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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162001
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】アンモニア燃料船
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20231031BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20231031BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20231031BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B63B11/04 Z
B63H21/38 B
F02B43/10 Z
F02M25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072693
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】520357718
【氏名又は名称】日本シップヤード株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593172223
【氏名又は名称】今治造船株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬明
(72)【発明者】
【氏名】町野 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】富岡 浩二
(72)【発明者】
【氏名】米田 智亮
(72)【発明者】
【氏名】橋本 成泰
(57)【要約】
【課題】漏洩したアンモニアガスの拡散を抑制することができるアンモニア燃料船を提供する。
【解決手段】アンモニア燃料船1は、アンモニアを燃料として使用するアンモニア燃料エンジン4と、アンモニアを燃料として使用する発電機5と、アンモニア燃料エンジン4及び発電機5を設置する機関室9と、を備えている。機関室9は、発電機5を含む第一領域91と、アンモニア燃料エンジン4を含む第二領域92と、に区画される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを燃料として使用するエンジンを設置する機関室を備えたアンモニア燃料船において、
前記機関室は、アンモニアガスの漏洩リスクに基づいて区画された複数の領域を備えている、
ことを特徴とするアンモニア燃料船。
【請求項2】
前記複数の領域は、前記アンモニアガスの移動を阻害する仕切手段により区画されている、請求項1に記載のアンモニア燃料船。
【請求項3】
前記仕切手段は、前記複数の領域を完全に区切るように構成されている、又は、前記複数の領域の上部空間のみを区切るように構成されている、請求項2に記載のアンモニア燃料船。
【請求項4】
前記仕切手段は、非常時に前記複数の領域を通水可能に構成されている、請求項2に記載のアンモニア燃料船。
【請求項5】
前記複数の領域は、前記アンモニアを燃料として使用する発電機を含む第一領域と、前記エンジンを含む第二領域と、を含む請求項1に記載のアンモニア燃料船。
【請求項6】
前記複数の領域は、アンモニア燃料が通過しない第三領域を含む、請求項5に記載のアンモニア燃料船。
【請求項7】
前記漏洩リスクが相対的に高い領域は、前記漏洩リスクが相対的に低い領域よりも内圧が低く設定されている、請求項1に記載のアンモニア燃料船。
【請求項8】
前記複数の領域は、それぞれ独立した通風手段を備えている、請求項1に記載のアンモニア燃料船。
【請求項9】
前記通風手段は、排気口が給気口よりも高い位置に配置されている、請求項8に記載のアンモニア燃料船。
【請求項10】
