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特開2023-162010インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機
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  • 特開-インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機 図1
  • 特開-インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機 図2
  • 特開-インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機 図3
  • 特開-インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機 図4
  • 特開-インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162010
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】インバータ駆動圧縮機の運転制御方法及びインバータ駆動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
F04B49/06 341G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072714
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸川 聡
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA12
3H145AA26
3H145BA20
3H145BA32
3H145CA03
3H145CA25
3H145DA07
3H145DA11
3H145DA47
3H145EA13
3H145EA26
3H145EA34
(57)【要約】
【課題】少量の圧縮気体の消費のみが行われている時間内の消費電力を低減させることができるインバータ駆動圧縮機の運転制御方法を提供する。
【解決手段】供給流路52内の供給圧力Pが所定の無負荷運転開始圧力になったとき負荷運転から無負荷運転に切り換える(T3,…)と共に,前記供給圧力Pが所定の目標圧力以下となったときに前記負荷運転に切り換える(T4,…)運転切換制御を行い,前記供給圧力を前記目標圧力と一致させるように前記インバータの出力周波数を所定の下限周波数と上限周波数間で変化させる可変周波数制御を定常の制御とし,前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力になったとき,前記インバータの出力周波数を前記下限周波数よりも所定の高い周波数である圧力上昇周波数で一定に維持する一定周波数制御に移行すると共に,前記供給圧力Pが所定の自動復帰圧力以下で前記可変周波数制御に移行する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体と,前記圧縮機本体を駆動するモータと,前記モータに入力する交流電流を変化させるインバータ,及び,前記圧縮機本体の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置を備え,前記インバータの出力周波数を制御する周波数制御と,前記負荷運転と無負荷運転を切り換える運転切換制御を可能としたインバータ駆動圧縮機において,
前記圧縮機本体の吐出口から消費側に至る空気流路中に逆止弁を設け,前記逆止弁の二次側における前記空気流路を供給流路と成し,
制御の基準とする圧力として,所定の目標圧力,前記目標圧力に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力,及び,前記目標圧力に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力をそれぞれ設定し,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路内の圧力である供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に上昇したときに前記無負荷運転に切り換え,前記供給圧力が前記目標圧力以下となったときに前記負荷運転に切り換える前記運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御が,前記供給圧力を前記目標圧力と一致させるように前記インバータの出力周波数を所定の下限周波数と上限周波数間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータの出力周波数を前記下限周波数よりも所定の高い周波数である圧力上昇周波数で一定に維持する一定周波数制御を含み,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に上昇したときに前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力が前記自動復帰圧力以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とするインバータ駆動圧縮機の運転制御方法。
【請求項2】
圧縮機本体と,前記圧縮機本体を駆動するモータと,前記モータに入力する交流電流を変化させるインバータ,及び,前記圧縮機本体の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置を備え,前記インバータの出力周波数を制御する周波数制御と,前記負荷運転と無負荷運転を切り換える運転切換制御を可能としたインバータ駆動圧縮機において,
前記圧縮機本体の吐出口から消費側に至る空気流路中に逆止弁を設け,前記逆止弁の二次側における前記空気流路を供給流路と成し,
制御の基準とする圧力として,所定の目標圧力,前記目標圧力に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力,及び,前記目標圧力に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力をそれぞれ設定し,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路内の圧力である供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に上昇したときに,前記無負荷運転に切り換え,前記供給圧力が前記目標圧力以下となったときに前記負荷運転に切り換える前記運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御が,前記供給圧力を前記目標圧力と一致させるように前記インバータの出力周波数を所定の下限周波数と上限周波数間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータの出力周波数を前記下限周波数よりも所定の高い周波数でかつ,前記供給圧力を前記無負荷運転開始圧力以上に上昇可能な周波数である圧力上昇周波数で一定に維持する一定周波数制御を含み,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記圧縮機本体が所定の低負荷運転状態にあると判定された後,前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力が前記自動復帰圧力以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とするインバータ駆動圧縮機の運転制御方法。
【請求項3】
前記インバータが,前記下限周波数に対し所定の高い周波数である判定基準周波数以下の周波数を所定時間継続して出力したとき,及び/又は,
前記供給圧力が,所定時間継続して前記目標圧力に対し所定の高い圧力である判定基準圧力以上となったとき,
前記圧縮機本体が前記所定の低負荷運転状態にあると判定することを特徴とする請求項2記載のインバータ駆動圧縮機の運転制御方法。
【請求項4】
前記可変周波数制御の停止後,前記インバータの出力周波数を所定時間毎に段階的に上昇させて,前記供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に達した時の出力周波数を前記圧力上昇周波数として前記一定周波数制御を行うことを特徴とする請求項2記載のインバータ駆動圧縮機の運転制御方法。
【請求項5】
前記逆止弁の一次側における前記空気流路を吐出流路と成し,
前記無負荷運転を,
前記圧縮機本体の吸入口の閉塞,前記吐出流路の大気開放,又は前記吐出流路と前記圧縮機本体の前記吸入口の連通のいずれか,又は,
前記圧縮機本体の吸入口の閉塞と,前記吐出流路の大気開放,又は前記吐出流路と前記圧縮機本体の吸入口の連通のいずれか一方との組み合わせにより行うことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のインバータ駆動圧縮機の運転制御方法。
【請求項6】
圧縮機本体と,前記圧縮機本体を駆動するモータと,前記モータに入力する交流電流を変化させるインバータ,及び,前記圧縮機本体の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置と,前記インバータの出力周波数を制御する周波数制御装置を備えたインバータ駆動圧縮機において,
前記圧縮機本体の吐出口から消費側に至る空気流路中に逆止弁を設け,前記逆止弁の二次側における前記空気流路を供給流路と成し,
制御の基準とする圧力として予め設定した,所定の目標圧力,前記目標圧力に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力,及び,前記目標圧力に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力を記憶する記憶領域を備え,
