(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162058
(43)【公開日】2023-11-08
(54)【発明の名称】納豆製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/50 20210101AFI20231031BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20231031BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20231031BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
A23L11/50 209Z
A23L29/256
A23L29/238
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072764
(22)【出願日】2022-04-26
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】503422583
【氏名又は名称】株式会社小杉食品
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】小杉 悟
(72)【発明者】
【氏名】小杉 龍弘
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 京子
(72)【発明者】
【氏名】小杉 明正
(72)【発明者】
【氏名】竹中 公二
【テーマコード(参考)】
4B020
4B041
【Fターム(参考)】
4B020LB13
4B020LK05
4B020LK06
4B020LK20
4B020LP03
4B020LP15
4B020LP19
4B041LC10
4B041LH04
4B041LH07
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK09
4B041LK10
4B041LK11
4B041LK24
4B041LK41
4B041LP01
4B041LP16
(57)【要約】
【課題】取り扱い性と食べやすさに優れる納豆製品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の納豆製品4は、納豆と、半流動性のたれとを含み、納豆は、納豆用粘度調整剤により表面処理された納豆処理物であり、納豆用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含み、たれは、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを含み、たれ用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含み、納豆用粘度調整剤の組成は、たれ用粘度調整剤の組成と同一であり、納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤は、カラギナンおよびローカストビーンガムを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆と、半流動性のたれとを含む納豆製品であって、
前記納豆は、納豆用粘度調整剤により表面処理された納豆処理物であり、
前記納豆用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むことを特徴とする納豆製品。
【請求項2】
前記たれは、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを含み、
前記たれ用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むことを特徴とする請求項1記載の納豆製品。
【請求項3】
前記納豆用粘度調整剤の組成は、前記たれ用粘度調整剤の組成と同一であることを特徴とする請求項2記載の納豆製品。
【請求項4】
前記納豆用粘度調整剤および前記たれ用粘度調整剤は、主成分としてカラギナンを含むことを特徴とする請求項2または請求項3記載の納豆製品。
【請求項5】
前記納豆用粘度調整剤および前記たれ用粘度調整剤は、さらに、デキストリンと、ローカストビーンガムと、キサンタンガムとを含み、前記カラギナンを40質量%以上含むことを特徴とする請求項4記載の納豆製品。
【請求項6】
納豆を納豆用粘度調整剤で表面処理して納豆処理物とする納豆処理工程と、
前記納豆処理物と、半流動性のたれとを混合する混合工程と、
を有することを特徴とする納豆製品の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程の前に、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを混合し、40℃以上で加熱して前記たれ用粘度調整剤を溶解させて前記たれを製造するたれ製造工程を有することを特徴とする請求項6記載の納豆製品の製造方法。
【請求項8】
前記たれ製造工程は、前記たれ用粘度調整剤を溶解させた後に冷却し、冷却して得られるゲル化物のうちの一部を潰す工程を含むことを特徴とする請求項7記載の納豆製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り扱い性と食べやすさに優れる納豆製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆は、良質の蛋白質を多く含み、消化し易いため、子供から大人まで幅広い年齢層で長年食べられてきた。
