(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161997
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】揚水機能を有するポーラスコンクリート
(51)【国際特許分類】
E01C 7/10 20060101AFI20231031BHJP
E01C 11/24 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
E01C7/10
E01C11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072683
(22)【出願日】2022-04-26
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】592090315
【氏名又は名称】株式会社佐藤渡辺
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】野口 純也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 寿信
(72)【発明者】
【氏名】浅野 嘉津真
(72)【発明者】
【氏名】若杉 弘之
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 開示
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AF01
2D051AF03
(57)【要約】
【課題】 保水性を有する透水性コンクリート舗装層内に揚水された水分の蒸発による気化熱で路面温度の上昇を抑制する。
【解決手段】 水、セメント、粗骨材、細骨材を配合してなる揚水機能を有するポーラスコンクリートにおいて、前記粗骨材は、7号砕石であり、細骨材率が10~30%の範囲において、水セメント比21~29%として混合され、硬化後のコンクリートの透水係数が1.0×10
-2cm/秒以上、吸上げ高さが7cm以上であることを特徴とする揚水機能を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、セメント、粗骨材、細骨材を配合してなる揚水機能を有するポーラスコンクリートであって、
前記粗骨材は、7号砕石であり、
所定の細骨材率で混合され、硬化後のコンクリートの透水係数が1.0×10-2cm/秒以上、吸上げ高さが7cm以上であることを特徴とする揚水機能を有するポーラスコンクリート。
【請求項2】
細骨材率が10~30%の範囲において、水セメント比21~29%として混合された請求項1に記載の揚水機能を有するポーラスコンクリート。
【請求項3】
好ましくは、細骨材率が20%において、水セメント比22~24%として混合された請求項2に記載の揚水機能を有するポーラスコンクリート。
【請求項4】
さらに、高性能AE減水剤が前記セメント質量の1%添加されてなる請求項1に記載の揚水機能を有するポーラスコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚水機能を有するポーラスコンクリートに係り、舗装材等として利用され、保水性を有するコンクリート舗装層内に揚水された水分の蒸発による気化熱で路面温度の上昇を抑制する揚水機能を有するポーラスコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、園路や広場、建物外構等に使われる景観舗装材として、透水性を備えたポーラスコンクリートブロックなどの舗装資材や各種の特殊舗装が広く施工されている。これらにおいても、近年は、人の集まる空間における使用者ニーズの多様化に伴い、景観性にさらに付加価値をつけた舗装資材や舗装材料が求められている。
【0003】
その一例として、都市部におけるヒートアイランド現象の一因として挙げられている夏季の舗装路面温度の上昇の解消を図ることができる舗装材や舗装技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、製紙スラッジ焼却灰からなる所定粒径の多孔質微粒子を保水材として含有する保水性ブロックが開示されている。この保水性ブロックは、保水性と揚水性能とを有するので、舗装用ブロックとして用いたとき、舗装用ブロック内の水分を蒸発させ、その気化熱によって路面温度が低減される。
【0005】
特許文献2には、舗装を構成するコンクリート内に吸湿性及び放湿性を有する吸放湿体を含有する透水性コンクリートが提案されている。この透水性コンクリートによれば、吸放湿体の効果によって透水性コンクリートに保水された水を、コンクリートと吸放湿体との間の微細間隙を介した毛細管現象や水分移動により、透水性コンクリート表面方向に揚水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-308858号公報