前記運転切換装置が,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路内の圧力である供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に上昇したときに前記無負荷運転に切り換え,前記供給流路内の圧力が前記目標圧力以下となったときに前記負荷運転に切り換える運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御装置が,
前記供給圧力を前記目標圧力と一致させるように前記インバータの出力周波数を所定の下限周波数と上限周波数間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータの出力周波数を前記下限周波数よりも所定の高い周波数である圧力上昇周波数で一定に維持する一定周波数制御を実行可能であり,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に上昇したときに前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力が前記自動復帰圧力以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とするインバータ駆動圧縮機。
【請求項7】
圧縮機本体と,前記圧縮機本体を駆動するモータと,前記モータに入力する交流電流を変化させるインバータ,及び,前記圧縮機本体の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置と,前記インバータの出力周波数を制御する周波数制御装置を備えたインバータ駆動圧縮機において,
前記圧縮機本体の吐出口から消費側に至る空気流路中に逆止弁を設け,前記逆止弁の二次側における前記空気流路を供給流路と成し,
制御の基準とする圧力として予め設定した,所定の目標圧力,前記目標圧力に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力,及び,前記目標圧力に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力を記憶する記憶領域を備え,
前記運転切換装置が,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路内の圧力である供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に上昇したときに,前記無負荷運転に切り換え,前記供給圧力が前記目標圧力以下となったときに前記負荷運転に切り換える運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御装置が,
前記供給圧力を前記目標圧力と一致させるように前記インバータの出力周波数を所定の下限周波数と上限周波数間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータの出力周波数を前記下限周波数よりも所定の高い周波数でかつ,前記供給圧力を前記無負荷運転開始圧力以上に上昇可能な周波数である圧力上昇周波数で一定に維持する一定周波数制御を実行可能であり,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記圧縮機本体が所定の低負荷運転状態にあると判定した後,前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力が前記自動復帰圧力以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とするインバータ駆動圧縮機。
【請求項8】
前記記憶領域が,前記下限周波数に対し所定の高い周波数である判定基準周波数,及び/又は,前記目標圧力に対し所定の高い圧力である判定基準圧力を更に記憶し,
前記周波数制御装置が,
前記インバータが前記判定基準周波数以下の周波数を所定時間継続して出力したとき,及び/又は,前記供給圧力が所定時間継続して前記判定基準圧力以上となったとき,前記圧縮機本体が前記所定の低負荷運転状態にあると判定することを特徴とする請求項7記載のインバータ駆動圧縮機。
【請求項9】
前記周波数制御装置が,
前記可変周波数制御の停止後,前記インバータの出力周波数を所定時間毎に段階的に上昇させて,前記供給圧力が前記無負荷運転開始圧力に達した時の出力周波数を前記圧力上昇周波数として前記一定周波数制御を行うことを特徴とする請求項7記載のインバータ駆動圧縮機。
【請求項10】
前記逆止弁の一次側における前記空気流路を吐出流路と成し,
前記運転切換装置が,
前記圧縮機本体の吸入口を開閉する吸気制御弁,前記吐出流路を大気開放する放気弁,又は,前記吐出流路と前記圧縮機本体の前記吸入口間を連通する環流路を開閉する環流路開閉弁のいずれか1つ,又は,前記吸気制御弁と,前記放気弁又は前記環流路開閉弁のいずれか一方を組み合わせて備えており,
前記無負荷運転を,前記吸気制御弁の閉塞,前記放気弁の開放,又は前記環流路開閉弁の開放のいずれかにより,又は,前記吸気制御弁の閉塞と,前記放気弁の開弁又は前記環流路開閉弁の開弁のいずれか一方との組み合わせにより実現することを特徴とする請求項6~9いずれか1項記載のインバータ駆動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータ駆動圧縮機の運転制御方法及び前記運転制御方法を実行するインバータ駆動圧縮機に関し,より詳細には,圧縮機本体の駆動源であるモータの回転速度をインバータによって制御するインバータ駆動圧縮機において,動力(消費電力)の低減を可能とする運転制御方法,及び前記運転制御方法を実行するインバータ駆動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ駆動圧縮機は,圧縮機本体の駆動源であるモータと電源間にインバータを設けたもので,このインバータによって電源からモータに入力される交流電流の周波数を上限周波数fmaxから下限周波数fminまでの間で変化させることで,モータの回転速度,従って,モータによって駆動される圧縮機本体の回転速度を上限周波数fmaxに対応した上限回転速度と,下限周波数fminに対応した下限回転速度間で変化させることができるように構成されている。
【0003】
このようなインバータ駆動型圧縮機では,圧力センサ等の圧力検知手段によって消費側に供給される圧縮気体の圧力(以下,「供給圧力」という)Pを検知し,供給圧力Pが目標圧力Ptargetを超えるとモータに出力する交流電流の周波数を減少し,供給圧力Pが目標圧力Ptarget未満に低下するとモータに出力する交流電流の周波数を上昇させて圧縮機本体の回転速度を変化させる,回転速度制御を行うことで,圧縮気体の消費量の変化に拘わらず,消費側に対し目標圧力Ptargetの圧縮気体を供給することができるように構成されている。
【0004】
このようなインバータ駆動圧縮機には,更に,消費電力の減少を目的として,前述した供給圧力Pの変化に対応して行う回転速度制御に加え,更に,消費側における圧縮気体の消費が停止する等して供給圧力Pが所定の無負荷運転開始圧力Punload以上に上昇すると,圧縮機本体の吸気を停止し,及び/又は圧縮機本体の吐出側を大気開放した状態で運転する「無負荷運転」に移行することで消費電力を低減できるように構成したインバータ駆動圧縮機も提案されている。
【0005】
しかしながら,このようなインバータ駆動圧縮機が,一例として工場の生産設備として設けられており,工場内の各所に配備された複数の空圧機器に対する共通の圧縮気体の供給源として使用されている場合等には,インバータ駆動型圧縮機と空圧機器間を連通する配管が長く複雑となり,配管中に設けられる接続箇所等も多くなるため,各部の接続不良やガスシールの劣化等に伴う配管漏れの発生が不可避となる。
【0006】
このような配管漏れが生じていると,配管漏れ分の比較的少量の圧縮気体の消費が継続して行われるために,消費側に接続された空圧機器を全て停止して空圧機器による圧縮気体の消費が停止していたとしても,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punloadに上昇せず,又は,無負荷運転開始圧力Punloadに上昇するまでに長時間を要する。
【0007】
そのため,このような配管漏れ等に伴う少量の圧縮気体の消費のみが行われている場合,インバータ駆動圧縮機は回転速度制御によって圧縮機本体は下限周波数fmin付近の周波数で圧縮機本体を低速で運転して比較的少量の圧縮気体の生成を行う負荷運転(以下,このような低速での負荷運転を「低負荷運転」という。)を長時間に亘って継続することとなる。
【0008】
このような低負荷運転は,上限あるいは上限付近の回転速度で行われる全負荷運転あるいは高負荷運転(以下,これらを総称して「高負荷運転」という。)との比較では,単位時間あたりの消費電力は低下するものの,無負荷運転との比較では依然として消費電力が大きい。
【0009】
しかも,高負荷運転時に比較して低負荷運転時には単位時間あたりの消費電力は低下するものの,単位気体量当たりの圧縮気体の生成に必要な消費電力について比較すると,高負荷運転よりも効率が低下する。
【0010】
そのため,無負荷運転に移行せず長時間に亘って低負荷運転が行われる場合,消費電力に対する圧縮気体の生成効率が低下する。
【0011】
そこで,このような配管漏れ等による比較的少量の圧縮気体の消費が継続して行われることにより無負荷運転に移行しない,又は,無負荷運転に移行するまでに長時間を要することで生じる圧縮気体の生成効率の低下を解消するために,本発明の出願人は,後掲の特許文献1として挙げたインバータ駆動圧縮機の運転制御方法を既に提案している。
【0012】