【0003】
上述のように国民食ともいえる納豆であるが、納豆の粘質感(粘り)、糸引き性のため手軽に食べにくいことを理由に苦手とする人もいる。特に、糸引き性は、納豆を用いた食品の製造の際や、食事の介助が必要な幼児や老人に食べさせる際にも問題となることが多かった。そのため、納豆の粘質感や糸引き性が除かれた除粘納豆や、除粘剤が従来から知られている。
【0004】
特許文献1には、納豆をカルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン、エチルアルコールの1種以上によって処理してなる糸ひき性のない納豆が記載されている。
【0005】
特許文献2には、蛋白質分解酵素を含有することで、納豆の粘質感、特に糸切れを容易にし、糸引きを軽減する納豆用除粘剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-19466号公報
【特許文献2】特開2006-211978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
納豆食品の糸引き性などの低減のため、上述のような種々の手段による除粘納豆が提案されており、除粘納豆とすることで、食べやすく、食事介助時の取り扱い性にも優れる。
【0008】
しかしながら、納豆を食べる人が、摂食嚥下機能が低下した人や幼児の場合、糸引き性を低減しただけでは、食事中にむせたり、うまく飲み込むことができなくなったりすることもあり、食べやすさが不十分な場合がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、取り扱い性と食べやすさに優れる納豆製品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の納豆製品は、納豆と、半流動性のたれとを含む納豆製品であって、上記納豆は、納豆用粘度調整剤により表面処理された納豆処理物であり、上記納豆用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むことを特徴とする。
【0011】
上記たれは、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを含み、上記たれ用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むことを特徴とする。
【0012】
上記納豆用粘度調整剤の組成は、上記たれ用粘度調整剤の組成と同一であることを特徴とする。
【0013】
上記納豆用粘度調整剤および上記たれ用粘度調整剤は、主成分としてカラギナンを含むことを特徴とする。
【0014】
上記納豆用粘度調整剤および上記たれ用粘度調整剤は、さらに、デキストリンと、ローカストビーンガムと、キサンタンガムとを含み、上記カラギナンを40質量%以上含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の納豆製品の製造方法は、納豆を納豆用粘度調整剤で表面処理して納豆処理物とする納豆処理工程と、上記納豆処理物と、半流動性のたれとを混合する混合工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
上記混合工程の前に、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを混合し、40℃以上で加熱して上記たれ用粘度調整剤を溶解させて上記たれを製造するたれ製造工程を有することを特徴とする。
【0017】
上記たれ製造工程は、上記たれ用粘度調整剤を溶解させた後に冷却し、冷却して得られるゲル化物のうちの一部を潰す工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の納豆製品は、納豆と、半流動性のたれとを含む納豆製品であって、納豆は、納豆用粘度調整剤により表面処理された納豆処理物であり、納豆用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むので、糸引きしにくく取り扱いやすい。さらに、通常の納豆よりも粘りが少ないため摂食嚥下機能が低下した人や幼児であっても食べやすい。
【0019】
たれは、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを含み、たれ用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むので、納豆製品の糸引き性と粘りがより低下するとともに、食塊としてのまとまりやすさにも優れる。これにより、より食べやすく、嚥下性により優れる。
【0020】
納豆用粘度調整剤の組成は、たれ用粘度調整剤の組成と同一であり、主成分としてカラギナンを含むので、納豆製品の糸引き性と粘りがさらに低下するとともに、食塊としてのまとまりやすさにより優れる。
【0021】
納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤は、さらに、デキストリンと、ローカストビーンガムと、キサンタンガムとを含み、カラギナンを40質量%以上含むので、納豆製品の糸引き性と粘りが一層低下するとともに、食塊としてのまとまりやすさにさらに優れる。
【0022】
