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特開2023-161981二重容器、プリフォーム組立体及び二重容器の製造方法
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  • 特開-二重容器、プリフォーム組立体及び二重容器の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161981
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】二重容器、プリフォーム組立体及び二重容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B65D1/02 210
B65D1/02 111
B65D1/02 BRH
B65D1/02 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072660
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 峻
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033DA03
3E033FA02
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】内層体を外層体から容易に分離できる二重容器、当該二重容器を形成可能なプリフォーム組立体及び二重容器の製造方法を提供することである。
【解決手段】プリフォーム組立体30をブロー成形することにより、外層体2と内層体3とを備えるボトル形状に形成された合成樹脂製の二重容器1であって、内層体3が、外層体2の上端から突出するキャップ装着部11aと、螺旋状に延びる螺旋突起20と、螺旋突起20の下方側の端部から下方に向けて延びるストッパ突起21とを有し、外層体2が、螺旋状に延び、螺旋突起20が配置されるとともに螺旋突起20とストッパ突起21とが通過可能な幅を有する螺旋通路22と、螺旋通路22の下方側の端部から下方に向けて延びてストッパ面21aに対向する係止面23aを備え、ストッパ突起21が配置されるストッパ通路23とを有することを特徴とする二重容器1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外プリフォームの内側に前記外プリフォームとは別に形成された内プリフォームを組み付けた合成樹脂製のプリフォーム組立体をブロー成形することにより、外層体と前記外層体の内側に分離可能に積層された内層体とを備えるとともに、口部、胴部及び底部を備えたボトル形状に形成された合成樹脂製の二重容器であって、
前記内層体が、
前記外層体の上端から突出する前記口部のキャップ装着部と、
前記胴部と前記キャップ装着部との間の部分の外周面に設けられ、前記キャップ装着部の軸線を中心として螺旋状に延びる螺旋突起と、
前記螺旋突起の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びるストッパ面を備えたストッパ突起とを有し、
前記外層体が、
前記軸線を中心として螺旋状に延び、前記螺旋突起が配置されるとともに前記螺旋突起と前記ストッパ突起とが通過可能な幅を有する螺旋通路と、
前記螺旋通路の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びて前記ストッパ面に対向する係止面を備え、前記ストッパ突起が配置されるストッパ通路とを有することを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記螺旋通路及び前記ストッパ通路が、前記外層体を径方向に貫通する切欠きである、請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
前記螺旋通路及び前記ストッパ通路が、前記外層体の内面に設けられた溝である、請求項1に記載の二重容器。
【請求項4】
前記キャップ装着部に、キャップがねじ結合される雄ねじが設けられ、
前記螺旋突起及び前記螺旋通路が、前記雄ねじとは逆方向に傾斜している、請求項1~3の何れか1項に記載の二重容器。
【請求項5】
前記外層体がポリエチレンテレフタレート製であり、前記内層体がポリプロピレン製である、請求項1に記載の二重容器。
【請求項6】
外プリフォームと、
