(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161998
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/30 20060101AFI20231031BHJP
F16F 13/14 20060101ALI20231031BHJP
F16F 13/28 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16F13/30
F16F13/14 Z
F16F13/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072685
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047AB05
3J047CA16
3J047FA04
(57)【要約】
【課題】磁性流体を使用しつつ、簡易な構成で剛性を十分変化させることができる、防振装置を提供する。
【解決手段】本発明の防振装置100は、内側取付部材1と、筒状の外側取付部材2と、内側取付部材1と外側取付部材2との間に配置された弾性体3と、弾性体3を室壁の少なくとも一部とする液室4と、を含む、防振装置100であって、外側取付部材2には、液室4に向けて径方向に突出する凸部23が形成されており、液室4には、磁性流体MFが封入されており、外側取付部材2の凸部23の周方向における少なくとも一部は、ヨーク241及びヨーク241に巻回された電磁コイル242を含む電磁石24の少なくとも一部により構成されており、電磁石24は、周方向に複数個設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側取付部材と、筒状の外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材との間に配置された弾性体と、前記弾性体を室壁の少なくとも一部とする液室と、を含む、防振装置であって、
前記外側取付部材には、前記液室に向けて径方向に突出する凸部が形成されており、
前記液室には、磁性流体が封入されており、
前記外側取付部材の前記凸部の周方向における少なくとも一部は、ヨーク及び前記ヨークに巻回された電磁コイルを含む電磁石の少なくとも一部により構成されており、
前記電磁石は、周方向に複数個設けられている、防振装置。
【請求項2】
前記複数個の電磁石のそれぞれは、それぞれ前記凸部を構成し径方向に延びる2つの径方向ヨーク部と、当該2つの径方向ヨーク部どうしを連結し周方向に延びる周方向ヨーク部と、前記周方向ヨーク部に巻回された電磁コイルと、を有している、請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記ヨークは、それぞれ前記凸部を構成し径方向に延びる複数の径方向ヨーク部と、前記複数の径方向ヨーク部どうしを連結し周方向の全体にわたって延びる周方向ヨーク部と、を含んでおり、
前記複数個の電磁石のそれぞれは、前記複数の径方向ヨーク部のうちの1つの径方向ヨーク部と、当該1つの径方向ヨーク部に巻回された電磁コイルと、を有している、請求項1に記載の防振装置。
【請求項4】
前記外側取付部材は、前記防振装置への入力荷重を検出する荷重センサーと、コントローラーと、を内蔵しており、
前記コントローラーは、前記荷重センサーによって検出された荷重に基づいて、前記電磁コイルに流す電流値を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の防振装置。
【請求項5】
前記外側取付部材は、前記電磁石を含むアクチュエーター部と、振動発生部又は振動受部に取り付けられる部材取付部と、を有しており、
前記アクチュエーター部と前記部材取付部とは、前記荷重センサー及び弾性体を介して接続されている、請求項4に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、剛性や減衰特性を所望に変更できる可変剛性型の防振装置として、弾性体に面する液室内に磁性流体を封入した、防振装置が知られている。例えば、特許文献1には、磁性流体が封入された液室を第1液室と第2液室とに隔てる隔壁内に、両液室を連通する周方向通路とヨーク及びコイルからなる1つの電磁石とを設け、コイルに電流を流すことで磁性流体の粘性を変化させ、剛性を変化させることができる、防振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術では、液室を2つに分ける隔壁内に、周方向通路とヨーク及びコイルからなる1つの電磁石とが形成されているため、防振装置の構造が複雑になる。また、より十分な剛性変化を所期して電磁石(コイル)の数を増やす場合には、さらに装置の構造が複雑になり、ひいては、スペースの増大やコスト高になる等の課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、磁性流体を使用しつつ、簡易な構成で剛性を十分変化させることができる、防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防振装置は、
内側取付部材と、筒状の外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材との間に配置された弾性体と、前記弾性体を室壁の少なくとも一部とする液室と、を含む、防振装置であって、
前記外側取付部材には、前記液室に向けて径方向に突出する凸部が形成されており、
前記液室には、磁性流体が封入されており、
前記外側取付部材の前記凸部の周方向における少なくとも一部は、ヨーク及び前記ヨークに巻回された電磁コイルを含む電磁石の少なくとも一部により構成されており、
前記電磁石は、周方向に複数個設けられている。
本発明の防振装置によれば、磁性流体を使用しつつ、簡易な構成で剛性を十分変化させることができる。
【0007】
本発明の防振装置において、
前記複数個の電磁石のそれぞれは、それぞれ前記凸部を構成し径方向に延びる2つの径方向ヨーク部と、当該2つの径方向ヨーク部どうしを連結し周方向に延びる周方向ヨーク部と、前記周方向ヨーク部に巻回された電磁コイルと、を有していてもよい。
この場合、防振装置の構成がより簡易となる。
【0008】
本発明の防振装置において、
前記ヨークは、それぞれ前記凸部を構成し径方向に延びる複数の径方向ヨーク部と、前記複数の径方向ヨーク部どうしを連結し周方向の全体にわたって延びる周方向ヨーク部と、を含んでおり、
前記複数個の電磁石のそれぞれは、前記複数の径方向ヨーク部のうちの1つの径方向ヨーク部と、当該1つの径方向ヨーク部に巻回された電磁コイルと、を有していてもよい。
この場合、防振装置の剛性をより大きく変化させやすくなる。
【0009】
本発明の防振装置において、
前記外側取付部材は、前記防振装置への入力荷重を検出する荷重センサーと、コントローラーと、を内蔵しており、
