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  • 特開-高伝播性シロアリ防除剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161977
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】高伝播性シロアリ防除剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20231031BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20231031BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20231031BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20231031BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20231031BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20231031BHJP
【FI】
A01N43/90 103
A01P7/04
A01N25/00 102
A01N25/02
A01N25/12
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072649
(22)【出願日】2022-04-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.公開日:2021年5月27日 日本農薬株式会社ホームページ 新製品情報 新規土壌処理用シロアリ防除剤「ネクサス▲R▼Z800」上市に関するお知らせ 2.公開日:2021年5月28日 JAcom 「新規土壌処理用シロアリ防除剤「ネクサスZ800」発売 日本農薬など共同開発」 3.公開日:2021年5月31日 農村ニュース ネクサスZ800上市 土壌処理用シロアリ防除剤 ~日本農薬など~ 4.公開日:2021年9月1日 株式会社アグリマートホームページ 製品情報 ネクサスZ800 5.公開日:2021年5月31日 日本農民新聞社土壌処理用シロアリ剤「ネクサスZ(ゼータ)800」発売 6.公開日:2021年5月27日 PRCROSS プレスリリース・ニュースリリース情報サービス 新規土壌処理用シロアリ防除剤「ネクサスZ800」上市に関するお知らせ 7.公開日:2021年5月27日 J-GLOBAL文献、特許、研究者などの化学技術情報サイト 薬剤の知識 第9回 新規土壌処理剤 ネクサスゼータ800について 8.公開日:2021年6月1日 土壌処理用NEXUS▲R▼ネクサス▲R▼Zゼータ800 9.公開日:2021年9月1日 積算資料ポケット版WEB ネクサスZ800 10.公開日:2022年4月1日 「防蟻剤の伝播性評価方法について」,木材保存,48巻1号,p.18-22(2022) 11.公開日:2022年4月18日 株式会社アグリマートホームページ 製品情報 ネクサスZ20WSC
(71)【出願人】
【識別番号】521443645
【氏名又は名称】ZMクロッププロテクション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232623
【氏名又は名称】日本農薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522163469
【氏名又は名称】株式会社アグリマート
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼田 遼
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄大
(72)【発明者】
【氏名】寒川 敏行
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CC29
2B121CC34
4H011AC03
4H011BB10
4H011BC03
4H011BC16
4H011BC19
4H011BC20
4H011DA02
4H011DA15
4H011DC05
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】極めて少ない薬量で効果を発現する極めて高い殺虫活性を有すると共に、シロアリに対し非忌避性であって、かつ薬剤への接触から効果発現までに比較的長い時間を要する適度な遅効性を兼ね備え、直接シロアリの巣(コロニー)に薬剤を処理することなくコロニーを根絶する高い伝播性能を有したシロアリ防除剤組成物、及びその使用方法を提供すること。
【解決手段】メソイオン系化合物ジクロロメゾチアズ(dicloromezotiaz)を有効成分として含有することを特徴とするシロアリ防除剤組成物、及びその使用方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のジクロロメゾチアズを含有し、前記ジクロロメゾチアズの伝播性を用いてシロアリを防除するための、シロアリ防除用組成物。
【請求項2】
剤型が、液剤、乳剤、水性懸濁剤、スティック状もしくはチョーク状に固めた棒状剤、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、及びベイト剤のいずれかである請求項1に記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項3】
液剤、乳剤、水性懸濁剤のいずれかである、請求項1及び2いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項4】
液剤、乳剤、水性懸濁剤であってジクロロメゾチアズを0.01~50重量部含有することを特徴とする、請求項1及至3いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項5】
剤型が粒剤である、請求項1及び2いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項6】
粒剤であって、100重量部の粒剤にジクロロメゾチアズを0.01~1重量部含有する、請求項1、2及び5いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項7】
粉剤である、請求項1及び2いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項8】
剤型が粉剤であって、100重量部の粉剤にジクロロメゾチアズを0.1~5重量部含有する、請求項1、2、及び7いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項9】
剤型が、
棒状剤、又は
シロアリの餌として、木質資材、及び/又はセルロースの基材に有効成分を含浸及び/又は混和し固形物に調製したベイト剤、
である、請求項1及び2いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項10】
剤型がベイト剤であって、100重量部のベイト剤にジクロロメゾチアズを0.1~10重量部含有する、請求項1及び2いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物。
【請求項11】
請求項1及至10いずれか1項に記載の、シロアリ防除剤組成物を用いてシロアリを防除する方法。
【請求項12】
シロアリ防除剤組成物を用いてシロアリを防除する方法が、土壌に前記組成物を散布・混和する土壌処理、シロアリの蟻道に前記組成物を処理する蟻道処理、及び土壌中に、前記組成物を含むベイト剤を設置するベイト工法のいずれかであることを特徴とする、請求項11記載のシロアリを防除する方法。
【請求項13】
シロアリ防除剤組成物を含む棒状剤を土壌処理する工程、又は、
シロアリ防除剤組成物の液剤、乳剤、水性懸濁剤、及び粒剤のいずれかを、土壌に散布・混和する土壌処理する工程、
を含む、請求項11及び12いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法。