前記通風手段は、通風機を備えている、請求項8に記載のアンモニア燃料船。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア燃料船に関し、特に、アンモニアを燃料として使用するエンジンを備えたアンモニア燃料船に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から環境を汚染する物質や廃棄物の排出を低減するゼロエミッションが提言されている。国際海運の分野においても、燃焼時に二酸化炭素(CO)が発生しない燃料としてアンモニアが注目されており、アンモニア燃料船の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-161921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニア燃料船では、アンモニアの沸点が大気圧下において-33℃の低温であることから、低温又は高圧により液化アンモニアとして船上に貯蔵することが検討されている。液化アンモニアが大気中に漏洩した場合、気化したアンモニアガスが拡散することとなる。アンモニアガスは強い毒性を有することから、液化アンモニアを漏洩させないこと及び漏洩した際に人体や環境への影響を最小化させることが重要な課題となっている。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、漏洩したアンモニアガスの拡散を抑制することができるアンモニア燃料船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、アンモニアを燃料として使用するエンジンを設置する機関室を備えたアンモニア燃料船において、前記機関室は、アンモニアガスの漏洩リスクに基づいて区画された複数の領域を備えている、ことを特徴とするアンモニア燃料船が提供される。
【0007】
前記複数の領域は、前記アンモニアガスの移動を阻害する仕切手段により区画されていてもよい。
【0008】
前記仕切手段は、前記複数の領域を完全に区切るように構成されていてもよいし、前記複数の領域の上部空間のみを区切るように構成されていてもよい。
【0009】
前記仕切手段は、非常時に前記複数の領域を通水可能に構成されていてもよい。
【0010】
前記複数の領域は、前記アンモニアを燃料として使用する発電機を含む第一領域と、前記エンジンを含む第二領域と、を含んでいてもよい。
【0011】
前記複数の領域は、アンモニア燃料が通過しない第三領域を含んでいてもよい。
【0012】
前記漏洩リスクが相対的に高い領域は、前記漏洩リスクが相対的に低い領域よりも内圧が低く設定されていてもよい。
【0013】
前記複数の領域は、それぞれ独立した通風手段を備えていてもよい。
【0014】
前記通風手段は、排気口が給気口よりも高い位置に配置されていてもよい。
【0015】
前記通風手段は、通風機を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係るアンモニア燃料船によれば、アンモニアを燃料として使用するエンジンを設置する機関室をアンモニアガスの漏洩リスクに基づいて複数の領域に区画したことにより、機関室の特定箇所でアンモニアガスが漏洩した場合であってもアンモニアガスの拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アンモニア燃料船の概略構成図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るアンモニア燃料船を示す説明図であり、(A)は機関室の船長方向の断面図、(B)は機関室の船幅方向の断面図、である。
図3図2に示したアンモニア燃料船の変形例を示す説明図であり、(A)は機関室の船長方向の断面図、(B)は機関室の船幅方向の断面図、である。
図4】本発明の他の実施形態に係るアンモニア燃料船の機関室を示す船幅方向の断面図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1図4(B)を用いて説明する。ここで、図1は、アンモニア燃料船の概略構成図である。図2は、本発明の第一実施形態に係るアンモニア燃料船を示す説明図であり、(A)は機関室の船長方向の断面図、(B)は機関室の船幅方向の断面図、である。図3は、図2に示したアンモニア燃料船の変形例を示す説明図であり、(A)は機関室の船長方向の断面図、(B)は機関室の船幅方向の断面図、である。なお、各図において、船長方向をX軸、船幅方向をY軸、船の高さ方向をZ軸と定義する。
【0019】