前記コントローラーは、前記荷重センサーによって検出された荷重に基づいて、前記電磁コイルに流す電流値を制御することが好ましい。
この場合、簡易なシステム構成で、防振装置の剛性を制御できる。
【0010】
本発明の防振装置において、
前記外側取付部材は、前記電磁石を含むアクチュエーター部と、振動発生部又は振動受部に取り付けられる部材取付部と、を有しており、
前記アクチュエーター部と前記部材取付部とは、前記荷重センサー及び弾性体を介して接続されていることが好ましい。
この場合、荷重センサーの故障を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁性流体を使用しつつ、簡易な構成で剛性を十分変化させることができる、防振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防振装置を、当該防振装置の軸線を含む
図3のY-Y線に沿う断面により示す、断面図である。
【
図2】
図1の防振装置の作動時の変形を説明するための、
図1と同様の断面による、半部断面図であり、
図2(a)は、ダンパーロッドが相対的に下側に変位した直後の状態を示す図、
図2(b)は、ダンパーロッドが相対的に上側に変位した直後の状態を示す図である。
【
図3】
図1の防振装置を、
図1のX-X線に沿う断面により示す、一部断面図である。
【
図4】
図1の防振装置に形成される磁気回路を説明するための、
図3のA部拡大図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る防振装置を、当該防振装置の軸線を含む
図6のZ-Z線に沿う断面により示す、半部断面図である。
【
図6】
図5の防振装置を、
図1と同様の断面により示す、一部断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る防振装置を、当該防振装置の軸線を含む
図6のZ-Z線に沿う断面により示す、半部断面図である。
【
図8】
図7の防振装置を含む防振システムの全体の構成を説明するための、説明図である。
【
図9】
図7の防振装置の防振形態を説明するための、等価モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のいくつかの実施形態に係る防振装置について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
本明細書において、「軸方向」とは、防振装置の軸線Oに平行な方向を指し、一部の図面において符号「AD」で示し、「周方向」とは、防振装置の軸線Oを周回する方向を指し、一部の図面において符号「CD」で示し、「径方向」とは、防振装置の軸線Oに直交する方向を指し、一部の図面において符号「RD」で示す。また、「径方向内側」とは、径方向において軸線Oに近い側を指し、「径方向外側」とは、径方向において軸線Oから遠い側を指す。さらに、「上」又は「下」とは、防振装置を例えば車両に搭載したときに、「上側」又は「下側」となる側を指す。また、本明細書において、「ヨーク」とは、電磁コイルが巻回される鉄心部分と、当該鉄心部分で生じる磁束を他の部分に伝える継鉄(ヨーク)部分と、を総称するものとする。
なお、以下に説明する実施形態の防振装置100は、ストラットマウントとして構成されているが、任意の種類の防振装置として構成されてよい。
【0014】
(第1実施形態)
図1~
図4は、本発明の第1実施形態に係る防振装置100を説明するための図面である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る防振装置を、当該防振装置の軸線を含む
図3のY-Y線に沿う断面により示す、断面図である。
図2は、
図1の防振装置の作動時の変形を説明するための、
図1と同様の断面による、半部断面図であり、
図2(a)は、ダンパーロッドが相対的に下側に変位した直後の状態を示す図、
図2(b)は、ダンパーロッドが相対的に上側に変位した直後の状態を示す図である。
図3は、
図1の防振装置を、
図1のX-X線に沿う断面により示す、一部断面図である。
図4は、
図1の防振装置に形成される磁気回路を説明するための、
図3のA部拡大図である。
【0015】
本発明の第1実施形態に係る防振装置100は、車両のショックアブソーバー等のダンパーの上部に配置されるストラットマウントとして構成されている。
図1及び
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る防振装置100は、内側取付部材1と、筒状の外側取付部材2と、内側取付部材1と外側取付部材2との間に配置された本体ゴム(弾性体)3と、本体ゴム3を室壁の一部とする液室4と、を含んでいる。
本実施形態において、
図1に示すように、ストラットマウントとしての防振装置100における、内側取付部材1の下部には、ダンパーロッド51及び図示しないシリンダーからなるショックアブソーバーと、バンプキャップ52とが、ボルトB1等で連結され、外側取付部材2の下部には、コイルスプリング53が装着され、これら、ストラットマウントとしての防振装置100、ショックアブソーバー、バンプキャップ52、コイルスプリング53の全体で車両のサスペンション装置が構成されている。但し、防振装置100は、例えば、車両のキャビンに装着されるキャブマウントや、その他の任意の種類の防振装置として構成されてもよく、それらの場合には、防振装置100は、上記のようなサスペンション装置の一部として構成されなくてよい。
【0016】
図1に示すように、本実施形態において、内側取付部材1は、振動発生部及び振動受部のいずれか一方となる部材(本例では、ダンパーロッド51)に取り付けられるように、構成されている。
本実施形態において、より具体的に、内側取付部材1は、径方向に延びる底部1aと、底部1aから軸方向上側に向けて立設された側部1bと、側部1bの上端から径方向外側に延びる頂部1cと、を備え、底部1aと側部1bとで形成される窪み部にダンパーロッド51の上端部が嵌入され、ボルトB1等により嵌着されるように構成されている。頂部1cは、防振装置100のリバウンド時(後述する、
図2(a)の状態)における、ストッパーとして機能する。
また、本実施形態において、内側取付部材1の頂部1cの軸方向下部には、防振装置100のリバウンド時(後述する、
図2(a)の状態)における、内側取付部材1と後述する外側取付部材2との当接による衝撃等を和らげるリバウンドストッパーゴムとして機能する、アッパーストッパーゴム11が、加硫及び/又は接着等の手段により、固着されている。本例において、アッパーストッパーゴム11は、後述する本体ゴム3から連続して当該本体ゴム3と一体に構成されている。但し、アッパーストッパーゴム11は、本体ゴム3と別体に構成されていてもよい。
【0017】