前記外プリフォームとは別に形成され、前記外プリフォームの内側に組み付けられた内プリフォームと、を有する合成樹脂製で有底筒状のプリフォーム組立体であって、
前記内プリフォームが、
前記外プリフォームの上端から突出するキャップ装着部と、
有底円筒状の延伸部と前記キャップ装着部との間の部分の外周面に設けられ、前記キャップ装着部の軸線を中心として螺旋状に延びる螺旋突起と、
前記螺旋突起の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びるストッパ面を備えたストッパ突起とを有し、
前記外プリフォームが、
前記軸線を中心として螺旋状に延び、前記螺旋突起が配置されるとともに前記螺旋突起と前記ストッパ突起とが通過可能な幅を有する螺旋通路と、
前記螺旋通路の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びて前記ストッパ面に対向する係止面を備え、前記ストッパ突起が配置されるストッパ通路とを有することを特徴とするプリフォーム組立体。
【請求項7】
請求項6に記載のプリフォーム組立体を形成する工程と、
前記プリフォーム組立体をブロー成形する工程と、を有することを特徴とする二重容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器、プリフォーム組立体及び二重容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外層体と、外層体の内側に分離可能に積層された内層体とを備えるとともに、口部、胴部及び底部を備えたボトル形状に形成された合成樹脂製の二重容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-518245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境を考慮した容器のリサイクルやリユースは重要な課題である。
【0005】
上記従来の二重容器においては、容器に収納する内容物によっては、当該内容物が付着してリサイクルやリユースが難しくなる場合があるため、リサイクルやリユースの観点から、内層体を外層体から容易に分離できれば望ましい。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内層体を外層体から容易に分離できる二重容器、当該二重容器を形成可能なプリフォーム組立体及び二重容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二重容器は、外プリフォームの内側に前記外プリフォームとは別に形成された内プリフォームを組み付けた合成樹脂製のプリフォーム組立体をブロー成形することにより、外層体と前記外層体の内側に分離可能に積層された内層体とを備えるとともに、口部、胴部及び底部を備えたボトル形状に形成された合成樹脂製の二重容器であって、前記内層体が、前記外層体の上端から突出する前記口部のキャップ装着部と、前記胴部と前記キャップ装着部との間の部分の外周面に設けられ、前記キャップ装着部の軸線を中心として螺旋状に延びる螺旋突起と、前記螺旋突起の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びるストッパ面を備えたストッパ突起とを有し、前記外層体が、前記軸線を中心として螺旋状に延び、前記螺旋突起が配置されるとともに前記螺旋突起と前記ストッパ突起とが通過可能な幅を有する螺旋通路と、前記螺旋通路の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びて前記ストッパ面に対向する係止面を備え、前記ストッパ突起が配置されるストッパ通路とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の二重容器は、上記構成において、前記螺旋通路及び前記ストッパ通路が、前記外層体を径方向に貫通する切欠きであるのが好ましい。
【0009】
本発明の二重容器は、上記構成において、前記螺旋通路及び前記ストッパ通路が、前記外層体の内面に設けられた溝であるのが好ましい。
【0010】
本発明の二重容器は、上記構成において、前記キャップ装着部に、キャップがねじ結合される雄ねじが設けられ、前記螺旋突起及び前記螺旋通路が、前記雄ねじとは逆方向に傾斜しているのが好ましい。
【0011】
本発明の二重容器は、上記構成において、前記外層体がポリエチレンテレフタレート製であり、前記内層体がポリプロピレン製であるのが好ましい。
【0012】