この特許文献1の運転制御方法では,図5にタイムチャートで示すように,圧縮気体の負荷率〔負荷率(%)=(消費空気量/定格吐出空気量)×100〕が100%未満に減少を開始して(T1),下限周波数fmin(20Hz)よりも所定値高い周波数である判定基準周波数fref(22Hz)以下での運転状態が一定時間(t;T2-T5)継続するか,又は,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である判定基準圧力Pref(0.70MPa)以上の状態が一定時間(t’;T4-T5)継続する等して,圧縮機本体が所定の低負荷運転状態にあると判断すると,供給圧力Pの変化に応じてインバータの出力周波数を変化させる前述の回転速度制御を停止する(T5)。
【0013】
そして,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punloadに上昇するまでの間,インバータの出力周波数を低負荷運転状態と判定された際の周波数(図示の例ではfmin:20Hz)よりも所定の高い周波数であり,且つ,供給圧力を無負荷運転開始圧力まで上昇させることのできる周波数である圧力上昇周波数frise(40Hz)まで一時的(T5-T6)に上昇させる強制移行制御を行う。
【0014】
この強制移行制御(T5-T6)によって供給圧力Pを無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇させ,圧縮機本体の運転状態を,吐出側の流路を大気開放した無負荷運転(T6-T7)へと強制的に移行させることで,消費電力に対する圧縮気体の生成効率が悪い低負荷運転が長時間に亘って継続される状態を解消して消費電力の低減が得られるようにしている(特許文献1の図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2015-34535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上で説明した特許文献1に記載の運転制御方法では,所定の低負荷運転が一定時間(t又はt’)継続して行われると,強制的に無負荷運転に移行することで,配管漏れ等によって常時少量の圧縮気体の消費が行われている場合であっても低負荷運転が長時間に亘って継続されることを防止して消費電力の低減を図ることができる。
【0017】
しかしながら,特許文献1の制御方法では,比較的少量の圧縮気体の消費のみが行われている時間内,依然として高い頻度で低負荷運転が行われることとなるため,更なる消費電力の低減を可能とする余地が残されている。
【0018】
この点につき,更に詳しく説明すると,特許文献1に記載の運転制御方法では,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇して無負荷運転に移行した後,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下すると,無負荷運転を終了して供給圧力Pに応じてインバータの出力周波数を変化させる前述の回転速度制御に復帰させる制御を行っている(特許文献1の請求項1)。
【0019】
そのため,供給圧力Pが一旦,無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇したとしても(T6),配管漏れ等により常に少量の圧縮気体が消費されているために消費側に接続された空圧機器の全てが停止した状態を維持していた場合であっても供給圧力Pは経時と共に目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下し(T7),これにより無負荷運転が終了して(T7),回転速度制御(T7-T5’)に復帰する。
【0020】
この回転速度制御への復帰時(T7),供給圧力Pは目標圧力Ptarget(0.69MPa)付近の圧力となっていることから,無負荷運転が終了して圧縮機本体が圧縮気体の生成を再開すると,供給圧力Pは直ちに目標圧力Ptarget以上に上昇することから,回転速度制御(T7-T5’)中,圧縮機本体は前述した低負荷運転を行うことになる。
【0021】
そして,この低負荷運転の状態が所定時間(t又はt’)継続すると,再度,前述した強制移行制御が行われ(T5’-T6’),これにより再度,無負荷運転(T6’-T7’)へと移行し,この動作が,消費側において配管漏れ分の比較的少量の圧縮気体の消費のみが行われている時間内(T3-T8),繰り返し行われる。
【0022】
このように,特許文献1に記載の運転制御方法では,消費側における圧縮気体の消費が配管漏れに伴う比較的少量の消費のみである場合,その間に行われる無負荷運転(T6-T7)と,無負荷運転(T6’-T7’)との間には,常に回転速度制御(T7-T5’)が介在し,この回転速度制御(T7-T5’)において圧縮機本体を所定時間,低負荷運転させることとなる。
【0023】
従って,このような無負荷運転(T6-T7)と無負荷運転(T6’-T7’)の間に行われる低負荷運転の時間を短縮し,又は低負荷運転を無くすことができれば,その分,無負荷運転に移行する頻度を高めてトータルの無負荷運転時間を長くすることでより一層の消費電力の低減を図ることができることになる。
【0024】
なお,以上の説明では,配管漏れ等によって比較的少量の圧縮気体が継続的に消費されている場合の問題点を例に挙げて説明した。
【0025】
しかしながら,このような問題は,消費側に複数接続されている空圧機器のうちのごく一部のみが長時間に亘って使用されている場合や,比較的少量の圧縮気体の消費を常に行っている空圧機器が消費側に接続されている場合等,配管漏れが生じている場合に限らず,比較的少量の圧縮気体の継続的な消費が行われている場合に同様に生じ得る。
【0026】
そこで,本発明は,比較的少量の圧縮気体の消費のみが行われている時間内の消費電力をより一層低減させることができるインバータ駆動圧縮機の運転制御方法,及び該運転制御方法を実行するインバータ駆動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0028】
上記目的を達成するために,本発明のインバータ駆動圧縮機1の運転制御方法は,
圧縮機本体2と,前記圧縮機本体2を駆動するモータ3と,前記モータ3に入力する交流電流を変化させるインバータ4,及び,前記圧縮機本体2の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置20を備え,前記インバータ4の出力周波数を制御する周波数制御と,前記負荷運転と無負荷運転を切り換える運転切換制御を可能としたインバータ駆動圧縮機1において,
前記圧縮機本体2の吐出口2bから消費側に至る空気流路50中に逆止弁54を設け,前記逆止弁54の二次側における前記空気流路50を供給流路52と成し,
制御の基準とする圧力として,所定の目標圧力Ptarget(一例として0.69MPa),前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力Punload(一例として0.73MPa),及び,前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力Preturn(一例として0.50MPa)をそれぞれ設定し,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路52内の圧力である供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに前記無負荷運転(T3-T4,T3’-T4’)に切り換え,前記供給圧力Pが前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)以下となったときに前記負荷運転に切り換える前記運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御が,
前記供給圧力Pを前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)と一致させるように前記インバータ4の出力周波数を所定の下限周波数fmin(一例として20Hz)と上限周波数fmax(一例として60Hz)間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータ4の出力周波数を前記下限周波数fmin(20Hz)よりも所定の高い周波数である圧力上昇周波数frise(一例として40Hz)で一定に維持する一定周波数制御を含み,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力Pが前記自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とする(請求項1,図1及び図2参照)。
【0029】
また,本発明の別のインバータ駆動圧縮機の運転制御方法は,
圧縮機本体2と,前記圧縮機本体2を駆動するモータ3と,前記モータ3に入力する交流電流を変化させるインバータ4,及び,前記圧縮機本体2の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置20を備え,前記インバータ4の出力周波数を制御する周波数制御と,前記負荷運転と無負荷運転を切り換える運転切換制御を可能としたインバータ駆動圧縮機1において,
前記圧縮機本体2の吐出口2bから消費側に至る空気流路50中に逆止弁54を設け,前記逆止弁54の二次側における前記空気流路50を供給流路52と成し,
制御の基準とする圧力として,所定の目標圧力Ptarget(一例として0.69MPa),前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力Punload(一例として0.73MPa),及び,前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力Preturn(一例として0.50MPa)をそれぞれ設定し,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路52内の圧力である供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに,前記無負荷運転(図3のT6-T7,T6’-T7’;図4のT7-T8,T7’-T8’)に切り換え,前記供給圧力Pが前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)以下となったときに前記負荷運転に切り換える前記運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御が,