【特許文献2】特開2004-68449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1で開示された保水性ブロックは、基層部と表層部とが一体成形されたブロックで、基層部と表層部とでそれぞれ保水材として製紙スラッジ焼却灰からなる多孔質微粒子を異なる含有量だけ添加することで、表層部の透水係数が基層部よりも大きくなるようにし、また表層部の吸上げ高さが基層部より小さくなるように設定され、これにより降雨による基層部への水の移動が容易になり、保水効果が高まる。さらに、表層部の吸上げ高さを基層部より小さくなるように設定され、これにより晴天時の基層部で保水された水分の急激な蒸発を抑え、晴天が連続した場合でも温度抑制効果の持続性を確保される。このように、ブロックを製造する際、基層部と表層部を形成するために、保水材の添加量を細かく調整する必要があり、製造工程が煩雑になるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2で開示された揚水性舗装では、透水性コンクリート層内での揚水性能を確保するために、吸湿性及び放湿性を有する、たとえばポリアクレート系繊維等からなる吸放湿体を所定量添加されている。これにより、透水性コンクリート層において、吸放湿体同士の吸放湿性作用による水分移動、吸放湿体とコンクリートとの間の微細間隙を介する毛細管現象による水分移動等が複合的に作用し、透水性コンクリート層に保水された水分を透水性コンクリート層の表面方向に揚水するようになっている。このように、本発明では、特別に添加される吸放湿体の種類の違い及び添加量が透水性コンクリート層での揚水性能に影響を与える度合いを十分検討する必要がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、当初よりポーラスコンクリートの構成材料として用いられていた骨材の配合割合を適切に設定するのみで、ポーラスコンクリートの特徴である透水機能を維持しつつ、コンクリート内に所定の微細空隙が形成され、毛細管現象が発揮されるようにし、揚水した水分の蒸発による気化熱で路面温度の上昇を抑制する揚水機能を有するポーラスコンクリートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、水、セメント、粗骨材、細骨材を配合してなる揚水機能を有するポーラスコンクリートであって、前記粗骨材は、7号砕石であり、所定の細骨材率で混合され、硬化後のコンクリートの透水係数が1.0×10-2cm/秒以上、吸上げ高さが7cm以上であることを特徴とする。
【0011】
細骨材率が10~30%の範囲において、水セメント比21~29%として混合されることが好ましい。
【0012】
好ましくは、細骨材率が20%において、水セメント比22~24%として混合されることが好ましい。
【0013】
さらに、高性能AE減水剤が前記セメント質量の1%添加されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保水性を有するポーラスコンクリート舗装層内に揚水され保水された水分がさらに蒸発することで得られる気化熱で舗装の表面温度の上昇を抑制することが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】砕石7号と砂とを所定の細骨材率(10,20,30%)で混合してなるポーラスコンクリートにおける経過時間と吸い上げ高さとの関係を示したグラフ。
【
図2】砕石7号と砕砂とを所定の細骨材率(10,20,30%)で混合してなるポーラスコンクリートにおける経過時間と吸い上げ高さとの関係を示したグラフ。
【
図3】細骨材率と透水係数との関係を、細骨材率ごとに水セメント比を変化させて求めたグラフ。
【
図4】舗装表面の温度低減効果の検証試験のための試験装置の一例を示した説明図。
【
図5】舗装表面の温度低減効果の試験における温度データの経時変化を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の揚水機能を有するポーラスコンクリートにおいては、舗装材として利用される場合に以下の要求性能を満たすような骨材配合を決定するために各種試験を行った。その内容について説明する。
[要求性能の設定]
本発明では、揚水機能を有するポーラスコンクリートが有する揚水性能(吸い上げ効果)に加えて、ポーラスコンクリートが有する本来の透水性能を保持する必要があるため、その要求性能(目標値)を以下のように設定した(表-1)。
(1)吸上げ効果(吸水性試験):想定する舗装厚(10cm)における水分の吸上げ高さ:7cm以上(吸い上げ開始6時間)