本発明のプリフォーム組立体は、外プリフォームと、前記外プリフォームとは別に形成され、前記外プリフォームの内側に組み付けられた内プリフォームと、を有する合成樹脂製で有底筒状のプリフォーム組立体であって、前記内プリフォームが、前記外プリフォームの上端から突出するキャップ装着部と、有底円筒状の延伸部と前記キャップ装着部との間の部分の外周面に設けられ、前記キャップ装着部の軸線を中心として螺旋状に延びる螺旋突起と、前記螺旋突起の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びるストッパ面を備えたストッパ突起とを有し、前記外プリフォームが、前記軸線を中心として螺旋状に延び、前記螺旋突起が配置されるとともに前記螺旋突起と前記ストッパ突起とが通過可能な幅を有する螺旋通路と、前記螺旋通路の下方側の端部から前記軸線に沿って下方に向けて延びて前記ストッパ面に対向する係止面を備え、前記ストッパ突起が配置されるストッパ通路とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の二重容器の製造方法は、上記プリフォーム組立体を形成する工程と、前記プリフォーム組立体をブロー成形する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内層体を外層体から容易に分離できる二重容器、当該二重容器を形成可能なプリフォーム組立体及び二重容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る二重容器の正面視での半断面図である。
図2図1に示す二重容器の要部の拡大正面図である。
図3図2におけるA-A線に沿う断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプリフォーム組立体の半断面図である。
図5】変形例に係る二重容器の要部の拡大正面図である。
図6図5におけるB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る合成樹脂製の二重容器1の構成について詳細に例示説明する。
【0017】
なお、本明細書、特許請求の範囲においては、上下方向は、図1に示すように二重容器1を正立姿勢とした状態における軸線Oに沿う上方、下方を意味するものとする。
【0018】
二重容器1は、外層体2と内層体3とを有する二重構造となっており、その外形形状は、口部11、胴部12及び底部13を有するボトル形状となっている。胴部12は、口部11の下端から下方に向けて拡径する肩状部分12aを有しており、肩状部分12aと底部13との間は円筒状となっている。
【0019】
図2に示すように、口部11は、キャップ(不図示)が装着されるキャップ装着部11aを有している。本実施形態では、キャップ装着部11aは円筒状となっており、その外周面にキャップがねじ結合される雄ねじ11bが一体に設けられている。なお、雄ねじ11bに替えて、キャップを打栓により装着する環状突起を設けるようにしてもよい。
【0020】
キャップ装着部11aに装着されるキャップとしては、例えば、ヒンジキャップ、ポンプを支持する装着キャップなど、キャップ装着部11aに取り付けられた状態のまま内容物を吐出可能な構成のものであるのが好ましいが、これに限られない。
【0021】
図1に示すように、外層体2は、二重容器1のキャップ装着部11aを除く部分の外郭を構成しており、キャップ装着部11aの下方に位置する外円筒部2aを有している。また、外円筒部2aの下端には、口部11の下方側部分を構成する円筒状部分2bを介して胴部12に対応する外胴部2cが一体に連ねて設けられ、外胴部2cの下端には底部13に対応する外底部2dが一体に連ねて設けられている。
【0022】
内層体3は、外層体2の内側に分離可能に積層されている。内層体3の外層体2に対する分離は、接着状態からの分離、相溶性のない樹脂積層物の場合における擬似接着状態からの分離、密着状態からの離隔、の何れであってもよい。
【0023】
図2に示すように、内層体3の上端部分は外層体2の上端から上方に突出しており、当該突出部分が口部11のキャップ装着部11aを構成している。すなわち、キャップ装着部11aは内層体3のみで構成されている。
【0024】
図3に示すように、内層体3のキャップ装着部11aの下方側の部分は、口部11の下方側部分を構成する内円筒部3aとなっており、内円筒部3aは外層体2の外円筒部2aの内側に重ねて配置されている。内円筒部3aの下方には、口部11すなわちキャップ装着部11aの開口に連なる収納部3bが一体に設けられている。収納部3bは、外層体2の外胴部2c及び外底部2dの内周面に剥離可能に積層されている。収納部3bの内部は収納空間Sとなっており、この収納空間Sに内容物を収納することができる。