前記供給圧力Pを前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)と一致させるように前記インバータ4の出力周波数を所定の下限周波数fmin(一例として20Hz)と上限周波数fmax(一例として60Hz)間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータ4の出力周波数を前記下限周波数fmin(20Hz)よりも所定の高い周波数でかつ,前記供給圧力Pを前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)以上に上昇可能な周波数である圧力上昇周波数frise(一例として40Hz)で一定に維持する一定周波数制御を含み,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定された後,前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力Pが前記自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とする(請求項2,図1図3及び図4参照)。
【0030】
圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定されたときに前記一定周波数制御を行う構成では,前記インバータ4が,前記下限周波数fmin(20Hz)に対し所定の高い周波数である判定基準周波数fref(一例として22Hz)以下の周波数を所定時間t継続して出力したとき,及び/又は,
前記供給圧力Pが,所定時間t’継続して前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である判定基準圧力Pref(一例として0.70MPa)以上となったとき,
前記圧縮機本体2が前記所定の低負荷運転状態にあると判定するように構成することができる(請求項3,図1図3及び図4参照)。
【0031】
同様に圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定されたときに前記一定周波数制御を行う構成では,前記可変周波数制御の停止(T5)後,前記インバータ4の出力周波数を所定時間t’’毎に段階的に上昇させて,前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に達した時(T7)の出力周波数を前記圧力上昇周波数frise(30Hz)として前記一定周波数制御を行うものとしても良い(請求項4,図1及び図4参照)。
【0032】
更に,上記いずれの運転制御方法においても,前記逆止弁54の一次側における前記空気流路50を吐出流路51と成し,前記無負荷運転を,
前記圧縮機本体2の吸入口2aの閉塞,前記吐出流路51の大気開放,又は前記吐出流路51と前記圧縮機本体2の前記吸入口2aの連通のいずれか,又は,
前記圧縮機本体2の吸入口2aの閉塞と,前記吐出流路51の大気開放,又は前記吐出流路51と前記圧縮機本体2の吸入口2aの連通のいずれか一方との組み合わせにより行うものとしても良い(請求項5,図1参照)。
【0033】
また,本発明のインバータ駆動圧縮機1は,
圧縮機本体2と,前記圧縮機本体2を駆動するモータ3と,前記モータ3に入力する交流電流を変化させるインバータ4,及び,前記圧縮機本体2の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置20と,前記インバータ4の出力周波数を制御する周波数制御装置30を備えたインバータ駆動圧縮機1において,
前記圧縮機本体2の吐出口2bから消費側に至る空気流路50中に逆止弁54を設け,前記逆止弁54の二次側における前記空気流路50を供給流路52と成し,
制御の基準とする圧力として予め設定した,所定の目標圧力Ptarget(一例として0.69MPa),前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力Punload(一例として0.73MPa),及び,前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力Preturn(一例として0.50MPa)を記憶する記憶領域42cを備え,
前記運転切換装置20が,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路52内の圧力である供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに前記無負荷運転(T3-T4,T3’-T4’)に切り換え,前記供給圧力Pが前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)以下となったときに前記負荷運転に切り換える運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御装置30が,
前記供給圧力Pを前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)と一致させるように前記インバータ4の出力周波数を所定の下限周波数fmin(一例として20Hz)と上限周波数fmax(一例として60Hz)間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータ4の出力周波数を前記下限周波数fmin(20Hz)よりも所定の高い周波数である圧力上昇周波数frise(一例として40Hz)で一定に維持する一定周波数制御を実行可能であり,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力Pが前記自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とする(請求項6,図1及び図2参照)。
【0034】
また,本発明の別のインバータ駆動圧縮機1は,
圧縮機本体2と,前記圧縮機本体2を駆動するモータ3と,前記モータ3に入力する交流電流を変化させるインバータ4,及び,前記圧縮機本体2の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置20と,前記インバータ4の出力周波数を制御する周波数制御装置30を備えたインバータ駆動圧縮機1において,
前記圧縮機本体2の吐出口2bから消費側に至る空気流路50中に逆止弁54を設け,前記逆止弁54の二次側における前記空気流路50を供給流路52と成し,
制御の基準とする圧力として予め設定した,所定の目標圧力Ptarget(一例として0.69MPa),前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である無負荷運転開始圧力Punload(一例として0.73MPa),及び,前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の低い圧力である自動復帰圧力Preturn(一例として0.50MPa)を記憶する記憶領域42cを備え,
前記運転切換装置20が,
前記負荷運転を定常の運転状態とし,前記供給流路52内の圧力である供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに,前記無負荷運転(図3のT6-T7,T6’-T7’;図4のT7-T8,T7’-T8’)に切り換え,前記供給圧力Pが前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)以下となったときに前記負荷運転に切り換える運転切換制御を行うと共に,
前記周波数制御装置30が,
前記供給圧力Pを前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)と一致させるように前記インバータ4の出力周波数を所定の下限周波数fmin(一例として20Hz)と上限周波数fmax(一例として60Hz)間で変化させる可変周波数制御と,前記インバータ4の出力周波数を前記下限周波数fmin(20Hz)よりも所定の高い周波数でかつ,前記供給圧力Pを前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)以上に上昇可能な周波数である圧力上昇周波数frise(一例として30Hz又は40Hz)で一定に維持する一定周波数制御を実行可能であり,
前記可変周波数制御を定常の制御とし,前記圧縮機本体が所定の低負荷運転状態にあると判定した後,前記可変周波数制御から前記一定周波数制御に移行し,前記供給圧力Pが前記自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)以下になったときに前記可変周波数制御に移行することを特徴とする(請求項7,図1図3及び図4参照)。
【0035】
圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定されたときに前記一定周波数制御を行う構成では,前記記憶領域42cが,前記下限周波数fmin(20Hz)に対し所定の高い周波数である判定基準周波数fref(一例として22Hz),及び/又は,前記目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力である判定基準圧力Pref(一例として0.70MPa)を更に記憶し,
前記周波数制御装置30が,
前記インバータが前記判定基準周波数fref(22Hz)以下の周波数を所定時間t継続して出力したとき,及び/又は,前記供給圧力Pが所定時間t’継続して前記判定基準圧力Pref(0.70MPa)以上となったとき,前記圧縮機本体2が前記所定の低負荷運転状態にあると判定するように構成するものとしても良い(請求項8,図1図3及び図4参照)。
【0036】