本実施形態において、内側取付部材1は、取付金具であり、金属で構成されている。より具体的に、内側取付部材1は、後述する電磁石24との間で適切な磁気回路が形成されるように、磁性体、即ち透磁率の高い金属で構成されていることが好ましく、より具体的には、鉄及び/又はコバルト等の強磁性を示す金属(強磁性体)で全体が構成され、又は、当該金属を含んでいることが好ましい。本実施形態では、内側取付部材1は、鉄で構成されている。
【0018】
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、外側取付部材2は、筒状(環状)の部材であり、ボルトB2等によって、振動発生部及び振動受部の他方となる部材(例えば、図示しない車両の車体)に取り付けられ、当該部材を支持するように、構成されている。筒状の外側取付部材2の中心軸線が、防振装置100の軸線Oとなる。
本実施形態において、より具体的に、外側取付部材2は、外側取付部材本体部20と、電磁石24と、を含んでいる。外側取付部材本体部20は、非磁性体、即ち、上述した内側取付部材1を構成する金属及び後述するヨーク241を構成する金属よりも透磁率の低い、金属又は樹脂で構成されていることが好ましく、より具体的には、アルミニウム及び/又は一定の強度を有する硬質の樹脂等で構成されていることが好ましい。本実施形態では、外側取付部材本体部20は、アルミニウムで構成されている。
また、本実施形態において、外側取付部材2(より具体的に、外側取付部材本体部20)の軸方向下部には、防振装置100のバウンド時(後述する、
図2(b)の状態)における、外側取付部材2と下側部材(本例では、より具体的に、バンプキャップ52)との当接による衝撃等を和らげるバウンドストッパーゴムとして機能する、ロアストッパーゴム21が、加硫及び/又は接着等の手段により、固着されている。
電磁石24の構成及び外側取付部材のより具体的な構成については、追って詳述する。
【0019】
なお、
図1~
図2(a)及び(b)に示すように、本実施形態において、内側取付部材1の頂部1cと当該頂部1cの下部に固着されたアッパーストッパーゴム11、及び、外側取付部材2と当該外側取付部材2の下部に固着されたロアストッパーゴム21は、それぞれ、ダンパーロッド51(ひいては、内側取付部材1)が軸方向上下に相対変位した場合のストッパーとなる。
【0020】
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、内側取付部材1と外側取付部材2との間には、弾性体としての本体ゴム3が配置されている。本体ゴム3は、内側取付部材1(より具体的には、内側取付部材1の側部1b)と外側取付部材2(より具体的には、外側取付部材本体部20の径方向内側端縁)とのそれぞれに、加硫及び/又は接着等の手段により、固着されている。なお、本体ゴム3は、内側取付部材1と外側取付部材2とのそれぞれに、例えば、
図7に示されるような取付プレート32等を介して固着されていてもよい。
【0021】
本実施形態において、本体ゴム3は、
図1に示すように、軸方向上側に位置する山部33aと、軸方向下側に位置する山部33bと、の2つの山部を有している。図の例では、本体ゴム3は、2つの山部33a及び33bどうしが薄厚ゴム(薄い径方向厚さのゴム)で連結されて、全体として一体に形成されており、ひいては、本体ゴム3は、本体ゴム3自体の内部に、当該2つの山部33a及び33bによってそれらの間に形成された凹部31を有している。しかし、本体ゴム3は、2つの山部33a及び33bどうしが薄厚ゴムで連結されず、2つの山部33a及び33bどうしが互いに離隔され別体に形成されていてもよい。但し、本体ゴム3は、防振装置100に径方向入力があった場合の、後述する外側取付部材2の凸部23と内側取付部材1(より具体的には、内側取付部材1の側部1b)との当接による衝撃音等を防止するために、2つの山部33a及び33bどうしが上記の薄厚ゴムで連結されていることが好ましい。
【0022】
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、液室4は、本体ゴム3(弾性体)を室壁の少なくとも一部とするものである。より具体的に、図の例において、液室4は、本体ゴム3と外側取付部材2とを室壁としており、さらに具体的には、液室4は、本体ゴム3の2つの山部33a及び33bの間に形成された凹部31と、外側取付部材2と、の間に形成されている。しかし、液室4の構成は、本体ゴム3を室壁の少なくとも一部とする限り特に制限はなく、例えば、本体ゴム3と外側取付部材2と内側取付部材1とを室壁としていてもよい。
図1に示すように、本実施形態において、後述するように外側取付部材2に凸部23が設けられていることにより、液室4は、凸部23と当該凸部23に径方向に隣接する室壁との間に形成されたすき間部4cを介して、液室上部4aと液室下部4bとが連通可能なように構成されている。
【0023】
図3を参照すれば、本実施形態において、液室4は、周方向の全体にわたって連続して存在している。なお、
図3において、液室4の径方向外側端縁4eoが点線で示されているが、当該径方向外側端縁4eoの径方向内側であって紙面裏側(及び、表側)にも、本体ゴム3の径方向外側端縁から連続する液室4が存在するとの意味である。
【0024】
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、外側取付部材2には、液室4に向けて径方向に突出する凸部23が形成されている。即ち、外側取付部材2は、凸部23を有している。より具体的に、本実施形態において、外側取付部材2の凸部23は、軸方向において、本体ゴム3の上下両側の山部33aと33bとの間、ひいては、図の例では本体ゴム3に形成された凹部31内に配置されることとなり、これにより、前述のとおり、凸部23と当該凸部23に径方向に隣接する液室4の室壁(本例では、より具体的には本体ゴム3の前記薄厚部)との間に、液室4における比較的径方向幅の狭いすき間部4cが形成される。
【0025】
図3を参照すれば、本実施形態において、外側取付部材2の凸部23は、周方向の全体にわたって連続して延在している。しかし、外側取付部材2の凸部23は、周方向の全体にわたって連続して延在していなくてもよく、例えば、周方向において、後述する電磁石24のヨーク241(より具体的には、後述する径方向ヨーク部241r)のみを外側取付部材2の凸部23として、当該凸部23を周方向に断続的に設けてもよい。但し、後述する磁性流体MFによりより効果的に防振装置100の剛性を変化させる観点からは、本実施形態のように、外側取付部材2の凸部23は、周方向の全体にわたって連続して延在していることが好ましい。
【0026】
液室4には、磁性流体MFが封入されている。
磁性流体MFは、磁界中に置くと粘性が高まり、また、印加磁界に応じて粘性が変化する流体である。本実施形態において、液室4には磁性流体MFが封入されているので、磁性流体MFに印加される磁界(磁束密度)を適切に制御することにより、液室4内の磁性流体MFの粘度を変化させて、防振装置100の剛性ひいては減衰力を変化させ制御することができる。
