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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016206
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20230126BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230126BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
C08L23/02
C08J5/18 CES
B32B27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120368
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 勇一
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA16
4F071AA18
4F071AA20
4F071AA84
4F071AA88
4F071AF30Y
4F071AF45
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC16
4F071BC17
4F100AK05A
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK64A
4F100AK75A
4F100AL01A
4F100AL05A
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100EJ20
4F100EJ38
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JJ03
4F100JK15
4F100JL13
4F100JN02
4F100YY00
4F100YY00A
4J002BB03W
4J002BB03Z
4J002BB05W
4J002BB12Y
4J002BB14X
4J002BB14Y
4J002BB15X
4J002BB15Y
4J002GF00
4J002GG02
4J002GJ00
(57)【要約】
【課題】
ポリプロピレン樹脂組成物の層を含む二軸延伸フィルムであって、(1)マット感がある、すなわちヘーズが大きく、(2)マット感にムラが認められない、すなわち均質性が高く、(3)フィッシュアイがない、すなわち外観欠陥がなく、(4)ヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いという特徴を、すべて兼ね備えたものを提供する。
【解決手段】
(i)ポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)(当該ポリプロピレン樹脂を除く。以下同じ。)、 高密度ポリエチレン(C)および低密度ポリエチレン(D)を含むポリプロピレン樹脂組成物(X)であって、特定の組成を有するポリプロピレン樹脂組成物(X)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(i)MFRが0.3~40g/10minであるポリプロピレン樹脂(A)、
(ii)MFRが5~15g/10minであるプロピレン系共重合体(上記ポリプロピレン樹脂を除く。)(B)、
(iii)MFRが0.01~0.4g/10minである高密度ポリエチレン(C)および
(iv)MFRが0.1~0.6g/10minである低密度ポリエチレン(D)を含み、
(2)ポリプロピレン樹脂、プロピレン系共重合体、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの総重量を100としたときに、
(i)前記ポリプロピレン樹脂(A)の重量が15~30であって、
(ii)前記プロピレン系共重合体(B)の重量が20~35であって、
(iii)前記高密度ポリエチレン(C)の重量が20~45であって、
(iv)前記低密度ポリエチレン(D)の重量が5~30である
ポリプロピレン樹脂組成物
【請求項2】
前記プロピレン系共重合体(B)がプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物
【請求項3】
前記低密度ポリエチレン(D)の製造方法が高圧法である、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂(A)の融点とプロピレン系共重合体(B)の融点の差が、20~45℃である、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4に記載の組成物のいずれか1つである層を含む、二軸延伸フィルム。
【請求項6】
請求項1から4に記載の組成物のいずれか1つである層が表層にある、請求項5に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項7】
全ヘーズが70%以上である、請求項5に記載の二軸延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリプロピレン樹脂組成物に関し、詳しくはマット(matte)感がある二軸延伸ポリプロピレン系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ、タルク、炭酸カルシウムといった無機微粒子を配合したポリプロピレン樹脂を含む層を入れることで、マット感がある二軸延伸フィルムを得る方法が知られている。特許文献1および2は、無機粒子を使用せずに、プロピレン-エチレンブロック共重合体を用いることで、マット感がある二軸延伸フィルムを得る方法を開示している。特許文献3、4および5は、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンを配合したポリプロピレン樹脂を用いることで、マット感がある二軸延伸フィルムを得る方法を開示している。