【請求項14】
シロアリ防除剤組成物の粉剤を、シロアリの蟻道に処理する蟻道処理する工程を含む、請求項11及び12いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法。
【請求項15】
シロアリ防除剤組成物のベイト剤を、土壌中に設置するベイト工法を含む、請求項11及び12いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法。
【請求項16】
シロアリ防除剤組成物を用いて防除する対象のシロアリにイエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)を含む、請求項11及至15いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シロアリに対し適度な遅効性及び極めて高い殺虫活性を有するジクロロメゾチアズを有効成分として含有することを特徴とし、当該遅効性、高殺虫活性に由来/起因する高い伝播性能を有したシロアリ防除剤組成物、該組成物を用いるシロアリの防除方法ならびにその使用方法に関する。本発明はまた、ジクロロメゾチアズを有効成分として含有する組成物の、シロアリ防除用組成物としての使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
シロアリには、乾燥した木に生息するシロアリ、及び、地下性シロアリに分類される2タイプのシロアリが存在している。これらの2タイプの内、地下性シロアリは、通常、土壌中に生息し、ここからトンネル又は蟻道を構造木材まで構築し、そこを餌場とする。すなわち、このタイプのシロアリは、土壌中を移動する性質を有する。このタイプのシロアリであるヤマトシロアリ属(Reticulitermes)及びコプトテルメス属(Coptotermes)などのシロアリは、1つのコロニー中に20,000~1,000,000匹の個体を有している場合があって、このような多数の個体が木材の加害等の問題を生じさせる。また、これらのシロアリが構築するトンネルは、巣の主たる中心から50m以上に及ぶ場合がある。
【0003】
シロアリは女王を中心としたコロニーを形成し、職蟻が採餌と女王、幼虫の世話(栄養交換、虫体の掃除等)を行うと共に、職蟻同士の栄養交換・グルーミング(舐め合い)を行う。このようなシロアリの生態を利用して、シロアリ防除における伝播効果を有するとされる伝播性のシロアリ防除剤として、フィプロニル、クロルフェナピル、クロラントラニリプロール、ブロフラニリド等の、シロアリに対し非忌避性かつ遅効性を有する化合物が知られており、これらの化合物を有効成分とするシロアリ防除剤が市販されている(非特許文献1参照)。また、遅効性では無く比較的速効性であるが、非忌避性であることから、同様に伝播効果を有するとされるシロアリ防除剤として、ネオニコチノイド系化合物であるイミダクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン、チアメトキサムを有効成分とするシロアリ防除剤が開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
【0004】
本明細書でいう「伝播性」とは、あるシロアリの個体から他のシロアリの個体に薬剤の殺蟻効果が伝えられる場合に、該薬剤が有するシロアリ防除における性質を意味する。したがって、ある化合物のシロアリ個体に対する殺蟻効果が遅効的であることが、伝播性による効果の発現には必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-298776号公報
【特許文献2】特開2013-501061号公報
【特許文献3】特開2021-066661号公報
【特許文献4】特開2004-105096号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Pesticide Manual 18th Edition(British Crop Production Council、2018)
【非特許文献2】「SHIBUYA INDEX-2005-10th Edition」,SHIBUYA INDEX研究会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シロアリに対する化学薬品による防除方法は、大きく分けて木部等に薬液を塗布して防除する「木部処理」、床下等の土壌及びコンクリート表面に散布又は建物外周の土壌に散布、注入、混和して防除する「土壌処理」、シロアリが巣から食害部までの間の移動用に構築する蟻道に処理(主に粉剤を使用)する「蟻道処理」、及びシロアリが好む木質基材やセルロース基材に有効成分を含浸又は混和して調製したベイト剤(殺虫活性成分入り毒餌剤。虫が好む餌に有効成分を配合し、摂食させて殺虫する製剤)を土壌中に埋設又は設置する「ベイト工法」が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
これらの防除方法のうち、巣の根絶を目的とした伝播効果が期待される処理方法は、「土壌処理」、「蟻道処理」、及び「ベイト工法」の3種類であり、既存の住宅等では土壌処理法が多用されている。
「土壌処理」、「蟻道処理」、及び「ベイト工法」のいずれにおいても、高い伝播効果の発現を期待するには、非忌避性、遅効性、さらに極低濃度での高い効果を発現する高活性、の3つの性能を有するシロアリ防除剤が求められている。
【0009】
伝播性によるコロニーの根絶が期待される場合、シロアリ防除剤に直接触れた職蟻が、他の職蟻に対し栄養交換やグルーミングにより薬剤を伝播(一次伝播)させ、一次伝播された職蟻が他の職蟻に薬剤効果を更に伝播(二次伝播)させることが繰り返され、二次伝播以降も高い殺虫活性が維持されることが必要となる。
しかしながら、伝播性を有するとされる既存のシロアリ防除剤は、虫体に薬剤を直接噴霧処理した場合や、高濃度又は高薬量の薬剤処理層(土壌、濾紙又はモルタル)上を這わせる等して該薬剤に接触させた職蟻から他の職蟻に薬効の伝播がなされるものである。そのため、既存のシロアリ防除剤においては、実用的な処理濃度、処理量の薬剤処理層上を這わせた職蟻からの一次伝播においては十分な薬効を示すが、二次伝播以降の薬効発現が不十分であるという問題がある。既存のシロアリ防除剤では、実用的な処理濃度、処理量が伝播には不十分であり、二次以降の伝播に必要な殺虫活性の高さを遅効性により維持できない場合があるからである。
【0010】
また、ネオニコチノイド系シロアリ防除剤においては、速効性を有するため、一次伝播効果が発現する前に死亡又は異常を呈した職蟻を他の職蟻が忌避することにより、二次伝播はおろか一次伝播でさえ十分ではないという問題がある。
加えて、ネオニコチノイド系以外の遅効性のある既存シロアリ防除剤であっても、薬剤に接触したシロアリ個体が帰巣するのに要する時間より早く当該シロアリ個体に効果(苦悶、致死)が発現してしまい、コロニーの根絶効果が十分に期待できない。そのため、既存の遅効的なシロアリ剤より更に遅効的な薬剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、シロアリに対し非忌避性であって、既存シロアリ防除剤よりもより遅効性かつ高活性を有する化合物を有効成分とした、高い伝播効果によりコロニーの根絶効果が期待できる新規なシロアリ防除剤を創出すべく鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、ジクロロメゾチアズ(dicloromezotiaz)を有効成分とすることにより、特に多用される土壌処理剤の実用的な用法・用量において、既存剤に勝る顕著な伝播性を有することを見出し、本願発明を完成させた。
【0012】
即ち、本願発明は
[1] 有効量のジクロロメゾチアズを含有し、前記ジクロロメゾチアズの伝播性を用いてシロアリを防除するための、シロアリ防除用組成物、
[2] 剤型が、液剤、乳剤、水性懸濁剤、スティック状もしくはチョーク状に固めた棒状剤、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、及びベイト剤のいずれかである[1]に記載のシロアリ防除剤組成物、