アンモニア燃料船1は、例えば、図1に示したように、燃料であるアンモニアを貯留するアンモニア燃料タンク2と、アンモニア燃料タンク2から発生した気化ガスを再液化する再液化装置3と、アンモニアを燃料として使用するアンモニア燃料エンジン4と、アンモニアを燃料として使用する発電機5と、アンモニア燃料タンク2からアンモニア燃料エンジン4及び発電機5にアンモニアを供給する燃料供給機器6と、アンモニア燃料タンク2にアンモニアを供給するバンカーステーション7と、を備えている。
【0020】
また、アンモニア燃料船1は、船員の作業区画や生活空間を提供する居住区8と、アンモニア燃料エンジン4や発電機5等の内燃機関を設置する機関室9と、を備えている。居住区8は、例えば、上甲板10上に配置される。また、機関室9は、例えば、上甲板10の下方に配置される下部空間と上甲板10の上方に配置される上部空間とを備えている。機関室9の上部には内燃機関の排気ガスを排気する煙突11が配置されている。
【0021】
なお、図1に示したアンモニア燃料船1の構成は単なる一例であり、図示した構成・配置に限定されるものではない。例えば、再液化装置3は必要に応じて省略することができるし、燃料タンク2は貨物タンクを利用したものであってもよい。
【0022】
また、例えば、アンモニア燃料船1がアンモニア貨物輸送船でもある場合には、アンモニア燃料タンク2はアンモニア貨物兼用タンクであってもよいし、バンカーステーション7は貨物マニホールドであってもよい。
【0023】
また、アンモニア燃料船1は、ディーゼルエンジン、電動モータ等の他の推進機器を併用したハイブリッド船であってもよい。また、アンモニア燃料船1は、複数の燃料を切り替えて使用する多元燃料エンジンを採用したものであってもよい。
【0024】
機関室9は、複数の甲板によりフロアが形成され多層化されているが、全体として連通する一つの空間として構成されるのが一般的である。機関室9には、プロペラを回転させる推進用のアンモニア燃料エンジン4、船内給電用の発電機5、これらの運転に必要なポンプ等の船内補器(図示せず)等の機器、必要な配線・配管等が設置される。
【0025】
アンモニア燃料船1の建造において、アンモニアガスは強い毒性を有することから、液化アンモニア又はアンモニアガスを漏洩させないこと及び漏洩したアンモニアガスの拡散を抑制して人体や環境への影響を最小化させることが重要な課題となっている。
【0026】
アンモニアを燃料とするアンモニア燃料エンジン4や発電機5は、アンモニアを燃焼させていることから、液化アンモニア又はアンモニアガスが漏洩しないように対策が施されているものの、アンモニアガスの漏洩リスクが高い機器であることには変わりがない。
【0027】
また、従来の船舶のように、機関室9の全体が連通した一つの空間を形成している場合、機関室9内のいずれかの機器でアンモニアガスが漏洩すると他の機器のオペレーション等に影響を与える可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係るアンモニア燃料船1では、アンモニアガスの漏洩リスクに基づいて機関室9を複数の領域に区画している。機関室9は、例えば、図2(A)及び図2(B)に示したように、発電機5を含む第一領域91と、アンモニア燃料エンジン4を含む第二領域92と、に区画される。
【0029】
アンモニア燃料エンジン4及び発電機5は内燃機関であり、ストローク数の違いによりアンモニアガスの漏洩リスクが異なるものと考えられる。本実施形態では、推進用内燃機関であるアンモニア燃料エンジン4として2ストローク機関をとして採用し、船内給電用内燃機関である発電機5として4ストローク機関を採用することが計画されている。したがって、本実施形態では、発電機5の方がアンモニア燃料エンジン4よりもアンモニアガスの漏洩リスクが高い機器として設定される。
【0030】
そこで、本実施形態では、発電機5を含む空間である第一領域91を相対的に漏洩リスクの高い領域として設定し、アンモニア燃料エンジン4を含む空間である第二領域92を相対的に漏洩リスクの低い領域として設定し、第一領域91及び第二領域92のアンモニアガスを含む雰囲気ガスが混ざり合わないように区画している。なお、アンモニアガスの漏洩リスクの設定基準は内燃機関のストローク数に限定されるものではない。
【0031】
また、第一領域91及び第二領域92は、それぞれ独立した通風手段を備えている。第一領域91の通風手段は、例えば、第一領域91内に空気を供給する給気口91aと、第一領域91内の空気を外部に排出する排気口91bと、を備えている。