このようなマット感がある二軸延伸フィルムは、意匠性に優れるため、包装材料、粘着フィルムの非粘着面などに利用されている。
しかし、ポリプロピレン系樹脂の層を含むマット感がある二軸延伸フィルムであって、(1)ヘーズが大きく、(2)マット感にムラが認められず、(3)フィッシュアイがなく、(4)ヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いものは、まだ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-184683号公報
【特許文献2】特開2011-252081号公報
【特許文献3】特開平7-233291号公報
【特許文献4】特開2003-213069号公報
【特許文献5】特開2011-194588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ポリプロピレン樹脂組成物の層を含む二軸延伸フィルムであって、(1)マット感がある、すなわちヘーズが大きく、(2)マット感にムラが認められず、すなわち均質性が高く、(3)フィッシュアイがない、すなわち外観欠陥がなく、(4)ヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いという特徴を、すべて兼ね備えたものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、以下の態様により、上記課題を解決するに至った。
【0006】
本開示の第1の態様は、(i)MFRが0.3~40g/10minであるポリプロピレン樹脂(A)、
(ii)MFRが5~15g/10minであるプロピレン系共重合体(B)(当該ポリプロピレン樹脂を除く。以下同じ。)、
(iii)MFRが0.01~0.4g/10minである高密度ポリエチレン(C)および
(iv)MFRが0.1~0.6g/10minである低密度ポリエチレン(D)を含むポリプロピレン樹脂組成物(X)である。
ここで、当該ポリプロピレン樹脂組成物の組成は、
ポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)および低密度ポリエチレン(D)の総重量を100としたときに、
(i)ポリプロピレン樹脂(A)の重量が15~30であって、
(ii)プロピレン系共重合体(B)の重量が20~35であって、
(iii)高密度ポリエチレン(C)の重量が20~45であって
(iv)低密度ポリエチレン(D)の重量が5~30に限る。
【0007】
本開示の第2の態様は、プロピレン系共重合体(B)がプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体である、第1の態様である。
【0008】
本開示の第3の態様は、前記低密度ポリエチレン(D)の製造方法が高圧法である、第1の態様である。
【0009】
本開示の第4の態様は、前記ポリプロピレン樹脂(A)の融点とプロピレン系共重合体(B)の融点の差が、20~45℃である、第1の態様である。
【0010】
本開示の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかひとつに記載の組成物の層を含む、二軸延伸フィルムである。
【0011】
本開示の第6の態様は、第1から第4の態様のいずれかひとつに記載の組成物の層が表層にある、二軸延伸フィルムである。
【0012】
本開示の第7の態様は、全ヘーズが70%以上である、第5または第6の態様に記載の二軸延伸フィルム。
【発明の効果】
【0013】
第1から第4の態様である組成物である層を含む二軸延伸フィルムは、(1)ヘーズが大きい、すなわちマット感の高さ、(2)マット感にムラが認められず、すなわち均質性が高く、(3)フィッシュアイ、割れがないなどの低外観不良、(4)ヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高い、すなわち高耐熱性であるという特徴を、すべて満たす。
態様5から態様7の組成物である層を含むフィルムも、前記(1)から(4)をすべて満たす。
ゆえに、態様1から態様4の組成物である層を含む二軸延伸フィルムおよび態様5から態様7の二軸延伸フィルムは、従来のポリプロピレン樹脂組成物の層を含む二軸延伸フィルムにはなかった予想外の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示のポリプロピレン樹脂組成物(X)は、前記(A)~(D)の要件を満たす各成分を、特定の割合で配合することを特徴とする。
【0015】
ポリプロピレン樹脂、プロピレン系共重合体、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンを特定の成分および割合で混合して作製した層では、フィルム作製の二軸延伸中に、ポリプロピレン樹脂およびプロピレン系共重合体よりも、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンが先に結晶化する。その結果、当該層中の高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの総量の割合が多い場所が、凸部となり、該層中のポリプロピレン樹脂およびプロピレン系共重合体の総量の割合が多い場所が、凹部となる。当該凸部および当該凹部が光を乱反射させる。こうして当該フィルムにマット感が生じる。
【0016】
[構成成分]
1.ポリプロピレン樹脂(A)
ポリプロピレン樹脂は、重合体中のプロピレンモノマーが98重量%を超えるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン単独重合体並びにこれらの混合物をいう。
