(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162011
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】プログラム、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/14 20060101AFI20231031BHJP
G06V 30/224 20220101ALI20231031BHJP
【FI】
G06K7/14 060
G06K7/14 013
G06V30/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072716
(22)【出願日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】522169081
【氏名又は名称】アルシスデータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西形 淳
【テーマコード(参考)】
5B029
【Fターム(参考)】
5B029AA03
(57)【要約】
【課題】一次元コードの読み取り時のノイズを均一化し、かつボケやブレで広がったデータを効率よく数値化することができるシステムを提供する。
【解決手段】本開示のプログラムは、プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、プロセッサに、ノイズを含まない一次元コードの0から9に対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するステップと、評価対象となる一次元コードを読み取るステップと、読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、関数列を取り出すステップと、取り出した関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するステップと、基準座標と評価座標のマッチングを行い、各関数列が示す値を特定するステップと、を実行させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記プログラムは、前記プロセッサに、
ノイズを含まない一次元コードのキャラクタに対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するステップと、
評価対象となる一次元コードを読み取るステップと、
読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、前記関数列を取り出すステップと、
取り出した前記関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するステップと、
基準座標と評価座標のマッチングを行い、前記各関数列が示す前記キャラクタを特定するステップと、を実行させるプログラム。
【請求項2】
下記の式(A)を用いて、前記関数列の多重積分を実行させる請求項1に記載のプログラム。
【数A】
【請求項3】
前記キャラクタは、0~9までの数字、およびアルファベットの文字列のうち、少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記一次元コードのフォーマットを識別するステップと、
認識した前記フォーマットにより、前記整数倍の値を設定するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記一次元コードのフォーマットの指定を受け付けるステップと、
指定された前記フォーマットにより、前記整数倍の値を設定するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるための方法であって、前記方法は、前記プロセッサが、
ノイズを含まない一次元コードのキャラクタに対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するステップと、
評価対象となる一次元コードを読み取るステップと、
読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、前記関数列を取り出すステップと、
取り出した前記関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するステップと、
基準座標と評価座標のマッチングを行い、前記各関数列が示す前記キャラクタを特定するステップと、を実行するプログラム。
【請求項7】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータを備えるシステムであって、前記プロセッサは、
ノイズを含まない一次元コードの0から9に対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するモジュールと、
評価対象となる一次元コードを読み取るモジュールと、
読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、前記関数列を取り出すモジュールと、
取り出した前記関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するモジュールと、
基準座標と評価座標のマッチングを行い、前記各関数列が示す前記キャラクタを特定するモジュールと、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、様々な分野において、一次元コードを用いた情報の管理が行われている。