同様に,圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定されたときに前記一定周波数制御を行う構成では,
前記周波数制御装置30が,
前記可変周波数制御の停止(T5)後,前記インバータ4の出力周波数を所定時間t’’毎に段階的に上昇させて,前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に達した時(T7)の出力周波数を前記圧力上昇周波数frise(30Hz)として前記一定周波数制御を行うように構成するものとしても良い(請求項9,図1及び図4参照)。
【0037】
上記いずれの構成のインバータ駆動圧縮機1の構成においても,
前記逆止弁54の一次側における前記空気流路50を吐出流路51と成し,
前記運転切換装置20が,
前記圧縮機本体2の吸入口2aを開閉する吸気制御弁21,前記吐出流路51を大気開放する放気弁(電磁弁23又は23’),又は,前記吐出流路51と前記圧縮機本体2の前記吸入口2a間を連通する環流路25を開閉する環流路開閉弁(電磁弁23’’)のいずれか1つ,又は,前記吸気制御弁21と,前記放気弁(電磁弁23又は23’)又は前記環流路開閉弁(電磁弁23’’)のいずれか一方を組み合わせて備えており,
前記無負荷運転を,前記吸気制御弁21の閉塞,前記放気弁(電磁弁23又は23’)の開放,又は前記環流路開閉弁(電磁弁23’’)の開放のいずれかにより,又は,前記吸気制御弁21の閉塞と,前記放気弁(電磁弁23又は23’)の開弁又は前記環流路開閉弁(電磁弁23’’)の開弁のいずれか一方との組み合わせにより実現するように構成するものとしても良い(請求項10,図1参照)。
【発明の効果】
【0038】
以上で説明した本発明の構成では,一旦,一定周波数制御に移行すると,供給圧力が所定の自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)以下に低下するまでは,インバータ4の出力周波数が圧力上昇周波数frise(30Hz又は40Hz)に維持され,この間は,運転切換装置20による負荷運転と無負荷運転の切り換えのみが行われる。
【0039】
その結果,本発明の制御方法では,消費側において配管漏れ等に伴う比較的少量の圧縮気体の消費のみが行われている時間内,無負荷運転と無負荷運転の間に低負荷運転が介在しないため,無負荷運転と無負荷運転の間に必ず所定時間低負荷運転が介在するものとなっていた特許文献1の制御方法に比較して,無負荷運転に移行する頻度,従って,トータルの無負荷運転時間を増大させることができ,インバータ駆動圧縮機1の消費電力の更なる低減が可能となった。
【0040】
また,本発明の運転制御方法では,無負荷運転から負荷運転に切り替わる際,圧縮機本体2の回転速度は既に圧力上昇周波数frise(一例として30Hz又は40Hz)に対応した回転速度に増速されているため,特許文献1の制御方法のように強制移行制御を行う毎に,インバータ4の出力周波数を下限周波数fmin(20Hz)から圧力上昇周波数frise(一例として40Hz)まで上昇させて圧縮機本体2の回転速度を増速させる場合に比較して,供給圧力Pを無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇させる時間(図2~4のΔ’を参照)を特許文献1の場合(図5中のΔを参照)に比較して短くすることができる。
【0041】
その結果,この点においても本発明の制御方法は配管漏れ等に伴う比較的少量の圧縮気体の消費のみが行われている時間内に無負荷運転に移行する頻度,従って,トータルの無負荷運転時間を増大させることができ,インバータ駆動圧縮機の消費電力の更なる低減が可能となっている。
【0042】
前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したとき,前記可変周波数制御を停止して前記インバータ4の出力周波数を前記下限周波数fmin(20Hz)よりも所定の高い周波数である圧力上昇周波数frise(30Hz又は40Hz)に上昇させると共に,該圧力上昇周波数frise(30Hz又は40Hz)を維持する前記一定周波数制御に移行する構成では,タイマによるカウント等を行うことなく,可変周波数制御から一定周波数制御に移行する際の移行条件の判定が容易である。
【0043】
一方,圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定されたときに可変周波数制御を停止して前記一定周波数制御に移行する構成では,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇する前に一定周波数制御に移行することができるため,一定周波数制御の際に適用される圧力上昇周波数friseを,供給圧力Pを無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)以上に上昇可能な周波数とすることで,一定周波数制御への移行によって早期に無負荷運転へ強制移行させることが可能である。
【0044】
また,圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定されたときに一定周波数制御に移行する構成では,可変周波数制御の終了後,前記インバータ4の出力周波数を所定時間毎に段階的に上昇させて,前記供給圧力Pが前記無負荷運転開始圧力に達した時の出力周波数を前記圧力上昇周波数friseとする構成を採用することができ,これにより,一定周波数制御の際の圧力上昇周波数friseを可及的に低い周波数(一例として30Hz)に抑えることが可能となり,より一層の消費電力の低減を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明のインバータ駆動圧縮機の概略説明図。
図2】本発明の制御方法(実施例1)における供給圧力,負荷率,運転状態(負荷運転/無負荷運転),及びインバータの出力周波数の対応関係を示したタイムチャート。
図3】本発明の別の制御方法(実施例2)における供給圧力,負荷率,運転状態(負荷運転/無負荷運転),及びインバータの出力周波数の対応関係を示したタイムチャート。
図4】本発明の更に別の制御方法(実施例3)における供給圧力,負荷率,運転状態(負荷運転/無負荷運転),及びインバータの出力周波数の対応関係を示したタイムチャート。
図5】従来の制御方法(特許文献1)における供給圧力,負荷率,吐出流路の閉塞/開放,及びインバータの出力周波数の対応関係を示したタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のインバータ駆動圧縮機について説明する。
【0047】
〔インバータ駆動圧縮機の全体構成〕
図1において,符号1は本発明の運転制御方法を実行するインバータ駆動圧縮機を示す。
【0048】
このインバータ駆動圧縮機1は,圧縮機本体2と,この圧縮機本体2の駆動源であるモータ3,及び電源からの交流電流の周波数を変換して前記モータ3に出力するインバータ4,前記圧縮機本体2の運転状態を負荷運転と無負荷運転間で切り換える運転切換装置20,及び,前記インバータ4が出力する電流の周波数を変化させて前記モータ3の回転速度を制御する周波数制御装置30を備え,モータ3により圧縮機本体2を駆動することにより,吸入口2aより被圧縮気体,図示の例では空気を吸入した圧縮機本体2が,圧縮気体を吐出口2bより吐出するように構成されている。
【0049】
圧縮機本体2として,シリンダ内に潤滑油を注入し,被圧縮気体を圧縮して吐出する油冷式のスクリュ圧縮機を使用した本実施形態にあっては,該圧縮機本体2より前記潤滑油と共に吐出された圧縮気体が導入されるレシーバタンク51bを設け,このレシーバタンク51b内において圧縮気体と潤滑油とを分離すると共に,分離された圧縮気体を消費側に設けた空圧機器(図示せず)に対し供給できるようにすると共に,レシーバタンク51bにおいて回収された潤滑油を,給油回路を介して圧縮機本体2の給油口2cに供給できるようにしている。
【0050】
この圧縮機本体2の吐出口2bから消費側に設けられた空圧機器(図示せず)に至る圧縮気体の流路(空気流路50)には,その途中に逆止弁54を設け消費側から圧縮機本体2側に向かって圧縮空気の逆流が生じることが防止されている。
【0051】
なお,本発明の説明において,圧縮機本体2の吐出口2bから前述した逆止弁54に至る迄の空気流路50(逆止弁54の一次側の空気流路50)を「吐出流路(51)」,逆止弁54から消費側に至る空気流路50(逆止弁54の二次側の空気流路50)を「供給流路(52)」として説明する。
【0052】
従って,図1に示す実施形態において,逆止弁54の一時側に設けられているレシーバタンク51bは上記で規定した吐出流路51の一部を構成し,このレシーバタンク51bと,該レシーバタンク51bに連通された管路51a,51cによって前述の吐出流路51が形成されている。
【0053】
〔運転切換装置〕
本発明のインバータ駆動圧縮機1には,前述のように圧縮機本体2の運転状態を圧縮気体の生成を行う負荷運転と,圧縮気体の生成を停止した無負荷運転間で切り換える運転切換装置20が設けられている。
【0054】
図示の実施形態において,この運転切換装置20は,圧縮機本体2の吸入口2aを開閉する吸気制御弁21と,吐出流路51(レシーバタンク51b)に一端が連通された制御流路22,前記制御流路22を開閉する電磁弁23,該電磁弁23の二次側において制御流路22より分岐された放気流路24,前記供給流路52内の圧力(供給圧力P)を検知する圧力検知手段41,及び,前記圧力検知手段41の検知信号に基づいて前記電磁弁23を開閉制御する制御装置42の運転切換部42aによって構成されている。
【0055】
前述の制御流路22の他端は,吸気制御弁21の閉弁受圧室(図示せず)に連通されており,また,前述の放気流路24はオリフィスを介して吸気制御弁21の一次側に連通されており,これにより電磁弁23の開弁時,放気流路24を介してレシーバタンク51b内の圧縮気体が吸気制御弁21の一次側に設けたエアフィルタを介して大気放出されると共に,吸気制御弁21の閉弁受圧室に作動圧力が導入されて吸気制御弁21が閉じるように構成されている。