生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、ポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体が好ましい。
プロピレン以外のポリプロピレン樹脂のモノマーは、1種類以上のα-オレフィンであってもよい。
α-オレフィンは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ヘキセンなどである。
プロピレン以外のモノマー成分を重合してなるポリプロピレン樹脂にマット感を出すため、α-オレフィンのモノマーは、エチレン又は炭素数4~20のα-オレフィンが好ましく、エチレン又は炭素数4~10のα-オレフィンがより好ましく、エチレン又は1-ブテンがさらに好ましい。
【0017】
(1)ポリプロピレン樹脂の融点
マット感の向上、耐熱性、均質性向上、生産性向上のため、ポリプロピレン樹脂(A)の融点は、155~170℃が好ましく、160~165℃がより好ましい。
【0018】
(2)ポリプロピレン樹脂のMFR
製品の外観欠陥の防止、製品の意匠性の向上、製品の生産性および/または製品の耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂のMFRは、0.3~40g/10分が好ましく、0.3~30g/10分がより好ましく、0.3~25g/10分がさらに好ましい。
【0019】
当業者は、上記のポリプロピレン樹脂を購入、または製造することができる。
【0020】
2.プロピレン系共重合体
プロピレン系共重合体はプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の混合物である。
当該混合物は、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を溶融混練して得られる溶融ブレンド物および多段重合法により製造した多段重合体として得られるものなどを含んでもよい。
生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、プロピレン以外のプロピレン系共重合体のモノマー成分は、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンが好ましく、エチレン又は炭素数4~10のα-オレフィンがより好ましく、エチレン又は1-ブテンがさらに好ましい。
プロピレン以外のプロピレン系共重合体のモノマーは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテンおよび2-メチル-1-ヘキセン等並びにこれらの混合物であってもよい。
【0021】
プロピレン系共重合体の融点
製品の耐久性および良好なマット感の観点から、プロピレン系共重合体の融点は、125~140℃が好ましく、125~135℃がより好ましい。
【0022】
(2)プロピレン系共重合体のMFR
プロピレン系共重合体のMFRは、5~15g/10分が好ましく、5~10g/10分がより好ましく、5~8g/10分がさらに好ましい。
生産性の観点から、当該MFRが5g/10分以上が好ましい。フィッシュアイの発生予防の観点から、当該MFRが15g/10分以下が好ましい。
本発明の課題を解決するため、ポリプロピレン樹脂の融点とプロピレン系共重合体の融点の差は、20~45℃が好ましく、30~45℃がより好ましく、40~45℃がさらに好ましい。
【0023】
3.高密度ポリエチレン
高密度ポリエチレンのモノマーは、エチレン並びにエチレンおよびα-オレフィンの混合物である。
生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、高密度ポリエチレンのモノマーであるα-オレフィンの成分は、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、炭素数3~10のα-オレフィンがより好ましく、プロピレンおよび1-ブテンがさらに好ましい。高密度ポリエチレンのモノマーは、エチレンの他、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテンおよび2-メチル-1-ヘキセン等並びにこれらの混合物であってもよい。
【0024】
(1)高密度ポリエチレンの密度
ポリプロピレン樹脂組成物の高ヘーズ発現効果およびフィッシュアイの発生防止の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の成分である高密度ポリエチレンの密度は、0.935~0.970g/cmが好ましく、0.940~0.965g/cmがさらに好ましい。
当該密度は、エチレンと共重合する炭素数3~20のα-オレフィンの比を増やすことで下げることができ、一方、エチレンの比を増やすことで上げることができる。
ここで、当該密度は、JIS K7112:1999によるD法(密度こうばい管)の測定値である。
【0025】
(2)高密度ポリエチレンのMFR
フィッシュアイの発生を抑制し、およびマット感を与える粗面化を発現させるために、高密度ポリエチレンのMFRは、0.01g/10分~0.4g/10分が好ましく、0.02~0.35g/10分がより好ましい。
当業者は、このような高密度ポリエチレンを購入できる。
【0026】
4.低密度ポリエチレン
低密度ポリエチレンのモノマーは、エチレン並びにエチレンおよびα-オレフィンの混合物である。
本発明の課題を解決するために、低密度ポリエチレンは、高圧法で製造することが好ましい。
生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、低密度ポリエチレンのモノマーであるα-オレフィンの成分は、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、炭素数3~10のα-オレフィンがより好ましく、プロピレンおよび1-ブテンがさらに好ましい。低密度ポリエチレンのモノマーは、エチレンの他、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテンおよび2-メチル-1-ヘキセン等並びにこれらの混合物であってもよい。