通常の一次元コードの画像処理については、ピンボケや対象物の動きからシグナルの劣化が生じることがある。これを改善するために正確に画像を読み取るために、特許文献1に記載のように、一次元コード情報を正確に二値化する手法が提案されている。例えば、閾値を設定して読み取りを行うといった処理が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一次元コードの読み取りに仮に閾値を設定しても、例えば、読み取り光の回折によるシグナルの劣化によりSN比が悪化する可能性がある。特に、一次元コードを読み取るスキャナのレンズが合焦していないピンボケの場合には、二値化する手法の場合、各コードの間隔を正確に把握しづらくなる。また、一次元コードを読み取ったデータのプロファイルを確認すると、ノイズをシグナルとして誤読してしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、読取環境によらず一次元コードの読取精度の向上を図ることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のプログラムは、プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、プロセッサに、ノイズを含まない一次元コードの各キャラクタに対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するステップと、評価対象となる一次元コードを読み取るステップと、読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、関数列を取り出すステップと、取り出した関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するステップと、基準座標と評価座標のマッチングを行い、各関数列が示す値を特定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシステムによれば、一次元コードの読み取り時のノイズを積分により均一化し、かつボケやブレで広がったデータを効率よく数値化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態のシステムに含まれる端末装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のシステムが行う積分演算を説明する図である。
【
図4】本実施形態のシステムの処理のうち、評価基準となる一次元コードを読み取る処理を示す図である。
【
図5】本実施形態のシステムの処理のうち、評価対象となる一次元コードを読み取る処理を示す図である。
【
図6】変形例に係るシステムの処理のうち、評価対象となる一次元コードを読み取る処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<1.概要>
本実施形態に係る一次元コード読み取りシステム(単にシステム1という)は、一次元コードから、当該コードに含まれる情報を読み取るシステムである。一次元コードとは、バーとスペースの組み合わせにより、数字や文字などを機械が読み取れる形で表現したコードであり、いわゆるバーコードである。
一次元コードとしては、例えば以下のフォーマット(規格)に基づくコードが含まれる。なお、これ以外のフォーマットに基づくコードが含まれてもよい。
・EAN(JAN)
・Interleaved2of5
・Codabar(NW-7)
・CODE39
・CODE128
・GS1 DataBar(RSS)
【0011】
<2.全体構成>
図1は、本実施形態のシステム1の全体構成を示す図である。
図1に示すように、システム1は、スキャナ5と、端末装置10と、を備えている。
なお、スキャナ5および端末装置10は、有線又は無線の通信規格を用いて、ネットワークを介して相互に通信可能に接続されていてもよい。
【0012】
スキャナ5は、一次元コードをスキャンするデバイスである。スキャナ5は、一次元コードに自然光若しくは人工的な光を照射し、その反射光を捉えて信号波形を取得する。スキャナ5は、照明LEDおよびCCDセンサを有するCCD方式、レーザ光源およレーザー受光素子を有するレーザ方式、並びにLED光源および光センサを有するペン方式など、さまざまなタイプの構造を有している。
【0013】
<3.端末装置10の構成>
端末装置10は、スキャナ5が受光した信号波形を解析してデジタルデータに変換する端末である。
端末装置10は、例えば、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPC、などのコンピュータにより実現される。また、端末装置10は、スマートフォン、タブレット端末、又はヘッドマウントディスプレイ等などの携行性を備えたコンピュータであってもよい。
【0014】
図1に示すように、端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、記憶部16と、プロセッサ19とを備える。
【0015】
通信IF12は、端末装置10が外部の装置と通信するため、信号を送受信するためのインタフェースである。
入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置である。入力装置13は、例えば、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード等を含む。
【0016】
出力装置14は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置である。出力装置14は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等を含む。
メモリ15は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリにより実現される。
【0017】
記憶部16は、データを保存するための記憶装置であり、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)により実現される。
プロセッサ19は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路等により構成される。
【0018】
図2は、端末装置10の機能的構成を示す図である。
図2に示すように、端末装置10は、通信部121と、入出力部130と、記憶部170と、制御部180とを備える。また、端末装置10は、
図2では図示されていない機能、及び構成(例えば、電力を保持するためのバッテリー、バッテリーから各回路への電力の供給を制御する電力供給回路等)も備える。端末装置10に含まれる各ブロックは、例えば、バス等により電気的に接続される。
【0019】