[3] 液剤、乳剤、水性懸濁剤のいずれかである、[1]及び[2]いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物、
[4] 液剤、乳剤、水性懸濁剤であってジクロロメゾチアズを0.01~50重量部含有することを特徴とする、[1]及至[3]いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物、
[5] 剤型が粒剤である、[1]及び[2]いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物、
[6] 粒剤であって、100重量部の粒剤にジクロロメゾチアズを0.01~1重量部含有する、[1]、[2]及び[5]いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物、
[7] 粉剤である、[1]及び[2]いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物、
[8] 剤型が粉剤であって、100重量部の粉剤にジクロロメゾチアズを0.1~5重量部含有する、[1]、[2]、及び[7]いずれか1項に記載のシロアリ防除剤組成物、
[9] 剤型が、 棒状剤、又はシロアリの餌として、木質資材、及び/又はセルロースの基材に有効成分を含浸及び/又は混和し固形物に調製したベイト剤、
である、[1]及び[2]いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物、
[10] 剤型がベイト剤であって、100重量部のベイト剤にジクロロメゾチアズを0.1~10重量部含有する、[1]及び[2]いずれかに記載のシロアリ防除剤組成物、
[11] [1]及至[10]いずれか1項に記載の、シロアリ防除剤組成物を用いてシロアリを防除する方法、
[12] シロアリ防除剤組成物を用いてシロアリを防除する方法が、土壌に前記組成物を散布・混和する土壌処理、シロアリの蟻道に前記組成物を処理する蟻道処理、及び土壌中に、前記組成物を含むベイト剤を設置するベイト工法のいずれかであることを特徴とする、[11]記載のシロアリを防除する方法、
[13] シロアリ防除剤組成物を含む棒状剤を土壌処理する工程、又は、シロアリ防除剤組成物の液剤、乳剤、水性懸濁剤、及び粒剤のいずれかを、土壌に散布・混和する土壌処理する工程、を含む、[11]及び[12]いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法、
[14] シロアリ防除剤組成物の粉剤を、シロアリの蟻道に処理する蟻道処理する工程を含む、[11]及び[12]いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法、
[15] シロアリ防除剤組成物のベイト剤を、土壌中に設置するベイト工法を含む、[11]及び[12]いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法、
[16] シロアリ防除剤組成物を用いて防除する対象のシロアリにイエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)を含む、[11]及至[15]いずれか1項に記載のシロアリを防除する方法、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、土壌に散布・混和する土壌処理、シロアリの蟻道に少量の粉末を吹き込み処理する蟻道処理、土壌中にベイト剤(毒餌剤)を設置するベイト工法のいずれの処理方法においても、高い伝播性によりシロアリのコロニー(巣)を根絶又はほぼ根絶する効果を有する高伝播性シロアリ防除剤組成物を提供できる。
一方、本願発明のシロアリ類防除組成物の有効成分であるジクロロメゾチアズ(dicloromezotiaz)は鱗翅目害虫等に対する殺虫活性が知られ、シロアリの防除効果があることも知られている公知の化合物である(例えば、特許文献2及び3参照)。
しかし、ジクロロメゾチアズの遅効性による伝播性を利用した防除効果については、いずれの文献にも開示されていない。
したがって、本願発明にかかるシロアリ防除剤組成物が奏する効果は、従来技術からは当業者といえども予測することができない顕著な効果である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例2における試験方法を模式的に示す図である。
図2】試験例4において用いられた、調製したベイト剤を設置する容器(ブリングbox)を示す写真図である。
図3】試験例6における薬剤の射出に用いた射出成形品(成形品寸法φ10×高さ200mm)の側面を示す模式図である。各数値は長さを表し、単位はmmである。
図4】試験例6において用いた、箱型容器、無処理杭、及びスティック状防蟻剤の設置状況を側面から示す模式図である。直線の矢印により示された各数値は長さを表し、単位はmmである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物は、シロアリに対し非忌避性であって、ごく少量の有効量でシロアリを活動停止、苦悶、致死させる高い殺虫活性を有すると共に、薬剤に接触したシロアリが巣(コロニー)に帰巣後に効果が発現する適度な遅効性を有するジクロロメゾチアズを有効成分として含有することで高い伝播性能を有することを特徴とする。
本明細書において、「高い伝播性能」及び「高い伝播性」の語は、組成物や化合物又は土壌等の媒体が有する優れた伝播性を意味する。本明細書において、「高い伝播性能」及び「高い伝播性」とは、イミダクロプリドのような既存のシロアリ防除用物質の伝播性を上回る伝播性を意味する。
本明細書において、「伝播効果」とは、シロアリの一個体から他のシロアリの個体に、当該他のシロアリに何らかの負の影響を与えるように伝播される組成物や化合物の効果を意味する。
また、本明細書において「高伝播性」とは、高い伝播性を有する組成物や化合物について、それらの組成物や化合物が高い伝播性を有するものであることを意味する。
【0016】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を土壌処理用又は蟻道処理用に効率的に使用するには、一般的に通常使用される製剤処方に従って適当な固体担体及び/又は液体担体等及び必要に応じて補助剤等と共に適当な割合に配合して、溶解、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させ、使用目的に応じて適当な剤型、例えば、乳剤、液剤、水性懸濁剤(フロアブル剤)、スティック状やチョーク状に固めた棒状剤、マイクロカプセル剤、ベイト剤、粒剤又は粉剤等に、公知の方法により調製して使用すれば良い。
本願発明のシロアリ防除用組成物が適用される対象は、木を用いた構造を有するものであれば限定されない。かかる対象として、木材、木材を用いた家屋、家屋以外の木造建築物、家具、工芸品、及び美術品が例示される。
【0017】
剤型
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を、その製剤型が液剤、乳剤、水性懸濁剤として使用する場合、当該ジクロロメゾチアズの含有量は、各製剤全体を100重量部とした場合に(以下において同じ)、0.005~70重量部であることが好ましく、0.01~50重量部であることが更に好ましい。これらの含有量を有効量としてよい。
なお、本明細書における記号「~」により特定される範囲は、該記号の両端に示される数値を含む範囲を表す。
【0018】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を土壌処理用又は蟻道処理用の組成物として用いる場合、その剤型はとくに限定されない。これらの処理方法において用いられる剤型として、乳剤、液剤、水性懸濁剤、スティック状もしくはチョーク状に固めた棒状剤、マイクロカプセル剤、粒剤及び粉剤が例示される。
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を、その剤型を粒剤で使用する場合、当該ジクロロメゾチアズの含有量は0.005~5重量部であることが好ましく、0.01~1重量部であることが更に好ましい。