【0032】
給気する新鮮な空気に排気が混入しないように、給気口91aと排気口91bとはできるだけ離れた位置(例えば、反対側の面)に配置される。例えば、図2(A)に示したように、給気口91aは船首側に配置され、排気口91bは船尾側に配置される。
【0033】
また、アンモニアガスは空気よりも軽いことから、アンモニアガスは空気雰囲気で上昇する傾向にある。そこで、排気されたアンモニアガスの吸い込みを抑制するために、排気口91bは給気口91aよりも高い位置に配置される。給気口91aに給気ダクト91cを接続し、空気を発電機5の近くまで案内するようにしてもよい。
【0034】
また、空気の給気量を制御するために、図3(A)及び図3(B)に示した変形例のように、給気ダクト91cに通風機91dを配置してもよい。通風機91dは、例えば、可変容量型の通風機である。空気の給気量は、例えば、発電機5の出力(消費空気量)、第一領域91の内圧、アンモニアガスの漏洩量等の変化に基づいて制御することができる。
【0035】
なお、給気口91a及び給気ダクト91cの構成は、第一領域91の広さ等の条件によって適宜変更される。例えば、給気口91a及び給気ダクト91cは複数であってもよいし、給気ダクト91cは複数の給気口91aに分岐した構成であってもよいし、給気ダクト91cの出口側が複数に分岐した構成であってもよい。また、通風機91dの台数及び設置箇所は、図示した構成に限定されるものではない。
【0036】
また、排気口91bに排気ダクト91eを接続し、発電機5の近くに排気口91bの吸い込み口を配置するようにしてもよい。発電機5の近くに排気口91bの吸い込み口を配置することにより、発電機5から漏洩したアンモニアガスを早い段階で排気ダクト91eに回収することができ、漏洩したアンモニアガスの拡散を抑制することができる。
【0037】
また、雰囲気ガスの排気量を制御するために、図3(A)及び図3(B)に示した変形例のように、排気ダクト91eに通風機91fを配置してもよい。通風機91fは、例えば、可変容量型の通風機である。雰囲気ガスの排気量は、例えば、発電機5の出力(消費空気量)、第一領域91の内圧、アンモニアガスの漏洩量等の変化に基づいて制御することができる。
【0038】
なお、排気口91b及び排気ダクト91eの構成は、第一領域91の広さ等の条件によって適宜変更される。例えば、排気口91b及び排気ダクト91eは複数であってもよいし、排気ダクト91eは複数の排気口91bに分岐した構成であってもよいし、排気ダクト91eの入口側が複数に分岐した構成であってもよい。また、通風機91fの台数及び設置箇所は、図示した構成に限定されるものではない。
【0039】
第二領域92の通風手段は、例えば、第二領域92内に空気を供給する給気口92aと、第二領域92内の空気を外部に排出する排気口92bと、を備えている。
【0040】
給気する新鮮な空気に排気が混入しないように、給気口92aと排気口92bとはできるだけ離れた位置(例えば、反対側の面)に配置される。例えば、図2(B)に示したように、給気口92aは左舷側(図の左側)に配置され、排気口92bは右舷側(図の右側)に配置される。
【0041】
また、排気されたアンモニアガスの吸い込みを抑制するために、排気口92bは給気口92aよりも高い位置に配置される。給気口92aに給気ダクト92cを接続し、空気をアンモニア燃料エンジン4の近くまで案内するようにしてもよい。給気ダクト92cは、第一領域91を貫通するように配置されていてもよい。給気ダクト92cの貫通部はアンモニアガスの漏洩を抑制できる程度に気密にシールされる。
【0042】
また、空気の給気量を制御するために、図3(A)及び図3(B)に示した変形例のように、給気ダクト92cに通風機92dを配置してもよい。通風機92dは、例えば、可変容量型の通風機である。空気の給気量は、例えば、アンモニア燃料エンジン4の出力(消費空気量)、第二領域92の内圧、アンモニアガスの漏洩量等の変化に基づいて制御することができる。
【0043】
なお、給気口92a及び給気ダクト92cの構成は、第二領域92の広さ等の条件によって適宜変更される。例えば、給気口92a及び給気ダクト92cは複数であってもよいし、給気ダクト92cは複数の給気口92aに分岐した構成であってもよいし、給気ダクト92cの出口側が複数に分岐した構成であってもよい。また、通風機92dの台数及び設置箇所は、図示した構成に限定されるものではない。