通信部121は、端末装置10が他の装置と通信するための処理を行う。通信部121は、制御部180で生成された信号に送信処理を施し、外部へ送信する。通信部121は、外部から受信した信号に受信処理を施し、制御部180へ出力する。通信部121は、例えばスキャナ5が取得したデジタル波形を制御部に出力する。
【0020】
入出力部130は、端末装置10を所有するユーザからの入力操作を受け付け、出力内容を表示するための機構を有する。具体的には入出力部130は、キーボード131と、ディスプレイ132と、を含む。入出力部130は、マウス等の他の入力デバイスを含むこととしてもよい。
【0021】
キーボード131は、タイピングされたテキストデータを、ユーザからの入力操作として制御部180へ出力する。
ディスプレイ132は、制御部180の制御に応じて、画像、動画、テキスト等のデータを表示する。ディスプレイ132は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって実現される。
【0022】
記憶部170は、例えばフラッシュメモリ等により構成され、端末装置10が使用するデータ、及びプログラムを記憶する。記憶部170は、例えば以下のデータを記憶している。
・基準座標データ281
・評価座標データ282
【0023】
基準座標データ281は、ノイズを含まない一次元コードのキャラクタに対応する信号の関数列を、多重積分により符号化し、正規化することで座標に変換した値である。一次元コードのキャラクタとしては、一次元コードのフォーマットにより決定される。例えばEANコードの場合キャラクタには0~9の数字が含まれる。一方、コード128の場合には、キャラクタには、0~9の数字の他、アルファベット(大文字/小文字)、記号、制御文字などが含まれる。なお、後述するシステム1の動作において基準座標データ281を取得する動作を説明しているが(
図4参照)、フォーマットが同じであれば、一度このフォーマットに対応した基準座標データ281を取得すれば足りる。すなわち、一次元コードの読取動作の度に基準座標データ281を取得する必要はない。加えて、フォーマットが同じであれば、基準座標データ281そのものは汎用性があるので、ネットワーク等を経由して基準座標データ281を端末装置10に導入しておけば、基準座標データ281を取得する動作を省略することができる。
【0024】
記憶部170は、基準座標データ281として、複数のフォーマット(規格)に相当する一次元コードの各キャラクタに対応する信号の関数列を、多重積分により符号化した座標を記憶してもよい。
【0025】
評価座標データ282は、評価対象となる一次元コードをスキャンし、読み取った信号から一次元コードの最小エレメントの整数倍毎に取り出した関数列を多重積分により符号化して正規化することで座標に変換した値である。整数倍の値は、一次元コードのフォーマットにより決定される。例えばEANコードの場合には整数倍の値は7であり、コード128の場合には、整数倍の値は11となる。
【0026】
制御部180は、プロセッサ19が記憶部170に記憶されるプログラムを読み込み、プログラムに含まれる命令を実行することにより実現される。制御部180は、端末装置10の動作を制御する。具体的には、例えば、制御部180は、操作受付部181、送受信部182、取得部183、解析部184、提示部185としての機能を発揮する。
【0027】
操作受付部181は、入力装置13から入力されるユーザの操作を受け付けるための処理を行う。例えば、操作受付部181は、キーボード131に対して入力されたテキストデータに基づいて、操作を受け付ける。
【0028】
送受信部182は、端末装置10が、読み取りサーバ20等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。
【0029】
取得部183は、端末装置10を使用するユーザが入力した情報を取得する。取得される情報としては、例えば、ユーザが端末装置10のキーボード131から入力した情報が挙げられる。取得部183により取得された情報は、送受信部182を介して読み取りサーバ20へ送信される。
取得部183はまた、スキャナ5が取得した信号波形を取得する。取得部183が取得した信号波形は、解析部184により解析される。
【0030】
解析部184は、スキャナ5が取得した信号波形を解析する。解析部184が行う解析としては、以下の処理を行う。
・読み取った信号波形から、最小エレメントの整数倍ごとに、関数列を取り出す。
・取り出した関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出する。
・基準座標と評価座標のマッチングを行い、各関数列が示す値を特定する。
なお、評価座標については、予め記憶部170に記憶されている。
【0031】
解析部184は、取り出した関数列に対して積分演算を行う。ここで、解析部184による関数列への積分演算について説明する。
図3は、本実施形態のシステム1が行う積分演算を説明する図である。このうち、
図3Aは、ノイズを含まないEANコードにおける0~9の各キャラクタの信号の関数列に対して、積分処理を行った値を座標空間上にプロットした値である。
図3Bは、スキャン時にピンボケが生じた場合の0~9の各キャラクタの信号の関数列に対して、積分処理を行った値を座標空間上にプロットした値である。各図において、横軸はキャラクタの次数を指し、縦軸は積分値を指している。
【0032】
ここで、解析部184により算出される積分値λ
1を式(1)により定義する。
【数1】
この式(1)を用いて関数列への積分計算を行う。ここに、f
0(x)は、読み取った信号波形から1桁分のエレメント部分を取り出したものであり、Lは最小エレメント幅7個分であり、区間の両端には桁を区切るための1/2スペースが設けられている。
図3Aに示すように、各キャラクタの信号の関数列の積分値が、それぞれ異なる座標にプロットされている。このため、仮にノイズを含まない場合には、積分値を評価することで、スキャンした信号の関数列が示すキャラクタの次数を識別できることが確認できる。
【0033】
次に、スキャン時にピンボケが生じると、積分値が変化する。この変化量は、ピンボケの大きさと評価対象となるキャラクタに対して両隣に位置するキャラクタの値に依存する。このピンボケの量と、両隣に位置するキャラクタの値を変数として、各パターンの積分値が示す領域を