【0025】
キャップ装着部11aは内円筒部3aよりも外径が大きくなっており、キャップ装着部11aの下端部分が外円筒部2aの上端部分に上方から当接している。また、内円筒部3aは収納部3bの上端部分よりも外径が大きくなっており、内円筒部3aの下端部分は外層体2の円筒状部分2bの上端部分に上方から当接している。これらにより、キャップ装着部11aは外円筒部2aに対して上下方向に位置決めされている。なお、キャップ装着部11aの下端部分と外円筒部2aの上端部分との当接及び内円筒部3aの下端部分と外層体2の円筒状部分2bの上端部分との当接の、何れか一方の当接によってのみキャップ装着部11aを外円筒部2aに対して上下方向に位置決めする構成としてもよく、これら両方の当接を設けない構成としてもよい。
【0026】
本実施形態では、外層体2はポリエチレンテレフタレート(PET)製となっており、内層体3はポリプロピレン(PP)製となっている。なお、外層体2及び内層体3を構成する材質としては種々のものを用いることができる。また、外層体2及び内層体3は、例えばこれらを共にポリエチレンテレフタレート製とするなど互いに同材質としてもよい。さらに、外層体2と内層体3との間にシリコン等の剥離剤を塗布すること等により外層体2に対する内層体3の剥離性を高めるようにしてもよい。さらに、外層体2及び内層体3は、それぞれ単層構造でも積層構造でもよい。
【0027】
図1に示すように、二重容器1は、内層体3を外層体2から容易に分離することができるようにするために、係合機構Mを有している。本実施形態では、二重容器1は、軸線Oを挟んで対称に一対の係合機構Mを有しているが、以下では、一方の係合機構Mについてのみ説明する。なお、二重容器1は、少なくとも1つの係合機構Mを有していればよく、その数は任意に変更可能である。
【0028】
図2図3に示すように、係合機構Mは、内層体3の胴部12とキャップ装着部11aとの間の部分、すなわち内円筒部3aの外周面に一体に設けられた螺旋突起20を有している。螺旋突起20は、内円筒部3aの外周面から径方向外側に向けて突出するとともに、口部11ないしキャップ装着部11aの軸線Oを中心として螺旋状に延びている。螺旋突起20の長さは、内円筒部3aの全周よりも短くなっている。
【0029】
本実施形態では、螺旋突起20は、キャップ装着部11aに設けられた雄ねじ11bとは逆方向に傾斜している。すなわち、螺旋突起20は、周方向に対して所謂逆ねじの方向に傾斜している。
【0030】
また、係合機構Mは、内円筒部3aの外周面に一体に設けられたストッパ突起21を有している。ストッパ突起21は、螺旋突起20の螺旋方向に沿った下方側の端部から下方に向けて突出して設けられている。ストッパ突起21は略矩形のブロック状となっており、ストッパ突起21の螺旋突起20の側を向く周方向側面は、螺旋突起20の下方側の端部から軸線Oに沿って下方に向けて延びるストッパ面21aとなっている。
【0031】
さらに、係合機構Mは、外層体2の外円筒部2aに、軸線Oを中心として螺旋状に延びる螺旋通路22を有している。本実施形態では、螺旋通路22は外層体2の外円筒部2aを径方向に貫通する切欠きとして形成されている。
【0032】
螺旋通路22は、螺旋突起20と同一方向に同一角度で傾斜しており、その内側に螺旋突起20が配置されている。また、螺旋通路22の軸線Oに沿う方向の幅(上下方向幅)は、螺旋突起20とストッパ突起21とが通過可能な幅となっている。
【0033】
本実施形態では、螺旋通路22の螺旋に沿った上方側の端部には、上方に向けて幅が徐々に広がる導入路24が連ねて設けられている。導入路24は、外円筒部2aの上面に開口している。
【0034】
さらに、係合機構Mは、螺旋通路22の下方側の端部に連なるストッパ通路23を有している。本実施形態では、ストッパ通路23も、螺旋通路22と同様に、外層体2の外円筒部2aを径方向に貫通する切欠きとして形成されている。
【0035】
ストッパ通路23は、ストッパ突起21に対応した大きさの矩形形状となっており、その内側にストッパ突起21が嵌合した状態で配置されている。ストッパ通路23は、螺旋通路22の下方側の端部から軸線Oに沿って下方に向けて延びる係止面23aを有している。係止面23aはストッパ面21aに接触した状態で対向している。なお、ストッパ通路23は、本実施形態のように、ストッパ突起21と同一形状、同一の大きさに形成されてストッパ突起21が隙間なく嵌合する構成とすることができるが、ストッパ突起21よりも大きく形成されてストッパ突起21との間に隙間が生じる構成であってもよい。