【0027】
(1)低密度ポリエチレンの密度
ポリプロピレン樹脂組成物の高ヘーズ発現効果およびフィッシュアイの発生防止の観点から、ポリプロピレン樹脂組成物の成分である低密度ポリエチレンの密度は、0.910~0.935g/cmが好ましく、0.915~0.930g/cmがより好ましい。
ここで、低密度ポリエチレンの密度は、高密度ポリエチレンの場合に準じて調整できる。当該密度の測定も、高密度ポリエチレンの場合に準じて測定できる。
【0028】
(2)低密度ポリエチレンのMFR
フィッシュアイの発生を抑制し、およびマット感を与える粗面化を発現させるために、低密度ポリエチレンのMFRは、0.1~0.6g/10分が好ましく、0.1~0.45g/10分がより好ましい。
当業者は、このような低密度ポリエチレンを購入できる。
【0029】
5.ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の成分の割合
本発明の課題を解決するために、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中のポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)の総重量を100としたときに、ポリプロピレン樹脂(A)の重量は、15~30が好ましく、20~30がより好ましい。
本発明の課題を解決するために、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中のポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)の総重量を100としたときに、プロピレン系共重合体(B)は、20~35が好ましく、20~30がより好ましい。
本発明の課題を解決するために、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中のポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)の総重量を100としたときに、高密度ポリエチレン(C)の重量は、20~45が好ましく、40~45がより好ましい。
本発明の課題を解決するために、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中のポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)の総重量を100としたときに、低密度ポリエチレン(D)の重量は、5~30が好ましく、5~10がより好ましい。
【0030】
6.その他成分
本発明のポリプロピレン樹脂組成物(X)は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、臭気吸着剤、抗菌剤、顔料、無機質及び有機質の充填剤そのほかの合成樹脂向けの添加剤を含有してもよい。
【0031】
ポリプロピレン樹脂の劣化防止のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の酸化防止剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0032】
ポリプロピレン樹脂の耐候劣化防止のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の紫外線吸収剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0033】
ポリプロピレン樹脂との接触する部材を保護するため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の中和剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0034】
ポリプロピレン樹脂の物性向上および意匠性向上のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の造核剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0035】
ポリプロピレン樹脂の耐候劣化防止のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の光安定剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0036】
ポリプロピレン樹脂の帯電防止のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の帯電防止剤の含有量は、重量換算で500~50000ppmが好ましく、1000~30000ppmがより好ましく、5000~15000ppmがさらに好ましい。
【0037】
ポリプロピレン樹脂の滑り性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の滑剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0038】
ポリプロピレン樹脂の耐ブロッキング性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中のアンチブロッキング剤の含有量は、重量換算で100~10000ppmが好ましく、200~5000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0039】