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を、その剤型を水性懸濁剤で使用する場合、当該ジクロロメゾチアズの含有量は、0.01~50重量部であってよく、5~30重量部であることが好ましく、10~25重量部であることが更に好ましい。本願発明の上記水性懸濁剤として、アタパルジャイトを含むものは、少なくとも剤の粘度及び安定性の点において好ましい。
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を、その剤型を液剤で使用する場合、当該ジクロロメゾチアズの含有量は、0.01~50重量部であってよく、0.1~20重量部であることが好ましく、1~10重量部であることが更に好ましい。
【0019】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を、その剤型が粉剤で使用する場合、当該ジクロロメゾチアズの含有量は0.05~20重量部であることが好ましく、0.1~5重量部であることが更に好ましい。これらの含有量を有効量としてよい。
本願発明の粉剤のうち、フィプロニル (0.5%粉剤、旧アベンティスクロップサイエンスシオノギ(株)エンバイロサイエンス事業部より販売されていたシロアリ駆除用粉剤 ターミドールダスト)又はメタフルミゾン(50%粉剤、株式会社アグリマート/コロニーバスター)と少なくとも同等の効果を、土壌処理又は蟻道処理において奏する粉剤は好ましい。
【0020】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物をベイト工法用に効率的に使用するには、ジクロロメゾチアズを適当な液体担体に溶解した後、餌となる木材やセルロース基材に含浸、又はジクロロメゾチアズを木質基材粉末に混合又は付着させた後成型固化させるか、ジクロロメゾチアズとセルロース粉末を混合し適当な固着剤又は結合剤と混合後成型固化させたベイト剤等に調製して使用すれば良い。
【0021】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物を、その製剤型がベイト剤で使用する場合、当該ジクロロメゾチアズの含有量は0.0001~20重量部であることが好ましく、0.001~10重量部であることが更に好ましい。これらの含有量を有効量としてよい。
【0022】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物で使用する固体担体としては、例えば、石英、クレー、カオリナイト、ピロフィライト、セリサイト、タルク、ベントナイト、フバサミクレー、セラミック、酸性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、コレマナイト、珪藻土、硫黄、などの天然鉱物類;
炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウムなどの無機塩類;
合成ケイ酸、合成ケイ酸塩、合成含水酸化珪素、水和シリカ、デンプン、セルロース、植物粉末(例えばおがくず、ヤシガラ、トウモロコシ穂軸、タバコ茎など)などの有機固体担体;
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンなどのプラスチック担体;
合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;
ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-66等のナイロン樹脂;
ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-プロピレン共重合体等)、尿素、無機中空体、プラスチック中空体、活性炭、フュームド シリカ(fumed silica, ホワイトカーボン)、疎水性シリカ、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)、軽石、方解石、海泡石、白雲石、カンラン石、輝石、角閃石、長石、アルミナ、バーミキュライト、パーライト、エラストマー、プラスチック、セラミックス、金属、おがくず、木材、トウモロコシの穂軸、ココヤシの実殻、タバコの茎等の微粉末及び粒状物、
などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
液体担体としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの一価アルコール類や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類のようなアルコール類;
プロピレングリコールエーテルなどの多価アルコール化合物類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
エチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;
ノルマルパラフィン、ナフテン、イソパラフィン、ケロシン、鉱油などの脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジメチルなどのエステル類;
γ-ブチロラクトンなどのラクトン類;
ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-アルキルピロリジノンなどのアミド類;
アセトニトリルなどのニトリル類;
ジメチルスルホキシドなどの硫黄化合物類;
ダイズ油、ナタネ油、ワタ実油、ヒマシ油などの植物油;
水、
などを挙げることができる。
これらは単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物において補助剤として、分散剤・湿潤剤・拡展剤・展着剤などとして用いる界面活性剤;結合剤、粘着付与剤、増粘剤、着色剤、凍結復元剤、固結防止剤、崩壊剤、分解防止剤、pH調節剤、光安定化剤、及び沈降固化防止剤などが挙げられる。その他必要に応じ、防腐剤、植物片などを添加成分に用いてもよい。
これらの添加成分は単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物における使用に適した界面活性剤は、当業界において知られた任意のものであることができる。分散剤・湿潤剤・拡展剤・展着剤等として用いる界面活性剤としては、例えば、植物油型非イオン性界面活性剤、アルコール型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型非イオン性界面活性剤、アルキルフェノール型非イオン性界面活性剤、糖エステル型非イオン性界面活性剤、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ビスフェノール型非イオン性界面活性剤、多芳香環型非イオン性界面活性剤、シリコン型非イオン性界面活性剤、フッ素型非イオン性界面活性剤などを挙げることができる。
植物油型非イオン性界面活性剤の例としては、硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油(例えばポリオキシエチレンヒマシ油等)、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)が挙げられる。アルコール型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)モノブチルエーテル、アセチレンジオール、ポリオキシアルキレン付加アセチレンジオール、等が挙げられる。
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリスチレンポリオキシエチレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルフェニルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル等が挙げられる。
アルキルフェノール型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物等が挙げられる。