磁性流体MFとしては、例えば、平均粒子径が0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上の鉄粒子が、エチレングリコール若しくはポリαオレフィン等の液体中に高濃度で分散されてなるMR流体等が挙げられる。
【0027】
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、外側取付部材2の凸部23の周方向における少なくとも一部は、ヨーク241及び当該ヨーク241に巻回された電磁コイル242を含む電磁石24の少なくとも一部により構成されている。
即ち、
図3を参照すれば、本実施形態において、外側取付部材2の凸部23(
図3における、液室4の径方向外側端縁4eoより径方向内側の外側取付部材2の部分)の周方向における少なくとも一部(本例では、一部)は、電磁石24の少なくとも一部(本例では、一部)であるヨーク241(より具体的には、後述する径方向ヨーク部241r)により構成されている。より具体的に、
図3に示すように、本例において、凸部23は、周方向において、12個の径方向ヨーク部241rと、これらの間に介在されている外側取付部材本体部20と、によって構成されている。
なお、前述のように、例えば、周方向において、後述する電磁石24のヨーク241(より具体的には、径方向ヨーク部241r)のみを外側取付部材2の凸部23として、当該凸部23を周方向に断続的に設ける場合、外側取付部材2の凸部23の周方向における全部が電磁石24の少なくとも一部により構成されることとなる。
【0028】
ここで、本明細書において、「電磁石」とは、ヨーク及び当該ヨークの周りに巻回された電磁コイルを含むものを指す。
図1及び
図3に示すように、本実施形態において、電磁石24は、ヨーク241及び当該ヨーク241に巻回された電磁コイル242を含んでいる。
本実施形態において、電磁石24は、周方向に複数個設けられている。より具体的に、
図3の例では、電磁石24は、外側取付部材2に設けられ、また、周方向に均等の間隔で周方向に沿って6個設けられている。但し、電磁石24の数は、複数であれば特に制限はなく、周方向に2~5個又は7個以上であってもよい。しかし、磁性流体MFによりより効果的に防振装置100の剛性を変化させる観点からは、電磁石24は、周方向に6個以上設けられることが好ましく、周方向に6~10個設けられることがより好ましい。
本実施形態において、
図3に示すように、複数個(
図3の例では、6個)の電磁石24(ひいては、ヨーク241及び電磁コイル242)の形状及び大きさは、すべて互いに同一である。但し、複数個の電磁石24(ひいては、ヨーク241及び電磁コイル242)の形状又は大きさは、少なくとも2個の電磁石24の間で互いに異なっていてもよい。しかし、液室4内の磁性流体MFに印加される磁界の大きさ(磁束)が周方向でできるだけ均等になるようにするとともに、防振装置100の構成を簡素化し製造もし易くする観点からは、本実施形態のように、複数個の電磁石24(ひいては、ヨーク241及び電磁コイル242)の形状及び大きさは、すべて互いに同一であることが好ましい。
また、上述の通り、本実施形態において、
図3に示すように、複数個の電磁石24は、互いに周方向に等間隔に設けられている。但し、複数個の電磁石24は、互いに周方向に等間隔に設けられていなくてもよい。しかし、上記と同様の観点からは、本実施形態のように、複数個の電磁石24は、互いに周方向に等間隔に設けられていることが好ましい。
【0029】
ヨーク241は、内側取付部材1との間で適切な磁気回路が形成されるように、磁性体、即ち透磁率の高い金属で構成されていることが好ましく、より具体的には、鉄及び/又はコバルト等の強磁性を示す金属(強磁性体)で全体が構成され、又は、当該金属を含んでいることが好ましい。本実施形態では、ヨーク241は、鉄で構成されている。
【0030】
図3を参照すれば、本実施形態において、複数個の電磁石24のそれぞれ、即ち、1つの電磁石24は、2つの径方向ヨーク部241rと、周方向ヨーク部241cと、電磁コイル242と、を有している。
【0031】
本実施形態において、2つの径方向ヨーク部241rは、それぞれ前述の外側取付部材2の凸部23(より具体的には、当該凸部23の少なくとも周方向の一部)を構成している。即ち、径方向ヨーク部241rは、その先端側(径方向内側端側)が、液室4に向けて径方向に突出している。
2つの径方向ヨーク部241rは、径方向に延びている。ここで、本明細書において、「径方向に延びている」とは、防振装置100を軸線Oの方向から投影して視た平面視(
図3参照)において、軸線Oを通る直線の延在方向である径方向に沿って(即ち、径方向に対して0°の角度で)延びている場合のみならず、平面視において、径方向成分を有し径方向に対して比較的小さな角度(例えば、45°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは15°以下の角度)で傾斜した方向に延びていることも、含むものとする。
図3に示すように、本実施形態では、各径方向ヨーク部241rは、径方向に対して約15°の角度で傾斜した方向に延びている。
【0032】
本実施形態において、周方向ヨーク部241cは、2つの径方向ヨーク部241rどうし(より具体的には、2つの径方向ヨーク部241rの径方向外側端どうし)を連結している。ヨーク241は、2つの径方向ヨーク部241rと周方向ヨーク部241cとが連続して形成され、一体化されている。
周方向ヨーク部241cは、周方向に延びている。ここで、本明細書において、「周方向に延びている」とは、防振装置100を軸線Oの方向から投影して視た平面視(
図3参照)において、軸線Oを中心とする円の延在方向である周方向に沿って(即ち、周方向に沿って円弧状に)延びている場合のみならず、上記円の接線方向に又は上記円の接線方向に対して比較的小さな角度(例えば、45°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは15°以下の角度)で傾斜して延びていることも、含むものとする。
図3に示すように、本実施形態では、周方向ヨーク部241cは、上記円の接線方向に延びている。
【0033】
本実施形態において、電磁コイル242は、ヨーク241のうちの周方向ヨーク部241cの周りに巻回されている。電磁コイルの巻数は特に制限されないが、磁性流体MFによりより効果的に防振装置100の剛性を変化させる観点からは、可能な範囲で巻き数が多いことが好ましい。
【0034】
上記のように構成された、本実施形態に係る防振装置100は、例えば、防振装置100の外部(例えば、車両の車体側)に設けられたコントローラーにより、電磁コイル242に連結された図示しないリード線を介して、電磁コイル242に流す電流が制御される。
【0035】
次に、
図2(a)、(b)及び
図4等を参照しつつ、上述した構成の本実施形態に係る防振装置100の作用及び制御方法等について、説明する。