ポリプロピレン樹脂の臭気防止め、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の臭気吸着剤の含有量は、重量換算で1000~100000ppmが好ましく、5000~80000ppmがより好ましく、10000~50000ppmがさらに好ましい。
【0040】
ポリプロピレン樹脂の抗菌性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の抗菌剤の含有量は、重量換算で1000~50000ppmが好ましく、2000~40000ppmがより好ましく、5000~30000ppmがさらに好ましい。
【0041】
ポリプロピレン樹脂の意匠性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の顔料の含有量は、重量換算で1000~50000ppmが好ましく、2000~40000ppmがより好ましく、5000~30000ppmがさらに好ましい。
【0042】
ポリプロピレン樹脂の剛性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の無機質の充填剤の含有量は、重量換算で1000~50000ppmが好ましく、2000~40000ppmがより好ましく、3000~30000ppmがさらに好ましい。
【0043】
均質性の向上し、ヘーズが大きく、場所観測点ごとのによるヘーズの変動が小さく、フィッシュアイがなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中のポリエチレンの含有量は、重量換算で50000~500000ppmが好ましく、100000~480000ppmがより好ましく、150000~450000ppmがさらに好ましい。
【0044】
均質性の向上し、ヘーズが大きく、場所観測点ごとのによるヘーズの変動が小さく、フィッシュアイがなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性付与のため、ポリプロピレン樹脂組成物(X)中の合成樹脂向けの添加剤の総含有量は、重量換算で100~5000ppmが好ましく、200~4000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましい。
【0045】
[ポリプロピレン樹脂組成物のペレットおよびそのフィルムの製造法]
当業者は、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを作製し、その後、当該ペレットから、ポリプロピレン樹脂組成物のフィルムを作製してもよい。当業者は、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを作製せずに、溶融状態のポリプロピレン樹脂組成物から、直接、フィルムを作製してもよい。
当業者は、ポリプロピレンパウダーに添加剤を配合して、フィルムを作製してもよい。
【0046】
当業者は、ポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)及び必要な成分を、混合装置で混合および均一化し、続けて、混練機により190~260℃の温度範囲で溶融混練することで、本開示のポリプロピレン樹脂組成物(X)のペレットを、作製できる。
【0047】
当業者は、ポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)及び必要な成分の各ペレットを配合したものを、メインホッパーに投入し溶融させ、フィルム成形機に供給してフィルムにしてもよい。当業者は、ポリプロピレン樹脂組成物の一部の成分のペレットをメインホッパーで投入し溶融させ、続けて、残りの成分のペレット又は粉末を一以上のサイドフィードで投入して混練したうえで、ペレットを作製し、またはフィルム成形機に供給してフィルムにしてもよい。
【0048】
ポリプロピレン樹脂組成物の成分の均質な分散化、すなわち上記フィルムの品質向上が期待できるため、上記のようにサイドフィードで投入して混練させることが、好ましい。
【0049】
混合装置は、ヘンシェルミキサー(商品名)、Vブレンダー、リボンブレンダーおよびタンブラーブレンダーなどである。
混練機は、単軸押出機、多軸押出機、ニーダーおよびバンバリミキサーなどである。
【0050】
[フィルムの成形法]
当業者は、本開示のポリプロピレン樹脂組成物(X)のフィルムを、公知の溶融押出製膜法によって作製できる。
当該フィルムは、Tダイキャスト法による未延伸フィルム、キャスト後に熱延伸を行う一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルム並びに水や大気雰囲気にて冷却を行うインフレーション法で作製できる。生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、当該フィルムの作製の方法は、二軸延伸が好ましい。
【0051】
当該フィルムは、単層であっても多層であってもよい。生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、当該フィルムは、多層が好ましい。
【0052】
本開示の多層フィルムにおいて、ポリプロピレン樹脂組成物以外の層は、プロピレン-エチレンブロック共重合体やプロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体およびスチレン系エラストマー並びにこれらの混合物からなっていてもよい。
【0053】
本開示のフィルムは、上述した本発明のポリプロピレン樹脂組成物を用いることで、不規則な凹凸の存在により表面が荒れた状態のフィルムであり、かつ高ヘーズなため優れたマット感を有するフィルムを提供することができる。