【0056】
従って,図1に示したインバータ駆動圧縮機1の構成では,前述の電磁弁23は吐出流路51の大気開放を行う「放気弁」としての機能を有する。
【0057】
上記運転切換装置20の構成より,制御装置42の運転切換部42aが電磁弁23を開くと吸気制御弁21が閉じて圧縮機本体2の吸気が停止すると共に,吐出流路51(レシーバタンク51b)が大気開放された背圧の低減された状態で圧縮機本体2が駆動される無負荷運転となると共に,制御装置42の運転切換部42aが電磁弁23を閉じることで,吸気制御弁21が開いて圧縮機本体2の吸気を開始すると共に吐出流路51(レシーバタンク51b)の大気開放が停止した状態で圧縮機本体2が駆動される負荷運転の状態に切り替わる。
【0058】
なお,図1に示す実施形態では,無負荷運転時,吸気制御弁21の閉弁による吸気の停止と,吐出流路51(レシーバタンク51b)の大気開放による背圧の低下の双方を行うものとして説明したが,この構成に代えて,例えば図1中の放気流路24を省略して,吸気制御弁21の開閉のみで負荷運転と無負荷運転を切り換えるように構成するものとしても良い。
【0059】
また,図1中に変形例1として示したように吸気制御弁21を設けることなく,吐出流路51(レシーバタンク51b)を,放気流路24’を介して圧縮機本体2の吸気口2aに連通し,放気流路24’に設けた放気弁(電磁弁23’)の開弁によって吐出流路51を大気開放することにより無負荷運転に移行するように構成しても良い。
【0060】
更には,図1中に変形例2として示したように,電磁弁23’’の二次側において制御流路22を分岐して設けた環流路25を設け,この環流路25を吸気制御弁21の二次側に連通して,電磁弁23’’を開いた無負荷運転時,吸気制御弁21を閉じた状態で吐出流路51(レシーバタンク51b)内の圧縮気体を圧縮機本体2の吸入口2aに環流させた状態を無負荷運転とするものとしても良く,変形例2の構成では電磁弁23’’は「環流路開閉弁」としての機能も備えている。
【0061】
以上で説明した運転切換装置20の構成要素である前述の制御装置42は,運転切換制御の際に制御の基準とする圧力として,目標圧力Ptarget(一例として0.69MPa)と,この目標圧力Ptarget(0.69MPa)よりも所定の高い圧力として設定された無負荷運転開始圧力Punload(一例として0.73MPa)を記憶領域42cに記憶する。
【0062】
そして,制御装置42の運転切換部42aは,供給流路52内の圧力である供給圧力Pを検知する圧力検知手段41より受信した検知信号に基づき,負荷運転中に供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇すると電磁弁23,23’,23’’を開弁して無負荷運転に移行し,無負荷運転中に供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下すると,電磁弁23,23’,23’’を閉弁して負荷運転に復帰する運転切換制御を実行する。
【0063】
〔周波数制御装置〕
本発明のインバータ駆動圧縮機1には,インバータ4の出力周波数を変更して圧縮機本体2の回転速度を制御する,周波数制御装置30が設けられている。
【0064】
この周波数御装置30は,供給流路52内の圧力,従って消費側に供給される圧縮気体の圧力である供給圧力Pを目標圧力Ptarget(0.69MPa)と一致させるようにインバータ4の出力周波数を所定の下限周波数fmin(20Hz)と上限周波数fmax(60Hz)間で変化させる可変周波数制御と,インバータ4の出力周波数を変化させずに所定の圧力上昇周波数frise(一例として30Hz又は40Hz)で一定に維持する一定周波数制御を択一的に実行することができるように構成されている。
【0065】
図1に示す実施形態において,この周波数制御装置30は,供給流路52内の圧力(供給圧力P)を検知する圧力検知手段41と,この圧力検知手段41の検知信号に基づいてインバータ4に対し制御信号を出力する制御装置42の周波数制御部42bによって構成されており,図1に示した実施形態では,この圧力検知手段41と,制御装置42を,前述した運転切換装置20を構成要素と共用して部品点数を減少させている。
【0066】
前述した周波数制御を実行するために,前述の制御装置42は,周波数制御の際の基準とする圧力として,前述の目標圧力Ptarget(一例として0.69MPa)と無負荷運転開始圧力Punload(一例として0.73MPa)の他,更に,自動復帰圧力Preturn(一例として0.50MPa)を制御装置42の記憶領域42cに記憶する。
【0067】
そして制御装置42の周波数制御部42bは,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇するまでは,圧力検知手段41が検知した供給圧力Pと目標圧力Ptargetとの圧力差を算出し,この圧力差に基づきPI演算処理又はPID演算処理によりインバータ4の出力周波数を求め,これに対応する回転速度指令(周波数指令)を生成し,これをインバータ4に対して制御信号として出力することで,インバータ4が出力する周波数を所定の下限値fminと上限値fmax間で変化させて供給圧力Pが目標圧力Ptargetに近付くように前記圧縮機本体の回転速度を制御する「可変周波数制御」を定常の制御として行う。
【0068】
一例として,この可変周波数制御において,上限周波数fmax(60Hz)に対し所定の余裕分,低い周波数であり,かつ,負荷率〔(消費空気量/定格吐出空気量)×100(%)〕が100%の状態で消費側における圧縮気体の消費が行われているときに供給圧力Pを目標圧力Ptarget(0.69MPa)とすることができる周波数を定格周波数frating(一例として50Hz)として設定し,負荷率が減少して吐出流路51内の圧力Pが目標圧力Ptargetを超えると,制御装置42はインバータ4の出力周波数を定格周波数frating(50Hz)よりも低い周波数に減少させてモータ3を低速運転に移行する。
【0069】
このような出力周波数の減少は,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に達する前に下限値fmin(20Hz)に到達するように設定されている。
【0070】
一方,負荷率の増加によって下限周波数fmin(20Hz)に対応する回転速度で圧縮機本体2を駆動すると供給圧力Pが所定の目標圧力Ptarget(0.69MPa)未満に低下する場合,インバータ4の出力周波数を下限値fmin(20Hz)よりも高い周波数,例えば定格周波数frating(50Hz)に増大させる。このような動作を繰り返すことで供給圧力Pを目標圧力Ptargetと一致させる。
【0071】
また,制御装置42の周波数制御部42bは,可変周波数制御中に供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したと判定したとき,又は,圧縮機本体2の運転状態が,所定の低負荷運転状態となっていると判定したとき,前述した可変周波数制御を停止して,インバータの出力周波数を,下限周波数fmin(一例として20Hz)に対し所定の高い周波数として設定された圧力上昇周波数frise(一例として30Hz又は40Hz)で一定としてモータ3を駆動する,「一定周波数制御」に移行する。
【0072】
周波数制御装置30は,この一定周波数制御を,供給圧力Pが自動復帰圧力Preturn(一例として0.50MPa)に低下するまで継続して行い,供給圧力Pが自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)まで低下すると,一定周波数制御を停止して前述した可変周波数制御に復帰する。
【0073】
〔実施例1〕
以下に,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときに可変周波数制御を一定周波数制御に移行するよう構成したインバータ駆動圧縮機(実施例1)の動作を,図2のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0074】
なお,図2に示す実施例における前提条件は以下の通りである。
・定格周波数frating(50Hz)は,負荷率100%で圧縮気体の消費が行われているときに供給圧力Pを目標圧力Ptargetに維持可能な周波数。
・下限周波数fmin(20Hz)は,負荷率40%で圧縮気体の消費が行われているときに供給圧力Pを目標圧力Ptargetに維持可能な周波数。
・配管漏れ等により,消費側に接続された空圧機器の全てが停止した状態で負荷率10%の圧縮気体の消費(漏れ)が生じている。
【0075】
上記構成のインバータ駆動圧縮機1において,負荷率100%で圧縮気体の消費が行われている状態では,供給圧力Pが目標圧力Ptargetを越えて無負荷運転開始圧力Punloadまで上昇することはなく,制御装置42の周波数制御部42bは,電磁弁23を閉じて吸気制御弁21を開くと共に吐出流路51(レシーバタンク51b)内の圧縮気体の放気を停止して,圧縮機本体2を定常の運転状態である負荷運転としている。
【0076】
また,供給圧力Pは無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に達していないことから,周波数制御装置30(制御装置42の周波数制御部42b)は,圧力検知手段41が検知した供給圧力Pに応じてインバータ4に出力させる周波数を変化させる「可変周波数制御」を行い,インバータに対し定格周波数frating(50Hz)を出力させる制御信号を出力する。
【0077】
このように可変周波数制御が行われている状態で,消費側に接続された空圧機器による圧縮気体の消費量が減少して,負荷率が100%から低下し始めると(T1),周波数制御装置30としての制御装置42は,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)を維持するようインバータ4の出力周波数を低下させ,負荷率が40%まで低下すると,インバータ4の出力周波数を下限周波数fmin(20Hz)に低下させる。