図2は、本実施形態に係る防振装置100の作動時の変形を説明するための、半部断面図であり、
図2(a)は、ダンパーロッドが相対的に下側に変位した直後の状態を示す図、
図2(b)は、ダンパーロッドが相対的に上側に変位した直後の状態を示す図である。なお、
図2(a)、(b)において、防振装置100は、右側半部の構成も図示された左側半部の構成と同じである。
図2(a)、(b)において、上述の通り、液室4には、磁性流体MFが封入されている。
図2(a)に示すように、車両の上下運動により、ダンパーロッド51ひいては内側取付部材1が外側取付部材2に対し相対的に軸方向下側に変位(移動)する場合(図中、太矢印で示す)には、液室上部4a(
図1参照)の磁性流体MFが、すき間部4c(
図1参照)を通り、液室下部4b側に移動する。一方、
図2(b)に示すように、車両の上下運動により、ダンパーロッド51ひいては内側取付部材1が外側取付部材2に対し相対的に軸方向上側に変位(移動)する場合(図中、太矢印で示す)には、液室下部4b(
図1参照)の磁性流体MFが、すき間部4c(
図1参照)を通り、液室上部4a側に移動する。これら、磁性流体MFの、すき間部4cを介した移動により、一定の減衰力が生じる。さらに、上記の相対変位の際に、電磁石24の電磁コイル242に電流を流すと、電磁石24に生じた磁束が磁性流体MFを通ることにより磁性流体MFの粘性が増大し、ダンパーロッド51ひいては内側取付部材1を軸方向上下に変位させるための反力が増大し、ひいては、防振装置100の剛性を増大させることができる。また、磁性流体MFの粘度は、電磁コイル242に流す電流の大きさ(電流値)が増大するのに伴って、増大する。従って、上記電磁コイル242に流す電流の大きさ(電流値)を制御することにより、防振装置100の剛性を適時可変とし、ひいては、防振装置100の剛性を好適に制御することができる。
【0036】
なお、内側取付部材1に上下方向に力が加わり、内側取付部材1と外側取付部材2との間で上下方向の相対変位が生じた場合について上述したが、内側取付部材1に径方向(例えば、車両の前後方向及び/又は左右方向)に力が加わり、内側取付部材1と外側取付部材2との間で径方向の相対変位が生じた場合でも、特に、すき間部4cを含む液室4内に保持された磁性流体MFにより、防振装置100の特に径方向の剛性も増加させることができ、当該径方向の相対変位を抑制することができる。
【0037】
電磁コイル242に流す電流値は、防振装置100の外部(例えば、車両の車体側)、又は、
図7~
図9を参照して後述する第3実施形態のように防振装置100内、に設けられたコントローラーによって制御することができる。
例えば、車両が良路を走行中で、車両の上下運動が少ない場面では、ダンパーロッド51の反力(ショックアブソーバーの減衰力)が高くないため、コントローラーは、電磁コイル242に電流を流さないか、又は、電磁コイル242に流す電流値を小さくし、防振装置100の剛性を下げることにより、ロードノイズ等の高周波の振動の伝達を軽減することができる。一方、例えば、車両が大きく揺れる悪路を走行中である場面や、運転者がハンドルを操作し車両が旋回するような場面では、コントローラーは、電磁コイル242に電流を流し、又は、電磁コイル242に流す電流値を大きくし、防振装置100の剛性を上げることにより、ダンパーロッド51を含むショックアブソーバーの減衰力を積極的に活用して、振動を抑制することができる。このような、コントローラーによる電流値の制御により、結果として、操縦安定性及び乗心地性を犠牲にすることなく、NV性能(騒音・振動抑制性能)を向上することができる。
ここで、車両が、上述のどの場面にあるかは、例えば、
図7~
図9を参照して後述する第3実施形態のように、荷重センサーによって検出された荷重に基づいて判断することができる。また、電磁石24に流す電流値は、コントローラーにより、連続的に制御されても(即ち、連続的に変化させられても)、断続的に制御されても(即ち、断続的に変化させられても)よい。
【0038】
図4は、
図1の防振装置に形成される磁気回路を説明するための、
図3のA部拡大図である。
図1及び
図3に示す本実施形態に係る防振装置100において、電磁石24の電磁コイル242に電流を流すと、ヨーク241(即ち、2つの径方向ヨーク部241r及び周方向ヨーク部241c)が磁化され、これにより、
図4(
図4では、電磁石24の外部に生じる磁力線MLのみを示す)に示すように、磁力線MLが、電磁石24の周方向ヨーク部241c(
図4では、図示されない)、同じ電磁石24の周方向一方側の径方向ヨーク部241r(241ra(
図3も参照))、内側取付部材1、同じ電磁石24の周方向他方側の径方向ヨーク部241r(241rb(
図3も参照))、同じ電磁石のもとの周方向ヨーク部241c、の順に通り、これらの間で磁気回路が形成される。
磁力線MLはまた、
図4の上側部分に一部示すように、1つの電磁石24の周方向ヨーク部241c(
図4では、図示されない)、当該電磁石24の周方向一方側の径方向ヨーク部241r(241ra(
図3も参照))、当該電磁石24に周方向に隣接する他の電磁石24の周方向他方側の径方向ヨーク部241r(241rb(
図3も参照))(
図4では、図示されない)、もとの電磁石24のもとの周方向ヨーク部241c、の順に通り、これらの間でも磁気回路が形成される。
そのため、本実施形態において、径方向ヨーク部241rと内側取付部材1との間に設けられている液室4ひいては液室4に封入されている磁性流体MFは、磁気回路上に置かれ磁界が印加されることとなり、電磁石24の電磁コイル242に電流を流すことにより、粘性を増大させ又は変化させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態において、
図4に示すように、防振装置100は、周方向に隣接する径方向ヨーク部241ra及び241rb(より具体的には、径方向ヨーク部241ra及び241rbそれぞれの先端部(径方向内側端部))どうしが、互いに異なる極となるように、構成され及び/又は制御されることが好ましい。ここで、「周方向に隣接する径方向ヨーク部241ra及び241rbどうし」とは、同一の電磁石24内にあって周方向に互いに隣り合う径方向ヨーク部241ra及び241rbどうしと、周方向に隣り合う別の電磁石24内にあって周方向に互いに隣り合う径方向ヨーク部241ra、241rbどうしと、の双方を含む(
図3参照)。この場合、電磁石24の電磁コイル242に電流を流すことにより生じる磁力線(磁束)どうしが相殺されることがなく、液室4内の磁性流体MFに印加される磁界の大きさ(磁束密度)を、より効果的に大きくすることができる。本実施形態では、
図4に示すように、防振装置100は、径方向ヨーク部241ra(より具体的に、径方向ヨーク部241raの先端部(径方向内側端部))がN極、径方向ヨーク部241rb(より具体的に、径方向ヨーク部241rbの先端部(径方向内側端部))がS極、となるように、構成され及び/又は制御されている。