具体的には、本発明の多層フィルムは、上述した本発明のポリプロピレン樹脂組成物を溶融押出製膜して得られ、厚み20μmにおける全ヘーズが70%以上であり、かつ、長辺0.2mm以上のフィッシュアイ、より詳細にはポリマーゲルを核とする外観欠点であるフィッシュアイの数が、1m当たりで5個以下であることが好ましい。また、本発明の多層フィルムは、上述した本発明のポリプロピレン樹脂組成物を少なくとも1層に用い、溶融押出製膜して得られることが好ましい。生産性のため、並びにヘーズが大きく、均質性が高く、外観欠陥がなく、およびヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いため、フィルムの厚みは、5~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。
【0054】
加工性を向上させるため、本開示のフィルムは、フィルムの表面に、コロナおよび/またはプラズマ等の放電処理、火炎処理、オゾン処理を行ってもよい。
【実施例0055】
本発明は実施例のみに限定されない。
[物性の測定方法]
本発明の詳細な説明及び実施例中の各項目の物性測定や分析値は、下記の方法に従った。
【0056】
(1)融点(単位:℃)
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。
【0057】
(2)MFR(単位:g/10分)
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K7210:1999の附属書A表1、条件Mに従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃ 公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mm
ポリエチレンのMFRは、JIS K7210:1999の附属書A表1、条件Dに従い、以下の条件で測定した。
試験温度:190℃ 公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mm
【0058】
(3)フィルムのヘーズ(単位:%)
フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間以上静置した後、JIS-K7136に準拠してヘーズ(HAZE)を、一実施例当たり4箇所、測定し、これらの測定値の平均値を「全ヘーズ(%)」とした。得られた値が大きいほど不透明であることを意味し、70%以上であればマット感が優れている。
【0059】
(4)均質性
フィルムのマット感にムラがあるか否かを目視で評価した。
〇 : マット感にムラが認められない。
× : マット感にムラが認められる。
〇の場合に、フィルムの均質性が高いと評価した。
【0060】
(5)ヒートシール部の耐熱性
ヒートシール部の耐熱性評価については、下記である。
装置:テスター産業社製「TP-701-B HEAT SEAL TESTER」
シール温度:140℃
シール圧力:1.0kg/cm(0.10MPa)
シール時間:1秒
シールバー:1cm×20cm
実施例、比較例に記載のフィルムを2枚重ねてシールバーへ挿入し、前述の条件でシールした際のシール部分のマット感の状態変化を目視で評価した。
〇 : ヒートシール部以外の部分との比較でマット感に相違が認められない。
× : ヒートシール部以外の部分との比較でマット感に相違が認められる。
〇の場合に、フィルムが高耐熱性であると判断した。
【0061】
(7)フィルムのフィッシュアイ(単位:個/m
MD300mm×TD400mmである長方形である厚み20μmである、5枚のフィルムの、長辺0.2mm以上のフィッシュアイを目視でカウントした。ここで、MDは、フィルム押出成形時の流れ方向と平行方向の距離であり、TDは、当該方向と垂直方向の距離である。面積1m当たりのフィッシュアイの個数を求めた。
フィッシュアイの個数が多いほど、外観不良である。
【0062】
(8)フィルムの表面粗度
フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間以上調整した後、JIS B-0601に準拠して、フィルム成形時におけるダイ直後の冷却ロールとの接触面について、カットオフ0.25mmでの中心面平均値(以下、「Ra」という。)を測定した。Raが大きい程、フィルム表面の凹凸が大きいため、深みのあるマット感がある。
【0063】
[使用樹脂]
実施例及び比較例に使用した各種樹脂を以下に記す。
[ポリプロピレン樹脂(A)]
A-1:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名EA9HD
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体
融点165℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=0.4g/10分
A-2:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名FL203D
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体
融点162、MFR(230℃、2.16kg荷重)=3g/10分
A-3:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名SA3B
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体
融点162℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=10g/10分
A-4:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名SA2EA
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体