【0078】
前述したように,本実施例のインバータ駆動圧縮機1では,負荷率が40%で圧縮気体の消費が行われているときに供給圧力Pを目標圧力Ptarget(0.69MPa)に維持できる周波数を下限周波数fmin(20Hz)としていることから,圧縮気体の消費量が更に減少して負荷率が40%未満になると,圧縮気体の消費量に対し圧縮機本体2の吐出空気量が上回ることで,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)を越えて緩やかに上昇を開始する。
【0079】
そして,消費側に接続された空圧機器の全てが完全に停止し,配管漏れ等に伴う消費量に該当する負荷率10%まで低下すると(T2),供給圧力Pの上昇が加速し,その後,無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇する(T3)。
【0080】
圧力検知手段41の検知信号に基づいて供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に達したと判断した制御装置42の運転切換部42aは,電磁弁23を開き,制御流路22を介して吸気制御弁21の閉弁受圧室に圧縮気体を導入して圧縮機本体2の吸気を停止すると共に,放気流路24を介してレシーバタンク51b(吐出流路51)内の圧縮気体を放気して無負荷運転に移行する(T3)。
【0081】
また,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に達したことで,制御装置42の周波数制御部42bは,前述した可変周波数制御を停止すると共に,インバータ4に対し圧力上昇周波数frise(40Hz)を出力させる制御信号を出力し,圧縮機本体2の回転速度を,下限周波数fmin(20Hz)に対応した下限回転速度から,圧力上昇周波数frise(40Hz)に対応する回転速度に上昇させると共に,圧力上昇周波数frise(40Hz)で一定として圧縮機本体を運転する「一定周波数制御」に移行する(T3)。
【0082】
この一定周波数制御への移行により,圧縮機本体2の回転速度は上昇するが,圧縮機本体2は圧縮気体の生成を行わない無負荷運転の状態にあるため,配管漏れ等に伴う負荷率10%の圧縮気体の消費に伴い供給圧力Pは徐々に低下する(T3-T4)。
【0083】
そして,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下すると,制御装置42の運転切換部42aは電磁弁23を閉じて吸気制御弁21を開くと共に放気流路24を介したレシーバタンク51b(吐出流路51)の大気開放を終了して圧縮機本体を負荷運転に復帰させる(T4)。
【0084】
制御装置42の周波数制御部42bは,一旦,可変周波数制御を停止して一定周波数制御に移行すると,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)よりも所定の低い圧力として設定された自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)に低下するまでは可変周波数制御を再開しない。
【0085】
その結果,圧縮機本体2は,圧力上昇周波数frise(40Hz)に対応した比較的高い回転速度を維持したまま負荷運転に移行することで,供給圧力Pは,比較的短時間Δ’で無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇することから(T4-T3’),制御装置42の運転切換部42aは,比較的短時間で圧縮機本体の運転状態を無負荷運転に再移行する(T3’)。
【0086】
以後,消費側で行われている圧縮気体の消費が,配管漏れ等に伴う少量の圧縮気体の消費に対応する負荷率10%での消費のみである場合のように,負荷率40%未満の圧縮気体の消費が継続する間,同様の処理が繰り返される。
【0087】
そして,消費側に接続された空圧機器の使用が再開される等して,配管漏れ等による消費に対応する負荷率10%を越えて上昇し,供給圧力Pの低下速度が加速し,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下すると運転切換装置20は圧縮機本体2の運転状態を負荷運転に復帰させ,更に,供給圧力Pが自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)まで低下すると,周波数制御装置30は前述の一定周波数制御を終了し,供給圧力Pに応じてインバータに出力させる周波数を変化させる可変周波数制御に復帰する。
【0088】
このように,本発明の運転制御方法によれば,一定周波数制御中は,下限周波数fmin(20Hz)に対し所定の高い周波数である圧力上昇周波数frise(40Hz)に維持したまま負荷運転に移行している。
【0089】
そのため,特許文献1として紹介した従来の構成のように無負荷運転に強制移行する毎に下限周波数fmin(20Hz)から圧力上昇周波数frise(40Hz)に上昇させる場合のように回転速度が上昇するまでのタイムラグ(図5中のTL参照)がなく,従って,特許文献1の方法で供給圧力Pを無負荷運転開始圧力Punload(0.73Mpa)まで上昇させるために必要な時間(図5中のΔ)に比較して,短時間(図2中のΔ’)で無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇させることができ,一定周波数制御中の負荷運転時間を短縮することが可能である。
【0090】
しかも,一旦,一定周波数制御に移行した後は,運転切換装置20(制御装置42の運転切換部42a)による負荷運転と無負荷運転間での運転状態の切り換えが行われるのみで,供給圧力Pが自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)に低下するまで一定周波数制御が継続される。
【0091】
その結果,本発明の制御方法では,消費側における圧縮気体の消費が配管漏れ等に基づく比較的少量の消費のみが行われている時間内(T2-T5),無負荷運転と無負荷運転の間に低負荷運転が介在することがなく,高頻度で無負荷運転への移行が行われることで,無負荷運転の合計時間が長く,特許文献1として挙げた従来の制御方法に比較して消費電力の更なる低減が可能である。
【0092】
〔実施例2〕
図2のタイムチャートを参照して説明した実施例1の構成では,可変周波数制御中に供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇すると可変周波数制御を停止して一定周波数制御に移行する構成例について説明した。
【0093】
これに対し,図3のタイムチャートを参照して説明する実施例2の構成では,圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態となっていることが判定されたときに,可変周波数制御から一定周波数制御への移行を行うよう構成したものであり,その他の動作は,図2を参照して説明したインバータ駆動圧縮機と同様である。
【0094】
なお,図3に示す実施例2で前提とするインバータ駆動圧縮機の動作条件中,定格周波数frating(50Hz)が負荷率100%で圧縮気体の消費が行われているときに供給流路内の圧力Pを目標圧力Ptarget(0.69MPa)に維持可能な周波数である点,及び,下限周波数fminが負荷率40%で圧縮気体の消費が行われているときに供給圧力Pを目標圧力Ptarget(0.69MPa)に維持可能な周波数である点は実施例1のインバータ駆動圧縮機と同様である。
【0095】
但し,本実施例(実施例2)のインバータ駆動圧縮機1の動作説明では,消費側に接続された空圧機器が全て停止した状態において,消費側の配管漏れ等により,負荷率20%の圧縮気体の漏れが生じている場合を想定している点で,負荷率10%の漏れを想定していた実施例1と相違する。
【0096】
実施例2のインバータ駆動圧縮機1においても,可変周波数制御が行われている状態で消費側に接続された空圧機器による圧縮気体の消費量が減少して負荷率が100%から低下し始めると(T1),周波数制御装置30(制御装置42の周波数制御部42b)は,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)を維持するようインバータ4の出力周波数を低下させ,負荷率が40%になると,インバータ4の出力周波数を下限周波数fmin(20Hz)まで低下させる(T1-T3)。
【0097】
また,圧縮気体の消費量が負荷率40%未満になると(T3),圧縮気体の消費量に対し圧縮機本体2の吐出空気量が上回ることで,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)を越えて緩やかに上昇を開始する。
【0098】
そして,消費側に接続された空圧機器の使用を完全に停止すると,消費側における圧縮気体の消費は,配管漏れ等によって生じる負荷率20%まで低下する(T4)。
【0099】
周波数制御装置30(制御装置42の周波数制御部42b)は,下限周波数fmin(20Hz)に対し所定の高い周波数として予め設定した判定基準周波数fref(22Hz)と,インバータ4の出力周波数を比較し,インバータ4の出力周波数が所定時間t継続して判定基準周波数fref(22Hz)以下となっていることがカウントされたとき(T2-T5),圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定して可変周波数制御を停止して一定周波数制御へと移行する。
【0100】
または,上記判定基準に代えて,又は上記判定基準と共に,目標圧力Ptarget(0.69MPa)に対し所定の高い圧力として予め設定されている判定基準圧力Pref(0.70MPa)と,圧力検出手段41が検知した供給圧力Pを比較し,供給圧力Pが所定時間t’継続して判定基準圧力Pref(0.70MPa)以上となっていることがカウントされたとき(T4-T5),圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあると判定して可変周波数制御を停止して一定周波数制御へと移行するものとしても良い。
