℃で8時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を減圧除去し、水と酢酸エチルで分液し、有機層を濃縮した。取得した粗生成物はエタノールで再結晶を行い、下記式で表されるジオール化合物(3)16.3gを得た。
【化4】
【化5】
【0038】
(実施例2)
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する)1Lおよびシアン酸カリウム48gを仕込み、75℃に加温した。滴下ロートで3-ブロモフェニルイソシアネート198gをDMF500mLに溶解させた滴下液を30分かけて滴下し、滴下終了後1時間撹拌して反応を完了させた。DMFを減圧除去し、酢酸エチル1Lおよび水3Lを加えた後、水層に濃塩酸を加え、析出した沈殿物を回収し、エタノールで再結晶を行うことにより白色結晶(4)169gを得た。
【0039】
フラスコに、上記の白色結晶(4)21.9g、プロピオル酸8.41g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド3.51g、ヨウ化銅(I)1.9g、およびDMF100mL、トリエチルアミン500mLを仕込み、窒素雰囲気下80℃で8時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を減圧除去し、水と酢酸エチルで分液して有機層を濃縮した、取得した固体はエタノールで再結晶を行い、下記式で表されるジオール化合物(5)14.7gを得た。
【化6】
【化7】
【0040】
(実施例3)
フラスコに、実施例1で得た化合物(2)21.9g、プロピオル酸メチル10.08g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド3.51g、ヨウ化銅(I)1.9g、およびDMF100mL、トリエチルアミン500mLを仕込み、窒素雰囲気下80℃で8時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を減圧除去し、水と酢酸エチルで分液し、有機層を濃縮した。取得した粗生成物はエタノールで再結晶を行い、下記式で表されるジカルボン酸エステル化合物(6)18.8gを得た。
【化8】
【0041】
(実施例4)
フラスコに、実施例1で得た化合物(2)21.9g、プロピオル酸メチル10.08g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド3.51g、ヨウ化銅(I)1.9g、およびDMF100mL、トリエチルアミン500mLを仕込み、窒素雰囲気下80℃で8時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を減圧除去し、水と酢酸エチルで分液し、有機層を濃縮した。取得した粗生成物はエタノールで再結晶を行い、下記式で表されるジカルボン酸エステル化合物(7)16.8gを得た。
【化9】
【0042】
(実施例5)
実施例1で得た化合物(2)43.9g、アリルブロミド13.3g、トリエチルアミン11.1g、テトラヒドロフラン500mLを投入して、70℃に加熱して1時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去して、粗生成物を水とジエチルエーテルで分液した。この分液操作は合計2回実施した。有機層を濃縮して化合物(8)45.5gを得た。
【0043】
フラスコに、化合物(8)23.9g、プロピオル酸8.41g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド3.51g、ヨウ化銅(I)1.90g、およびDMF100mL、トリエチルアミン500mLを仕込み、窒素雰囲気下80℃で8時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を減圧除去し、水と酢酸エチルで分液し、有機層を濃縮した。取得した粗生成物はエタノールで再結晶を行い、下記式で表されるジカルボン酸化合物(7)17.4gを得た。
【化10】
【化11】