本発明の納豆製品の製造方法は、納豆を納豆用粘度調整剤で表面処理して納豆処理物とする納豆処理工程と、納豆処理物と、半流動性のたれとを混合する混合工程と、を有するので、本方法で製造された納豆製品は、糸引きしにくく取り扱いやすい。さらに、通常の納豆よりも粘りが少ないため摂食嚥下機能が低下した人であっても食べやすい。
【0023】
混合工程の前に、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを混合し、40℃以上で加熱してたれ用粘度調整剤を溶解させてたれを製造するたれ製造工程を有し、たれ製造工程は、たれ用粘度調整剤を溶解させた後に冷却し、冷却して得られるゲル化物のうちの一部を潰す工程を含むので、混合工程で納豆の表面がゲル状のたれで被覆されやすく、納豆製品の糸引き性と粘りがより低下しやすいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の納豆製品の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の納豆製品は、納豆と、半流動性のたれとを含む納豆製品である。納豆は、納豆用粘度調整剤により表面処理された納豆処理物である。納豆用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含む。ここで、本明細書において、「半流動性」とは、固体と液体の両方の性質を示し、粘性があり、自由に変形する性質を意味する。また、「納豆用粘度調整剤」とは、配合により納豆の糸引き性を低下させる添加剤を意味する。
【0026】
本発明の納豆製品は、上記構成であることにより、糸引きしにくいため取り扱いやすいとともに、さらに、通常の納豆よりも粘りが少ないため摂食嚥下機能が低下した人や幼児であっても食べやすい。
【0027】
たれは、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを含み、たれ用粘度調整剤を溶解状態で含むことが好ましい。調味料は、例えば、醤油、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖、魚介エキス、しいたけエキス、アミノ酸、酸味料などを含む。なお、調味料が水分を含む場合、別途の水を含まなくてもよい。ここで、「たれ用粘度調整剤」とは、配合によりたれの粘度を変化させる添加剤を意味する。たれ用粘度調整剤は、1種または2種以上の多糖類を含むことが好ましい。これにより、納豆製品の糸引き性と粘りがより低下するとともに、食塊としてのまとまりやすさが向上するため、より食べやすく、嚥下性により優れる。なお、上記たれは、半流動性であれば、いわゆるゲル化剤や、増粘剤と呼ばれるたれ用粘度調整剤が完全に溶解した状態のたれでも、分散状態のたれでもよい。
【0028】
納豆用粘度調整剤の納豆に対する配合比率は、納豆100質量部に対して、納豆用粘度調整剤が0.1~15質量部であることが好ましく、0.3~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましく、0.7~3質量部であることが一層好ましい。また、たれ用粘度調整剤の、調味料および水に対する配合比率は、調味料および水の合計100質量部に対して、たれ用粘度調整剤が0.1~15質量部であることが好ましく、0.3~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましく、0.7~3質量部であることが一層好ましい。
【0029】
納豆用粘度調整剤の組成は、たれ用粘度調整剤の組成と同一であってもよいし、異なってもよい。納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤はそれぞれ、多糖類以外の成分として、ゼラチンなどのたんぱく質系の粘度調整剤を含んでもよい。納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤が含む多糖類としては、例えば、カラギナン、デキストリン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、サイリウムシードガム、グアーガム、タマリンドシードガム、グルコマンナン、タラガム、ジェランガム、アガロース、アガロペクチンなどの多糖類が挙げられる。特にカラギナンは、タンパク反応性を有することで、タンパク含有液体などに構造粘性を与えて溶質の沈殿を防止する。また、カラギナンは、カリウム塩やカルシウム塩の添加により熱可逆性のゲルとなったり、ローカストビーンガムとの相乗効果によりユニークなテクスチャーのゲルとなったりする特異的な性質を有する。
【0030】
納豆用粘度調整剤の組成は、たれ用粘度調整剤の組成と同一であることが好ましい。これにより、納豆処理物と半流動性のたれを混合した際に、異種の粘度調整剤同士での相互作用が起こらないため、糸引き性が低いまま維持されやすい。また、納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤が主成分としてカラギナンを含む場合、チキソトロピー性を発現しやすい。これにより、納豆製品の糸引き性と粘りがさらに低下するとともに、食塊としてのまとまりやすさにより優れるため、好ましい。納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤は、さらにローカストビーンガムを含むことが好ましい。カラギナンとローカストビーンガムとの配合比率を変えることにより、他の粘度調整剤では得られないテクスチャーが発現し、嚥下性の向上に寄与する。
【0031】