但し、防振装置100は、周方向に隣接する径方向ヨーク部241ra及び241rbどうしが、互いに異なる極となるように、構成され及び/又は制御されなくてもよい。
【0040】
本実施形態において、上述のように、周方向に隣接する径方向ヨーク部241ra及び241rbどうしが、互いに異なる極となるようにするために、例えば、複数(
図3の例では、6個)の電磁石24における、それぞれの電磁コイル242のヨーク241に対する巻回し方(周方向の一方側から見て、右巻きか左巻きか)、及び/又は、それぞれの電磁コイル242に流す電流の向き(周方向に見て、同一の向きか異なる向きか)を、調整することができる。
例えば、本実施形態において、複数の電磁石24における、それぞれの電磁コイル242の巻回し方は、互いに同一(周方向の一方側から見て、右巻き又は左巻き)としてよい。この場合、複数の電磁石24における、それぞれの電磁コイル242に流す電流の向きを互いに同一(周方向に見て、同一の向き)となるように単純に制御するだけで、周方向に隣接する径方向ヨーク部241ra及び241rbどうしが、互いに異なる極となるようにすることができる。
但し、周方向に隣接する径方向ヨーク部241ra及び241rbどうしが、互いに異なる極となるようにするための、構成や制御方法は、特に制限されない。
【0041】
次に、上述した実施形態による主な効果を、以下に説明する。
まず、本実施形態において、外側取付部材2には、液室4に向けて径方向に突出する凸部23が形成されており、液室4には、磁性流体MFが封入されており、外側取付部材2の凸部23の周方向における少なくとも一部は、ヨーク241及び当該ヨーク241に巻回された電磁コイル242を含む電磁石24の少なくとも一部により構成されており、電磁石24は、周方向に複数個設けられている。
即ち、本実施形態によれば、液室4に磁性流体MFが封入され、外側取付部材2の液室4に向けて突出する凸部23の少なくとも一部が電磁コイル242を含む電磁石24の一部により構成されているので、電磁コイル242に電流を流すことにより、液室4内の磁性流体MFの粘性を変化させ、ひいては、防振装置100の剛性を変化させることができる。
また、本実施形態によれば、外側取付部材2は液室に向けて突出する凸部23を有し、当該凸部23の少なくとも一部が電磁石24の少なくとも一部により構成されているだけの、簡素な構成であるので、例えば、液室を2つに分ける隔壁を設け、当該隔壁内に周方向通路とヨーク及び電磁コイルとからなる1つの電磁石が形成される場合に比べて、防振装置100の構造が簡易になり、また、十分な剛性変化を所期して電磁石の数を増やす場合にも防振装置100の構造が複雑にならない。
さらに、本実施形態によれば、電磁石24(ひいては、電磁コイル242)は周方向に複数個設けられているので、液室4内の磁性流体MFに印加される磁界の大きさ(磁束密度)を十分大きくすることができ、ひいては、防振装置100の剛性を十分大きくし及び/又は十分変化させることができる。
以上より、本実施形態に係る防振装置100によれば、磁性流体を使用しつつ、簡易な構成で剛性を十分変化させることができる。
【0042】
本実施形態において、複数個の電磁石24のそれぞれは、それぞれ凸部23を構成し径方向に延びる2つの径方向ヨーク部241rと、2つの径方向ヨーク部241rどうしを連結し周方向に延びる周方向ヨーク部241cと、周方向ヨーク部241cに巻回された電磁コイル242と、を有している。
この場合、電磁石24については、いわば平面視コ字状のヨーク241に電磁コイル242を巻回しただけのシンプルな形状の電磁石24を、周方向に複数個配置すればよいだけとなるので、防振装置100の構成がより簡易になる。
【0043】
また、本実施形態において、周方向に複数個設けられている電磁石24(ひいては、ヨーク241及び電磁コイル242)の形状及び大きさは、すべて互いに同一である。
この場合、防振装置100は、構成がさらに簡素化され、製造もし易くなる。
【0044】
さらに、本実施形態において、1つの電磁石24は2個の径方向ヨーク部241rを有し、当該電磁石24が周方向に複数個設けられている。即ち、本実施形態において、周方向の全体で径方向ヨーク部241rの総数は、偶数個である。
この場合、例えば、複数の電磁石24における、それぞれの電磁コイル242の巻回し方を互いに同一(周方向の一方側から見て、右巻き又は左巻き)とし、かつ、複数の電磁石24における、それぞれの電磁コイル242に流す電流の向きを互いに同一(周方向に見て、同一の向き)となるように単純に制御するだけで、必ず、周方向に隣接する径方向ヨーク部241r(より具体的には、径方向ヨーク部241rの先端部(径方向内側端部))どうしが、互いに異なる極となり、ひいては、液室4内の磁性流体MFに印加される磁界の大きさ(磁束密度)を、より効果的に大きくすることができる。
【0045】
また、本実施形態において、内側取付部材1の頂部1cと当該頂部1cの下部に固着されたアッパーストッパーゴム11、及び、外側取付部材2と当該外側取付部材2の下部に固着されたロアストッパーゴム21は、それぞれ、ダンパーロッド51(ひいては、内側取付部材1)が軸方向上下に相対変位した場合のストッパーとなる。
この場合、特に防振装置100が上下方向の大入力を受けた場合に、ダンパーロッド51(ひいては、内側取付部材1)の上下方向の過剰なストロークを抑制し、防振装置100が支持する車体等にダンパーロッド51を含むショックアブソーバーの減衰力を十分伝えることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置100について、
図5~
図6を参照しつつ説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材又は部位等については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係る防振装置100は、電磁石24の構成のみ、本発明の第1実施形態に係る防振装置100と異なり、その他の点は、第1実施形態の防振装置100と実質的に同じである。以下では、主に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態に係る防振装置を、当該防振装置の軸線を含む
図6のZ-Z線に沿う断面により示す、半部断面図である。
図6は、
図5の防振装置を、
図1と同様の断面により示す、一部断面図である。なお、
図5において、防振装置100は、右側半部の構成も図示された左側半部の構成と同じである。
図5及び
図6を参照すれば、本実施形態において、電磁石24のヨーク241は、それぞれ外側取付部材2の凸部23を構成し径方向に延びる複数の径方向ヨーク部241rと、当該複数の径方向ヨーク部241rどうしを連結し周方向の全体(即ち、全周)にわたって延びる周方向ヨーク部241cと、を含んでいる。
【0048】