融点162℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=16g/10分
A-5:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名SA04M
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体
融点161℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=40g/10分
A-6:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名SA06GA
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体
融点161℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=60g/10分
【0064】
[プロピレン系共重合体(B)]
B-1:日本ポリプロ(株)製、商品名ウィンテック(登録商標)、グレード名WFX4M
メタロセン触媒によるプロピレン-エチレンランダム共重合体
融点125℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分
B-2:日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテック(登録商標)PP、グレード名FX4GF
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体
融点126℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)=5g/10分
【0065】
[高密度ポリエチレン(C)]
C-1:京葉ポリエチレン(株)製、商品名KEIYOポリエチ(登録商標)、グレード名B5514
密度 0.953g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重)=0.35g/10分
C-2:京葉ポリエチレン(株)製、商品名KEIYOポリエチ(登録商標)、グレード名FX503
密度 0.950g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重)=0.04g/10分
C-3:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテック(登録商標)HD、グレード名HY430
密度 0.956g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重)=0.8g/10分
【0066】
[低密度ポリエチレン(D)]
D-1:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテック(登録商標)LD、グレード名LF128
密度 0.922g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重)=0.25g/10分
D-2:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテック(登録商標)LD、グレード名LF443
密度 0.924g/cm、MFR(190℃、2.16kg荷重)=1.5g/10分
【0067】
実施例1~9および比較例2~7
[ポリプロピレン樹脂組成物(X)のペレット化]
上述のポリプロピレン樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、高密度ポリエチレン(C)、低密度ポリエチレン(D)の各ペレットを、表1に示した割合でタンブラーにてそれぞれ混合し均一化し35mm径の二軸押出機により230℃で溶融混練し、ポリプロピレン樹脂組成物(X)のペレットを得る。
この際の混練機は、東芝機械社製35mm径同方向二軸混練機であり、スクリュー回転数は250rpmであって、フィーダー回転数は50rpmである。
【0068】
[二軸延伸ポリプロピレンフィルムの成形法]
いずれの樹脂温度も240℃で、当該ポリプロピレン樹脂組成物(X)が第1層および第3層になるように、A-2(日本ポリプロ(株)製ノバテック(登録商標)PP FL203D(プロピレン系重合体、MFR3.0g/10分、融点162℃))が中間層になるように溶融押出し、30℃の冷却ロールで急冷し、2種3層の原反シートを作製した。
当該シートを、ロール温度を110℃に調整した縦延伸機を用いて二軸延伸フィルムを得た。
このため、当該二軸延伸フィルムの層は、必ず、当該ポリプロピレン樹脂組成物(X)である。
【0069】
縦延伸機および横延伸機は、以下のとおりである。
二軸延伸フィルム成形機(テンター):三菱重工社製
押出条件 : 押出温度:240℃、ダイス幅:300mm、リップ開度:2.0mm
延伸条件 : 冷却ロール温度:30℃、冷却ロール速度:3m/分、縦(MD)延伸倍率:5倍、
横(TD)延伸倍率:8倍、引取速度:15m/分
フィルム厚み:20μm。ただし、ポリプロピレン樹脂組成物(X)である第1層およびポリプロピレン樹脂組成物(X)である第3層の厚みは、3μm)
得られた二軸延伸フィルムの物性を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
[実施例と比較例の結果の考察]
表1の実施例1~9から、ポリプロピレン樹脂組成物(X)の層があるフィルムは、ポリプロピレンの二軸延伸フィルムであって、(1)マット感がある、すなわちヘーズが大きく、(2)マット感にムラが認められない、すなわち均質性が高く、(3)フィッシュアイがない、すなわち外観欠陥がなく、(4)ヒートシール部そのほかの部分の耐熱性が高いというすべての特徴を、兼ね備えたものであることがわかる。
比較例2~7フィルムのうち、当該(1)~(4)の特徴を全部充足しているものは、存在しない。