糖エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等)、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル等が挙げられる。
ビスフェノール型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシビスフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸ビスフェニルエーテル、等が挙げられる。
多芳香環型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。
シリコン型非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンエーテル型シリコン系界面活性剤、ポリオキシエチレンエステル型シリコン系界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、サルフェート型アニオン性界面活性剤、スルフォネート型アニオン性界面活性剤、フォスフェート型アニオン性界面活性剤、カルボン酸型アニオン性界面活性剤などを挙げることができる。
サルフェート型アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート等が挙げられる。
スルフォネート型アニオン性界面活性剤としては、例えば、パラフィンスルフォネート、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルフォネート、モノアルキルナフタレンスルフォネート、ジアルキルナフタレンスルフォネート、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォネートなどを挙げることができる。
フォスフェート型アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーフォスフェート、アルキルフォスフェート等が挙げられる。
カルボン酸型アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アンモニウム等の脂肪酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、N-メチル-脂肪酸サルコシネート、樹脂酸ナトリウム、樹脂酸カリウム等の樹脂酸塩、等が挙げられる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アンモニウム型カチオン性界面活性剤、ベンザルコニウム型カチオン性界面活性剤等を挙げることができる。
アルキルアミン塩としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン塩酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド等が挙げられる。
アンモニウム型カチオン性界面活性剤としては、例えば、メチルポリオキシエチレンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルN‐メチルピリジニウムブロマイド、モノ又はジアルキルメチル化アンモニウムクロライド、アルキルペンタメチルプロピレンジアミンクロライド等が挙げられる。
ベンザルコニウム型カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型又はベタイン型両性界面活性剤を挙げることができる。
ベタイン型両性界面活性剤としては、例えばジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、オクタン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、アミノ酸型としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
固着剤、分散剤、増粘剤、結合剤及び沈降固化防止剤としては、例えば、カゼイン、カルボキシメチルセルロースやその塩、デキストリン、水溶性デンプン、キサンタンガム、グアーガム、ショ糖、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アルギン酸、キサンタンガム、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム、平均分子量6000~20000のポリエチレングリコール、平均分子量10万~500万のポリエチレンオキサイド、リン脂質(例えばセファリン、レシチンなど)、セルロース粉末、デキストリン、加工デンプン、ポリアミノカルボン酸キレート化合物、架橋ポリビニルピロリドン、マレイン酸とスチレン類の共重合体、(メタ)アクリル酸系共重合体、多価アルコールからなるポリマーとジカルボン酸無水物とのハーフエステル、ポリスチレンスルホン酸の水溶性塩、パラフィン、テルペン、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸塩、ポリオキシエチレン、ワックス、ポリビニルアルキルエーテル、アルキルフェノールホルマリン縮合物、合成樹脂エマルション、アタパルジャイトなどが挙げられる。
アタパルジャイトは、固体担体としての機能に加えて、水性懸濁剤における増粘剤及び/又は沈降固化防止剤としての機能を有する。
これらの剤は単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物をベイト剤として使用する場合、
食餌成分及び/又は誘引成分として使用できるものは、例えば、グルコース、キシロース等の単糖類;
スクロース、ラクトース等の二糖類;
セルロース、デンプン、デキストリン等の多糖類等;
アミノ酸類、蛋白質類、香料(合成香料、天然香料、又はそれらの調合香料を含む);
木質資材(例えばアカマツ、クロマツ、ツガ等の針葉樹、及びカバ、ペカン等の広葉樹、サトウキビの搾りかす);
セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース ナトリウム塩等のセルロースエーテル又はそのアルカリ金属塩等);
植物エキス、動物エキス、道しるべフェロモン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、木質資材、セルロース、及びセルロースの誘導体が好ましい。
【0031】
セルロースを主要成分とする粉末としては、セルロース粉末、オガ屑、木粉などが挙げられ、木粉の場合の樹種は、シロアリが好む樹種が好ましく、たとえば木材種としてサクラ、アオキ、マツ、スプルース、スギなどが好ましい。
【0032】
セルロースを主要成分とする粉末を固化させる固着剤としては、タブ粉、デンプン粉、もち米、酢酸ビニールエマルジョン系、合成ゴム系、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、塩化ビニール系などの人工合成された固着剤等を使用することができるが、タブ粉、デンプン粉、もち米を使用することが好ましい。固着剤の配合量は、セルロースを主要成分とする粉末100重量部に対し20重量部以上60重量部以下が望ましい。
【0033】
処理方法
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物は、土壌に散布・混和する土壌処理、シロアリの蟻道に少量の粉末を吹き込み処理する蟻道処理、土壌中にベイト剤(毒餌剤)を設置するベイト工法において用いることができる。
本願発明における「土壌処理」とは、スプレーガンによる床下土壌や建物基礎外周土壌への散布処理、土壌に差し込んだノズルに薬液を高圧で送液する土壌注入処理、パルプ等を用いてスティック状に固めた棒状剤である防蟻剤(PIM剤/Pulp Injection Molding剤等)を土壌に差し込むことによる薬剤処理、及び、掘り起こした土壌と薬剤を混和後埋め戻す混和処理等を示す。
本願発明の土壌処理に用いる高伝播性シロアリ防除剤組成物の組成や形状は限定されず、パルプ及びセルロース繊維ならびに澱粉を含む成形材料に、ジクロロメゾチアズ及び水を添加して得られる液を射出成形して得られるものが例示される。特に棒状剤が良い。