【0036】
螺旋突起20の下側を向く面は螺旋通路22の下方側の内面に当接しており、螺旋突起20の上側を向く面と螺旋通路22の上方側の内面との間には、ストッパ面21aの上下方向長さと同一ないし当該長さ以上の上下方向間隔が空けられている。
【0037】
上記構成を有する二重容器1は、口部11を通して収納空間Sに内容物を充填した後、キャップを雄ねじ11bにねじ結合してキャップ装着部11aに装着して使用される。このとき、キャップ装着部11aには、キャップがねじ結合される際に、外層体2の外円筒部2aに対して軸線Oを中心とした回転方向の力が作用することになるが、ストッパ突起21がストッパ通路23に嵌合し、ストッパ面21aが係止面23aに係止されるため、キャップ装着部11aの外円筒部2aに対する軸線Oを中心とした回転が規制される。したがって、キャップの装着時に内層体3が外層体2に対して空転することを防止して、キャップ装着部11aに対するキャップの装着作業を容易に行い得るようにすることができる。また、キャップ装着部11aに装着されたキャップを緩み方向に回転させた場合には、螺旋突起20が螺旋通路22の側壁端に係止されるので、キャップをキャップ装着部11aから螺脱させる際に、内層体3が外層体2に対して空転することを防止して、キャップ装着部11aからのキャップの取り外し作業を容易に行い得るようにすることができる。
【0038】
キャップとして、ヒンジキャップ、ポンプを支持する装着キャップなどのキャップ装着部11aに取り付けられた状態のまま内容物を吐出可能な構成のものを用いた場合には、キャップをキャップ装着部11aに装着する際にのみ、キャップ装着部11aに軸線Oを中心とした回転方向の力が作用し、装着後は、キャップをキャップ装着部11aから着脱することなくキャップ装着部11aに取り付けた状態のまま内容物を吐出することができるので、ストッパ突起21がストッパ通路23から離脱したり係合機構Mが破損したりすることはない。
【0039】
一方、上記構成を有する二重容器1では、内容物を使い切った際などに、内層体3を外層体2から容易に分離させることができる。
【0040】
二重容器1が、例えば油を含む内容物を収納した場合などにおいて、使用後の内層体3が内容物の付着によりリサイクルができない程度に汚れている場合であっても、汚れのない外層体2を汚れた内層体3から容易に分離させて、外層体2のみを分別してリサイクルないしリユースすることが可能となる。
【0041】
より具体的には、使用者はまず、キャップ装着部11aを把持して外層体2に対して上方に引き上げ、あるいはキャップ装着部11aに装着されたキャップを把持してキャップとともにキャップ装着部11aを外層体2に対して上方に引き上げることで、ストッパ突起21をストッパ通路23に対して上方に離脱させ、ストッパ面21aの係止面23aとの軸線Oを中心とした周方向の係合を解除する。このとき、胴部12の肩状部分12aにおいて内層体3が外層体2に下側から係合して外層体2に対する上方への相対移動が規制されているため、内層体3の肩状部分12aに相当する部分を僅かに変形させながらキャップ装着部11aを外層体2に対して上方に引き上げる。
【0042】
次に、キャップ装着部11aあるいはキャップを締め付け方向に回転させ、螺旋突起20及びストッパ突起21を螺旋通路22に沿って移動させる。螺旋通路22は雄ねじ11bに対して逆ねじの方向に傾斜しているので、キャップを締め付け方向に回転させて螺旋突起20及びストッパ突起21を螺旋通路22に沿って移動させることで、内層体3は外層体2に対して上方に移動することになる。このように、キャップ装着部11aあるいはキャップを締め付け方向に回転させることで、内層体3の肩状部分12aに相当する部分を、外円筒部2aを通して容器外部に引き出し可能な程度に変形させながら内層体3を外層体2に対して上方に移動させることができる。このとき、キャップ装着部11aあるいはキャップを締め付け方向に回転させる力が、螺旋通路22に対する螺旋突起20の移動によって増大されて内層体3を外層体2に対して上方に移動させる力となるので、単に内層体3を外層体2に対して真っ直ぐに引き上げる場合に比べて、内層体3を外層体2に対して引き上げるための操作力を低減することができる。
【0043】