より具体的に、本実施形態において、複数の径方向ヨーク部241rは、第1実施形態と同様に、それぞれ径方向に延びており、また、外側取付部材2の凸部23(より具体的には、当該凸部23の少なくとも周方向の一部)を構成している。即ち、径方向ヨーク部241rは、その先端側(径方向内側端側)が、液室4に向けて径方向に突出している。また、
図6に示すように、径方向ヨーク部241rは、軸線Oを中心に放射状に(即ち、径方向に沿って)多数(
図6の例では、24個)、互いに周方向に等間隔に設けられている。
さらに、本実施形態において、周方向ヨーク部241cは、第1実施形態と同様に、周方向に延びており、複数の径方向ヨーク部241r(より具体的には、複数の径方向ヨーク部241rの径方向外側端)どうしを連結しているが、第1実施形態とは異なり、周方向ヨーク部241cは、周方向の全体にわたって延びている。
複数の径方向ヨーク部241rと周方向ヨーク部241cとは、別体に構成されて溶接等により互いに連結されたものであってもよいし、一体に連続して形成されたものであってもよい。また、複数の径方向ヨーク部241rと周方向ヨーク部241cとは、互いに単に接触しているだけであってもよい。
本実施形態において、ヨーク241の材質は、前述した第1実施形態と同様である。
【0049】
また、
図6を参照すれば、本実施形態において、複数個の電磁石24のそれぞれは、上述の複数の径方向ヨーク部241rうちの1つの径方向ヨーク部241rと、当該1つの径方向ヨーク部241rに巻回された電磁コイル242と、を有している。
このように、本実施形態においては、第1実施形態とは異なり、電磁コイル242は、周方向ヨーク部241cではなく径方向ヨーク部241rの周りに巻回されている。
なお、本明細書において、電磁石24は、1つのコイルを有する毎に、1つとカウントされる。
【0050】
以上のように構成された本実施形態に係る防振装置100によれば、電磁コイル242が、軸線Oを中心に放射状に配置された多数の径方向ヨーク部241rに巻回されているので、たとえば、前述の第1実施形態に係る防振装置100に比べ、限られたスペースの中で、電磁コイル242の数及び/又は電磁コイル242の総巻き数(周方向ヨーク部241cよりも径方向ヨーク部241rに巻く方が、巻けるヨーク部の総長さを長くすることができる)をより多くすることができ、ひいては、防振装置100の剛性をより大きく変化させやすくなる。
本実施形態の防振装置100についての、その他の構成及び効果は、前述した第1実施形態の防振装置100と同様である。
【0051】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、防振装置100は、周方向に隣接する径方向ヨーク部241r(より具体的には、径方向ヨーク部241rの先端部(径方向内側端部))どうしが、互いに異なる極となるように、構成され及び/又は制御されることが好ましい。
そのため、本実施形態において、例えば、
図6に示すように、電磁コイル242が巻回されている周方向に隣り合う2つの径方向ヨーク部241rの間に、電磁コイル242が巻回されていない1つの径方向ヨーク部241rが設けられていることが好ましい。この場合、例えば、複数の電磁コイル242の巻回し方を互いに同一(軸線O側から見て、右巻き又は左巻き)とし、かつ、複数の電磁コイル242に流す電流の向きを互いに同一(軸線Oから径方向に見て、同一の向き)となるように単純に制御するだけで、周方向に隣接する径方向ヨーク部241r(より具体的には、径方向ヨーク部241rの先端部(径方向内側端部))どうしが、互いに異なる極となり、ひいては、液室4内の磁性流体MFに印加される磁界の大きさ(磁束密度)を、より効果的に大きくすることができる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る防振装置100について、
図7~
図9を参照しつつ説明する。第3実施形態において、第2実施形態と同様の部材又は部位等については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第3実施形態に係る防振装置100は、外側取付部材2の構成のみ、本発明の第2実施形態に係る防振装置100と異なり、その他の点は、第2実施形態の防振装置100と実質的に同じである。以下では、主に、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
図7は、本発明の第3実施形態に係る防振装置を、当該防振装置の軸線を含む
図6のZ-Z線に沿う断面により示す、半部断面図である。
図8は、
図7の防振装置を含む防振システムの全体の構成を説明するための、説明図である。
図9は、
図7の防振装置の防振形態を説明するための、等価モデル図である。
図7及び
図8に示すように、本実施形態において、外側取付部材2は、荷重センサー6と、コントロールユニット7と、を内蔵している。
図8に示すように、コントロールユニット7は、コントローラー71と、アンプ72と、から構成されている。従って、本実施形態において、外側取付部材2は、荷重センサー6と、コントローラー71と、を内蔵している。なお、「内蔵している」とは、対象部材を、必ずしも外側取付部材2内に完全に埋没させていなくてもよく、外側取付部材2の外部ではなく外側取付部材2内に保持していればよい、との意味である。
【0054】
なお、荷重センサー6を含む本実施形態の防振装置100の防振形態は、マス要素M、ダンパー要素C及びバネ要素Kを用いて、
図9のようにモデル化することができる。
図9において、ダンパー要素Cの部分が、液室4内に封入された磁性流体MFに対応する。
【0055】
荷重センサー6は、防振装置100への入力荷重を検出する。より具体的に、本実施形態では、荷重センサー6は、
図7に示すように、外側取付部材2の後述するアクチュエーター部2a側に入力される荷重を検出する。荷重センサー6の構成や種類は、防振装置100への入力荷重が検出できる限り、特に制限されない。荷重センサー6は、例えば、ロードセル、圧電素子等でもよく、また、相対距離から換算するものとしてホール素子や静電容量センサー等であってもよい。
コントローラー71は、例えば、コントローラー71内に記憶されたプログラムを実行することにより、アンプ72が電磁コイル242に流す電流を指示し制御する。コントローラー71は、例えばCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを、1つ又は複数含んで構成されてよい。コントローラー71とアンプ72又はその他の部材との間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
アンプ72は、コントローラー71からの指示に従い、電磁コイル242に電流を流す。
なお、
図7に示すように、本実施形態の防振装置100を含む防振システムは、防振装置100の外部(例えば、車両の車体)に、コントロールユニット7(コントローラー71及びアンプ72)を起動するための電源8を備えていてよい。但し、電源8も防振装置100内に内蔵してもよい。