【0044】
また、排気口92bに排気ダクト92eを接続し、アンモニア燃料エンジン4の近くに排気口92bの吸い込み口を配置するようにしてもよい。アンモニア燃料エンジン4の近くに排気口92bの吸い込み口を配置することにより、アンモニア燃料エンジン4から漏洩したアンモニアガスを早い段階で排気ダクト92eに回収することができ、漏洩したアンモニアガスの拡散を抑制することができる。
【0045】
また、雰囲気ガスの排気量を制御するために、図3(A)及び図3(B)に示した変形例のように、排気ダクト92eに通風機92fを配置してもよい。通風機92fは、例えば、可変容量型の通風機である。雰囲気ガスの排気量は、例えば、アンモニア燃料エンジン4の出力(消費空気量)、第二領域92の内圧、アンモニアガスの漏洩量等の変化に基づいて制御することができる。
【0046】
なお、排気口92b及び排気ダクト92eの構成は、第二領域92の広さ等の条件によって適宜変更される。例えば、排気口92b及び排気ダクト92eは複数であってもよいし、排気ダクト92eは複数の排気口92bに分岐した構成であってもよいし、排気ダクト92eの入口側が複数に分岐した構成であってもよい。また、通風機92fの台数及び設置箇所は、図示した構成に限定されるものではない。
【0047】
また、第一領域91は、アンモニアガスの漏洩リスクが相対的に高い領域であるため、アンモニアガスの漏洩リスクが相対的に低い第二領域92よりも内圧が低くなるように設定されている。第一領域91及び第二領域92の内圧は、例えば、通風機91d,91f,92d,92fの風量により制御することができる。
【0048】
第一領域91及び第二領域92は、アンモニアガスの移動を阻害する仕切手段95により区画される。仕切手段95は、アンモニアガスの漏洩を防止することができる材質及び構造であればよい。仕切手段95は、例えば、鋼板、金属板、合成樹脂板、合成樹脂膜、エアカーテン等の何れか又は組み合わせにより構成される。また、仕切手段95の材質や構造は、区画する場所(床、天井、通路壁面、機器背面等)の状況に応じて異なっていてもよい。
【0049】
仕切手段95は、例えば、図示したように、第一領域91及び第二領域92を完全に区切るように構成される。また、仕切手段95は、海水流入時等の非常時には、海水流入等による船体傾斜を緩和するために第一領域91及び第二領域92を通水可能に構成されていてもよい。図示しないが、仕切手段95は非常時に全体又は一部が水圧や手動操作等により破断、破壊又は開放されるように構成されていてもよい。
【0050】
また、アンモニアガスは空気よりも軽いことから、アンモニアガスは空気雰囲気で上昇する傾向にある。したがって、仕切手段95は、第一領域91及び第二領域92の上部空間のみを区切るように構成されていてもよい。かかる構成によれば、第一領域91及び第二領域92の下部空間に隙間を有していることから、この隙間を利用して人が移動したり非常時に通水させたりすることができる。
【0051】
上述した本実施形態に係るアンモニア燃料船1によれば、アンモニア燃料エンジン4を設置する機関室9をアンモニアガスの漏洩リスクに基づいて複数の領域(例えば、第一領域91及び第二領域92)に区画したことにより、機関室9の特定箇所でアンモニアガスが漏洩した場合であってもアンモニアガスの拡散を抑制することができる。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態に係るアンモニア燃料船1について、図4(A)及び図4(B)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の他の実施形態に係るアンモニア燃料船の機関室を示す船幅方向の断面図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
図4(A)に示した第二実施形態に係るアンモニア燃料船1は、機関室9にアンモニア燃料が通過しない第三領域93を形成し、機関室9を三つの領域に区画したものである。第三領域93には、アンモニア燃料エンジン4や発電機5の運転に必要な機器(例えば、ポンプ等)であって、アンモニア燃料を通過させない船内補器等が配置される。
【0054】