そして、螺旋突起20及びストッパ突起21が導入路24に達するまでキャップ装着部11aあるいはキャップを締め付け方向に回転させた後、キャップ装着部11aあるいはキャップを外層体2に対して上方に引き上げる。これにより、外層体2の外円筒部2aを通して内層体3の全体を容器外部に順次引き出して内層体3を外層体2と分離することができる。
【0044】
このように、本実施形態の二重容器1は、上記構成の係合機構Mを有するので、キャップ装着部11aないしキャップ装着部11aに装着したキャップを上方に引き上げ、次いで周方向に回転させた後に、さらに上方に引き上げることで、より小さな操作力で内層体3を外層体2から容易に分離させることができる。
【0045】
また、本実施形態の二重容器1では、螺旋突起20及び螺旋通路22を、キャップ装着部11aに設けられてキャップがねじ結合される雄ねじ11bとは逆方向に傾斜したものとしたので、キャップ装着部11aに装着したキャップを把持して内層体3を外層体2から分離させる操作を行う際に、当該操作を、キャップ装着部11aに対してキャップを締め付け方向に回転させて行うことができるので、当該操作の最中にキャップがキャップ装着部11aから離脱することを防止して、当該操作をより容易に行い得るようにすることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の二重容器1では、外層体2をポリエチレンテレフタレート製とし、内層体3をポリプロピレン製としたので、内層体3をより変形が容易なものとして、内層体3を外層体2から分離させる操作をより容易に行い得るようにすることができる。
【0047】
さらに、本実施形態の二重容器1では、外層体2をポリエチレンテレフタレート製とし、内層体3をポリプロピレン製とした場合であっても、上記構成の係合機構Mを有することにより、内層体3を外層体2から容易な操作で剥離させることができるようにして、内層体3を外層体2から分離させる操作を容易に行い得るようにすることができる。
【0048】
上記構成を有する二重容器1は、図4に示す本発明の一実施形態に係る合成樹脂製のプリフォーム組立体30をブロー成形することにより形成することができる。
【0049】
プリフォーム組立体30は、外プリフォーム31と、外プリフォーム31の内側に組み付けられた内プリフォーム32とを有しており、全体として有底筒状となっている。
【0050】
外プリフォーム31は外層体2に対応するものであり、外円筒部31aと、外円筒部31aの下端に一体に連なる有底円筒状の外側延伸部31bとを備えている。外円筒部31aはブロー成形によっては延伸されない部分であり、二重容器1の外円筒部2aと同一の形状となっている。外円筒部31aには、二重容器1の外円筒部2aと同様に、螺旋通路22と同一形状の螺旋通路33、ストッパ通路23と同一形状のストッパ通路34及び導入路24と同一形状の導入路35が設けられており、ストッパ通路34は係止面23aと同一形状の係止面34aを有している。
【0051】
外プリフォーム31は、外層体2と同様にポリエチレンテレフタレート製となっており、ポリエチレンテレフタレートを用いた射出成形によって上記形状に形成されている。
【0052】
内プリフォーム32は内層体3に対応するものであり、キャップ装着部32a、内円筒部32b及び内円筒部32bの下端に一体に連なる有底円筒状の内側延伸部32cを備えている。キャップ装着部32aには、雄ねじ11bに対応する雄ねじ32dが一体に設けられている。キャップ装着部32a及び内円筒部32bは、ブロー成形によっては延伸されない部分であり、それぞれ二重容器1のキャップ装着部11a、内円筒部3aと同一の形状となっている。内円筒部32bには、二重容器1の内円筒部3aと同様に、螺旋突起20と同一形状の螺旋突起36と、ストッパ突起21と同一形状のストッパ突起37とが設けられており、ストッパ突起37はストッパ面21aと同一形状のストッパ面37aを有している。
【0053】
内プリフォーム32は、内層体3と同様にポリプロピレン製となっており、外プリフォーム31とは別に、ポリプロピレンを用いた射出成形によって上記形状に形成されている。
【0054】
プリフォーム組立体30は、射出成形によって上記形状に形成された外プリフォーム31の内側に、外プリフォーム31とは別に射出成形によって上記形状に形成された内プリフォーム32を組み付けて形成される。
【0055】