本願発明の棒状剤の大きさは限定されず、外径約8mm~12mm、長さ(高さ)約180mm~220mmが例示される。
本願発明の棒状剤におけるジクロロメゾチアズの含有量も限定されず、約2.0重量%~約4.0重量%が例示される。
本願発明の棒状剤を設置する本数や設置方法は限定されず、例えば、シロアリを防除する必要がある対象の周囲に、約25cm~約35cmの間隔で打ち込むことにより設置してよい。 本願発明の棒状剤(スティック状防蟻剤)からなるシロアリ防除剤組成物は、好ましくは、イエシロアリ等のシロアリに対する防除効果を、約1年以内に発現する。本願発明の棒状剤(スティック状防蟻剤)からなるシロアリ防除剤組成物は、より好ましくは、イエシロアリ等のシロアリに対する防除効果を、約1年以内に発現し、その後約2年間又は2年以上維持する。
【0034】
本願発明における「蟻道処理」とは、任意の剤型の薬剤を、上記のとおり、シロアリの蟻道に少量の粉末を吹き込み処理する処理方法である。蟻道は、シロアリが地上の乾燥した空気や日光を遮るために、土を盛って作ったトンネル状の通路である。本願発明における蟻道処理においては、蟻道の一部に開けた穴から粉剤等を霧吹き等で吹き込み注入する処理方法を用いてもよい。 本願発明における蟻道処理として、ジクロロメゾチアズを約0.5重量%~約1重量%含む粉剤を、1ヶ所当り約1g、1現場当たり約10~約15gを注入する方法は好ましい。
【0035】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物は、シロアリの棲息、食害場所、地中、木部内に投与する方法に用いることもできる。かかる投与方法としては、既存のシロアリ探知機で建築物内にいるシロアリを調査し、シロアリの棲息するまたは食害している場所に孔を開け、その中に本シロアリ防除組成物を投与することにより、シロアリを防除する方法が挙げられる。孔を開ける際の孔の大きさの径は、約20mm以下が望ましい。また、シロアリがいなくても、将来的に建築物に侵入する可能性のある場合は、該建築物の周囲の地中に、および/または床下の地中に、約10cmから約5mおきに、好ましくは約30cmから約3mおきに、本願発明のシロアリ防除組成物を埋めることにより、シロアリを予防的に防除することができる。
さらにまた、シロアリにより被害をうけやすい木部をあらかじめ電動ドリル等により、約3cmから約2mおきに、好ましくは約5cmから約30cmおきに、穿孔し、その中へ本シロアリ防除組成物を投与することにより、シロアリを予防的に防除することができる。
本願発明の方法における本願発明のシロアリ防除用組成物の処理量は、所望の効果が奏される量であれば限定されない。かかる処理量は、例えばジクロロメゾチアズの量として、0.001~100g/m2であり、好ましくは0.001~10g/m2である。
【0036】
本願明細書における「ベイト工法」とは、土壌中に薬剤を含浸処理した木材又は薬剤を混合、付着させた木質基材やセルロース基材を成型固化したものを土壌中に埋設、設置する処理方法を示す。
本願発明における「ベイト工法」においては、任意の容器に薬剤を載置し、該容器を設置してよい。このような容器として、ブリングボックスが例示される。
本願発明におけるベイト工法として、ジクロロメゾチアズを約10ppm~約100ppm含むベイト剤を用いる方法は好ましい。
【0037】
本願明細書に記載の「木材」とは、シロアリ類の加害(食害)対象となりうる木材であれば特に限定されるものではなく、各種の未加工の木材や加工木材などを含むものである。
木材として、例えば、加工していない樹木、建築用材木及び要素、種々の最終木材製品(丸太並びに板材、厚板及び木舞などの用材、平板、羽目板、角材、壁要素などの広い表面積を持つ要素、家具、箱、パレット、コンテナ、容器、屋外用家具並びに他の木材製品)、輸出入木材、製材用素材木、木製の梁、木材製の車両、屋外の固定構造物(木造建築物、木製バルコニー、電話線電柱、木製フェンス、ラック、ポール、木製型桟、橋や橋脚などの構成要素、突堤、鉄道の枕木、ボート用桟橋)、木製の窓及びドア、住宅建設、木工業や指物業において使用される指物及び木材製品、木製品又は木材/プラスチック複合材料(WPC;木材、プラスチック及び添加物からなる熱可塑的に加工可能な複合材料)等の木材含有物質、合板、チップボード、ファイバーボード、配向ストランドボード(oriented strand board)(OSB)、複合材料ボード、珪藻土パネル、等が挙げられる。
【0038】
本願発明の高伝播性シロアリ防除剤組成物は、シロアリの防除に適しており、例えば、アマミシロアリ(Reticulitermes amamianus)、アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus Shiraki)、オオシロアリ(Hodotermopsis japonica)、カタンシロアリ(Glyptotermes fuscus)、カンモンシロアリ(Reticulitermes sp. )、キアシシロアリ(Reticulitermes flaviceps amamianus)、クシモトシロアリ(Glyptotermes kushimensis)、コウシュウイエシロアリ(Coptotermes guangzhoensis)、コウシュンシロアリ(Neotermes koshunensis)、コダマシロアリ(Glyptotermes kodamai)、サツマシロアリ(Glyptotermes satsumensis)、シュウカクシロアリ(Hodotermitidae)、ダイコクシロアリ(Cryptotermes domesticus (Haviland))、タイワンシロアリ(Odontotermes formosanus (Shiraki))、タカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)、ナカジマシロアリ(Glyptotermes nakajimai)、ニトベシロアリ(Pericapritermes nitobei)、ミヤタケシロアリ(Reticulitermes miyatakei)、ムシャシロアリ(Sinocapritermes mushae)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus (Kolbe)) 、イースタンサブテラニアンターマイト(Reticulitermes flavipes)、ウエスタンサブテラニアンターマイト(Reticulitermes hesperus)、ダークサザンサブラテニアンターマイト(Reticulitermes virginicus)、アリッドランドサブテラニアンターマイト(Reticulitermes tibialis)、デザートサブテラニアンターマイト(Heterotermes aureus)、及びネバダダンプウッドターマイト(Zootermopsis nevadensis)などの、家屋、木材、木造建築物を加害する全てのシロアリ類の巣(コロニー)を根絶する、顕著な伝播性能を有するものである。
本願発明のシロアリ防除剤組成物は、好ましくは、ネオニコチノイド系のシロアリ防除剤に用いられる化合物を含む組成物に比較して、少なくとも同等の効果を、シロアリの防除において奏する。ネオニコチノイド系のシロアリ防除剤に用いられる化合物として、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、及びチアメトキサムが例示される。
また、本願発明のシロアリ防除剤組成物は、好ましくは、遅効性シロアリ防除剤に比較して、少なくとも同等の効果を、シロアリの防除において奏する。前記遅効性シロアリ防除剤に用いられる化合物として、フィプロニル、クロラントラニリプロール、クロルフェナピル、及びプロフラニリドが例示される。
【実施例0039】
以下に本願発明の代表的な実施例及び試験例を例示するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とあるのは「重量部(%W/W)」を示す。また、試験例の薬剤処理土壌の調製方法は、公益社団法人 日本木材保存協会規格 JWPA-TS-(1)(2018)「土壌処理用防蟻剤等の性能基準及びその試験方法」の試験用処理土壌調製方法に準じて行った。
【0040】
製剤例1.