図3Bにブロットしている。ここで、ピンボケの量としては最小エレメント幅の2倍に相当するブラー半径までとし、キャラクタは0~9までの値を両隣で組み合わせた各パターンとする。
【0034】
図3Bに示すように、仮にピンボケにより積分値の変動があったとしても、積分値を比較することで、(0、1、2、4、5、9)の第1グループと、(3、6、7、8)の第2グループに分類できることが確認できる。
【0035】
次に、各グループを更に分類するために、再度積分を行うことを考える。
2重積分値λ
2を式(2)および式(3)により定義する。
【数2】
【数3】
また、3重積分値λ
3を式(4)および式(5)により定義する。
【数4】
【数5】
そして、各積分値を正規化したうえで、座標空間上にプロットすることで、第1グループおよび第2グループそれぞれに含まれる各キャラクタの分類を行う。仮にブレ量が大きく、分類の精度が確保しづらい場合には、更に積分の多重度を増やすことで分類の精度を向上させることができる。
【0036】
例えば、以下の式(6)および式(7)により、帰納的にn+1重積分値λ
n+1を定義して積分計算の多重度を増やすことができる。
【数6】
【数7】
【0037】
次に、積分計算の圧縮について説明する。
多重積分の計算には計算量が必要となる。一次元コードのスキャンには高速性能が要求されるため、計算量は大きな問題となる。
このため、式(2)を式(3)に代入して、式(8)を得る。
【数8】
【0038】
また、3重積分について、2重積分と同様に、式(4)を式(5)に代入し、右辺を整理することで、式(9)が得られる。
【数9】
【0039】
また、4重積分について、多重度を4として、式(6)を式(7)に代入し、右辺を整理することで、式(10)が得られる。
【数10】
【0040】
以上を踏まえると、解析部184が行う多重積分は、以下の一般式により表現される。
【数A】
式(2)は一般化すると式(B)となる。
【数B】
【0041】
提示部185は、ユーザに対してディスプレイ132を介して種々の情報を提示する。
なお、基準座標データ281には、その他の情報が格納されてもよい。
【0042】
<3.システムの処理フロー>
以下、
図4および
図5を参照して、システム1による処理について説明する。
図4は、本実施形態のシステム1の処理のうち、評価の基準となる一次元コードの基準座標の取得処理を示す図である。
【0043】
まず、端末装置10は、ノイズを含まない一次元コードの各キャラクタに対応する信号の関数列を作成する(ステップS201)。
具体的には、端末装置10の制御部180は、該当する一次元コードのフォーマットに沿って、各キャラクタに対応する信号それぞれの関数列を理論的に作成する。
【0044】
例えば、ペイントツールを使って一次元コードの画像データを作成することができる。適当な一次元コードの配列を用意して、黒=0、白=1と割り当てて代数的に関数列を作成してもよい。関数列の作成は、一次元コードを構成するキャラクタごとに行ってもよい。
【0045】
ステップS201の後に、解析部184は、キャラクタ毎に取り出した信号波形に対して、多重積分による符号化を行う(ステップS202)。
ステップS202の後に、解析部184は、符号化した値を正規化することで基準座標を算出する(ステップS203)。解析部184は、キャラクタ毎に基準座標データ281として記憶部170に記憶させる。
これにより、本実施形態のシステム1の処理の前半として、基準座標データ281の取得が終了する。
【0046】
図5は、本実施形態のシステム1の処理のうち、評価対象となる一次元コードを読み取る処理を示す図である。後半の処理では、評価対象となる一次元コードの信号に対して、関数列ごとに符号化した値を基準座標データ281と比較して、関数列が示すキャラクタを特定する。
図5に示すように、まず、スキャナ5が評価対象となる一次元コードの読み取りを行う(ステップS110)。スキャナ5は取得した信号波形を端末装置10に送信する。
【0047】
ステップS110の後に、端末装置10は、信号波形を取得する(ステップS210)。具体的には、端末装置10の通信部121が信号波形を受信し、制御部180に出力する。
ステップS200の後に、端末装置10の解析部184は、信号波形から関数列を取り出す(ステップS211)。具体的には、解析部184は、信号波形から、最小エレメントの整数倍毎に、関数列を取り出す。
【0048】
ステップS201の後に、端末装置10の解析部184は、取り出したそれぞれの関数列に対して多重積分による符号化を行う(ステップS212)。
ステップS202の後に、解析部184は、基準座標とのマッチングを行う(ステップS213)。この際、解析部184は、座標空間上における評価座標と基準座標との位置関係から、各評価座標が示すキャラクタの値を特定する。これにより、取り出したそれぞれの関数列が示すキャラクタが特定される。
【0049】
<4.小括>
以上説明したように、本実施形態に係るシステム1では、予め算出した基準座標と、多重積分により符号化した評価座標と、の比較を行うことで、一次元コードのキャラクタの特定を行う。このため、従来行われていた微分処理と比較して、演算結果が含むSN比を大きくすることができる。すなわち、例えば信号に対して微分処理を行うと、ノイズをピークとして拾うことになるが、本システムのように、信号に対して微分処理を行うことなく積分処理を行うと、ノイズを均一化することができ、ノイズの影響を受けにくくすることができる。このため、一次元コードの読み取り時のノイズを均一化し、かつボケやブレで広がったデータを効率よく数値化することができる。
【0050】
また、式(A)を用いて多重積分を演算することにより、計算量を圧縮することができる。
【0051】
また、一次元コードのキャラクタは、一次元コードのフォーマットにより、0~9までの数字、およびアルファベットの文字列のうち、少なくともいずれかを含んでいる。すなわち、システム1は、各種のフォーマットの一次元コードに対応することができる。
【0052】
<5.変形例>
次に、システム1の変形例について説明する。