【0056】
本実施形態において、コントローラー71は、荷重センサー6によって検出された荷重(以下、「検出荷重」ともいう。)に基づいて、電磁コイル242に流す電流値を制御する。
より具体的に、コントローラー71は、検出荷重を用いて、例えば次のようにして、当該電流値を制御することができる。
例えば、検出荷重により、車両への荷重の入力が小入力(例えば、車両が良路を走行中で、車両の上下運動が少ない場面)であると判断される場合には、電流を流さないか、又は、電流値を大幅に下げることにより、防振装置100の剛性を下げて、ロードノイズ等の高周波の振動の伝達を抑制する。
一方、例えば、検出荷重により、車両への荷重の入力が大入力(例えば、車両が大きく揺れる悪路を走行中である場面や、運転者がハンドルを操作し車両が旋回するような場面)であると判断される場合には、電流値を大きくし、防振装置100の剛性を上げることにより、ダンパーロッド51を含むショックアブソーバーの減衰力を積極的に活用して、振動を抑制する。この際、ショックアブソーバーの減衰力を効率よく活用できるような係数を設定し、入力荷重と剛性を最適になるように調整してもよい。この係数は、線形でも、非線形でもよい。より具体的に、ショックアブソーバーの減衰力は、特に微小入力ではフリクションによるものの占める割合が大きくなり、また、ショックアブソーバー内のオイルによる粘性減衰もバルブによって非線形特性となっていることから、これらの組合せが最適になるような入力~出力の関係になるよう、当該係数を調整したほうがよい場合がある。
さらに、例えば、検出荷重により、車両への荷重の入力が上記小入力と大入力との間の中入力(例えば、車両が普通の路面を走行中の場面)であると判断される場合には、防振装置100が検出荷重に比例するような減衰力を発揮するよう、電流値を調整する。
ここで、上記荷重入力が、小入力か大入力か中入力かの判断は、例えば、検出荷重の振幅や、検出荷重の振幅変動の周波数を用いて行うことができる。当該判断を検出荷重の振幅を用いて行うばあい、例えば、当該振幅が2N以下である場合を小入力、10~20Nである場合を大入力、それらの中間の値である場合を中入力、と判断し制御してもよい。また、当該判断を検出荷重の振幅変動の周波数を用いて行うばあい、例えば、当該周波数が25Hz以上である場合を小入力、5Hz以下である場合を大入力、それらの中間の値である場合を中入力、と判断し制御してもよい。
【0057】
本実施形態において、
図7に示すように、外側取付部材2は、電磁石24を含むアクチュエーター部2aと、振動発生部又は振動受部に取り付けられる部材取付部2bと、を有している。
ここで、
図7に示すように、外側取付部材2のうち、アクチュエーター部2aは、全体として部材取付部2bよりも径方向内側に配置された部分であり、電磁石24を含んでいる。一方、外側取付部材2のうち、部材取付部2bは、全体としてアクチュエーター部2aよりも径方向外側に配置された部分である。本実施形態において、部材取付部2bは、コントロールユニット7を内蔵している。
【0058】
また、本実施形態において、
図7に示すように、アクチュエーター部2aと部材取付部2bとは、荷重センサー6、及び、接続ゴム22とロアストッパーゴム21とからなる弾性体を介して接続されている。換言すれば、荷重センサー6及び上記弾性体が、アクチュエーター部2aと部材取付部2bとの間に介在している。
より具体的に、
図7の例において、荷重センサー6は、アクチュエーター部2aの上端側で径方向外側に突出する突出部2apと、部材取付部2bの下端側で径方向内側に突出する突出部2bpと、の間に、取付プレート61を介して固着されている。また、上記弾性体の一部をなす接続ゴム22は、径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分とを有しており、アクチュエーター部2aと、部材取付部2bの突出部2bpと、の間に固着されている。さらに、上記弾性体を構成する接続ゴム22とロアストッパーゴム21との、少なくとも接続ゴム22を含む少なくとも一部は、比較的高剛性のゴムから構成されている。
【0059】
以上のように構成された本実施形態に係る防振装置100によれば、外側取付部材2は、荷重センサー6とコントローラー71とを内蔵し、また、コントローラー71は、荷重センサー6によって検出された荷重に基づいて電磁コイルに242に流す電流値を制御するので、コントローラー71等を例えば複雑な配線や多くの端子等を用いて別途防振装置100の外部に設ける必要がなく、例えば電源8等を除く防振装置100単品で入力荷重に応じた剛性の制御ができ、換言すれば、簡易なシステム構成で、防振装置100の剛性を制御できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、外側取付部材2の、アクチュエーター部2aと部材取付部2bとは、荷重センサー6及び弾性体を介して接続されている。
この場合、荷重センサー6のみがアクチュエーター部2aと部材取付部2bとの間に介在している場合に比べ、入力荷重の一部が当該弾性体によって負担され、入力荷重の全部は荷重センサー6によって負担されない。従って、この場合、荷重センサー6の故障を抑制することができる。
本実施形態の防振装置100についての、その他の構成及び効果は、前述した第2実施形態の防振装置100と同様である。
【0061】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る防振装置は、任意の防振装置に好適に利用でき、特に、例えば、車両のショックアブソーバー等のダンパーの上部に配置されるストラットマウントや、車両のキャビンに装着されるキャブマウント等として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1:内側取付部材、 1a:底部、 1b:側部、 1c:頂部、
11:アッパーストッパーゴム、
2:外側取付部材、 2a:アクチュエーター部、 2ap:突出部、
2b:部材取付部、 2bp:突出部、 20:外側取付部材本体部、
21:ロアストッパーゴム(弾性体)、 22:接続ゴム(弾性体)、 23:凸部、
24:電磁石、 241:ヨーク、 241c:周方向ヨーク部、
241r、241ra、241rb:径方向ヨーク部、 242:電磁コイル、
3:本体ゴム(弾性体)、 31:凹部、 32:取付プレート、
33a、33b:山部、
4:液室、 4a:液室上部、 4b:液室下部、 4c:すき間部、
4eo:径方向外側端、
51:ダンパーロッド、 52:バンプキャップ、 53:コイルスプリング、
6:荷重センサー、 61:取付プレート、
7:コントロールユニット、 71:コントローラー、 72:アンプ、
8:電源、
100:防振装置、
AD:軸方向、 B1、B2:ボルト、 C:ダンパー要素、 CD:周方向、
K:バネ要素、 M:マス要素、 MF:磁性流体、 ML:磁力線、 O:軸線、
RD:径方向