水 67.3部にアクリル酸コポリマー 3.0部、ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)モノブチルエーテル 2.0部、プロピレングリコール 6.8部、ジメチルポリシロキサン 0.5部、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン 0.2部を加え、攪拌機により混合溶解し、次いでジクロロメゾチアズ 19.0部を加えて分散後、湿式粉砕機により微粉砕を行い、平均粒子径が 1.0μmの粉砕物を得た。この粉砕物にキサンタンガム 0.2部、アタパルジャイト 1.0部を加えて均一に混合して水性懸濁組成物(水性懸濁剤)を得た。
【0041】
試験例1.イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)に対する薬剤効果試験
製剤例1に示した水性懸濁組成物 0.125部に水 99.875部を加えてジクロロメゾチアズ 0.023部を含有する供試用薬液を調製した。
【0042】
比較例としてイミダクロプリドを 10.0部含有するフロアブル製剤 1部に水 99部を加えイミダクロプリドを 0.1部含有する薬液と、フィプロニルを9.1部含有するフロアブル製剤 1部に水 299部を加えフィプロニルを0.03部含有する薬液を加えて均一に混合・調製して得た水性懸濁組成物を比較例用供試薬液とした。
なお、イミダクロプリド製剤及びフィプロニル製剤としては市販のシロアリ防除剤を使用し、その実用薬液濃度希釈液を試験薬液とした。
直径 90mmガラスシャーレに石膏を硬化させて敷き詰め、実施例の供試薬液と比較例の供試薬液を、それぞれ 15mlずつ石膏上の全面に均一に滴下した後、イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)の職蟻10頭を放虫し、蓋をして恒温室(25℃/相対湿度60%)内に静置した。
イエシロアリ放虫直後から10時間経過するまでの間、1時間毎に放虫したイエシロアリ中の異常虫数及び死亡虫数を観察し、異常虫率+死亡虫率を以下の[数1]にて異常・死亡虫率(%)として算出し、各薬剤の効果発現速度を比較した。なお各供試薬剤は1区1シャーレとし、2連制で実施した。結果を表1に示す。
【0043】
[数1]
異常・死亡虫率(%)=(異常虫の数 + 死亡虫の数) × 100 / 供試虫数
【0044】
【表1-1】
【0045】
試験例2.イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)に対する伝播処理効果試験
製剤例1に示した水性懸濁組成物 0.125部に水 99.875部を加えてジクロロメゾチアズを 0.023部含有する供試用薬液を調製した。比較例として表2に記載の市販のネオニコチノイド系シロアリ防除剤4種及び遅効性シロアリ防除剤4種の実用濃度水希釈液を、試験用薬液として調製した。「薬剤濃度(%)」は、本願発明の組成物又はシロアリ防除剤に含有される各有効成分の濃度を示し、「供試薬液濃度(%)」は、調製された試験用薬液中における各有効成分の濃度を示す。
直径 50mmのガラスシャーレに、所定濃度に希釈調製した実施例及び比較例供試薬液 1.2gを土壌 4.8gに添加後、混和した土壌 6gを敷き詰め、イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)の職蟻 10頭を放虫し4時間薬液に暴露させた。次に薬剤に接触暴露させた前記イエシロアリ職蟻 10頭のうち3頭を、無処理のイエシロアリ職蟻 30頭を入れた濾紙を敷いた直径50mmシャーレ内に移し一次伝播処理した後、1日後、3日後、7日後、14日後、21日後の異常、死亡虫率を無処理対比で観察し、一次伝播効果を調査した。さらに一次伝播処理24時間後、一次伝播させたイエシロアリ職蟻 30頭のうち3頭を、無処理イエシロアリ職蟻 30頭を入れた濾紙を敷いた直径50mmの別シャーレに移し、二次伝播処理した後、1日後、3日後、7日後、14日後、21日後の異常、死亡虫率を無処理対比で観察し、二次伝播効果を調査した。
なお試験方法を図1に示し、一次伝播処理結果を表3及び4に、二次伝播処理結果を表5及び6に示す。
【0046】
【表1-2】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】


表3~6に示されるように、本願発明のシロアリ防除剤組成物は、従来の薬剤を上回る一次伝播性及び二次伝播処理性を有することが明らかになった。
【0052】
試験例3.イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)に対する粉剤による模擬蟻道を用いた駆除試験(伝播処理効果試験)
ジクロロメゾチアズ0.5重量%、ポリエチレン96.5重量%、及び疎水性シリカ3.0重量%からなる粉剤 各50mgをシャーレ内に薄く敷き詰めた。そこへ、イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)の職蟻 20頭を入れて 10分間薬剤に接触させた。鹿児島野外試験地の山土 5gに対して蒸留水 1mlで湿らせた試験区へ上記の薬剤に暴露させたイエシロアリ職蟻を移し替えた。経時的にイエシロアリを観察し、異常及び死亡虫の率(異常・死亡虫率)を調査した。
【0053】
比較例として、上記各試験と同様に対照薬剤であるフィプロニル(0.5%粉剤、旧アベンティスクロップサイエンスシオノギ(株)エンバイロサイエンス事業部より販売されていたシロアリ駆除用粉剤 ターミドールダスト)、メタフルミゾン(50%粉剤、株式会社アグリマート/コロニーバスター)、及び無処理対照として粉剤基材(有効成分なし)にて二次伝播効果を、異常・死亡虫率(%)を指標として調査した。結果を表7に示す。