図6は、変形例に係るシステム1の処理のうち、評価対象となる一次元コードを読み取る処理を示す図である。この変形例では、一次元コードのフォーマットを識別して、フォーマットに応じて、関数列を取り出す際の最小エレメントの整数倍の値を設定する処理を行う。なお、実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
具体的には、一次元コードの信号を取得(ステップS201)の後に、一次元コードのフォーマットを解析部184が識別する(ステップS2101)。一次元コードのフォーマットの識別においては、公知の一次元コードのフォーマットの判別システムを適用することができる。
【0054】
ステップS2101の後に、解析部184は、識別したフォーマットに応じて最小エレメントの整数倍の値を設定する(ステップS2102)
ステップS2102の後に、解析部184は、信号波形から、最小エレメントの整数倍毎に、関数列を取り出す(ステップS211)。そして、その後の処理を実施形態と同様に実行する。
【0055】
このように、変形例に係るシステム1では、一次元コードのフォーマットを識別するステップと、認識したフォーマットにより、整数倍の値を設定するステップと、を実行させる。このため、多種のフォーマットのバーコードに対して、積分処理によるキャラクタの特定を円滑に行うことができる。
【0056】
<6.その他の変形例>
上記の変形例では、一次元コードのフォーマットの識別を解析部184が行っているが、この態様に限定されない。例えば、一次元コードのフォーマットの識別をシステム1の外部で行い、識別した一次元コードのフォーマットの指定をユーザから受け付けるステップを行ってもよい。その後、
図6に示すステップS2102以降の処理を行ってもよい。
【0057】
このように、その他の変形例に係るシステム1では、一次元コードのフォーマットの指定を受け付けるステップと、指定されたフォーマットにより、整数倍の値を設定するステップと、を実行させる。このため、例えばユーザが一次元コードを目視により識別できるような場合において、解析部184の処理の負荷を抑えることができる。
【0058】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態及び変形例で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
【0059】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0060】
(付記1)
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、
ノイズを含まない一次元コードのキャラクタに対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するステップ(ステップS203)と、
評価対象となる一次元コードを読み取るステップ(ステップS110)と、
読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、関数列を取り出すステップ(ステップS211)と、
取り出した関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するステップ(ステップS212)と、
基準座標と評価座標のマッチングを行い、各関数列が示すキャラクタを特定するステップ(ステップS213)と、を実行させるプログラム。
【0061】
(付記2)
下記の式(A)を用いて、関数列の多重積分を実行させる付記1に記載のプログラム。
【数A】
【0062】
(付記3)
キャラクタは、0~9までの数字、およびアルファベットの文字列のうち、少なくともいずれかを含む、付記1又は2に記載のプログラム。
【0063】
(付記4)
一次元コードのフォーマットを識別するステップ(ステップS2101)と、
認識したフォーマットにより、整数倍の値を設定するステップ(ステップS2102)と、を実行させる、付記1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
(付記5)
一次元コードのフォーマットの指定を受け付けるステップと、
指定されたフォーマットにより、整数倍の値を設定するステップと、を実行させる、付記1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
【0064】
(付記6)
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるための方法であって、方法は、プロセッサが、
ノイズを含まない一次元コードのキャラクタに対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するステップ(ステップS203)と、
評価対象となる一次元コードを読み取るステップ(ステップS110)と、
読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、関数列を取り出すステップ(ステップS211)と、
取り出した関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するステップ(ステップS212)と、
基準座標と評価座標のマッチングを行い、各関数列が示す値を特定するステップ(ステップS213)と、を実行するプログラム。
【0065】
(付記7)
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータを備えるシステムであって、システムにおけるプロセッサは、
ノイズを含まない一次元コードの0から9に対応する信号の関数列を多重積分によりそれぞれ符号化して、各関数列を示す基準座標を算出するモジュールと、
評価対象となる一次元コードを読み取るモジュールと、
読み取った信号から、最小エレメントの整数倍ごとに、関数列を取り出すモジュールと、
取り出した関数列に多重積分による符号化を行い、評価座標を算出するモジュールと、
基準座標と評価座標のマッチングを行い、各関数列が示す値を特定するモジュールと、を備えるシステム。
【符号の説明】
【0066】
1…システム
10…端末装置
13…入力装置
14…出力装置
15…メモリ
16…記憶部
19…プロセッサ
20…サーバ
201…通信部
202…記憶部
203…制御部
25…メモリ
26…ストレージ
29…プロセッサ