ここで、上記組付けにおいては、まず、内プリフォーム32の内側延伸部32cが、外プリフォーム31の外円筒部31aから外側延伸部31bの内側に向けて挿入され、ストッパ突起37が外円筒部31aにまで達すると、ストッパ突起37次いで螺旋突起20が順に導入路35から螺旋通路33に導入される。次に、内プリフォーム32は、外プリフォーム31に対して回転されながらさらに外プリフォーム31に向けて挿入される。そして、螺旋突起36及びストッパ突起37が螺旋通路33に沿って移動し、ストッパ突起37が螺旋通路33の下方側の端部にまで達すると、次に、内プリフォーム32は、外プリフォーム31に対して軸線Oに沿う下方に向けて押し込まれる。これにより、ストッパ突起37がストッパ通路34に嵌合し、内層体3は外層体2に対して周方向に回り止めされる。また、キャップ装着部32aの下端部分が外円筒部31aの上端部分に軸方向から当接し、内円筒部32bの下端部分が外側延伸部31bの内周面の上端部分の段差に軸方向から当接して、内プリフォーム32は外プリフォーム31に対して上下方向に位置決めされる。
【0056】
このようにして、内プリフォーム32を外プリフォーム31に対して容易に組み付けることができる。また、係合機構Mを備えた二重容器1を形成するためのプリフォーム組立体30の構成を簡素なものとして、そのコストを低減することができる。
【0057】
次に、本発明の一実施形態に係る二重容器の製造方法について説明する。
【0058】
本実施形態に係る二重容器の製造方法は、上記構成を有するプリフォーム組立体30を用いて行うことができる。
【0059】
まず、上記の通りの方法で外プリフォーム31の内側に内プリフォーム32を組み付ける。
【0060】
次に、プリフォーム組立体30をブロー成形する。ブロー成形としては、例えば延伸ロッドを用いた2軸延伸ブロー成形を採用することができる。なお、ブロー成形における加圧媒体としては、加圧エアー、加圧液体などを用いることができる。このようにして、上記構成を有する二重容器1を形成する。二重容器1がブロー整形されると、拡径する肩状部分12aが形成されることにより、内層体3の外層体2に対する上方への抜けが防止されるとともに外層体2と内層体3との相対位置が決まる。
【0061】
そして、二重容器1の内部の収納空間Sに内容物を充填した後、口部11のキャップ装着部11aにキャップを装着する。
【0062】
このように、本実施形態に係るプリフォーム組立体30ないし二重容器1の製造方法によれば、螺旋通路33とストッパ通路34とを備えた外プリフォーム31の内側に、螺旋突起36とストッパ突起37とを備えた内プリフォーム32を組み付けて形成されたプリフォーム組立体30をブロー成形するだけの簡単な工程で、外層体2と内層体3とを容易に分離可能な二重容器1を、容易且つ安価に製造することができる。
【0063】
図5図6に変形例として示すように、二重容器1は、螺旋通路22及びストッパ通路23が、それぞれ外層体2の内面に設けられた溝として形成されたものとすることもできる。すなわち、螺旋通路22及びストッパ通路23は、それぞれ外層体2の外円筒部2aを径方向に貫通することなく、外円筒部2aの内周面から径方向外側に向けて所定の深さで凹む凹形状の溝として形成されたものとすることができる。
【0064】
このように、螺旋通路22及びストッパ通路23を、それぞれ外層体2の内面に設けられた溝として形成されたものとした場合には、螺旋通路22、ストッパ通路23、螺旋突起20及びストッパ突起21は外円筒部2aの外周面に露出しないので、係合機構Mが外部から視認されないようにして、二重容器1の美観を高めることができる。
【0065】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 二重容器
2 外層体
2a 外円筒部
2b 円筒状部分
2c 外胴部
2d 外底部
3 内層体
3a 内円筒部
3b 収納部
11 口部
11a キャップ装着部
11b 雄ねじ
12 胴部
12a 肩状部分
13 底部
20 螺旋突起
21 ストッパ突起
21a ストッパ面
22 螺旋通路
23 ストッパ通路
23a 係止面
24 導入路
30 プリフォーム組立体
31 外プリフォーム
31a 外円筒部
31b 外側延伸部
32 内プリフォーム
32a キャップ装着部
32b 内円筒部
32c 内側延伸部
32d 雄ねじ
33 螺旋通路
34 ストッパ通路
34a 係止面
35 導入路
36 螺旋突起
37 ストッパ突起
37a ストッパ面
S 収納空間
M 係合機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6