納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤は、カラギナンと、デキストリンと、ローカストビーンガムと、キサンタンガムとを含むことが好ましく、カラギナンを40質量%以上含むことがより好ましい。納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤は、カラギナンを40~80質量%、デキストリンを5~25質量%、ローカストビーンガムを5~25質量%、キサンタンガムを10~30質量%含むことがさらに好ましく、カラギナンを40~65質量%、デキストリンを10~20質量%、ローカストビーンガムを10~20質量%、キサンタンガムを15~25質量%含むことが一層好ましい。上記組成であることにより、納豆製品の糸引き性と粘りが一層低下するとともに、チキソトロピー性がさらに高まるので、食塊としてのまとまりやすさにさらに優れる。また、冷凍保管して解凍した際の離水が起こらず食感が変化しないため、長期保管が可能で、利便性にも優れる。
【0032】
納豆用粘度調整剤およびたれ用粘度調整剤としては、例えば、森永乳業株式会社製のクックゼラチン、伊那食品工業株式会社製の介護食用ゼラチン寒天や、介護食用ウルトラ寒天、ニュートリー株式会社製のソフティアS、アサヒグループ食品株式会社製のとろみエール、キューピー株式会社製のかんたんゼリーの素、三菱商事ライフサイエンス株式会社製のNEWGELIN LB 866 K2などを用いることができる。
【0033】
本発明の納豆製品の製造方法を
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の納豆製品の製造工程の一例の概略図である。
図1に示すように、この製造工程は、納豆処理工程S1と、たれ製造工程S2と、納豆処理物と、半流動性のたれとを混合する混合工程S3と、を有する。なお、たれ製造工程S2は必須工程でなく、混合工程S3では、適宜準備した半流動性のたれを用いるなどしてもよい。納豆製品4の製造工程がたれ製造工程S2を有する場合、納豆処理工程S1と、たれ製造工程S2は、いずれが先であってもよいし、並行して同時に行ってもよい。以下に、各工程を説明する。
【0034】
[納豆処理工程]
この工程は、納豆を納豆用粘度調整剤で表面処理して納豆処理物とする工程である。この工程では、例えば、崩した納豆100質量部に対して、納豆用粘度調整剤1質量部を少しずつ加え、混合装置1により所定の時間(例えば、1~30分)混合して納豆の表面を納豆用粘度調整剤で処理する。この際、納豆が潰れないようにしつつ、納豆の表面に納豆用粘度調整剤が満遍なく付着して表面処理されるように混合する。なお、この工程では、納豆は、調味料や、水とともに混合してもよい。納豆処理工程S1では、糸引き性低減の観点から、納豆用粘度調整剤が納豆の表面に直接付着しやすいように、納豆と納豆用粘度調整剤のみを混合することが好ましい。
【0035】
[たれ製造工程]
この工程は、調味料と、水と、たれ用粘度調整剤とを混合し、40℃以上で加熱してたれ用粘度調整剤を完全に溶解させてたれを製造する工程である。この工程では、例えば、調味料100質量部に対して、まず水50質量部を加える。次に、泡立て器などの撹拌装置2により所定の時間(例えば、1~30分)撹拌しながら、粉末状たれ用粘度調整剤1.5質量部を少しずつ加える。その後、40℃以上に加熱してたれ用粘度調整剤を溶解させる。加熱を行う時間は、例えば、5~30分である。たれ用粘度調整剤は、生産速度を速めるとともに、完全に溶解させる観点から、40~100℃で溶解させることが好ましく、特に70~90℃が好ましい。なお、加熱してたれ用粘度調整剤を溶解させる際は、泡の発生が起こるため、撹拌しないことが好ましい。
【0036】
たれ製造工程S2では、たれ用粘度調整剤を溶解させた後に定期的にゆっくりと撹拌しながら、例えば、約50℃以下まで冷却する。なお、冷却は、室温下で行ってもよいし、冷蔵庫などの低温環境下(例えば、0~10℃の低温下)で行ってもよい。冷却した結果、流動性のないたれ(ゲル化物)が得られた場合、このゲル化物をヘラなどの器具を用いて所定の時間(例えば、10秒~10分)かけて潰し、半流動性のたれとする。ゲル化物を潰して半流動性にする場合、ゲル化物の全てを潰してもよいし、一部を潰してもよい。納豆製品の糸引き性と粘りを低下させる観点からは、ゲル化物の一部を潰すことが好ましい。なお、たれ用粘度調整剤の種類と配合量によって、冷却後に流動性を失ってゲル化する場合もあれば、加熱時よりも流動性が低下するもののゲル化せず、半流動性を示す場合もある。
【0037】
[混合工程]
この工程は、納豆処理物と、半流動性のたれとを混合して納豆製品4とする工程である。この工程では、例えば、納豆処理物と半流動性のたれを、撹拌装置3で、塊が無くなり均一になるまで、所定の時間(例えば、1~30分)満遍なく混合する。納豆処理物と、たれとの混合比率は、自由に設定できる。納豆処理物とたれとの混合比率は、例えば、80~20:20~80が好ましく、70~30:30~70がより好ましく、60~40:40~60がさらに好ましく、50:50が一層好ましい。
【0038】
混合後は、例えば、充填機を用いて、ポリエチレン製の袋などの容器に充填して出荷用の形態にすることができる。袋に充填された納豆製品4は、食事準備の際の取り扱い性に優れるとともに、冷凍保管にも適する。
【実施例0039】
以下に示す各納豆製品について、取り扱い性と食べやすさの評価を行なった。
【0040】
[実施例1]
本発明の納豆製品の一例を上述の
図1に示す工程で製造した。