【0101】
このようにして圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあることが判定されると,周波数制御装置30(制御装置42の周波数制御部42b)は,可変周波数制御を停止すると共に,インバータ4に対し圧力上昇周波数frise(40Hz)を出力させる制御信号を出力し,圧縮機本体の回転速度を,下限周波数fmin(20Hz)に対応した下限回転速度から圧力上昇周波数frise(40Hz)に対応した回転速度に上昇させると共に,圧力上昇周波数friseで一定として圧縮機本体2を運転する「一定周波数制御」に移行する(T5)。
【0102】
この圧力上昇周波数frise(40Hz)を,供給圧力Pを無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)にまで上昇させることができる回転速度に対応した周波数とすることで,一定周波数制御への移行により,供給圧力Pを短時間で無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)まで上昇させることができる(T5-T6)。
【0103】
圧力検知手段41の検知信号に基づいて供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したと判定した運転切換装置20(制御装置42の運転切換部42a)は,電磁弁23を開き,制御流路22を介して吸気制御弁21の閉弁受圧室に圧縮気体を導入して圧縮機本体2の吸入口2aを閉塞すると共に,放気流路24を介してレシーバタンク51b(吐出流路51)内の圧縮気体を放気する無負荷運転に移行する(T6)。
【0104】
一定周波数制御への移行により,圧縮機本体2の回転速度は上昇するが,圧縮機本体2は圧縮気体の生成を行わない無負荷運転の状態へと移行するため,供給圧力Pは,配管漏れ等に伴う圧縮気体の消費に伴い徐々に低下する(T6-T7)。
【0105】
そして,供給流路内の圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下すると,運転切換装置20(制御装置42の運転切換部42a)は電磁弁23を閉じて吸気制御弁21を開くと共に放気流路24を介したレシーバタンク51b(吐出流路51)の大気開放を終了して圧縮機本体を負荷運転に復帰させる(T7)。
【0106】
周波数制御装置30(制御装置42の周波数制御部42b)は,一旦,可変周波数制御を停止して一定周波数制御に移行すると,供給圧力Pが自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)まで低下しなければ可変周波数制御に復帰しない。
【0107】
そのため,一定周波数制御中,圧縮機本体は,圧力上昇周波数frise(40Hz)に対応した比較的高い回転速度を維持した状態で負荷運転に移行することで,一定周波数制御への移行時のように下限周波数fmin(20Hz)から圧力上昇周波数frise(40Hz)に出力周波数を増大させて回転速度を上昇させながら供給圧力Pを上昇させる場合(T5-T6の場合のΔ)に比較して,一定周波数制御中の負荷運転(T7-T6’)を短時間(Δ’)で終了させることができる。
【0108】
この負荷運転(T7-T6’)によって供給圧力Pは無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇し(T7-T6’),運転切換装置20(制御装置42の運転切換部42a)は,比較的短時間で圧縮機本体の運転状態を無負荷運転に再移行する(T6’-T7’)。
【0109】
以後,消費側にて行われている圧縮気体の消費が,配管漏れ等に伴う少量の圧縮気体の消費のみである場合,同様の処理が繰り返される。
【0110】
そして,消費側に接続された空圧機器の使用が再開される等して,負荷率が配管漏れ等による消費に対応する20%を越えて上昇を開始すると(T9),供給圧力Pの低下速度が加速し,供給圧力Pが目標圧力Ptarget(0.69MPa)まで低下すると,運転切換装置20(制御装置42の運転切換部42a)は圧縮機本体2の運転状態を負荷運転に復帰させ,更に,供給圧力Pが自動復帰圧力Preturn(0.50MPa)まで低下すると,周波数制御装置30(制御装置42の周波数制御部42b)は,前述した圧力上昇周波数frise(40Hz)に対応した一定の回転速度で圧縮機本体2を回転させる一定周波数制御を終了し,供給圧力Pに応じてインバータ4に出力させる周波数を可変とする,可変周波数制御に復帰する。
【0111】
図2を参照して説明した実施例1の制御方法では,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇した時に,可変周波数制御を停止して一定周波数制御に移行するものであったのに対し,本実施例(実施例2)では,圧縮機本体2が所定の低負荷運転状態にあるときに一定周波数制御に移行するよう構成したことで,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇する前に可変周波数制御から一定周波数制御に移行させることができた。
【0112】
その結果,本実施例(実施例2)の構成では,実施例1の構成で得られる効果に加え,更に,一定周波数制御に移行する前の低負荷運転時間を短縮することができるという効果を得ることができる。
【0113】
すなわち,配管漏れ等による圧縮気体の消費に伴う負荷率が,実施例1の10%から本実施例で想定する20%のように下限周波数fmin(20Hz)のときの吐出量(本実施例では負荷率40%に対応した吐出量)に近い量で消費されている場合,消費側に接続された空圧機器の使用を停止しても供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇するまでにより長時間を要し,一定周波数制御に移行するまでに長時間が必要となる。
【0114】
これに対し,本実施例の方法では,所定の低負荷運転状態になると一定周波数制御に移行して強制的に無負荷運転に切り替わることで,このような場合であっても一定周波数制御に移行する前の低負荷運転時間を短縮することができる。
【0115】
〔実施例3〕
図4に,本発明のインバータ駆動圧縮機の制御方法の更に別の実施例に係るタイムチャートを示す。
【0116】
図3を参照して説明した実施例(実施例2)では,可変周波数制御から一定周波数制御に移行する際,インバータ4の出力周波数を低負荷運転時の出力周波数(図3の例において下限周波数fminの20Hz)から圧力上昇周波数frise(40Hz)へと直接,上昇させる構成を採用した。
【0117】
これに対し,図4に示す実施例(実施例3)では,可変周波数制御から一定周波数制御へと移行する際,インバータ4の出力周波数を低負荷運転時の出力周波数(図4の例において下限周波数fminの20Hz)から,一定時間t’’(例えばインバータ駆動圧縮機1の使用状態に合わせてユーザが5~60秒の間で任意に選択した時間)毎に,例えばfmin+Δf(T5;一例として25Hz),fmin+2Δf(T6;一例として30Hz),fmin+3Δf(一例として35Hz)・・・と段階的に周波数を上昇させて,供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときの周波数,図4の例では周波数fmin+2Δf(T7;一例として30Hz)を前述の圧力上昇周波数friseとして前述した一定周波数制御を行うように構成したものであり,その他の点は,図3を参照して説明した制御方法と同様である。
【0118】
このように本実施例(実施例3)では,インバータ4の出力周波数を低負荷運転時の出力周波数(一例として下限周波数fmin:20Hz)から段階的に上昇させて供給圧力Pが無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)に上昇したときの周波数を前述の圧力上昇周波数friseとしたことで,一定周波数制御時に適用される圧力上昇周波数friseを,使用条件等に応じて可及的に低い周波数,従って,一定周波数制御時のモータ3の回転速度を可及的に低い回転速度に抑えることでより一層の消費電力の低減を図ることができる。
【0119】
なお,このような段階的な出力周波数の上昇は,可変周波数制御から一定周波数制御に移行する毎に行うものとしても良いが,例えば,一回目の一定周波数制御への移行の際の出力周波数の上昇のみを段階的に行って,無負荷運転開始圧力Punload(0.73MPa)となったときの出力周波数(図4の例ではfmin+2Δf=30Hz)を記憶しておき,2回目以降の一定周波数制御への移行時には,低負荷運転時の出力周波数(一例として下限周波数fmin)から一回目の一定周波数制御への移行の際に記憶しておいた圧力上昇周波数frise(fmin+2Δf=30Hz)まで直接,出力周波数を上昇させてこの周波数で一定周波数制御を行うものとしても良い。
【符号の説明】
【0120】
1 インバータ駆動圧縮機
2 圧縮機本体
2a 吸入口(圧縮機本体の)
2b 吐出口(圧縮機本体の)
2c 給油口
3 モータ
4 インバータ
20 運転切換装置
21 吸気制御弁
22 制御流路
23 電磁弁(放気弁)
23’放気弁(電磁弁)
23’’ 電磁弁(環流路開閉弁)
24,24’ 放気流路
25 環流路
30 周波数制御装置
41 圧力検知手段(圧力センサ)
42 制御装置
42a 運転切換部(制御装置42の)
42b 周波数制御部(制御装置42の)
42c 記憶領域(制御装置42の)
50 空気流路
51 吐出流路
51a 管路(圧縮機本体の吐出口~レシーバタンク間の)
51b レシーバタンク
51c 管路(レシーバタンク~逆止弁間の)
52 供給流路
54 逆止弁
Punload 無負荷運転開始圧力
Ptarget 目標圧力
Preturn 自動復帰圧力
Pref 判定基準圧力
fmax 上限周波数
frating 定格周波数
frise 圧力上昇周波数
fmin 下限周波数
fref 判定基準周波数
図1
図2
図3
図4
図5