このように、アンモニア燃料を通過させない第三領域93を区画することにより、アンモニアガスの漏洩リスクがない領域を機関室9内に形成することができ、アンモニア燃料船1においても居住区画との安全な往来が可能となる。なお、図示しないが、第三領域93に独立した通風手段を設置してもよい。
【0055】
図4(B)に示した第三実施形態に係るアンモニア燃料船1は、機関室9をアンモニアガスの漏洩リスクに基づいて、漏洩リスクが高い第一領域91、漏洩リスクが中程度の第二領域92、漏洩リスクが低い第四領域94、漏洩リスクがない第三領域93、の四つの領域に区画したものである。
【0056】
図4(B)では、説明の便宜上、通風手段として、排気口94b及び排気ダクト94eのみを点線で図示し、給気口及び給気ダクトの図を省略してある。また、通風手段には、通風機を配置してもよい。
【0057】
第四領域94には、例えば、アンモニア燃料エンジン4よりも相対的にアンモニアガスの漏洩リスクが低い機器が配置される。第四領域94には、例えば、アンモニア燃料を使用する非常電源や小型発電機等を配置してもよいし、アンモニア燃料を通過させる機器や配管等を配置してもよい。
【0058】
上述した第一実施形態~第三実施形態に係るアンモニア燃料船1において、各領域の排気口(例えば、排気口91b,92b,94b)は、例えば、他の領域の全ての給気口(例えば、給気口91a,92a)よりも高い位置に配置される。
【0059】
また、上述した第一実施形態~第三実施形態に係るアンモニア燃料船1において、区画された複数の領域の間で配線や配管を貫通させる場合には、貫通部はアンモニアガスの漏洩を防止することができる程度に気密にシールされる。
【0060】
また、図示しないが、上述した第一実施形態~第三実施形態に係るアンモニア燃料船1は、区画された各領域に配置された通風手段に加えて、事故時等の緊急時に機関室9の全体の雰囲気ガスを総入れ替えする緊急換気手段を備えていてもよい。
【0061】
上述したように、本実施形態によれば、アンモニアガスの漏洩リスクに基づいて機関室9を複数の領域に区画し、アンモニアガスの拡散を抑制することができる。ここで、アンモニアガスの漏洩リスクの程度は、機器構成によって、例えば、大・中・小・なしの4つに分類することができる。なお、アンモニアガスの漏洩リスクの程度は、この4つの分類に限定されるものではない。
【0062】
アンモニアガスの漏洩リスクが大きい機器には、例えば、アンモニア発電機(発電機5)、アンモニア発電機用補機(ミストセパレータ、排ガス処理装置等)、アンモニア除外装置、アンモニアガス焼却装置等の液化アンモニア又はアンモニアガスが直接入り込む機器が含まれる。
【0063】
アンモニアガスの漏洩リスクが中程度の機器には、例えば、アンモニア燃料エンジン4及びその関連機器が含まれる。なお、場合によっては、アンモニアガスの漏洩リスクが大きい機器とアンモニアガスの漏洩リスクが中程度の機器とを一括りに分類してもよい。
【0064】
アンモニアガスの漏洩リスクが小さい機器には、例えば、一時的にアンモニアを燃料として使用するアンモニア関連機器、液化アンモニアやアンモニアガスを単に通過させるだけの配管やダクト等の機器が含まれる。なお、場合によっては、アンモニアガスの漏洩リスクが中程度の機器とアンモニアガスの漏洩リスクが小さい機器とを一括りに分類してもよい。
【0065】
アンモニアガスの漏洩リスクがない機器には、例えば、海水ポンプ、冷却器、工作室(工作機械、溶接機等)、配電盤等の液化アンモニア又はアンモニアガスの混入が考えられない機器が含まれる。なお、場合によっては、アンモニアガスの漏洩リスクがない機器とアンモニアガスの漏洩リスクが小さい機器とを一括りに分類してもよい。
【0066】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 アンモニア燃料船
2 アンモニア燃料タンク
3 再液化装置
4 アンモニア燃料エンジン
5 発電機
6 燃料供給機器
7 バンカーステーション
8 居住区
9 機関室
10 上甲板
11 煙突
91 第一領域
91a 給気口
91b 排気口
91c 給気ダクト
91d,91f 通風機
91e 排気ダクト
92 第二領域
92a 給気口
92b 排気口
92c 給気ダクト
92d,92f 通風機
92e 排気ダクト
93 第三領域
94 第四領域
94b 排気口
94e 排気ダクト
95 仕切手段

図1
図2
図3
図4