【0054】
【表7】

表7に示されるように、本願発明のシロアリ防除剤組成物は、蟻道への処理によってもシロアリに対する防除効果を奏しえることが明らかになった。
【0055】
試験例4.関西以西のイエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)生息地域において、イエシロアリの被害・活動の確認された家屋、建築物での実地試験
表8に示した関西以西の各県イエシロアリ生息地域において、イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)の被害・活動が確認された家屋、建築物にて効果の確認を行った。
薬剤施用方法:試験現場で確認された蟻道、被害部位のイエシロアリ活動が確認された部分に、試験例3において用いられたジクロロメゾチアズ粉剤と同じ剤型からなるジクロロメゾチアズ粉剤を注入した。蟻道の場合はその一部を壊し、その部分から注入した。被害部位の場合は、穿孔し注入した。注入量は1ヶ所当り約1g、1現場当たり約10~15gを注入(現場当りの蟻道数、被害箇所の状況に応じて量を増減)した。
薬剤施用後2~3週間後に初回の調査を実施し、蟻道・被害部位を観察(生息虫の有無、死骸の有無)し効果の確認を行った。結果を表8に示す。
【0056】
【表8-1】

表8に示されるように、本願発明のシロアリ防除剤組成物(粉剤)は、シロアリに対する防除効果を奏しえることが、シロアリが発生している現場においても確認された。
【0057】
試験例5.ジクロロメゾチアズを含むベイト剤を用いたイエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)の駆除現場試験
粉末セルロース(KC-200Y/日本製紙株式会社製)198gにジクロロメゾチアズ原体2gをPP袋内で振とう混合して10,000ppm原末とした。その原末を基に1,000ppm、100ppm及び10ppmと同作業により10倍希釈を繰り返して所定濃度のベイト剤とした。
調製した前記ベイト剤を下記図2に示す設置方法、すなわち、容器として、木枠等からなるブリングbox(廣瀬産業株式会社製)に上記ベイト剤を所定量載置して設置するベイト工法により、試験例4と同様に関西以西のイエシロアリ(Coptotermes Formosans Shiraki)生息地域において、イエシロアリの被害・活動の確認された家屋、建築物にて効果の確認を行った。結果を表9に示す。
【0058】
【表8-2】

【0059】
【表9-1】

表9に示されるように、本願発明のシロアリ防除剤組成物は、ベイト剤の形態においても、シロアリに対する防除効果を奏しえることが、シロアリが発生している現場においても確認された。
【0060】
試験例6.ジクロロメゾチアズを含むスティック状防蟻剤PIMを用いたイエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)の駆除現場試験
パルプ射出成形PIM技術(Pulp Injection Molding/大宝工業株式会社 関西カンパニー社)を用いて、主成分にパルプ(及びセルロース繊維KCフロック400;日本製紙(株)を含む)と澱粉を含む成形材料90.5%、にジクロロメゾチアズ 2.5%、水 7.0%を添加して射出成形による射出(成形品寸法φ10×高さ200mm、図3参照)によるスティック状防蟻剤3を用いて薬剤処理を行った。
【0061】
試験地(鹿児島県南さつま市高橋潟国有林 シロアリ試験地/イエシロアリ生息地で、営巣が確認された野外)にて、イエシロアリ(Coptotermes Formosanus Shiraki)生息地内に10点マークし、ランダムに5点を処理土壌区とし、5点を無処理土壌区とした。各々の土壌区は1m以上離した。また、試験地の雑草や落ち葉を除去し整地した。試験しようとする防蟻杭(前記スティック状防蟻剤3)を処理区試験容器の外周に30cm間隔で打ち込んだ。処理及び無処理土壌の中央部に、健全なアカマツ辺材4(100×100×厚さ10mm)を2枚重ねて設置した。塩化ビニル樹脂で構成された箱型容器5(450×450×高さ300mm)を用意し、箱型容器の上部表面の水がかからない所に穴を開け箱型容器内の過度の温度上昇を防ぎ、箱型容器の下部50mmを土中に埋めた。さらに、容器の周囲に無処理杭6を2~4本打ち込んだ(図4参照)。本試験を2019年10月~2021年10月にかけて行った。結果を表10に示す。
【0062】
【表9-2】

【0063】
【表9-3】
【0064】
【表10】

表10の結果から、本願発明のシロアリ防除剤組成物は、イエシロアリに対する駆除効果を、スティック状防蟻剤、とくにパルプ射出成形PIMにより、少なくとも1年以内に奏し、少なくとも2年間持続することが明らかになった。
このような早期に発揮され、その後長期に持続するシロアリに対する防除効果は、従来のシロアリ防除剤にはない、格別顕著な効果である。
【0065】
ジクロロメゾチアズを有効成分とする組成物の防除効果は、その遅効性効果により、比較例である既存剤と比べてイエシロアリの伝播による防除効果が顕著に認められた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本願発明は、イエシロアリに対し非忌避性かつ適度な遅効性で、極めて高い殺虫活性を有するジクロロメゾチアズを有効成分として使用することにより、シロアリの巣(コロニー)の根絶に必要な、既存剤に勝る優れた伝播性能を有するシロアリ防除剤組成物又はシロアリ防除剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 木枠
2 ポリプロピレン製プレート
3 スティック状防蟻剤
4 無処理アカマツ板
5 塩化ビニル樹脂製箱型容器
6 無処理杭
図1
図2
図3
図4