吸水性試験はインターロッキングブロック(ILブロック)舗装設計施工要領吸水性試験に準拠するが、試験体はブロックに代えて円柱試験体(φ100×200)を用い、吸上げ高さの評価は、30分後における質量差分(%)でなく、6時間後における質量差分(%)から水位(cm)を算出することとした。
(2)割裂引張強度:1.20N/mm2(曲げ強度換算2.5N/mm2程度)
(3)透水係数k=1.0×10-2cm/秒以上
【0017】
【0018】
[試験項目・試験方法]
上記要求性能の確認は、以下の試験項目・試験方法により行うこととした(表-2)。
【0019】
1)坂口稔:ポーラスコンクリートの透水試験及び空隙率試験方法に関する研究、コンクリート工学年次論文集、VOL.31、No.1、2009
【0020】
[配合試験・使用材料一覧表]
本発明の揚水性能を有するポーラスコンクリートの好ましい配合の検討においては、既往の試験から得られた適正配合(セメント量、水セメント比、添加剤種類、添加量)をベースに、細骨材種類の拡張(砂、砕砂)、細骨材率の配合割合の検討を行うこととした(表-3)。具体的には、予備試験で決定した骨材配合比[7号砕石:砂=4:1]を基準として、セメント量を330kg/m3、水セメント比(21~29%程度で3~4水準、細骨材率の配合割合(3水準)を行った。また、高性能AE減水剤としては、ポリカルボン酸エーテル系化合物を使用した。
【0021】
なお、本試験の使用材料としては、すでに透水性コンクリート舗装の好適な使用材料として実績のある各種の材料を使用した(表-4)が、使用骨材については、現場舗設での施工性(締固め)の点、および予備試験によって毛細管現象による揚水に有利となる空隙径を小さく形成させることが確認された7号砕石と砂の組み合わせに加え、7号砕石と砕砂の組み合わせについての検討を加えた。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
[試験結果]
試験結果のうち、細骨材として、砂、砕砂を用いたそれぞれの配合時の、複数の細骨材率(s/a=10,20,30%)、複数の水セメント比(W/C)ごとの吸上げ高さを図-1,2に、透水係数を図-3に示した。要求仕様(目標性状値)としての吸い上げ高さについては、当初基準配合とした7号砕石:砂=8:2(4:1)を中心値として、砕砂を用いた場合にも十分な吸い上げ高さが確保され、砕砂においてs/aの増加に伴って吸い上げ高さの顕著な増加が確認された。透水係数については、もっとも高い吸い上げ高さが認められた、細骨材に砂を用いたs/a=30%のケースを除き、k(cm/秒)=1.0×10-2以上を満たしていることが確認された。
試験結果全体を総括すると、表-7,8に示したように、使用骨材(7号砕石、砂、砕砂)における各骨材配合割合において、対象となる細骨材率(s/a)において、水セメント比(W/C)が共通範囲欄内であれば、ポーラスコンクリート試験体の各要求仕様(目標性状値)を満足することが確認された。
【0027】
【0028】
【0029】
[舗装表面の温度低減効果の検証]
目標性状値を満たす基準配合(7号砕石:砂=8:2、W/C=23%、)で揚水舗装版試験体1(以下、揚水舗装版1)を作製し、路面温度低減の効果について、吸水性試験と同条件下において、揚水舗装版1と透水性アスファルト舗装試験体5における舗装表面(上面)の温度測定を行い、揚水舗装版による温度低減効果についての検証を行った。
図4(a)は揚水舗装版用試験装置10、(b)は透水性アスファルト舗装用試験装置20の概略構成を示している。
【0030】
(試験装置の構成)
揚水舗装版用試験装置10では、側面に水位調整孔3を設けることで水位を55mmに保持可能な水槽2(40×40×15cm)を用い、揚水舗装版1は下端から5mmが水浸した状態で台上に水槽2内保持されている。透水性アスファルト舗装用試験装置20では、透水性アスファルト舗装試験体5は、通常の歩道舗装における舗装構成を想定し、透水性アスファルト舗装(4cm)は下層の路盤材6(11cm)上に形成されている。以上の試験装置10,20を用い、日射が確保できた条件下の路面温度に相当する試験体上面における温度変化を3昼夜にわたり測定し、揚水舗装版による温度低減効果の検証を行った。
【0031】
(試験結果)
図-5は、試験体1,5の上面温度、気温、水温の温度変化を示している。図-5から、今回の測定環境下(最高気温25℃)において、揚水舗装版試験体1は透水性アスファルト舗装試験体5に対して舗装表面温度を10℃程度低減できることが確認された。
【0032】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 揚水舗装版試験体
2 水槽
3 水位調整孔
5 透水性アスファルト舗装試験体
6 路盤材
10 揚水舗装版用試験装置
20 透水性アスファルト舗装用試験装置