【0041】
本評価に用いた原材料を以下に示す。
納豆
粘度調整剤A:カラギナンとローカストビーンガムを含む多糖類
粘度調整剤B:デキストリンを主成分として含む多糖類
調味料:醤油、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖などを含む液状調味料
水
粘度調整剤Aの組成を表1に示す。
【0042】
【0043】
納豆製品の具体的な製造手順は以下のとおりである。
崩した納豆(原料納豆)2000gに対して、納豆用粘度調整剤として10gの粘度調整剤Aを少しずつ加え、混合装置により約5分間混合して納豆の表面を粘度調整剤Aで処理して納豆処理物を得た(納豆処理工程)。これと並行して、調味料1334gに対して、まず水666gを加え、泡立て器により約5分間撹拌しながら、たれ用粘度調整剤として20gの粘度調整剤Aを少しずつ加えた。その後、90℃に到達するまで約10分間加熱して粘度調整剤Aを完全に溶解させてたれを製造した(たれ製造工程)。なお、粘度調整剤Aの溶解時には、撹拌しなかった。粘度調整剤Aを溶解させた後、ゆっくりと撹拌しながら約30分かけて約50℃まで冷却するとゲル化物が得られたため、約1分かけてこのゲル化物の一部をヘラで潰し、ジュレ状となった半流動性のたれを得た。得られた納豆処理物と、半流動性のたれとを、撹拌装置を用いて塊が無くなるまで約5分間満遍なく混合して実施例1の納豆製品を得た(混合工程)。得られた納豆製品は、ポリエチレン製の袋に約300gずつ充填し、その後冷凍庫(-25℃)で保管した。
【0044】
[実施例2~実施例8、比較例1~比較例3]
実施例2~実施例8については、原材料の比率、粘度調整剤の種類と量が異なる点以外は、実施例1と同様の方法で納豆製品を得た。また、比較例1では、納豆処理工程と、たれ製造工程を行わず、表面処理されていない納豆と、調味料と、水とを混合して納豆製品を得た。比較例2では、納豆処理工程を行った一方で、たれ製造工程は行わず、納豆処理物と、半流動性でない液状のたれ(調味料と水)とを混合して納豆製品を得た。比較例3では、たれ製造工程を行った一方で、納豆処理工程を行わず、表面処理されていない納豆と、半流動性のたれとを混合して納豆製品を得た。なお、比較例1~比較例3では、納豆とたれの混合は混合装置を用いて行った。各納豆製品(実施例1~実施例8、比較例1~比較例3)に用いた原材料と、評価結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
取り扱い性と食べやすさの評価は、高齢者介護施設にて行った。取り扱い性は、介護施設の職員が納豆製品を容器から食器に出す際の取り出しやすさや、施設入居者へ食べさせる際の食べさせやすさの観点から3段階で評価された。取り扱い性は、粘性、糸引き性ともに特に低い(粘りが特に弱く、特に糸切れしやすい)場合を「◎」、粘性、糸引き性ともに低い場合を「〇」、粘性、糸引き性ともに不十分(粘りが比較的強く、糸切れしにくい)な場合を「×」と判断した。また、食べやすさは、口に入れてから飲み込む際の嚥下性の観点から3段階で評価された。食べやすさは、特に粘性が低いとともに食塊がまとまりやすい場合を「◎」、粘性が低く、食塊がまとまりやすい場合を「〇」、粘性、食塊のまとまりやすさが不十分(粘りが比較的強く、食塊がまとまりにくい)な場合を「×」と判断した。
【0047】
納豆処理物と半流動性のたれの混合物である実施例1~実施例8は、粘度調整剤を含まない比較例1、少なくともいずれか一方しか粘度調整剤を含まない比較例2および比較例3に対して、良好な取り扱い性と食べやすさを示した。また、粘度調整剤Aを用いた実施例1~実施例5は、粘度調整剤Bを用いた実施例6~実施例8に対して、粘度調整剤の配合量が少ないにもかかわらず優れた取り扱い性と食べやすさを示した(特に、実施例2~実施例5)。このため、粘度調整剤Aを用いることで、粘度調整剤の配合量を低減でき、コストの低減にも寄与することが分かった。なお、実施例1~実施例5は、冷凍保管後に解凍しても離水しにくく、納豆とたれとの分離が起こらなかった。
【0048】
納豆の表面処理に用いる粘度調整剤Aの配合量のみを変化させた実施例1~実施例3では、0.5質量部(実施例1)とした場合は、取り扱い性、食べやすさともに良好であり、0.8質量部以上(実施例2、実施例3)とした場合は、それぞれ特に優れる結果であった。実施例2、実施例3は、特に糸引き性が低く、取り扱いやすさに優れた。また、たれの製造に用いる粘度調整剤Aの配合量が0.8質量部(実施例4)の場合、1質量部(実施例2)の場合よりも半流動性のたれが柔らかく、混合工程において、納豆処理物と混合しやすく生産性も良好であった。さらに、納豆の表面処理およびたれの製造に用いる粘度調整剤Aの配合量をそれぞれ0.8質量部とし、たれの製造に調味料1000g、水1000gを用いた場合(実施例5)、実施例4と同等の取り扱い性、食べやすさを維持しつつ、塩分を低減することができた。塩分の低減された納豆製品は、塩分制限を受けている人や薄味好きの人を含め、より多くの人が摂取しやすいため特に好ましい。
【0049】
納豆の表面処理と、たれの半流動化に用いる粘度調整剤Bの配合量をそれぞれ変化させた実施例6~実施例8では、実施例6および実施例7は、取り扱い性、食べやすさ共に良好で、実施例8は粘りが抑制されるとともにまとまりもよく、食べやすさに特に優れる結果であった。
【0050】
以上、本発明の納豆製品およびその製造方法について説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。